Home > Interviews > interview with Goth-Trad - 真打ち登場
「俺たち日本だから。ヨーロッパとかUKだったらもっと盛り上がるんだろうな」とかじゃなくて。そう思う時点で負けてると思うから。だってイギリスなんていまなんか6万縲怩V万で行けるじゃないですか。誰でも行けるわけじゃないですか。DJだってプロモーションでちょっと行くってこともできると思うし。
■なるほどね。なるほど。ちなみに〈バック・トゥ・チル〉に集まる子たちっていうのは何歳ぐらい? やっぱ若い?
GT:あ、お客さんですか? お客さんはけっこう幅広くて、まあ22縲鰀3歳ぐらいから30ぐらいまでですね。
■イギリスはみんな若いんでしょ?
GT:若いですねー。ヨーロッパは若いです。
■ここ数年、ロンドンに住んでいるイギリス人の同世代の友だちと話してると「テクノやハウスはoyaji musicだ」って言われるからね(笑)
GT:ははははは。えー。
■イギリス人らしい口の悪さというか、イギリスでは、それだけダブステップっていうのは若者の音楽なんだぞって言いたいんだよ。
GT:自分は比較的ディープでダビーで......っていうライヴもプレイするんですけど、ハンガリーとか行くと女の子がすごい前で踊ってて。「いくつなの?」って訊いたら18歳とか。「ダブステップすごく好き」って言ってて。
■いいですねえー。日本からも18歳でゴス・トラッドのライヴを最前列で観るような子がどんどん出てきてほしい(笑)。
GT:そうですね(笑)。ブリュッセルでやったときは、自分の前のDJダブステップから流れた4/4っぽいライヴをやってたら前の若い男の子と女の子が「ちょっと来てちょっと来て!」って俺が誰かもたぶんわかってなくて呼ばれて、「あなたダブステップやるの?」って(笑)
■ははははは。
GT:「やるやる」って言ったら「よし!」みたいな(笑)。
■はははは! 「おまえはわかってる」って(笑)。
GT:そういうこともあるし(笑)。
■わかりました。時間もなくなってきたので、もっとたくさん訊きたいことがあるんですけど、続きは2012年に取材させてください。
GT:はい、ぜひ。
■あと俺は、日本人アーティストが海外に、ゴス・トラッドみたいにどんどん出てったほうがいいと思ってる人間だから、その辺ももうちょっと訊きたかったんだけどね。
GT:俺はほんとそれやれる思うし、はっきり言って、いまならネットもあるし音楽なんかデジタルで買えるわけだし。どんな田舎だろうが同じじゃないですか、メディアの量なんて。ほとんどの人がいまインターネットで情報を取り入れてるわけじゃないですか。雑誌だってどこでも買えるわけだし。そこを初めから負けてる気持ちの子って多くないですか、地方の子とかって。「僕は地方だから」とかって。
「俺たち日本だから。ヨーロッパとかUKだったらもっと盛り上がるんだろうな」とかじゃなくて。そう思う時点で負けてると思うから。だってイギリスなんていまなんか6万縲怩V万で行けるじゃないですか。誰でも行けるわけじゃないですか。DJだってプロモーションでちょっと行くってこともできると思うし。だって俺実家広島で、往復すんのに4万かかるんですよ。そんな変わんないじゃないかみたいな(笑)
■あとダンス・ミュージックのアンダーグラウンドのカルチャーに関して言うと、マイスペースとかソーシャル・ネットワークがすごく良い形で働いてるとは思うよね。
GT:ほんとそうですよね。サウンド・クラウドだったりフェイスブックだったり。で、たぶんレーベルとかは日本から面白いアーティストが出てきたら「やった!」と思うと思うんですよね。だからチャンスはほんとあるし。俺は最初は自分のことプロモーションするために、ブッキングさえあって、条件さえ合えば、いつでも行きますってノリだったんです。広島行くのと九州行くのと沖縄行くのと、ロンドン行くのと同じ感覚で行くよ、ぐらいの気持ちでやりたかったんですよ。「日本人、日本人だすごい!」っていうのも思ってほしくなかったんですよ。
■あー、国境で判断されたくないよね。
GT:DJとも普通に交流したくて。英語は初め全然ダメだったんですけど、1年縲怩Q年やり取りして、喋ってできるようになったし。それは努力なのかもしれないですけど、ほんと誰でもできるし。俺なんか27縲鰀8ぐらいからそれができるようになったわけだから。それは誰でもできるし、誰でも可能性持ってて。負ける気持ちを持たなければ勝てるというか(笑)。
■ははははは。やっぱこんな熱い人だったんだ(笑)。
GT:どれを勝ち負けっていうのかわかんないですけど、でも「向こうのほうが自分のやってる音楽はうけるな」とか、それも違うと思うし。日本も同じだし。俺は日本でやることもすごくいいと思うんですよ。逆に敢えて向こうに距離置けるっていうのも。
■ダブステップがテクノやハウスのときとちょっと違うのが、まさに21世紀のダンス・ミュージックだからこそこれだけ短時間のあいだにすごく世界的に広がったのかなって思うんだよね。
GT:あの当時のマイスペースだったりとか、横の繋がりはすごかったですね。
■あれは、ある種の連帯感のような感じでしょ。
GT:「みんなで盛り上げようぜ!」みたいな。サーポーターもすごく集まったし。パーティやって、それをお手伝いするやつらもすごく集まってたし。そういう意味では絶対誰にでもチャンスはあると思うんですよね。いまはむしろダブステップだけじゃなくて、さっき言ってたみたいなジュークだったりフットワークだったりヒップホップだったりとか、もはやインターナショナルなものだから。
■ジュークやフットワークがインターナショナルなものになるかはわからないけどね(笑)。ロンドンはすごいだろうけど、きっとね。イギリス人はそういうの好きだから。エレクトロも、シカゴ・ハウスも大好きだったし。
GT:いや、でも俺はあり得ると思いますよ......って信じたいですよね。
■リスニング・ミュージックとして楽しむっていうのはあるよね。僕はそうだから。ただ、あそこまで俊敏に足を動かすのは、自分には絶対に無理だと思った(笑)。あれはもう、ストリート・ミュージックだからねー。
GT:そうなんですよね。オタクっぽくなっちゃうのはちょっとね。もうちょっとストリートな感じで。
■フットワークは昔デトロイトで現場を見たことがあって、コンクリートの路上でみんな輪になって、ダンスを順番にしていくわけだけど。
GT:ちょっとクランプとかに似た感じですよね。
■ほんとにダンス・バトル。男の子も女の子もいるし白人もいるし黒人もいるし東欧系やラテン系 もっていう......ていうか、話が終わらないね。このままだとゴス・トラッドがアジア・ツアーの飛行機乗り遅れちゃうから今回はここまでにしましょう(笑)。 『ニュー・エポック』が1月11日にリリースされるわけだけど、その反応も楽しみだし、2012年、また会えるのを楽しみにしていますので。今日は出発日 だというのに、こうして時間を作ってくれて、とても貴重な話をありがとうございました。
ゴス・トラッドは、自分のこれまでの経験を、いま日本で音を作っている多くの若者に伝えたくてうずうずしているようでもあった。それは自力でここまでできるんだという、今日的なDIYミュージックとしてのダブステップとその文化についての話だが、それまた別の機会に。
取材:野田 努(2011年12月30日)