「PAN」と一致するもの

Eli Keszler - ele-king

 ニューヨークのドラム奏者/サウンド・アーティストであるイーライ・ケスラーは、2017年にローレル・ヘイローのアルバム『Dust』に全面参加し(実質上のコラボレーターともいえる)、2018年に『Age Of』をリリースしたワンオートリックス・ポイント・ネヴァーのワールド・ツアーにドラマーとして参加したことで、その名を広く知らしめることになった。
 むろんイーライはそれ以前もドラム奏者/サウンド・アーティストとして充実した活動をおこなってきた。2006年以降、自身のレーベル〈R.E.L Records〉から精力的に多くのアルバムをリリースし、2011年にはベルリンの実験音楽レーベルの〈Pan〉から『Cold Pin』を、2012年に『Catching Net』を発表する。両作ともドラム演奏とインスタレーション的なコンセプトを音盤化したエクスペリメンタルな音響作品だ。この2作で彼にとって演奏/インスタレーションという極の融合を示してみせた。そして2016年には香港のフリー・ミュージック/実験音楽レーベル〈Empty Editions〉のリリース第1作として『Last Signs Of Speed』をリリースする。
 ソロ作品のリリースのほかに、コラボレーション作品の発表も盛んにおこなっており、2012年にイタリアはヴェニスのフリー・ジャズ・レーベル〈8mm Records〉からベテラン・サックス奏者のジョー・マクフィーとの『Ithaca』を、同年、アメリカ合衆国はバーリントンを拠点とするエクスペリメンタル・ミュージック・レーベル〈NNA Tapes〉から電子音響/音楽家キース・フラートン・ウィットマンとの『Eli Keszler / Keith Fullerton Whitman』を、2014年にロンドンのフリー・ミュージック・レーベル〈Dancing Wayang〉からオーレン・アンバーチとの『Alps』などをリリースしている。私見ではこういったコラボレーションの成果が(あくまで音楽的方法論であって、人脈的なものではない)、ヘイローの傑作『Dust』に結実したのではないかと考えている。
 いずれにせよ、イーライのドラム演奏とサウンド・インスタレーションを融合させていく作品は観客/聴き手/アーティストに大きなインパクトを与えた。じっさい音源リリース以外でも作品展示(自身の演奏も含む)やアート作品の発表なども多くおこなっている。それは彼のサイトでも確認できる。

 本作『Stadium』は『Last Signs Of Speed』以来、2年ぶりとなるイーライのソロ・アルバムである。今回は電子音楽家フェリシア・アトキンソンとアート・ディレクター/デザイナーのバルトロメ・サンソンによって運営される注目のエクスペリメンタル・ミュージック・レーベル/ブック・レーベル〈Shelter Press〉からのリリースだ。
 このアルバムの制作中にイーライはサウス・ブルックリンからマンハッタンへ拠点を移したようで、それに伴う意識の変化や、近年のツアー生活にともなう風景の変化が、楽曲の隅々にまで影響・反映しているようにも感じられる。トラックは意識の変容にように滑らかに変化し、光景/記憶の再生のように生成していく。私見では現時点におけるイーライの最高傑作ではないかと思う。音響の構成や構築度がこれまでの段違いにオリジナリティを獲得しているからである。

 ドラム、パーカッションのグルーヴのみならず、それらのテクスチャーをも精密に抽出し、細やかにスライスし、細やかな粒子のように電子音などとレイヤーさせる手法と手腕によって、ジャズ的/フリー・ミュージックな演奏イディオムをサウンド・アートやインスタレーション、エレクトロニクス音楽の中に分解していく。いわば音と音の関係性が複雑な音響空間の中で、音、音楽、演奏の関係性が、その都度「結び直されていく」かのごとき独自の音響と聴取感が生まれているわけだ。
 1曲め“Measurement Doesn't Change The System At All”や5曲め“Simple Act Of Inverting The Episode”のグリッチするような細やかでハイブリッドなドラミングと柔らかい電子音/サウンドのレイヤー、2曲め“Lotus Awnings”、4曲め“Flying Floor For U.S. Airways”などのズレとタメが多層的にコンポジションされる非常に現代的なリズム構造など、どの曲もハっとするような聴きどころに満ちており、一瞬たりとも聴き逃せない。
 中でも注目したいのが3曲め“We Live In Pathetic Temporal Urgency”だ。この曲は音響とアンビエンスとリズムの時間軸が伸縮するような構造と構成になっており、どこか意識と身体に浸透するようなサウンドを生成している。意識と風景。サウンドとミュージック。マテリアルとアブストラクト。それらの関係が別の地点から結び直されていくような感覚を覚えた。アルバムを代表する曲ではないかと思う。
 ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー(ダニエル・ロパティン)はイーライのドラミング/サウンドを「バクテリアのよう」と彼らしい表現で語っているようだが、確かに、サウンドの中に粒子のように浸透する彼のサウンドと演奏は、微生物のような蠢きを持っているように思える。ドラム演奏の粒子化。そこから生まれる伸縮する時間軸を持った音響空間。知覚を拡張するという意味において、彼の音楽と演奏はそれ自体がアートであり、一種のインスタレーションでもある。

 となればフィジカル盤もまたそんな彼による最新のアートフォームといえよう。アートワークはレーベル主宰のひとりでもあるバルトロメ・サンソン。タイポグラフィと写真を効果的に活用したクールな出来栄えである。アナログ盤とCDのデザインを大きく変更している点も興味深い。アナログはタイポグラフィを効果的に使ったミニマルな仕上がりであり、CDはプラスチックケースに特殊印刷でタイポグラフィを印刷、盤面に写真をトリミングして印刷した仕様である。ワンオートリックス・ポイント・ネヴァーの『Age Of』のCDデザインと同様に、CDだからこそ可能なアートワークといえよう。

DJ Sotofett - ele-king

 〈Honest Jon's〉からのアルバムで話題を集めたノルウェー出身のDJソトフェット、自身の主宰する〈Sex Tags〉などをとおしてロウファイ・サウンドを盛り上げている彼が来日します(紙エレ20号をお持ちの方は86頁をチェック)。今回は大阪、神奈川、東京、札幌の4都市をツアー。完全に未発表の作品のみをプレイするとのことですので(さらに pool の公演では限定7インチも販売予定とのこと)、お時間ある方はぜひ足を運びましょう。

異端ハウス/テクノ・レーベル〈Sex Tags Mania〉主催の DJ Sotofett が11月に来日ツアーを敢行。ツアー限定のスペシャル7”も同時リリース。

ノルウェーのモス出身で、現在はベルリンを拠点に活動中の〈Sex Tags Mania〉レーベルを DJ Fett Burger と共に主催する DJ Sotofett が、2018年11月に1年ぶりの再来日を果たす。
「Body Meta presents DJ Sotofett Japan Tour 2018」と題された今回のツアーでは、11/16(金)の NOON (大阪)を皮切りに全国4都市で5公演を行うことが決定している。
DJ Sotofett は、強烈にサイケデリックなディープ・ハウスからタフなテクノ・バンガー、はたまた捻れたダンスホール・レゲエや異形のジャングル、手作りエレクトロにヒプノティックなアンビエントまで、〈Sex Tags Mania〉に加え〈WANIA〉や〈Sex Tags Amfibia〉等のオフシュートを含む幾多のレーベルから、巧妙な変名を駆使しつつ多岐に渡るスタイルと一貫したサウンドデザインの元に大量リリースしている。
本年の日本巡業において、DJ Sotofett は自身の未発表作品“のみ”を使用してプレイするという新しい試みを行うこととなっており、全てのギグでこれまで貴方が耳にしたことのない未発表の作品及びリミックスの数々が披露される。
また、ツアーに併せて、DJ Sotofett feat. Osaruxo & Diskomo による限定7吋レコードが発売される予定で、こちらは11月18日のギグの会場である pool のみで販売される模様。
10代の大半をグラフィティ・ライター/B-Boyとして過ごした DJ Sotofett は、屈指のヴァイナル・ディガーとしても知られており、カルトな人気を誇る地下レーベルの首謀者ならではのミステリアスでトリッピーなプレイを堪能してほしい。
いくつかの会場では上記のレコードの他にもスペシャルなグッズ販売も行われる予定なので、ぜひ足を運んでみてほしい。

・レーベルサイト
https://sextags.com/
・RA:特集記事「Label of the month: Sex Tags Mania」
https://jp.residentadvisor.net/features/2599
・Discogs
https://www.discogs.com/artist/1158290-DJ-Sotofett
・Mix音源
https://www.mixcloud.com/CosmopolitanDance/cosmopolitan-dance-dj-sotofett-live-at-unit-20151017-part-1/

【ツアースケジュール】
MOLDIVE “5 Years Anniversary Special” feat. DJ Sotofett at NOON
11/16 (金) - 大阪

22:00 Open / Start
DJs: DJ Sotofett (Sex Tags Mania / WANIA), TAKE (Vibes), KAITO + g'n'b
VJ: HiraLion (BetaLand)
PA: yoko△uchuu
Advance: ¥2,000 | w/Flyer: ¥2,500 | Door: ¥3,000

DJ Sotofett at OPPA-LA - Special Sunset Session -
11/17 (土) - 神奈川

15:00 - 22:30
DJs: DJ Sotofett (Sex Tags Mania / WANIA), EYヨ (BOREDOMS), Changsie
Live: ifax!
Sound System: 松本音響
Door: ¥3,000
Info: 0466-54-5625
https://oppala.exblog.jp

Sex Tags Amfibia presents Sex Tags Set-Up Tokyo at pool
11/18 (金) - 東京

18:00 - 22:00
Live: DJ Sotofett & Osaruxo feat. Diskomo, Aonami
Door: ¥1,000
https://www.facebook.com/events/491861494630043/

Jetstream presents DJ Sotofett At PROVO
11/22 (木/祝前日) - 札幌

22:00 - 6:00
DJs: DJ Sotofett (Sex Tags Mania / WANIA), OCCA (Archiv / Jetstream), UMI (Jetstream)
Door: ¥1,500

Body Meta feat. DJ Sotofett at forestlimit
11/24 (土) - 東京

17:00 - 24:00
DJs:
DJ Sotofett (Sex Tags Mania / WANIA) - Exclusive 6 Hours Set
Akiram En B2B Diskomo - Warm Up DJ × Live Set
Advance: ¥2,000 | w/Flyer: ¥2,000 | Door: ¥2,500

https://www.residentadvisor.net/events/1176635
* Advance ticket available on RA (limited 30)

Body Meta SNS:
twitter: https://twitter.com/bodymetajp
instagram: https://www.instagram.com/bodymetajp/
Facebook: https://www.facebook.com/bodymetajp/
SoundCloud: https://soundcloud.com/bodymetajp

Kojo Funds - ele-king

 UKガラージ、グライムからアフロビーツまで、現在のUKの音楽のいくつかは「垂直のゲットー」とも呼ばれるロンドン郊外の団地から生まれてきた。グライムが生まれた2000年代初頭、MCはそれぞれの郵便番号でエリアをレペゼンした。郵便番号が表す1区画が彼らが守っていたエリアであり、またそれぞれクルーの境界でもあったという。一方で、同時期の投資と民間主導の都市再開発はオリンピックを契機にさらに加速していった。“公共”住宅が“高級”住宅へと建て替えられ、もともと住んでいた家族はより不便なエリアに追い立てられたり、予算が切り詰められたことでユースセンターが閉鎖されたりしているという。例えば、Dizzee Rascal や Wiley がしのぎを削った Deja Vu FM がもともとあった団地も、いまや警備員の配備された高級住宅地であるという。

 こうした背景から楽しみを失い、行き場を失ったロンドンの若者のギャング化が問題となっている。ナイフによる殺傷事件の増加はギャング・カルチャーと結びつけられ、ひいてはギャングスタ・ラップやグライムが槍玉に上げられることもある(*)。

 音楽の中で彼らがレペゼンしているのは、郵便番号ではなく、仲間やグループ、そして彼らが住む団地一棟である(**)。彼らは団地やアパートメント周辺で撮ったMVをYouTubeで公開し、自らのエリアを誇示する。「ハイパーローカル」と形容されるような極度の地元傾向、そしてその「ギャング」傾向は、ギャングスタ・ラップの競争的で暴力的な一面ではある。一方で、ストリートのハスラーとして名を馳せてきたロンドンのラッパーのスタイルは、若者から羨望の眼差しを受けている。ギャング・カルチャーの槍玉に音楽が上がることの是非もあるが、彼らの音楽が絶大な影響力を持っているということでもある。

 そんなUKラップのニューカマーとして注目を集めているうちのひとりが、Kojo Funds である。2016年に Kojo Funds がロンドンのMC、Abra Cadabra とのコラボ曲“Dun Talkin”をヒットさせ、「ラップする」のではなくパトワ交じりのスタイルで「歌い上げる」スタイルのパイオニアとなった。そして翌年には Mabel のラヴ・ソング “Finders Keepers”での客演で、YouTube再生回数3000万回の大ヒットを記録した。そして、遂に彼のデビュー・アルバム『Golden Boy』がリリースされた。

 アルバムはハードなギャングスタ・ラップをベースに、時折ソフトな曲やラヴ・ソングがくるような展開になっている。出だしは“Golden Boy”。自分を大きく見せようとする「ギャングスタ」の嘘について歌った“0%”、そして彼のヒット曲“Warning”へ流れる。彼の歌い方からは、肩に力が入ったような「怒り」ではなく、むしろ勝者としての余裕が感じられる。

フィールドに出ても、何も言わない
充電器みたいにプラグする
まるで Kolo と Yoyo
警察が俺の仲間を追ってる
やつらは言う、Kojo は悪魔だ
続編は見たくないって
俺の Nigga はディーゼルみたく Furious
“Warning”

 続いての“Million”から2曲は、昨年の“Finders Keeper”で見せたソフトで粋な一面が表れる。Raye を迎え、アコースティック・ギターが印象的な“Check”では、ラヴ・ソング・デュエットを披露している。落ち着きながらも、Kojo Funds のメロディックな暗喩の才能が開花する“Stallin'”。そして、Bugzy Malone を迎えたガラージ・チューン“Who am I?”はこのアルバムのハイライトだ。

俺のビジネスは失速しない
ひとつは足元のなかには
駅では会話するな
ひとつはドレッドの中に



失速しない、大金を手に入れた Nigga
太陽が昇るまでストリートで金をゲットする
Yeh Kojo Funds、俺が支配者
俺の兄弟が重りを測る
それでやつらがカットするんだ
“Stallin'”

 後半はポップスへトライした“High Grade”や、Giggs を迎えた“PNG”、エモーショナルな歌を披露する“Thug Ambition”など、幅広い音楽性へと拓けていく。そして、最大のヒット曲“Dun Talkin”でアルバムは締めくくられる。

 アルバムを通して彼自身のアフロ・カリブ、そしてギャングスタ・ラップのルーツを存分に発揮している。そして、ダンスホール、レゲエ、ガラージやトランス、ポップスまでミックスし「アフロビーツ」を開拓し続けている。

