「Not Waving」と一致するもの

 2017年早々に、南アフリカの最西南端の都市のケープタウンに行って来た。元ルームメイトが南アフリカ人で、彼の兄がケープタウンで音楽ライターをしていると言うので、音楽シーンを紹介して貰おうと思ったのだ。NYからヨハネスバーグまで16時間、そこからさらに2時間のフライトで、ケープタウンに降り立った。天気も良いし景色は最高。左手には山があり、右にはビーチが広がる。アフリカ大陸、最南端のポイント、喜望峰に行ったり、ワイナリーに行ったり、サーフィンをしたり、思う存分自然を楽しんだ。
 こんな平和で自然な場所に、興味深い音楽シーンがあると聞いた。南アフリカは、そもそもヨーロッパから入って来たハウス・ミュージックが人気で、私が好きなインディロック・ミュージックというのはまったく聞かない。南アフリカで、いま人気があるのは、gqom(ゴム)ミュージックで、その発祥は、ケープタウンではなく、東にあるダーバンらしい。勿論ケープタウンでも、若者達が集まる観光地エリア(ロングストリート、ループストリート、クルーフストリート辺り)では、大勢の人が集まり、大音量の音楽がかかり、活気に溢れていた。空港近くのタウンシップという貧しい地域には、朝から晩までダンス・ミュージックがかかり、キッズ達がたむろしていた。車で近くを通ると「窓を閉めろ」「物はやるな」と同乗者に注意されるのだが、そのタウンシップで、ゴム音楽やシャンガーンなどの南アフリカ・スタイルの音楽が生まれている。

 南アフリカは、ヨーロッパの影響を受けていると書いたが、音楽と人、自然に魅せられ、何度も南アフリカを行き来している(なかには移住した)ヨーロッパ人を何人か知っている。彼らは「いま、ヨーロッパのクラブ文化において、新しく新鮮なものを求められていて、ゴムの感覚は並外れている」と声を揃えて言う。ノルウェイで、音楽ディストリビューション会社で働くTrond Tornesもそのなかの一人。彼はここ10年の間に20回以上も南アフリカに来ていて、ダンス・ミュージックに精通している。
「南アフリカには、ハウス・ミュージック文化が入ってくる前に、独自の音楽とダンス文化があったし、90年代には自由への戦いが南アフリカであり、オーガナイズされた国の抗議者は至る所で団結していた。南アフリカのアンダーグランド音楽は、70年代後期のパンク・シーンのように、いつも海外の文化に影響を受けていたし、90年代には、ガレージ音楽やハウスがNYやシカゴから入って来た。南アフリカの新しい世代は、まさにアパルトヘイトが歴史で、新しい文化的な定義にニーズがある新しい社会に乗っかろうとしているんだ。プロデューサーたちは、ハウスをただコピーするだけでなく、自分達の独自の物を作った。例えば、テンポを下げたり上げたり(124 bpmから106bpm)、歌を加えたり、ベースラインを入れたりね。そしてクワイトが生まれ、いまはゴムが台頭している」
と熱く語る。

 ゴム音楽発祥のダーバンで音楽フェスティバル/国際音楽コンファレンス、「KZNミュージック・インビゾ」をオーガナイズするSiphephelo Mbheleは、南アフリカの音楽シーンをよく知る人物。この2人に、南アフリカの音楽(主にゴム)について語って貰った。

Pic credit: Thanda Kunene / Courtesy of Imbizo festival


インタビュー : Siphephelo Mbhele (KZN Music Imbizo)
https://www.kzn-musicimbizo.co.za/


まず自己紹介をお願いします。

Siphephelo Mbhele:僕は、Siphephelo Mbhele。南アフリカのダーバンと言う都市でKZN Music Imbizoと言う音楽フェスティバルをオーガナイズしている。今年(2017年)で9回目、8/31-9/2に開催される。世界中から音楽関係者が集まり、音楽や映画を発表したり、音楽機器のデモンストレーションをしたり、意見交換会をしたり、プロデューサーの研究室があったり、様々な可能性を試している。

南アフリカ版SXSWみたいなものですね。その南アフリカで、今話題はゴム(gqom)ですが、それについて教えて下さい。

Siphephelo Mbhele:ゴムは、ここダーバンで生まれた音楽のジャンルで、ハウス・ミュージックにブロークン・ビートやカットされたボーカル、チャンティングが入っている。ハイテンポで、大体はベースラインがなくて、DIYで、低予算のストリートサウンドで、何にも似ていないパターンで作られた、騒々しいトライバル音楽のコレクション。なんて、ゴムは、実はベース・キック(ダフ音)の音から来てるんだよ。

