「Nothing」と一致するもの

BBH - ele-king

 膨大なレコードからざっくりスライスして、さくさくと展開するところはJディラの『ドーナッツ』を彷彿させるが、『ジ・アルバム』はソウルというよりも『サージェント・ペパー~』の側だ。ヒップホップというよりはカクテル・ラウンジとさえ呼べる。とくに前半は、洒落ている。つまり、フライング・ロータスの新作以上に、こちらのほうがジェントル・ピープルだ。
 そんなわけで、『ジ・アルバム』が『ファンタズマ』や砂原良徳の隣に並んでいても驚かない。アートワークのデザインの方向性次第では、このアルバムはウータン・クランよりもディック・ハイマンさもなければドリーム・ポップのコーナーに分類されていたかもしれない。

 BBHとは、Bushmind + starrBurst + dj Highschoolの3人組で、日本のアンダーグラウンドなヒップホップ・シーンの......もはやベテランと呼べるのだろうか。ブッシュマインドは昨年、通算2枚目となるソロ・アルバムを出している。そのアルバム『Good Days Comin'』では、ラッパーたちの協力のもと、ここではとても書けないある種の真実を描いているが、BBHはそのインストゥルメンタルな展開とも言えるかもしれない。
 彼らは本当にいろいろなところから音を持ってきている。イージー・リスニング、サントラ、レゲエ、パンク、ロービットの効果音......雑多な音のなかから彼らいうところの「サイケデリック」を表現している。ここには、厳しいストリートの生存競争や都会の感傷、お決まりのメッセージやリアリズムなどから遠く離れた、桃源郷的とも言える心地よさがある。たとえば20曲目の"THENEONLIGHTSGLITTERSANDCHANTSTHROUGHTHENIGHT"などは、ソニック・ブームのヒップホップ・ヴァージョンとも呼べるようなもっとも印象的曲のひとつだが、いきなり20曲目に飛ばして聴くよりは、最初から順番に聴いていったほうが良い感じのアルバムだ。

 オウル・ビーツやブン、ブダモンク、フラグメントイーライ・ウォークスなどなど、2010年はドイツのレーベルが、そして2012年はフランスのネット・レーベルが日本以上に日本のビートメイカーを評価しているかのようなコンピを発表、オリーヴ・オイル以降の......と呼ぶのが的確なのかどうかはさておき、ビート・シーンにはたくさんの才能がごろごろしているようだ。他方では、クロックワイズも再活動すると宣言しているし、女性ビートメイカーのクレプトマニアックにも他ジャンルからの注目が集まっている。メインストリームではDJフミヤが楽しいアルバムを発表したばかりだ。そういうなかにあって、BBHは、他の誰とも違った、温かくドリーミーなアプローチを見せている。やや幻覚気味のイージー・リスニングだと思う。ある意味、いままでブッシュマインドとは縁のなかったリスナーにこそ聴いてもらいたい。

Ital - ele-king

 ダンス・ミュージックといっても、アイタルの場合はまるで首根っこを押さえて踊らされるような抑圧的なものがあって、それが身体的な快楽へと結びついていくのは先のことになる。解放するビートではなく、制圧するビートと言えばよいだろうか。筆者にはダブル・バインドの感覚に近いように思われる。ビートは踊れと言ってくるが、音全体としては踊るなと言う......深刻な精神の危機に結びつくともされるこの二重拘束のプレッシャー、そのなんとも消耗的な抑圧ののちには、わあっと叫びながら踊り出してしまいたいような危険な快楽が待っている。
 実際にブラック・アイズからミ・アミまで、彼アイタルことダニエル・マーティン-マコーミックの異様なヴォーカル・スタイルには、一貫して同種の分裂が感じられる。女性かと思うほど高く、カンの強い声でけたたましく叫びまくる彼のヴォーカルは、けっしてハードコア由来のものとばかりは言えない。もっと彼の存在そのものに根ざすような、スタイルを超えた衝迫がある。ライヴにおいても感じたが、それは唐突にはじまって止む。制御のきかない、彼自身の精神のいち部であるようにきこえる。ゆえにあらゆる形式性から逃れ、シャウトでもスクリームでもない、未確認のノイズとして鮮やかな印象を頭に焼きつける。
 今作ならば、たとえば"エンリケル"後半の掻き傷のような高音ノイズがその代理だ。殺伐としたドローンとインダストリアルなビートが、相反する信号を発しながら二重拘束を強いてくる。その割れ目から漏れ出すキリキリと不快なノイズは、嫌がらせるようにじりじりと音程を上げ、なかなか止まない。
 あるいは"ホワット・ア・メス"。今度は冒頭からうんざりするようなファルセットの嘆願――嘆願かどうかは知らないが、しつこくねちねちと、リヴァーブで増幅しスクリューで減速しながら、何事かしゃべりつづけている――に圧迫され、すっかり滅入りながらも身体はダンス・ビートでハイに刺激されるという、逃れたくてたまらないダブル・バインドが襲ってくる。これをヘラヘラとクールに聴けるほど筆者はタフではない。だが、"ディープ・カット"の冒頭までには、その不快さから去りがたいほど骨抜きにされて、ぐったりしながらも音に身をもたせざるを得ない。