(*) Resident Advisor ニュース「「ドリルやグライムよりナイフ犯罪が問題」ロンドンの音楽コミュニティが議会に訴える」 https://jp.residentadvisor.net/news/41626
(**) Dan Hancox による著『Inner City Pressure』から。

interview with Gilles Peterson - ele-king


Maisha
There Is A Place

Brownswood

Spritual Jazz

ジェイク・ロングを中心としたセクステットで、人気サックス奏者のヌビア・ガルシアもメンバーとして参加している。ファラオ・サンダース直系のスピリチュアル・ジャズの現代解釈。

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 UKジャズは、ジャズとはこうあらねばならないという固定観念から自由だ。UKジャズは、50年前はロックと結合し、40年前はパンクに共鳴し、30年前はカリブ海のリズムを導入するいっぽうで、ヒップホップとDJカルチャーにジャズを見いだし、90年代なかばにはテクノとジャングルをジャズの延長で解釈した。そして21世紀も20年近くを経た現在、UKジャズはアフロビートと連結しながらデジタル・テクノロジーへの打ち壊し(ラッダイト)よろしく生演奏にこだわり、人種混合の理想とフェミニズムとリンクしながら躍動している。
 UKジャズにおける“ジャズ”とは拡張する契機であり、ゆえに「こんなのジャズじゃない」と思われがちだが、じつは逆説的にそれは褒め言葉である。UKジャズはつねにおりおりの若い世代に開かれているからだ。

 さて、今回の躍動の象徴となったのが、2018年の初頭に〈Brownswood〉からリリースされた『We Out Here』で、そのコンピレーション・アルバムのトップバッターを務めたマイシャ(Maisha)も11月9日にアルバム・デビューする。
今回は、〈Brownswood〉レーベルを主宰しながら、BBCのラジオ番組によっていまでは世界中にUK解釈のジャズを発信しているジャイルス・ピーターソンに話を訊いた。以下、UKジャズの特徴や面白さをじつに簡潔に語ってくれている。

たとえば〈ヴァーヴ〉や〈ブルーノート〉の社長から電話がかかってきて『非常にエキサイティングだ、もっと欲しい、どこに行けばいいか教えてくれ』と言われると、これは何かが起こっているなと確信するよね(笑)。

ここ2年、UKの若々しいジャズ・シーンの熱気がじょじょにですが日本にも伝わってきています。とくに2018年は、年の初頭に『We Out Here』というコンピレーション・アルバムが出たことがその勢いのひとつの印のようにも見えましたし、サンズ・オブ・ケメットに続いて、ジョー・アーモン・ジョーンズカマール・ウィリアムスといった若いひとたちの素晴らしいアルバムがリリースされました。日本でも松浦俊夫のアルバムがこうしたUKの動きにリンクしていたと思います。あなた自身、この1~2年を振り返って、やはりこのシーンの熱量には手応えを感じていると思うのですが、いかがでしょうか?

GP:素晴らしい時代が来たよね。ただそれほど驚いてはいないんだ。というのもそれはつねにそこにあったものだから。わりとよくUKジャズの歴史について訊かれるんだけど、ぼくは1988年に……ちなみに30年前のことだけど、『Acid Jazz And Other Illicit Grooves』と『Freedom Principle』をリリースしたんだけど、それは当時UKに存在したシーンのスナップ写真のようなもので、ジャズに関連した、もしくはジャズに影響を受けた音楽だったんだ。それ以来この音楽とムーヴメントは持続的に成長してきて、すごく注目された時期もあれば無視された時期もあったわけだよ。UKが盛り上がることもあれば、ドイツや日本といった場所が盛り上がることもあって、そして2018年、2017年、2016年くらいで、若い世代のミュージシャンたちがついにこのムーヴメントを自分たちのものとして引き受けて、自信を持ち、演奏技術を身につけて、SNSを駆使してクラブ・イベントを主催したりスタジオでのセッションを企画したり、そういったすべてのことがハリケーンのように巻き起こったんだ。
それを率先してやってるのがモーゼス・ボイド(Moses Boyd)やシャバカ・ハッチングス、ヌビア・ガルシア(Nubya Garcia)といった素晴らしい人たち、あるいはJazz re:freshedのようなグループや、サウスロンドンのペッカムやデトフォード周辺、イーストロンドンのダルストン辺りのクラブ、そういったものすべてが、より伝統的なジャズの世界に対するオルタナティヴとしてあるんだ。
ジャズはものすごく深い音楽で、強い基盤があるだけに、自分たちがジャズの所有者だと思ってる人たちがいるんだよ。どういうわけか上の世代はジャズを囲い込んでおきたいと思っている。それで、いま起きていることがこれだけエキサイティングな理由は、若者たちがジャズを自分たちのものにしたからなんだ。もちろん年配の人たちに対するリスペクトはあるけど、自分たちが立つ舞台を自分たちで作り出さなければならないことを理解して、実際それでいまこういうことになっているわけ。資金援助やスポンサーやサポートの必要を感じていない……いや、もちろんぼくたちは彼らの音楽を応援しているしプッシュしていきたいし、ぼく自身もこの動きに参加できて嬉しいし助けていきたいと思ってるけど、彼らはぼくのような人を必要としていないんだよ。ぼくがいようがいまいが関係なくて、いずれにしろ自分たちはやるんだという。それがこのムーヴメントを力強いものにしているんだ。だから若い人たちも共感できるんだ。友だちがやってたり、似たような育ち方をした誰かがやってたり、ステージに立っているミュージシャンが年寄りばっかりじゃなくて同世代の連中だからさ。

いろんな国からのリアクションがあると思うのですが、いかがでしょう?

GP:ジャズって面白くて、世界中でフェスティヴァルが開催されていて、彼らはコンテンツを欲しがっているわけさ。それで、新しい世代が出てきたことで、じゃあもうウェイン・ショーターやハービー・ハンコックやソニー・ロリンズに頼らなくていいんだと思うようになった。もちろん彼らはいまでもみんなから愛される素晴らしいアーティストだけど、でも世界中のフェスティヴァルやクラブは餌を欲しがってるわけだよ。そして食欲が旺盛なところへ、いまここからたくさんのパンが供給されつつあるという(笑)。
本当にみんな色めき立っているんだ。去年パリにいたときに、New Morningっていう素晴らしいジャズ・クラブがあるんだけど、そこに貼ってあるポスターに毎晩のようにイギリスのバンドが出演者として載っていたんだ。その翌日の新聞には、たしか『ル・モンド』だったと思うけど、その状態を“British Invasion”と名付けていた。フランス人がイギリスのジャズについてそんな風に書くなんて初めてのことだと思うよ。イギリスは変な破壊的な音楽とかは素晴らしいけど、ことジャズに関してはたぶんフランスの方が伝統があるんだ。だからそれは興味深かったね。
 あとは今年の初めにニューヨークのWinter Jazzfestに招かれたときも、ザ・コメット・イズ・カミング(The Comet Is Coming)やヤズ・アハメド(Yazz Ahmed)、ヌビア・ガルシア、オスカー・ジェローム(Oscar Jerome)といった人たちを紹介したんだ。それで来年の1月には、ドラマーのユセフ・デイズ(Yussef Dayes)やエズラ・コレクティブ(Ezra Collective)、ヤスミン・レイシー(Yazmin Lacey)、エマジーン・チャクレイ(Emma-Jean Thackeray)といった人たちが出ることになっていて。ニューヨークでも盛り上がっているというのは嬉しいことで、たとえば〈ヴァーヴ〉や〈ブルーノート〉の社長から電話がかかってきて『非常にエキサイティングだ、もっと欲しい、どこに行けばいいか教えてくれ』と言われると、これは何かが起こっているなと確信するよね(笑)。

今日のUKジャズの盛り上がりはどのようにして生まれたのか、あなたの分析を聞かせてください。

GP:このムーヴメントはとても自然発生的で、これがきっかけだったとはっきり言える瞬間がない。だからこそ力強いムーヴメントだと思うんだ。これ以前のムーヴメントはメディア主導だったんだよね。でも今回はとてもオーガニックで、それはもちろんいいことで、もしメディアが別の何かに注目しようと決めても存在し続けるし生き残り発展し続けるんだ。通常何かムーヴメントが起こったときは少し注意する必要がある。ちょっとフェイク・ニュースと似ていて、記事を読んで『いまはこれが流行ってるのか』と思っても実態がなかったりする。でもこれは間違いなく起こっていることなんだ。ぼくがこのムーヴメントの何が好きかというと、演奏のクオリティが高いことと、音楽のアイデアが非常に興味深くて、しかも成長し続けているということ。2年前と比べてもいろんなレベルでかなり変化があって、技術的には世界レベルになりつつある一方で音楽的なアイデアはユニークだから余計面白いんだよね。

このムーヴメントに「新しさ」があるとしたら、それはなんだと思いますか?

GP:いま言ったようなことも新しさだと思うし、自分の声を見つけるのが難しい音楽のなかに自分の声を見つけたということが、新しいと思う。というのもジャズのような長い歴史を持った音楽のなかに自分の場所を見つけてオリジナルな存在になるというのは難しいことなんだ。これまでのグループはもしかしたら少し伝統を重んじすぎてきたのかもしれないと思う。でもいま彼らはその伝統のなかにそれぞれ自分の声を見つけつつある。そのいい例がシャバカ・ハッチングスで、彼はサンズ・オブ・ケメットのリーダーでザ・コメット・イズ・カミングというグループもやってるんだけど、ぼくは彼は本当に素晴らしいと思っていて。というのも彼のレコードは単なるレコードではなく、ひとつのテーマだったりコンセプトのようなものでもあって、この時代を定義付ける重要なものだと思うんだ。彼が今年出したアルバムは伝統的な女性の役割に疑問を投げかけていて、いまの時代と波長が合っていて、そこも非常に重要だよね。

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Maisha
Maisha

ぼくにとってマイシャは、ぼくがクラブでDJをするときにかける音楽にいちばん近いんだ。クラブでぼくがジャズをかけるときは、スピリチュアル・ジャズを選ぶ傾向があって、浮遊感があるものというか。だからドラマーのジェイク・ロングがマイシャとして新しい音楽を聴かせてくれたとき、瞬時に引かれたんだ。

ジョー・アモン・ジョーンズはひじょうに若々しいアルバムをリリースしましたが、あなたはあのアルバムの良さはなんだと思いますか?

GP:まずジョーが作曲家として成長するのを見ているのはすごく喜ばしい。どの音楽でも、ムーヴメントが起こっていろんなクラブや人が関わって盛り上がるというのはもちろん素晴らしいことなんだけど、やっぱりそこには記憶に残る曲が必要なんだ。アンセムが必要なんだよ。それでジョーには、アンセムを書く能力があるとぼくは思う。彼のアルバムには3、4曲、本当にいい曲が入ってると思うし、そこはスタンダードなジャズ・レコードと一線を画す部分じゃないかな。構成もアレンジもアイデアも素晴らしいし、しかも彼の場合まだはじまったばかりだからね。先週末BBCでやった企画があって、ロンドンのメイダヴェールでライヴをやって、彼がハウス・バンドだったんだけど、オーガナイズもプレゼンも素晴らしくて、ある意味彼はイギリス版ロバート・グラスパーだね。


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There Is A Place

Brownswood

Spritual Jazz

ジェイク・ロングを中心としたセクステットで、人気サックス奏者のヌビア・ガルシアもメンバーとして参加している。ファラオ・サンダース直系のスピリチュアル・ジャズの現代解釈。

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ほかにも〈22a〉のテンダーロニアス(Tenderlonious)のアルバムもありましたし、この年末には、マンスール・ブラウン(Mansur Brown)のソロも出ますし、このたびあなたの〈Brownswood〉からはマイシャのアルバム『There Is A Place』がリリースされます。彼らは『We Out Here』の1曲目でもありましたよね。いまのシーンを象徴しているバンドのひとつのように思うのですが、あなたの口からマイシャとはどんなグループで、どんな魅力があるのか語ってもらえますか?

GP:ぼくにとってマイシャは、ぼくがクラブでDJをするときにかける音楽にいちばん近いんだ。クラブでぼくがジャズをかけるときは、スピリチュアル・ジャズを選ぶ傾向があって、浮遊感があるものというか。だからドラマーのジェイク・ロングがマイシャとして新しい音楽を聴かせてくれたとき、瞬時に引かれたんだ。ちょっとヴァイオリン奏者のマイケル・ホワイトだったり、あと日本で2枚レコードを作ったハリス・サイモンという人がいて、『New York Connection 』と『Swish』というアルバムがあって、そのストリングスとジャズというアイデアがぼくは大好きなんだけど、マイシャにはちょっとそれを彷彿させるものがあるんだよね。開かれていて、自由で、でもパーカッシヴなフィーリングもあって、おもしろことに、マイシャでぼくがいちばん好きな特徴のひとつがピアニストで、たしか日本人なんだよね。彼のソロは注目に値するよ。名前はアマネ・スガナミ(Amane Suganami)っていうんだ。あともちろんヌビア・ガルシアもシャーリー・テテー(Shirley Tetteh)もいるしね。
だからこういう作品を自分のレーベルから出せるのはすごく嬉しいよ。あと最近ココロコ(Kokoroko)とも契約したんだ。彼らの新作を年明けにリリースする予定なんだけど、ココロコもすごく好きなバンドで、彼らの音楽にはどこか西アフリカ的な雰囲気が感じられて、『We Out Here』に入っている彼らの“Abusey Junction”はYouTubeで800万回くらい再生されたんだよ。ジャズのトラックとして考えると、かなり異例だよね(笑)。

〈Brownswood〉のスタジオでセッションしているマイシャのPVを拝見しました。親密感があって、グッド・ヴァイブなところですね。見ていて、あなたがここ数年アプローチし続けているキューバやブラジルの音楽のようなファミリー感がある場面だと思いました。誰かの家に行ってセッションしちゃうみたいな。そんなフィーリングがいまのUKジャズにはあるんでしょうか?

GP:間違いなくあると思う。そこもこのシーンの強みなんだよ。ひとつのチームとして取り組んでいて、さらにみんながお互いから刺激を受けているという。そこがロンドンの良さでもあって、ジャズでもエレクトロニック・ミュージックでもインディ・バンドでも、そのなかでの競争があるんだけど、協力もするっていう。健全ないい意味でのライバル関係があるというか。みんなより上手くなりたいと思ってるから、それがそのシーンを強くしていく。いまのジャズ・シーンも一緒に演奏したり、お互いから学んだりしながら、それぞれが自分の個性を見つけていて、素晴らしいんだ。

いまの人たちはインターネットのおかげで音楽を探す能力が高いし速いから、非常に洗練されているよね。新世代のリスナーたちは、あっという間に音楽の核心部までたどり着くんだ。ぼくの場合はサン・ラを発見するまでに15年かかったけど、いまだったら15時間で見つけられる(笑)。

スピリチュアル・ジャズからの影響は、マイシャのほかにも、たとえばエズラ・コレクティヴにも感じますし、もちろんシャバカ・ハッチングスからも感じます。なぜいまになって、スピリチュアル・ジャズが見直されているんだと思いますか?

