「Low」と一致するもの

6月のジャズ - ele-king

 ここ数年来、南アフリカ共和国から良質なジャズ・ミュージシャンが輩出されているが、その筆頭がピアニストのンドゥドゥゾ・マカティーニである。


Nduduzo Makhathini
uNomkhubulwane

Blue Note Africa

 南アフリカ・ジャズが注目を集めるきっかけのひとつに、シャバカ・ハッチングスと共演したバンドのジ・アンセスターズがあるが、ンドゥドゥゾ・マカティーニはその中心人物のひとりで、2014年頃からリーダー作品を発表している。2020年には〈ブルーノート〉と契約を結んで『Modes Of Communication: Letters From The Underworlds』をリリース。2022年の『In The Spirit Of Ntu』は、〈ユニバーサル・アフリカ〉が〈ブルーノート〉と提携して設立した〈ブルーノート・アフリカ〉の第1弾作品となった。『Modes Of Communication: Letters From The Underworlds』はモード・ジャズや即興演奏を土台に、ベキ・ムセレク、モーゼス・タイワ・モレレクワ、アブドゥーラ・イブラヒムら南アフリカの先代のピアニストらの影響を見せる作品だった。『In The Spirit Of Ntu』はアフリカのバントゥー系民族に由来する人間という意味のズールー語の精神をタイトルとし、アフリカの大地に根付く祝祭性、呪術性に富むアルバムだった。ンドゥドゥゾは南アフリカ共和国のウムグングンドロヴ郡出身で、その地域に伝わる先住民族の儀式や音楽の影響を受け、音楽かであると同時に呪術師や祈祷師としての顔も持つ。そうしたンドゥドゥゾらしさが表われた作品と言えよう。

 新作の『uNomkhubulwane』はズールー土着信仰の女神の名前を示しており、「Libations」「Water Spirits」「Inner Attainment」というアフリカ民族であるヨルバ人の宇宙論で重視されていた「3」の数字に倣って楽曲を3パートに振り分けている。「作曲や何らかの概念的パラダイムを通じて意図を表現することが多かった。超自然的な声と交信する方法として音を使用している」とマカティーニは述べており、音楽家で祈祷家でもある彼の哲学的なヴィジョンや宗教観を示したものとなっている。録音はこれまでともにワールド・ツアーをおこなってきた南アフリカ出身のベーシストのズワラキ=ドゥマ・ベル・ル・ペルと、キューバ出身のドラマーのフランシスコ・メラとのトリオ編成。ヨルバ語で歌われる「Libations」の “Omnyama” は、清廉としたピアノと素朴なリズムによって紡がれる美しいアフロ・スピリチュアル・ジャズ。「Inner Attainment」の “Amanzi Ngobhoko” における祈りのような歌とモーダルなピアノ、土着的なドラムが導くメディテーショナルな世界は、マカティーニの真骨頂が表われたヒーリング・ミュージックと言えよう。


Malcolm Jiyane Tree-O
True Story

A New Soil / Mushroom Hour

 マルコム・ジヤネは南アフリカのハウテン州のヨハネスブルグにほど近いカトレホン出身で、若干13歳で音楽学校のブラ・ジョニーズ・アカデミーに進学したという早熟のトロンボーン奏者。ピアノなども演奏するマルチ奏者であり、これまでにンドゥドゥゾ・マカティーニや同じくジ・アンセスターズのトゥミ・モロゴシほか、ハービー・ツォアエリ、アヤンダ・シカデといった南アフリカの有望なミュージシャンらと共演してきた。2021年に自身のグループを率いて初リーダー作の『Umdali』を発表。グループはトゥリー・オーというもので、トリオよりももっと大人数から成る。ベースのアヤンダ・ザレキレ、ドラムスのルンギレ・クネネのほか、サックス、トランペット、ピアノなどを交え、マルコムはトロンボーンとヴォーカルを担当し、すべてマルコムの作曲による自作曲を演奏。全体に静穏なムードが漂い、ゆったりと時の流れるアフリカらしいジャズを演奏した。ツバツィ・ムフォ・モロイの清らかなヴォーカルをフィーチャーした “Moshe” は、同じ南アフリカ出身のタンディ・ントゥリなどに近い牧歌性に富むジャズだった。

