ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Dolphin Hyperspace ──凄腕エレクトリック・ジャズの新星、ドルフィン・ハイパースペース
  2. KMRU - Kin | カマル
  3. Deadletter - Existence is Bliss | デッドレター
  4. Squarepusher ──スクエアプッシャーのニュー・アルバムがリリース
  5. Free Soul × P-VINE ──コンピレーション・シリーズ「Free Soul」とPヴァイン創立50周年を記念したコラボレーション企画、全50種の新作Tシャツ
  6. Milledenials - Youth, Romance, Shame | ミレディナイアルズ
  7. R.I.P. Steve Cropper 追悼:スティーヴ・クロッパー
  8. ロバート・ジョンスン――その音楽と生涯
  9. Loraine James ──ロレイン・ジェイムズがニュー・アルバムをリリース
  10. Cardinals - Masquerade | カーディナルズ
  11. Jill Scott - To Whom This May Concern | ジル・スコット
  12. interview with Autechre 来日したオウテカ──カラオケと日本、ハイパーポップとリイシュー作品、AI等々について話す
  13. DADDY G(MASSIVE ATTACK) & DON LETTS ——パンキー・レゲエ・パーティのレジェンド、ドン・レッツとマッシヴ・アタックのダディ・Gが揃って来日ツアー
  14. Laraaji × Oneohtrix Point Never ──ララージがワンオートリックス・ポイント・ネヴァーの来日公演に出演
  15. Columns 内田裕也さんへ──その功績と悲劇と
  16. xiexie - zzz | シエシエ
  17. Amanda Whiting - Can You See Me Now? + The Liminality Of Her | アマンダ・ホワイティング
  18. 別冊ele-king 坂本慎太郎の世界
  19. Columns The TIMERS『35周年祝賀記念品』に寄せて
  20. Cindytalk - Sunset and Forever | シンディトーク

Home >  Reviews >  Album Reviews > Shabazz Palaces- The Don Of Diamond Dreams

Shabazz Palaces

AlternativeHip Hop

Shabazz Palaces

The Don Of Diamond Dreams

Sub Pop

大前至   Jun 05,2020 UP

 '90年代に2枚のアルバムをリリースし、'92年にリリースしたシングル「Rebirth of Slick (Cool Like Dat)」が大ヒットし、同曲でグラミー賞も受賞したヒップホップ・グループ、Digable Planets(ディガブル・プラネッツ)。日本ではコアなヒップホップ・ヘッズよりも、ライトな音楽ファンに受け入れられていたという印象があるが、15年ほど前にLAにて彼らの再結成ライヴを観たことがあり、そのときのオーディエンスの盛り上がりは相当なものであったのを記憶している。当時、メンバーのなかの紅一点、Ladygug MeccaはDigable Planetsのイメージに沿ったソロ活動を展開していたが、一方で、もう1人のメンバー、Butterfly(バタフライ)ことIsmael Buttler(イシュマイル・バトラー)が'09年に地元シアトルで結成したグループ、シャバズ・パレセズは、良い意味でDigable Planetsからのイメージを裏切ってくれた。そんなシャバズ・パレセズの5枚目のアルバムが本作『The Don Of Diamond Dreams』である。

 デビューの時点から、シャバズ・パレセズのサウンドはヒップホップをひとつの基盤としながらも、非常に混沌に満ちている。そして、作品を重ねるにつれて、その混沌は方向性を持ち、洗練されたものに進化していく。オールドスクールや'90年代のヒップホップにエレクトロ、Gファンク、そしてPファンクにも通ずる宇宙的、宗教的なイメージが掛け合わされ、さらにトラップの要素もスパイスとして調合されているのは、Ismael Buttlerの息子であるラッパー、Lil Tracyの存在も少しは関係しているだろう。個人的にはSa-ra Creative Partnersなどを思い起こさせるが、シャバズ・パレセズの音楽性はプリミティヴなファンク感というのものがより強烈に迫ってくる。その象徴とも言える1曲がアルバム中盤の“Chocolate Souffle”だ。Ismael Buttlerのヴォーカルは、ラップというよりもポエトリーに近いが、オートチューンとはまた異なるタイプのエフェクトを効かせまくって、リフレインするシンセのメロディとともに中毒性の高いグルーヴを作り出す。スローチューンでありながらも攻撃性の高い“Fast Learner”でも、同様にエフェクトの効いたボーカルが散文的に展開され、さらにゲストMCのPurple Tape Nateのエモーショナルなラップも実に深く響いてくる。すでに50歳を過ぎているIsmael Buttlerであるが、突き抜けたクリエイティヴィティをいまなお生み出し続けていることに感服する。

大前至