Pic credit: Thanda Kunene / Courtesy of Imbizo festival

ゴムは、何から影響されてスタートしたのでしょう。

Sphe:主にテクノロジーに帰するね。ほとんどのゴム音楽は、プロダクションを学んだ若者たちの深いループで出来ている。ソフトウエアへのアクセス権を通して、ファイルを共有するウエブサイトはスパークし、たくさんの人が、音楽を作れると信じてる。もうひとつの重要な要因は、ダーバンの人は、ダンスが好きなこと。ダンス音楽の、いろんな種類を見つけたかったら、ダーバンは完璧な所だよ。ヨハネスバーグは、クワイト(Kwaito-アフリカの音とサンプリングを組み込んだハウス・ミュージック)を90年代から2000年中盤にもたらしたのだけど、クワイト音楽が、そのアピールをなくした時、ダーバンが音楽を復活させた。なので、「ダーバン・クワイト」と呼ばれたものは、非常に商業的になり、誰もが作っていた。そして別の音楽が、タウンシップから成長して来た。それがゴム(gqom)音楽。ほとんどの初期のゴム音楽は、主にエクスタシーについてで、音楽は、タウンシップから出た町のなかの、薄汚い所でプレイされ、ミニバス・タクシーによっても広められた。

ゴムとクワイトでは、共通する所はありますか? どちらも南アフリカの音楽スタイルですよね。

Sphe:そうだね。クワイトが出てきた時のように、最初ゴムには悪い印象がついていた。ゴムも、クワイトのように、タウンシップ・キッズの実験で、音楽遊びだったし、音楽の流通は存在せず、いまでさえメジャーの企業は、つかまえることが出来ない。こういうことは今年は変わると思うけど。すべての動きは、洋服、タウンシップのスラング、ダンス、そして主に楽しい時間(歌詞は大体エクスタシーを含む)に関してで、ゴムは、自己表現の必要性から出て来たんだ。

ゴムはどのように広まっていったのでしょうか。

Sphe:ゴムは、特に、何人かのプロデューサー/ビートメイカーが、大きなレコードレーベルにサインしてから、少しずつ評判を得てきた。ミックス、マスターされてない、リッチなループをベッドルームで作る輩からのね。レーベルのAfrotainmentを通して、何年もかけ、全国に知れ渡った曲も少しはあったかな。そして2016年、この国の一番のヒット曲は、ゴムの「Wololo」だった。環境は変わり、ゴム音楽プロデューサーは、ベッドルームから抜け出し、いまでは、合唱音楽(聖歌隊)やヒップホップや他とコラボレーションしているよ。

ゴムは、純粋に南アフリカの現象ですか? それとも、南アフリカ以外の場所でも起こり得るのでしょうか?

Sphe:音楽には、地元のタッチが入っているけど、エレクトリック・ダンス音楽から影響されたもので、David Guettaのような、DJ/プロデューサーから広められた。

少し前に話題になった、シャンガーン・エレクトロとは関係ないのですか?

Sphe:南アフリカのタウンシップ(Soweto)で生まれたシャンガーン・エレクトロは、独自の発展を遂げたダンス音楽のスタイルで、地元のフォーク伝統を再現している。早いテンポで、ハードに、ハイパーに、電子的なニューウェイヴで、パフォーマーは、コスチュームやマスクを被ったりすることもある。プロデューサーのNozinjaによって世界的に広められたけど、ゴムとは直接関係してない。どちらも新しい動きだけどね。

ゴムDJのなかで、南アフリカ以外の、海外でプレイした人はいますか?もしいるならどこで、どのようなフィードバックがありましたか。

Sphe:Dj LAGは、ケープタウンのブラックメジャーによって、マネッジされていて、海外でもたくさんプレイし評価を得ている。事実上、地元では知られてないんだけど。The Rude BoyzとDj LAG に加えて、数人がこの4月にNYでプレイするよ。レッドブルに呼ばれてね。Spoek Mathamboも、音楽を海外に広めるのに重要な役割を果たしてる。僕は過去2年ぐらい、アフリカ中を旅をしたんだけど、南アフリカの音楽は、いつも取り上げられていて、Addis Ababa (Ethiopia) / Gaborone (Botswana)からRabat(Morocco)まで、ゴムはいつもプレイリストに入っていた。

ゴムでは、どのDJに注目すればいいですか?アップデートされたプレイリストはありますか?

Sphe:ほとんどどのアーティストは、www.audimack.comに載ってるけど、Datafile Hostからのリンクにもまだたくさんいるよ。チェックした方が良いDJは、Dj LAG, Dj Nkoh, Babes Wodumo (singer Wololo), Madanone, Rude Boys,Distruction Boys (producers Wololo), Sainty Baby, Nokzen, ManiqueSoulなどだよ。

どのクラブに行けば、キチンとしたゴム音楽が楽しめますか?

