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Ogre You Asshole | Dry & Heavy

Ogre You Asshole | Dry & Heavy

@FEVER

Mar 15, 2012

文:野田 努   写真:小原泰広   Mar 21,2012 UP
E王

 最初に出てきたのはオウガ・ユー・アスホール。およそ20分にもおよぶ"rope"のロング・ヴァージョンからはじまる。まったく素晴らしい演奏。反復の美学、どんどん進んでいく感覚、クラウス・ディンガーのモータリック・サウンドをアップデートしたドライヴ感、出戸学のギターはリズムを刻み、馬渕啓はじっくりと時間をかけながら熱量を上げていく。やがて出戸学もアクセルを踏む。もうこのままでいい。このままずっと演奏し続けて欲しい。魅惑的な疾走感。もう誰にも邪魔されないだろう。ところどころピンク・フロイドの"星空のドライヴ"のようだが、支離滅裂さを逆手にとって解放に向かう『homely』の突き抜けたポップが広がっている。
 なかば冷笑的な佇まいは、心理的な拠り所を曖昧にして、オーディエンスを放り出したまま、黙々と演奏を続けている。それでもエモーショナルなヴォーカルとバンドの力強いビートが心を揺さぶる。そして、右も左も恐怖をもって人の気を引こうとしているこの時代、"作り物"の胸の高まりは前向きな注意力を喚起しているようだ。それにしても......こんなに気持ちよくていいのかと、そばでガン踊りしている下北ジェットセットの森本君の肩を叩く。が、彼はもうすでに手のつけられないほどトランスしている。
 オウガ・ユー・アスホールは、昨年の秋、赤坂ブリッツでのワンマンを見て以来だった。あのときも書こうと思っていたのだが、諸事情が重なり書けなかった。ようやく書ける。間違いない。90年代なかばのボアダムス、90年代後半のフィッシュマンズ、00年代のゆらゆら帝国、この3つのバンドの領域にオウガ・ユー・アスホールは確実に接近している。要するに、誰がどう考えても、彼らこそいまこの国でもっともスリリングなライヴ演奏をしうるロック・バンドなのだ。
 ちょうどライヴの翌日、彼らの新しい12インチ・シングル「dope」がリリースされている。"rope"のロング・ヴァージョンもそこで聴ける。同シングルのA-1は"フェンスのある家"の新ヴァージョンで、いわばキャプテン・ビーフハート的賑やかさ。語りは英語のナレーションに差し替えられ、管楽器によるジャズのフリーな演奏で飾り立てている。コーネリアス風のコーラスが不自然な入りかたをして、曲を異様なテンションへと導いている。

 オウガ・ユー・アスホールが終わると、ステージの中央にはいかにも重たそうなベース・アンプが置かれ、やがてドライ&ヘビーが登場する。向かって左にはドラマーの七尾茂大がかまえ、そして秋本武士をはさんで反対側にはキーボードとして紅一点、JA ANNAがいる。彼女は4年前、ザ・スリッツのメンバーとしてライヴをこなしつつ、バンドの最後の作品となったアルバム『トラップド・アニマル』でも演奏している。なんとも運命的な組み合わせというか、ドライ&ヘビーの鍵盤担当としてはうってつけだと言える。
 再活動したドライ&ヘビーは主に1970年代のジャマイカで生まれた曲をカヴァーしている。この日の1曲目はジャッキー・ミットゥーの"ドラム・ソング"だが、その音は『ブラックボード・ジャングル』のように響いている。最小の音数、最小のエフェクト、そして最大のうねり。ダブミキシングを担当するのはNUMB。そう、あのNUMBである(そして会場にはサイドラムもいた)。
 演奏はさらにまた黙々と、そしてストイックに展開される。ブラック・ウフルの"シャイン・アイ・ギャル"~ホレス・アンディの"ドゥ・ユー・ラヴ・ミー"......。ドライ&ヘビーの魅力は、ジャマイカの音楽に刷り込まれた生命力、ハードネス/タフネスを自分たち日本人でもモノできるんだという信念にある。その強い気持ちが、ときに攻撃的なフィルインと地面をはいずるベースラインが織りなす力強いグルーヴを創出する。気安く近づいたら火傷しそうだが、しかしだからといってオーディエンスを遠ざける類のものでもない。ドライ&ヘビーは、アウトサイダー・ミュージックというコンセプトがいまでも有効であること、"フェイド・アウェイ"や"トレンチタウン・ロック"といった名曲がいまでも充分に新しいということを身をもって証明しているのだ。
 僕は彼らと同じ時代に生きていることを嬉しく思う。

 追記:まとめてしまえば、オウガ・ユー・アスホール=クラウトロック、ドライ&ヘビー=ダブというわけで、『メタルボックス』時代のPILのようなブッキングだった。

文:野田 努