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Home >  News >  RIP > R.I.P. Double K (People Under The Stairs) - 追悼 ダブル・K(ピープル・アンダー・ザ・ステアーズ)

RIP

R.I.P. Double K (People Under The Stairs)

R.I.P. Double K (People Under The Stairs)

追悼 ダブル・K(ピープル・アンダー・ザ・ステアーズ)

大前至 Feb 04,2021 UP

 LAを拠点に活躍し、2019年に引退を発表していたヒップホップ・デュオ、People Under The Stairs (以下、P.U.T.S.)のメンバーとして知られる Double K (本名:Michael Turner)が、1月30日に入院先の病院にて亡くなった。享年43歳で、詳しい死因は明らかになっていないが、彼の友人であるLAのベテランDJ、Mark Luv によると Double K は「安らかに亡くなった」という。


来日時の様子(写真:大前至)

 P.U.T.S.ではMC、プロデューサー、ライヴDJも担当していた Double K が、Thes One と共にグループを結成したのが1997年頃のことだ。LAのミッドシティと呼ばれるエリアにある高校に通っていた彼は、同じ高校に通う(のちに Living Legends を結成することになる) Murs、Eligh、Scarub らが中心となっていたクルー、Log Cabin Crew の一員として活動しながら、すでにビートも作りはじめていた。16歳のときにサンプルネタを探すために訪れたレコード屋にて出会ったのが同じくまだ十代であった Thes One で、それぞれ自分の作ったビートを聴かせあいながらお互いを認めるようになり、その後、彼らは P.U.T.S. としての活動をスタートすることになる。

 USC (University of Southern California)に通う大学生であった Thes One の学生ローンを元手に、1998年、彼らは最初のシングル「The Next Step II」とアルバム『The Next Step』をリリース。ともにDJでありラッパーでありビートも作っていたふたりに共通するのは、彼らが強く影響を受けた80年代から90年代半のヒップホップのフレイヴァーを継承しながら、自ら見つけ出した誰も知らないサンプリング・ネタで新しい音楽を作り出すという点で、いまで言うブーンバップのスタイルを彼らはデビューの時点で確立していた。自主制作盤を手に彼らは契約できるレーベルを探していたが、しかし、LAのヒップホップ・シーンの中で徒党を組むようなタイプではなかった彼らに後ろ楯はなく、最終的に契約を結んだのがサンフランシスコを拠点とするヒップホップ色の薄いレーベル、〈OM〉であった。しかし、〈OM〉と契約を結んだことで彼らはヨーロッパにファン・ベースを築くことに成功し、さらに世界的なアンダーグラウンド・ヒップホップ・シーンの盛り上がりの波にも乗り、日本を含む世界中に数多くのファンを獲得する。

 グループ結成から解散までの22年の間に、P.U.T.S.は通算10枚のフル・アルバムと2枚のコンピレーション・アルバムを残してきた。彼らの作品の中でも特に個人的に思い出深いのが、筆者がLAに住んでいた期間にリリースされた通算5枚目のアルバム『Stepfather』と次の『FUN DMC』だ。『Stepfather』リリースのタイミングに合わせて彼らの日本ツアーが行なわれたのだが、そのタイミングで筆者も一時帰国し、彼らが日本のヒップホップ・ファンから強く愛されていることをダイレクトに感じた。『FUN DMC』発売時のLAでのリリース・イベントではステージ上にビールサーバーが置かれ、様々なアーティストや関係者と共にステージ上でビールを飲みながらライヴを観るという貴重な経験もさせてもらった。そして、『FUN DMC』の後にシングル・リリースされた「Trippin At The Disco」のPVになぜか一瞬だけ出演することになったことも忘れられない。

 P.U.T.S.のふたりには取材などもさせてもらったが、一緒にいて感じたのがグループとしてのふたりのバランスの良さだ。Thes One は P.U.T.S.のスポークスマンであり、細かい事柄にも気を配りながら、オーディエンスを強く惹きつける勢いや爆発力もあり、明るくポジティヴな面も持っている。ライヴ中はラップもしながらDJもする Double K は、少し下がって Thes One の後ろのポジションにいながら、落ち着いて全体を見ながらムードを作っていくタイプで、決して口数は多くはないが彼のメローな雰囲気は人に安らぎを与える。全く異なるタイプのふたりだからこそ、お互いを補完することができたであろうし、絶対的な信頼が彼らの22年間のキャリアを支えてきたに違いない。

 前述したように、2019年にリリースされたラスト・アルバム『Sincerely, the P』を最後に音楽業界から引退し、ファンを驚かせた彼ら。地元LAでも引退に合わせたライヴは一切行なわれず、ラスト・アルバムだけを残して突然いなくなってしまった印象が強い。彼らの引退に関しては唯一『LA Times』にインタヴュー記事が掲載されているが、彼らが音楽をはじめたときとの環境の違いや自らの年齢なども理由としながら、アーティストとしてやり切ったという前向きな姿勢も感じられる。その一方で記事では Double K の健康状態にも少し触れており、もしかしたらそれが彼らが突如引退した理由のひとつであったのかもしれない。

 Double K の死は本当に悲しい出来事であるが、P.U.T.S.が残してきた音楽はこれからも色褪せることはなく永遠に残っていくだろう。彼らのライヴでの定番曲であり、間違いなく彼らの一番の代表曲である “San Francisco Knights” を聴きながら、この追悼文を締めたい。


https://open.spotify.com/track/0msneWUDfYKAGrifwEDhtl

大前至

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