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interview with Cornelius

interview with Cornelius

あなたをあなたに保つもの

──コーネリアス、『攻殻機動隊 新劇場版 O.S.T by Cornelius』インタヴュー

取材・文:北沢夏音    聞き手:北沢夏音、編集部(橋元)  写真:寺沢美遊   Jun 18,2015 UP

Cornelius
攻殻機動隊 新劇場版 O.S.T.music by Cornelius

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坂本真綾、Cornelius
あなたを保つもの/まだうごく

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V.A.
攻殻機動隊ARISE ALTERNATIVE ARCHITECTURE/新劇場版 Music Clips:music by Cornelius

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 小山田圭吾a.k.a.コーネリアス。
 彼と初めて会ったのは1990年だから、いまから25年前ということになる。25年の歳月は世界の様相を激変させたけれど、どんなときも自然体を守り、自分の生き方と時間軸を保ちながら、音楽的にもめざましい進化を遂げたコーネリアスの軌跡は、アーティスト・ネームの由来となったSF映画に因んで「この惑星の霊長類史上稀にみる」と形容したくなるほど稀有なものがある。

 2006年の『Sensuous』以来、オリジナル・アルバムこそリリースされていないが、インターナショナルなオファーが絶えないリミックスやCMワークス、Eテレの教育番組『デザインあ』の音楽制作、salyu ×salyuなどのプロデュース、そしてYoko Ono Plastic Ono Band、YMO、高橋幸宏&METAFIVEなどのメンバーないし準メンバーとしての活動を通じて積み重ねてきたコラボレーションの数々は、不在を感じさせるどころか、他に例を見ないほど充実している。

 彼が約3年間に渡って音楽を手がけた、89年の原作発表以来25周年を迎える日本におけるサイバー・パンクの金字塔的作品『攻殻機動隊』の前日譚『攻殻機動隊 ARISE』も、現在オンエア中のTVアニメ『攻殻機動隊 ARISE ALTERNATIVE ARCHITECTURE』ならびに映画『攻殻機動隊 新劇場版』をもって、一連のシリーズを完結する。
 作品の舞台は近未来――といってもいまからわずか12年後の――2027年の日本だが、坂本慎太郎との共作によるそれぞれの主題歌、“あなたを保つもの”と“まだうごく”は、映像作品のテーマ・ソングという役割を超えて、なぜか2015年現在の日本を覆う不穏な空気に対するアンサー・ソングのように響いてくる。

ほら 見て 今までの 約束 破棄された
新たな この世界 あなたを 保つものが
あな たの あな たが
あな たを あな たに
あな たの あな たが
あな たを あな たに
してる
“あなたを保つもの”

 しばらく会えずにいる間も、彼が創造する音楽はいつも近くに在った。
 心が波立つとき、彼の音楽に耳を傾けると、平穏な気持ちを取り戻す。感覚を研ぎ澄ませたいとき、彼の音楽に全身を浸せば、マインドのセットアップが完了する。
 ぼくにとって彼の音楽は、「自分を保つもの」として欠かすことができない。

 いま、ぼくらが生きるこの国で、奇妙な事態が進行している。
「今から おきる ありとあらゆる現実を 全部 見て 目に 焼き付けよう」
 4年前、坂本慎太郎と小山田圭吾が、salyu × salyuというプロジェクトで発したメッセージが、いま再び、別の意味合いを帯びはじめている。

どこまでも どこまでも 続く道を
すこしずつ すこしずつ 歩くために 理由がいる

まだ うごく
まだ みえる
“まだうごく”