 『Umdali』から3年ぶりとなるセカンド・アルバムの『True Story』は、アヤンダ・ザレキレ、ルンギレ・クネネ、ンコシナティ・マズンジュワ(ピアノ、キーボード)、ゴンツェ・マクヘネ(パーカッション)など、ほぼ前作のメンバーがそのまま参加する。『Umdali』と同じ時期の2020年から2021年にかけて数回のセッションを重ね、2023年に最終的なセッションを行って録音がおこなわれた。アルバムは詩人でソフィアタウンの住人である故ドン・マテラへのオマージュで、反戦的なメッセージの込められた “Memory Of Weapon” ではじまり、地球の悲惨さを哀悼する “Global Warning” や、ピーター・トッシュに捧げられたアフロ・ビートの “Peter’s Torch”、南アフリカの反アパルトヘイト運動にも参加したギタリストでシンガーの故フィリップ・タバネについての曲となる “Dr. Philip Tabane”、その名のとおり南アフリカにおけるジャム・セッションをスケッチした “South African Jam” などが収められる。マルコムのふくよかで哀愁に満ちたトロンボーンが奏でるアフロ・ジャズ “MaBrrrrrrrrr”、レオン・トーマスのようなヨーデル調のヴォーカルをフィーチャーしたスピリチュアル・ジャズの “I Play What I Like” など、全体的にゆったりとピースフルなムードに包まれた楽曲が印象的だ。


Julius Rodriguez
Evergreen

Verve / ユニバーサル

 ジュリアス・ロドリゲスはニョーヨークを拠点とするハイチ系黒人ミュージシャンで、ピアニスト兼ドラマー及び作曲家とマルチな才能を持つ。幼少期からクラシック・ピアノ、そしてジャズを学び、マンハッタン音楽院、ジュリアード音楽院に進んだ。音楽的ルーツはジャズ、即興音楽、ゴスペル、ヒップホップ、R&B、ポップ・ミュージックと多岐に渡り、オニキス・コレクティヴ、A$APロッキー、ブラストラックスなどと共演をしてきた。ジャズ方面ではミシェル・ンデゲオチェロ、カッサ・オーヴァーオールモーガン・ゲリンらと共演し、ジャズ・シンガーのカーメン・ランディによるグラミー・ノミネート作『Modern Ancestors』(2019年)ではピアノ伴奏者として高い評価を得た。ソロ・デビュー作は2022年の『Let Sound Tell All』で、オニキス・コレクティヴと繋がりの深いニック・ハキムやモーガン・ゲリンなどが参加。カッサ・オーヴァーオールの『I Think I’m Good』(2020年)や『Animals』(2023年)のミキシングを担当したダニエル・シュレットが制作に参加したということで、オーソドックな演奏を聴かせる一方で、即興演奏やソウル、ヒップホップ、エレクトロニック・ミュージックなどが融合した新世代ジャズ・ミュージシャンならではの作品だった。

 セカンド・アルバムとなる『Evergreen』は、キーヨン・ハロルド、ジョージア・アン・マルドロウ、ネイト・マーセローなどが参加し、ソランジュ、ホールジー、ビリー・アイリッシュらをプロデュースしてきたティム・アンダーソンとの共同プロデュースにより、デビュー・アルバムからさらにスケール・アップしたものとなっている。ジュリアス・ロドリゲスはピアノ。シンセ、オルガン、ローズ、エレキ・ギター、エレキ・ベース、アコースティック・ギター、クラリネット、ドラムス、パーカッション、ドラム・プログラミングを担当するマルチぶりを見せる。ドラムンベース調のリズム・プロダクションと美しいピアノやサックスのメロディが一体となったコズミック・ジャズの “Around The World”、ジョージア・アン・マルドロウの幻想的な歌声が繊細なピアノ・リフと相まり、途中からダイナミックなドラムが加わって深遠な世界を作り出す “Champion’s Call”。時を経ても色あせることのないエヴァーグリーンな音楽という意味を込めたこのアルバムは、ジャンルの枠や偏見にとらわれることなく、彼自身が内から自然にやりたいと思うサウンドを具現化したものである。