Sphe:Havana(ダーバン, CBD)、101(ダーバン, CBD)。

これから、ゴムはどうなっていくでしょうか。世界中から新しいトラックが出てくるのでしょうか。

Sphe:プロダクションの質は向上し、バトルも実験的なレベルで向上するだろうね。アフリカ中がそうなるのが見えるし、新しいダンスの形が伴うだろう。この動きには、たくさんの可能性があるし、メインストリームのディストリビューションを通して、簡単に世界中に広まるだろうね。

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質問作成&翻訳聞き手: Trond Tornes (phonofile)
https://phonofile.com/

質問作成 & 翻訳: Yoko Sawai

Shackleton & Vengeance Tenfold - ele-king

 すでにいくつかの名作と呼ぶべき仕事を残しているシャクルトン。これまでのその歩みを踏まえた上で彼はいま、いったいどんな試みを呈示してくるのか――次に進もうとするアーティストにとって、それまでの自身の履歴が枷として機能する場合があることは想像に難くない。前作から半年という短いスパンで届けられたシャクルトンの新作は、これまでも彼の作品に参加してきたスポークンワード・アーティスト、ヴェンジェンス・テンフォルドとの共同名義で発表された。はたしてシャクルトンはいま、自身の輝かしい履歴とどう向き合っているのだろう?
 彼は00年代半ば、〈Skull Disco〉時代に最初のピークを迎えている。ダブステップ全盛の頃に頭角を現し、実際にそのシーンにもコミットしていたシャクルトンだが、しかしその音楽はダブステップという枠組みを大きく逸脱するものであった。その間口の広さは例えば、ダークなサウンドとは裏腹にコミカルな雰囲気を醸し出していた一連のアートワークからも窺える。おそらくシャクルトン自身はことさらダブステップを志向していたわけではなく、彼の野心的な試みがたまたま当時ダブステップというフォーマットと親和性が高かったというだけなのだろう。だからこそ“Blood On My Hands”はリカルド・ヴィラロボスという「他者」を呼び込むことに成功したのである。
 そのヴィラロボスによるリミックスを契機に、彼の特異なベース・ミュージックはベルリン・ミニマルと邂逅することになる。シャクルトンは2009年に〈Perlon〉から『Three EPs』をリリースしているが、ハルモニア&イーノのぶっ飛んだリミックスもこの年で、これが彼の2度目のピークにあたる。その後、〈Honest Jon's〉から出たピンチとの共作で少し異なる方向性を模索したシャクルトンだが、続いて彼は「これでシャクルトンも落ち着くのか」と思い込んでいたリスナーの度肝を抜く『Music For The Quiet Hour / The Drawbar Organ EPs』(2012年)を発表する。アフロ・パーカッションだけでなく鍵盤打楽器やオルガン・サウンドを取り入れたこの大作で彼は、アフリカ音楽とミニマル・ミュージック(ヴィラロボス的なそれというよりは、テリー・ライリーやスティーヴ・ライヒ的なそれ)のエッセンスを吸収した独自のスタイルを築き上げた。これが彼の3度目のピークで、そのスタイルを踏まえつつそこに大々的に「声」という要素を付加してみせたのが、オペラ歌手を招いて制作された前作『Devotional Songs』だと言えるだろう。そして、そのような尖鋭的な試みの最新の成果として世に放たれたのが、本作『Sferic Ghost Transmits』である。
 冒頭の“Before The Dam Broke”からかましてくれる。カリンバとガムランのコンビネイションに誘惑され、美しいコーラスとテンフォルドの音声案内に導かれながらおそるおそる霧の立ち込める森の中へと分け入ったリスナーは、唐突に不思議なリズムのパーカッションと遭遇し、この音響空間が此岸からかけ離れた世界であることを察知する。ここは現実なのか?――「Pray for the real world」という意味深なフレーズ(もしかしたら2016年というエポックのことが念頭に置かれているのかもしれない)が反復される頃には時すでに遅く、リスナーはもう元いた場所に引き返すことができなくなっている。
 分節された音声やら素朴なオルガンやらガムランやらがトライバルなパーカッションをバックにせわしなく通り過ぎてゆく“Dive Into The Grave”や、もはやカリンバなのかガムランなのか区別がつかないくらいに高音が錯綜する“Five Demiurgic Options”もすさまじい。ライヒ的ミニマリズムとコーラスのかけ合いから始まり、キャッチーなベースのループを経てパーカッシヴなフェイズへと突入、最終的にはアブストラクトなムードで幕を下ろす大作“Sferic Ghost Transmits / Fear The Crown”も圧巻としか言いようがない。
 トライバルなパーカッション、蛇行するベースライン、鍵盤打楽器によるライヒ的ミニマリズム、その間隙に挿入されるスポークン・ワードやコーラス、オルガン――各々のエレメントそれ自体はすでにこれまでのシャクルトンの作品で採用されていたアイデアではあるが、このアルバムではそれらすべての要素が想像しうる最高の形態で有機的に共存させられている。
 シャクルトンはいま、自身の履歴との闘争に勝利した。これほど壮烈な作品を新たに自身の履歴に刻んでしまった彼は、これからいったいどのような道を突き進んでいくのだろう? いまからもう次作を聴くのが恐ろしくなってきている。

2017 DOMMUNE<02/14火>
■19:00-24:00 ele-king books Presents
戸川純歌手生活35周年バレンタイン5時間スペシャル
「戸川純全歌詞解説集」重版記念番組!「疾風怒濤きょうは晴れ」
LIVE:戸川純 with Vampillia 
DJ:テンテンコ(戸川純 PLAY ONLY) / BROADJ# BROADJ#2148
TALK:戸川純、宮沢章夫、三田格、野田努、Vampillia、おおくぼけい(アーヴァンギャルド)
テンテンコ、石塚BERA伯広(戸川純 / プノンペンモデル / VIDEO rODEO / 電車)