 こうした感覚については、マーティン-マコーミックは自覚的な発言を残している。「身体的な嫌悪についてよく考えていて、その表現を自身のなかや他人に見つけたように、精神にあるむき出しの神経に直接触るような、そんなプロジェクトをはじめたいと思った」。これは彼がソロ・プロジェクトとしてセックス・ワーカーを名のりはじめるにあたって考えたことだというが、アイタルにおいてもじゅうぶんにその性質を語るものである。つづけて彼は、それらが彼自身のなかの嫌悪に対するアート・セラピーだとも述べる。薄気味が悪いほど冷静な自己分析だが、おそらくそのとおりなのだろう。こうした分裂によって、彼は何かを縫合しているのかもしれない。
 そうすると"ディープ・カット"における救いが見えてくる。強すぎない4つ打ち、ノイジーだがどこか抜けのある音響。ライヴ・エディットが用いられているのは、適度なチルアウトによって、この「治療」を完結させるためではないだろうか。じつに巧妙な構成をしている。

 彼は〈タッチ・アンド・ゴー〉から〈ノット・ノット・ファン〉、そして〈プラネット・ミュー〉を渡ってきた。彼のなかの異形のハードコアは、〈タッチ・アンド・ゴー〉の象徴的な幕引きとともにバンドのスタイルを解かれ、ダンスに、ハウスに、ドローンに、ダブに拡散し、また凝縮していった。〈ノット・ノット・ファン〉や傘下の〈100%シルク〉は、こうした不定形のハウスを受け止めて発信する柔軟さと先鋭性とでインディ・シーンを大きく動かした。本人も言うように、ベッドルーム・ミュージックを作るプロデューサーと、DJと機材オタクとがいっしょにいるような、ゆるやかなコミュニティであることがこのレーベルの性格をよく表している。そしてポリシックのサイケデリアやルーディ・ザイガドロのクラシック趣味とR&Bなど、今年も幅を広げている〈プラネット・ミュー〉にも冴えがあった。彼は狙ったわけではなく、自然に時代のモードと併走している。この数年における重要なレーベルをつなぐ数奇な精神/身体として、アイタル名義で2作めとなる本作には説得力ある完成度が宿っている。OPNなどとの共通性も強くうかがわれるが、マーティン-マコーミックには粗野で抑制のきかないカルマがあり、それが方法においてはラフでありながらも強い魅力になっている。インディ・ダンスと言わず、この数年のインディ・シーンを見渡したときに、ぜひとも捉えておくべき1点である。

「いま楽しまないで、いつ楽しむの?」 - ele-king

 あのー、実は僕、今年、初めて国内のオールナイト・イヴェントの代表格とも言える、〈ワイアー2012〉に行ってみたんです。ふだんライヴハウスでバンドばっかり見てる人間がなぜレイヴに行ったかというと、これは〈フリー・ドミューン2012〉と、マニュエル・ゲッチングの影響がかなり大きい。やっぱり大きな会場でしか感じ得ない迫力、熱気、スリル(笑)、朝型のおかしなテンションで踊るっていう快感みたいなものの至高性を、初めて確認したひと夏だったんです。
 そもそもレイヴ・イヴェント自体が初体験だったので、かなりドキドキでしたが、行って良かったです。はい、衝撃を受けました! とにかく、その場の雑多な感じがライヴハウスにはないです。たとえば変なおっさんがブリブリになって発狂してるし、いっぽうフロアではモンブランみたいな髪型したキャバ嬢っぽい女性がデリック・メイで踊ってるわけ! もう本当にいろいろな人たちが集まってる。もう衝撃すぎて、朦朧とした状態で帰りの電車に揺られて帰りました。ああいういろいろな人たちがいるのって、やっぱオールナイトのフェスやレイヴならではだよなーと。でも、ちょっと待って。あとから思ったんだけど、僕と同世代の20歳ぐらいの子がもっと多ければ良いのに。なぜもっといねーんだよー!

 わかりますわかります。たしかに都内などで開かれている深夜のオールナイト・イヴェントは敷居が高いっていう風に思われてるのはわかります。レイヴとかだとなおさらです。僕もゴス・トラッド主宰の〈バック・トゥー・チル〉にずっと行きたいと思ってるけど、まだ行けてません。やっぱり、ひとりは心細いし、ちょっとビビってるっていうのが本音です。
 しかし、大きな会場で開催されるイヴェントはアクセスしやすいんです。僕のような初心者に優しいんですね。楽しみ方もいろいろで、自由度が高いんです。欧米でレイヴが盛り上がっている理由はよくわかります。だって、面白いからでしょうね!