Ibelisse Guardia Ferragutti & Frank Rosaly
Mestizx

International Anthem Recording Company

 イベリッセ・グアルディア・フェハグッチはボリヴィア出身でアムステルダムを拠点に活動するシンガー。フランク・ロサリーはシカゴ出身のドラマーで、そんなふたりは結婚し、ともに音楽活動をおこなっている。

 シカゴ、アムステルダム、ボリヴィア、プエルト・リコでレコーディングがおこなわれた『Mestizx』は、ふたりのほかにベン・ラマー・ゲイ、ダニエル・ヴィジャレアルといったシカゴの〈インターナショナル・アンセム〉周辺のミュージシャンも参加する。そのダニエル・ヴィジャレアルの『Panamá 77』(2022年)や『Lados B』(2023年)同様に、フランク・ロサリーの作り出すリズムはパーカッシヴでラテンやアフリカの原初的な音楽を想起させる。そうしたサウンドとイベリッセ・グアルディア・フェハグッチのエキゾティックで飾り気のないヴォイスが一体となり、独特のミステリアスな世界を作り出す。“DESTEJER” はキューバの宗教儀式の音楽であるサンテリアを想起させ、イベイーなどに繋がる楽曲。“TURBULÊNCIA” はハモンド・オルガンを交えてクルアンビンのようなサイケ・ムードを出していく。“DESCEND” はシカゴらしい即興ジャズと実験的な音響、魔女のようなポエトリー・リーディングが融合する。

Koshiro Hino + Shotaro Ikeda - ele-king

 昨年はバンドgoatの復活で注目を集めた音楽家、日野浩志郎が新たな試みをスタートさせる。詩人・池田昇太郎と組んだ、音と声の表現を探求するプロジェクトだ。3年がかりになるそうで、初年度にあたる今年は、大阪・名村造船所跡地のクリエイティブセンター大阪にて、新作公演「歌と逆に。歌に。」が発表される。
 テーマは戦前から活動していた大阪のアナキスト詩人、小野十三郎。かつて彼の見た街や道をめぐりつつ、彼がもとめた「新たな抒情」を独自に解釈した音楽公演になるとのこと。メンバーにはKAKUHANの中川裕貴、パーカッショニストの谷口かんな、goatの田上敦巳などこれまで日野と共演してきた面々に加え、朗読に坂井遥香、音楽家の白丸たくトが加わる。
 公演は8月16日(金)から18日(日)の4回。日野と池田による新しいチャレンジに注目しましょう。

新作音楽公演「歌と逆に。歌に。」
2024年8月16日〜18日、クリエイティブセンター大阪にて4公演開催。
音楽家・日野浩志郎と詩人・池田昇太郎による、
音と声の表現を探る、3カ年プロジェクトがスタート。

詩人・小野十三郎の書く「大阪」を巡り、
音と声による「歌」の可能性を探る

大阪を拠点とし、既存の奏法に捉われず音楽の新たな可能性を追求し続けてきた音楽家・日野浩志郎と詩人・池田昇太郎による、音と声の表現を探る3カ年プロジェクト「歌と逆に。歌に。」。
初年度は、大阪・名村造船所跡地のクリエイティブセンター大阪にて、新作公演を発表する。

本プロジェクトにおいて重要なテーマとなるのが、1903年に大阪で生まれ、戦前から戦後にかけて大阪の風景や土地の人々を眼差してきた詩人・小野十三郎だ。1936年〜52年、小野が大阪の重工業地帯を取材し、1953年に刊行された詩集『大阪』と、彼の詩論の柱である「歌と逆に。歌に。」を手がかりに、同詩集で描かれた地域や地名をフィールドワークとして辿る。

