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Interview

interview with Jimmy Edgar

interview with Jimmy Edgar

デトロイト・エレクトロ、そのエロスの展開

――ジミー・エドガー、インタヴュー

取材:木津 毅   photos by Linards Kulless   May 23,2012 UP

Jimmy Edgar
Majenta

Hotflush Recordings/Pヴァイン

Amazon iTunes

 ジミー・エドガーの名前を検索していくつかのページを見ていると、三田格が2006年に書いた『スタジオ・ヴォイス』の記事のアーカイヴを発見した(http://archive.studiovoice.jp/369/2810)。それは〈ワープ〉がショウケースを日本で行ったときのもので、このイヴェントには僕も行った。そうたしか、エレクトロニカとヒップホップにジャズを織り交ぜつつ鮮やかな手さばきで調理する神童という触れ込みで、キッチュなエレクトロをやっていたジャクソン・アンド・ヒズ・コンピューター・バンド(懐かしい!)とともに〈ワープ〉の期待の新人としてプッシュされていたはずだ。ただ、記憶を辿ると、ここに三田格が書いているように、ジミー・エドガーのライヴはその夜の〈ワープ〉のラインアップのなかでもとくにガシガシ踊れたように思う。
 記事では〈ワープ〉主宰のスティーヴ・ベケットがヴァリアス・プロダクションと契約したいと話しているが、まさにダブステップもこの時期から本格的に盛り上がりはじめている。ジミー・エドガーがそれから6年を経て、新作をスキューバが主宰でありマウント・キンビーやアントールドを紹介している〈ホットフラッシュ〉からリリースをすることは意外ではあるけれども、現在のシーンにおけるフロア・ミュージックという意味で、ポスト・ダブステップのレーベルとジミー・エドガーの邂逅が成り立ったと考えられるだろう。

 そう、ジミー・エドガーの新作『マジェンタ』は、おそらく我々が彼のことを神童だと見なしていたとき以上に、この若きヴェテラン・プロデューサーのフロアへの情熱を見出せる1枚だ。新作を特徴づけているのはオールドスクールにも遡るエレクトロで、音は整頓されて機能的な作りになっている。クウェズのリミックスを収録したシングル"ディス・ワンズ・フォーザ・チルドレン"のキャッチーなリフレインにしても、イーヴン・キックの"レット・ユアセルフ・ビー"のスペイシーな響きにしても、ごく真っ当にダンサブルなテクノ・トラックとして身体を揺らすことができる。あるいは、シンセでふざけてファンクをやっているような"タッチ・ユア・ボディライン"やヒップホップのビート感覚が健在の"アイ・ニード・ユア・コントロール"、そしてエフェクト・ヴォイスが愛を歌うR&Bの"イン・ディープ"では、ブラック・ミュージックのユーモラスな導入も聞ける。そしてもちろん、デトロイト・テクノの正統な血筋も変わらず流れている。それらがフロアの暗がりへと持ち込まれ、吐息交じりのヴォーカルが行き来しながらエロティックに妖しく光る。

 以下のインタヴューでJ.G.バラードや来世の愛、人間性、銀河の周波数に至るまで語るジミー・エドガーは、『マジェンタ』にスピリチュアルな要素をたっぷり持ち込んでいるようだ。〈ワープ〉時代に"アイ・ワナ・ユア・STD"――「俺はお前のSTDになりたい」と言っていた彼は、その独自の濃密でシュールな愛とセックスをこのフロア・ミュージックに託している。

「この曲はデトロイト・サウンドにするべきだ」と考えてから曲作りをはじめたことはいちどもないんです。なぜだかデトロイト・サウンドが好きなんですよ。ただ、いまっぽい感じの拡張された新しいデトロイト・サウンドを作ってきたとは思っています。

いまもベルリンに住んでいるんですよね? ベルリンはあなたにとっていまも刺激的な街だと言えますか?

JE:いまでもたいていはベルリンにいます。とても住みやすい街なんですよ。冬よりも夏が楽しいんですが、いつもスタジオに篭って仕事をしているので関係ないんですけどね。

あなたはデトロイトで10代から活動していて、ホアン・アトキンスやカール・クレイグ、デリック・メイらと共演していたことがよく挙げられますが、いまでも彼らと交流はあるんでしょうか? 

