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interview with Orbital

interview with Orbital

この先モンスター注意

──オービタル、インタヴュー

質問・文:三田格    通訳:青木絵美   Sep 19,2018 UP

音楽の核……つまり作家でいう声……はつねに自分の中にあるもので、俺が14歳のとき、初めて作曲をしたときから現在に至って存在するものだ。それは人間の核のようなものであり、変わらないものだ。


Orbital
Monsters Exist

ACP Recordings / Pヴァイン

Techno

Deluxe Edition
Amazon Tower HMV iTunes

Standard Edition
Amazon Tower HMV iTunes

 もはや習性というのか、オーソドックスなテクノやハウスのシングルも日に10から20枚は試聴してしまう。RAが毎月集計しているベスト50もイントロぐらいは聴いている。コンピレーションもバリバリ聴いている。この夏のお気に入りはDJコーツェ“Hawaiian Soldier”やバンボウノウ“Dernier Metro”、あるいはデイヴ・アジュ“They Sleep We Love”やトマ・カミ“Sharp Tool In The Shed”などだった。テル“Cool Bananas”のベース・ラインが頭から離れず、あまりの暑さでバカになったのかと思う日もあった。
 古くからの読者がいるとしたら少しは驚いてもらえるのではないかと思うのだけれど、〈ハートハウス〉や〈ストリクトリー・リズム〉、〈リリーフ〉や〈トレザー〉の新作まで聴いている。というより、ここ数年はその辺りの音を聴いていてもまったく違和感がないといった方がいいだろうか。ごく最近、リリースされた例で言えば『Future Sounds Of Jazz』の「Vol. 14」に〈ニュー・グルーヴ〉から91年にリリースされたベイジル・ハードハウス“Breezin’”が紛れ込んでいたり、ハーバート「Part Two」や「Part Three」がリプレスされ、ペギー・グーが“At Night”をリミックスし、そもそも〈ムードミュージック〉のコンピレーション・タイトルが「バック・トゥ・ザ・フューチャー」である。ぜんぜん進歩がないというか、大して違いがないなら、どうせだったら懐かしい曲を聴いちゃうぞと思うこともしばしば。テクノやハウスの新曲にはそれぐらい新鮮味が薄い。90%以上がただの焼き直しだし、ヴァリエイションの域を出ない。そう思って、ある種の充実感を求めてクラシックばかり聴き出すと、いつのまにか80年代も通り越してピンク・レディーまで聴いているので、過去というのは実に恐ろしい。しかも再発見などというファクターも潜んでいたりするので実にややこしい。皆さんはどうやって過去から逃れているのでしょうか。
 オービタルのクラシックも強力である。正直言ってデビュー当初から現在に至るまで、そんなに難しいことや抜きん出たことをやってきた人たちだとは思わないんだけれど、にもかかわらずオービタルやアンダーワールドが国民的バンドとしてイギリスの音楽界にしっかりと君臨しているということは、その単純さがイギリスの国民性だとかウサギの穴だとかにピッタリとハマってしまったからだと考えるしかないだろう。僕はアメリカの音楽ではドライすぎるし、日本の音楽はウェット過ぎると感じるタイプなので、その中間あたりを狙ってくるイギリスの音楽が最も肌には合っている。“Chime”や“Belfast”、“Lush”やゴールデン・ガールズ名義の“Kinetic”は飽きないし、嫌いになりようがないというか。
 オービタルは2002年に解散し、2009年に活動再開、さらに2014年にまた解散するなど、まったくもって安定感がないけれど、この10年ぐらいはおそらく弟のポール・ハートノルだけが曲をつくり、兄のフィル・ハートノルはライヴを手伝っているだけというスタンスに見える。なので、6年ぶりとなる新作の『Monsters Exist』もポール・ハートノルがインタヴューに応じてくれた。


俺がやっていることは、初期のロックンロールの人たちがやっていたことと大して変わらないと思う。バディ・ホリーの“Peggy Sue”を聴いても、俺は同じことをやっていると思う。