小野十三郎という詩人の作品に向き合うということは彼の生きた時代とその社会、彼の生まれた街、育った街、住んだ街、通った道、生活、彼の思想、友人や影響を受けた詩人を訪れることでもある。本作ではそうした街や道、風景を巡りながら、詩集『大阪』にて描かれる北加賀屋を舞台に、小野が試み、希求した「新たな抒情」を感受し、独自に解釈し、編み直し、それを音楽公演という時間と空間の中に試みる。

公演情報
新作音楽公演|「歌と逆に。歌に。」
日程:2024年8月16日(金)〜18日(日)
公演日時:
 ①8月16日(金)19:30-
 ②8月17日(土)14:30-
 ③8月17日(土)19:30-
 ④8月18日(日)14:30-
 ※開場は各開演の30分前を予定
会場:クリエイティブセンター大阪内 Black Chamber https://namura.cc/
料金:一般=4,000円、U25=3,000円、当日=5,000円
チケット取扱い:ZAIKOイベントページにて

関連イベント|オープンスタジオ
公演を前に、作品制作の現場を間近でご覧いただけます。
当日はリハーサルだけではなく、クリエーションやリサーチの進捗共有なども行う予定です。
日時:2024年7月7日(日)14:00-17:00
会場:音ビル(大阪府大阪市住之江区北加賀屋5-5-1)
料金:500円(要申込・途中入退場自由)
申込:Googleフォームにて

クレジット
作曲:日野浩志郎
詩・構成:池田昇太郎
出演:池田昇太郎、坂井遥香、白丸たくト、田上敦巳、谷口かんな、中川裕貴、日野浩志郎
舞台監督:小林勇陽
音響:西川文章
照明:中山奈美
美術:LOYALTY FLOWERS
宣伝美術:大槻智央
宣伝写真:Katja Stuke & Oliver Sieber
宣伝・記録編集:永江大
記録映像:Nishi Junnosuke
記録写真:井上嘉和、Richard James Dunn
制作:伴朱音

主催:株式会社鳥友会、日野浩志郎
共催:一般財団法人 おおさか創造千島財団「KCVセレクション」
助成:大阪市助成事業、全国税理士共栄会
協力:大阪文学学校、エル・ライブラリー
問合:utagyaku@gmail.com

コメント
日野浩志郎(作曲)|制作にあたって共同制作者へ向けたメッセージ

発端となったのは大阪北加賀屋を拠点とする「おおさか創造千島財団」から2年連続のシリーズ公演を提案されたことでした。声をテーマにした音楽公演を以前から模索していたのもあり、大阪で山本製菓というギャラリーを運営していた詩人の池田昇太郎くんに声をかけたところ、大阪の詩人である小野十三郎に焦点を当てた公演を行うのはどうかと提案してくれました。
 小野十三郎は戦前から活動を行ってきた詩人であり、アナーキズムに傾倒した詩集の出版等を経て、「短歌的抒情の否定」、つまり短歌(57577)の形式や感情的な表現を否定するという主張を行った詩人です。中でも1939年に出版された小野の代表的詩集「大阪」を読んでいると、詩の構造や感情的な表現へのカウンター/嫌悪感のようなものを感じると同時に、「硫酸」、「マグネシウム」、「ドブ」、「葦(植物のあし)」、のような冷たく虚無を感じる荒廃した言葉が際立ち、ポストパンクを聴いてるようなソリッドさに何度もゾクっとさせられました。詩集の中で大阪の様々な地名や川等が登場しますが、今回の会場である名村造船所周辺を含む工場地帯は詩集の中でも重要な場所であることが分かります。
 公演内容についてはこれからのクリエーションによって定めていきますが、現状では小野の代表的詩集「大阪」(1939)を中心に置き、小野の詩を読み取りながら音楽と昇太郎くんのテキストを制作していきます。一般化された短歌のような形式の否定というのは詩だけに留まらず、音楽に対しても同様に言及されているところがあり、音楽的常識に則ったものや直接感情的に訴えるような音楽は制作しない予定です。詩と音楽に対する関わり方も難しく、音楽を聴かせる為の詩でも、詩を聴かせるためのBGMでもない、必然的で詩と関係性の強い音楽を作ることが目標であると思っています。
 このプロジェクトは一旦3年を計画しています。最初の2年は大阪で公演を行った後、公演に関する音源作品と出版物をEU拠点の音楽レーベルから発売、そして3年目には海外公演を行うという目標で進めています。
 制作を始めてまだ間もないですが、取り上げた題材の強大さと責任の大きさを感じています。「詩と音楽」ということだけでも難しいですが、天邪鬼で尖った小野の美学に沿うには単にかっこいい表現というだけでは許してくれそうもありません。主に自分と昇太郎くんが表現の方向性の舵を切って進めていく予定ですが、各々でも小野の詩や思想に触れて解像度を上げてもらえると心強いです。どうぞよろしくお願いいたします。