■約20年振りのメディアへの登場となる戸川純!歌手生活35周年記念番組!
ele-king books Presents DOMMUNE『疾風怒濤きょうは晴れ』
2016年に入って新たに3つのプロジェクトをスタートさせた戸川純。これまでのソロ活動に加えて、戸川階段、戸川純 avec おおくぼけい、戸川純 with Vampilliaと、それは多面的な方向性を示し、またしても多重人格的な動きになっている。さらには活動を再開させたTACOのライヴや年末に亡くなったピエール・バルーとも最後のデュエットを共にし、対バンの数も限りない。音楽だけでなく、蜷川幸雄に捧げた追悼文も大きな話題を呼び、初めて認めた短歌が年末の「歌壇100選」に選ばれるなど、文才も絶好調。年末には過去に書いた歌詞の解説集「疾風怒濤時々晴れ」もよく売れている。この度、DOMMUNEでは、そんな戸川純の歌手生活35周年を記念したバレンタイン5時間スペシャルを企画!!なんと、この番組は、戸川純自らの意思では十数年振りのメディアへの登場となる!!現在の活動について、音楽仲間や宮沢章夫らと語り尽くし、そして、なんと、歌手活動35周年記念盤「わたしが鳴こうホトトギス」を共に製作したVampilliaとライヴも実現!!!!史上空前のDOMMUNE5時間ブチヌキ戸川純スペシャル!!!超絶必見です!!!

「戸川純全歌詞解説集―疾風怒濤ときどき晴れ」 (ele-king books)
戸川純 with Vampillia「わたしが鳴こうホトトギス」

■2017 02/14 19:00-
● ENTERANCE : 2,500YEN
● OPEN : 18:50頃(第1部~第2部入れ替え無し! 番組途中入場OK! 再入場不可! BARあり!)
● 〒150-0011 東京都渋谷区東4-6-5 ヴァビルB1F / TEL : 03-6427-4533

Jacques Greene - ele-king

 いかにビッグになりすぎることなく成長するか。それが〈LuckyMe〉の野望である。すでにバウアーというスターを抱える同レーベルにとって、次にどんな手を打つかというのはきっと大きな問題だったに違いない。そんなかれらの手の内のひとつが、いま明らかになった。
 〈Night Slugs〉から巣立ち、これまで〈LuckyMe〉を軸に作品を発表してきたハウス・プロデューサー、ジャック・グリーン。レディオヘッドによるフックアップから5年半のときを経て、ついに彼のファースト・アルバムがリリースされることとなった。タイトルは『Feel Infinite』。一体どんなアルバムに仕上がっているのか、楽しみに待っていようではないか。

Jacques Greene
ジャック・グリーン待望のデビュー・アルバム
争奪戦必至のスペシャル・エディションで日本先行リリース決定!

〈Uno〉、〈3024〉、〈Night Slugs〉、〈LuckyMe〉といった気鋭レーベルからリリースしてきた諸作が高い評価を受け、『ピッチフォーク』の「Songs of the Decade」に選ばれた2011年の“Another Girl”、ハウ・トゥー・ドレス・ウェルをフィーチャーした2013年の“On Your Side”、2016年のクラブ・アンセム“You Can’t Deny”などヒットを飛ばしてきたジャック・グリーンが満を持してデビュー・アルバムをリリース!!

本作はクラブ・カルチャーの桃源郷的なアイデアがもとになっており、クラブによるクラブのためのクラブ音楽でる。いままでにレディオヘッド、サンファ、ティナーシェ、そしてシュローモといったアーティストとコラボ、またはリミックスをしてきたモントリオール生まれのジャック・グリーンが、2年以上の歳月をかけて制作した、キャリア史上最もパーソナルな感情表現に満ち溢れた作品。2016年にサプライズ・シングルとしてリリースしたソウルフルなテクノ・トラック“You Can’t Deny”や、ユーフォリックなキラー・チューン“Afterglow”などを筆頭にR&Bのヴォーカル・チョップは新しいクラブ・サウンドとしてグリーンの代名詞にもなったが、本作では原体験であるマスターズ・アット・ワークのディスコ文脈の影響を自らの作品に反映させ、2017年のハウス・ムードを予見する傑作がここに誕生した。また500枚限定の国内流通盤は世界に先駆け、3/17に先行リリース、ボーナス・トラックがDLできるスペシャル・カードが封入される。

Jacques Greene | ジャック・グリーン
モントリール出身、ニューヨークを経由し、現在はトロントを拠点とし活動するプロデューサー。〈LuckyMe〉をはじめ、〈UNO〉、〈Night Slugs〉といったレーベルからの諸作をリリース。『ピッチフォーク』「Songs of the Decade」に選ばれた2011年の“Another Girl”、ハウ・トゥー・ドレス・ウェルをフィーチャーした2013年の“On Your Side”、2016年のクラブ・アンセム“You Can’t Deny”などヒットを飛ばしてきた。さらには、レディオヘッド、ジミー・エドガー、コアレスなどへのリミックスの提供など、これまで数多くの作品を発表。2017年には待望の1stアルバム『Feel Infinite』をリリースする。

label: LUCKYME / BEAT RECORDS
artist: Jacques Greene(ジャック・グリーン)
title: Feel Infinite(フィール・インフィニット)
release date: 2017/03/17 FRI ON SALE ※日本先行発売