 どこからか声が聞こえる。
 自分のゴーストに従え、と。


■コーネリアスが手掛ける「攻殻機動隊ARISE」シリーズの劇中曲
世界中のクリエイターに影響を与え、映像作品としても革命的なインパクトを残し、歴史にその名を燦然と刻む傑作SFアニメ映画『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』(1995年)。その“生誕”──士郎正宗による原作『攻殻機動隊』25周年を記念して、今週末より長編アニメーション映画『攻殻機動隊 新劇場版』が公開される。同作は、現在放送中のテレビアニメ『攻殻機動隊ARISE ALTERNATIVE ARCHITECTURE』とともに「攻殻機動隊ARISE」シリーズの完結編となり、そのラストを締めくくるテーマソングを、同シリーズのサントラを手掛けてきたコーネリアスと主人公・草薙素子を演じる坂本真綾とが彩る。
Salyuや青葉市子から、ショーン・レノン、高橋幸宏までを迎え、坂本慎太郎が詞を提供することでも話題となった、このスペシャル・コラボレーションによる一連の音楽作品は、2枚のサントラ盤をはじめとしたいくつかのリリースによって楽しむことができる。川井憲次、菅野よう子からの連続性の上に、新たな“攻殻”の音世界が築かれていることがはっきりと感じられるだろう。このたび発表されるのは『攻殻機動隊 新劇場版O.S.T by Cornelius』ならびにシングル『あなたを保つもの / まだうごく』、そして貴重なライヴ映像等を収めたミュージック・クリップ集『攻殻機動隊ARISE ALTERNATIVE ARCHITECTURE/新劇場版 Music Clips:music by Cornelius』。どこから観て、どこから聴いても特別な作品群だ。

■Cornelius / コーネリアス
フリッパーズ・ギター解散後、1993年から開始された小山田圭吾によるソロ・プロジェクト。ソロ・デビュー22年を迎え、国内外多数のアーティストとのコラボレーションやリミックス、プロデュースなどますます幅広く活動する。2008年にリリースされた「Sensurround & B-Side」がグラミー賞のベスト・サラウンド・サウンド・アルバムにノミネート。「UNIQLO」「CHANEL」などのCMや「デザインあ」(NHKEテレ)といったTV番組ほか、映像とのコラボレーションも多い。http://www.cornelius-sound.com/

これまで僕がコラボレーションしてきた人たちが、ここに集まった、っていう感じはあるかな。

小山田圭吾(以下、小山田):すごい久しぶりだよね。ライヴでチラッと会うくらいだもんね。

北沢夏音(以下、北沢):そうだね。何回かそういうこともあったけど……。

小山田:いや、もう20年くらいは取材とかしていないんじゃない(笑)?

北沢:……かもしれない。つねに取材はしたかったんだけどね。音も聴いていたし、小山田くんの活動はつねにフォローしてる。

小山田:取材してたといっても、いちばんやったのはフリッパーズの頃だよね。

北沢:うん。だけど、『バァフアウト!』を創刊してしばらくのあいだ、コーネリアスのデビューから少なくとも『69/96』までは必ず取材してた。

小山田:そうだそうだ。それも20年近く前だからね(笑)。

北沢:『Fantasma』のときは『クイック・ジャパン』でクロス・レヴューする企画があって、ぼくは映画『渚にて』の終末観と重ね合わせて原稿を書いたことまでハッキリ覚えてるんだけど、取材が実現したかどうか……してないかもね。

小山田:そうか。不思議だね。

北沢:あんまり久しぶりだから、どこから切り出していいかわからないけれども。そうだな、まず、今回の『攻殻機動隊 新劇場版O.S.T by Cornelius』の音源を頂いてから、もうずーっと聴いてる。たんなる劇伴ではない、アルバムとしてのトータリティをすごく感じる。このサントラ盤自体、小山田くんがこのところ行ってきた、いろんな人たちとのコラボレーションの集大成といえるものになっていて、その精華がギュッと集約されてる。それだけでも十分すぎるくらい価値がある素晴らしいアルバムになっていると思った。
この『攻殻機動隊ARISE』のシリーズのサントラについては、前に出ているもの(※『攻殻機動隊ARISE O.S.T.』)も買って聴かせてもらってたんだけど、今作は前作とのつながりもありつつ、もっと広がりがあるというか。坂本真綾さんがヴォーカルをとるTVアニメ『攻殻機動隊ARISE ALTERNATIVE ARCHITECTURE』のオープニング・テーマ“あなたを保つもの”と『攻殻機動隊 新劇場版』主題歌“まだうごく”という核になる2曲がまずあって、だけどそれだけじゃなくて、高橋幸宏さんがヴォーカルの“Split Spirit”とか、ショーン・レノンがヴォーカルの“Heart Grenade”とか、既発の曲もピタッとハマっているし、アルバム全体がものすごく起伏に富んでいる。環境音楽的なアプローチだったり、ミニマルやノイズ、はたまたアグレッシヴでエッジィなギター・ロック・サウンドが聴けたり、曲想もヴァラエティに富んでいて、最後まで飽きずに聴けるし、繰り返し楽しめる。

