「R」と一致するもの

弓J (S) - ele-king

新譜中心にハウス寄りで選んでみました。ダビーハウスやモダンミニマルハウスなど、ダンスミュージックとしてもリスニングとしてもいける、色々なジャンルを絶妙バランスで飲み込んだ10曲。
気づけばヴァイナルオンリーでリリースされてる曲が多めです。

「S」@KOARAを主催。
6/15には「HOUSE OF LIQUID」のKATAフロアにSクルーで出演します!

DJスケジュール
6/5 @bar Jam https://barjam.jp/
6/14 @KOARA https://www.koara-tokyo.com/
6/15「HOUSE OF LIQUID」@Liquidroom & KATA https://www.liquidroom.net/
6/18 @KOARA https://www.koara-tokyo.com/
6/19 @NOS ORG https://org.nos-tokyo.com/
twitter https://twitter.com/00000yumiJ00000
S blog https://ameblo.jp/s-3djs/

絶妙 10 2013.5.25


1
U-More - Paprika - U-More

2
Sonodab - Sativa(Ivano Tetelepta & Roger Gerressen Remix) - Trazable

3
Bipolardepth - Cammeo - Udacha

4
Scott Kemp - Neptis - Hypertone

5
Yuri Shulgin - Beluga - Black Wall

6
P.Laoss - Play My Music - Waehlscheibe

7
Reilg - Derailed(Tilman Tausendfreund Remix) - Lofile

8
Unknown - Forever - Shh!

9
Volta Cab - Affelay In Trouble - Glenview

10
Brandt Brauer Frick Ensemble - Mi Corazon(Horror Inc. Echoes of My Love Remix) - !K7

Mark McGuire - ele-king

 心地よくレイドバックした2011年の『ゲット・ロスト』とくらべ、新作『アロング・ザ・ウェイ』はいくらかドラマチックで、ユーフォリックなアルバムだ。曲によっては、彼の師のひとり、アシュラ(マニュエル・ゴッチング)の『ブラックアウツ』(1977年)を彷彿させる。マーク・マグワイヤはギター・ソロを弾きまくっている。アルバム全体ではない。ときを見計らって、ある曲のある時間帯のみにそれは噴出する。
 このアルバムを僕がまだ聴く前、橋元は「スピってます」という謎めいた言葉を発していたのだが、マグワイヤ自身が記したライナーノーツを読んで意味が解せた。『アロング・ザ・ウェイ』はスピリチュアルな作品だ。 
 マーク・マグワイヤに限らず、パティ・スミスからフライング・ロータスまで、アメリカのミュージシャンがスピることは珍しくない。1ドル紙幣からしてスピっている(ダビデの星、ピラミッド、etc)。いや、「スピる」などという言葉を使うのは止めた。『アロング・ザ・ウェイ』のマグワイヤは、感情をコントロールしながら、自然の崇高な美しさと人間との関係を捉えようと立ち向かっている。大きな主題を持った作品だ。

 マーク・マグワイヤは、2010年の〈エディションズ・メゴ〉からの『リヴィング・ウィズ・ユアセルフ』のときから、家族を曲の主題にしていたし、その背後には、言わば宗教的な愛の主題も内包していたと言える。お涙ちょうだいの家族愛ではない。超越的な愛だ。
 日本では批判された『ツリー・オブ・ライフ』がその年『TNT』が選んだ映画のベスト・ワンだったことを思い返しても、日本とアメリカでは何か現象学に関する意識の差があるのではないかと思うのだが、ともかく、『アロング・ザ・ウェイ』のマグワイヤの文章は、そのままテレンス・マリックの生命の物語をなぞっているようでさえある。地球の誕生、燃えたぎる地下のマグマ、ジュラ紀、恐竜、それから......アメリカの退屈な町の平凡な家庭の「父親」へと話が展開する。そして、地球規模でいえばほんの瞬間でしかない現代文明から関心をずらして、この大地と人間(生物)との関係性へと重点を移動させる。このアルバムには、あの映画のコンセプトと重なる点が多々ある。

 とはいえ、過去のトラウマを克服するかのような『ツリー・オブ・ライフ』におけるクラシック音楽と断片的なナレーションの重さと違って、『アロング・ザ・ウェイ』の音楽的な魅力は、楽曲の繊細な優しさにある。曲によってはハウス(ディスコ)のリズムまで挿入されているが、アンビエント・ミュージックとしての開かれた感覚は通底している。瞑想的と言うよりも、ある種の軽快さがあり、70年代のスピリチュアル・ジャズと呼ばれる音楽の多くが平穏な響きを有しているのにも似ている。そもそも「父親」は、マグワイヤにとってのトラウマではないだろう。

KMFH - ele-king

 写真が物語っている。湖に近いデトロイトでは、ボート(通常、ヨット)の所有者が多く、ボートを使ってのパーティ、文字通りのボート・パーティが頻繁に開かれる。ボートを所有し、ボート・パーティを開くのは、限られた金持ちだ。デトロイト新世代を代表するカイル・ホールは、寒い岸辺に捨てられたボートの上に佇んでいる。その寂れた光景からはデトロイの新たな衰退が見える。中産階級の衰退だ。

 カイル・ホールに何を期待していたのだろう。うっとりするような荒廃の叙情詩? ケニー・ディクソン・ジュニアのファンクネスを継承する色気のあるモダン・ブラック・ミュージック? 『ザ・ボート・パーティ』を聴いてまず耳に入るのは、その低解像度な音、ペラペラなビート、リズム、リズム、リズムだ。デトロイト(あるいはロン・ハーディ系の......と言えばいいのかだろうか、DJエイプリル!)のトレードマークである生々しいEQ操作、ま、とにかく、リズムが耳に入る。それから生々しいエフェクト操作。初期のセオ・パリッシュやムーディマン的なディスコ/R&Bサンプリングは控えめに、オーディオ・ファンが怒りそうなほどのシャカシャカしたハイハットが耳に付く("ザ・ビギニング"を思い出す)。ドライなマシン・ビートがひたすら反復する。生々しいツマミ操作によって。

 "Dr Crunch"のような曲には、カール・クレイグの"マイ・マシン"を感じる。マシン・ファンク......、が、メロウな感覚は背後にまわされ、表に出てくるのはとにかくリズム、リズム、リズムだ。それは生命のようにシャカシャカ鳴り続け、ディープにハマる"Spoof"では、メーターは振り切れて、音が余裕で歪んでいるし......。
 面白かったのは、シカゴのゲットー・ミュージックとの共通感覚があることだ。"Flemmenup"や"Finna Pop"を聴いてしまうと、RPブーのデビュー・アルバムとの音楽的な繋がりを感じざるえない。いわゆるゲットー・サウンド。どすんどすんと野太いビートを鳴らす"Crushed"などは、いにしえのロバート・アルマーニみたいだが、しかし、1990年代の〈ダンス・マニア〉とはやはり展開が違っているのだ。なんだかエネルギーがみなぎっているし、「これでいいじゃないか、やっちまえ」という思い切りの良さもハンパない。

 今日、インターネットをめぐる音楽文化は、言うなればデュシャンの便器が無数に並んでいるようなものだ。さあ、これがアートだ。おまえがそう思いさえすれば。ヴェイパーウェイヴはその象徴的な事例であり、問いかけだと受け取ることができるだろう。『ザ・ボート・パーティ』は「変わっていく同じモノ」である。つまりこれは、逆さの便器ではない。