国内流通仕様帯付盤CD
BRLM41 / 解説書封入

[ご予約はこちら]
beatkart: https://shop.beatink.com/shopdetail/000000002143

[Tracklisting]
01. Fall
02. Feel Infinite
03. To Say
04. True feat. How To Dress Well
05. I Won’t Judge
06. Dundas Collapse
07. Real Time
08. Cycles
09. You Can’t Deny
10. Afterglow
11. You See All My Light
+ DL CARD

Dancehall - ele-king

 しっかし、なんでUKのゴシック/インダストリアルはダンスホールを目指す──のかね。まさかのRaimeまでもがダンスホールですよ。しかも90分カセットテープ。カセットは買わないと心に決めていたのだけれど、これには逆らえなかったです、下北沢ZEROにて購入。
 Raimeのファーストが大好きで、しかし昨年のセカンドのときには関心は失せていて、それでYally名義のEPはつまらなかったと三田さんから聞いて、自分のなかではもう終わっていたのだけれど、ダンスホールというキーワードに負けた。
 ここには、ジャマイカのパパ・サンやスーパーキャットといった大物MCのトースティング、あるいは80年代から90年代初頭にかけて一時代を築いたスティーリー&クリーヴィーのプロダクションをはじめとする28のリディムがカット&ミックスされている。これらの音源はその当時、まあたとえば日本でも大人気で、売れていたし、美容院でドレッドヘアにした女性がダンスするほどファッショナブルでもあったし、そのイメージするところは薄暗い墓場ないしは丘の上の古城からは1億光年離れていた。それがなんということか、2017年に〈ブラッケスト・エヴァー・ブラック〉系の新たな展開としてなんの違和感もなく、むしろその延長線上で聴けてしまうとは……。デムダイク・ステアの新作ほど実験的ではないが、これはいまUKのゴシック/インダストリアルにダンスホールというキーワードがあることを決定的に知らしめている。
 時代への深い疑問を抱えながら、暗闇のなかに見えるモノを追い求めていたらジャマイカに到着。面白いから聴いているけど、本当にどういうことだろうね。ロンドンの高橋勇人に「これ買ったぞ~」と自慢したら、彼も買っていやがった、デッキがないクセに。大量生産に反したゴシックよろしく限定版なので早い者勝ちですから。

Arthur Verocai - ele-king

 2016年の末、アジムスが5年ぶりの新作『フェニックス』で復活した。そして、同じくブラジルの伝説的アーティストであるアルトゥール・ヴェロカイも、新作『ノー・ヴー・ドゥ・ウルブ』を発表した。2016年にアルトゥール・ヴェロカイはジェイムスズーの『フール』にゲスト参加し、また2014年にはUKの〈ファー・アウト・レコーディングス〉のディスコ・プロジェクトであるファー・アウト・モンスター・ディスコ・オーケストラにフィーチャーされるなど、ところどころで彼の名前は目にしていた。しかし、自身の作品となると、2010年にUSの〈モチーラ〉からリリースされた『タイムレス』(録音は2009年)より7年ぶりのレコーディングである。ロサンゼルス録音の『タイムレス』は、アジムスのメンバーやアイアートなどブラジルの大物ミュージシャンから、ミゲル・アトウッド・ファーガソンまで幅広い面々が参加したライヴ・レコーディングだが、純粋な新曲に取り組んだ内容ではなかった。よってさらに遡れば、2007年に〈ファー・アウト〉から発表した『アンコール』以来の待望のスタジオ録音盤、およびブラジル録音となる。

 全てブラジル人のミュージシャンによるレコーディングで、メンバーも充実している。アジムスからアレックス・マリェイロスとイヴァン・コンチが参加するほか、ロベルチーニョ・シルヴァやダニーロ・カイミなどミナス出身の名ミュージシャンたち、映画俳優としても活躍するセウ・ジョルジらが集まっている。ちなみに、アジムスは『アンコール』でも演奏していたヴェロカイの盟友的存在であり、ロベルチーニョ・シルヴァも1972年のファースト・アルバム『アルトゥール・ヴェロカイ』と『アンコール』の参加メンバーである。従って『ノー・ヴー・ドゥ・ウルブ』は『アンコール』から繋がるところもあり、その『アンコール』が『アルトゥール・ヴェロカイ』の世界を2000年代に発展させた部分を持っていたので、この3作品にはどこかで通底するところがあるのではないだろうか。