 最近は「若者の夜遊び事情、深刻化」など、いろいろ言われているけど、実際、わかるよ! だって、お金ないし、平日から飲んだら次の日やばいし、わざわざ夜出かけるのってけっこう面倒くさいよね(ちなみに、こういう人間を最近は、草食系を超えた絶食系と呼ぶらしいよ! ひゃー!!!!)。 

 これからの僕らの生活って、へたしたら、いま以上に制限されるかもしれない。そして身体も、だんだんいうことが利かなくなるかもしれないw。やっぱどう考えても、楽しむのはいましかないよな。来年まで......とか、あわよくば......とか言ってる場合ではない。
 ワクワクする感情ってとっても大切だ。そのワクワクも、きっといろんな経験や出会いによって、形が変わってしまうかもしれない。僕らが抱いているワクワクは、「いましか感じ得ないワクワク」だっていうことを、もう一度ここで一緒に考えたい。そのワクワクが解放された瞬間、何かがきっと動きだすんじゃないかな、などと夢想するのはバカ過ぎる? でも、何を言われても、そんなエネルギーが、僕はもっともっと必要だと思うのです。
 二度と繰り返されることのない、ひと晩の物語があるんです。ブリブリになって踊っているおっさんや、キャバ嬢風の女性はきっとわかってるんですね。こんなしょーもない社会から、いっときだけ逃避して、音楽に興奮して、踊りまくって、それが明日へのモチベーションに繋がるっていうことを。ライヴ行きませんか? 一緒にオールしませんか? 2012年、もう終わっちゃうとか言ってないで、もう少しだけ楽しみません? いまは、いましかないし、きっかけならここにある!! 
 っということで、祝エレクトラグライド3年ぶり復活!!!! 受験期ということで、涙を呑んだ2009年の〈エレクトラグライド・プレゼンツ・ワープ20〉から早いもので3年が経ち、今年ついに僕も初めて行きます(当日、エレキングで物販を出す予定!)!! これだけ見れて前売り8800円というのも嬉しいです。

 
 新旧さまざまな実力派のアーティストが出演するエレクトラグライドですが、フライング・ロータスがやっぱりいちばん見たいかなぁ~。9月に発売された『アンティル・ザ・クワイエット・カムス』から、いったいどんなパフォーマンスを見せてくれるのか期待です! 
 あと、相模原で今年も開催された〈エックスランド・フェスティヴァル2012〉で、雨が降るなか、怒濤のパフォーマンスを見せてくれた、DJクラッシュも楽しみです!!(このライヴは僕が今年見たベスト・パフォーマンスのひとつ!)

 あ! そうそう、〈フリー・ドミューン2012〉や〈ワイアー2012〉はヴィジュアル・コンセプトが本当にしっかりしていて、会場に入った瞬間、もうその世界に入っていけました。音が鳴っていたんです(まだ演奏もはじまっていない段階で)!   
 エレクトラグライドは〈幕張メッセ〉開催なので、大きな会場だからこその見せ方や、いろんな仕掛けにも注目したいです! 

 では、11月23日〈幕張メッセ〉で会いましょう!!!!!

DJ mew (恥骨粉砕) - ele-king

2012.12.15 恥骨粉砕@Star Pine's Cafe!!!!!
久々やります!皆様どうぞよろしくお願いします!
more info https://chikotsu-funsai.tumblr.com/
blog https://djmew.exblog.jp/

今秋のベストヒット 2012.11.07


1
Laid Back - Cosyland - Brother Music

2
Traxman - Itz Crack - PLANET MU

3
LV feat. Ruffest - Ultando Lwaka - Hyperdub

4
Junip - Howl - MUTE

5
blur - She's So High - EMI / PARLOPHONE

6
Jon Hassel - Toucan Ocean - Lovely Music

7
Coldplay - High Speed - EMI

8
DJ Krush - 蒼い雨 - Es.U.Es Corporation

9
Nick Cave & The Bad Seeds - Red Right Hand - Mute Records

10
DJ Rashad - Kush Ain't Loud - Lit City Trax

Chart Meditations 2012.11.12 - ele-king

Chart


1

Andrew Chalk - 狂詩曲の波間に浮かぶ四十九の風景 (Faraway Press)
英ドローンの重鎮Andrew Chalk待望の新作は、なんと49のランドスケープを49曲で表現した54分に渡る至福のラプソディー集。現実世界が薄らいでいく事間違いなしの紛うこと無き傑作です!

2

Bernard Gagnon - Musique Electronique (1975-1983) (Tenzier)
Xenakisに師事していたカナダの電子音楽家によるコンクレート集。どれもこれも鋭利な金属摩擦のようで完成度が凄まじい。間違いなく2012年の重要発掘作でしょう!

3

Cut Hands - Black Mamba (Very Friendly)
アフロノイズ・プロジェクトCut Hands待望の2nd。重い打撃の岩石パーカス、暗黒アフロな辺境リズム、髪が逆立つ鋭いノイズはここでも炸裂。アンビエント要素も増えて更に暗黒界を制覇してます!

4

Twinsistermoon - Bogyrealm Vessels (Handmade Birds)
世紀末ドローンと、男性の声とは思えない程にボーカルの甘さが際立つフォークを演奏する仏作家の新作。混沌と至福の境界線が曖昧になって深くなってます! ジャケも素晴らしい。

5

Sympathy Nervous - Plastic Love (Minimal Wave)
ここMWにより再評価が高まった国産シンセポップ・ユニットの編集盤第2弾。80sテクノポップにテクノの原型やインダストリアル、日本語詞と、電子音が跳ねまくる絶妙な格好良さです!