Volcano Choir - ele-king

"ウッド"と題されたボン・イヴェールの隠れた名曲を知っているだろうか。ボン・イヴェール=ジャスティン・ヴァーノンがひとりでひたすら「僕は森のなかにいて 自分の心を責めている/静寂を作り上げて ときを緩やかにする」とヴォコーダー・ヴォイスで繰り返すゴスペル・ナンバーで、すなわち、雪に閉ざされた孤独がそこではひっそりと震えていた。そのナンバーは、前身をペレとするポスト・ロック・バンド、コレクションズ・オブ・コロニーズ・オブ・ビーズとジャスティンが組んだ新バンド=ヴォルケーノ・クワイアで、"スティル(静けさ)"と名前を変えられて再演されている。そこではまるで、雪が一斉に溶けて新しい季節の訪れを告げるように......静寂から狂おしいほどの昂ぶりまでが、ダイナミックで叙情的なバンド・アンサンブルとなって奏でられていた。その曲が収められた彼らのファースト・アルバム『Unmap』の、その実験的ポップス、美と熱の掛け合いは当時の編集長も感動させ、それはweb版ele-kingの記念すべき一本目のレコメンド・アルバムとなった......。
 そして、どういうわけかアメリカよりも日本で初の実現となった、ライヴ・ツアーでの生の演奏の素晴らしさも足を運んだひとならば頷いてくれるだろう。ヴォルケーノ・クワイアの音にはどこか、地面を触ったときの温かさや光を見たときの眩しさのような、非常にロウな感触がある。

 そのヴォルケーノ・クワイアがセカンド・アルバムを出すというのだから、ele-kingが盛り上がらないわけにはいかない。ジャスティンは時折、「ヴォルケーノ・クワイアは"ボン・イヴェールのメンバーのサイド・プロジェクト"じゃなくて、"バンド"なんだ」と苛立ちを露にしているが、その通り、ヴォルケーノ・クワイアは紛れもなくバンドである。コレクションズ・オブ・コロニーズ・オブ・ビーズのポスト・ロックの素地に加えて、ジャスティンのゴスペル/ソウルやフォークにアンビエント、(USアンダーグラウンドではけっこう有名な)ジョン・ミューラーのドローン、(オール・タイニー・クリーチャーズの)トーマス・ウィンセックのシンセ・ポップにエレクトロニカ......が織り込まれ、融合している。



 彼らの盟友の映像作家、ダン・ヒューティングが監督したオフィシャル・トレーラーにはこのバンドのあり方がよく表れている。つまり、アメリカの片田舎の素朴で親密なコミュニティと、つねにそこにある自然を前にした際のどこか厳粛とした心情だ。そしてそこで流されるのは......バンドの徴である雄弁なギター・ワークと逞しいアンサンブル、そして、より率直にエモーショナルになったジャスティンの歌唱。さらにダイレクトに、パワフルになった音が到着するに違いない。アートワークも素晴らしい。
 セカンド・アルバム『Repave』は9月発売、もちろん<ジャグジャグウォー>から。日本でのライヴで自信をつけたバンドは、アメリカ・ツアーも予定している。そして......。いや、まだ何もわかっていないが、美しい思い出による感傷と期待をこめて、2010年の日本でのライヴの映像も紹介しておこう。



Vol.8 『BioShock: Infinite』 - ele-king

 


Bioshock Infinite
テイクツー・インタラクティブ・ジャパン

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 皆さまこんにちは、NaBaBaです。今回は『BioShock: Infinite』のレヴュー。前回の『Dishonored』に引き続き、〈Looking Glass Studios〉(以下LGS)特集としていままで勿体ぶってきたわけですが、ついに書くときが来ました。

 4月25日の国内発売からここ1ヶ月、メディアからは絶賛の嵐でしたが、僕の身のまわりでも本作は大きな話題になり続けていました。僕自身も2回クリアし、今日まであれこれ考えを巡らせていたのです。それぐらい本作は事件性の強い作品だったのですね。

 この『BioShock: Infinite』は、Ken Levine率いる〈Irrational Games〉の最新作。前回ご紹介した『Dishonored』や『Deus Ex: Human Revolution』等と同じく、いまは亡き〈LGS〉の遺伝子を備えた作品ですが、とくに99年に発売された『System Shock 2』との繋がりが深い。『System Shock 2』はKen Levineの実質デビュー作であり、以降のいわば『Shock』シリーズは、〈2K Marin〉が開発した『BioShock 2』を除き、氏が一貫してディレクターを務めています。

 彼が手掛けるこの『Shock』シリーズは他の〈LGS〉系の作品とシステム的に共有している部分が多々ありますが、一方で主観視点での没入型のストーリーテリングに重きを置いている点が、他とは異なる特徴になっています。

 99年の『System Shock 2』は、当時最新鋭だった『Half-Life』的なサヴァイヴァル演出を基調としつつ、オーディオ・ログや成長システムなどRPG的な要素も盛り込んだ傑作。ここでできあがったゲーム・システムの骨子は後の『Deus Ex』や『Dishonored』にも引き継がれています。

『System Shock 2』はGOGの他、今月からSteamでの再販も開始された。

 続く07年の『BioShock』は、ゲーム的には前作と比べより即興重視になり、ストーリーテリングも前作同様、閉鎖空間でのサヴァイヴァルを基本にしつつ、ビデオ・ゲームの一方的な側面とそれを疑わないプレイヤーの関係をメタ的に批判する表現も盛り込んだ、やはり当時を象徴する傑作でした。

 
『BioShock』は海中都市というケレン味溢れた世界観も特徴で、このコンセプトは『BioShock: Infinite』では空中都市という形で引き継がれている。

 こうした流れのなかにあって『BioShock: Infinite』はいままで以上に物語重視の作品となることが予告されていました。彼のいままでの作風と実績、またここ数年の主観視点の表現の停滞感に、何か一石を投じてくれるに違いない、もしかしたら『Half-Life 2』に匹敵する革新性を見せてくれるのではないかという期待感を業界全体に募らせていたと思います。

 はたしてその期待は実現したのでしょうか。メディアの評価を見る限りはあちこちで大絶賛ですが、一方で海外のファン・コミュニティの間ではかなりの物議を醸しているという話も聞きます。

 じつは僕もファン・コミュニティの反応は納得できてしまう。本作は確かにめちゃくちゃすごい。極まっていると言ってもいいぐらいです。しかし逆に極まっているからこそ、手放しには褒められない今世代のFPS全般にまたがる、宿命的な問題を感じたのです。今回のレヴューではその点を中心に論じていきたいと思います。

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■物語の高度化がゲーム・プレイとの間に乖離を起こす

 いきなり結論から言ってしまえば、『BioShock: Infinite』は、『Half-Life 2』型FPSの到達点であると同時に限界点でもあると言えます。本作には今世代のFPSが『Half-Life 2』を起点として方々で進化発展させてきた表現手法が、まさに全部入りという感じで濃縮されています。しかしそうであることが、この表現手法が構造的に持っている弱点をいままでになく際立たせてもいるのです。

 何より本作は、前評判どおりに物語が非常に強くクローズ・アップされており、『BioShock』以前のサヴァイヴァルを主眼にした内容から、囚われの少女との空中都市からの逃避行という、よりヒロイックで劇的な演出を盛り込んだものに変化しました。なおかつ既存の様式に縛られない、FPSとしてはかなり複雑なシナリオとテーマを描いているのも特徴です。

 また物語をプレイヤーに体感させるためのギミック、リアリティを裏打ちするための世界観構築も超一流で、今世代のゲームの一側面である「体験する映画」としては、最上級のものであることに異論の余地はありません。

 
空想世界の作り込みは圧倒的で他の追随を許さない。

 しかしその反面、『Half-Life 2』型のゲーム共通の課題も本作には見られました。そのなかでももっとも深刻に感じたのが、物語が高度になり見た目のリアリティが増すにつれ、実際のゲーム・プレイにおけるリアリティとの乖離が顕著になるという問題です。

