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interview with Tim Hecker

interview with Tim Hecker

モントリオールの美とグロテスク

──ティム・ヘッカー、来日直前インタヴュー

三田 格    May 29,2013 UP

 週刊誌的な興味でしかないと思いつつ、ブランドン・クローネンバーグのデビュー作『アンチヴァイラル』を観に行った。そして、そこには父の失ったものがすべてあるとさえ思えた。多言は必要ないだろう。スノッブと観念を瞬時に結びつけてしまう手際は見事にトレースされ、『ヴィデオドローム』をそのまま引用したシーンまであった。余裕だ、としか思えなかった。
 
 ゼロ年代前半、ティム・ヘッカーが『ラジオ・アモーレ』(03)で、それまでのアンビエント・ミュージックにはなかったようなササクレだったムードを持ち込んだとき、それがどこから来るものなのか、最初はぜんぜんわからなかった。発信元はドイツの〈ミル・プラトー〉でもヘッカー本人はカナダで活動していることや、彼の周辺にはゴッドスピード・ユー・ブラック・エンペラー!がいて、翌年、地元の〈エイリアネイト〉からリリースされた『ミラージュ』にはそのメンバーが多数、起用されていたことから、彼に対するイメージは少しずつアグレッシヴなものへと変化していく。それは安直にデヴィッド・クローネンバーグやGYBE!が醸し出してきたアポカリプティックでタナトスと結びついたカルチャーとのオーヴァーラップと言い換えてもいい。ブランドン・クローネンバーグに煽られていた僕は、つい、そのことを訊きたくなってしまった。

自分にとって感情や興味が沸き上がるような音楽を作ることにフォーカスしている。平穏を保ち、美しくグロテクスで、みんなが聴いてくれるような音楽であればと思ってる。

■自分の音楽を映画に喩えると、どの作品になるでしょう? ちなみにブランドン・クローネンバーグ『アンチヴァイラス』は観ましたか?

TH:見たことないな。なので答えるのは難しいね。日本の映画だと新藤兼人の『鬼婆』(64)になるんじゃないかな。

 え? 新藤兼人。去年、亡くなった?(さきほど日付が変わり、原稿を書いている途中で命日になった) 僕は『裸の島』や『北斎漫画』といった代表作しか観たことはなかった。人間を即物的に撮るという印象が強い作家である。話は前後するけれど、僕はこういった興味にはまったく逆らえないので、インタヴュー後、すぐに『鬼婆』を観てみた。そして、なるほどであった。ティム・ヘッカーをクローネンバーグやGYBE!と重ね合わせたのは間違いだった。そのことを知らずに以下のインタヴューは続いていく。なんとももどかしい。


■作を重ねるごとに作風が重々しくなっていきますが、それは意識的にそうしているんですか?

TH:それは違うな。時間の経過でそうなったのか、礼拝的なハーモニーへの興味はあると思う。

■あなたは常にエモーショナルなノイズ・ドローンを生み出そうとしていますが、人が抱く感情のなかでもとりわけ「切なさ」を重視しているように 思えます。それとも違うことにこだわりがありますか?

TH:自分にとって感情や興味が沸き上がるような音楽を作ることにフォーカスしている。平穏を保ち、美しくグロテクスで、みんなが聴いてくれるような音楽であればと思ってる。

■同郷だからというわけではないのですが、あなたの音楽はゴッドスピード・ユー・ブラック・エンペラー!の音楽をエレクトロニック・ミュージック に置き換えた面があると感じますか? やはり影響は受けている? それともこれは誤解?

TH:彼らのスタジオは自分の住んでいる家から2ブロック先の所にあるけど、直接的な影響はないと思う。間接的にはあるよ。モントリオールは小さい町だからね!