イギリスは学校教育でDJのやり方を教え始めましたけれど、オリジナル・レイヴ世代としてはどう思われます? 政府としては外貨を稼ぐ手段として肯定したということだと思いましたけれど。

ポール・ハートノル(Paul Hartnoll、以下ポール):それは知らなかったな! DJもスキルのひとつだ。それを学ぶのは良いことなんじゃないか? レイヴ・カルチャーを取り巻く状況は30年前、ひどいものだった。政府が実際に何を考えて、そういう教育を始めたのか分からないが、おそらく政府で働いているやつの多くが昔はレイヴァーだったんだと思うよ。だからレイヴ・カルチャーはイギリスに浸透しているし、レイヴ・カルチャーはいまとなってはイギリスの一部だと言えると思う。

同様にイギリスでは建築法が変わり、これから建設される建物の中では大きな音を出してもDJやオーガナイザーが罪に問われることはなく、建築業者が罪に問われることになりました。今年はフェンタニルのせいでイギリスの野外フェスはすべて中止のようですけれど、基本的にはここまでレイヴ・カルチャーが肯定されるということについてはどう思いますか? クリミナル・ジャスティス・ビルに違和感を表明していたあなたたちとしては。

ポール:建築法について詳しいことは分からないが、この国の騒音に対する対応は、俺が知っているなかでも最悪だと思う。俺が訪れたことのある他の国では、どこでもサウンドシステムやPA関係の法律が、イギリスのものよりずっと優れている。イギリスの騒音規制や時間規制は不自由なものばかりだ。特にPAの音に関しては非常に制限が厳しい。バカげた話だよ。俺が行く他の国の多くが、騒音に関してはイギリスよりも良い法律が設定されている。

青木:それは他のヨーロッパの国ということですか? それとも一般的に海外の方がイギリスよりも音を出しやすいと?

ポール:海外全般だね。イギリスのように音に関してヒドい制限がある国はあまり聞いたことがないよ。

2年前のウクライナやハンガリーなどレイヴを取り巻く状況はイギリス以外のヨーロッパでは非常に厳しいものがありますが……

ポール:断っておくが俺はプロモーターでもないし、他の国に住んでいるわけでもない。だからレイヴをやれる状況についてはよく知らない。だが、オフィシャルなクラブやフェスティバルに関して言うと、イギリスは厳し過ぎる騒音の制限のせいで、自由にやらせてもらえないことが多い。俺がいままで行ったことのある国でのクラブやフェスティバルの方が、騒音の制限がないから、ずっと良い音が出せる。他の国でレイヴをやるのがどれだけ大変かというのは、俺ははっきりとは言えないが、ちゃんとした音響を組める場合には、他の国でやる方がずっと良い音が出せることは確か。

マット・ドライハースト(Mat Dryhurst)やアムニージア・スキャナー(Amnesia Scanner)などブロック・チェーンがレイヴ・カルチャーを初期衝動に揺り戻すと考えているプロデューサーもいますが、オービタルとしてはレイヴはどのような方向に向かうべきだとお考えですか?

ポール:ビットコインがどうやってレイヴ・カルチャーを変えることができるんだい?

青木:匿名の番号を招待状として人々に渡し、その番号からレイヴの場所などの情報を入手できるという仕組みだそうです。

ポール:つまり、違法レイヴへの招待状をブロック・チェーンで送るということだな?