 本作の主人公のBookerやヒロインのElizabethはFPS史上最大級とも言える緻密な人物造形がされており、リアリティを表現するための演出も幾重にも散りばめられています。そのなかには戦闘で深手を負ったBookerをElizabethが介抱するシーンもあり、そこで巻いてもらった包帯はゲームの最後までつけていくことになるのです。

 負った傷は現実ではそうすぐには治らない。そういうことを象徴しているかのような演出ですが、しかしいざ戦闘になるとBookerは結局他のゲームと変わらず、アイテムで何度でも回復し、ひとりで何百という敵を倒す超人になってしまうのです。しかも本作はそのあたりにある食べ物でも回復できるため、状況によってはひたすら拾い食いして回復しまくるというシュールな事態にもなってしまう。せっかくの演出もこれでは興ざめです。

ファンが作ったパロディ・ムーヴィー。本作の仕様を面白おかしく皮肉っているが、問題の本質を鋭く抉ってもいる。

 とりわけ本作はインドアの複雑な攻防が主体だった前作から一転し、大量の敵を相手にするアクション重視のゲーム性になっており、これもまた現実離れ感に拍車を掛けています。

 こうした現象は本作に限らず、およそ現代のすべてのゲームに見られる問題であります。いままではそれをゲームのお約束として見てみぬふりをしてきたわけですが、『BioShock: Infinite』レヴェルになると物語も見た目も素晴らしいがゆえに、いよいよ見過ごせない違和感が生まれてきたと感じます。

 この問題に関連性がある話として、Ken Levineはインタヴューで「FPSにおける戦闘は映画のミュージカル・シーンのようなもの」と語っています。彼のその考えが反映されているのか、本作も中盤までは戦闘時と非戦闘時がかなり明確に分けられています。舞台となるコロンビアの街並を、インタラクティヴな仕掛けとともに眺め歩く時間がしばらく続いたと思ったら、ある瞬間いきなり戦闘になり、それ以降は再び切り替わるまでずっと続くのです。

 
それまで平和だったのが突然阿鼻叫喚の場面に。こうした転換はたびたび見られる。

 ここには敢えてお約束感を強調することで、そういうものとしてプレイヤー側に受け入れさせるような意図を感じました。しかしそれは物語とゲーム・プレイとの一致という点では一種の敗北ではないのでしょうか。

 また後半でコロンビアがほぼ戦争状態になり、ゲーム的にも戦闘が占める割合が増えてくることで上記のような不和は若干解消されていきます。しかしそれはそれで、やはりFPSでゲーム・プレイと物語を一致させようと思ったら戦争を描くしかないという事実に、残念な気持ちにもなるのです。

■守るべきなのに守る必要が無いヒロイン

 こうした問題点を解決する一発逆転的なものとして、僕はElizabethというコンパニオン・システムにいちばんの期待を寄せていました。うまくいけば彼女の存在が接着剤となり、物語とゲーム・プレイの一致を果たしてくれるのではないかという期待があったのです。

 少なくとも彼女は物語的にはとても重要な役割を発揮して深みを与えているし、健気だけど危うさも感じるキャラクター像も魅力的。恐らく洋ゲー史上最も可愛く、ある意味日本の美少女像に近づいたキャラだと思います。要するに守ってあげたい気持ちになるのです。

 
洋ゲーのヒロインがこんなに可愛いわけがない、と真面目に思ってしまうぐらいElizabethは魅力的。

 またAIとして見た場合も、彼女の行動にいっさいの破綻がないのは、これまでのコンパニオンの歴史を考えると感慨深い成果と言えます。広く高低差が激しいマップをプレイヤーが縦横無尽に駆け巡っても、しっかり後についてくる点などは素直に驚きました。FPSで初めてコンパニオン・システムを導入し、歴史に残る大爆死を遂げた『大刀』の登場から苦節13年。コンパニオンはついにここまで成長しました。

 しかしここまでは素晴らしいのに非常に残念でならないのは、彼女をゲーム・システムとして見た場合、存在意義が希薄なことです。彼女は無敵なので敵にやられる心配はいっさいなく、なおかつ直接戦闘に加勢してくれるわけでもありません。かわりに戦況に応じてアイテムをくれたり、プレイヤーの指示で別次元から戦闘をサポートするギミックを呼び出してくれるのですが、これがあまりよろしくない。

 一見すると有能のようにも感じますが、プレイヤーが彼女の能力発動を完全にコントロールでき、またリスクもまったく無いわけです。これではほとんどプレイヤー自身の能力の一部といった感じで、独立した他者というイメージが弱い。わざわざコンパニオン・システムにしている意味が感じられません。

 
別次元のものを呼び出す超能力のTearは、便利すぎてElizabethがやってくれることの意味がほとんど無い。

 おそらくコンパニオンがプレイヤーの足を引っ張る事態になるのを避けたのでしょう。駄作の代名詞『大刀』を例に挙げずとも、なまじコンパニオンをプレイヤーに近い立場にしたばかりに、すぐ死んだり不用意に戦況を掻き乱したりして、最早コンパニオンのお守りをするのがメインみたいな、破綻したゲームは枚挙に暇がありません。

 本作はそんな先人を教訓にして、徹底して面倒が掛からないコンパニオンを目指したのでしょうが、逆にお利口すぎて存在感があまり無いという、何とも皮肉な事態になってしまっています。

 じつはここにもまた物語とゲーム・プレイとの乖離が生じているのにお気づきでしょうか。本作の物語でElizabethは守るべき存在であることが何度も強調されます。しかしゲーム・プレイの面では守るどころかまったく気にかける必要がない。この矛盾により物語への感情移入がし難くなり、ゲーム・プレイでの彼女との関わりは淡白なものになってしまっているのです。

 僕の意見としては、やはりストレスが生じるリスクを多少踏んででも、Elizabethを守ったりいたわるような要素がゲーム・システム的に必要だったと思います。むしろこんな可愛いキャラならお守りしてあげてもいいと思わせるぐらいの開き直りが見たかった。それができればプレイヤーにより深い感情移入を促し、物語とゲーム・プレイを一致させる文字どおりの革新になり得たかもしれないのです。

 結局のところ、僕にとってElizabethにもっとも興奮させられたのは発売前のトレーラーでした。能力の使いすぎで息も絶え絶えになっていたり、敵に連れ去られそうなのを必死に抵抗していたり。そんな危うさをプレイヤーが守ってあげる、それが楽しくできるゲーム・デザインというのが、本作がすべき挑戦だったと思わずにはいられません。

大変驚かされたE3 2011でのゲーム・プレイ・デモ。Elizabethに限らず、このとき見られた要素の多くが製品版では無くなったりスケール・ダウンしてしまったなぁ。

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■まとめ

 ゲームを含めたコンテンツへの評価軸は、完成度と革新性の2種類があると思います。『BioShock: Infinite』は、完成度の観点から見ると非常に高く評価できる作品です。それはまさに今世代の集大成と言っていい仕上がりであり、これまでのFPSの歩みを感じさせるとともに、その一歩一歩を最高品質で結実させていて感動的。これだけでも本作は傑作の称号を得るにはあり余る成果を上げています。

 一方、その輝かしい歩みの陰で、物語とゲーム・プレイとの乖離という問題は、本作の下ではもはや見逃せないばかりに膨らんでおり、目前には暗く厚い雲がたちこめています。僕はこの行き止まりをさらに突き破ってくれることを本作に期待していましたが、しかしそこまでの革新性を示すまでには至らなかった。そこが本当に残念でした。

 ある意味、本作はいまの時勢を象徴しているとも言えるでしょう。05年のXbox 360の登場によりはじまった今世代機の歴史は、いままさに終わりを迎える直前で、今年の年末にはいよいよ次世代機がリリースされる機運が高まってきています。本作は、そんなハードの事情と歩調を合わせて、今世代のFPSの終焉を告げているような気もします。

 次世代のFPSはどうなるのでしょうか。誰しもが予想できるのが、よりグラフィックスや演出が強化されていく方向性だと思いますが、そんな単純な拡張主義が続く限りは、本作が到達したその先に行くことは本質的に不可能だと思います。必要なのは発想の抜本的な転換であり、それによってゲーム・プレイと物語との乖離が解消されて初めて、FPSの真の次世代がはじまる気がします。

 それまでしばらくは、本作を覆う暗く厚い雲が、ゲーム業界全体をも包みつづけることでしょう。

 

LowPass - ele-king

 LowPassの新譜『Mirrorz』は聴いた? え、まだ!? それはマズイよ、じゃあGIVVNのフリー・ミックステープ『Garbage Can』もまだ聴いてないってこと?