JE:その3人はいまでもデトロイトに住んでいますが、もちろんいまでも交流はありますよ。ホアンとはしばらく話してないのですが、カールとデリックは世界中のいろんなところで会ったり、連絡を取ったりしています。たまにデトロイトに戻ったときも会いますよ。みんな、素晴らしい友人関係なんです。

前作『XXX』から、リスナーとして好んで聴いていた音楽はどのようなものでしたか?

JE:R&Bばかりですね。80年代、90年代、そして2000年以降から現在までのR&Bのなかでもダンサブルなものですね。それから音楽理論をかなり真剣に学んでいます。一連の規則を学べば、そのルールを壊すこともできると思っていました。これは私の個人的なトレーニングのテーマなのですが、規則を学べば自分で新しいものを創り出すことができると思っています。

では、新作『マジェンタ』について聞かせてください。まず何より、スキューバの〈ホットフラッシュ〉からのリリースというのに驚かされたのですが、これはどういった経緯だったのでしょうか?

JE:友人からポール(スキューバ)に会うように勧められたんです。その際に音を聴かせました。想像とは違うかもしれませんが、直接会って話したんです。メールでのやり取りもかなりしてきました。ポールは私のコンセプトに共感してくれたんです。〈ホットフラッシュ〉は私のクリエイティヴに対して自由を与えてくれました。これは私にとって重要なことなのです。

〈ホットフラッシュ〉のリリース、そのスキューバやマウント・キンビーの音楽についてはどんな印象を持っていましたか?

JE:正直に言うと、リミックスをしたことがあったので、ポールやセパルキュアの音楽は少しは知っていました。最初はダブステップに寄りすぎている感じがしていたんですけど、最終的にはたくさん聴かせてもらって納得できました。友人のアンティウスがLando Kalという名義で『リズム・セクション』という作品を〈ホットフラッシュ〉からリリースしたのですが、けっこう売れているみたいですね。

その〈ホットフラッシュ〉からのリリースとは言え、ダブステップやその流れを受けたポスト・ダブステップと呼ばれるものとは、あなたの新作は別のところにあります。今回はこれまでのジミー・エドガー名義の作品よりもエレクトロ色がかなり増したように思うのですが、それは意識的でしたか?

JE:たまたまです。そんなに深くは意識していませんでした。すべてのものは「ポスト~」となります。私にとっては意味のない定義付けですけどね。自分自身を「ポスト~」のように定義したくはないです。たしかに多くのものから影響を受けてきましたが、広いジャンルに渡るものからなのです。

本作の音楽的なインスピレーションは具体的にありますか? 

JE:『XXX』の直後からこのアルバムに取り掛かりました。『XXX』のフューチャリスティックなヴァージョンという感じですね。でき上がってみたらもっとロウな感じになっていて別物になってましたけどね。これは旅の続きなんです。次の作品はこの旅から完全に切り離して、新しい何かをはじめると思います。リズムをもっと変える必要があると感じています。

それから、エフェクト・ヴォーカルを使ったファンキーなヴォーカル・トラックが多いことから、これまでのダークなムードよりも明るさ、それにユーモアを強く感じます。このような変化に理由は思い当たりますか?

JE:自分のユーモアのセンスがまともじゃないんですよ。

シンセはアナログですか? 今回もあまりコンピュータは使っていないんでしょうか?

JE:シンセはアナログではないですね。デジタル機材とモジュールよりもコンピューターを多用しています。賛否両論あるでしょうね。私は使えるものならなんでも使います。

シングルの"ディス・ワンズ・フォー・ザ・チルドレン"や"レット・ユアセルフ・ビー"などを聴くと、シーケンスやシンセの音色など、やはりデトロイト・テクノに通じるものを感じるのですが、ご自身を「デトロイトが出自のエレクトロニック・アーティストだ」と強く意識することはありますか?

JE:「この曲はデトロイト・サウンドにするべきだ」と考えてから曲作りをはじめたことはいちどもないんです。なぜだかデトロイト・サウンドが好きなんですよ。ただ、いまっぽい感じの拡張された新しいデトロイト・サウンドを作ってきたとは思っていて、デトロイト出身のエレクトロニック音楽のプロデューサーのなかで成功している数少ない人間のひとりだと思っています。だからこそ単純明白に自分のことを「デトロイトの新しいサウンド」だと主張しています。否が応でもそうだと思っています。だけど、私の音楽すべてがデトロイトに影響されているわけではありません。

取材:木津 毅(2012年5月23日)

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