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快速東京

快速東京

ロックインジャパン

Felicity

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三田 格   Jul 31,2012 UP

 僕のすぐ後ろから「外タレみたいだ!」という声がステージに向かって跳んだ。さっきからスイセイノボアーズ(SuiseiNoboAz)がなかなかいい演奏を繰り広げていた。昨年あたりから評判になっているバンドだという。凶暴なフィードバック・ノイズにはじまり、曲が進むにつれて、だんだん単純なロックン・ロールになっていく。ここは渋谷・宮益坂にあるラッシュというライヴハウスで、PAがとにかく素晴らしい。入場制限がかけられるほど内部はギュー込みで、このところ足を運んだライヴ・スペースでは圧倒的に年齢層が低い。こういうところにひとりでいると間が持たないし、ほとんど身動きもできないから不快指数が上昇するかと思いきや、なぜか非常に居心地がいい。高円寺の練習スタジオでスカートを観ていたときは足が攣りそうになって、さすがにギブ・アップしてしまったけれど、スイセイノボアーズから、そして、快速東京へとステージは進んでいく。快速東京が、そして......とんでもなかった。

 「外タレみたいだ!」と叫んでいたやつがヴォーカルだった。歌っていないときはフニャフニャしていて、重力との関係がどこか間違っているような背筋の伸ばし方。見てしまう。いや、人の目を否応もなく引き付ける。演奏がはじまると、音楽性は100%パンクである。しかも曲が短い。いまの曲は短かったなーと思っていたら、それは1曲じゃなくて2曲だったりするし、快速というのは、そういうことだったかと。しかも、歌詞がナンセンスで、演奏自体はシリアスに徹し(ある種、バカテクかも)、ヴォーカルの福田哲丸が体を振動させるスピードはニュー・オリンズ・バウンスよりもケイレン度が高い。なんというか、毒の持たせ方が電気グルーヴのようなスターリンというか......そう、スターリンが「ガリガリ君」とか歌ってる感じ。歌い終わると、またフニャ~。

 ライヴを観てからCDを聴くと、もはやCDとしての完成度がどうなのか、それを冷静に見極めることは難しい。ステージの模様を思い出して笑いがとまらなくなってしまうから。全16曲で18分。短い。ショート・パンク・ロックといういうらしい。パンク・ロック界の星新一とでもいうか。ロックンロールは人間じゃない、メタルマン髪の毛長いぜ、ヒマだから戦争しようぜ......もしかして「外タレみたいだ!」というのは日本の文化に馴染んでないぜという意味を含んでいたのかなと思えるほど、歌詞のセンスは日本語のそれでしかない。野田努先生のテーマ曲にすべき"ラブソング"は♪テレビをつければラブソング 街をあるいてもラブソング 聴きたくねーのにラブソング~と、Jポップ全体を一瞬にして敵にまわし、"パピプペパンク"では♪ロックもパンクもどうでもいいじゃん ロックもパンクもめんどくさいじゃん~と自分たちのやっていることも否定。"ゾンビ"はちょっと文学的で、♪最低な世界サヨナラできない~と、ある種の闇を覗かせる。エンディングはやけのはらをラップでフィーチャーした"敏感 ペットボトル PART 2"で、これがまたサイコーに自暴自棄。

 ......このまま行っちゃうのだろうか。それとも次のアルバムでは、長い曲か、遅い曲をやってみるのだろうか。そうだとしたら、その直前の瞬間は絶対にライヴを目撃しておきたいし、さらにいえば、つかみどころがないにもかかわらずポロっと毒がこぼれることもあるMCを聞いている限り、一度躓いてからが面白いバンドになるような......(短いですが、終わりにしましょう)。

三田 格