青木:そうです。ですからプロモーターの情報も匿名のままで、招待状を受け取った人しかレイヴには行けないということです。

ポール:それは考えたな! 80年代後半にやっていたやり方よりも、そっちの方が良いな。昔は、どこかのガレージから、特定の時間に、秘密の電話番号にかけなくてはいけない、とかそんなだった。レイヴが、どんな方向に向かうべきかは分からない。俺は一度もレイヴを企画したことがない。それは他のやつの仕事だ。俺じゃなくてプロモーターの仕事だ。俺は演奏する方だ。それにオービタルとして、俺たちは毎回、機材を持って参加する。だから、ステージや機材の設置や解体があるから、違法レイヴでは演奏ができない。何千ポンドもする機材を持って違法レイヴに出るにはリスクが大き過ぎる。だから俺たちは違法レイヴには出たことがない。過去に、若い頃、違法レイヴでDJをしたことならあるよ。でもいまはそういうことはやっていない。フェスティバルなどの出演に力を入れている。

オービタルがいま鳴らすべきだと思うサウンドはあなたの内面から湧いてくるものですか、それとも外部からの刺激に対するリアクション?

ポール:トリッキーな話だが、両方だと思うね。音楽は内面から湧いてくるものだ。音楽の核……つまり作家でいう声……はつねに自分の中にあるもので、俺が14歳のとき、初めて作曲をしたときから現在に至って存在するものだ。作曲のスキルは上達していると思う。話すのと同じで、自分の表現したいこと、つまり声を、音楽にして表すというスキルだ。そのスキルは時間をかけて徐々にうまくなっていく。その一方で、音楽のスタイルは、外部からの影響が大きいと思う。テレビドラマの音楽やダンス・ミュージックなど、他の人の音楽を聴いて、「これは良いな。俺もこういうのをやってみよう」と思う。それが外部から影響されたスタイルだ。だが奥にある、自分が発する声で、感情的なもの、そして、どうやってコードをまとめるか、というのはあまり変わらない。それは人間の核のようなものであり、変わらないものだ。外部から得るスタイルは、人間が着る服のようなもの。服を着て、その服で1年を過ごす。そして服を着替える。服には移り変わりがある。スタイルにも移り変わりがある。それは、他の人のスタイルと交換可能だから楽しい部分だ。だが実際の声の部分に関しては、もしラッキーなら、人々は君の声を好きでい続けてくれるだろう、という程度。俺は音楽を30年間書いてきた。オービタルの声をみんながまだ好きでいてくれるということは、俺にとって幸運なことだと思う。

ユーチューブで、この春に行われた「The Biggest Weekend Belfast 2018」を観ましたが、新曲の“Tiny Foldable Cities”から“Satan”に続くところなど新旧の曲が完全にシームレスで繋がっていました。時間の隔たりにはなんの違和感も感じていないという感じですか?

ポール:感じないね。さっき話したことと繋がるけど、スタイルには移り変わりがある。スタイルは30年で変わったけど、その変化は繰り返している。現在の音楽には80年代の音楽の影響が非常に強い。ネットフリックスの最新映画を観たときも、設定は現在なんだが、音楽は80年代のティーン映画『プリティ・イン・ピンク』でかかっているようなものだった。いまでもそういうのが人気なんだ。音楽とスタイルは流行を繰り返す。デカい車輪のようなものだ。車輪は泥を走り、その途中で様々なものを拾って行く。そして新しい技術などが生まれる。俺たちは、短時間で作曲された曲“Tiny Foldable Cities”をかけ、次に古い曲である“Satan”をかけた。だが“Satan”は数年前、俺が曲を少し改良したんだ。だから新しいフレーヴァーが加えられている。曲は同じだ。つまり同じ声だ。だがスタイルが変わった。だが面白いことに、俺が改良するときに選んだスタイルは80年代中盤から後半にかけてのスタイルだった。だから“Satan”は過去のスタイルを加えることによって、新しくなり、いま、オシャレと言われている音へと前進したことになる。そんなことになるなんてクレイジーだろ? ライヴのセットを考えるとき、俺たちには30年分の音楽から選択する。だから曲と曲を繋げたときにうまく繋がる曲を選ぶようにする。そこからつくり上げていく。とにかく、スタイルは移り変わっていくものだ。スタイルで遊ぶのはとても楽しいことだと思うが、音楽の本質、奥にある声というものが何なのかということを考えて、ライヴのセットを組む必要がある。あのセットでは“Satan”をあそこに持ってきたことでうまくいったと思う。“Tiny Foldable Cities”はソフトでメロディックな曲だから、その後は、テンションを上げる必要があった。だからうまくいったと思う。