6

Bee Mask - Vaporware / Scanops (Room40)
奇跡の来日も記憶に新しい電子音楽家Bee Mask。長尺2曲構成にて、宇宙の漆黒や星々の光を巻き付けながら神秘的な電子音がグングンと上昇。抜群のSF世界を構築しています! 完成度高いです。

7

V.A. - Tomorrow's Achievements - Parry Music Library 1976 - 86 (Public Information)
カナダの電子音楽レーベルParry Musicの音源集。瑠璃色にの柔らかいアンビエンスや近未来/宇宙色なロマンスが備わった展開でどれも高品質。OPN以降のアンビエント時代にガッツリ食らいつく1枚です!

8

Discoverer - Tunnels (Digitalis Recordings)
カセット1本出したっきりだったシンセシストですが、これがどっこい人気のレーベルから好作を発表。出す音1つ1つから近未来の町並みが出来上がって行くようなロマンス、宇宙リゾートな日差しが広がる抜群の心地良さです!

9

V.A. - The Instructional Media Guide To Mindful Internet Exploration (Instructional Media)
南国ニューエイジな世界観で、一部のカセット狂に大きな爪痕を残したレーベルの第2作。レーベルの代表作家Mother Gangやそのうち大きなレーベルからデビューしそうなMagic Eyeなどなど。ここは装丁が良いです。

10

Diseno Corbusier - El Alma De La Estrella (ViNiLiSSSiMO)
スペインのニューウェーヴバンドの86年作が再発。脱力奇怪ボーカルと太いミニマルシンセが暴れる1曲目が素晴らし過ぎます。近年のこの手の再発の中でもかなりキレた1枚でしょう!

Chart JET SET 2012.11.12 - ele-king

Chart


1

Visitors - Night Fever - Idjut Boys Rmx (Disques Sinthomme)
Dj Harvey, David Mancuso, Prins Thomasら大御所が挙ってプレイ中!!姉妹レーベル"Ghost Town"と共に注目が集る"Disques Sinthomme"からの最新作。未だ謎多きユニットVisitorsによるリリース第二弾。Idjut Boysによるリミックスを収録した注目の一作が遂に解禁!!

2

Lusty Zanzibar - Empress Wu Hu Ep (Glenview)
Nangや"Bear Funk"といったニューディスコ・レーベルからのリリースで知られるUkプロデューサーAlex Cordiner A.k.a. Lusty Zanzibarが"Glenview"初参戦。収録4作品漏れなくお薦めです!!

3

Fudge Fingas - Untytled Ep (Firecracker)
エジンバラのプロデューサー/キーボードディストFudge Fingasによるオリジナルトラックと、レーベル・オーナーLinkwoodによる作品をリミックスした作品をコンパイルした大注目Ep作品!

4

Aeroplane Feat. Jamie Principle - In Her Eyes (Aeropop)
ベルギー名門"Eskimo"を拠点に素晴しいリリースを繰り広げてきたAeroplaneによる最新作。ヴォーカルにシカゴ・レジェンドJamie Principle、リミキサーにはTiger & WoodsとChopstick & Johnjon (Suol)の人気アクト2組を抜擢。ニューディスコ・ファン必聴の一枚が遂に解禁です!!

5

Falty Dl - Straight & Arrow (Ninja Tune)
ご存じNinja Tune/Planet Muが誇るNy在住の美麗Ukベース人気者Falty Dlがジャズ薫るコードワークを散りばめて完成させた、Swindle越えアーバン・ベース名曲がこちら。素敵過ぎます!!

6

Darkstar - Timeaway (Warp)
Hyperdubからの'10年作『North』が超ロングセラーとなった大人気トリオがWarpから挨拶代りにお届けする極上美麗なポスト・ダブステップ・ポップ名曲です!!

7

Kidkanevil & Daisuke Tanabe - Kidsuke (Project Mooncircle)
ご存じNinja Tuneが誇るバンドStatelessのトラックメイカーKidkanevilと、Mike Gaoとのスプリット盤も爆裂ヒットしたDaisuke Tanabeによる電撃コラボ・アルバムが登場しました!!

8

Amen Brother Disco Band - Volume 1 (Amen Brother)
まるでIncredible Bongo Bandなパーカッシヴ&ブレイキン・ファンク!!アイルランドから大注目ファンク~ディスコ・バンドが登場です!!

9

Ital - Dream Pn (Planet Mu)
もはや説明不要のインディ・シンセ・ダンス最重要アクト。Daniel Martin-Mccormickによるソロ・ユニットの2枚目のアルバム!!前作同様Planet Muからのリリースです!!

10

Azymuth - Avenida Das Mangeurias / Partido Alto (Far Out)
今も高い人気を誇る孤高のブラジリアン・フュージョン・バンド、Azymuthの1979年作『Light As A Feather』収録の2曲を、Theo ParrishとLtj Xperienceがリミックス!!