小山田:よかった。

北沢:ぼくは、ショーンと合作した“Heart Grenade”がすごく好きで。メロディとか展開は完璧にコーネリアスなんだけど、ショーンが詞を書いて彼の世界観が投影されることによって、普遍的なモダン・ポップに仕上がっていて、最高だなと思った。今回『攻殻機動隊OST 2』をまとめるにあたって、どういう構想があったの?

小山田:うーん。まぁ、とくに構想というのはなくて、基本はサントラなんで、映画の劇伴と主題歌を集めたものなんだけど。『OST 1』はボーダー1(※攻殻機動隊ARISE border:1 Ghost Pain)と2(※攻殻機動隊ARISE border:2 Ghost Whispers)で、今回の『OST 2』はボーダー3(※攻殻機動隊ARISE border:3 Ghost Tears)、4(※攻殻機動隊ARISE border:4 Ghost Stands Alone)と劇場版ということで。「ボーダー1」は全部で50分ある最初のやつで、比較的多くの曲が必要だったから、(それを作った時点で)もうある程度のヴァリエーションが出揃ってて──だから1、2で“『攻殻』の劇伴”というのはすでにあったんだけど、3、4と劇場版で少しずつ曲が増えていったという感じ。それぞれの映画にテーマがあって、それに沿う形で曲ができていった感じかな。

北沢:その核にあったのは、やっぱりオープニングとエンディングのテーマ?

小山田:まぁ、そうですね。毎回エンディング・テーマがあって、それは主題歌ということで、映画によって多少内容が変わってくる、っていう感じなんだけど。


サイバー・パンク的なSFにYMOが与えた影響ってあるんだろうね。日本の未来感みたいな。そういう意味でも、僕がやってきたコラボレーションと、『攻殻機動隊』の世界観がハマったなっていう感じ。

北沢:おそらくSalyuのプロデュースをやったことから、現在にいたる流れがはじまったんじゃない? salyu × salyuの『s(o)un(d)beams』(2011年)の中の曲は前作のOSTに起用されてなかったっけ。あれはちがうか。

小山田:『s(o)un(d)beams』の中の曲じゃなくて、『攻殻機動隊』用の書き下ろし(※salyu × salyu“じぶんがいない”)だったんだけど。ちょうど「ボーダー1」をやる前にsalyu × salyuのプロジェクトをやって。それでSalyuに「最近何やってるの?」って訊かれて「『攻殻機動隊』のサントラやるんだよ」って話をしたら、彼女がこの映画をすごく好きだったみたいで、じゃあ、って頼んだという流れで。今回のも含めて、これまで僕がコラボレーションしてきた人たちが、ここに集まった、っていう感じはあるかな。
偶然かどうかはわからないんだけど、Salyuが『攻殻機動隊』を好きだったり、ショーンにも(ヨーコ・オノ・プラスティック・)オノ・バンドのライヴでロンドンに行ったときに『攻殻機動隊』の話をしたら、彼も観ていて好きだったみたいで、そういう縁があった。幸宏さんはさすがに観てなかったんだけど、以前のシリーズで“ソリッド・ステイト・ソサイエティ”っていう話があって(※『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX Solid State Society』)。

北沢:そのタイトル、モロにYMOだ。

小山田:そう。ああいうサイバー・パンク的なSFにYMOが与えた影響ってあるんだろうね。日本の未来感みたいな。そういう意味でも、僕がやってきたコラボレーションと、『攻殻機動隊』の世界観がハマったなっていう感じ。

北沢:ミレニアム以降、『Point』(2001年)を分岐点に小山田くんの楽曲の作り方が変わって、『Sensuous』(2006年)にいたるまで、その方法論を発展させてきた過程というのは、すなわちひとつの音をどう響かせるか、それを研ぎ澄ませてきた過程だという気がするんだけど。そういうなかで自分の声や言葉の響き、作詞についても新しいアプローチをして、その流れでSalyuとのコラボもあって。やっぱりすごく大きかったと思うのが、坂本(慎太郎)くんとの共作をそこでスタートさせたことかなと。共作のきっかけは?

