ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. interview with Eiko ishibashi 音をはこぶ列車/列車をはこぶ音 (interviews)
  2. Amen Dunes - Freedom (review)
  3. Jamie Isaac - (4:30) Idler (review)
  4. Jim O'Rourke - sleep like it’s winter (review)
  5. Autechre - @恵比寿 LIQUIDROOM (review)
  6. Sigur Rós - Route One (review)
  7. 食品まつり a.k.a Foodman ──ニュー・アルバム『ARU OTOKO NO DENSETSU』をリリース (news)
  8. Brandon Coleman ──ブランドン・コールマンが〈Brainfeeder〉と契約、ニュー・アルバムをリリース (news)
  9. The Sea And Cake - Any Day (review)
  10. Columns PSYCHEDELIC FLOATERS そもそも「サイケデリック・フローターズ」とはなんなのか? (columns)
  11. KANDYTOWN ──キャンディタウンがついにメジャー・デビュー (news)
  12. 編集後記 編集後記(2018年7月17日) (columns)
  13. Random Access N.Y. vol.101:USインディにおける手作りのフェスの良さ (columns)
  14. Ben Khan ──エレクトロニック・ファンクの新鋭、ベン・カーンがデビュー・アルバムをリリース (news)
  15. Brainfeeder ──〈ブレインフィーダー〉日本初のポップアップ・ショップが登場&フライング・ロータス監督映画作品が上映 (news)
  16. Derrick May デリック・メイよ、だからもう来なくても……いや来てくれてありがとう (news)
  17. interview with Jim O’Rourke 私は音楽を楽しみのために作っているわけではありません(笑) (interviews)
  18. ゲッベルスと私 - (review)
  19. Silent Poets - @渋谷WWW (review)
  20. interview with Eiko Ishibashi 音の回廊、二面の歌 (interviews)

Home >  Reviews >  Album Reviews > Twin Sister- In Heaven

Twin Sister

Twin Sister

In Heaven

Domino

Amazon iTunes

野田 努   Oct 25,2011 UP
このエントリーをはてなブックマークに追加
E王

 今日のドリーム・ポップがラウンジ・ミュージックへと着地したものの、いまのところ最良の成果。敢えて"ソウル"を欠いたような、たとえばサトミ・マツザキを彷彿させるヴォーカルに「ディアフーフのポップの脱構築主義を思い出す」という人もいたが、僕はビーチ・ハウスをずいぶんと小洒落に展開したような印象を受ける。ロング・アイランド出身の4人組は、昨年の「Color Your Life」を聴いたときはステレオラブ的な、つまりクラウトロックとラウンジの融合を感じたのだけれど、彼らの最初のアルバムとなる『イン・ヘヴン』は、そうしたある種のアーティな素人臭さからは脱皮している。バンドは明らかにポップス(洗練)を指標し、そしてポップ・ミュージックに疲れ切ったリスナーでさえ振り向かせるであろう、魅惑的な甘いにおいをはなっている。こじんまりとしているが芸人根性を感じるし、音楽性は多彩で、きめ細かく、キュートだ。参照性の高さと洗練さにおいて、渋谷系なるタームを思い出す年配のリスナーもいるんじゃないだろうか。

 16ビートのファンクを展開する"Bad Street"はこのアルバムの魅力を象徴する1曲だ。ディスコ・ビート、そしてファンクのギターとベースは脈打つグルーヴを持ちながら、ブラック・ファンクやブラック・ディスコの下半身臭さがなく、アンドレア・エステラのヴォーカルもまたスウィングしているけれど黒さはない。が、しかし逆にそうした情念を欠いた薄味の良さがここにはあるのだ。R&Bナンバーの"Stop"にもそれが言える。かつてアリーヤが歌っていたような曲を、ツイン・シスターはさわやかなラウンド・ミュージックへと変換してしまう。
 ドリーム・ポップのお手本のような"Kimmi In a Rice Field"、ベッドルーム時代におけるバラード"Luna's Theme"、ラテン・ポップに挑戦した"Spain"、あるいはレトロなラジオ・ポップスを意識した"Saturday Sunday"や"Gene Ciampi"などなど、アルバムは佳作揃いで、手の込んだ曲作りからはバンドの勤勉さをうかがい知ることができる。『イン・ヘヴン』とはポップの桃源郷を意味しているのだろう。柔らかい布団のうえでうたた寝しているような音楽で、深刻さを忌避しながら音楽の軽さを主張しているようなこのアルバムを歓迎したいリスナーは決して少なくないと思われる。

野田 努