 一昨年YouTubeにあげた"Ruff"、それに続く1stアルバム『Where are you going?』からはじまり、ラッパーのGIVVNが映像ディレクターとしてOMSBの"Hulk"を手がけたりと、着実に周囲の注目を巻き込みながらバズを生みつつある1MC1DJのヒップホップ・デュオ、それがLowPass。GIVVNの抽象度高めかつ言葉遊び的で抜けのよいラップ、Tee-rugの引き出しが多くユニークな展開と強度の高いビートが魅力のトラックはさらなる飛躍を遂げ、最新作『Mirrorz』でLowPassは一躍シーンの最前線に躍り出たと言っていい!

 『Mirrorz』はエンジニアとしてillicit tsuboiが参加し、マスタリングはUKの名門メトロポリス・スタジオで行われたという意欲作で、ヒップホップファンのみならず全音楽ファンを照準にいれた作品となっている。おまけに今作リリース後に、GIVVNはソロでフリーのミックス・テープ『Garbage Can Vol.0』を自身のbandcampで投下
 きたる6/1(土)には、O-nestで異なる2作品の世界観を敷いた2部構成によるワンマン・ライヴを予定している。客演陣も豪華で、物販もこの日にしか購入できないレア・アイテムを販売するそう。LowPass、コイツらはマジでヤバイんだって!



LowPass ワンマンライヴ 情報

6/1に渋谷o-nestでおこなわれるLowPassのワンマン、予約を絶賛受付中!
当日の物販ではココでしか買えないスペシャルグッズも販売予定!!

LowPass ワンマンライヴ
『Garbage in the Mirrorz』
@渋谷O-nest
2013年6月1日(土)
18:00開場 / 19:00開演
前売¥2000 / 当日¥2500 / 学割当日¥2000
《1部》
GIVVN / Riki Hidaka / DyyPRIDE / 呂布 / DARTHREIDER / YURIKA / Sati (RYUKI & KRA) / The S.I.M.S
《2部》
LowPass / 呂布 / MALIYA
https://shibuya-o.com/nest/2013/06

*公演の前売りチケット予約は希望公演前日までevent@ele-king.netでも受け付けております。お名前・電話番号・希望枚数をお知らせください。当日、会場受付にて予約(前売り)料金でのご精算/ご入場とさせていただきます。
https://p-vine.jp/news/4161


interview with Star Slinger - ele-king

 こう言うとちょっと馬鹿みたいだけれども、スター・スリンガーが素敵なのは明るいところだ。自然で、ウラがない。含み、隠喩、仕掛け、オマージュ......サンプリング・ミュージックであるにもかかわらず、そうした二重性がことごとく外されたウルトラ・ストレス・フリーなトラックをつくる。

 むろん、サンプリングという方法にはそもそも「何を切り取ってくるのか」「どう使用するのか」という批評的な契機が含まれているし、それこそがいのちであるような音楽であることも間違いないから、スター・スリンガーのような一種の無邪気さを否定的にとらえる人もいるだろう。

 だが、いいじゃないか。赤ん坊に微笑まれたら思わず微笑みかえしてしまうように、彼の音にはついつい頬がゆるんでしまう。それは間違いなくスター・スリンガーの音楽のちからだ。「星を携えるもの」というその名のとおり、まばゆいまでの音のシューター。彼はいま、シーンにおいても自身のキャリアにおいても輝いている。


Star Slinger
Volume 1

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 マンチェスターで活躍するプロデューサー、ダレン・ウィリアムスによるプロジェクト、スター・スリンガー。いまやリミキサーとしては引っ張りだこの人気者だが、その名がとくに意識されるようになったのは〈メキシカン・サマー〉から2010年に発表されたチームスとの共作『チームス・Vs・スター・スリンガー』からだろう。チルウェイヴの盛りあがりがピークに達していた頃に、その心臓部分ともいえるレーベルからリリースされた同作は、サイケデリックでドリーミーなシーンのムードを完璧にとらえていたし、そこにスウィートな感覚を補填しもした。彼らの手によって、甘やかでかつみずみずしい回転を得たネオ・ソウルは、クラブ・リスナーにとどまらず、ひろくインディ・ロック・リスナーの耳にも残ることになった。

 さて、その彼のファースト・アルバムでもある『ヴォリューム1』が、『ローグ・チョ・パ』『ベッドルーム・ジョインツ』というふたつのEPやその他のトラックも収めた初期アンソロジーのようなかたちで改めてリリースされることになった。CD化はすべて初だから、まとまった彼の作品に触れるには格好の一枚である。

 さっそく聴いてみよう。「日曜の曲」だという冒頭の“モーニン”で、彼は世界中の日曜の朝に、遅めのおはようを投げかける。

チルウェイヴ? 意識はしてたけど何でもかんでもリヴァーブをかけてやってた人たちとは違うと思うよ。ははは。自分のやってたことって、もうちょっとロウな、生なかたちでサンプリングを使うということだったんだ。

スター・スリンガーの音楽の特徴のひとつは、ふだんは踊りに行かないようなベッドルーム・リスナーや、インディ・ロック系のリスナーもきっちり接続できるようなダンス・ミュージックを構築しているところだと思うんです。あなたにはインディ・ロック的なバックボーンがあるのではないかと思いますが、いかがですか? ブロークン・ソーシャル・シーンや、モーニング・ベンダースのリミックスもやってますよね。

ダレン:僕らくらいの世代にとっては、ロック的なバックボーンがあるのはわりと普通なことだと思うんだ。僕にとってブロークン・ソーシャル・シーンは、リミックスを頼まれる前7年間ほどずっと聴いていたようなバンドだったりするから、頼まれたときはすごく特別な気持ちがしたよ。ただ、最近のインディに関してはちょっと退屈かなって思ってあんまり聴いてないんだ。

へえ! 最近っていうとどんなあたりでしょう?

ダレン:もちろんいい要素もたくさんあると思うんだけど、個人的にはエレクトロニックな音楽のほうによりインスパイアされているということがまずあって、ジャンルごとにやっぱり盛り上がりの波もあるから、最近はレーベルが持ち上げすぎているバンドが出てきてるという感じもするな。○○とかはあんまり好きじゃない。ははは。

ああー。でも一方で、ディアハンターの“ヘリコプター”(『ハルシオン・ダイジェスト』収録)のアンオフィシャルなリミックスなんかも発表されてるじゃないですか。これはスター・スリンガーというアーティストを語る上ですごく象徴的なことだと思うんです。ああいうサイケデリックでシューゲイズな音楽性は、きっとお好きなんですよね?