小山田:それは僕から提案したんじゃなくて、Salyuが「(作詞は)坂本くんがいい」って言ったんだけどね。僕も坂本くんがいいなと思っていたんけど、バンドがちょうど解散したばっかりで。

北沢:ゆらゆら帝国はもうなかったんだね。(※2010年3月31日付けで解散を発表)

小山田:あんまり活動をやっていないし、(そんなときに)頼むのもどうかなって思っていたんだけど、Salyuが「坂本さんがいい」って言ってるからお願いしたら、やってくれるって。


視点が、僕としてはすごく共感できる。客観性を絶対に失わないで、ユーモアみたいなものも含んでて。いままで坂本くんが作ってきたものを含めて、そう思うんだけど。

北沢:小山田くんと坂本くんの共作のやり方って、先に坂本くんの詞があるわけじゃないよね? 彼自身のいつものスタイルも詞先じゃないっていうし。彼とどういうふうに共作したのか、あらためて教えてほしいな。

小山田:salyu × salyuのときは、僕がデモ・テープみたいなものを持って行って、アレンジも全部できていて、メロディ・ラインもシンセで入っている音源をSalyuにまず渡して。Salyuがそこにデタラメな──自分が発語したい言葉で仮メロを入れるんだけど、それは何語でもなくて、メロディに対して彼女が発語したい言葉を歌っているっていうすごい変なもので。それを坂本くんが聴くと、何か空耳的にいろいろ聴こえてくるらしいんですよ(笑)。それを歌詞の言葉に置き換えるみたいな作業だったのね。
salyu × salyuの頃はそういう作業だったんだけど、今回の『攻殻』に関してはデモ・テープを坂本くんに渡して、あとはとくにディレクションもなく、わりと好きに書いてもらった。でもその前に『攻殻機動隊』のDVDボックスを渡して観てもらって、なんとなくその世界観を掴んでもらってから、後はおまかせっていう感じだった。「じぶんがいない」(※「border.1」エンディング・テーマ)っていう曲に関しては、言葉がパズルみたいになってて、声が入り組んでいって、言葉が増えていくことによって、メロディができていくみたいな……。

北沢:「き、き、き、きく、きく、きおく」みたいな感じ?

小山田:うん。一文字で意味があって、二文字でも意味があって、三文字でも意味がある、みたいな言葉があったら当てはめてほしい、とかは(坂本くんに)言ったけど。

北沢:小山田くんからお題を出した?

小山田:うん。で、それ以外の曲に関しては、何もディレクションはなかったかな。

北沢:それにしてはものすごくジャストな詞だよね。しかも“あなたを保つもの”を聴いたとき、これは作詞が小山田くんだと言われたら信じちゃうような、わりと小山田くんっぽい感じも入ってるなって。最初にもらったとき、小山田くんはそう思わなかった?

小山田:うーん。そうかな?

北沢:自分ではあんまり?

小山田:「うで ゆび あし つめ」とか?

北沢:うん、そういうところも。

小山田:まぁわかるけど。メロディを作ってる人が僕だし、あんまり“日本語のポップス”(の常道)じゃないところに言葉を当てはめようとすると、そういう言葉が入るのかなっていうのは。でも、僕にはできないようなものにはなっていると思うんだけど。そこはやっぱり坂本くんの力。

北沢:“あなたを保つもの”だと、どの言葉がとくに坂本くんっぽいと思った?

