Home > Interviews > interview with Tadzio - 150分の11の騒音
私から見ても......いくつ離れてるんだっけ? わかんない、けっこう歳が離れてるんですけどこんな感じだし。リーダーには同世代の子とかは「若いわね~」ってふうに見えるんじゃないですかね。
Tadzio /Tadzio Pヴァイン |
■おふたりのお名前、部長さんとリーダーさんだったら、どっちも偉いじゃないですか。
リーダー:そうなんです。だからこういう名前にしたんです。どっちかが嫌だってことは絶対やらないっていう意味で。
部長:どっちも部長、リーダーみたいな感じです。
■はいはい。すごいかっこいい名前ですよね。
リーダー/部長:ははははっ!
リーダー:かっこいいですか?
■はい。すごいしびれました。
部長:あはは! けっこう変えた方がいいって言われるんですけど。
リーダー:こんな褒められたの久しぶり。ていうか初めて褒められた!
■だって、若い、新しい世代の女性アーティストが、「オニ」と「ピカチュウ」(あふりらんぽ)を反復したってだめじゃないですか。そうじゃなくて、「部長」と「リーダー」って、いまいろんな映画やドラマなどが思い浮かぶんですが、2000年代の日本のサブカルチャーが描いてきた、若い人間の新しい関係性を象徴するような、いい名前だと思います。
リーダー:ははは。膨らましていただいてありがとうございます。
■いえいえ、クールな名前ですよ。
リーダー:つけてよかったねー。一生リーダーと部長でいいよ。
■あはは! では作品にお話を戻しまして。私"ノーミソ"とか音も言葉も好きなんですが、意外に歌詞が頭に入ってこないんですよね。ノイズとファンキーなリズムがかっこよくて、どちからと言いうと身体がよろこぶ感じなんですよ。で、タッジオにとって歌詞ってどのくらい大事なんですか?
リーダー:とても......大事?
野田:はははは!
部長:とても大事です! 全部、実話とか思ったことを歌詞にしてるんで。
リーダー:すごい嫌いな、まあ、苦手な方がいまして。
部長:ぷっ(笑)
リーダー:その人に問いかけてる感じなんですよ。ノーミソがほんとどこにあるんだろって思って。
■あ、具体的に顔の見えてる曲なんですね。
部長:これはそうですね。
リーダー:(聴いている人が)いろんな人に当てはめてもいいんですが、それがきっかけですね。
■へええ。歌詞はすっごく大事なんですね?
部長:あははは、歌詞を聴かせたいわけではないんですが......
リーダー:歌詞を書いてるのもすごい楽しい。
部長:うん。
■そうなんですね。詞に、現代の風俗を感じさせるようなものが全然出てこないなと思って。辻でブルースマンが悪魔と契約するシーンを下敷きにしてたり、ビッグマフへの憧れがあったりとか、ピストルズも出てきますし、「ファックユー」と中指を立てるようなポーズを感じさせたり、ちょっと古い世界の言葉でできてますよね。ひとつだけ現代を感じさせるのが"カピバラ"。
リーダー:あ、電車かな?
■電車も出てきますね。カピバラ自体にもいまを感じますが。
野田:何? カピバラって。
■動物ですよ。ゆるキャラです。
リーダー:ほ乳類の中でいちばん歯が強いらしくって......
部長:すごいのほほんとしてるのに、牙だけグワーッ! ってなってるんです。
リーダー:そういう歌ですね。それが神様に勝ったっていう。
■うんうん。それでその"カピバラ"だけがいまっぽいなんて、いまの世界は嫌いなのかな? って思って。
リーダー/部長:えーっ(笑)!!
リーダー:あははは。全部リアルなものですよ。私たちの世界の。
部長:まあ、イライラしてることは多いのかもしれませんけど、べつに嫌いとかではないですね。ふつうですよ。
リーダー:そう。日常で起こったことを歌詞にしてる。
■なんか、友だちとどこそこへ行ったとか、その駅名がでてきたりとかしないなと思いまして。あるいは恋愛をテーマにすることがあっても、現実のディテールにこだわる書き方ではなくて、もっと抽象的というか......