ダレン:ディアハンターはすごく好きなんだ。『ハルシオン・ダイジェスト』が出る直前にライヴを観たんだけど、新曲として“ヘリコプター”を演奏したときにすごく気になって! 「これはぜったいチェックしなきゃいけない!」って思ったんだ。だからリリースされた瞬間に、彼らに頼むんじゃなくて、もう勢いで勝手にリミックスしてしまったんだよ。ただ、あの時代は好きだったんだけど、いまはどうかなあってちょっと思う。いちばん新しいやつは、聴いてもそこまで好きにならないかもしれない。それはフレーミング・リップスとかも同じで、昔はすごく好きだったんだけど、最近はそんなに興味がないんだ。自分のテイストも変わってきてるし、自分だけのちっちゃな世界で音楽を楽しみたいという気持ちもある。

なるほどー。だったらこの話を引きずって申し訳ないんですけど、ピッチ変更って、あなたの作品における特徴のひとつだと思います。“ヘリコプター”のヴォーカルにももちろんすごく手が加えられていたんですが、ブラッドフォード・コックスのヴォーカルをいじるって、けっこう勇気のいることだと思うんですよね。大胆だなと思いました。結果として、個人的にもとても好きなリミックスになっているんですが、あなた自身としてはあの曲の何を大切にしたかったんです?

ダレン:ソウルっぽい曲でやっていることと同じなんだけど、あの曲ではもともとのヴォーカルのサンプリングを刻んで、短くして、そのメロディの部分を使ってるんだ。そうするときっていうのは、原曲よりももっとエモーショナルにしたいと思ったときかな。楽器も加えたかったしね。

ヴォーカルのピッチ変更自体は方法として珍しいものではありませんが、あなたが多用するのは、なにかあなた独特の感性に支えられてのことだと感じるんです。ソウルとかレア・グルーヴとかのあの芳醇なヴォーカルを、ある意味では台無しにする行為でもあると思うんですけど、それもやっぱり、エモーショナルな部分を取り出すためという意識なんでしょうか?

ダレン:いちばんは自分が楽しいからっていう理由なんだけど、僕の場合はヴォーカルだけじゃなくて後ろのトラックもまるごとピッチ変更するんだ。曲をまるごとね。それはもちろんア・カペラの音源がなかなか手に入らないからっていうことも大きいんだけど。でもパートを見るんじゃなくて全体を見る、全体のフィーリングを按配しながら使うっていうことは意識してるんだ。あれで何をやりたいのかっていうことはなかなか説明が難しいんだけど、音楽のなかの6~7秒を切り取って、それをもっと大きなものに変える、そこで何かを拡大する、そんなようなことだよ。

なるほど、よくわかります。あなたの音楽では、ドリーミーとかサイケデリックということもとても重要な要素だと思うんですが、2010年前後っていうのは、それこそ「チルウェイヴ」という言葉をキー・ワードに、ドリーミーでサイケデリックなフィーリングがいろんなジャンルに共有されていたと思うんです。そういうムードは意識されていましたか?

ダレン:意識はしてたけど、何でもかんでもリヴァーブをかけてやってた人たちとは違うと思う。ははは。自分のやってたことって、もうちょっとロウな、生なかたちでサンプリングを使うということだったんだ。だからその意味では、自分が本当にドリーミーなものを作ったというのはこの“スロー・アンド・ウェット”だけなんじゃないかって思えるよ。そういうものを作ろうと意識して作ったのはこの曲だけなんだ。

へえー。こういう流れのなかで〈メキシカン・サマー〉ってとても重要なレーベルですけれど、彼らはサイケデリックの埋もれた名盤の発掘にも意欲的ですね。ここからチームスといっしょにEPを出したことは、あなたのキャリアにとっても決定的な方向性を与えることになったのではないかと思いますが、どうでしょう?

ダレン:あのEPをリリースしたときは、ドリーム・ポップとかチルウェイヴを聴いている人のことは意識していたよ。それと、あのシーンには友だちもいたしね。たとえばスモール・ブラックなんかは、彼がマンチェスターでライヴをやったときに会って、それがきっかけでリミックスをやったりもした。だからそういう人たちのファンにも聴かれることになるということは意識してたけど、「〈メキシカン・サマー〉にヒップホップ的なものを投げてみたらどんな反応が起こるだろう?」とかね、もうちょっと広がりのある、その上を行くようなことをやってみたいとは思ってたんだ。

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いま世界中をツアーしてるんだけど、日曜日って国によって全然違うんだ。東欧は土曜日も日曜みたいだったよ。お店が開いてるのは月~金。ただ不思議なことにコンビニだけはやってるんだよね。


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よしもとアール・アンド・シー

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そして今回、あらためて日本盤として『ヴォリューム1』がリリースされるわけですが、1曲めの“モーニン”はライヴでもすごくリクエストが多いそうですね。この曲からアルバムをはじめるのは、そういう要望に応えたいというお気持ちからですか?

ダレン:これをアタマにもってきたのは、朝のアラームの音みたいな、みんなの耳をこっちに向かせるっていうような意味合いでだよ。あとは、みんなこれを携帯の着信音にしてほしい(笑)。実際にそうしてくれている人がけっこういるんだよ。

いいですね。わたしもそうしようかな。

ダレン:そりゃ素晴らしい(笑)。ありがとう。

ははは。これは2012年にあなた自身によってリワークされたヴァージョンなんですが、テンポもアップして、フィジカルなディスコ・ナンバーへと姿を変えてますね。これは、この曲が生まれた後のシーンやモードの変化を受けてのことでしょうか?

ダレン:そうだね、あんまり状況に対する反応ということではなくって、もとの曲がのんびりしてレイジーな、なんだか日曜みたいな雰囲気だから、ちょっと土曜っぽくしてみようと思って(笑)。

ああ! 原曲はわたしもすごく日曜だと思いましたよ。それは素敵だな。意外に日本の日曜と似てるのかもしれませんねー。

ダレン:あ、自分でも思うことがあるよ。いま世界中をツアーしてるんだけど、日曜日って国によって全然違うんだ。日本はお店が開いてるんだよね? やっぱり宗教によってはお店が全部閉まってしーんとしてたりするんだけど、イギリスはもうそんな感じじゃなくなってるから店も開いてるし、日本と似てるんじゃないかな。

うんうん。

ダレン:東欧は土曜日も日曜みたいだったよ。お店が開いてるのは月~金なんだ。ただ不思議なことにコンビニだけはやってるんだよね。まあ、資本主義ってことだよね(笑)。

ははは。コンビニが資本とグローバリゼーションの象徴みたいに灯りをつけてると。

ダレン:そう。そういうときは僕も資本主義って好きだなと思えるよ(笑)。お店やってると便利だからさ。

ははは(笑)。うちは日曜だと母がホットケーキ焼いてくれたんですけど、土曜は焼いてくんないんですよ。わたしにとって土曜と日曜ってそういう差ですね。

ダレン:なるほど。そうだよ、日曜のほうが楽しくなきゃいけない。

見解ですね。うーん、“モーニン”が深まりました。ありがとうございます! これに対して、もともとの盤のラストの曲“スター・スリンガー”ですが、プロジェクト名が冠されていますね。これは何かあなたの原点となるような曲なのでしょうか?

