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V.A.

V.A.

Deep Medi Releases Volume 1

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野田 努   Feb 23,2010 UP
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 2007年といえばブリアルが『アントゥルー』を発表した年だが、同年のリリースで他に重要なものを何枚か挙げるとしたら......ペヴァーリストの「ロール・ウィズ・ザ・パンチーズ」とアップルブリムの「ヴァンサン」、ピンチの「ワン・ブラッド」......、いやいや、それらも素晴らしいが、やはり何よりもずば抜けていたのはマーラの「チャンジズ/フォーギヴ」だ。この12インチ・ヴァイナルは、もしもブリアルがその年に『アントゥルー』を出さなければ、2007年のベスト・ワンに選ばれていただろう。とくにB面に収録された"フォーギヴ"は、何年経とうが輝きは失われることのない名曲だ。ダブステップであれテクノであれハウスであれ、すべてのダンス・ミュージックに共通する、クラシックになりえる条件がすべて揃っている。素晴らしいドラム・サウンドと聴いたら忘れられないフレーズがある。"フォーギヴ"のユーフォリアは、スクリームの若いエネルギーともブリアルのディストピアとも違って、それはハウスでいうところのディープ・ハウス、テクノで言うところのデトロイティシュ・テクノに喩えられるだろう。

 〈ディープ・メディ・ミュージック〉は長いドレッドヘアの男=マーク・ローレンス、通称マーラがコーキーとのデジタル・ミスティックズ(DMZ)とはまた別に2006年からはじめたレーベルだ。欧米の批評家スジからの評価も高く、「チャンジズ/フォーギヴ」はレーベルとしての4枚目、マーラにとっては〈ディープ・メディ・ミュージック〉からの最初のリリースとなっている。レーベルはハイジャック(先日DBSで来日したスクリームの実兄)やゴス・トラッド(日本人の先駆的プロデューサー)、カリバー(ベルファストの知性派)、あるいはアンチ・ソーシャル・エンタテインメント(反社会娯楽)のメンバーたち――ザ・シルキーやミズ・ビーツ、クエストらの作品も出している。昨年は、ジャジー・フィーリングとデトロイト・テイストの光沢を持ち、このジャンルの多様性の高まりを印象づけたザ・シルキーの『シティ・リミッツ・ヴォリューム・ワン』がずいぶんと話題となった(今年に入ってからはマーク・プリチャードの作品もリリースしている......)。そして本作は『シティ・リミッツ』の勢いに乗るかのごとくリリースされる、レーベルにとって初のコンピレーションとなる。

 この"第一弾"には、2006年にリリースされたレーベルにとっての最初のシングル、クロームスターの「カラワンジ/シュアグレイ」から2007年のレーベルとしては5番目となるゴス・トラッドの「カット・エンド/フラッグス」までの5枚がヴァイナルのA面/B面ともに順番に収録されている。2006年のハイジャック「バビロン・タイムワープ/ダリー」、2007年のコーキー&ローファ「オール・オブ・ア・サドン(コーキー)/デスコ・レカ)(ローファ)」、そして件のマーラの2曲にゴス・トラッドの2曲といった具合だ。要するに『ディープ・メディ・リリーシーズ』は、レーベルの記録(ドキュメント)である。

 もともとデジタル・ミスティックズやマーラ自身がルーツ・レゲエ色を特徴としていたが、ハイジャックの2曲はレーベルの背景にサウンドシステム文化が控えていることをあらためて告る。ゴス・トラッドの2曲も重要級のスペース・ダブで、"フラッグス"はその暗黒ヴァージョンだ。クロームスターもまた暗いベースで情け容赦ない攻撃を仕掛ける。そしてコーキーとローファはスクリーム的なナンセンスを打ち鳴らす......。

 ダブステップに乗り遅れた人もこれを聴いて、どうか早く追いついて欲しい。ロンドンのアンダーグラウンド・ダンス・ミュージックはいま十数年ぶりの最高の季節の真っ直中にいる。

野田 努