ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. interview with COM.A パンク・ミーツ・IDM! (interviews)
  2. Kevin Richard Martin - Frequencies for Leaving Earth - Vol​.​1 / Kevin Richard Martin - Frequencies for Leaving Earth - Vol​.​2 / Kevin Richard Martin - Frequencies for Leaving Earth - Vol​.​3 (review)
  3. R.I.P.:エンニオ・モリコーネ (news)
  4. interview with Julianna Barwick 聞きたくない声は、怒りのラップ、怒りのメタル。“グォォォーッ”みたいなやつ (interviews)
  5. interview with Wool & The Pants 東京の底から (interviews)
  6. interview with Trickfinger (John Frusciante) ジョン・フルシアンテ、テクノを語りまくる (interviews)
  7. すずえり - Fata Morgana (review)
  8. Columns 韓国ソウル市はソウル(魂)の街だった! ──ソウルの都市政策と韓国のヒップホップについて (columns)
  9. Cafe OTO ──多くの日本人アーティストも参加。コロナ渦を乗り切るための、ロンドンの〈Cafe OTO〉主宰のレーベル〈TakuRoku〉に注目 (news)
  10. 404 Error File Not Found (interviews)
  11. Moodymann - Take Away (review)
  12. 169 - SYNC (review)
  13. There are many many alternatives. 道なら腐るほどある 第11回 町外れの幽霊たち (columns)
  14. Jun Togawa──戸川純がまさかのユーチューバーになった! (news)
  15. Hiroshi Yoshimura ──入手困難だった吉村弘の1986年作『Green』がリイシュー (news)
  16. Kevin Richard Martin - Sirens (review)
  17. Kenmochi Hidefumi - たぶん沸く〜TOWN WORK〜 (review)
  18. Politics 都知事選直前座談会 「今回の都知事選、どう見ればいいか」 (columns)
  19. ralph ──気鋭の若手ラッパーがファーストEPをリリース、プロデュースは Double Clapperz (news)
  20. Run The Jewels ラン・ザ・ジュエルズは何がすごいのか (interviews)

Home >  Reviews >  Album Reviews > Still Corners- Creatures Of An Hour

Still Corners

Still Corners

Creatures Of An Hour

Sub Pop/Pヴァイン

Amazon iTunes

野田 努   Oct 05,2011 UP
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 ザ・ロネッツに代表される60年代ポップスの甘いメロディとアインシュテュルツェンデ・ノイバウテンの冷酷なノイズを合体させることはジーザス&メリー・チェインのコンセプトだったが、ロンドンを拠点とする新しいバンド、スティル・コーナーズは、60年代風のレトロ・ポップスを今日のチルウェイヴやコールド・ウェイヴとうまく混合させる。レイチェル・ゴスウェル(元スローダイヴのメンバー)と比較されるテサのヴォーカルは、いわゆるエーテル系(英語読みすればイーサリアル系)と括られるもので、エリザベス・フレイザーやホープ・サンドヴァルとも同系列と言える。ビーチ・ハウスやツイン・シスターのようなドリーム・ポッパーたちとも近しいが、囁き声の歌とサイケデリックな曲調はマジー・スター系のそれで、まさにチルゲイズといった言葉がぴったり。『クリエイチャーズ・オブ・アン・アワー』は、いままで挙げた固有名詞に思い入れのあるリスナーを満足させるには充分な出来のデビュー・アルバムと言えよう。

 コクトー・ツインズめいたオルガンの音とギター、そしてザ・ロネッツ風のスネアとキックドラムの"クックー"、暗いレトロ・ポップの"エンドレス・サマー"や"アイ・ロート・イン・ブラッド"、メトロノーミックなハイハットと浮ついた電子音によるドリーム・ポップ調の"ザ・ホワイト・シーズン"、甘いサイケデリックな"イントゥ・ザ・トゥリーズ"や"ザ・トワイライト・アワー"、クラウトロックめいたドライヴ感の効いたビートを擁する"サブマリン"......などなど、バンドはリヴァーブ、エコー、ディレイを使いながら、女性の囁き声による今日的なポップを展開する。「白い冬とともに夢を、冬の夢を見よう」......筆者の推薦曲は"ザ・ホワイト・シーズン"と"ザ・トワイライト・アワー"だが、どの曲もそれぞれ魅力がある。テサのルックスも60年代のアイドル歌手を気取ったお嬢さんルックのパロディのような、言うなればアシッディなワンピース姿で、充分に人目を惹きそうだ。

 そもそも残響音(リヴァーブ、エコー、ディレイ)は、現在のインディ・ポップのトレード・マークである。ルーティンを忘れさせてくれるものの、ある種の目印だ。それはポップスの重要な役割のひとつのはずだけれど、今世紀における最初のインディ・ポップ黄金時代とたとえられる今日では、いまさらながら(そしていまだからこそ)たびたび主張されるものの重要なひとつとなっている。最近では〈R&S〉あたりがこのセンで一発当てようと虎視眈々と......というか、新人を出しているが、近い将来、イーサリアル系の女性ヴォーカリストがポスト・ダブステップをバックに歌うんじゃないだろうか。

野田 努