GP:見直されるべくずっと待ち続けていたと思う。正直、ぼくがパトリック・フォージなんかと一緒にDJをやってた80年代、90年代、最後にかけるのがスピリチュアル・ジャズだったんだよね。ぼくにとっては、たとえばダブ・レゲエとスピリチュアル・ジャズには通じるものがあって、何ていうか、実存的な、白昼夢のような、それをもっと構造がしっかりしてる音楽の前後にかけると、一種の美しいトランジションとしての効果があるというか、だからDJとしてぼくが生み出そうとしていた空気感にとっては欠かせないものとして常にそこにあったんだ。
何だろう、感情を動かす音楽というか……ああそうだ、カマシ・ワシントンはそういうサウンドを追求しているよね。ファラオ・サンダースやジョン・コルトレーンは、もうベスト中のベストな人たちなわけで、見直されるのは必然だったと思うよ。というのもいまの人たちはインターネットのおかげで音楽を探す能力が高いし速いから、非常に洗練されているよね。新世代のリスナーたちは、あっという間に音楽の核心部までたどり着くんだ。ぼくの場合はサン・ラを発見するまでに15年かかったけど、いまだったら15時間で見つけられる(笑)。

アフリカのリズムというのも、いまのUKジャズの特徴だと思います。これはもう、UKにおけるアフリカ系移民の増加を反映しているのでしょうか? あるいは、アフリカのリズムの多様さにジャズの“次”を見いだしたというか。

GP:そこはやっぱりロンドンの美しいところで、非常に多文化的な場所だからね。ロンドンとパリはすごく似ている部分もあるけど、全然違う部分もあって、パリのコミュニティは結構が分かれてるんだよね。UKの方が混ざってると思う。その結果として音楽もUKの方が混ざってるんだよ。アフリカン、レゲエ、カリビアン、コロンビア、南米と、あらゆる文化がロンドンのタペストリーとして織り交ぜられているんだ。そこがロンドンのマジカルなところだよ。たとえばザ・クラッシュのジョー・ストラマーのような人も世界中の音楽を擁護していた。その頃はちょっとアウトサイダーのものという感じがあったけど、いまはすべてが混ざってるんだ。いまの若いリスナーたちは、キング・サニー・アデの曲も聴けばグライムも聴くって感じなんだよね。アークティック・モンキーズからアート・ブレイキーまでが繋がってる。それは変わったことじゃなくて、ごく普通のことで、みんな幅広く聴いてるんだ。ぼくの頃はそうじゃなかったんだよね。

ヌビア・ガルシアもいろんな主要作品でサックスを吹いているキーパーソンだと思いますが、あなたは彼女をどのように評価しているのでしょうか?

GP:もちろん彼女はとても重要な存在だよ。あとはココロコのキャシー(Cassie Kinoshi )もそうだし、このシーンには多くの強い女性がいるんだ。それもこのシーンがすごく面白い理由のひとつだと思う。キャシーもシャーリーもシーラ(Sheila Maurice-Grey)も、みんな男連中と同じようにパワフルなんだ。演奏にしてもアイデアにしても独自のものを持っている。
ヌビアはスターになるだろうね。たぶんみんな彼女と契約したがってると思う(笑)。彼女はぼくにとってはもうビッグすぎるけど、すごく嬉しいよ。去年ぼくが観たなかでいちばん良かったライヴが、彼女が〈Jazz Re:freshed〉のアルバムを出すときにThe Jazz Cafeでやったもので、テオン・クロス(Theon Cross)がいて、シーラ・モーリスグレイ(Sheila Maurice-Grey)がトランペットで、フェミ・コレオソ(Femi Koleoso)とモーゼス・ボイドという2人のドラマーがいて、そしてジョー・アーモン・ジョーンズがいて……そのコンサートの場にいて、ぼくは『これは歴史的だ』と思ったのを覚えてるよ。とにかく彼女はこのムーヴメントにとっては非常に重要な大使の1人だね。

アシッド・ジャズの時代はDJカルチャーが主体でしたが、今日のUKジャズのシーンは個性的な演奏者たちが複数いて成り立っています。エレクトロニック・ミュージックが主流の現代において、この逆転現象は面白いと思うのですが、これはジャズ・ウォーリアーズの功績もあるんでしょうけれど、ほかにはどんな理由があると考えられますか?

GP:実は世界のいろんなところで起こっていることじゃないかと思う。職人の技を称えるというか、オーガニック・ワインも、クラフト・ビールも、家具職人も、あるいは芸術家もね。何でもデジタルで簡単にできてしまう時代だからこそ、伝統的な演奏が求められているということはあると思う。ドラムでもギターでも歌でもさ。だから誰でもDJになれるという状態に対するリアクションだよね。
こういう時代に、技術を習得するために努力した本物のアーティストを観ると、その良さが分かるという。人間がここまでできるんだっていうことに、すごいと思えるんだよ。職人の技が見直されているのには、そういう理由があるんじゃないかと思う。それに加えてジャズはすごくオープンな精神で演奏するもので、ステージ上で相互作用が起こるのを目の当たりにすることができるし、ミュージシャン同士の間でも、ミュージシャンと観客の間でも相互作用が起こるからね。

モーゼス・ボイドのように、シーンのなかにはほかにも複数の個性的で優れたプレイヤーがいますよね。あなたがとくに注目しているひとがいたら教えてください。

GP:ぼくがすごく好きなサラ・タンディ(Sarah Tandy)というピアニストがいるよ。来年あたり出てくると思うから彼女は注目しておいた方がいい。あとは……たくさんいすぎてわからないな。ヴェルス・トリオ(Vels Trio)もすごく好きだよ。それから今だったらスチーム・ダウン(Steam Down)、この人たちがアルバムを作ったら本当に面白いものになると思う。あとフランスでもドイツでも何かが起こりつつあって、ベルギーも色々面白くなってる。DJ Leftoが出した『Jazz Cats』というすごくいいコンピレーションがあって、ベルギー産の曲が20曲くらい入ってるんだ。
それに日本も絶対に期待を裏切らないよね。社長とかToshioもそうだし新世代もそうで、Shuya Okino(沖野修也)といった人たちも、彼らの素晴らしいところは新しい世代をプッシュして応援しているところだよね。だから今のこの動きがどう日本に影響を与えるのか、今後5年くらいがすごく楽しみだし、日本が何かやる時は絶対に面白いからね」

2019年も引き続きこの流れから良い作品がリリースされるものと思います。現在、リリースが決まっているものでいま言えるものを教えて下さい。

GP:ココロコのアルバムが年明けに出る。それは個人的にも楽しみだね。ええと他には……みんな作ってるんだよなあ。〈Brownswood〉からは、ザラ・マクファーレン(Zara Mcfarlane)の新作が出て、あとピート・ビアーズワース(Pete Beardsworth)というピアニストがいて、個人的にものすごく好きなんだ。ヤスミン・レイシー(Yazmin Lacey)も素晴らしいから要注目だよ。ぼくは彼女がいちばん好きなシンガーかもしれない。

(了)

interview with Kelly Moran - ele-king

 9月12日。それは渋谷O-EASTでOPNの来日公演が催される日だった。初めてバンドという形態で自らの音楽を世に問うたダニエル・ロパティン、ニューヨークロンドンに続くかたちで実現された東京版《MYRIAD》のショウにおいてもっとも異彩を放っていたのは、キイボード担当のケリー・モーランだった。クラシカルの文法を身につけた彼女が紡ぎ出す即興的な旋律の数々は、間違いなくロパティン個人からは出てこない類のそれであり、随所に差し挟まれる彼女の好演によって『Age Of』収録曲はもちろん、過去のOPNの楽曲もまたべつのものへと生まれ変わっていたのである。『Age Of』と《MYRIAD》との最大の相違点、それは彼女の存在の有無だろう。
 そのケリー・モーランがソロ名義の新作を〈Warp〉からリリースする。両者を仲介したのはロパティンだが、彼と出会う前の彼女はモダン・クラシカルな習作を手ずから発表するいっぽう、マーク・エドワーズやウィーゼル・ウォルターといったアヴァンギャルド勢(別エレのニューヨーク特集参照)のバンドに参加したり、ケイジの長年のコラボレイターだったマーガレット・レン・タンのために曲を書いたりと、なかなか興味深い経歴の持ち主である。そんな彼女は今回、ロパティンの手を借りることによって音楽家として新たな段階へ歩を進めたと言っていい。ミニマルに反復するプリペアド・ピアノとエレクトロニックな持続音が交錯する『Ultraviolet』は、恍惚と静謐を同時に成立させたじつに素晴らしい作品に仕上がっている。
 これまでの彼女の来歴や新作の制作秘話について、《MYRIAD》のために来日していた本人に語ってもらった。

私はたぶん音楽のADDだと思う(笑)。

これまで日本へ来たことは?

ケリー・モーラン(Kelly Moran、以下KM):今回が初めてね。

猫カフェへ行ったとお聞きしたのですが。

KM:初日に行った。ネコ派だから絶対に行かなきゃと思って。すごく楽しかった。ハリネズミカフェもあるって聞いたから、そっちも行かなきゃと思ってる(笑)。

通訳:出身はニューヨークですか?

KM:ええ。ニューヨーク生まれ。

NYにも猫カフェはあるんですか?

KM:何年か前に一店オープンしたから、行ったことはある。でも日本の猫カフェほど規模は大きくない。猫を飼っているんだけど、来日してから猫に会いたくて。だから、猫カフェに行って猫に会えて嬉しかった。

ほかにおもしろかったところはあります?

KM:大学のときのピアノの教授が、赤城ケイっていう日本のジャズ・ピアノ・プレイヤーで、私は数日前に日本に来たんだけど、彼もツアーで日本をまわっていて、たまたま東京にいたから会った。新宿を案内してもらったり、昨日は原宿をうろうろしてかわいいものを買ったり。

ミシガン大学で音楽を学んだそうですけれど、そこの先生ですか?

KM:いや、カリフォルニア大学のアーバイン校の、大学院の先生。

ミシガン大学のほうではピアノやサウンド・エンジニアリング、作曲技法を学んだとのことですが、つまりいわゆるクラシック音楽を学んだということですよね?

KM:私が専攻していたのはパフォーミング・アート・テクノロジー。そのなかでもいろいろ項目があるんだけど、そのひとつとして「クラシックのパフォーマンス」という項目を集中して受けていたの。あとは作曲とか、エレクトロニクスのクラスもとっていたし、サウンド・エンジニアリングも選べる科目としてあった。

そういうところへ進学したということは、幼い頃から音楽が好きだったのでしょうか?

KM:6歳のときにテレビでピアノを見て、これが欲しい、これがやりたい、って親に言ったら、小さなキイボードを渡されたの。「本気ならピアノを買ってあげる」って。それで一生懸命やっているのをみて、あとでピアノを買ってくれたわ。

現在はほかにもいろんな楽器を弾きこなしていますよね。

KM:私はたぶん音楽のADD(注意欠陥障害)だと思うの(笑)。最初はそういうふうにピアノをはじめたんだけど、それから次々と楽器に手をつけてしまって。小学校のとき、アップライト・ベースを弾ける人が必要になって、背が高いということもあって私が弾くことになった。あと、兄がクラリネットをやっていたから、それもやってみて、その流れでオオボエもやったわ。それから、私がちょうどロックに興味を持っていたときに、エレクトリック・ベースが必要だと言われて、それでベースをやって、そのまま今度はギターにも流れていった。アコーディオンもやったんだけど、アコーディオンだけはあんまりうまくなかった(笑)。

『Microcosms』(2010年)、『Movement』(2011年)、『One On One』(2012年)の最初の3作は、大学で学んでいたことがそのまま反映されているのかなと思いました。モダン・クラシカルとアンビエントの融合のような。

KM:大学時代はまわりにミュージシャンが大勢いたというのがあるね。みんなすごくオープンで、喜んでコラボレイションをやってくれる人たちだったから、私がアイディアをいっぱい持っているのをおもしろがって、寄ってきてくれて。私もそのへんにいる友だちを捕まえては、一緒にインプロやろうとかレコーディングしようとか誘っていたの。そうやって作った作品だったから、まわりの影響とかリソースがいっぱいあった。だから、たんなるクラシック音楽には終わっていない。

その後ウィーゼル・ウォルターのセルラー・ケイオスというパンク~ノーウェイヴのバンドでベースを担当していますよね。一気に音楽性が変わったなと。

KM:そもそも好きな音楽の種類が幅広くて、いろんなスタイルの音楽をやりたかったから、楽器もあれほど手を出してしまったんだと思う。とにかく楽しんで、いろいろなことを実験的にやってきたから、自分のなかではそんなに急に変わったとは思わなかったけど。

では、とくにノーウェイヴをよく聴いていたということではない?

KM:じつをいうと、ノーウェイヴは私がいちばんなじみのないジャンルの音楽かもしれない。大学院のときはカリフォルニアにいて、卒業後にニューヨークへ戻ってきたんだけど、仕事はないし、人生どうしたらいいのか、どんな音楽を追求したらいいのかわからなくて。大学時代はまわりに仲間がいっぱいいて、リソースがたくさんあったからよかったけど、それがない状態になってしまって。さあどうしようっていうときに、セシル・テイラーのところでやっていたマーク・エドワーズとウィーゼル・ウォルターのライヴを観たの。それがすごく楽しくて。いわゆるノーウェイヴ的なものはたぶんそのとき初めて観たに等しかったんだけど、こういうのがあるんだ、楽しそうだなと思っていたら、たまたまそのバンドのベーシストがニューヨークを離れることになって、後任を探していて。それで私が入ることになった。それがそのジャンルに入りこんだ流れね。

でもそのバンドには1年くらいしかいなかったんですよね?

KM:1年ちょっといたんだけど、とにかくツアーの多いバンドだった。私はニューヨークでべつの音楽の仕事もしていたから、それについていけないということもあって、いったん辞めたんだけど、そのあとに入ったベーシストが辞めるタイミングで、ニューヨークのショウだけ何本か手伝ったりしていたから、その後も関わりはあったのよね。いまはたぶん、トリオでやっているんじゃないかな。

その後はヴォイス・コイルズというバンドにシンセサイザーで参加しています。セルラー・ケイオスと比べるとこちらは、それ以前にやっていたことに近いのかなと思ったのですが――

KM:ヴォイス・コイルズではじつは、クリエイティヴなことは何もやっていなかったの。ギタリスト(サム・ギャレット)がぜんぶ曲を書いていたから。私はいわゆるセッション・ミュージシャンというかたちで参加していたんだけど、それだけだったというのが辞めた理由のひとつでもある。あまり創作性を発揮できなかったから。

2016年には『Optimist』を出して、大きな変化を迎えますね。プリペアド・ピアノを使いはじめて、電子音も以前より目立つようになりました。何かきっかけがあったのですか?