■『ラジオ・アモーレ』があなたの転機になったと思います。単に気持ちいいだけのアンビエント・ミュージックではなく、ノイズや耳に痛い要素を取り入れたものをつくっ たのはなぜですか? 普通に考えると90年代のアンビエント・ミュージックに対して不満があったのかなと思いますが。

TH:当時はアメリカのノイズ・シーンで起きていた音楽が好きで、個性やパワーを感じていたし、無味乾燥なコンピューター音楽をチープなギター・ディストーションに通して、ある特定のテキスチャーとムードを作るというアイデアに興味を抱いていたんだ。それが自分が探求していた手法だった。

 ここだ。彼はとくに名前をあげていないけれど、紙エレキング7号でこってりと特集したように、ウルフ・アイズやダブル・レオパーズがアメリカの地下シーンを形成し始めた頃で、イエロー・スワンズやバーニング・スター・コアのデビューもこの時期に重なっている。前述した『鬼婆』でも冒頭から林光がおどろおどろしいパーカッションを挿入し、かつてミュージック・コンクレートが執拗に欲した無常観を彼が欲していたことがよくわかってくる。そう、最初はなんだかわからなかった『ラジオ・アモーレ』の謎がどんどん解けていく。


■『ラジオ・アモーレ』というタイトルの意味を教えて下さい。

TH:スペイン語で「ラジオ・ラヴ」という意味で、ジャケットもそうなんだけどフィールド・レコーディングの多くは中米で録ったんだ。

■洞窟や教会など、スタジオとは違った音の響きをする場所で録音を試みるのはいつからやり始めたことですか?

TH:前からずっと興味があって、最近やっとちゃんと出来る環境を見つることが出来た。『レイヴデス 1972』はスタジオの仮想的な空間を合成的にシュミレートしたリバーブでなく、実際の大きな空間のなかで作れた最初の作品だね。

■もっとも大きな影響を受けたと思うミュージシャンを3人あげて下さい。

TH:わからないな。

■ダニエル・ロパーティン(OPN)から『インストゥルメンタル・ツーリスト』のコラボレイトを持ちかけられた時、彼のことは知っていましたか? また、共同作業を通じて評価が変わったところはありますか?

TH:ネットで連絡を取って話をたくさんして、それからレコーディングを一緒に何日かやってみようという流れになったんあ。ポスト・デジタルな時代において、どうスタジオでコラボレートするかを考えさせられる良いきっかけになったね。

 最初に作風が重々しくなっていると訊いたように、OPNとのコラボレイトでもヘッカーはその路線を突き進んでいる。同作のライナーでも書いたようにロパーティンもマザー・マラーズ・ポータブル・マスターピース・カンパニーのデヴィッド・ボーデンと共作を試みるなど、両者にミュージック・コンクレートや現代音楽への興味があったことが一種の接点をなしていたことは間違いない。そこにあるのは、ヘッカーが興味を抱いたUS地下シーンの洗練であり、彼の身体を通した解釈である。『レイヴデス 1972』に続くソロの新作はこの秋になるらしい。


WWW presents Tim Hecker Japan Tour 2013

WWW presents
<東京> Opening Guest:Ametsub -exclusive set-
日  程:2013年6月7日(金)
会  場:渋谷WWW
時  間:OPEN 19:00 / START 20:00
料  金:前売¥4,000 (ドリンク代別 / オールスタンディング)
問合わせ:WWW 03-5458-7685

主催:渋谷WWW
協力:p*dis / melting bot

WWW & night cruising present
<京都> Opening Guest:Ametsub -exclusive set- / DJ:Tatsuya Shimada (night cruising)
日  程:2013年6月8日(土)
会  場:京都METRO
時  間:OPEN 17:00 / START 17:30
料  金:前売¥2,800 (ドリンク代別 / オールスタンディング)
問合わせ:METRO 075-752-2787 / WWW 03-5458-7685

主催:渋谷WWW / night cruising
協力:京都METRO / p*dis / melting bot

<チケット発売中>
チケットぴあ[P:197-955] / ローソンチケット[L:75645] / e+ (https://eplus.jp/timhecker)
WWW・シネマライズ店頭(東京公演のみ) / メール予約(京都公演のみ)

東京公演詳細:https://www-shibuya.jp/schedule/1306/003742.html
京都公演詳細:https://www.metro.ne.jp/schedule/2013/06/08/index.html

文:三田 格(2013年5月29日)

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