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Alabama Shakes

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岡村詩野木津 毅   Apr 22,2015 UP
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いのち──ソウルの洗練とは
岡村詩野

 7曲めの“ゲス・フー”の仕上がりに思わず溜め息が出る。大音量、音圧のガツンとした手応えを与えてくれる曲が揃った本作中では、恐らくこのフィリーな感触すら伴った滑らかなソウル・チューンはやや地味な印象を残すかもしれない。だが、トム・ベルとリンダ・クリードが手がけていた頃のスタイリスティックス(わけても“ゴーリー・ワウ”あたり)を思わせるような流麗で美しいメロディとストリング・アレンジ。こんなに洗練された楽曲を作るようになったのか、と感嘆させられたと同時に、2年前の初来日時、彼らと会話をしたときのことを思い出した。取材に応じてくれたブリタニー・ハワードとザック・コックレルは筆者にこういうような話をしてくれた。「ブルーズがアメリカ南部で“発見”(discoverd、という言葉を用いていた)されたときの驚きはいまもっとも僕らが必要としている感覚だと思う。なぜなら、ブルーズは本来洗練されているものであり、生命の象徴のような音楽だからだ」と。つまり、生きるということは元来、洗練されているべきである、と、彼はこう言ってのけたのだ。アフリカから連行されてきた当時の黒人たちに聞かせてあげたい発言である。

 武骨で土臭いサウンドを鳴らすブルーズ・ロック・バンドというアラバマ・シェイクスへの一般的な賛辞はけっして間違いではないが、そういう意味でもそれだけではやはり不十分だろう。そこには生命の希求があり、讃歌があり。そうやって泥臭くたくましく生き抜いていくことがいかにソフィスティケイトされた作業であるかを提示し、さらにはその源がブルーズやソウル・ミュージックであることを提示する、そんな大きな志を抱えたバンド。ブルーズを鳴らしソウルを歌うことに喜びを感じ、そこにこそ人間の洗練がある、と唱えるバンド。それを前作より遥かにしなやかに伝えているのが、このセカンドの、中でも冒頭で書いた7曲め“ゲス・フー”や、ハーモニックなヴィヴラフォンの音色に導かれるタイトル曲、アコースティック・ギターの穏やかながらもリズミックなカッティングがロバート・ジョンソンを少し思い出させる“ディス・フォーリング”、対して中盤にかけてエレクトリック・ギターが唸る“デューンズ”といった曲たちだ。そして、これらの曲に共通しているのが、まさにトム・ベル張りのダイナミックで気品あるストリングス・アレンジ。アントニーやジョアンナ・ニューサム、ボン・イヴェールやザ・ナショナル、最近ではアエロ・フリンなども手がけるロブ・ムースがほとんどのアレンジと演奏を担当していることで、楽曲に膨らみと抑揚を与え、結果、メンバーが求める生命力の洗練された輝きを抽出することになったことは間違いないだろう。前作には挿入されていなかったこのストリングスのアイデアが、本作のプロデュースをつとめるブレイク・ミルズ経由でのことだったとしたら(ロブ・ムースはブレイク・ミルズの作品にも参加している)、これこそが何よりのファイン・プレーだと言っていいのではないか。
 全曲ストリングスを入れてもよかった、と思ってしまう以外は申し分のない最高の仕上がりだ。ファーストのタイトルが『ボーイズ&ガールズ』、そして今作が『サウンド&カラー』。何かと何かを“&”で結ぶタイトルを続けてきたのは果たして偶然か。いや、互いに距離のある何かと何かが邂逅することによって生まれるスパークにこそ、アラバマ・シェイクスというバンドは命の源泉を見ているのではないか。それこそ、強制的だったとはいえ、アフリカから黒人が米南部の港町に初めて降り立ち、奴隷として働かせる立場の白人と対峙した時の戸惑いと不安と、そして次第に強まる怒りと反発。だがしかし、そこに伴う哀しみがブルーズという音楽を誕生させた事実をきっと彼らは尊く思っているのだろう。

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