KM:もう1枚、『Bloodroot』(2017年)ってアルバムがあるでしょ。じつはそっちが先だったの。2016年の頭にそっちの曲が書きあがって、レコードにまで仕上げた。吹雪が続いた時期があって、そのときに仕上げたアルバムで。それまではプリペアド・ピアノで曲を作るなんてことはあんまりやりたくなかったというか、ちょっと引いている部分があったの。っていうのも、ジョン・ケイジが大好きで、すごく尊敬しているから。プリペアド・ピアノをやるとすぐ比べられてしまう。だから、勉強はしてきたんだけど、作品として作るのはちょっとなっていう思いがあって、手は出さないでいたのね。でも、吹雪で閉じ込められた状態のなかで曲作りをはじめたら、どんどんアイディアが湧いてきて、いつもと違うハーモニーも聞こえてきたりして。それで良い作品ができたので、せっかくだからちゃんとレーベルから出したいなと思ってレーベル探しをはじめたの。でもなかなかみつからなくて、だんだんイライラしはじめてきちゃって。すごく生産的な時期でもあったから、もうひとつアルバムができてしまった。それが『Optimist』(笑)。

おまけだったんですね(笑)。

KM:そっちがあとからできたんだけど、結果的には同じ年に2枚のアルバムを出すことになった。いろいろバンドをやっていた時期が長くて、ソロで音楽を発表するのは久しぶりだったし、自分だけの作品を作るというのをしばらくやっていなかったから、それをできるだけ活発に作りたいという思いが強くて、せっぱ詰まるものがあった。たからあの時期にたくさんアイディアが出てきたんだと思う。ただ、じっさいにレーベルを探そうとしたらすごく時間がかかるんだってこともわかった。なんとか2016年のうちに自分の作品を世に出したいという思いで一生懸命頑張って、まずは『Optimist』を仕上げたの。それで、自分で出せるということで、Bandcampで発表したという。

『Drukqs』は、ほんとうに、聴いたことがなかったの。神に誓って言うけど、今日に至るまであのアルバムを全曲聴いたことはなかった。

プリペアド・ピアノは今回の新作『Ultraviolet』でも用いられていますが、ケイジと比べられるのが嫌だという思いを克服したということですか?

KM:たしかにそれはあるかも。乗り越えたのかもしれない。プリペアド・ピアノをじっさいに使って、曲を書いて、出してみたらとても反応がよかったというのもあるし、自分自身もあのピアノが鳴らす音からすごくインスピレイションを受ける。ハーモニーの聞こえ方も違うし、オーヴァートーンとか、とにかくサウンドが独特だし、いじっていてすごく楽しい。そういうなかでいろんなアイディアがどんどん出てきたから、あれこれ悩んでいないでとにかくみんなに聴いてもらいたいという気持ちのほうが強くなったの。ちなみに、プリペアド・ピアノで曲を書いてアルバムを出しても、プリペアド・ピアノが使える会場ってけっこう限られてくるから、それもあって引いていた部分もあるんだけどね。

たぶんこれはもういろんな方から指摘されていると思うのですが、エイフェックス・トゥインの『Drukqs』というアルバムを聴いたことはありますか?

KM:これはほんとうにおかしくて、信じてもらえないかもしれないけど(笑)、いちおう話しておくね。エイフェックスは好きなんだけど、『Bloodroot』の時点では『Drukqs』は、ほんとうに、聴いたことがなかったの。そのあとそういう声がちらほら聞こえてきたから、気になって何曲か聴いてみて、なるほどなあとは思った。(プリペアド・ピアノが使われること自体が)珍しいから、同じものを使っているというだけで結びつけられちゃうのもわかるな、というくらいの認識だった。ただ、今回私が〈Warp〉からシングルを出したことで、まわりからいきなり「あのアルバムの影響が絶大ですね」とか言われちゃって(笑)。「違うんだけどなあ」って。神に誓って言うけど、今日に至るまであのアルバムを全曲聴いたことはなかったのよ。あまりにみんなからそう言われちゃうので、関係者にも「このアルバムはいままでちゃんと聴いたことがないってことをちゃんと説明してください」っていろいろ言って。それで、今日初めて全曲聴いたの。

今日!?

KM:まさに今日(笑)。でも、聴いてみたら、たしかにプリペアド・ピアノは使われているけど、それだけじゃない、スタイルも多様なアルバムだなと思った。

おっしゃるとおりです(笑)。

KM:私の曲が出たとたんに、YouTubeとかでもコメントがそればっかりで(笑)。「『Drukqs』の影響が」とか「『Drukqs』好きでしょ」って(笑)。

そのコメント、見ましたよ(笑)。

KM:わかってもらえると思うけど、ピアノの音楽にはあまり影響されたくないから、避けているという部分もあって。それで『Drukqs』も聴かずにきたんだけどね。

紫外線って、目に見えないけれど力のあるもので、それは私がこのアルバムの制作中に味わった経験につながる。

OPNの公演《MYRIAD》で彼のバンドに参加することになりましたけれど、それはどういう経緯で? たしか『Age Of』には参加していませんよね?

KM:そうね。彼が私の音楽を聴いてくれていて、Twitterでやりとりをしたのが最初。そのときはそれだけで終わっちゃって、2年くらいとくにやりとりはなかったんだけど、去年の11月くらいに、「そういえば彼のインスタはフォロウしてなかったな」とふっと思い出してフォロウしたら、速攻でフォロウが返ってきたの。その数日後に、会って話をしないかってメッセージがきて。それで、じつはいまこういうプロジェクトが進行中で、きみはたぶんぴったりだと思うんだ、っていう電話がきたの。そのとき私はOPNの『Garden Of Delete』のTシャツを着ていて(笑)。もともと彼の大ファンだったから、速攻でイエスと答えたわ。

先ほどまでずっとリハを観ていたんですが、ちょっと特殊なバンドのライヴですよね。あなたがこれまで体験してきたバンドとの違いはどういうところにあると思いますか?

KM:こんなの初めて! こういうのに参加したことはなかった。私がおもしろいと思うのは、お客さんの反応がいかに違うかということ。返ってくるエネルギーによって私たちの演奏も変わっていくから。ニューヨークでやったときはまだアルバム(『Age Of』)が出る前だったから、みんながその場で初めて曲を聴くことになる。それに着席の会場だったということもあって、初体験というか、オーディエンスがちょっとビビッているような感じだった。みんな「どうしよう、拍手してもいいのかな」という感じで聴いていた。逆にロンドンのときはアルバムが出て1ヶ月以上経っていたから、曲にもなじみがあって、みんな叫んだり踊ったり。“Chrome Country”のときなんかは最前列の男の人が大騒ぎして盛り上がっていて。そんな感じでどんどん反応が変わっていくのが私はおもしろかった。

今回〈Warp〉と契約してアルバムを出すことになりました。それはどういう経緯だったのでしょう?

KM:これはあまり言ってないんだけど、じつは今回、ダン(・ロパティン)が共同プロデュースというかたちでいくつか曲を手がけてくれているの。さっきの話で、彼から「こんなショウを企画しているんだけど」って言われたときに、「私もアルバムを作っていて」っていう話をしていたのよ。そしたら「聴かせてくれ」ってすぐに興味を示してくれて、「誰がプロデュースするの?」「どこから出すの?」って言われたから、「まだ何も決まってないんだけど」って。いままで私は自分の作品は自分で作って自分で発表してきたけれど、今回はもうちょっと野心的な作品だから、誰かのヘルプが必要だと思った。導いてくれるような人の存在が必要だって思っていたから、彼に力になってもらえないか聞いてみたの。そしたらその場で「ぜひぼくがやる」って言ってくれて。「きみがぼくのショウを手伝ってくれるんだから、ぼくはきみのレコードを手伝うよ」ということでやってくれた。レーベル探しも、できあがった音源を彼があちこちに配ってくれて。数週間経って「いくつか興味をもっているレーベルがあるんだけど、あそことここと〈Warp〉と」ってメッセージがきて、〈Warp〉って聞いたとたんにもう「ここだ!」って思った。〈Warp〉は私にとっても最高のレーベルだし。それで「会って話をしましょう」ということになって、スタッフの人たちとランチを食べながら話を聞いたら、とても気に入ってくれているということだったので、私としてはもう願ったり叶ったりで。夢が叶ったというか。それが2月ころの話ね。

急展開だったんですね。

KM:何が嬉しかったかって、2016年に『Bloodroot』でレーベル探しをしたときは、さっきも話したようにぜんぜん話がまとまらなかったのね。なんどもなんども拒絶されては蹴られて。その理由が「変すぎるから」とか「うちのレーベルの美意識に合わない」とか。とにかく、そのレーベルのスタイルに合わない、というのが大半の理由だった。それですごくがっかりしちゃって。「こんな私は誰も受け入れてくれないんだ」って思っていたところで〈Warp〉が興味を示してくれて、「ユニークだから」「誰とも違うから」「特別だから」って言ってくれた。ほかのレーベルがさんざん拒絶してきた、まさにその理由で〈Warp〉が私を気に入ってくれた。しかもあの有名な〈Warp〉が、ってことで、私としてはもう最高。

ちなみに〈Warp〉で好きなアーティストは誰ですか?

KM:ダンはべつとして(笑)、大勢いるから難しいな……。(しばし考え込んだのち)ボーズ・オブ・カナダ、エイフェックス・トゥイン、スクエアプッシャー。スクエアプッシャーが大好きなの。でもやっぱり選ぶのが難しい。その三つどもえかな。

今回の制作はとくに野心的だったとおっしゃっていましたけれど、これまでの作品と比べて、いちばん力を入れた点はどこですか?

KM:『Bloodroot』を作ったときは、それまでエンジニアの勉強もしてきていたし、プロじゃないけどそれなりに納得のいくミックスができたの。基本的にピアノの音だけだったら、自分でじゅうぶんできる、そこまでの力はあった。だから、半端なかたちで外の人に入ってほしくないという思いもあった。それに、女性アーティストが外部から男性のプロデューサーを連れてきて作品を作った場合って、手柄を持っていかれちゃうのが気になっていたのよね。でも今回のアルバムはエレクトロニクスを入れていて、そういうシンセサイザーやエレクトロニックな要素が増えれば増えるほど、その作業は難しくなっていく。曲はもちろん自分で書くし、音作りもどんどんするんだけど、それをオーガナイズするのは誰かに手伝ってもらわないと無理だと思ったの。そんなわけで、今回初めて外部からのインプットを受け入れて自分の作品を作ったんだけど、ダンとの仕事の関係性がすごくおもしろくて。彼はポイントを絞って、私の曲の余計なところをどんどんカットしていくアプローチなのね。対して私が彼の作品に口を出すときは「ここをもっと長くしろ」とか「もっと広げろ」って感じで、どんどん大きくしていく。『Age Of』のときもそんなふうにやりとりをしていて。だから、「セクション10くらいまでいっちゃいましょう」っていう私の作品を、彼はどんどん短くしていって、でもそのおかげうまくいったという感じかな。

タイトルは『Ultraviolet』ですが、これには何かテーマがあるのでしょうか?

KM:制作中にいろんなことがあって、それを詳しく説明するのはちょっと難しいんだけど、でもとにかくいろいろなことが変わった。ピアノの奏法が変わっていったり、けっこうインプロヴィゼイションぎみの演奏をやってもいるし、それをやっていく過程でトランス感覚を味わったりもした。幻覚が見えるような感じがあったり、幽体離脱のような感覚もあったり。紫外線って、目に見えないけれど力のあるもので、それは私がこのアルバムの制作中に味わった経験につながるかなって思ったの。

〈Warp〉のレーベル・カラーがパープルで、ヴァイオレットはそれに近い色なわけですけれど、〈Warp〉から出す最初のアルバムでその「外(ウルトラ)」を暗示するのはおもしろいなと。

KM:タイトルは〈Warp〉との話が出るまえに決めてあったの。でも運命かも。

Yoshino Yoshikawa × ONJUICY - ele-king

 これはおもしろい。〈Maltine Records〉からのリリースもあるプロデューサーの Yoshino Yoshikawa と、グライム~ベース・ミュージックを軸にしつつジャンルレスに活躍の場を広げているMCの ONJUICY が11月7日にコラボレーション・シングルをドロップ。ゲーム音楽由来の電子音とグライムをポップにかけあわせた“RPG”は繰り返し聴きたくなる1曲です。要チェック。

RPG - Yoshino Yoshikawa with ONJUICY
〈Maltine Records〉や〈ZOOM LENS〉でのリリースや、FPM、東京女子流、南波志帆を始めとするアーティストへのRemixを提供する等、Ultrapopを提唱し根強いファンを持つプロデューサー「Yoshino Yoshikawa」と、気鋭UKベース・ミュージック・レーベル〈Butterz〉からのリリースや、最近ではアジアからイギリスをめぐるツアーを成功に収め、mixmagやHypebeastに取り上げられる等、多方面に活躍するMC 「ONJUICY」とのコラボレーション・シングル「RPG - Yoshino Yoshikawa with ONJUICY」が2018/11/7にリリース! 本楽曲はYoshino Yoshikawaが得意とするゲーム・ミュージックからも多く影響を受けたエレクトロニックな質感のサウンドと、Grimeの基礎であるBPM 140をベースにポップにアレンジされた表題曲“RPG”と、爽やかなシンセが印象的且つグルービーな仕上がりとなっている“Green Hill”の2曲が収録されている。また、ジャケットには、 ロンドンを拠点とし、エルメスやコンバース、ビームズ等でも作品を提供しているアートレーター 「Charlotte Mei」が担当している。

RPG - Yoshino Yoshikawa with ONJUICY
1. RPG
2. Green Hill
2018年11月7日 17:00 (日本標準時) 配信開始

価格 : 3 USD
Bandcamp : https://yosshibox.bandcamp.com/album/rpg-ep
Apple Music : https://itunes.apple.com/jp/artist/383575881
Spotify : https://open.spotify.com/artist/21T30ALYp9IYZlvhnGLeos?si=vpWj0kAyR_qIU5kmrZYJQg

Yoshino Yoshikaw
東京在住のプロデューサー。Ultrapopを提唱し、ダンス・ミュージックからポピュラー・ミュージック、アニメやゲーム・ミュージックまで幅広い領域をカバーした楽曲を、ソフトウエアと共にシンセ、ガジェットを駆使しフラットな電子音楽的質感に落とし込む作風は国内外に根強いファンを持ち、これまで東京の〈Maltine Records〉やLAを拠点とする〈ZOOM LENS〉といったレーベルから複数のEP、LPをデジタル・リリース。これまでに、FPM、東京女子流、南波志帆などのアーティストにRemixを提供する一方で、音楽ゲーム「maimai」シリーズや、アニメ『きんいろモザイク』のキャラクターソング提供なども行った。2017年には初となる海外ライブを韓国Cakeshopで行い、盛況のうちに終了。英字新聞The Japan Timesや、OWSLA主催のメディア「NEST HQ」にも記事掲載あり。来年には初となるフィジカル・リリースも計画中。ライブ出演多数。

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ONJUICY
Grime・Bass・Hip Hopを中心としつつも、ジャンルレスに活動するMC。たまたま遊びに行っていたGrimeのパーティをきっかけに、2015年からMCとしてのキャリアをスタート。最近では、〈TREKKIE TRAX〉からCarpainterに続き、Maruとの楽曲に加え、UKを拠点とする気鋭ベース・ミュージック・レーベル〈Butterz〉からRoyal - Tとのコラボレーション楽曲を発表。上海/香港/ロンドンを拠点とするパーティ・コレクティブYETIOUTからリリースされた「Silk Road Sounds」に参加し、Hypebeastやmixmagに取り上げられる等、世界からも注目を集める。また、新木場ageHaにて開催されている「AGEHARD」でのアリーナMCや、ULTRAを始めとするフェスへの出演、イベント/ラジオ番組でのMC、イベントのレジデント等、その活動は多方面に渡る。Grime MCとしては、BOILER ROOMによる「Skepta Album Launch」や「JP Grime All-Stars」、「Full Circle: Grime In Japan」への出演から名が知られる様になり、英国雑誌mixmagへ、インタビューの掲載もされた。2018年にはロンドン、バンコク、中国へのツアーを実施。国内外多数のアーティストとのコラボレーション楽曲やアルバム・リリースも控えている。持ち前のフットワークを活かした、らしさ溢れるMCはジャンルを問わず様々なビートを乗りこなし、フロアを最高の空間へと導いてくれる。