2024.2.15 日野浩志郎

池田昇太郎(詩・構成)|小野十三郎という詩人と向き合うこと

小野十三郎という詩人の詩と詩論に向き合うことは彼の生きた時代とその社会、彼の生まれた街、育った街、住んだ街、通った道、生活、彼の思想、友人や影響を受けた詩人を訪れることでもある。
 翻って、それは私たちの生きる時代とその社会、私たちの生まれた街、育った街、住む街、通る道、生活、私たちの思想、つまり私たち自身を訪れることでもある。
その上で、詩集「大阪」を通して小野が試み、希求した「新たな抒情」を感受し、独自に解釈し、編み直し、それを音楽公演という時間と空間の中で再構成することを試みる。

 本作のタイトル「歌と逆に。歌に。」は小野十三郎の詩論の一節に基づくものだが、公演に用いたテキストでは、小野の詩や詩論を引用することを最低限にし、書き下ろしとすることにした。そのようにするしかなかった諸般の事情もあったが、詩人の遺した言葉から感銘を受けるに留まるのではなく、新たに言葉を紡ごうとする意義を問い直す必要があった。

 1936年から52年という時代の中で強固な意志を持って書き記された詩篇を読み解き、自らの創作言語にしていくことは並大抵ではなく、仮にあらゆる必然がそこにあったとしても、容易いことではない。
 小野の見つめた、ある時代の大阪。その時代のその街と風景以上に普遍的な目。土地から切り離された人々が、もう一度土地と結ばれるためではなく、その断絶の上で、大きな力に抗い続ける個としてあること。このアスファルトの下に流れる水が、流れ出る場所、浸み出す場所、それを吸って育つ葦、そして枯れる葦。その繰り返し。その見えない流れを捉えること。

2024.6.17 池田昇太郎

photo: Katja Stuke & Oliver Sieber

- - - - - -

プロフィール|出演者

photo: Dai Fujimura

日野浩志郎 / Koshiro Hino
音楽家、作曲家。1985年生まれ、島根県出身。現在は大阪を拠点に活動。メロディ楽器も打楽器として使い、複数拍子を組み合わせた作曲などをバンド編成で試みる「goat」や、そのノイズ/ハードコア的解釈のバンド「bonanzas」、電子音楽ソロプロジェクト「YPY」等を行っており、そのアウトプットの方向性はダンスミュージックや前衛的コラージュ/ノイズと多岐に渡る。これまでの主な作曲作品は、クラシック楽器や 電子音を融合させたハイブリッドオーケストラ「Virginal Variations」(2016)、多数のスピーカーや移動する演奏者を混じえた全身聴覚ライブ「GEIST(ガイスト)」(2018-)の他、サウンドアーティストFUJI|||||||||||TAと共に作曲・演奏した作品「INTERDIFFUSION A tribute to Yoshi Wada」(2021-)、古舘健や藤田正嘉らと共に作曲した「Phase Transition」(2023)、等。佐渡を拠点に活動する太鼓芸能集団 鼓童とは2019年以降コラボレーションを重ねており、中でも延べ1ヶ月に及ぶ佐渡島での滞在制作で映像化した音楽映画「戦慄せしめよ/Shiver」(2021、監督 豊田利晃)では全編の作曲を日野が担当し、その演奏を鼓童が行った。音楽家・演出家のカジワラトシオと舞踊家・振付家の東野祥子によって設立されたANTIBODIES Collectiveに所属する他、振付師Cindy Van Acker「Without References」、映画「The Invisible Fighit」(2024年公開、監督Rainer Sarnet)等の音楽制作を行う。

