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interview with Tickles

interview with Tickles

時計仕掛けのメルヘン

――ティックルズ、インタヴュー

野田 努    写真:小原泰広   May 24,2012 UP

Tickles
on an endless railway track

MOTION±

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 今日の文脈で言えば、アンビエント・ポップ(そしてIDMリヴァイヴァル)に当てはめることもできるだろう。ひと言で言えばロマンティックな音楽で、ベルリンの〈モール・ミュージック〉や〈カラオケ・カーク〉、ケルンの〈コンパクト〉から出ていたとしても違和感はない。トゥ・ロココ・ロットやウンダーの叙情、あるいはクライドラーの室内楽的なエレクトロニカを思い出す。とにかく、このあたりの固有名に反応する人が好きな音である。エイフェックス・ツインのような冗談があるわけではなく、ボーズ・オブ・カナダのような幻覚症状があるわけではないが、オルゴールのようにまとまりをもった愛らしい音楽と言える。わずかな感情の変化にも敏感に感応するような、ピアノ、ないしはトイ・ピアノの音が心地よい。先日、イーライ・ウォークスのデビュー・アルバムを出したばかりの中目黒の〈MOTION±〉が新しくリリースするのは、「かねてから目を付けていた」という湘南在住の鎌田裕樹のプロジェクト、ティックルズの3枚目のアルバム『オン・ア・エンドレス・レイルウェイ・トラック』だ。ちなみに〈MOTION±〉レーベルをやっているのは、〈ワープ〉をライセンスしているビートインクの元スタッフと元『remix』編集部のテクノ担当者なので、おのずとレーベルが好むところの音楽性もうかがい知れよう。
 『オン・ア・エンドレス・レイルウェイ・トラック』の帯には、レーベルによる「線路は続くよ どこまでも」 というコピーがある。僕はそのコピーを最初に見たとき、あまりの身も蓋もない表現に「マジっすか!」とレーベルの人に笑ってしまったが、CDの封を切ると中面に手書きの線路があった。3拍子の曲からはじまる『オン・ア・エンドレス・レイルウェイ・トラック』は、ある意味では汚れのないイノセントなアルバムだ。それは牧歌的な情熱によって、リスナーをゆっくりとした旅に連れて行く。

逆にそんな時期だからこそ、音楽というのは感情を逆撫でするようなものではなく、単純にもっと優しさを感じ取れるようなものであっても良いのかなって。みんながみんな怒りや反発の方向を向いていてもそれはそれで芸がないというか......

■インタヴュー前にいったいどんな見た目の人なのかなって想像していたんですが、想像とまったく違っていました(笑)。

tickles:はははは。どんなイメージだったんですか?

■もっとシャープな線の細い感じの人をイメージしていたんですけれど。

tickles:太めです(笑)。

■だははは。いい意味で裏切られたというか、敬意を込めて言いますけど、ひと仕事し終えてきたって感じっすね。ま、ビールでもどうぞ(笑)。プシュ。

tickles:ありがとうございます。プシュ。

■では、さっそくですが、よろしくお願いします。

tickles:お願いします。

■荒井君(レーベルのスタッフ)からティックルズのことを教えてもらって、僕の好みの音楽であるのと同時に、最近、日本のアンダーグラウンドにおいて共通した感覚が増えてきているなという印象を持っていたので、ぜひ話を聞いてみたくて。

tickles:ありがとうございます。

■それを感じることってあったりしますか?

tickles:ライヴではいろいろなジャンルの人とやらせてもらうんですけれど、これまで自分と近いなって感じた経験はほとんどないですね。まあ、あくまで僕の知っている範囲では、という感じですけれども。

■スタイルは違うけど、たとえばフォトディスコとか、彼もある種の穏やかさというか、平穏を表現しているアーティストなんですけれどね。

tickles:興味ありますね。今度、聴いてみます。

■ポスト・ロックやエレクトロニカって聴いていましたか?

tickles:エレクトロニカはそれほどのめり込んで聴いたわけではないですが、ポスト・ロックに関しては20代の初めによく聴いていたし、ライヴもよく観にいっていました。なかでもゴッドスピード・ユー!ブラック・エンペラーが大好きでしたね。