Andy Stott - ele-king

 カタログ本というのはこれがあるからキリがない。あと数週間早くアンディ・ストットのセカンド・アルバム『ラグジュアリー・プロブレムズ』を聴いていたら、最後の1ページに加えた。

 アンディ・ストットはマンチェスターの〈モダン・ラヴ〉を拠点に活動しているDJで、デムダイク・ステアの(レコード蒐集家として知られる)マイルズ・ウィテカーとのコンビでダブステップの作品も出している。ストットは、2011年には「We Stay Together」と「Passed Me By」の2枚のシングルによって、デムダイク・ステア(紙ele-king vol.5参照)や〈ブラッケスト・エヴァー・ブラック〉のレイムあたりとも共振しながら、マンネリ気味だったミニマル・ダブに「ダーク・アンビエント/ポスト・インダストリアル」なるテイストを見せたひとりだった。
 彼らの怪奇趣味の先人にはサム・シャックルトンがいて、新作『ミュージック・フォー・ザ・クワイエット・アワー』......これがホントに、「ここまでやるのか」と、正直、聴覚体験でそれほどの驚きを感じにくくなっている中年の耳を充分に震え上がらせた。今年のテクノの大きな衝撃だ。こんなに怖い音響を他に知らない。
 アンディ・ストットの音響/残響には『ミュージック・フォー・ザ・クウィエット・アワー』のような、1枚通してヘッドフォンで聴くと頭がおかしくなるようなことはないが、それでも充分に面白い。クラウトロックの巨星のひとつ、ファウストの最初のアルバムの幻覚性の高いカット・アップを彷彿させながら、ミニマルとダブとインダストリアルの3点を結んでいるようだ。ニック・エドワーズのソロもキャバレ・ヴォルテールがダブをやったみたいだったけれど、彼らにはどこかしら共通する感覚がある。数字のような正確性ではなく、曖昧で比喩的な表現に逃げながら、何か確実な声を発しているように見受けられる。

 1曲目の"Numb"が良い。歌声の断片の残響を巧妙に反復させ、霊妙なループをミキシングしながら、空間を広げていく。曲の終わりでは、歌の断片の反復にあらたに言葉の断片が繋がる。その美しい瞬間は見事で、ある意味ダブのネクストとも言えよう。
 リズムのアクセントにダブステップの痕跡も見られる。スクリューを混ぜながら、ダンス・ビートとしての機能も見失わない。気体のような女性ヴォーカルとの絡みはイヴェイドを思わせるが、タイトル曲の"Luxury Problems"ではしっかりハウスのビートを取り入れつつ、やはりシャックルトン的な音響的な倒錯を試みている。この曲がまた良くて、カール・クレイグの"クラックダウン"をスクリューしながらダブミキシングしたようだ。
 正直言って、10月のあいだ350枚以上のアルバムを聴いたので、テクノはしばらく聴きたくないと思っていたのだが、無理だった。"Up The Box"のリズム・エディットも実に新鮮。素晴らしいことに、テクノにはまだ前進する余地がある。まったく贅沢な問題だ。

『清盛紙芝居』続編! - ele-king

大反響、金田淳子のあらすじザクわかり『清盛紙芝居』!!
噂のBSフジ新番組『世界の正義を探求するテレビ』での未使用部分をふくめ、続編を一挙大公開!
書き下ろしのグルーヴィーなナレーション・パートが加わって読み応え抜群、最終回までに押さえよう! (編集部)

前回までの『清盛紙芝居』(文章パート付き!) 

フジテレビ(BSフジ) 世界の正義を探求するテレビ 
放送日時 2012年11月 9日(金)24:00~24:55

ニコニコ生放送
オタク女子文化研究所「いまから『平清盛』」 ~「オタ女」的大河ドラマの愉しみ方~

ニコニコ生放送
BSフジ新番組・初打ち合わせ公開

紙芝居『平清盛』(番号と放送回とは一致していません)
»前回までの『清盛紙芝居』


16.平治の乱(1159)
 平治元年、清盛の留守をついて源義朝が朝廷を制圧。信西は清盛の助けを祈るも追手に発見され、自死を選んだのでございます。清盛は「これがお前の出した答えならば受けて立とう」と奮い立ち、急に賢くなって権謀術数を駆使し、ついに義朝を追い詰めます。賀茂川を挟んで見合った清盛と義朝は、次の瞬間にはふたりだけの異空間に飛び、壮絶な一騎打ちを繰り広げます。清盛に敗れた義朝は、源氏重代の太刀「髭切」を置いて去ったのでございます。


17.さらば強敵(とも)
 源義朝は手勢を従え東国へ落ちますが、追捕の手が及ぶと覚悟を決め、忠臣・鎌田正清と刺し違えて散ったのでございます。義朝の息子・頼朝は捕縛されておりましたが、この年若き頼朝の姿に、池禅尼(清盛の母)は病没したわが子・平家盛(清盛の弟)のおもかげを見出し、清盛に助命を嘆願いたします。清盛は、少年期から競い合った強敵(とも)=義朝をなくした悲しみに耐えつつ、頼朝に「髭切」を渡し、伊豆に流罪としたのでございます。


18.日本国の大魔縁
 さて保元の乱後、流罪となった崇徳上皇は讃岐で写経生活を送っておりましたが、後白河院に反省文を着拒されたり、息子が病死したりという、さらなる不幸に見舞われます。さすがの崇徳上皇も堪忍袋の緒が切れて魔物と化し、折から経文を運んでいた平家一門の舟にイオナズンを浴びせかけます。あわや海の藻屑、と思われた清盛ですが、夜明けとともに崇徳上皇の魔力は消え、ぶじ経文を奉納することができたのでございます。