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interview with Anchorsong - ele-king

 これは穏やかで、休息としての音楽である。アンカーソングこと吉田雅昭はあきらかに成熟度を増している。ハウスの心地良いテンポとインドの多彩なパーカッションとのコンビネーション。温かく、平和的な音楽だ。井上薫とも少し似ているかもしれないが、アンカーソングはとことんミニマルで、物語性なるものは封じ込めている。まったく気持ち良い響きではあるのだが、なにか別の夢を与えるわけではない。つまり、これはサイケデリックな体験ではない。日常と地続きの音楽だ。ぜひともお試しあれ。こんどの休日に、彼にとって3枚目のアルバムとなる『コヒージョン』を家で聴いて欲しい。
 この音楽は、インド音楽を調査して制作された。しかしインド音楽ではない。お香の匂いもしなければ、シタールが鳴っているわけでもない。小刻みなリズムと最小限のメロディによるレイドバック・ミュージックなのである。
 ele-kingではこれまで吉田雅昭に二度の取材記事を掲載しているので、彼の詳しいプロフィールはここでは繰り返さないが、簡単には記しておこう。大学を出て彼は、ほとんどリスクを考えず、音楽文化がより豊であろうという解釈のもとロンドンに移住した。ヒッピーでも学生でも企業人でもない、とくに金持ちでもない日本人がこれをやることは、イギリス国籍の人間と結婚でもしないかぎり、いろんな意味で長くは続けられないし、そもそもロンドンに住んでいることで作品性が向上するともかぎらない。吉田雅昭はしかしそこにこだわっている。もしなんの情報も知らず彼の新作を聴いたら、これを日本人の作品であるとは思わないだろう。だからといってイギリスっぽいとも思わない。本人はまったく意識していないだろうけれど、井上薫しかり、Groundしかり、ぼくにはシカゴを離れたハウス・ミュージックにおけるノマド的展開がここからも聴こえる。
 以下、スカイプによる取材の記録だ。彼の喋り言葉は、ここに起こされた言葉そのままである。相も変わらず真面目で、丁寧な受け答えだった。

ぼくが実際に行くようなパーティも、緩い音楽がたくさんかかるようなパーティが多いんですよ。そのなかには、ぼくが好きな(インドの)ボリウッド映画の音楽をかける人も少なくないし。

すごく久しぶりですね。

Anchorsong(以下、吉田):そうですね。最後にお会いしたのが、新宿で以来。

一緒に飲んだよねー。たぶん取材をしたのはちょうど『Chapters』が出たときで、2011年なんですよ。新宿で飲んだときは吉田君が、実はぼくはこれからこういう方向性を考えているというデモを聴かせてくれたときで、それがまさに前作の『Ceremonial(セレモニアル)』に結実するわけですね。

吉田:はい。

いまもこうやってリリースをしているということはロンドンで相変わらず暮らしつつ音楽活動を継続されているということですよね。

吉田:そうですね。ただ、ぼくが最後に野田さんに新宿でお会いしたときは、イギリスを離れて日本に長期で帰国していたときだったんですよ。

あ、そうだっけ?

吉田:自分の本意ではなく、帰国せざるえなくなってしまい、けっきょく日本に帰った間に作品を作りはじめて、それが『Ceremonial』だったんです。それから3年前くらいにイギリスに戻ってきたんですよ。だからこの街(ロンドン)に、自分なりにこだわってはいるんですよね。必ずしもぼくの音楽はイギリスとかロンドンのシーンを反映しているわけではないんですけど。

反映しているんじゃないですか?

吉田:たとえばいまだと、ロンドンはアンダーグラウンドのジャズとかが盛り上がっていますけど、そういうものをすごく必死に追いかけたりしているわけではないです。ただやっぱりぼくがUKでおもしろいと思っているのはオーディエンスがオープンマインドなところなんですよね。どんなイベントに行ってもいろいろな音楽がかかっているし、それをオーディエンスも受け入れるだけの器量があるというか。そういうムードがいろいろな音楽を聴いてみたいという方向に動かしてくれるし、音楽を作るうえで、この街に住んでいるというだけでいろいろインプットがあるんですよね。

自分の意志とは反して日本に住まざるをえなくなった2年間というのは、吉田君にとってどういう意味があったのでしょうか?

吉田:いまになって思えばすごく良い機会だったなと思います。(ファースト・アルバムの)『Chapters』を出してちょうど1年くらいが経ったときだったんですけど、自分なりに今後どういう方向に進むのかということを考えなきゃいけなかったと思うんですよね。後ろ髪を引かれながらロンドンを離れることになったわけですけど、日本にいても世界に向けて発信できるような音楽を作りたいという思いは変わりませんでした。ロンドンという場所から離れたことでより自分のことを客観的に見る余裕ができたというか。あのときはいまよりも若かったということもあって、トレンドなどを自分なりに意識してはいたと思うんですよね。でも日本に戻ったことで、ロンドンを中心としたトレンドから距離を置くことになりました。『Ceremonial』は70年代とかのアフリカの音楽を反映した作品だったんですけど、実際トレンドとはあんまり関係のない、どちらかというと過去の音楽からインスパイアされた音楽になりました。そういう方向に進もうかなと思ったのはロンドンを離れたことが大きかったと思いますね。

クラブ・ミュージックやジャズに関して言えば、この10年間のイギリスの重要なファクターとして、アフロというのはデカいでしょう。UKにいたからこそアフロなのかと思っていたんですけど。

吉田:うーんどうなんでしょうね。まったくないとは言い切れないと思うんですけど。というのもちょうどぼくが作品を出した頃って、クラップ!クラップ!とか、いわゆるアフロ・フューチャリズムを追求している人たちがけっこう多かったので。でもぼく自身はそういうコンテンポラリーな人たちに触発されたというよりは、当時は〈Soundway〉や〈Analog Africa〉といったレーベルがさかんにリイシューを出していたときで、リイシューもののクオリティも高かった時期だったと思います。どちらかというとそういうものに傾倒していたんです。

〈Soundway〉のような発掘文化を身近に感じるのはイギリスにいるからこそじゃないですか?

吉田:それはそのとおりですね。ロンドンにいなかったら目を向ける機会があったかどうかはけっこうあやしいですね。

たとえば、サンプラーを使ってライヴ・パフォーマンスを売りにしていた『Chapters』までが第1期アンカーソングとすると、アフロをコンセプトにしたセカンド・アルバム『Ceremonial』からアンカーソングはあたらしい道に進んだという風に思って良いですか?

吉田:そうですね。音楽のスタイルという点では方向転換と解釈できると思いますが、マインドセット自体は実はあんまり変わっていないんですよね。たとえば、いまもライヴのやり方を変えていないんですよ。いまでもMPCとキーボードだけでライヴをやるというスタイルは変えていなくて、それをある意味自分のなかの芯の部分にしようかなと思っているんです。制作はもちろんコンピュータを使ってやっているんですけど、MPCとキーボードでやるという時点でかなり制限があるので完全に再現はできないまでも、ある程度アレンジすることでこのスタイルでライヴができるようになる、それが自分が保持するべき指標みたいに考えています。なので、もちろんぼくがアフリカの音楽を聴くことで、音楽的なスタイルというか方向性を広げたり、変えたりはしてはいくんですけど、根本にあるものは変わっていない。一聴した感じだとタッチは変わっているんですけど、たとえば曲の構成の仕方とか、展開の仕方とかそういうものは『Chapters』の頃から一番新しいものも含めて、そんなにがらりとは変わっていないですね。

そうだね。アンカーソングの特徴というか個性は、叙情性だと思っていて。今回の新作の8曲目、9曲目みたいな雄大さというか。何か叙情性というものがすごく滲み出てしまっている。今回インドのパーカッション、リズムを取り入れたという作品もやはり『Ceremonial』との連続性をぼくは感じます。

吉田:そう言ってもらえるとすごく嬉しいですね。

わりとアフロとかグローバル・ビートみたいなものを取り入れるときって、思いっきりそっち側の、アフリカだったらいかにもアフロというわかりやすい方向に行ってしまいがちなんだけど、アンカーソングの場合はそっち側にいかない。今回の作品もそうで、インドといったときに旋律がインド音階になりがちなんだけど、しかし我々がよく抱くようなインドではないんですよね。

吉田:それは実際にすごく意識したところです。

そこがおもしろいし、アンカーソングの音楽になっていると思う。

吉田:ありがとうございます。

前作の『Ceremonial』で自分がやったアプローチに手応えを感じて、今回もまた同じアプローチとして、アフロではなくインドのリズムを取り入れたと解釈しても大丈夫ですか?

吉田:少なくともガラッと方向性を変えようとは考えたことはまずなくて、前作を作ったうえで新たに生まれたぼくの音楽的関心を、単純に掘り下げた結果生まれてきたというニュアンスなんです。前のアルバムを作ったときにアフリカ音楽をたくさん聴き、パーカッションに対する興味がより深まりました。それからいろいろな国の、ぼくがまだあまりなじみのないようなパーカッションをいろいろ調べはじめたんですよ。パーカッションについて調べるとタブラとかドーラクとかそういうインドの打楽器など、必ずインドの音楽にいきあたるので。野田さんがおっしゃったようにインドの音楽と言ったらシタールの響きとか、インドの音階とかそういうものにまず気が行くと思うんですけど、ぼくはもともと身体を揺らせるような音楽が好きということもあって、パーカッションの響きに反応するんですよ。

それは徹しているんだね。

吉田:そうですね。インドの音楽に対してそういう方向から入って行って、けっきょくおもしろいと感じた部分を自分なりに発展させていった結果できたアルバムということなのかなと思います。

ちなみにいまでもクラブに遊びに行ったりするの?

吉田:そうですね、オールナイトのパーティに行くことは減りましたけど。小箱に行くことが多いんですが、とくにライヴアクトとかもでないDJが3、4人集まって好きな音楽をずっとかけているようなパーティに行くことはよくあります。

そういう場所からはインスピレーションを得ますか?

吉田:どうでしょう。ぼくが実際に行くようなパーティもひと晩中ハウスやテクノをかけているようなものではなくて、わりと早い時間からはじまるパーティだったりすることもあってか、緩い音楽がたくさんかかるようなパーティが多いんですよ。そのなかには、ぼくが好きな(インドの)ボリウッド映画の音楽をかける人も少なくないし。そういうところからおもしろい音楽を聴いて、Shazamで調べたりします。そういうところに足を運んでいるということ自体は、直接的にではなくても糧になっているとは思います。

好きなDJはいるんですか?

吉田:好きなDJ。うーん……。実際にその人のイベントにしょっちゅういっているわけではないんですけど、ソリスチャン(Thristian)は好きですね。ボイラールームをはじめた人なんですけど。もうレギュラーではやっていないみたいなんですけど、彼がNTSでやってた番組はよくチェックしていました。あとはフローティング・ポインツのNTSはいつも聴いています。あの人のセンスは随一だと思いますね。あとこの前、フォーテットのイべントにも行きました。

なんだかんだ言いながら行っているんだね。

吉田:いまでもエレクトロニックなものに限らず、現場に遊びに行くのが好きです。

いぜん吉田君は簡潔にダンス・ミュージックというものはアガりたい、気持ちがアガるものを求めているんだというふうに言っていたんですけど、自分の制作においてアガることというのはいまでもいちばん重視しているんですか?

吉田:自分が作っている音楽は決してフロア向きではないということは自覚しているんです。

しかしハウスのテンポじゃないですか。

吉田:今作でいうとキックがガツガツ入っている曲はわりと少ないんですよ。ベースが無い曲も多いし。そういう意味でクラブのダンスフロアでかかるようなものを必ずしも意識しているというわけではないんですよ。ただ、ぼくが好きなダンス・ミュージックは必ずしもそういうダンス・ミュージックではなくて、ゆったり身体を揺らせるような音楽がいちばん好きなんですよね。それは必ずしもガッツリお客さんをアゲようというものではなくても全然かまわなくて。家でも楽しめるし、自然と頭がうなずくようなものが自然にうまれるような。そういうものが好きなのはたしかです。ハウスっぽいテンポが多いというのも、歩くペースに近かったりするじゃないですか。

ある意味ではいちばん気持ち良いテンポだもんね。

吉田:そうですね。それはきっとそこから自然に反応して、そういうテンポになっているんだと思いますね。

アンカーソングの音楽は家でも聴けるし、フロアでも聴けるというところがすごく良いと思います。前作はアフリカだったのに対して、今作はインドのリズム。それ以外の部分で今回の新作に込めた新しいコンセプト、新規軸はありますか?

吉田:最初からものすごく意識して取り込んだわけではないんですけど、エレクトロニックな要素、具体的に言うと音なんですけど、そういうものを意図的により減らしたかなと思います。前のアルバムだと、たとえば1曲目にかなりエレクトロニックな曲が入っていたんですけど、今回の作品ではそれこそシンセのサウンドとかそういうものはできるだけ排除しています。ギターとかベースとか、ぼくが昔から馴染みのある楽器を重心に構成をしているんです。

ギターは自分で弾いているの?

吉田:そうです。今回楽器は全部自分で弾いています。エレクトロニックから離れようとしたとかそういうわけではないんですけど。ぼくが自分で音楽を作るときは、単体の各パートをひとつずつ作っていくんですけど、アンサンブルを組む上でいろいろな音を重ねていったときに生楽器がいちばん複雑で、リッチなハーモニーを生みだすと思うんですよね。もちろん大胆なエレクトロニクスをドンと入れてそれにフォーカスするのも良いんですけど、やっぱりギターとかベースとか一般的な楽器ってアンサンブルのなかですごく溶け込むので。インパクトのある音色ひとつをポンと出すよりも、いろんな音を重ねてアンサンブルを組み立てるというのがぼくなりのサウンドデザインの美学というか。シンセサイザーのオシレーターとかそういうものを使って音を組むのももちろんサウンドデザインではありますけれど、ぼくはむしろ生楽器の音やフレーズの組み合わせで勝負したい。そういうことがぼくがやりたいことなんですよね。それは今回、前のアルバムよりも意識したことだと思います。

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いろいろなところでおもしろいパーティはやっているけど、誰もが熱中しているようなものがないんです。もしぼくが間接的に影響を受けたものがあるとしたら、そういう状況そのものなのかなと思いますね。何でもできるし、どこにでも行ける状態でもある、フラット、ニュートラルな状態というか。

前のアルバム『Ceremonial』はすごくUKで評価されて、BBCラジオの6MUSICでも年間第5位に選ばれて、それなりに成功した作品だと思います。それで開けてきた活動というのがあると思うんですが、どうでしょうか?

