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interview with Da Lata

interview with Da Lata

ロンドン発ラテンの冒険

──ダ・ラータ、インタヴュー

小川充    通訳:F君   Nov 07,2013 UP

ダ・ラータとしてのコンセプトは「ブラジル人のバンドになりたい」というものでは決してなかった。僕たちがやりたかったことは、それをもう少し超えたところにあったんだ。僕たちはブラジルの音楽を愛しているけれど、それは僕らの一部にすぎない。

そのファースト・アルバムが2000年に発表された『Songs From The Tin』です。そして、2003年にはセカンド・アルバム『Serious』を発表します。これらを振り返ってみて、どのようなアルバムだったと言えますか?

PF:ダ・ラータという言葉は“From The Tin”(缶の中から)という意味で、ブラジルで使われる表現なんだけど、英語で言うところの“Wicked”と同じ意味なんだ。何か特別であるという意味だよ。ただ、それは僕たちが傲慢に特別だと言いたいわけではなくて、これが僕らの信じていることだと言いたいんだ。缶のなかから何か特別なものが出てくると信じている。それが『Songs From The Tin』のアルバム・タイトルにもなったわけだけど、制作に入った当時は“Ponteio”を作ったときから、ダ・ラータのフォーカスするところもある意味変わっていた。そのときのダ・ラータなら、自分たちが影響を受けてきた音楽に対してオマージュを捧げることができるだろうと思ったんだ。僕たちの愛するブラジリアン・ミュージックを探索してみたかった。たとえばミルトン・ナシメントとかロー・ボルジェスとかのミナス・サウンドをね。その結果、『Songs From The Tin』はいままでにやったなかで、一番純粋なブラジル音楽と言えるもので、もはやブラジル人が作ったレコードではないかというくらいだった。ダ・ラータというシステムから生み出された、ピュアなブラジル音楽のレコード。
 でも、ダ・ラータとしてのコンセプトは「ブラジル人のバンドになりたい」というものでは決してなかった。僕たちがやりたかったことは、それをもう少し超えたところにあったんだ。僕たちはブラジルの音楽を愛しているけれど、それは僕らの一部にすぎない。『Songs From The Tin』を作り終えた後には、「よし、もう僕たちはこのアルバムを作り終えたから、今度はもう少し枠を広げてみよう。より大きな絵を描こう」ということになったんだ。そうして、『Serious』にはクラブ・ミュージックからの影響が色濃く反映され、よりプログラミング的で、よりエレクトロニックな要素が加わった。

この頃のロンドンには、ネグロカン、ミスター・ヘルマノ、バー・サンバ、ジャジーニョ、シリウスB、ヴィダ・ノヴァなど、ブラジル音楽やラテンを取り入れた多くのユニットがありました。ダ・ラータのメンバーも関わっていたユニットも多いです。当時の状況はいかがでしたか?

PF:それらのバンドはみなお互いに関係があって、リリアナはネグロカンで歌っていたし、アンディラ・フォンというネグロカンのベースはダ・ラータのライヴ・バンドに参加している。ジャジーニョに関しては、ポルトガル人のシンガー、グイダ・デ・パルマもダ・ラータのライヴ・バンドに参加した。だから、ロンドンでこのブラジリアン・サウンドに関わっていた人たちは、みんなお互いのことを知っていたし。ある意味、みんな同じファミリーに属していたんだ。

あなたはDJとして度々来日し、キョート・ジャズ・マッシヴ(KJM)はじめ、日本のアーティストともいろいろな交流があったと思います。スリープ・ウォーカーの吉澤はじめさんが“Golden”にキーボードで参加したりと。こうした交流のなかでとくに印象に残っている思い出はありますか?

PF:初めて日本に来たのは1993か1994年あたりのことだった。そのときに初めてKJMに出会って、クラブ・コラージュでヨシ(沖野好洋)とプレイしたのを覚えている。あの夜の僕たちは本当に楽しんで、お互いをビビらせまくった。彼がレコードをかけて、「まじかよ、何だよこの曲!」と僕は思って。それで、僕がレコードをかけると、今度は彼が「何これ!」って驚いていた。あれは本当にエキサイティングな時間だった。その頃、みんなたくさんのブラジル音楽を探して、いろんなレコードを発掘していたから。当時は日本でもブラジル音楽はほんとうに大きな影響力があったんだ。それは素晴らしいことだったよ。シーン自体が爆発的に盛り上がってきていて、古いブラジル音楽に対する新鮮で大きな興味が湧き上がってきていた。だから、明らかに自然とお互いに似ている所があったし、すごくいい友だちになったよ。ロンドンで僕たちがやっていたことと、日本の何人かがやっていたことには音楽的にも類似性があって、そのふたつが並行していたんだ。

2004年にKJMのコンピに“Ronco Da Cuica”を提供して以来、長らく活動休止状態となりましたが、どのような理由からでしょう?

PF:実は2008年にもパパ・レコーズから「This Is Not Your Job」というナンバーをリリースしているんだ。それはハウス調のものなんだけど、今回のニュー・アルバムでは生ドラムを入れたオーガニックなアレンジにして、改めて“N.Y.J.”というタイトルで収録し直している。“Ronco Da Cuica”も前と少しアレンジが変わっている。そんな感じで断続的にはやっていたけれど、活動がスローダウンしたのはたしかで、それはクリスがニーナとのプロジェクト、ジープで忙しかったからなんだ。ジープはスモーク・シティのあと、クリスがメインで作ったバンドで、2枚のアルバムをリリースした。

ジープもある意味でダ・ラータの別プロジェクトと言えるのかもしれませんが、それによってダ・ラータの音楽性は途切れることなく継承されてきたと言えますか?

PF:いや、そうは思わない。ダ・ラータのアイデンティティは基本的に僕とクリスで、それは彼がニーナとやっていることとは大きく違っている。たしかにミュージシャンやいくつかのアイデアについて交わる部分はあるけれど、基本的にクリスとニーナのプロジェクトは、どれもニーナのソング・ライティングが基となっている。もちろんふたりで作ることもあったけれど。一方、ダ・ラータはクリスのソング・ライティングとその他のメンバー、そして僕のプロダクションがそこに影響するということだから、両者はお互いに異質のものなんだ。

取材:小川充(2013年11月07日)

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Profile

小川充 小川充/Mitsuru Ogawa
輸入レコード・ショップのバイヤーを経た後、ジャズとクラブ・ミュージックを中心とした音楽ライターとして雑誌のコラムやインタヴュー記事、CDのライナーノート などを執筆。著書に『JAZZ NEXT STANDARD』、同シリーズの『スピリチュアル・ジャズ』『ハード・バップ&モード』『フュージョン/クロスオーヴァー』、『クラブ・ミュージック名盤400』(以上、リットー・ミュージック社刊)がある。『ESSENTIAL BLUE – Modern Luxury』(Blue Note)、『Shapes Japan: Sun』(Tru Thoughts / Beat)、『King of JP Jazz』(Wax Poetics / King)、『Jazz Next Beat / Transition』(Ultra Vybe)などコンピの監修、USENの『I-35 CLUB JAZZ』チャンネルの選曲も手掛ける。2015年5月には1980年代から現代にいたるまでのクラブ・ジャズの軌跡を追った総カタログ、『CLUB JAZZ definitive 1984 - 2015』をele-king booksから刊行。

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