19.ふたりはズッ強敵(とも)
 清盛と後白河院は微妙なツンデレ綱引きを繰り返しておりましたが、ここでキーパーソンとなるのが清盛の義妹・滋子でございます。滋子は後白河院と授かり婚(できちゃった婚)によって固く結ばれ、清盛との仲を取り持つのでございます。清盛が熱病に倒れたとき、後白河院は賀茂川の増水をものともせず見舞いに赴き、源義朝亡き後の清盛の「ズッ強敵(とも)」担当としての存在感を見せつけたのでございました。しかしこの蜜月ともいう時期に、清盛の体内ではすでに、亡き白河院の血、もののけの血がうずき始はじめていたのでございます。


20.平家にあらずんば
 福原に移り住んだ清盛は、長男重盛に平家の棟梁を譲りわたし、表の仕事をさせる一方で、裏の仕事を時忠に命じたのでございます。時忠は自分の甥である宗盛が平家の棟梁になるべしと主張し、重盛を追い落とそうとする、なかなかに曲者の男でございます。重盛は先例に基づく正しい采配を行いますが、時忠は「正しすぎる判断は間違っているのと同じ」と断じ、秀(かむろ)という少年団を使役して、平家に仇する者たちを闇討ちにするのでございました。しかしいささかやりすぎだと思っているのでございましょうか、「平家にあらずんば人にあらず」と言い放ったときの時忠の表情は、苦悶に満ちていたのでございます。


21兎丸ェ...
 大輪田泊の工期を何よりも優先するブラック企業=清盛は、人命をおろそかにし、腹心・兎丸と対立してしまいます。清盛の元を飛び出した兎丸は、秀に襲撃され、まるで募金のように赤い羽を全身に刺されて落命。兎丸組のあらくれたちはドスを持って清盛に詰め寄りますが、兎丸の魂が工事を見守ってくれるよねという謎の理屈でまるめこまれ、気づいたら大輪田泊も完成し、なんかいい話みたいになっていたのでございます。


22.鹿ヶ谷へ
 清盛と後白河院のかすがいであった滋子が病没すると、にわかにふたりの対立が明らかとなり、後白河院は「もうここへは来ない」と、マンションの鍵を置いて去ったのでございます。後白河院の近臣である藤原成親と西光も、清盛と延暦寺への恨みは根深く、ここに世にいう「ひみつのボーイズ・トーク@鹿ケ谷」が開催されるのでございます。

 ブライトンという街は、日本のガイド本などを見ると「海辺の保養地」と書かれており、それもある程度は本当のことだが、国内では「ゲイとアナキストの街」と言われる一面も持っている。
 で、わたしの職場は、英国のゲイ・キャピタルと呼ばれるブライトンのゲイ街にあるのだが、ゲイの方々というのは美意識が発達している人が多いため、ストリートを占拠するとそこにセンスのいいカフェだの、アーティーなショップだのを次々と開くものだから、地域全体が「お洒落」と見なされることになり、そういう場所に住みたがるストレートも集まってきて住宅価格が高騰。ブライトンのゲイ街は市内随一の高級住宅街になっている。

 んなわけで、わが勤務先なんかも、預けられている子供たちは圧倒的にミドルクラス家庭の子女が多く、同性カップルの両親を持つ子供たちがけっこういる。
 だから、園のほうでは様々の気配りを行う。例えば、絵本なんかでも、男性と女性のカップルが両親として登場する本は置いてないし、子供たちをドールハウスで遊ばせる時にも、ダディ人形とマミイ人形のセットは使わない。ふたりのダディ人形や、ふたりのマミイ人形をそれとなく居間に座らせておくことはあったとしても。
 「そういう真綿にくるんだようなやり方は、本当は子供のためにならない」
 と、24歳のゲイの同僚Aは言う。
 「現実の社会は、全く違うから」
 という彼は、ヨークシャーの公営住宅地出身だ。
 ヨークシャーは英国で最も失業率の高いエリアのひとつである。「ひたすらホワイト・イングリッシュで、貧乏でマッチョだった」と彼が言うような公営住宅地で、ゲイがゲイとして生きるということは大変だったろうというのは容易に想像できる。彼がブライトンに南下して来た理由もそれだったらしい。