 ヴェロカイの音楽的才能は、作曲家およびアレンジャーという部分に集約されるだろう。特にオーケストラの指揮・編曲の手腕が素晴らしく、TVや映画音楽から歌手やさまざまなアーティストの作品を手掛けた。イヴァン・リンス、セリア、マルコス・ヴァーリ、エリス・レジーナ、ガル・コスタ、アナマリア&マウリチオ、キンテート・テルヌラなどがその代表で、オーソドックスなブラジル音楽だけでなく、サイケ・ロックやアシッド・フォーク系のものまで幅広く手掛けた。フォークロアなアフロ・サンバに、ジャズ、ソウル、ファンク、ロック、ポップスなど欧米音楽の影響を取り入れた『アルトゥール・ヴェロカイ』は、ジェイムスズーやミゲル・アトウッド・ファーガソンがそうであるように、現代の多くのアーティストに影響を与え続けている。さまざまな音楽性を融合し、美しくもどこか屈折した感覚、グルーヴィーさとプログレッシヴさが入り混じった独特の音像、サイケデリックでスペイシーな空気を生み出すそのサウンドは、ヴェロカイのアレンジャーとしての才能があってこその産物なのである。

 『ノー・ヴー・ドゥ・ウルブ』を見ると、表題曲はまず秀麗なクラシック風のオーケストレーションに始まり、セウ・ジョルジの歌を女性コーラス隊が盛り上げていく。映画音楽などを手掛けてきたヴェロカイのコンサート・マスターとしての本領発揮と言える作品だろう。トランペット・ソロがフィーチャーされるインストの“スネーク・アイズ”では、ジャズ・アレンジャーとしてのヴェロカイの魅力が生かされている。例えるなら、〈CTI〉でデオダートがアレンジしたアントニオ・カルロス・ジョビンの『ストーン・フラワー』のようだ。ダニーロ・カイミが歌う“オー・ジュリアナ”、自身でヴォーカルをとる“オ・テンポ・エ・オ・ヴェント”は、まどろみのようなメロディが美しいドリーミーな作品。ギターやピアノに寄り添う優美なストリングスが印象的だ。古典的なサンバのスタイルに沿った“ミーニャ・テハ・テン・パルメイラス”はルー・オリヴェイラの歌で、ブラジル音楽が古来受け継ぐ哀愁が露わになっている。そうした哀愁は「サウダージ」という言葉で表現されるが、オーセンティックなボサノヴァ・スタイルの“デサンブロシャンド”からも「サウダージ」は滲み出る。

 一方、ヴィニシウス・カントゥアリアの歌とハーモニカをフィーチャーした“ア・オウトラ”にも、別の形で「サウダージ」な感覚は流れる。サンバにメロウなブラジリアン・ソウルが結びついた“オ・タンボール”も同様で、これらは欧米のメロウ・ソウルやジャズ・ファンクとブラジル音楽の融合である。『アルトゥール・ヴェロカイ』の“プレゼンテ・グレゴ”や『アンコール』の“ビス”といった人気曲に匹敵する作品と言えるだろう。マノ・ブラウンが歌う“シガーナ”はヒップホップ的なビートを取り入れた作品で、ヴェロカイが若い世代の音楽も柔軟に取り入れている証である。“ナ・マランドラジェム”はインストのジャズ・ファンクで、クラブ・ジャズとしても秀逸なナンバー。これらを聴くと、なぜヴェロカイが現在のアーティストや若い世代のリスナーからも高い評価を受けているのか、がわかるだろう。ヴェロカイは1945年生まれなので、既に70歳を超えているが、そんな年齢を感じさせないモダンな感覚は驚くべきことである。

ECD × 空間現代 - ele-king

 僕は買ったよ。かつて“言うこと聞くよな奴らじゃないぞ”に勇気づけられたから。もちろんそれだけじゃないけど、でもあの時代にあの曲が、僕(=小林)のようなうだつのあがらない人間たちの小さな救いとなったことは間違いない。そう確信しているから。

 現在がんで闘病中のラッパー、ECD。去る2月8日、彼とその家族を支援するべく空間現代がドネーション・アルバムを発売した。タイトルは『Live at Waseda 2010』で、2010年に早稲田祭でおこなわれた空間現代とECDとの共演ライヴが収録されている。
 アルバムは現在 Bandcamp にて購入可能となっており、今後空間現代の運営するライヴ会場などでCD-Rとしても販売される予定。制作費を除く売り上げの全額がECDに寄付される。


空間現代が、闘病中のラッパー・ECDを支援するため、ドネーション・アルバムを発売する。
2010年におこなわれ大きな反響を呼んだ、ECDと空間現代の早稲田祭でのコラボレーション・ライヴの音源を収録。
Bandcampにてデータ販売をおこなうとともに、空間現代のライヴ会場および空間現代が運営するライヴハウス「外」にてCD-Rでも販売予定。制作費を除いた売上の全額をECDに寄付する。

アーティスト:ECD + 空間現代
アルバム・タイトル:『Live at Waseda 2010』
https://kukangendai.bandcamp.com/album/live-at-waseda-2010