リーダー:抽象的ってなんですか?
■ええと、じゃ、誰かを好きだとして......
リーダー:あ、でもラヴ・ソングはいっぱいあります。
■え? そうですか。
リーダー:1曲めとか3曲めとか。
部長:"ビースト・マスター"は恋愛の曲です。
■あー! "ビースト・マスター"が恋の歌だとすれば、私的に、相手は女の子のように感じられます。
リーダー:なんかかっこいい人でもブスと付き合ってる人とか多くて、でもそれは......
部長:見た目はブスでも中身がきれいな人を好きになるからあいつは素敵よ、みたいな。あたしはきれいだけど、中身はブス、という曲です。
リーダー:でも、片思いの曲なんです。
野田:三角関係の曲なんだ。
リーダー:そうです。三角関係です。ふつうの男女の恋愛の曲です。
■でもその相手の男性よりも、女性に向けてる視線の方が濃くないですか? 深いっていうか。こんなに深い観察が生まれているわけで。
リーダー:はい。
■いま"ノーミソ"の話になりましたけど、"ノーミソ"とかって神様やカリスマのいない世界のことを歌っていると思うんですね。"ベルギー"で言えば「あの子」。神様とかあの子とか、そういう特別な、唯一の存在っていうものがいない場所。で、いるのはカピバラなんです。それが世界だ。って言ってるのかなと思いました。
(一同笑)
■えっと、かけがえのない存在ってあるじゃないですか。それが、ない。というか成立しない世界。いまってインターネットがあればどこにでもつながるし、たいていのものが手に入りますよね。職場とか地域のつながりとかにしたって、昔のような結びつきとかしがらみ、そこにいるのが自分じゃなきゃいけない感覚って薄いですし、他の誰でも原理的には替えがきく。そういうすごく流動性の高い社会なわけですよね。神様も彼女もあの子もいないんだけど、カピバラみたいなゆるキャラだけがはっきり存在してる。鋭い牙を隠し持って......。そんなとこが現代的な感覚だな、と。
(一同笑)
部長:そこまで考えてないです。
リーダー:べつに、神様に頼らなくても、哺乳類=人間だけでやってけるよっていう。クロスロードに行ったら、神様はいなくてカピバラがいたから、あ、自分たちだけでなんとかしろってことねって思った、という。
■タッジオって、まず詞ではなく音が聴こえてくるので、しかもいまっぽい言葉が希薄なので、詞って大事じゃないのかなあって思ってたんですよ。でも違うんですね。
リーダー:はい。うちらがいまっぽくないからそうなんだと思います。
■はぁ。
リーダー:まあ、だからお互いいまっぽくないってだけなんですけどね。ね?
部長:うん。
野田:そういう、「いまっぽくないな」っていう感覚はあるんですか? 普段生活してて。浮いてるとか、同世代と合わないとか。
部長:たぶん、リーダーはあるのかもしれないよね。まわりに大人が多いんで。私から見ても......いくつ離れてるんだっけ? わかんない、けっこう歳が離れてるんですけどこんな感じだし。リーダーには同世代の子とかは「若いわね~」ってふうに見えるんじゃないですかね。
野田:じゃ、リーダーくらいの人たちの典型的な同世代像ってどんな感じなんですか?
リーダー:うーん、リーダーの同世代......?
野田:部長はなんとなくわかるよね。トラットリアとかコーネリアスとか聴いててさ。
リーダー:うーん、同世代、同世代......
■何してたりするんですか? バイトとか?
リーダー:うーん......みんな何してるんだろう。
部長:とくにバンドはじめてからは、同世代の人とかとは遊ばないもんね。
リーダー:もとから友だちいなかったのにもっといなくなっちゃった。
取材:橋元優歩(2011年5月27日)