ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Columns 内田裕也さんへ──その功績と悲劇と (columns)
  2. MOMENT JOON - Immigration EP (review)
  3. grooveman Spot - Resynthesis (Purple) (review)
  4. øjeRum - On The Swollen Lips Of The Horizon (review)
  5. Jamie 3:26 ──80年代シカゴを知るDJ、待望のジャパン・ツアー (news)
  6. R.I.P. 遠藤ミチロウ (news)
  7. Angel-Ho - Death Becomes Her (review)
  8. interview with Ralf Hütter(Kraftwerk) マンマシーンの現在 (interviews)
  9. 釣心会例会 ──食品まつり a.k.a foodman がシカゴの RP Boo を迎えパーティを開催 (news)
  10. Anderson .Paak - Ventura (review)
  11. Ruby Rushton - Ironside (review)
  12. Columns なぜスコット・ウォーカーはリスペクトされているのか (columns)
  13. WxAxRxP POP-UP STORE ──〈Warp〉30周年を記念したポップアップ・ショップがオープン (news)
  14. JUST ZINE 3 Book issue ──アンダーグラウンド・シーンが誇る読書家たちをフィーチャーしたZINEが登場 (news)
  15. Ezra Collective - You Can't Steal My Joy (review)
  16. THE STALIN ──ザ・スターリンのもっとも過激なときを捉えた作品が完全復刻 (news)
  17. Kelsey Lu ──デビュー作をリリースするケルシー・ルーが絶好のタイミングで来日 (news)
  18. Logos - Imperial Flood (review)
  19. Norhern Soul ──『ノーザン・ソウル』、この最高な映画を見たらスリムのデニムを履けなくなる (news)
  20. interview with Fat White Family 彼らはインディ・ロックの救世主か? (interviews)

Home >  Reviews >  Album Reviews > Still Corners- Creatures Of An Hour

Still Corners

Still Corners

Creatures Of An Hour

Sub Pop/Pヴァイン

Amazon iTunes

野田 努   Oct 05,2011 UP
このエントリーをはてなブックマークに追加

 ザ・ロネッツに代表される60年代ポップスの甘いメロディとアインシュテュルツェンデ・ノイバウテンの冷酷なノイズを合体させることはジーザス&メリー・チェインのコンセプトだったが、ロンドンを拠点とする新しいバンド、スティル・コーナーズは、60年代風のレトロ・ポップスを今日のチルウェイヴやコールド・ウェイヴとうまく混合させる。レイチェル・ゴスウェル(元スローダイヴのメンバー)と比較されるテサのヴォーカルは、いわゆるエーテル系(英語読みすればイーサリアル系)と括られるもので、エリザベス・フレイザーやホープ・サンドヴァルとも同系列と言える。ビーチ・ハウスやツイン・シスターのようなドリーム・ポッパーたちとも近しいが、囁き声の歌とサイケデリックな曲調はマジー・スター系のそれで、まさにチルゲイズといった言葉がぴったり。『クリエイチャーズ・オブ・アン・アワー』は、いままで挙げた固有名詞に思い入れのあるリスナーを満足させるには充分な出来のデビュー・アルバムと言えよう。

 コクトー・ツインズめいたオルガンの音とギター、そしてザ・ロネッツ風のスネアとキックドラムの"クックー"、暗いレトロ・ポップの"エンドレス・サマー"や"アイ・ロート・イン・ブラッド"、メトロノーミックなハイハットと浮ついた電子音によるドリーム・ポップ調の"ザ・ホワイト・シーズン"、甘いサイケデリックな"イントゥ・ザ・トゥリーズ"や"ザ・トワイライト・アワー"、クラウトロックめいたドライヴ感の効いたビートを擁する"サブマリン"......などなど、バンドはリヴァーブ、エコー、ディレイを使いながら、女性の囁き声による今日的なポップを展開する。「白い冬とともに夢を、冬の夢を見よう」......筆者の推薦曲は"ザ・ホワイト・シーズン"と"ザ・トワイライト・アワー"だが、どの曲もそれぞれ魅力がある。テサのルックスも60年代のアイドル歌手を気取ったお嬢さんルックのパロディのような、言うなればアシッディなワンピース姿で、充分に人目を惹きそうだ。

 そもそも残響音(リヴァーブ、エコー、ディレイ)は、現在のインディ・ポップのトレード・マークである。ルーティンを忘れさせてくれるものの、ある種の目印だ。それはポップスの重要な役割のひとつのはずだけれど、今世紀における最初のインディ・ポップ黄金時代とたとえられる今日では、いまさらながら(そしていまだからこそ)たびたび主張されるものの重要なひとつとなっている。最近では〈R&S〉あたりがこのセンで一発当てようと虎視眈々と......というか、新人を出しているが、近い将来、イーサリアル系の女性ヴォーカリストがポスト・ダブステップをバックに歌うんじゃないだろうか。

野田 努