価格:1,000円(税込)
発売日:2017年2月8日
フォーマット:bandcampにてデータ販売、今後ライヴ会場にてCD-Rでも販売を予定

1. トニー・モンタナ + 関係ねーっ! × 通過
2. I Can't Go For That + Born To スルー × 痛い
3. ECDECADE + 天国ROCK × まだ今日
4. Rock In My Pocket + 地球ゴマ × 少し違う

○収録日
2010年11月7日(日)
《早稲田祭Live》
会場:早稲田大学早稲田キャンパス7号館218教室
企画者 小林伸太郎/録音 住野貴秋/PA 宋基文
○マスタリング:noguchi taoru
○ジャケットデザイン:古谷野慶輔

Wiley - ele-king

 Wileyが〈CTA Records〉から通算11枚目のスタジオ・アルバムをリリースした。このアルバムをレヴューする前に、彼がなぜグライムの「ゴッドファーザー」と自らを呼ぶに至ったか紹介したい。
 Wileyがのちにグライムと呼ばれる音楽の原型となるサウンド「エスキービーツ」を作りあげたのは、その語源となった「Eskimo」のリリースから数えれば15年前のことである。ファースト・アルバム『Treddin’ On Thin Ice』に収録されている“Wot Do U Call It?(なんと呼ぶ?)”では、彼のサウンドがガラージ、2ステップ、アーバンと呼ばれることを否定し、まだ名もなきこの音楽と「ともに行こう」とラップした。2001年頃からチャラいUKガラージが突然変異したようなサウンドを、自身のレーベルでリリースし続け、2005年に〈Boy Better Know(BBK)〉に加入した。〈BBK〉には昨年マーキュリー賞を受賞したSkepta、JME、Jammerなど今のグライムを牽引するMCが所属している。Wileyはエスキービート、そして「グライム」と呼称される重たく凍えるような、チープでメロディックなサウンドを作り上げた。

 しかし、Wileyのキャリアはそのあと順風満帆ではなかった。

これが俺たちが今いるところだ
クルーの皆はまるで、トンネルの中みたいだ。
ファミリー、それこそが俺たちの気にかけることだ。
文字通り、レーベルがくれる金なんて無い、クソだ。
全く意味がない。
[“Speaker Box”冒頭のSkeptaの言葉]

 このSkeptaの言葉は、メジャー・レーベルから支持されない音を作ろうとするWileyの苦悩とも重なる。
 2011年に表現を取り戻すべくメジャーを離れ、「Stepフリースタイル」シリーズを開始、Twitterでフリー・ダウンロードで20曲を公開した(*1)。
 今回のアルバムはこの「Stepフリースタイル」シリーズを思い出させる。レーベルと関係なく「やっていく」インディペンデントな姿勢を感じるとともに、「Stepフリースタイル」にトラックを提供した若き才能あるプロデューサー、Preditahや盟友Dot Rottenは今作にも参加し存在感を放っている。
 トラックは全体的にトラップらしいラウドなビートとグライムの定番ホーンやベースラインが重なり、時折無国籍なメロディが顔をのぞかせる。

俺の顔を覗き込むなら、ボスを目にするだろう
クラウドの側を見るなら、モッシュを目にするだろう
ボブ・マーリーとピーター・トッシュのようにやる
これがスピーカーボックスのエスキーボーイ
[“Speaker Box”]

 Rap Geniusで歌詞を読んでみると、全体的にギャルやブリンブリンのアクセサリーといったテーマは控えめで、代わってどのように他のMCより優れているか、そして音楽を作り、成り上がったかについてラップしている。
 前者はグライムのクラッシュ(レゲエから影響を受けたMCバトル)にあるような、MC同士が切磋琢磨する文化から来ているだろう。後者は純粋にWiley自身の真面目さからきているように思える。アルバムの後半、TR.15“Lucid”やTR.16“Laptop”では、彼自身が10代の頃からノートパソコンで曲を作り、フリー・ダウンロードで公開することなど、インターネットを用いてファンに音楽を届けることを大切にする真摯さが伺える(*2)。
 MCの客演では、TR.11“On This”でフィーチャーされたIce Kidが良い。彼は十代の頃からWileyにフックアップされているが、フローのテクニカルさが客演陣の中でも際立っており、140というスピードの奥深さを感じさせる。また、TR.07“Pattern Up Properly”でフィーチャーされたJamakabiのパトワ混じりのMCも一周して今っぽくて好きだ。

Wiley、Chip、Ice Kidが出演するWestwood TVのビデオ(2007年)

 同世代、後続のMCやプロデューサーを刺激し、シリアスに音楽をやり続けるワイリー。
 「この音楽をやっていこう」、彼が2004年に発したメッセージとアクションがこのアルバムに結実した。

(セールスの)数字を俺たちに言ったって意味ない
俺たちは彼らを見ているからだ
俺たちが経験してきたことなんて
今のキッズは経験する必要のないやり方で
このことに没頭しているんだ。
[“Speaker Box”最後のSkeptaの言葉]

*1 ちなみに、このシリーズの“Step 20”はZombyが近年リメイクし、「Step 2001」として〈XL Recording〉からリリースされた。
*2 ちなみにWileyは以前インタヴューで、“Eskimo 2 (Devils Mix)”が収録されたレコードのヒットで車を買ったと話している。ブリティッシュ・ドリーム!