 実際、丘の上の公営住宅地から海辺のゲイ街に出勤しているわたしなんかも、毎日、両極端なふたつの世界を往復しているような感がある。
 例えば、ジュビリーやオリンピックで盛り上がった今年の夏は、英国中でユニオンジャックの旗が翻っていた夏でもあったが、公営住宅地ではさらにフットボール的で右翼的な聖ジョージの旗が目立ったし、ゲイ街には国家とはまるで関係のないレインボウ・フラッグがはためいていた。みたいな話をランチタイムにしていると、ゲイの同僚Aは言った。
 「英国全体がお祭りムードでなんとなくユニオンジャックを掲げていたときに、ゲイ・コミュニティと貧民街だけが違う旗を掲げていたっていうのは、面白いね」
 「それはやっぱり、正反対のようで似たところがあるから? 例えば、排斥されている意識とか」
 「そういう意識が強いグループほど、何かの旗の下に群れたがるからね」
 「でも、この街でゲイが排斥されてるとは言えないでしょ。経済的にも、影響力的にも、はっきり言って主流じゃん」
 「まあね。絶対数が多いから」
 というAは、ブライトンに来てから、鎧で全身を固めて生きるようなゲイ意識。というものを失くしてしまったらしい。
 彼はザ・スミスが涙ぐましいほど好きな青年なのだが、ヨークシャーの公営住宅地でマッチョなガキどもにいじめられながら身を固くして街を歩いていた頃、自室でガリガリ聞いていたのがモリッシーの歌だったと言っていた。
 が、そんな彼も、最近はまったくザ・スミスを聴いてないらしい。
 社会的にリスペクトされたゲイ街での暮らしは、その内部での人間関係などの問題はあるにせよ、総体的にはヘヴンだと言う。それはなんとなく、モリッシーの"I'm Throwing My Arms Around Paris"の中ジャケ写真の新宿2丁目的ムードを思い出させる。わたしの祖国の友人は、10年ぶりにモリッシーを見に行ったら、「さぶとマツコ・デラックスの世界になっていた。アイロニーだと思いたかったが、本人があまりに楽しそうだったので当惑した」と言っていた。
 思えば、いまでもモリッシーについて「居場所のなさを歌い続けている」と語るのは、ちょっと無理がある。英国のゲイにしても同様だ。彼らだってガラの悪い貧民街にでも近づかない限り、あからさまな排斥を受けることはないし、それにしたってAのように自分で動きさえすれば、居場所は探せる。
 「だいたい、僕は旗ってものが大嫌いなんだけど。旗を掲げるってのは、排他的な行為だ。レインボウ・フラッグにしても同じことだよ」
 とAは言う。
 たしかに、貧民街からゲイ街に入って来るとき、バスの窓から見るレインボウ・フラッグは、「さあここからは、ゲイとインテリが住むヒップな街ですよ。リベラルの概念がわからない人は来ないでね」と宣言しているようにも見える。
 逆に、ゲイ街から貧民街に帰るときに、公営住宅の窓から覗く聖ジョージの旗は、もう他には誇るものなど何もなくなったホワイト・トラッシュと呼ばれる人びとが、自分たちはイングリッシュであるという最後の砦を張り巡らせ、他者を威嚇しているようである。

 排除されている意識のある者に限って、旗を掲げて他者を排除しようとする。
 英国社会の階級は、もはや職業や収入だけで語れるものではなく、性的趣向や人種などの要素も入って来て著しく複雑になっており、例えば、ミドルクラスのストレートのパキスタン人とワーキングクラスのゲイのイングランド人はどっちがどっちを差別する側なのか。という風にぐちゃぐちゃになっているにも拘わらず、それでも階級が済し崩しにならないのは、人間の線引き願望というか、せつない旗揚げ願望のせいなのかも知れない。

 「そう考えると、レインボウ・フラッグも聖ジョージの旗も、なんかサッドだよね」
 わたしが言うと、Aは言った。
 「っつうか、バカだよね」
 レインボウ・フラッグをバカだと言い切るゲイには、わたしは他に会ったことがない。
 が、80年代に戦った世代のゲイと、現代の若いゲイには、明らかに温度的隔たりがある。時代は変わったのである。少なくともブライトンには彼らにとっての"ヘヴン"があるし、そこには、わたしたちの職場のような同性愛者の子女向け保育園さえ存在する。
 「とはいえ、そのバカな旗を揚げているグループの決定的な違いは、聖ジョージのほうの子供たちは、誰も真綿でなんかくるんでくれないということだよ」
 「・・・・・」
 「ヨークシャーでは、アンダークラスな地域の保育園で働いてたんだけど、あそこの子供たちは、現実を現実として直視しながら育って行くしかないもの」
 「わたしもそういうところで働いていたから、それは、わかる」
聖ジョージ旗とレインボウ・フラッグの世界に一本ずつ足を入れて生きてきたようなAが、心情的に着地するのは聖ジョージのほうなのだろうか。と思う。クラビングとダンス・ミュージックに明け暮れるゲイ街ライフを満喫しておきながら、ジェイク・バグがいい、いい、とわたしの耳元で囁き続けたのも、彼であった。
 ブライトンに移住して以来、"There Is A Light That Never Goes Out"が聴けなくなったと嘆くので、「そんなに聴きたいなら、うちに来る?」と誘うのだが、ぶんぶんと首を振る。公営住宅地には、強いラヴ&ヘイトの想いがあるようだ。
 2度と戻らない。と覚悟を決めている人ほど、そういうところがある。

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 英国では10月最後の週末から冬時間に切り替わっている。
 だから、1日の仕事を終えて職場を出る頃には世のなかは真っ暗だ。とはいえ、カフェやバーの灯りが揺れるゲイ街は明るい。そのにぎやかな灯りのど真んなかに戻って行くAに手を振り、バスの終点にあるわが貧民街に辿り着けば、そこには本物の暗闇が待っている。あまりに辺りが暗過ぎて車に轢かれた狐が路上に転がっていることもあり、動物にとっても危険なシーズンの到来だ。
 "There Is A Light That Never Goes Out"が似合うのは、こんな世界だ。
 市街の明るみの果てにある、闇の濃度が急に上がる世界。
 街灯が切れていても、地方自治体が取り替えにすら来てくれない、見捨てられた世界。