(C) tramminhduc

池田昇太郎 / Shotaro Ikeda
1991年大阪生まれ。詩人。詩的営為としての場の運営と並行して、特定の土地や出来事の痕跡、遺構から過去と現在を結ぶ営みの集積をリサーチ、フィールドワークし、それらを基にテクストやパフォーマンスを用いて作品を制作、あるいはプロジェクトを行なっている。廃屋を展覧会場として開くことの意味を視線と身体の運動からアプローチしたインスタレーション「さらされることのあらわれ」(奈良・町家の芸術祭はならぁと2021)、一見するとただの空き地である元市民農園を参加者と共に清掃しながら、その痕跡を辿り、かつての様子を無線越しに語るパフォーマンス「Only the Persiomon knows」(PARADE#25、2019)西成区天下茶屋にて元おかき工場の経過を廻るスペース⇆プロジェクト「山本製菓」(2015~)、「骨董と詩学 蛇韻律」(2019~)他。

坂井遥香 / Haruka Sakai
2014年野外劇で知られる大阪の劇団維新派に入団し、2017年解散までの作品に出演。2018年岩手県陸前高田市で滞在制作された映画『二重のまち/交代地のうたを編む』(監督:小森はるか+瀬尾夏美)に参加。近年の出演作に孤独の練習『Lost & Found』(音ビル, 2020)、許家維+張碩尹+鄭先喻『浪のしたにも都のさぶらふぞ』(YCAM)、梅田哲也『入船 23』、『梅田哲也展 wait this is my favorite part 待ってここ好きなとこなんだ』(ワタリウム美術館)など。場所や土地と関わりを持ちながらつくる作品に縁・興味がある。

白丸たくト / Takuto Shiromaru
音楽家。1992年生まれ。兵庫県出身。茨城県大洗町在住。実感のなさや決して当事者にはなれない事柄を、社会・歴史・その土地に生きる人々との関わりから音楽を始めとする様々なメディアを用いて翻訳し、それらを読み解くための痕跡として制作を続けている。「詩人の声をうたに訳す」をコンセプトに行う弾き語り(2016〜)や、ラッパー達と都市を再考するプロジェクト「FREESTYLUS」(2021〜)等。

田上敦巳 / Atsumi Tagami
1985年生まれ。広島県出身。音楽家日野浩志郎を中心に結成されたリズムアンサンブル「goat」のベースを担当。バンド以外に不定形電子音ユニット「black root(s) crew」のメンバーとして黒いオパールと共に不定期に活動。2011年~2018年まで「BOREDOMS」のサポートを行う他、2022年からはダンサー東野洋子とカジワラトシオによるパフォーマンスグループ「ANTIBODIES Collective」に参加。

谷口かんな / Kanna Taniguchi
京都市立京都堀川音楽高校、京都市立芸術大学の打楽器科を卒業。在学時はライブパフォーマンスグループに所属し、美術家、パフォーマー等と共演、即興演奏の経験を積む。卒業後はフリーランスの音楽家として室内楽を中心に活動。卒業後も継続して他分野との即興演奏に取り組んでいる。これまでに、東京フィルハーモニー交響楽団、京都室内合奏団と共演。近年はヴィブラフォンでの演奏に最も力を入れており、2023年11月にヴィブラフォンソロを中心とした初のソロリサイタル「vib.」を京都芸術センターで開催。

