Home > Reviews > Sound Patrol > Dancehall- Raime - Reel Torque: Volume 13, …
しっかし、なんでUKのゴシック/インダストリアルはダンスホールを目指す──のかね。まさかのRaimeまでもがダンスホールですよ。しかも90分カセットテープ。カセットは買わないと心に決めていたのだけれど、これには逆らえなかったです、下北沢ZEROにて購入。
Raimeのファーストが大好きで、しかし昨年のセカンドのときには関心は失せていて、それでYally名義のEPはつまらなかったと三田さんから聞いて、自分のなかではもう終わっていたのだけれど、ダンスホールというキーワードに負けた。
ここには、ジャマイカのパパ・サンやスーパーキャットといった大物MCのトースティング、あるいは80年代から90年代初頭にかけて一時代を築いたスティーリー&クリーヴィーのプロダクションをはじめとする28のリディムがカット&ミックスされている。これらの音源はその当時、まあたとえば日本でも大人気で、売れていたし、美容院でドレッドヘアにした女性がダンスするほどファッショナブルでもあったし、そのイメージするところは薄暗い墓場ないしは丘の上の古城からは1億光年離れていた。それがなんということか、2017年に〈ブラッケスト・エヴァー・ブラック〉系の新たな展開としてなんの違和感もなく、むしろその延長線上で聴けてしまうとは……。デムダイク・ステアの新作ほど実験的ではないが、これはいまUKのゴシック/インダストリアルにダンスホールというキーワードがあることを決定的に知らしめている。
時代への深い疑問を抱えながら、暗闇のなかに見えるモノを追い求めていたらジャマイカに到着。面白いから聴いているけど、本当にどういうことだろうね。ロンドンの高橋勇人に「これ買ったぞ~」と自慢したら、彼も買っていやがった、デッキがないクセに。大量生産に反したゴシックよろしく限定版なので早い者勝ちですから。
野田努