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Omma

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Maria Teriaeva

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三田格   Oct 01,2018 UP

「置き勉」についての議論がバカらしい。小学生のランドセルが重すぎて学校に教科書などを「置いていく」か、そうすると家に帰って宿題をやらなくなるといった議論がこの半年ほど沸騰し、9月に入ってようやく文科省が「置き勉」を認めたというやつである。僕は小6の時に右大腿骨膿腫の手術をして、以後、重いものを持ってはいけないと医者に言われたので、教科書はすべてバラして学校に持っていった。バラした教科書をバインダーで閉じられるように穴を開けられる機械を父親が探してくれたので、白紙のルーズリーフとその日の授業に必要なページだけを一冊のバインダーに閉じて、学校の行き帰りはそれだけで済ませていた。軽かった。しかも次の日の授業で必要な部分を前の晩に揃えるので、それだけで簡単な予習にもなった。授業中に「30ページ戻って」とか言われるとお手上げではあったけれど、それほど困った記憶はないし、そういうところは教師が授業内でフォローすればいいだけの話である。これは40年以上も前の話で、なのに教科書の重さはこの40年で1.8倍にもなっているという。平均が6キロで、14キロになった例も報告されているという。

 ということで、今年、もっとも「軽い」と感じたロシアのシンセ・ポップを2点。
 オマことオルガ・マキシモヴァ(Olga Maximova)によるデビュー作はロンドンの〈コースタル・ヘイズ〉からリリースされた。テルやバディ・ラヴといったバリアリック・ハウスをリリースしてきたレーベルで、どこを取ってもノンビリとした曲で構成された『Teplo』は緊張感のかけらもなく、ふわふわとしたダウンテンポがさらさらと続く(「Teplo」というのは、しかし、熱という意味らしい)。“サムライ”などという曲もあるけれど、これがまた可愛らしくてズッこけます。チコちゃんに叱られてもボーッと生きていたいときには最適のサウンドトラックでしょう。世界を正しい場所に導こうという人で世の中はあふれかえっている。なので、一歩足を動かすだけでどっと疲れてしまうことばかりですが、これはほんとにリラックスできる。ちゃんと逃がしてくれるエスケープ・ミュージック。

 フローレンス・アンド・ザ・マシーンに対するロシアからのアンサーとか言われたインディ・バンド、ナージャ(naadya)でギターを弾いていたり、ロシア語でナラの木を意味する実験的なシューゲイザー・ポップのバンドでも活動していたというマリア・テリエヴァはもう少し複雑な音楽性に挑んでいて、モートン・サボトニクしか使いこなせないとされるヴィンテージ・シンセサイザー=ブクラを駆使して、トランペットやサックスの音などを重ね、これもフラジャイルで可愛らしい音楽世界へといざなってくれる。これまたアーサー・ラッセル・ミーツ・クレプスキュールというのか、ネオアコ版ミュジーク・コンクレートというのか、それらしいクリシェを挟み込みつつ、アカデミックな着地点には絶対に向かわないところがよろしいかと(エンディングだけは少し重厚さが漂う)。最近では映画『ノクターナル・アニマルズ』で知られるファッション・デザイナー、トム・フォードのためにコマーシャル・ミュージックを手がけたり、サファイア・スロウと共にリンスFMでこの4月に「ビート・ブーケット」と題されたDJショーを展開したりと、頭角を表すのも時間の問題かも。

 それにしてもまったく力が入らない。このまま死ぬまでダラダラしていたいな~。重いものを背負って歩くのは小学生だけにして。

三田格