吉田:やっぱり呼ばれるイベントがまず変わりましたね。実際『Chapters』を出したときはイギリスでは1枚目のアルバムだったということもあって、とくに呼ばれるイベントに脈絡がなかったんです。

『Chapters』は、プラッドみたいなエレクトロニカ的なところにも引っかかるし、あるいはボノボみたいなダウンテンポの人とも繋がるし。幅広いんだけど、逆に言うと掴みづらいところもあるよね。

吉田:それが必ずしも悪いことではないのかもしれないですけど、少なくとも呼ばれるイベントを見る限りあんまり脈絡がない。呼ばれて誰かのサポートをやることもあれば、すごくエレクトロニックなものもあればそうでないものもあったりとか。とにかくはたから見て自分の立ち位置があまり決まっていない感じがすごくあったと思います。前の作品を出してからは、よりダンス・ミュージックに特化したイベントに呼ばれることが多くなったということと、ワールド・ミュージックのフェスから呼ばれることも多くなりましたね。そういう意味ではオーディエンスが広がったのかなとは思いますね。

今回の作品もこのセカンドで得た手応えをちゃんと活かしつつ、それをさらにディベロップしようみたいな。

吉田:その考えがなかったということはないと思います。前のアルバムで多少ファンベースは広がったと思うんですけど、とはいえあれがイギリスではまだ2枚目のアルバムだったし、せっかく広がりはじめているので、前の作品で興味をもってくれた人が今回もいいなと思ってくれるような作品にしたいというのはやっぱりあったと思いますね。

イギリスのアンダーグラウンドなクラブ・ミュージックは、すごく他の文化、違う文化を取り入れるのがうまいですよね。たとえば最近で言えば南アフリカのゴムであるとか。

吉田:そうですね、そうだと思います。

そういう環境だからこそ発想できたところもあるんじゃないですか?

吉田:具体的なものというとパッと思い浮かばないですね。以前野田さんの取材のときもこういう話をしたと思うんですけど、イギリス、ロンドンを含めて過去5年くらい誰もが夢中になれるようなジャンルやスタイルみたいなものがあまりない状態が続いていると思うんです。

細分化されていてね。

吉田:それこそ、7、8年前にジェイムス・ブレイクが出てきたころなんかは、誰もがポスト・ダブステップというジャンルに注目していたと思うんですよ。好きじゃない人でさえ気にはなっているというくらい。ただ、ここ5年、6年くらいロンドンを含めてそういうものがない状態がずっと続いているとは思うんですよね。もちろんそれでもいろいろなところでおもしろいパーティはやっているけど、誰もが熱中しているようなものがないんです。もしぼくが間接的に影響を受けたものがあるとしたら、そういう状況そのものなのかなと思いますね。何でもできるし、どこにでも行ける状態でもある、フラット、ニュートラルな状態というか。そういう空気感を無意識のうちに反映している可能性はあるかなと思いますね。

音楽自体は盛り上がっているの?

吉田:ぼくはまだまだロンドンの音楽シーンは全然おもしろいと思っているし、それが急速に衰えているんだというようには、少なくともぼくは感じていないです。

たとえば食品まつりa.k.a foodmanとか、日本の土着性を洗練させたものがインターナショナルに評価されているじゃないですか。昔の三島由紀夫的なわかりやすいエキゾチズムではなくて、新しいセンスが国際舞台で受けていると思うんです。アンカーソングとしては、「日本を使う」と言ったら変だけど、「日本」を出そうという気持ちはないですか? たとえば、イギリスの音楽シーンも細分化されてニーズが多様化している状態がある。そのなかでやっぱり日本ぽいものというか、たとえばPCミュージックみたいなJ-POP的なものを取り入れているものだってイギリスにはあったりする。パフュームが好きな連中とか。そういうふうにある意味では大きな勢力が無い代わりに、いろいろなものがフラットに並べられているなかのひとつとして日本的なものがありますよね。

吉田:ぼく自身日本のシーンをはたから見ている状況になっちゃっているわけですけど、PCミュージックみたいなものを海外の人がおもしろいなと感じる理由がわかるんですよ。食品まつりさんの音とかは方向性が違いますけど、海外からみた日本人のオタク感、自分の世界観をとことん掘り下げているという意味でそういうものが海外の人に受ける感覚はすごくわかるんですよね。でも、それこそPCミュージックみたいな音とかってぼくにはある意味うまく距離感が取りづらい。イギリスのレーベルから出ている音ですし、日本の音楽とリンクしたものなんですけど、それがまるっきり自分にとって異質なものでもないかわりに、かといってぼくが昔から慣れ親しんだような音楽とも全然異なるので、うまくそれを自分のスタイルに落とし込むものとしてはあまり響いてこないということはあるかもしれないです。

エキゾチシズムというのは外国で暮らす異邦人にとって、ひとつの武器にもなると思うんだけど、それを求められることはない?

吉田:たまに言われますね。

DJクラッシュみたいな人だってそこを使っていたと思うんだよね。アンカーソングはそれを使わないよね。それをなぜかアフリカとかインドとかさ。

吉田:とくに今回その作品を作って、前の作品がアフリカの音楽に影響されて、今回はインドの音楽に影響されたというと、次はきっと日本だねと言われますね。

ハハハ(笑)。言われるでしょ。だってヴェイパーウェイブみたいに、グーグル翻訳で日本語翻訳したものが流行ったりとか、そういうご時世だからね。

吉田:日本のいかにも和の感じを思わされる尺八だとか、笙だとか太鼓だとかそういうふうなものを大々的にフィーチャーした作品はまだ作っていないわけですけど、なぜいまのところ選んでいないかと言うと、もしかしたらぼくの作品が、自分が興味を持っている国の音楽を外からみているということとすごく関係しているからだと思うんですよ。たとえばぼくがインドの音楽を好きになってインドの作品を作りたかったら、思い切って現地に行って現地のミュージシャンたちとレコーディングをして作品を作るということもその気になればできちゃうわけですよね。でも、ぼくはそういうふうなやりかたで作る作品よりも、はたからそういうものを見ていることで自分なりの距離感を置いて、そこでうまれた距離感のなかで自分の個性みたいなかたちで作品を作りたいなと思っているんですよ。あくまで異文化を外から見たうえで、自分なりに解釈して作るというか。そういうようなやり方に興味をもっているので。

それはすごくわかるな。

吉田:そういう意味で日本はぼくにとっては近すぎるというか。さっき言っていた、それこそパフュームやPCミュージックが注目している音楽にしてもたぶん同じような捉え方だと思います。うまく距離感がつかめないという意味では。

たしかに分断と対立がすごく目立つ時代だから。とくにロンドンはそれがすごいし、ブレグジットに対する非難がずっと絶えない街なので。脱退派が多数だった結果こうなっちゃったわけですけど、ロンドンに住んでいるとその分断ぶりが手にとれるようにみえます。それを表したタイトルなのかと言われることはあります。

今回の作品の話に戻ると、『Cohesion』は融合という意味ですよね。このタイトルを付けた理由を教えてもらえますか?

吉田:今回の作品はとくにインドの打楽器の響きに触発されて作った作品なんですけど、インドの打楽器、タブラとかドーラクとかってアフリカのコンガとかボンゴとかそういうもうちょっと一般的なパーカッションに比べてすごくクセがあるんですよね。特徴のひとつとして音階を付けられる楽器が多くて。インドのヴィンテージのポップスを聴くと打楽器がとても使われていて、それらをサイケデリックなギターとかと組み合わせているんです。パーカッションのパターンなりリズムなりがメロディの一部として聴こえるような音楽がすごく多い。打楽器なのでリズムなんだけど、メロディの一部になっているみたいな。インドの打楽器の音を使うと決めた時点で、そこはぼくもすごく実践したいなと思ったんですよね。リズム、ビートなんだけど、ビートがメロディの一部でもある。逆もしかりで、メロディがあってベースとかギターを使うにしても、打楽器の響きとかパターンに寄り添ったリフとかを重ねて行くことで、メロディとリズムの境界線があいまいな感じになる。それがインド音楽の特性だと思っています。それを自分なりにエレクトロニックな手法でやってみたかったんですよね。『Cohesion』というタイトルは、そういうコンセプトをダイレクトに表しています。

2曲目の曲名が”Resistance”だったりとか、ちょっといままでのアンカーソングには無い言葉も曲名になっているんですけど、それは何か意味があるんですか?

吉田:曲のタイトルは深く考えずに決めちゃうことが多いんですけど、たとえば”Resistance”で言えば、一般的ではない要素を組み合わせているつもりではいるんですよね。あの曲のビートはドーラクというインドの打楽器、ドラムをベースにして作っているんですけど、そこにいかにも西洋のオーケストラ的なチャイムの響きをあわせてみたり、エレキギターのリフをいれてみたり。いろいろな相反しかねない要素をたくさん盛り込んでいるんですが、そういうもの組み合わせようとしたプロセスを言葉にしたというか。どの曲もそういうふうにしてタイトルがつけられていることが多いと思います。

ブレグジット以降のUKアジアに対する、ある意味ポリティカルな共感から作ったのかなという深読みは違います?

吉田:たまに言われますけどね。

言われるでしょ。

吉田:たしかに分断と対立がすごく目立つ時代だから。とくにロンドンはそれがすごいし、ブレグジットに対する非難がずっと絶えない街なので。脱退派が多数だった結果こうなっちゃったわけですけど、ロンドンに住んでいるとその分断ぶりが手にとれるようにみえます。それを表したタイトルなのかと言われることはあります。実際にそれを意識したわけではないんですけど、ただこういうご時世なので、音楽を作るうえで少しでも境界線の少ないものを作ってみたいということは、もしかしたら無意識のうちにちょっとあったかもしれないです。

最後の質問ですが、自分の音楽を言葉で何と形容しますか? たとえば、これはワールド・ミュージックではないと思うんだよね。ワールド・ミュージックのイベントに呼ばれていると言ったけど、いわゆるワールド・ミュージックではない。かといってハウスではない。自分の音楽をなんて呼びますか?

吉田:うーん……。

よくグローバル・ビートという言葉でイギリスのメディアなんかは言ったりするけど。新しいクラップ!クラップ!みたいなものとか。

吉田:必ずしもパッとひと言で伝わる言葉ではなくても良いとしたら、ぼくは日本人でイギリスに住んでいる外国人なわけですけど、外国人というかアウトサイダーであるがゆえの、外国人だからこそうまれてくる視点をベースにしたグローバルな音楽というか。しばらくロンドンに拠点を置いてはいますけど、マインドセットとしては放浪の身というか。

ボヘミアンというかね、ノマドというかね。

吉田:そうですね。ぼく自身ヒッピー的気質なところはあんまりないんですけど、マインドセットとしてはどこにもある意味根差さないことを意識しているというか。根無し草であるがゆえの音楽を作りたいと思うんです。

おもしろいね。

吉田:うまく短くまとめられないのがもどかしいですけど。

では、グローバル・ビーツと言われるのはどう?

吉田:実際そういうふうに形容されることもありますね。それは必ずしも的外れではないと思うので。

ぼくはすごく気持ち良いアルバムだなと思いました。初期のころはもっと詰め込んだ音楽をやっていたと思うんだけど、いまは引き算の音楽になっていますよね。

吉田:実際に考え方自体はそういう方向に変わったと思いますね。

ぼくはこれを自分のiPhoneに入れて通勤中電車のなかで聴いていますけどね。気持ちよくて立ったままでも眠くなりますよ。

吉田:本当ですか。それだけでも十分嬉しいです。ぼく自身あまり時と場所を選ばないというか。そういう音楽ってひとつの理想ではあるんですよね。どういうムードで聴いてもすんなりはまってくれるというか。

やっぱりリズムがあるというのは良いよね。

吉田:いまこっちでは特定の、誰もが夢中になっている分野がないということを言いましたけど、そのなかでいろいろなものが出ていて、ひとつアンビエントぽいものってちょっとした流行りくらいになっていると思います。

それはもう終わったんじゃないの? 前から?

吉田:たしかにいちばん熱かった時期は過ぎているかもしれないですけど、やっぱりまだそれっぽいものが出てきていると思うんですよ。ぼく自身もそういうものを聴くのは好きなんですけど、作るうえでは自然と身体が動くようなものを作りたくなるんですよね。

(了)

収穫の秋にジャー・シャカ祭り - ele-king

 UKサウンドシステム文化の生きる伝説、ブラック・アトランティックそのもの、ベース・カルチャーの体現者、生きているうちにいちどは体験したいジャー・シャカが今年もやって来ます。南は奄美大島から北は札幌まで、全国6箇所をツアー。毎度お決まりの科白を繰り返そう。ぜひ、体験して欲しい!!!

■JAH SHAKA Japan Tour 2018

—The Music Message!!!—
 激動する2018年!  今年も日本にJAH SHAKA降臨。年に一度のシャカ祭り開催!
 JAH SHAKAの半世紀に渡る伝道的な活動により、世界各地にサウンドシステム・カルチャーが伝播し、レゲエ/ルーツミュージックの発展に貢献してきた。
 ポジティヴなメッセージとスピリチュアルなダブサウンドの真髄を伝え続けている。
 奇跡の初来日から21年、 シャカのライヴ体験は日本でもジャンルの壁を乗り越えて支持を拡張し続けている。
 今年は東京、福岡、名古屋、大阪に加え、熱烈なアプローチを受け奄美大島に初上陸、そして17年振りとなる札幌プレシャスホールの6都市をツアーする。

【JAH SHAKA Japan Tour 2018】

▼11.16(金)奄美大島@ASIVI
SubVibes 5th Anniversary“JAH SHAKA in AMAMI”
OPEN 20:00 / START 21:00
 adv.3,500 yen (1Drink Order) / door.4,000 yen (1Drink Order)
TICKET
INFO : ASIVI (0997-53-2223)
https://www.a-mp.co.jp/index.html

▼11.18(日)福岡 @Stand-Bop
 RED I SOUND PRESENTS “JAH GUIDANCE IN FUKUOKA”
 OPEN / START 22:00~
 3,000yen +1Drink Order
 
▼11.22(木)札幌@Precious Hall
exrail×JAH SHAKA JAPAN TOUR support MAWASHI RECORD
 OPEN / START 23:00~
Special adv.3,500yen adv.4,000yen w/f 4,500yen door.5,000yen

▼11.23(金)東京@UNIT
JAH SHAKA DUB SOUND SYSTEM SESSIONS
 OPEN / START 23:30~
 adv.3,300yen door 3,800yen
TICKET
PIA (0570-02-9999/P-code: 130-029)、LAWSON (L-code: 70793)、
e+ (UNIT携帯サイトから購入できます)
RA

▼11.24(土)名古屋@JB'S
JAH SHAKA JAPAN TOUR 2018
 OPEN / START 22:00~
 adv.3,800yen
TICKET:https://l-tike.com/

▼11.25(日)大阪@Creative Center OSAKA
JAH SHAKA OPEN TO LAST
 OPEN 15:00 / START 16:00 Close 21:00
 adv.3,000yen door.3500yen *共に別途1ドリンク代金600円必要
TICKET
ローソンチケット : Lコード 56812
チケットぴあ : Pコード 132316
イープラス
PeaTiXチケット

Total Info : JAH-SHAKA-JAPAN

★JAH SHAKA
 ジャマイカに生まれ、8才で両親とUKに移住。'60年代後半、ラスタファリのスピリチュアルとマーチン・ルーサー・キング、アンジェラ・ディヴィス等、米国の公民権運動のコンシャスに影響を受け、サウンド・システムを開始、各地を巡回する。ズールー王、シャカの名を冠し独自のサウンド・システムを創造、'70年代後半にはCOXSON、FATMANと共にUKの3大サウンド・システムとなる。'80年に自己のジャー・シャカ・レーベルを設立以来『COMMANDMENTS OF DUB』シリーズを始め、数多くのダブ/ルーツ・レゲエ作品を発表、超越的なスタジオ・ワークを継続する。
 30年以上の歴史に培われた独自のサウンドシステムは、大音響で胸を直撃する重低音と聴覚を刺激する高音、更にはサイレンやシンドラムを駆使した音の洪水 !! スピリチュアルな儀式とでも呼ぶべきジャー・シャカ・サウンドシステムは生きる伝説となり、あらゆる音楽ファンからワールドワイドに、熱狂的支持を集めている。heavyweight、dubwise、 steppersなシャカ・サウンドのソースはエクスクルーシヴなダブ・プレート。セレクター/DJ/MC等、サウンド・システムが分業化する中、シャカはオールマイティーに、ひたすら孤高を貫いている。まさに"A WAY OF LIFE "!