 There is a light and it never goes out
 頭上に生き残っている光はごく僅かであり、じーっ、じーっと不気味な音をたてている街灯は、あれはまた消え行く前兆なのだろう。
 There is a light and it never goes out
 じーっ、じーっと音をたてている街灯ではなく、安定感のある光を放っていた街灯のほうが、ぶつっと唐突に切れた。
 街灯がひとつ消えるたびに街の温度も下がって行き、今年の冬はのっけから底冷えがする。

 ちなみに、公営住宅地の灯りを消えっぱなしにしているこの国の首相は、2年前、ジョニー・マーからザ・スミス好きを禁止された男である。

Dum Dum Girls - ele-king

 名前を捨てた女。パンク・ロックに憧れ、イギー・ポップとラモーンズとヴァセリンズに徽章を借りて、カリフォルニアのリヴィング・ルームから世に現れた女。タイトなスカートにブラック・レザーをまとい、ファズの騒音とゴシックによる世界の暗転を好みながら、破れたストッキングを気にも留めずに、砕かれた愛を切々と歌うその女、ディー・ディーは、"ロード・ノウズ"でいま、神々しいまでのロック・バラードを歌う。男(ロック)への同一化願望や、母(保守)への反発といったライオット・ガール的なテーゼも、ここでは古くさいものに思える。ディー・ディーは、もっともっと遠い場所を仰ぎ見ているようだ。「ベイビー/これ以上、あなたを傷付けることはできない/神様なら知っているわ/私は自分の愛をずっと傷付けてきた/私の愛を」
 
 わたしはこの曲の感想を、もうロックなど聴いていないだろうと思っていた人とも共有した。それはとても久しぶりのことだった。流通環境的にも、単純に内容的にも、ポップ音楽ほど激しい変化にさらされつづけている文化も珍しいのかもしれない。もはや「特定のものが蒸し返される背景には、時代を支える無意識ではなくて個人的な動機が存在するだけだ」、橋元優歩が言うように。あるいはロックが自意識の容器になったと評されて20年以上経過しているが、別にいいではないか、それでも。ディー・ディーは、それこそごく個人的でしかない動機によって――この世界で生きることを引き受けようとするときに――ロックの緩衝を必要としているようにさえ見える。



 さて、このEP『エンド・オブ・デイズ』を何度か聴いてみて、良くも悪くも冒頭の"マイン・トゥナイト"と"アイ・ゴット・ナッシング"にどこか違和感を覚えたなら、あなたの直感は正しい。この2曲は前作、『オンリー・イン・ドリームス』のセッション時に生まれたもので、録音は2011年だ。既定のガレージ路線に沿って進む序盤の展開には、控えめに言っても、特筆すべき新鮮さはない。つづく"トゥリーズ・アンド・フラワーズ"の、輝くようなアンビエント・ギターで世界が一変するが、これはストロベリー・スウィッチブレイドが1983年にヒットさせたデビュー曲のカヴァー。母性の象徴としてか、「アイ・ヘイト・ザ・トゥリーズ/アンド・アイ・ヘイト・ザ・フラワーズ」というリリックをそのまま引き継ぎつつ、原曲に漂うある種の陽気さを取り払っている。地に根を張って、花に囲まれながらフォークを奏でることなどできない、とでも言うかのように。

 個人的なことを言えば、ダム・ダム・ガールズのレパートリーでは、アルバムに数曲だけ収録される、素直にポップで、センチメンタルで、狂おしいまでにロマンティックな曲を好いてきたが、その名も『オンリー・イン・ドリーム』(2011)のフォロー・アップにふさわしく、『エンド・オブ・デイズ』は、"トゥリーズ・アンド・フラワーズ"以降の3曲でドリーミーな時間をゆったりと過ごしている。同郷のガレージ・ポップ・デュオ、ベスト・コーストのセカンド『ジ・オンリー・プレイス』が演出していた、とろけるようなメロウ・アウトと共振するようでもあるが、あちらがミニマムな実人生に寄り添ったFMポップだったのに対し、本作の構えはもっと超然としている、啓示的なまでに。ホーリーでありながらドラッギーな傑作"ロード・ノウズ"のあと、EPをクローズするギター・ポップ"シーズン・イン・ヘル"は、バンドの結束とエナジーがまだ失われていないことを丁寧に補足している。


 彼女らはこの冬、ツアーを回っているが、その報告写真にしばし見とれた。そこに写されるのは、人生から逸脱しながらも、人生を引き受けて生きる女の姿である。単純なドロップアウトがアートにおける正義ならどんなに楽だろう。古いロック・スター・ライフへの同一化に誘惑されながら、そしてライオット・ガール史の現在地で引き裂かれながら、ディー・ディーは結局のところ、すべてを引き受けている。社会に含まれつつも真実に生きる逸脱者として、あるいはまた、夫を持つ一介の既婚者、妻として――。だからこそ『エンド・オブ・デイズ』は最高だ。つねにダブル・スタンダードを抱えてきたロック音楽の成熟と浄化、そして変わらぬ美しさを、ダム・ダム・ガールズは2012年に伝えている。

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