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ラモーンズ・クラシックス

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野田 努   Oct 01,2012 UP
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E王

 ラモーンズは永遠である。クラフトワークがそうであるように、それ自体がひとつのファンタジーなのだ。いつまでも消えることのない。
 13歳のときに初めて聴いた"シーナ・イズ・パンク・ロッカー"や"電撃バップ"は、セックス・ピストルズやザ・クラッシュとともに僕のすべてを狂わせたと言っていい。歓楽街育ちの僕は、いつものように街の繁華街を歩いているときに、何故か知らないけれど唐突にダッシュした。行き交う人びとにボカボカぶつかりながら、猛烈な勢いで街の端から端まで駆け抜けた。どうせならそのまま駿府城のお堀のなかに飛び込めば良かった。ヘイ・ホー・レッツゴーと叫びながら。

 ラモーンズはパンクだったが、僕にオールディーズというものの魅力を教えてくれたバンドでもあった。中学3年生のときに買った4枚目のアルバム『ロード・トゥ・ルーイン』(もっとも評価の低いアルバムのひとつ)のA面の5曲目に収録された"ニードルズ&ピンズ"を僕はどれほど繰り返し聴いたことだろう。いまでもそのレコード盤は家にある。いまでもその細い溝には1年のうちに何回か針がおろされている。ギターでコピーしたし、ジョーイ・ラモーンの胸を焦がすような声をまねながら歌いもした。そして、"ニードルズ&ピンズ"が60年代のイギリスのザ・サーチャーズというバンドのカヴァー曲であることを知った。

 ラモーンズには、思春期を迎えた10代が聴くべきものすべてが詰まっていた。反抗心、暴力衝動、性衝動、馬鹿馬鹿しさ、シニシズム、B級趣味、ジャンク文化から思わず泣き崩れるようなラヴ・ソングまで、それはロックンロールのパンドラの箱だった。ゆえに彼らは多くのカヴァー曲を演奏している。
 本作は、ラモーンズがカヴァーした楽曲のオリジナルを編集したコンピレーションで、サーフ・ロック(ザ・ビーチ・ボーイズ、ジャン&ディーン)、ガールズ・ポップス(ザ・ロネッツ)、サイケデリック・ロック(ラヴ、ザ・シーズ、ジェファーソン・エアプレイン)、ブリティッシュ・ビート(ザ・サーチャーズ)などなど、全24曲が収録されている。『ロケット・トゥ・ロシア』(1977)の"ドゥ・ユー・ウォナ・ダンス"や『ラモーンズ』(1976)の"レッツ・ダンス"、『エンド・オブ・センチュリー』(1979)の"ベイビー・アイ・ラヴ・ユー"(同アルバムをプロデュースしたフィル・スペクターの曲)......すべての原点がある。ブックレットは4色印刷で、当時のアートワークや詳細なデータも載っている。愛情たっぷりに、丁寧に作られている。
 ローリング・ストーンズも多くのカヴァー曲を演奏しているが、当時としてはマニアックなブルースである。ラモーンズはシックスティーズであり、サイケデリックだ。ザ・ロネッツのリード・シンガーだったヴェロニカ・ベネットのヴォーカリゼーションはその後のポップに多大な影響を与えているが、ジョーイ・ラモーンの感情豊かな歌い方は、どちらかと言えば、イギー・ポップというよりもヴェロニカ・ベネットの側である。

 ラモーンズの来日ライヴには、僕は計3回行った。最後に行ったのは1991年の川崎チッタだった。そのとき僕のレコード棚にはもうエイフェックス・ツインやデリック・メイが並んでいた(ちなみにお馴染みのラモーンズのファッションは、1970年代のゲイ・ディスコからの引用なので、僕のリスナー遍歴もあながち大きく逸れているわけではない)。
 僕がラモーンズを熱心に聴いていたのは『エンド・オブ・センチュリー』までで、ゆえにラモーンズが"キャント・シーン・トゥ・メイク・ユア・マイン"や"サーフ・シティ"、ラヴやジェファーソン・エアプレインなんかをカヴァーした1991年の『アシッド・イーターズ』を知らない。
 UKが生んだ最強のサイケデリック・ハード・ロック・バンド、モーターヘッドがラモーンズに捧げた"ラモーンズ"(1991)という曲も、ラモーンズにとっての最後のアルバムとなった『アディオス・アミーゴス』(1995)のオープニングを飾ったトム・ウェイツの1992年の曲"アイ・ドント・ウォナ・グローイン・アップ(大人になんかなるものか)"のカヴァーも本作『ラモーンズ・クラシックス』で知った。ジョーイ・ラモーンがソロ・アルバム『ドント・ウォーリー・アバウト・ミー』(2002)でルイ・アームストロングの"この素晴らしき世界"とザ・ストゥージズの"1969"をカヴァーしていることも。
 こうした情報は長年聴き続けていた熱心なファンにとっては基本中の基本なのだろうけれど、できる限りいろんな音楽を楽しみたいと思っている僕にとっては嬉しい発見だった。レコードを探す楽しみが増えました。

野田 努