ダレン:これが最初に作った曲なんだ。この作品に出てくる方法を全部使ったような曲だよ。“カウボーイ・ダンサー”っていうディスコのインストゥルメンタルをサンプリングしているんだけど、そのタイトルに由来した名前をつけたいと思ったんだ。カウボーイって、「ガン・スリンガー」って呼ばれるんだ。それにちなんで、でも銃って言葉はあんまり使いたくなかったから、「スター」に替えてみた。僕が自分をスターだと思ってるわけじゃないんだけどね! 何かそんな気持ちだったんだ。瞬間的に思いついたもので、あんまり深く考えてないかな。でも後から考えると、この名前にしたからみんなに知ってもらえたんじゃないかなとも思えるよ(笑)。退屈な名前だったら興味も持たれないだろうし、ネーミングはよかったのかも。

星を携えるもの、みたいな感じですか? へえー。深くは考えてないということですが、星って光ったもの、影を持たないものというイメージがありますね。あなたの音には、ほんとにダークなもの、あるいはダーティなものを感じないんですよ。音色を作る上でそこは意識されているものですか?

ダレン:それはあると思うな。自分で曲を作ってタイトルをつけたときに「ちょっとダークなタイトルになっちゃったな」と感じると絶対に変えるんだよ。もう少しダークじゃないものにね。自分はアップ・リフティングなものをつくる、ダウンじゃないものをつくるってことに関してはすごく意識があるんだよ。

それはちょっとめずらしいことのようにも感じますね。それこそまさにダークスターだったり、ジ・XXだったり、挙げればキリがないですけど、ダークなものはテーマ的にも音的にもとても好まれるものです。表現活動のひとつの根本でもある。明るさを意識的に目指していくことには何か理由があるんですか?

ダレン:自分は何かに対してライヴァル心を持っているわけじゃないんだ。たとえばいま挙がったジ・XXとかに。ふつうにリスナーとしてダークなものは聴かないし、ジ・XXのアルバムとかもちゃんと全部聴くことなく途中でやめちゃう、みたいなところがある。そういうものが人気な理由のひとつは、ものすごくレーベルによって宣伝されて持ち上げられてるということじゃないかな。いい音楽かどうかということじゃなくて、新しさとして暗いものが取り上げられている。業界のそういう部分には気がつきにくいものだけど。

個人的には、暗い夢を見るほうが簡単だと思うんですよ。だからそのなかでスター・スリンガーが体現するような、ほんとにドラマチックで甘い夢は、ソウル・ミュージックについてのひとつの有効な解釈だと思いますし、それを意識的に見つづけるのはかっこいいなあと思います。

ダレン:やっぱり人の人生のなかにはダークな瞬間がいくつかあるはずだと思う。物事がうまくいかなかったり、すごく落ち込んだりっていう。そういうときにダークな音楽を聴くと、自分の傷心と重なって浸ってしまうようになる。それは若い頃にはよくあることだと思うんだけど、もうちょっと大人になって、いろんなごまかしを見通せるようになると、ダークなときにダークなものを聴くことが必ずしもいいことだとは思えなくなってくる。水じゃなくて、火で火に対抗するようなものだよね。あんまり意味のないことじゃないかと思うときが出てくるよ。

「〈メキシカン・サマー〉にヒップホップ的なものを投げてみたらどんな反応が起こるだろう?」とかね、もうちょっと広がりのある、その上を行くようなことをやってみたいとは思ってたんだ。

普段レコードをたくさん掘ると思うんですが、やっぱりジャンルの性質上、サンプリングすることが多いですよね。そのときに、ご自身の耳が「ネタを聴く耳」になっちゃってるなって感じたりすることはありませんか?

ダレン:いまの話だと、サンプルを探すということと音楽を楽しむということが別々のものになっているけど、自分にとってはそこが同じひとつのものになっているということが多いんだ。それがあまりに楽しいから、新しいものが生まれてくるんだよ。はは。自分がすごく好きなのに、人々に知られてなさすぎるよと思ったときに、その音を使いたくなったりするね。中古レコード屋で埃をかぶった作品をサンプリングしたくなったりね。だからネタを探すことと音を聴くことはひとつのことだよ。

そっか、心が汚い質問をしちゃったな。すみません。では今回のアルバムの話に戻ります。今作は『ローグ・チョ・パ』や『ベッドルーム・ジョインツ』など他の作品もまとめられて、まさに初期のアンソロ的な性格のものになっているかと思いますが、並べ替えたり再構成したりして、再度新しいものとして 作り直すといったアイディアはなかったんですか? たぶん、いろいろと事情はあると思うのですが。

ダレン:今回のこの作品については、初めてのCDフォーマットだし、日本で流通するしっていうことで、もともとの盤からトラック・リストは変えてあるよ。そこにボーナス・トラックとしてEPを加えていくというかたちになってる。でも、そういう曲順だけの問題じゃなくて、本当はもともとの作品で使ってたサンプリングとまったく同じものを使いながら別の曲をつくる、別のものにしてしまう、ということはちょっと考えたね! でもまあ、考え直して(笑)。それだったら新しい曲作ったほうが早いしね。

はは。フォーマットとしてCDって初なんでしたっけ? いまアーティスト活動する多くの人に言えることだと思うんですが、基本的に〈サウンドクラウド〉などにフリーで作品を発表する、その後でCDだったりアナログだったりというフォーマットを選択していくってパターンが増えてますね。その両者のあいだに差を感じたりしますか?

ダレン:僕はフィジカルでリリースするということは大事なことだと思ってるよ。音楽をかたちとして持ちたいっていう人は多いと思うし、昔ながらのターンテーブルでレコードを回したいDJも多いしね。買って、開けもしないで持っておく人たちさえいる。音をつくる側としては、フィジカルで出すことによって作品が永遠に残るということはあるよね。ヴァイナルがなくなる日を自分は見たくないな。ヴァイナルやテープを買って育ってきたし、昔のものは残さなきゃ。CDも昔のフォーマットになりつつあるよね。

ではアートワークも大事に考えている?

ダレン:そうだね。コレクションとして物を持つことが好きだし、針飛びを感じることも大事な要素なんだ。ラップトップで聴くこととはやっぱり何かちがうことなんだよね。

Sylvester Anfang II - ele-king

 先日、シルヴェスター・アンファングIIとしても活動するベルギーのヘルヴェトことグレンに教えてもらって度肝を抜かれたタイのチンドン屋バンドのYoutubeをまずは見てもらいたい。

 まったく覇気の感じられないメンバー、チンドン・サウンド・システム、何だか妙に儀式じみた周囲の状況、そして何より言語の隔たりによって何も詳細がわからないことが僕に与えるロマン、どうやら最近また持病のアモン・デュール症候群がぶり返してきた僕は完全に心を奪われてしまった。
 じつを言うと現在まで僕にこの病の自覚症状はなく、かなり最近になって他人からそれがすでに手の施しようがないほど進行していることを知らされた。出羽三山での山伏修行の体験談、カスタネダの夢見の実践を試みていた学生時代の恐怖体験などと音楽的嗜好を打ち明けた相手の多くにそれが重度のアモン・デュール症候群であることを診断されたのだ。

 時として社会生活に支障をきたす(注釈:1)この病は、現代の日本において認知度が低く、患者の多くが困難を抱えているのが実状だ。そういった意味ではベアボーンズ・レイ・ロウことエルネスト・ゴンザレスやヘルヴェトことグレン・ステンキステらの僕以上である重傷患者のコミュニティであるベルギーのシルヴェスター・アンファングIIは画期的な治療法とリハビリテーションを提案し、多くの患者に希望を与えていると言えよう。そう、ことヨーロッパにおいてのアモン・デュール症候群への関心は高く、ゆえに非常にさまざまな処方が普及しているのだ。フィンランドのサークルは最たる成功例のひとつだ。