『Monsters Exist』の音作りはむしろ90年代を念頭に置いていると思ったんですが、90年代と現在で最も似ているところと、まったく異なっていると思うところは何ですか。

ポール:面白いね。俺たちは90年代の音に影響を受けて今回のアルバムを作ったとは思わない。だが無意識にその影響はあるのかもしれない。アルバムをミキシングしたのはスティーブ・ダブと言う、ケミカル・ブラザーズのアルバムのプロデュースやミックスをしている人だ。彼も俺たちと同じくらいの業界経験を持つ、オールドスクールな人だ。俺たちと彼には90年代というルーツが共通してある。それが自然に音楽に反映されたのかもしれない。それは意識していなかったことだ。意識したのは、音楽がそうでなくても、プロダクションに関しては踊れる感じにするということだったね。それで、質問の後半部分は何て言っていたんだっけ?

青木:90年代と現在で最も似ているところと、まったく異なっていると思うところは何ですか。

ポール:いまの技術は90年代のものとまったく異なっているね。エレクトロニック音楽に関しては特に、やりたいことが簡単にできるようになった。デジタルレコーディングが可能になってからは、ロック音楽も同様だと思う。90年代頃からデジタル技術が出始めていたけど、まだテープに録音するのが主流だった。それは制作過程の早い段階で物事を決定しなくてはいけないということだった。いまは何も決めなくて良い。アルバムをリリースするギリギリ前まで変更が可能だ。そういうことが簡単にできるようになった。いまは、自分を律するということを知らなくてはいけない。どの時点で作品が完成したかを見極めるのは、作曲家やプロデューサーやエンジニアにとって、何よりも偉大なスキルだと俺は思っている。アイデアがあってそれを、この地点から、あの地点へと持っていく。そして、あの地点へ持っていったらそれは完成だ。その途中で考えが変わることも、もちろんあるだろうが、この地点からあの地点へ行き、それを達成したから、このアイデアは良しとして完成とする。そして次に進む。それが大事だと思う。その方が音楽のアイデンティティも上手く保つことができると思う。アイデアをずっと練り回していたり変え続けたりしているのは危険だ。パレットで色を混ぜているのと同じで、ずっとやっていると最終的には茶色くなって終わる。せっかく綺麗な色が作れるというのに。

青木:では90年代と現在で最も似ているところは何でしょうか?

ポール:何だろう……音楽はほぼ同じだと思う。昔から変わっていない。音楽はトライブが基本となっているものだ。クラシックを含まない、フォーク音楽のことだけどね。ここで言うフォーク音楽にはロックもダンス・ミュージックも含まれる。楽譜を書いてつくる音楽ではなくて、耳を使って作曲するような音楽。クラシックではなくて、民芸としての音楽。そういう音楽はあまり変わっていないと思う。俺がやっていることは、初期のロックンロールの人たちがやっていたことと大して変わらないと思う。バディ・ホリーの“Peggy Sue”を聴いても、俺は同じことをやっていると思う。俺は歌ってはいないし、そのやり方も全然違うけど、ノリの良いリズムに響きの良いメロディが被さっている。あまり複雑でもないし長くもない。同じ感じだろ? だから音楽はあまり変わっていないと思う。技術は変わったよ。制作をするのがずっと簡単になった。だが簡単になったのはまやかしで、誰もが音楽をつくれると思ったら、それは違う。ギターを誰にでも渡すことはできるが、全員がギターを弾けるというわけじゃない。スタジオや技術に関しても同様だ。スタジオで作業できても、自分が達成したいヴィジョンがなくては、スタジオで混乱するだけだ。ヴィジョンを達成するということが本当のスキルだと思っている。そういう意味では、音楽自体はまったく変わっていない。

質問・文:三田格(2018年9月19日)

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