小山田:うーん。具体的にはわからないけど、ホントに上手いなと思うんだよね。言葉のはめ方もそうだし、歌ってて……というか、発語して気持ちいい、みたいなところをまったく損なわないで、なおかつ文章としてもおもしろくて、深い意味も感じられるような歌詞の言葉を作れる人だと。しかも視点が、僕としてはすごく共感できる。客観性を絶対に失わないで、ユーモアみたいなものも含んでて。今回だけじゃなくて、いままで坂本くんが作ってきたものを含めて、そう思うんだけど。


「あなたを保つもの」、つまり「ゴースト」っていうものを、いろんな角度から言っている、ってことだと思うのね。そのなかで坂本くんのいままでやってきたことと重なる部分もあって、それがまたいろんなかたちで出てきているっていう。

北沢:“あなたを保つもの”と“まだうごく”を聴いて感じたのは、もともと彼自身のなかでも、「幻」(ゴースト)がかなり大きなテーマとして存在していたんじゃないかということ。坂本君の最初のソロ・アルバムのタイトルが『幻とのつきあい方』だし、一方『攻殻機動隊 ARISE』のシリーズを通してのオープニング・テーマが“GHOST IN THE SHELL ARISE”でしょう?
それで、「幻ってなんだろう?」と考えたときに、英語の「ghost」には「幻影」や「幽霊」のほかに、キリスト教的な「聖霊」という意味もある。これを日本的に解釈すると、草木に宿る「精霊」とか「死者の魂」、さらには人間の内奥にある魂(ソウル)や精神(スピリット)をも「ゴースト」と呼んでいいだろう、とぼくは思う。もしそうであるなら、「あなたを/保つもの」、あるいは「あな/たを/あな/たに/してる」ものとは、人間の五体に備わっているさまざまな器官のみならず、目に見えない、フィジカルではない霊的なもの――つまり、「体を/捨てても/あなたを/保つもの」――の力によって、人は自分自身を保ち、命と心を支えられているんじゃないか、と。そういう想いをこの2曲の詞から感じた。
それが当たっているかどうかは坂本くんに訊かないとわからないけど(笑)、ぼく自身はその考えにまったくうなずけるというか、自分はきっとそうだな、って思ったりもした。小山田くんは、自分が何によって保たれていると思う?

小山田:なんだろうね(笑)。うーん。

北沢:こういう質問は面倒臭いかもしれないけど、ちょっと訊いてみたかった。

小山田:うーん、よくわからないな。


坂本真綾とコーネリアスによるシングル『あなたを保つもの / まだうごく』のジャケット。カバー・イラストは詞を提供した坂本慎太郎が自ら手掛けている。


北沢:体を捨ててもあなたを保つもの。

小山田:この映画のテーマ自体がそういうものっていうか。(草薙)素子っていう主人公がいて、(生まれる以前に)“義体”っていう体にされてて。

北沢:サイボーグ?

小山田:サイボーグ……、まぁサイボーグなんだよね。生まれながらにサイボーグで、ゼロ歳児の義体っていうところ(出生)から、「自分を保つものはいったい何なんだろう?」ってつねに悩んでいるというか。その魂みたいなものを映画のなかでは「ゴースト」と呼んでいるんだけど、基本的なテーマがその「あなたを保つもの」っていうこと。で、坂本くんの詞に関しても「あなたを保つもの」、つまり「ゴースト」っていうものを、いろんな角度から言っている、ってことだと思うのね。世界観やテーマもはっきりしているから、そのなかで坂本くんのいままでやってきたことと重なる部分もあって、それがまたいろんなかたちで出てきているっていう。

北沢:“まだうごく”には、「昔は幻に/名前がついていた/ひどく大切な/もののように」という一節があったり、「素敵な人たちは/先に行ってしまった」っていうフレーズがあったりするけど。なんか、それこそ石橋英子さんがジム・オルークさんたちとやっているバンドの名前「もう死んだ人たち」(石橋英子 with もう死んだ人たち)じゃないけど、もう死んでいる人たちの音楽を聴いていることが、やっぱり坂本くんは多いみたいで、それも小山田くんとの対談で言っていた気がするんだけど……。

取材・文:北沢夏音(2015年6月18日)

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