Jah Shaka 参考映像:
Jah Shaka - Deliverance & Kingdom Dub (Dub Siren Dance Style)
https://www.youtube.com/watch?v=iKJkblJIaVA

Jah Shaka japan LIVE
https://www.youtube.com/watch?v=CEikFjOcklI

Jah Shaka (RBMA Tokyo 2014 Lecture)
https://www.youtube.com/watch?v=3QNWpnwWgc4

【東京公演】
11/23(金・祝日)代官山UNITでの東京公演は、都内でも有数のクオリティを誇るUNITのシステムに加え、Jah-Lightサウンドシステムを導入、オリジナルスピーカーと楽曲を武器に活動するJah-Lightはセレクターとしても参戦!パワーアップしたJah-Light Sound System+UNIT SOUND SYSTEMでジャー・シャカが理想とするフロアーが音に包まれる空間が創造される。
Roots Rock Reggae, Dubwise!
"LET JAH MUSIC PLAY"

King of Dub
JAH SHAKA
DUB SOUND SYSTEM SESSIONS
- An all night session thru the inspiration of H.I.M.HAILE SELASSIE I -

2018.11.23 (FRI) @ UNIT
feat. JAH SHAKA

Selector: Jah-Light

Jah-Light Sound System +UNIT Sound System

JAH SHAKA SHOP by DUBING!!
Food:ぽんいぺあん

open/start: 23:30 adv.3,300yen door 3,800yen
info.03.5459.8630 UNIT
https://www.unit-tokyo.com

ticket outlets:NOW ON SALE
PIA (0570-02-9999/P-code: 130-029)、LAWSON (L-code: 70793)、
e+ (UNIT携帯サイトから購入できます)
RA

渋谷/Coco-isle (3770-1909)
代官山/UNIT (5459-8630)
下北沢/DISC SHOP ZERO (5432-6129)、
新宿/Dub Store Record Mart (3364-5251)、ORANGE STREET (3365-2027)

……………………………………………………………
info.
▼UNIT
info. 03.5459.8630
UNIT >>> www.unit-tokyo.com
Za HOUSE BLD. 1-34-17 EBISU-NISHI, SHIBUYA-KU, TOKYO

※再入場不可/No re-entry
※20歳未満入場不可。要写真付身分証/Must be 20 or over with Photo ID to enter.
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★Jah-Light
2002年、自身のスピーカーシステム構築を決意。
そこから約2年半の製作期間を経て、2004年"Real Roots Sound"をテーマに
"Jah-Light Sound System"をスタート。都内を中心に各地にて活動中。
2007年、自身のレーベル"LIGHTNING STUDIO REC."を立ち上げ、
1st Singleとなる"Independent Steppers (12")"をリリース。
2012年、新レーベル"DUB RECORDS"からリリースされた1st 10"singleでは、
A.Mighty Massa / Warriors March、B.Jah-Light / Diffusion "といった
コンビネーションプレスで純国産ルーツを世界に向けて発信。
2014年7月、10周年を迎えるにあたりサウンドシステムの増築と共に、
ニューシングル"Jah-Light / The Wisdom 12" (JL-02)"をリリース。
2015年、"DUB RECORDS"からの2nd 12"single "Indica Stepper(DR-002)"をリリース。
サウンド活動も14年目に突入し、オリジナルスピーカーと楽曲を武器に
"絶対に現場でしか体感できない空間"を目標にさらなる新境地に向けて進行中!

twitter:@jahlightss
FB:@jahlight.s.s
=====================================================================

▼Total info.
https://www.facebook.com/JAH-SHAKA-JAPAN-116346262420022/


TREKKIE TRAX CREW - ele-king

レーベル6周年イベントに向けた10曲

TREKKIE TRAX 6th Anniversary

2018年10月26日(金)23:00~5:00
Glad & Lounge Neo

【価格】
前売り 3,000円(1D別)/当日 3,500円(1D別)

【出演者】

■Glad
813 (From Russia)
TENG GANG STARR
Amps
Carpainter (Live)
Cola Splash
gu2
iivvyy
Masayoshi Iimori
Ryuki Miyamoto
TREKKIE TRAX CREW

■LOUNGE NEO
Elevation (From USA)
Hojo b2b Persona (From Taiwan)
EGL
has
isagen
HAKA GANG
Native Rapper
Maru feat. Onjuicy
Miyabi

■Lounge: TREKKIE TRAX : Branch
Allen Mock
FIREMJ.
fuishoo
Herbalistek
kai shibata
niafrasco
Oyubi
UTAKICHI
Zepto

VJ : mika / Rio / hyahho
Photo : Toshimura
Food : 新宿ドゥースラー

【プロフィール】
TREKKIE TRAX CREW

TREKKIE TRAXは2012年に日本の若手DJが中心となり発足したインディーレーベルである。
これまでのテンプレートに囚われない様々な音楽を世界に向けて発信することを指針とし、全国各地で活動しているトラックメーカーとともに楽曲リリースを行っている。

レーベル発足よりこれまで50作品を超えるリリースをリリースし、その楽曲のクォリティの高さは日本だけでなく、世界中から賞賛を受けている。
これまでSkrillex, Diplo, Major Lazer, Porter Robinson, Mija, RL Grime, Djemba Djemba, Carnage, Wave Racerなど名だたるDJ達からサポートを受けており、2015年に開催されたULTRA JAPAN 2015ではメインフロアにて多くの楽曲がプレイされるだけでなく、レーベルから2名のアーティストが出演した。

またレーベルの総決算としてリリースされた「TREKKIE TRAX THE BEST 2012-2015 (CD)」が世界最大の音楽メディア「Pitchfork」へレビュー掲載されスコア【7.2】を獲得するほか、Skrillexが主宰する「NEST HQ」での特集記事やMini Mixのリリース、LuckyMe Recordsがホストを務めるRinse.fmのプログラムでのレーベルが特集ほか、「BBC Radio 1Xtra」や「Triple J Mix Up」でも楽曲がプレイされるなど各国のメディアに大きく取り上げている。

2016年にはレーベルのコアアーティストと共に3都市6公演のアメリカツアーを成功させるほか、Porter Robinson & Madeon - Shelter Live Tourのアフターパーティーにも出演を果たした。
他にもアメリカ・テキサス州で開催された「South by Southwest 2016」への出演やPC Music、Lido、DJ Paypal、Muchinedrum、Addison Groove、DJ Sliinkなどその他多くのアクトの海外公演のサポートを務めるほか、アメリカ・中国・韓国などでもツアーを行い多くの世界中のファンを熱狂させている。

日本国内ではm-floのTaku Takahashiが局長を務める日本最大のクラブミュージックインターネットラジオ「Block.fm」にてクルーのandrew, Carpianter, Seimeiによる「Rewind!!!」のホストを務める。
またHyperdub Label Showcaseへの出演を筆頭とする来日アクトのサポートや、Nina Las Vegas、Lucky Me Records所属のJoseph MarinettiやDeon Customのアジアツアーの主催、自身のレーベルの全国ツアーなど積極的に自主企画を行うほか、アパレルブランド「THE TEST」のコラボなどその精力的な活躍は今後の日本のユースシーンを牽引する今最も注目すべきレーベル、DJ集団と言える。

https://soundcloud.com/trekkie-trax
https://twitter.com/trekkietrax
https://www.trekkie-trax.com/

interview with TOYOMU - ele-king

 まいったね、トヨムは罪深いまでに楽天的だ。荒んでいくこの世界で、シリアスな作品がうまくいかない自分に葛藤していたようでもあった。しかし、人生を「面白がる」ことはとうぜん必要なこと。いや、むしろ面白がる、楽しむことが土台にあるべきだろう。ストゥージズだって「no fun(面白くねえ)」といって面白がったわけだし、泣くのはそのあとだ。
 トヨムの名が知れたのは、2016年のカニエ・ウェストの一種のパロディ作品によってだった。『ザ・ライフ・オブ・パブロ』をおのれの妄想で作り上げたその作品『印象III:なんとなく、パブロ』がbandcampでリリースされると、欧米の複数の有力メディアから大きなリアクションが起きた。それまで知るひとぞ知る存在だったトヨムは、一夜にして有名人になった。
 それから彼は、日本のトラフィック・レーベルからミニ・アルバム「ZEKKEI」を出したが、それはパロディ作品ではなく、牧歌的なエレクトロニック・ミュージックだった。そんな経緯もあって、いったいトヨムのアルバムはどうなるのかと思っていたら、ユーモアとエレクトロ・ポップの作品になった。〈ミュート〉レーベルの創始者、ダニエル・ミラーの初期作品を彷彿させる茶目っ気、LAビートの巨匠デイダラスゆずりのエレガンス、それらに加えてレイハラカミを彷彿させる叙情性も残しながらの、チャーミングなアルバムだ。“MABOROSHI”という曲は、トーフビーツの新作に収録された“NEWTOWN”、あるいはパソコン音楽クラブの“OLDNEWTOWN”なんかと並んで、2018年の日本のエレクトロ・ポップにおいてベストな楽曲のひとつだと思う。
 取材は、10月上旬、広尾のカフェでおこなわれた。通りに面したオープンエアのテーブルには、心地良い秋風が入って来る。この時期の黄昏時は、あっという間に夜を迎えるわけだが、江戸川乱歩が幻視した都会の宵のなかに紛れる怪しいものたちの気配を感じながら、インタヴューは、ゆるふわギャングからサンダーキャットまで、節奏のない彼の好きな音楽の話からはじまって、気が付いたらお互いビールを数杯飲んでいた。

https://smarturl.it/toyomu

だんだんアートといってやっても自分自身がそこまで楽しくないなと思いはじめて。それだったらもうちょっと単純に明るくやろうと思いはじめました。だから自分としてはこのアルバムは明るいアルバムだなと思っています。

今回のデビュー・アルバム『TOYOMU』は、自分ではどんなアルバムだと思いますか?

TOYOMU(以下T):ジャケに表れているように、自分ではすごくカラフルな作品になったと思っています。1曲1曲の単位が集まって、アルバムとして。ぱっと見がそういう感じではあるんですけど、いままで自分自身が、ビートと呼ばれるものをやろうと思ってやっていた時期とか、ラッパーに提供しようと思ってやっていたとか、もしくは”MABOROSHI”みたいにシングルを作ろうという感じで、作り方に対する考え方自体がだいぶシンプルな方向に、シンプルって言ったらおかしいな……、自分の感情として分かりやすい方にだんだん近づいていった。アルバムとしてできあがってみるとあんまり複雑なことや、自分ができないことはもうできないなということを割り切ってやったということもちょっとある。

食品まつりさんのコメントとぼくのコメントは言葉は違うけど、だいたい同じような内容で、同じような印象を持ったのかなと思いました。ドリーミーで、ほっこりなアルバム。そう思われていることを自分ではどう思いますか?

T:人から見たときにドリーミーということは、きっとファンシーさが最後まで残り続けたんだろうなと思います。たぶん現実とひたすら向き合い続けたら、あのようなアルバムにはなっていなかったと思うんですよね。音楽という世界だけに関して言ったら、自分の世界のなかで考えて作ったので、その部分が要素として強いかな。それがたぶんドリーミーと言われる原因ではないかなと少し思います。

自分自身ではそう思わない?

T:ぼくはみんなにわかりやすいように、お祭りみたいな感じ、カーニヴァルちっくな感じだと思っているんですよ。いや、サーカスとかそういうものも近いかな。渋い曲や、かっこいい曲がいちばんベストだと思って作っていたときと、どれだけ人と違うことをやるかみたいな部分で魅せようと思ってやっていたときがあって。人から見たときにそういうわけのわからないものって結構不気味にうつるとぼくは思うんですね。まったくわけのわからないものとか、あとは真剣に物事をやっている人とか。そういうのに対してはお客さんからすると、まじめな演劇を見ている感じ。大衆とか民衆の人たちが楽しみにきているというよりかは、高尚なものを見ている感じで接するような。

アートを見ているような?

T:アートを見ているような、そっちの方を自分はかっこいいと思ってやりたいという感じでいままでは動いていたんですけど、だんだんアートといってやっても自分自身がそこまで楽しくないなと思いはじめて。それだったらもうちょっと単純に明るくやろうと思いはじめました。だから自分としてはこのアルバムは明るいアルバムだなと思っています。たぶんJ-POPとかになってくると思うんですけど、ただひたすら明るいということは、全く屈託がないというか。サーカスとかもそうですけど、ピエロとか大道芸の人とかも一応は明るくはふるまっているじゃないですか。でも、ずっとツアーじゃないですけど、各地を転々としてまわっているから疲れも出てくるし、ずっと笑顔ではいられないと思うんですね。でも、みんなに対して明るい顔をしようという気持ちで動けばある程度はみんながわーって拍手もしてくれるだろうし。いちばん近いのはサーカスのイメージという感じなんですよね。

サーカスには影というものもあるんだけど、影や暗闇をこのアルバムには感じないです(笑)。

T:きっとぼく自身がサーカスに対してそう思っていないからということが大きいと思います。あとは、このアルバムを作るにあたって、何回か曲自体を捨てたりとかしたんですよ。作っては捨てみたいなことが繰り返しあって。だから自分のなかでは、もう作るのが嫌だなと思うくらいにまでたまになったりして。

どういう自分のなかの葛藤があったの?

T:『ZEKKEI』を出した2年くらい前に遡るんですけど、それくらいからアルバムをいちおう作りだしてはいたんですよ。

2年かかったんだね。

T:じっくりやっていてもそのときはアートみたいなものが頭のなかにあったので、人と違うかっこいいものを作るんだみたいな感じがすごく大きかったんですよね。

そのときのかっこいいアートな音楽ってエレクトロニック・ミュージックで言うとたとえば何? OPNみたいな?