■へえ。でも現在のティックルズの音楽性はゴッドスピード・ユー!ブラック・エンペラーとは全然別物というか、むしろ対極じゃないですか? 初期のフォー・テットやディラン・グループのほうに近いような気がしますれけど。

tickles:もちろんフォー・テットやディラン・グループも好きでしたよ。でも自分が表現したい本当のところは、むしろゴッドスピード・ユー!ブラック・エンペラー寄りというか。もっと激しいものであって、それを自分なりに押し進めていった結果、現在のような音楽性に辿り着いたという感じなんです。

■ゴッドスピード・ユー!ブラック・エンペラーに強く惹かれたのは、どうしてなんでしょう?

tickles:ゴッドスピード・ユー!ブラック・エンペラーのサウンドは、猛烈にアナーキーでインディペンデントな臭いがして、とにかくそれがかっこ良かったですね。その当時僕はメッセージのある音楽が好きで、音楽っていうものはファッションになってはいけないというか、もっと力強いものでなくてはいけないと思っていたので、ゴッドスピード・ユー!ブラック・エンペラーのあの強烈なメッセージ性というか、パンク的な要素がとにかく胸に突き刺さったんですよね。
 でも、その後、自分で音楽を作るようになってから考え方がちょっと変わってきて。作品をリリースしたあとは、その作品って作り手の手を離れて、リスナーのものになるじゃないですか? というか、僕はそう思っていて、そうであれば、メッセージよりも、聴き手に寄り添うような作品であればいいなと思うようになって。それでだんだんいまのような作風になっていった感じです。

■ゴッドスピードって、もしかしたらレディオヘッドの『キッドA』よりも大きな影響力を持っていたかもしれない......ただ、それらがティックルズとはどうも結びつかない(笑)。

tickles:まあ(笑)。とはいえ、間違いなく自分のルーツだし、大きな影響を受けていることはたしかです。いつかはゴッドスピード・ユー!ブラック・エンペラーのような大所帯バンドで、いまの音楽をライヴでやってみたいなって思ったりしますね。

■ゴッドスピードには有名な、"ザ・デッド・フラッグ・ブルース"の「車は燃えている、運転手はいない。下水道は孤独な自殺者で溢れている......」というフレーズがあるじゃないですか。彼らはこの世がいかに絶望的か、それをとことん表現したバンドでしたよね。でも、ティックルズは、リスナーに暗い現実を叩きつけるようなことはしないじゃないですか?

tickles:それはそうですね。むしろいまはそうあるべきじゃないと思っています。

■その意味では、対極であるとも言えますよね?

tickles:なるほど。そういう意味では、まさに対極ですね。暗い現実を叩きつけるなんて、やりたくないですからね。

■それはなぜですか?

tickles:いま、時代的になのかもしれませんが、いろんなことに反感を持ったり、強いメッセージを持った曲が多いという印象を持っているんです。自分としてはそればっかりになってしまっては表現としては面白くないなと思っていて。逆にそんな時期だからこそ、音楽というのは感情を逆撫でするようなものではなく、単純にもっと優しさを感じ取れるようなものであっても良いのかなって。みんながみんな怒りや反発の方向を向いていてもそれはそれで芸がないというか。ティックルズとしての表現は、いまはそういうものだと考えています。

■ティックルズの音楽にはパンク的な要素がどのような形で存在していますか?

tickles:サウンドというよりはむしろ活動のスタイルや精神的な部分ですね。これまで2枚アルバムを自分のレーベル〈マダガスカル〉から出しているんですけど、それは音作りはもちろん、流通やプロモーションも可能な限りすべて自分たちの手でコントロール出来るようにやっていました。そうしたDIY的なやりかたで音楽を世に送り出すということが、僕にとってのパンクかなと思いますね。今回は本当に信頼できる仲間たちと一緒にやれるチャンスだったので、〈MOTION±〉からリリースすることになりましたけど。

■本作も制作においては、ほとんど自分ひとりでやっているわけですよね?

tickles:そうですね。

取材:野田 努(2012年5月24日)

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