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Dum Dum Girls

Dum Dum Girls

Only In Dream

Sub Pop/Pヴァイン

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野田 努   Sep 06,2011 UP
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 ガールズの「ブロークン・ドリームズ・クラブ」でバッキング・ヴォーカルとして参加しているのが、ディー・ディーという、ラモーンズに捧げられた芸名を持つクリスティン・ガンドレッドである。ローファイ・ポップスを展開したザ・メイフェア・セットなるプロジェクトの作品、そしてダム・ダム・ガールズという、イギー・ポップへの敬意を表した名前のバンド名でのデビュー作『I Will Be』(2010年)をリリースしている。このアルバムはずいぶんと話題になった。シャングリ・ラスのようなガールズ・グループの甘く感傷的なメロディ、メリー・チェインのようなファズ、ラモーンズのような疾走感......、ダム・ダム・ガールズにおける彼女はロックンロールに対するフェティッシュな解釈――バイク、黒い革ジャン、ミニスカートといったクリシェをもてあそびながら、思春期の女心のオンパレードをずば抜けた歌唱力で歌っている。

 クリスティン・ガンドレッドが自らをディー・ディーと名乗っていることは注目に値する。ディー・ディー(・ラモーン)といえば、ヘロイン賛歌の"チャイニーズ・ロックス"の作曲者のひとりとしても歴史に名を残している人物で、彼はそれこそパンクとドラッグのファンタジーを地でいったひとりとなっている。が、クリスティン・ガンドレッドはそうした昔のバカげた夢を「バカだな〜」と認識しながら、しかし他方では、そうしたバカげた生き方のある部分においては深いところで共振しているように思える。永遠に大人になることを拒むような(良くも悪くも子供っぽい)ロマンティシズムに。
 古典的なロックンロールな生き方には、バキバキに決まってその"限界"に挑戦してこそヒップだという考えがある。と同時にロックンロールには、ラモーンズが"ニードルズ&ピンズ"のような甘いオールディーズをカヴァーするように、まったく手に負えないロマンティックな側面もある。対極にありそうなふたつの側面だが、実は同じカードの裏表だ。ドラッグが象徴するところの死を認識してこそ現在(いま)をぞんぶんに生きようというロマンスへと結ばれる。live now die later――せつなを生きようとする美学だ。

 クリスティン・ガンドレッドはこのセカンド・アルバム『オンリー・イン・ドリーム』を発表する半年ほど前、ザ・スミスの"ゼア・イズ・ア・ライト〜"のカヴァーを含むシングル「ヒー・ゲッツ・ミー・ハイ」をリリースしている。周知のように"ゼア・イズ・ア・ライト〜"は曲自体の魅力もさることながら、「今夜この町から連れ出してくれ」「バスに乗って、そのバスが激突して自分が死んだとしても、隣にいるのが君なら僕は本望だ」という、母国(故郷)への嫌悪とロックンロールの美学を重ねたという点において、そしてその曲が発表された時代背景(新自由主義時代)において、大名曲となっている。それは、オリジナルのディー・ディーも、イギー・ポップも歌っていなかった類の歌だ。クリスティン・ガンドレッドはきっと、素晴らしいロックのコレクションを有しているのだろう。
 ダム・ダム・ガールズは、反マッチョ主義がメキメキと顕在化するアメリカのサブカルチャーにおいて、すでに多くの中傷と批判を受けてきた昔ながらのロック文化(あるいはフィル・スペクターという"父"に育てられたガールズ・グループ)の名誉挽回に挑んでいるようでもある。『オンリー・イン・ドリーム』に収録されたどの曲もキャッチーで、ポップスとしての力がある。歌詞は感傷的な言葉がだーっと並んでいる。大地に根を張った母親など知ったことではない。男を求めて部屋のなかでひとりですすり泣くような、都会でひとり暮らしをしている女性の弱さを赤裸々に綴っている。

 中学〜高校時代にラモーンズやブロンディに夢中になった人間が、この音楽の魅力に逆うことは難しい。プロデュースを手掛けているのはブロンディのファースト・アルバム、「デニス」や「イン・ザ・フレッシュ」、リチャード・ヘルの『ブランク・ジェネレーション』、あるいはゴーゴーズのファースト・アルバムなどを手掛けている人。彼はこのアルバムでも完璧な仕事をしている。

野田 努