MNDSGN×Ryu Okubo - ele-king

 昨年〈ストーンズ・スロー〉からアルバムをリリースした、MNDSGN (マインドデザイン)。オオクボリュウがミュージック・ビデオを手掛けたことでも話題になりました。この度、INS Studioでは、MNDSGN の来日を記念して、2017年2月17日 (金) から2月21日 (火) までのあいだ、展覧会「Ryu Okubo EXHIBITION "Alluptoyou"」を開催します。MNDSGN「Alluptoyou」ミュージックビデオのためにオオクボが描いた、1000枚に及ぶエアブラシ原画や、絵コンテ、制作道具を展覧いたします。展示中の原画はすべて購入可能なほか、MNDSGN 関連のLP、CD、Tシャツなどの販売もあり。

オオクボリュウの原画展が開催!
1000枚に及ぶエアブラシ原画や、絵コンテ、制作道具を展覧
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Ryu Okubo EXHIBITION "Alluptoyou"
- Artwork from the Mndsgn & Stones Throw Music Video -
2017年2月17日(金)– 2月21日(火)
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Ryu Okubo EXHIBITION "Alluptoyou"
- Artwork from the Mndsgn & Stones Throw Music Video -
会期: 2017年2月17日 (金) - 2月21日 (火)
時間: 12:00 ‒ 20:00
会場: INS Studio (東京都渋谷区円山町 28-8 B1F)
入場料: 無料
URL: ins-stud.io
協力: SPACE SHOWER NETWORKS INC.

Sendai - ele-king

 最近、『ピッチフォーク』がIDMのベスト50を特集したのだが、それを眺めていて思わず「懐かしい」という気分になり、自分でも驚いてしまった。最近作も入っているのだけれど、やはり00年代初頭のアルバムが目立つ。いやはや、ゼロ年代の電子音楽も懐古の対象になったというべきか。かつての最先端も歴史化したというべきか。プレフューズ73のセカンド・アルバム・ジャケットをこんな気分で見ることになるなんて、00年代初頭には思いもしなかった。しかし、15年前となれば、今の30歳が15歳のときだ。時は流れる。人は等しく歳をとる。

 だが、「歴史化した」ということは、半端な古さが消え去り、新しい時代のモードとして再利用(リサイクル/リバイバル)される時期になったという意味でもある。20年という期間はリバイバルにはちょうどいい「寝かしどき」だ。90年代から00年代初頭のIDMが、2016年あたりから、また再活用されてはいないか。セコンド・ウーマンしかり。ベーシック・リズムしかり。ダークなインダストリアル/テクノの潮流がひと段落ついた後だからこそ、あの時代のミニマルな音響工作が、見直され/聴き直されつつあるということなのだろうか。このセンダイも、そういったIDMリバイバルの一端に組み込むことは可能だ。

 センダイは、ベルギーはブリュッセル出身・現ベルリン在住のミニマル・テクノ・アーテティスト、ピーター・ヴァン・ホーセンと、同じくベルギー出身のサウンド・アーティスト、イヴ・ド・メイのユニットである。これまで〈タイム・トゥ・エクスプレス〉から『ジオトープ』(2012)、ピーター・ヴァン・ホーセンとイヴ・ド・メイが主宰する〈アルシーヴ・アンテリュール〉から『ア・スモーラー・ディヴァイド』などをリリースしており、『グラウンド・アンド・フィギュア』はサード・アルバムとなる。
 昨年は、いささかリリース・ラッシュ気味だったイヴ・ド・メイ(アルバム『ドローン・ウィズ・シャドウ・ペンズ』とEP『レイト・ナイト・パッチング 1』を発表した)だが、このセンダイでは、ソロでは聴くことができないIDM/テクノなサウンドを展開している。もしかすると、ピーター・ヴァン・ホーセン主導のサウンドなのだろうが、そこにイヴ・ド・メイ的な音響工作が良いアクセントになっている。
 つまり、このマシニックで、トリッキーで、クリッキーなサウンドは非常に心地よいのだ。1曲め“002 Archiefkwestie”からして、細やかで精密なビート・プログラミングに、清潔なアンビエントのアトモスフィアまで兼ね備えた見事なトラックで、高品質な仕上がり。

 また、“Apopads”、“Perfect Boulevard Exclusive”、“W180215Yves-PVH-R”などのトラックは、ドローンやノイズの扱いなどエクスペリメンタル/インダスリアルなムードもあるが、しかし、過激さ・過剰さの一歩手前で留まるような全体のバランス感覚が絶妙である。
 アルバム全体として、まるで漂白されたようなホワイト・ミニマルな質感を維持しており、ビートの入ったインダスリアルな環境音楽としても機能しそうなほどに端正な仕上がり。本作のリリースは〈エディションズ・メゴ〉だが、ルーシー主宰の〈ステレオフォニック・アーティファクト〉的な精密なマシン・ミニマル・テクノなのである。近年のIDMアルバムの中でも、ひと際、優れた作品に思えた。

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