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THE BITE

THE BITE

ポケットにブルース

felicity/P-Vine

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岩崎一敬   Aug 26,2010 UP
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 もともとハードコア・パンクをやっていたミュージシャンが別の音楽をはじめる、という動きが日本でも珍しくなくなってきた。めんたいロックなどのルーツ・サウンドに向かった日本脳炎~THE BACILLUS BRAINS(現Ja Jou Ka)、レゲエ~ダブ・バンドとして復活したSUPER DUMB、アメリカのオルタナ・カントリーに共鳴しながら日本のフォーク・ロックに接近するMOD LUNG、スロウなポップスを奏でるTEASI、NICE VIEWのG/Vo・Shota Teraiによる弾き語りフォーク・ソロ、Gofish、などなど。なかでもMOD LUNGはレーベル〈POWER ELEPHANT!を〉主宰し、国内では散り散りで活動している(パンク流れの)オールド・ロック・テイストなバンドを積極的にリリースし、新たなシーン形成に力を注いでいる。
 60~70年代のフォーク・ロックやブルース・ロックを軸にしたサウンドを展開するTHE BITEもまた、これらのバンドらと交流しながら独自の道を歩んでいるバンドである。

 はじまりは2006年。アメリカン・ハードコア・テイストで異彩を放つBREAKfASTのギタリスト酒井が耳の病気にかかり、ラウドな音に対してドクター・ストップを受けたことがきっかけだった。酒井はハードコアのマニアックなファンでもあるが、もともとオールド・ロックに関しても熱心なリスナーである。昔から会えば「ボブ・ディランが○○○○」「やっぱりジョンよりポールだよね」みたいな話ばかりで、バイト先も西新宿のオールド・ロック専門のレコード・ショップで、古くさいレコードを磨いていた。だから、彼がそういったサウンドのバンドで復活したのは、ごくごく自然な流れと言えるだろう。
 最初の頃のライヴは、まるで学園祭バンドのようだった。その他のメンバーも、古くからパンク/ハードコアのシーンで活動していた人物ばかり。やはり勝手が違ったのだろう。アコースティック・ギターを手にミドル・テンポで歌うスタイルは、プレイするテンションから具合を探っているようだった。しかし、そんなあやふや感も含めて、古きよきロックに愛をもって真摯に向かう姿勢だったり、曲の良さ、唄心に泣けるようなところが愛されていた。その"あやふや感"に転機が見えはじめたのは、酒井がアコースティック・ギターからエレキ・ギターに持ち替えたときだった。水を得た魚のように、プレイが活き活きしだしたのだ。
 
 自主音源や7インチ、コンピレーションへの参加を経てリリースされる今回のファースト・アルバム『ポケットにブルース』は、サロンミュージックの吉田仁がサウンド・プロデュースを担当している。どんな話し合いがあったのかはわからないが、予想以上にアグレッシヴな内容となった。エレキ・ギターがフィーチャーされた演奏はラウドだし、グルーヴは前のめり、ヴォーカルもシャウト寸前のテンションだ。録音も、ささくれ立った質感はパンク/ハードコアそのものである。それまでのレイドバックしたムードはここにはない。ちょっとびっくりしたが、しかし、彼らのルーツであるハードコア色を無理に排除することなく自然に表現したことで、"2000年代に鳴らされるフォーク/ブルース・ロック"として説得力をもったように思うし、THE BITEとしての落としどころもはっきりと見えたんじゃないだろうか。
 彼らの最大の武器は、曲そのものの魅力だ。いいメロディといい歌詞がある。それは音楽にとってごく当たり前のことかもしれないが、パンク/ハードコアでは軽視されがちなことでもある。THE BITEの音楽性がパンク/ハードコア・シーンへ逆流して影響を及ぼせば、また面白くなる。

岩崎一敬