 サークルは90年代初頭から活動する本国においてはかなりのポピュラリティーを得ているクラウト・ロック・スターとも言える超重傷患者集団だ。各メンバーのサイド・プロジェクトやソロを含め自らをNWOFHM!(注釈:2)と称し、死ぬまでクラウトし続けるであろう狂気のスタイルを掲げている。カントリーからブラック・メタルまで古今東西のあらゆる音楽(アルバムごとに異なるひとつのジャンルをピックアップして)を全力でクラウト・ロックしてみるという超絶スキルに裏打ちされた圧倒的強引さを、NWOBHMよろしく80'sヘアー・メタルのトラウマから生まれた爆笑センスをもってして最高のエンターテイメントに仕上げているバンドだ。
 彼らが主催する〈エクトロ・レコーズ(Ektro Records)〉が老若男女のアモン・デュール症候群を含む永続的クラウト・ロック中毒症患者たちへ定期的に処方箋を与えてきた点も賞賛に値する。膨大な自分たちのプロジェクトからジャーマン・サイケの生ける伝説、伊藤政則氏も真っ青なカルト・ヘアー・メタルの再発まであらゆる患者の症状に応じて処方しているようだ。

 最近の強烈な処方箋は〈VHK(Vagtazo Halottkemek)〉......ってこんなもんカタカナにできるかよ。英訳で〈ギャロッピング・コロナーズ(Galloping Coroners)〉です......の最新作。この一見すると某中古レコード店のプログレ・コーナーで投げ売りされてそうなクソダサいジャケットのバンドは、実際に僕は某中古レコード店のプログレ・コーナーで投げ売りされていた同じようなクソダサいジャケットの前のアルバムをゲットして知っているのだけれども、彼等のバイオグラフィーによれば1975年頃にハンガリーのブタペストで結成され、本国やドイツでカルト的な人気を博したシャーマニック・サイケ・パンクバンドで彼等の呪術/超自然/神秘的なサウンドは万物の存在理由の宇宙的解釈である。初期はハンガリー政府からの圧力により10年以上の地下潜伏活動を余儀なくされたようだ。80年代中期頃からヨーロッパ・ツアーを積極的に開始し、当時共演したイギー・ポップやジェロ・ビアフラ、ヘンリー・ロリンズは彼等への驚嘆と賞賛を辞さなかったと言う(実際VHKのアルバムはオルタナティヴ・テンタクルスから2枚ほどリリースされている)。そしてこの度VHKは13年ぶりにスタジオ・フル・アルバム、〈Veled Haraptat Csillagot!(ヴェレ...英訳、バイト・ザ・スター!)〉を〈エクトロ〉からリリースする!
 と、これを書いて何だか妙に疲れたのだが、このツッコむのもバカバカしいほどのバイオ、バンド・イメージとこのオジサンたちの本気度、そしてそれを微塵も裏切ることのないまったく新しくないサウンド、そして何より理解できない言語の隔たりも含めすべてが多くの症状に苛まれる患者たちを治癒してくれることに間違えはあるまい。

 先のYoutube動画を見ながら改めて思うのは、この世に音楽的にも芸術的にも宗教的にも文化人類学的にも秘境などなく、すべてがフラットでのっぺりとした何だかになってしまっているのかもしれない......が、大切なのはそれに心を巡らせるロマンなのだ。これこそがこの病と恒久的につきあっていく最も大切な心得だ。

 ちなみにこのレビューは末期アモン・デュール症候群患者であるele-king野田編集長に捧げます。やっぱクラウト・ロック本も作らないですかね?


注釈:1
主に若年層の症例として挙げられる、定職につかない/やたらとコミューン思考が強い等の発作によって社会生活に困難を来す。

注釈:2
おそらくニュー・ウェーヴ・オブ・フィニッシュ・ヘヴィ・メタルだと思われる。重度の患者達はみな口を揃えて自分たちのコミューンに名を冠したがる傾向が報告されている。シルヴェスター・アンファングIIの連中が「Funeral Folk(フューネラル・フォーク)」と抜かしているように。

 なんだかよくわからなくなってきた。下津光史がステージに上がるまで酒を我慢できるか、勝負しようじゃないか。もちろん編集部は「飲む」に賭ける。
 ele-king編集部(ライター募集中!)とDUM DUM LLP(コック募集中!)によるパーティ、「DUM-DUM PARTY 2013」の追加出演者が決まりました。オウガ・ユー・アスホール(OGRE YOU ASSHOLE)ザ・ガール、そして、OLキラー、そして、大先輩である大貫憲章さん!
 という、なんだかよくわからないことになってきた。だけどもういちどよく考えてて欲しい。このイヴェントの主役は、長州がコック長を務めるバーベキュー大会であり、ディスクユニオンが1日限定でオープンする宝物ありのレコード100円市なのだ。きのこ帝国も快速東京もマウス・オン・マーズでさえも、長州がコック長を務めるバーベキュー大会のツマミに過ぎない。つまり、この倒錯したバレアリック感は、当日来てもらうしかないということである。ele-king編集部(デモ音源募集中!)からひと言あるとすれば、最初から飲み過ぎないでくれ、だ。
 この1ヶ月、よい子を続けたお陰で、スゲー、メンツが揃った。あらためて、この下にある、出演者の名前を見て欲しい。
 渋谷のビルを貸し切ってのレコード100円市とバーベキュー大会、よろしくお願い申し上げます。こないだも書いたように、出入り自由なので、腹減ったら外で食べれるし、飽きたら映画館に行けばいいし、酔いたければ飲み屋もある。まったく、ファッキン・ブリリアントなパーティだ。

※なお、出演者も一般募集しています。ジーザス&メリー・チェインが初来日したとき、フロント・アクトを一般募集したのと同じ。出演者として参加ししたい人も同時募集です。自薦・他薦問わず! 
 ただし、6/29(土)のスケジュールが空いていて、渋谷でライヴができることがマストです。ele-king編集部(友だち募集中!)とDUM-DUM LLP(お客さん募集中!)で相談した上で、出演してほしい方にはこちらからご連絡します。応募はこちらのフォームから!↓
https://system.formlan.com/form/user/dumdumparty/2/


■DUM-DUM PARTY2013
Curated by ele-king & DUM-DUM LLP
イベント特設サイト:https://party.dum-dum.tv/

日時:2013年6月29日(土)
会場:渋谷O-WEST BUILDING(O-WEST・O-nest・7th FLOOR 三会場同時開催)
開場/開演:15:00(22時頃終演予定)
出演:Mouse on Mars(fromドイツ)、OORUTAICHI、快速東京、きのこ帝国、group_inou、SIMI LAB、下津光史(踊ってばかりの国)、スカート、砂原良徳(DJ)、ミツメ、森は生きている、YAMAGATA TWEAKSTER(from韓国)、Kamikaz(Clockwise)、LANG LEE(from韓国)、ダエン(from福岡)、渋家(shibuhouse)、Exclusive、Ned Collette (fromオーストラリア)、DJ Yogurt、OGRE YOU ASSHOLE、THE GIRL+...and more!
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チケット:¥6,300(税込 / 全自由 /1ドリンク代別) ※3才以上有料
来場者全員特典:特製ZINE
チケット:5/18(土)発売
ぴあ (P:201-745)
LAWSON(L:70170)
イープラス(https://eplus.jp/
DUM-DUM OFFICE(高円寺)、SHIBUYA O-WEST/O-nestの店頭で購入の方は¥5250で販売
※ディスクユニオン店頭でもお求め頂けます。

◎DUM-DUM LLP https://www.dum-dum.tv
(イベント/チケット/公演に関する問合せ/担当:野村、嶋津)


interview with Tim Hecker - ele-king

 週刊誌的な興味でしかないと思いつつ、ブランドン・クローネンバーグのデビュー作『アンチヴァイラル』を観に行った。そして、そこには父の失ったものがすべてあるとさえ思えた。多言は必要ないだろう。スノッブと観念を瞬時に結びつけてしまう手際は見事にトレースされ、『ヴィデオドローム』をそのまま引用したシーンまであった。余裕だ、としか思えなかった。
 
