Home > News > Betty Hammerschlag - ——マニア受けしていたZ世代のe-girlシンガーが、実は中年のおじさんだったニュース
ベティ・ハマーシュラグは、若き女性アーティストだと思われていただけではない。「謎多きインターネット上の異才による、気だるく漂うような作品。まるでアピチャートポン・ウィーラセータクンの映画を、つま弾くアルペジオと静かに響くシンセサイザーでアレンジしたかのようだ」と『The Quietus』が賛辞をおくり、『ガーディアン』まで「おすすめ」に選んで、NTS Radioもお気に入りのヘヴィーローテーション、いわばグルーパーのZ世代版として(一部のメディアからではあるが)評価されていた。日本では『AVYSS』が「10代の夢、暖かい夏の日」「純粋な恋心、蝶の集まり」などというナイーヴな言葉で紹介している。そのヴィジュアル面におけるセルフ・プレゼンテーションは、たしかに「Z世代のコードに合致している」。ちょっとゴスっぽくて、陰りをもったこのルックスとそのローファイ・サウンドが重なれば、好きな人はそれなりにいるでしょうな。
デビュー時のヴィジュアルがコレ

最新のヴィジュアルはコレ

ところが、音楽メディア「First Floor」の調査によると、このスタイリッシュな少女の正体がティルマン・ホルニヒなる40代後半の男性であったことが判明して、当然のこと話題になっている。
たとえばポップの世界では、デイヴィッド・ボウイが複数のペルソナを演じたように、さまざまな仮面を被ることは珍しくない。しかし、この場合はどうだろう。その正体がおじさんだとわかったいま、『AVYSS』は「純粋な恋心、蝶の集まり」と思って聴いていたその体験/時間についてなにを思うのだろうか。
ホルニヒは、これまでファンとの対話もコラボする際の相手との連絡においても、若々しい女性性を打ち出していたというが、じっさいの彼はドイツ人のアーティストであるという。だからこれは、PCでがじがらめの世界への芸術的挑発/ウォークおちょくりで(前作のタイトルは『Fake Girl』)、彼にしたら「してやったり」かもしれない、という受け止め方もできる。だが、中年男性がジェンダーを欺き、Z世代のe-girlになりすます(コスプレする)ことで人気を集め、さらには(一部のメディアからではあるが)評価されていたという事態には、どうにも引っかかるモノがありませんか。
フィリップ・K・ディックの短編に、ある男がゲームの電子世界でエロい女になってしまい、精神混乱しながらもセックスが止められないみたいな話があったけれど、ベティ・ハマーシュラグのInstagramには、スタイリッシュでアンニュイな女性が、思えばあきらかに演出された姿をもって佇んでいる。
ベティ・ハマーシュラグの新作『Psycho Summer』は9月15日にリリース予定で、UKのPR会社9PRがその宣伝をしている。この暴露も少なからず宣伝になっている。ボカロやVTuberの世界では、男性が美少女になりすことは珍しくないと聞くし、これもひとつのビジネスモデルと言ってしまえばそうかもしれないが、AI問題とともに、果たしてこれが自分たちが欲していた文化なのかどうか、いまいちど考えてみても良さそうだ。