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Still Corners

Still Corners

Creatures Of An Hour

Sub Pop/Pヴァイン

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野田 努   Oct 05,2011 UP

 ザ・ロネッツに代表される60年代ポップスの甘いメロディとアインシュテュルツェンデ・ノイバウテンの冷酷なノイズを合体させることはジーザス&メリー・チェインのコンセプトだったが、ロンドンを拠点とする新しいバンド、スティル・コーナーズは、60年代風のレトロ・ポップスを今日のチルウェイヴやコールド・ウェイヴとうまく混合させる。レイチェル・ゴスウェル(元スローダイヴのメンバー)と比較されるテサのヴォーカルは、いわゆるエーテル系(英語読みすればイーサリアル系)と括られるもので、エリザベス・フレイザーやホープ・サンドヴァルとも同系列と言える。ビーチ・ハウスやツイン・シスターのようなドリーム・ポッパーたちとも近しいが、囁き声の歌とサイケデリックな曲調はマジー・スター系のそれで、まさにチルゲイズといった言葉がぴったり。『クリエイチャーズ・オブ・アン・アワー』は、いままで挙げた固有名詞に思い入れのあるリスナーを満足させるには充分な出来のデビュー・アルバムと言えよう。

 コクトー・ツインズめいたオルガンの音とギター、そしてザ・ロネッツ風のスネアとキックドラムの"クックー"、暗いレトロ・ポップの"エンドレス・サマー"や"アイ・ロート・イン・ブラッド"、メトロノーミックなハイハットと浮ついた電子音によるドリーム・ポップ調の"ザ・ホワイト・シーズン"、甘いサイケデリックな"イントゥ・ザ・トゥリーズ"や"ザ・トワイライト・アワー"、クラウトロックめいたドライヴ感の効いたビートを擁する"サブマリン"......などなど、バンドはリヴァーブ、エコー、ディレイを使いながら、女性の囁き声による今日的なポップを展開する。「白い冬とともに夢を、冬の夢を見よう」......筆者の推薦曲は"ザ・ホワイト・シーズン"と"ザ・トワイライト・アワー"だが、どの曲もそれぞれ魅力がある。テサのルックスも60年代のアイドル歌手を気取ったお嬢さんルックのパロディのような、言うなればアシッディなワンピース姿で、充分に人目を惹きそうだ。

 そもそも残響音(リヴァーブ、エコー、ディレイ)は、現在のインディ・ポップのトレード・マークである。ルーティンを忘れさせてくれるものの、ある種の目印だ。それはポップスの重要な役割のひとつのはずだけれど、今世紀における最初のインディ・ポップ黄金時代とたとえられる今日では、いまさらながら(そしていまだからこそ)たびたび主張されるものの重要なひとつとなっている。最近では〈R&S〉あたりがこのセンで一発当てようと虎視眈々と......というか、新人を出しているが、近い将来、イーサリアル系の女性ヴォーカリストがポスト・ダブステップをバックに歌うんじゃないだろうか。

野田 努