T:OPNとかアルカとかもそのときはよく聴いていた。あとは坂本教授の『async』。こういうのがかっこいいなみたいな感じで。いったら全部影があるじゃないですか。でも自分としてはそういうのもやるんですけど、そういうやり方でやっても、人に伝わるまでにならないんですよね。

あるいはそれをやると、自分自身が自分に対してオネストになれていない?

T:オネストになれていないということと、それに偽っているみたいな感じも若干はあった。かっこいいだろというものを思い込みでやったけど、結果的に作り出したものを周りの人に聴かせても、とくにそれに対して何かコメントがあるということがまったくなかったんですよ。ということは、自分ではかっこいいと思って作っているけど、相手に伝わっていないみたいなことが出てきた。そこの伝わらなさみたいなものがすごく自分ではもどかしいというか、イライラするというか。自分ではかっこいいと思っているのに。そういうことが作りはじめてから長いこと続いたんですよ。

じゃあ1枚分のアルバム以上の曲を作っては捨て、作っては捨て。

T:最近もボツ曲をもういちど聞いてみてた んですけど、ものすごい量があって。ちょっと工夫したら別の要素に使えるみたいなものがいっぱいまだあるんですけど。その状態自体が自分自体を陰鬱な気持ちにさせるというか。作れば作るほど、より悪くなっていくなみたいな。

ぼくはOPNやアルカみたいな人たちを評価しているんだけど、これだけ音楽がタダ聴きされて、飲み放題みたいな世界になっていったときに、逆に飲み放題だと酔えないということだってありうるわけだよね。

T:ハードルが下がったのに別に聴く人が増えていないということ?

そういう意味で言うと、トヨム君はもともと曲を無料ダウンロードで出していたわけじゃない? しかし、これはこれで作品として作りたいと思ったわけでしょ?

T:もちろん。ただ、自分の能力との差がどうしてもある。きっと誰だってそういうことはあると思うんです。自分はこうしたいけど、いくら気持ちを入れ替えようと思ってもできないとか。そのときは簡単な話、ちょっと切り替えて、自分はそれができないからできることをやろうみたいな感じでシフトすればすぐに道を切り替えられたと思うんです。いまになって思えば、自分とその周りの状況に甘えていたという感じがあるんですよ。自分にウソをついていたというか。

OPNやアルカみたいな人はすごくシリアスじゃない? そのシリアスさを捨てたなという感じはするんだよね。

T:シリアスになりたかったけど、それをやろうと思ってもまったくできなかったんですよね。そんなフリをするということ自体がいまになって思えば間違っていた。自分に合っていなかった。そういうところのレベルで全然コントロールしきれていなかったというのが自分のなかであるんですよ。

それでこういうジャケットにしたんだろうけど、何かきっかけがあったの?

T:結局いくらやってもできないということになったときに、音楽を辞めるかどうかくらいまで考えていたんですよ。別に音楽を作ることに辞めるとかないけど。あとはいろいろな人と会ったりして。自分はいまでも実家暮らしなんですけど、実家暮らしをしている人でもちゃんとやっている人はもちろんいますが、その生活レベルからして見直した方がいいんじゃないかと思って(笑)。京都でやっていたらどうしても周りがめちゃくちゃ競い合っているという状況では正直ないと思うんですよ。

ゆるい?

T:もちろん京都でもしっかりやっている人はいるけど、自分と同じトラックメイカーやビートを作っている人で競い合っているような状況は東京のようにはない。京都は超田舎ではないけど、超都会でもないから。

独特なところだからね。

T:居たら心地良いんですよね。自然もあるし、川もあるし。そこに居たら、自分では俺は他人とは違うんだと思っていても、どうしてもあらがえないだろうなというのは意識しないと。そこに気付いたのが一番大きかったですね。地方都市に住んでいてめちゃくちゃ頑張っている人もいっぱいいるし。

自分が地方都市でやっているんだという意識はこの作品にはすごくあるの?

T:その反面インターネットがあるから、意識さえ、やる気さえチェンジできたら関係ないんだろうなというのは思うんですけど、そう口では言ってもできない方が絶対に多い。なんでこういうアルバムになったかというときも、実感として自分の人生がそう思ってきたということがけっこうある。

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全部楽しかったらいいじゃんとは思わないですけど、全員がシリアスにならなくてもいいんじゃないかなと思いますね。という発言が出るくらいぼくは楽天的。だから、トーフくんがああいうものを作れるのは本当にすごいと思う。ぼくは自分ではまったく。

この作品を作っていくときに、自分のなかで励みになった作品はある?

T:単純にぼくは〈ブレインフィーダー〉が好きだから、その流れでサンダーキャットも聴いていたんですけど、あの人の突き抜け方とかがいちばん。実際去年メトロでも観たんですけど。

へー、どんなところが?

T:あれだけベースがうまかったら、俺さまベースうまいだろみたいな感じになると思うのに、めちゃくちゃアホなジャケにしたりとか、人に対して優しいんですよね。食品さんとかもみていて思うんですけど、この人良い人だなって思う作品のほうが。2年くらい前まで小難しいことが好きだったけど、そういうアルバムを作るうえでプチ挫折みたいなものがあったから。実際そういうものをシンプルに聴いたら心が豊かになるし、ポップだし。門戸が広いというか風通しが良いというか。尚且つそういうこともやっていたからということもあるんですけど、最近アリアナ・グランデがカヴァーしたりとか、サンダーキャットのプロデュースの曲とか、ファレルのアルバムに入っているみたいなああいういわゆるメインストリームにもちゃんと出て行けるような感じにまで昇華できるんだなと思った。

音楽性は全然違うけど、サンダーキャットはでかかったんだ。

T:前から好きだったから、その流れで聴いていました。あの人も友人の死みたいなものがあって、『Drunk』より一個前は結構シリアスな感じがあったんですけど、今回はアルバムを通じて全部突き抜けているなという感じがしましたね。ジャケからしてもそうですけど。まあ、それだけじゃないですけど、ポップな作品の方が聴いていたかもしれないですよね。むしろ。

ぼくはもっとポップになるかなと思っていたんだけど。ラップしたりとか。わりとおさえているなと思った。なんでそこまではいかなかったの?

T:2年の制作期間に発した、良い部分が全て集約されているのが今回のアルバムです。なのでそこに対しての体力温存は全くありませんよ。全精力をそそいで作ったものだからこそ、「次は自分の声を入れてみたい」というような願望も見えてきましたが、そういった経験がないとまず思いつかなかっただろうと思います。

じゃあ自分の方向性は決まったと。

T:アルバムの形が全部見えるまでは、自分はいったいどうしたらいいんだろうというのが自分のなかではぼんやりとしかないのに、こういう方向にいくんだみたいなものを勝手に決めつけて思っていて。ぼんやりとしたもの、そういう方向性な感じでみたいに思っていたけど、そういうことはやめようと思った。その形で、1回自分のモヤモヤしていたものを終わらせたいなという意味で。

ここまでいくのが大変だったということはよくわかったよ。

T:そうやって抽出したものがいまの僕の地盤を固めたことは間違いないので、自信を持ってどんどん次へ向かおうと思います。というかむしろ、これからさらに面白い風景が見れそうなのでワクワクしてますね。

今回のアルバムの方向性というか、もうこれでいいやと思えたのはどの曲を作ってから?

T:やっぱり”MABOROSHI”ですね。自分のなかで歴史的に残る作品を作ってやるみたいな気持ちが無く、純粋に心からやりたいと思って一番形に成し遂げられた曲なので。しかもそれがサンプリングとかもまあ。なので、この曲が自分のなかのひとつもモヤモヤを晴らしてくれた。

なんで”MABOROSHI”という曲名にしたの?

T:ぼくはもともと、幻とかサイケデリックなものが好きというわけではないんですけど、ああいうものがいちばんぼくのなかではかっこいいみたいなことが基盤としてあるんですよ。

ふっとよぎる幻覚みたいな感じ?

T:幻覚というと言い方がおかしいんですけど、ファンシーなものが自分は一番好きなんですよ。

ファンシーなものってたとえば?

T:いちばんわかりやすく言えばディズニーの世界ですね。ファンタジア、魔法。ハリーポッターとかでもそうですけど。小学生のときも読んでいたし。

最高なファンタジーって何?

T:いまぱっと映像だけで言うならば『ザ・フォール』という映画。『落下の王国』というのがあるんですけど。もうちょっとわかりやすくいうと……。やっぱりさっき言ったディズニーの『ファンタジア』なのかな。小さい頃に観ているから。

大人になってからは?

T:この世にあるかどうかわからないみたいなものが好きで。

たとえば?

T:ラピュタとか?

へー、ジブリが好きなんだ。あ、でもたしかにジブリっぽいかも(笑)!

T:ずっと観ていたわけではないですけど、生活の延長線上にちょっと近所の山を登ったらみたいな。

ジブリだったら何が好きなの?

T:『となりのトトロ』か『千と千尋の神隠し』で迷いますね。どっちか。ぼくの趣味がものすごく子供っぽいんですよね。本当に絵本とかにある感じの世界感が好きで。『おしいれのぼうけん』とか知っていますか? 自分の押し入れの先がトンネルになっていて。

でも、うん、ジブリっぽいよ。

T:人としてという意味ですか?

いや、もちろん音楽が。“もぐら慕情”とか。“MABOROSHI”も『千と千尋の神隠し』のレイヴ・ヴァージョンと喩えられなくもない。

T:ジブリっぽいですか(笑)。

トトロのフィギュアとか持っていたりする? 昔けっこう有名な UKのディープ・ハウスのDJの家に泊めてもらったとき、ベッドにトトロのぬいぐるみがあって(笑)。

T:フィギュアは持っていないです。そういう感じではない(笑)。ただあの世界感が何回観てもひたれるからいいなと思うんですよね。夏になる度に。

それは世代的に?

T:世代的なものが大きいと思うんですけど、日曜ロードショーとか。あと、いま思ったんですけど、もうひとつはもしかしたらゲームかも。ポケモンとか。ポケモンとあと任天堂系のマリオ。ポケモンは現実でもないけど。あれは世代的なものかもしれない。いずれにしてもゲームを作るとなったら、そのときはファンタジーというのが人気作の大前提ですよという感じでみんな作っていた感じがする。

しかし、トヨム君はトーフビーツとは逆だよねー。トーフビーツは2作連続であれだけメランコリックなアルバムを作っているじゃない? 同じ世代で関西で暮らしていてもこうも違うのかって感じが(笑)。

T:でもそれでいいんじゃないかなとぼくは思うんですけどね。たしかにぼくもリスナーとしてだったら全部楽しかったらいいじゃんとは思わないですけど、全員がシリアスにならなくてもいいんじゃないかなと思いますね。という発言が出るくらいぼくは楽天的。だから、ああいうものを作れるのは本当にすごいと思う。ぼくは自分ではまったく。

そうだよね。自分に嘘をつくことになっちゃう。

T:それをやったらすごくベタベタしそう。ネトネトしたものになりそう。あんなにさらっとできない。

彼はアーティスト気質なんだろうね。実はすごく。エンターテイナーでいようと思いながらも、どうしてもアーティスト的なんだよな。

T:まじめですよね。それは昔から絶対誰も勝てないだろうという感じがするので(笑)。常に競い合っているからバチバチやってやるぜとは思わないですけど、そこまでそんなに思っていないやつが同じ土俵でやってもそんなに意味がないんじゃないかな。

彼は単純にいまの音楽シーンで自分と同世代、それ以下の人がもっと出てきて欲しいんだよ。ひとつはね。話していて思うのは、俺しかいねーじゃんというくらいな感じ。もっと出てきてくれよ、ポップ・フィールドに。いつまでも年上ばかりじゃなくて。

T:切り込み隊長にさせるなよみたいな(笑)。

そう。

T:それは今回のアルバムがとくにそうですね。ひとりで走っていますからね。

ひとりで走っているよ。それは同世代としてどう思う? あれは同世代の音楽をやっているやつに対するメッセージじゃない?

T:そういう話に関してもそうなんですけど、以前は単純にトーフ君がものすごく売れていて、自分は必至にかっこよくて渋いものを作っているんだけどなと思いながらも、うずくまっていた感じの時期とかがあった。そういうのが単純にうらやましいなと思って。同じ年に生まれたのにみたいなことがあった。いまはたしかに同じ時期に生きてきたけど、単純に圧倒的にトーフ君の方がやっている年数が長いし。

先輩だと。

T:普通に先輩という感じ。ぼくは全然同世代だとは思ったことがない。

なるほど。これは紙面に乗せるからね(笑)。

T:そこは別に俺のことなんか見てねぇよという意味ではなくて、単純にリスペクトしかないという感じ。だから、じゃあ俺もいっちょ言ってやるかじゃなくて、自分ができる、いちばん本気でやれるやり方でどんどんアタックをしていこうみたいな考え方にいまはなってきたんですよ。

じゃあ、トヨム君は、地方に住みながらこつこつとやると?

T:ぼくは出ていくぞという気持ちがものすごくいまは強いですけどね。でもシリアスにやることが自分のやり方であるとは到底思えないというか。

だから自分なりのやり方で、もっていく。

T:なんか、ふぁーっとしたい。しゃがみこむというよりかは。全員が全員シリアスだったら気持ち悪いと思うんですよ。

まあとにかく、来年のRAP入りのアルバムを楽しみにしているよ。今日はどうもありがとうございました。

ライヴ情報
11月16日(金)H.R.A.R @京都METRO / https://bit.ly/2xKj9hh
12月22日(土)食品まつりとTOYOMUの爆裂大忘年祭 @KATA + TimeOut Cafe&Diner / https://bit.ly/2J4fTSi

公演概要
タイトル:食品まつりとTOYOMUの爆裂大忘年祭
出演者:食品まつりa.k.a foodman / TOYOMU and more! *追加出演者は追ってご案内します。
日程:2018年12月22日(土)
会場:KATA / Time Out Cafe&Diner (両会場共に恵比寿リキッドルーム2F)
時間:OPEN/START 18:00
料金:前売¥2,500 (ドリンク代別)/ 当日?3,000(ドリンク代別)
問合わせ:Traffic Inc./ Tel: 050-5510-3003 / https://bit.ly/2J4fTSi / web@trafficjpn.com
主催・企画制作:Hostess Entertainment / Traffic Inc.

<TICKET INFO>
10月22日(月)より販売開始!
購入リンク
https://daibonensai.stores.jp/

<出演者>

食品まつりa.k.a foodman

名古屋出身のトラックメイカー/絵描き。シカゴ発のダンスミュージック、ジューク/フットワークを独自に解釈した音楽でNYの<Orange Milk>よりデビュー。常識に囚われない独自性溢れる音楽性が注目を集め、七尾旅人、あっこゴリラなどとのコラボレーションのほか、Unsound、Boiler Room、Low End Theory出演、Diplo主宰の<Mad Decent>からのリリース、英国の人気ラジオ局NTSで番組を持つなど国内外で活躍。2016年に<Orange Milk>からリリースしたアルバム『Ez Minzoku』はPitchforkやFACT、日本のMUSIC MAGAZINE誌などで年間ベスト入りを果たした。2018年9月にLP『ARU OTOKO NO DENSETSU』をリリース。

*追加アーティストの発表は追ってご案内申し上げます。

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