 ゼロ年代前半、ティム・ヘッカーが『ラジオ・アモーレ』(03)で、それまでのアンビエント・ミュージックにはなかったようなササクレだったムードを持ち込んだとき、それがどこから来るものなのか、最初はぜんぜんわからなかった。発信元はドイツの〈ミル・プラトー〉でもヘッカー本人はカナダで活動していることや、彼の周辺にはゴッドスピード・ユー・ブラック・エンペラー!がいて、翌年、地元の〈エイリアネイト〉からリリースされた『ミラージュ』にはそのメンバーが多数、起用されていたことから、彼に対するイメージは少しずつアグレッシヴなものへと変化していく。それは安直にデヴィッド・クローネンバーグやGYBE!が醸し出してきたアポカリプティックでタナトスと結びついたカルチャーとのオーヴァーラップと言い換えてもいい。ブランドン・クローネンバーグに煽られていた僕は、つい、そのことを訊きたくなってしまった。

自分にとって感情や興味が沸き上がるような音楽を作ることにフォーカスしている。平穏を保ち、美しくグロテクスで、みんなが聴いてくれるような音楽であればと思ってる。

自分の音楽を映画に喩えると、どの作品になるでしょう? ちなみにブランドン・クローネンバーグ『アンチヴァイラス』は観ましたか?

TH:見たことないな。なので答えるのは難しいね。日本の映画だと新藤兼人の『鬼婆』(64)になるんじゃないかな。

 え? 新藤兼人。去年、亡くなった?(さきほど日付が変わり、原稿を書いている途中で命日になった) 僕は『裸の島』や『北斎漫画』といった代表作しか観たことはなかった。人間を即物的に撮るという印象が強い作家である。話は前後するけれど、僕はこういった興味にはまったく逆らえないので、インタヴュー後、すぐに『鬼婆』を観てみた。そして、なるほどであった。ティム・ヘッカーをクローネンバーグやGYBE!と重ね合わせたのは間違いだった。そのことを知らずに以下のインタヴューは続いていく。なんとももどかしい。


作を重ねるごとに作風が重々しくなっていきますが、それは意識的にそうしているんですか?

TH:それは違うな。時間の経過でそうなったのか、礼拝的なハーモニーへの興味はあると思う。

あなたは常にエモーショナルなノイズ・ドローンを生み出そうとしていますが、人が抱く感情のなかでもとりわけ「切なさ」を重視しているように 思えます。それとも違うことにこだわりがありますか?

TH:自分にとって感情や興味が沸き上がるような音楽を作ることにフォーカスしている。平穏を保ち、美しくグロテクスで、みんなが聴いてくれるような音楽であればと思ってる。

同郷だからというわけではないのですが、あなたの音楽はゴッドスピード・ユー・ブラック・エンペラー!の音楽をエレクトロニック・ミュージック に置き換えた面があると感じますか? やはり影響は受けている? それともこれは誤解?

TH:彼らのスタジオは自分の住んでいる家から2ブロック先の所にあるけど、直接的な影響はないと思う。間接的にはあるよ。モントリオールは小さい町だからね!

ラジオ・アモーレ』があなたの転機になったと思います。単に気持ちいいだけのアンビエント・ミュージックではなく、ノイズや耳に痛い要素を取り入れたものをつくっ たのはなぜですか? 普通に考えると90年代のアンビエント・ミュージックに対して不満があったのかなと思いますが。

TH:当時はアメリカのノイズ・シーンで起きていた音楽が好きで、個性やパワーを感じていたし、無味乾燥なコンピューター音楽をチープなギター・ディストーションに通して、ある特定のテキスチャーとムードを作るというアイデアに興味を抱いていたんだ。それが自分が探求していた手法だった。

 ここだ。彼はとくに名前をあげていないけれど、紙エレキング7号でこってりと特集したように、ウルフ・アイズやダブル・レオパーズがアメリカの地下シーンを形成し始めた頃で、イエロー・スワンズやバーニング・スター・コアのデビューもこの時期に重なっている。前述した『鬼婆』でも冒頭から林光がおどろおどろしいパーカッションを挿入し、かつてミュージック・コンクレートが執拗に欲した無常観を彼が欲していたことがよくわかってくる。そう、最初はなんだかわからなかった『ラジオ・アモーレ』の謎がどんどん解けていく。


『ラジオ・アモーレ』というタイトルの意味を教えて下さい。

TH:スペイン語で「ラジオ・ラヴ」という意味で、ジャケットもそうなんだけどフィールド・レコーディングの多くは中米で録ったんだ。

洞窟や教会など、スタジオとは違った音の響きをする場所で録音を試みるのはいつからやり始めたことですか?

TH:前からずっと興味があって、最近やっとちゃんと出来る環境を見つることが出来た。『レイヴデス 1972』はスタジオの仮想的な空間を合成的にシュミレートしたリバーブでなく、実際の大きな空間のなかで作れた最初の作品だね。

もっとも大きな影響を受けたと思うミュージシャンを3人あげて下さい。

TH:わからないな。

ダニエル・ロパーティン(OPN)から『インストゥルメンタル・ツーリスト』のコラボレイトを持ちかけられた時、彼のことは知っていましたか? また、共同作業を通じて評価が変わったところはありますか?

TH:ネットで連絡を取って話をたくさんして、それからレコーディングを一緒に何日かやってみようという流れになったんあ。ポスト・デジタルな時代において、どうスタジオでコラボレートするかを考えさせられる良いきっかけになったね。

 最初に作風が重々しくなっていると訊いたように、OPNとのコラボレイトでもヘッカーはその路線を突き進んでいる。同作のライナーでも書いたようにロパーティンもマザー・マラーズ・ポータブル・マスターピース・カンパニーのデヴィッド・ボーデンと共作を試みるなど、両者にミュージック・コンクレートや現代音楽への興味があったことが一種の接点をなしていたことは間違いない。そこにあるのは、ヘッカーが興味を抱いたUS地下シーンの洗練であり、彼の身体を通した解釈である。『レイヴデス 1972』に続くソロの新作はこの秋になるらしい。


WWW presents Tim Hecker Japan Tour 2013

WWW presents
<東京> Opening Guest:Ametsub -exclusive set-
日  程:2013年6月7日(金)
会  場:渋谷WWW
時  間:OPEN 19:00 / START 20:00
料  金:前売¥4,000 (ドリンク代別 / オールスタンディング)
問合わせ:WWW 03-5458-7685

主催:渋谷WWW
協力:p*dis / melting bot

WWW & night cruising present
<京都> Opening Guest:Ametsub -exclusive set- / DJ:Tatsuya Shimada (night cruising)
日  程:2013年6月8日(土)
会  場:京都METRO
時  間:OPEN 17:00 / START 17:30
料  金:前売¥2,800 (ドリンク代別 / オールスタンディング)
問合わせ:METRO 075-752-2787 / WWW 03-5458-7685

主催:渋谷WWW / night cruising
協力:京都METRO / p*dis / melting bot

<チケット発売中>
チケットぴあ[P:197-955] / ローソンチケット[L:75645] / e+ (https://eplus.jp/timhecker)
WWW・シネマライズ店頭(東京公演のみ) / メール予約(京都公演のみ)

東京公演詳細:https://www-shibuya.jp/schedule/1306/003742.html
京都公演詳細:https://www.metro.ne.jp/schedule/2013/06/08/index.html

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