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interview with MC Kan

interview with MC Kan

ヒップホップ・ドリーム・アゲイン

――MC漢、ロング・インタヴュー

二木 信    special thanks to:宇川直宏(DOMMUNE)   Jun 02,2014 UP

まあ、プロのMCになりたきゃ、リリックでも言っているんだけど、「まず根拠のない自信が必要」で、「プロの世界で生き残りたければ今度は言葉の裏付け取る必要」(“次どこかで”)があると。

MC漢の定義からすると、たとえば、DOMMUNEの場は“斜め社会”ですか?

漢:まあ、ここは意外と斜め社会系ですね。

意外と斜め社会系(笑)。

漢:あやふやでも許される、ある意味、心が広い系ですよ。

心が広い系!?(笑)

漢:ただ、やっぱり俺が日本のラッパーを好きなのは、そうだな、日本にはアメリカとは違うヒップホップのおもしろさがあるからなんですよ。アメリカ人からしたら、日本人のラッパーが「おいっす」(握手のジェスチャーをする)とか、こうやったりする(会釈のジェスチャーをする)だけでも、「おっ、なんだよ」みたいな目で見てきたりする。「あ、お辞儀した」みたいな驚きなのか、「かっけーじゃん」って感じなのかはわからないけど、まあ、そういう挨拶が日本人とアメリカ人の間で自然にできる世代もいるしね。それはそれでよくて、俺は「仲間入れろ、コノヤロー」って感じだね。

ほお。

漢:たとえば、こう、ZEEBRAというラッパーやDABOってラッパー、RYUZOってラッパー、いろんなラッパーがしゃべったりしているのを見ていても、日本人だったら、そこからいろんなものが読み取れるでしょ。そのしゃべり方や、どこに敬語でどこには敬語じゃないとか、そういうことから。その背景を分析できて、ちゃんと説明できるヤツがいたら、だいぶおもしろいよね。俺は彼らのことをもうとっくにリスペクトしていて、みんなどんどん仲良くなっていいんじゃないですか。

かつてはDABO氏とのビーフもありましたし、いろんなビーフを経て、いまそういう考え方に至ったということなのかなと。長い間〈ライブラ〉とともに活動してきて、一昨年に〈鎖グループ〉を立ち上げる経緯についても教えてもらえますか。

漢:ヒップホップのクルーでメシを食う、日本のなかで音楽でメシを食うっていうのは、だいぶ難しいんですよ。日本では、「おまえ、ヒップホップのラッパーでメシ食うだぁ? ふざけんな!」っていうのが普通の、一般的な感覚じゃないですか。けっきょく、武器になるのはソロなんですよ。やっぱりみんながソロを出せるようになっていかなきゃいけない。最初に話したとおり、MSCと〈ライブラ〉が合体したのは、隣町の先輩、要は日本ルールの先輩で、協力できると思える先輩がはじめてできたんですよ。俺もべつにそういう関係は嫌いじゃないですから。そういった仲ですし、契約書もなくて、最初は純粋な気持ちで楽しくスタートしたんですよ。べつに会社の役員とかになったわけではないんですけど、重役として会議にも参加して、自分の意見もけっこう通っていたんですね。

2005年からスタートするフリースタイル・バトルの大会の〈UMB〉の発案者も漢さんだったんですか。

漢:〈UMB〉はもともと、その前にあった〈お黙りラップ道場〉っていうイヴェントが原形なんですよ。当時〈ライブラ〉にいたA&RのMUSSOっていう中学の同級生のヤツが、イヴェントで自分の力を試すためにやってみるって話からはじまっている。「ラップ・バトルやろうぜ!」って。俺もラップ・バトルで優勝していたし、俺もアイディアを出して、気持ちとしても〈B-BOY PARK〉には出たくないってヤツらが集まるかなって考えていたね。

2002年の〈B-BOY PARK〉のMCバトルでMC漢が優勝したことが、日本のフリースタイル・カルチャーの大きな転換点ではありますよね。その流れで〈UMB〉が立ち上がるわけですよね。

漢:そうそう。そのあたりで、日本でもルールのあるバトルが本格的にはじまった。で、〈UMB〉のDVD作ったり、ソロ・アルバム『導 ~みちしるべ~』(2005年)やMSCの『新宿STREET LIFE』(2006年)が出たりして、俺ひとりだったら、最初の1、2年は、まあお金はもらっていましたね、それなりに。

そうですか。

漢:でも、俺らの仲間がどれだけのギャランティをもらっているのかという話はしていなかったんですよ。ただひとつ言えるのは、ストリート・ハスリングみたいな感じでやっていようが、ラップの金でやっていようが、組織やグループだったら、ある程度のところまでみんなが潤わないと、誰かが犠牲になることになる。そのあたりで、俺の理想と違うなあっていうところも出てきたわけですね。不安な部分もあるなと。余裕がないなら、まあまあ、俺が犠牲になってもいいよ、じゃあ、そこは、という気持ちもあったけど、身近な人間に抱きたくもない感情が増えてきたり、そういう人間社会現象が起きてきちゃうわけですよ。ドーナツ化現象の内側のドーナツ部分の壁みたいな感じの狭いところでループするようになっていきましてね。

ドーナツ化現象の内側のドーナツ部分の壁?

漢:ドーナツ化現象の内側のドーナツ部分の壁みたいなところですから、そこにいる人たちは外部の人間ではない。でも、その短い距離で人が離れていく。そうなっちゃうと、俺のなかではヒップホップじゃない。俺の一言にたとえ騙されてでも、それが100%だったら成功するルールじゃなくなってきた。主婦的行動の井戸端会議で極端な憶測も飛び交うようになってしまって、ブルい過ぎてしまうぞ、エヴリデイ、みたいな現象が起きてきたわけです。

どういうことですか?

漢:まあ、やっぱり人間が増えると、社会になりやすいですよ、日本ってね。身内でえげつねえ、みたいな現象が起きてくるようになるんですよ。「なんで、この短い距離でそのことを確認すんだよ」ってなってくる。そういうところから、僕がいまインターネット・サーフィンに乗せているインタヴューの旅がはじまっているんです。

取材/本文構成:二木信(2014年6月02日)

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Profile

二木 信二木 信/Shin Futatsugi
1981年生まれ。音楽ライター。共編著に『素人の乱』、共著に『ゼロ年代の音楽』(共に河出書房新社)など。2013年、ゼロ年代以降の日本のヒップホップ/ラップをドキュメントした単行本『しくじるなよ、ルーディ』を刊行。漢 a.k.a. GAMI著『ヒップホップ・ドリーム』(河出書房新社/2015年)の企画・構成を担当。

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