中川裕貴 / Yuki Nakagawa
1986年生まれ。三重/京都在住の音楽家。チェロを独学で学び、そこから独自の作曲、演奏活動を行う。人間の「声」に最も近いとも言われる「チェロ」という楽器を使用しながら、同時にチェロを打楽器のように使用する特殊奏法や自作の弓を使用した演奏を行う。音楽以外の表現形式との交流も長く、様々な団体やアーティストへの音楽提供や共同パフォーマンスを継続して行っている。2022年からは音楽家・日野浩志郎とのDUOプロジェクト「KAKUHAN」がスタート。令和6年度京都市芸術文化特別奨励者。

 オーストラリアのメルボルンから飛び出したハイエイタス・カイヨーテ。2011年に結成された彼らは、ネイ・パーム(ヴォーカル、ギター)、ポール・ベンダー(ベース)、サイモン・マーヴィン(キーボード)、ペリン・モス(ドラムス)という個性的で優れた才能を持つミュージシャンからなる4人組バンドで、2012年のデビュー・アルバム『Tawk Tomahawk』以降、つねにエネルギッシュな話題を振りまいてきた。デビュー当時はネオ・ソウルやR&Bの文脈からスポットが当てられ、フューチャー・ソウル・バンドといった形容が為されてきた彼らだが、その音楽的な振り幅は我々の予想の斜め上を行くもので、ジャズやヒップホップ、ファンクなどからオペラやアフリカ音楽をはじめとした世界の民族音楽など、さまざまな要素から成り立っている。そうしたどのジャンルにも縛られない自由さを持ち、複雑で先の読めない楽曲展開とそれを可能にする演奏技術や高度な音楽性を有し、まさにスーパー・バンドと呼ぶにふさわしい存在へと成長していった。ライヴでの圧倒的なパフォーマンスにも定評があり、世界中のさまざまなフェスで人気アクトとして引っ張りだこだ。

 これまでグラミー賞に3度もノミネートされてきたハイエイタス・カイヨーテだが、アルバム・リリースは多くなく、『Tawk Tomahawk』と『Choose Your Weapon』(2015年)、『Mood Valiant』(2021年)と3作のみだ。ツアーやライヴに長期的なスケジュールを割き、メンバーはハイエイタス・カイヨーテ以外にもいろいろなプロジェクトや活動をおこなっていて、なかなかアルバム制作の時間が取れないということもあるが、彼らのアルバムはそれぞれ内容と密度、完成度が非常に高いため、簡単に作れるものではない。『Mood Valiant』からは〈ブレインフィーダー〉に所属し、フライング・ロータスやPファンクなどが持つハイパーな世界観にもリンクしはじめた彼らが、待望のニュー・アルバム『Love Heart Cheat Code』を完成させた。アルバム・ジャケットはこれまでのイメージから一新したもので、作品内容も新たなハイエイタス・カイヨーテの一面を見せる場面ありと、彼らの新しいスタートを印象づける『Love Heart Cheat Code』について、ペリン・モスとサイモン・マーヴィンに語ってもらった。

いちばんわかりやすい変化としては、外部のプロデューサー兼エンジニアのマリオ・カルダート・ジュニアと一緒に仕事をしたことだね。すごく良い経験だったし、興味深かったよ。(マーヴィン)

ニュー・アルバムの『Love Heart Cheat Code』がリリースとなります。前作『Mood Valiant』から3年ぶりのアルバムですが、セカンド・アルバムの『Choose Your Weapon』から6年も空いた『Mood Valiant』に対し、今回は比較的短いインターバルになったとはいえ、それでもいろいろあった3年間だったと思います。『Love Heart Cheat Code』について、どのような準備を進めてきたのですか?

ペリン・モス(以下、PM):『Choose Your Weapon』はすごく壮大で、たくさんの曲を詰め込んだアルバムだったからね。それでも何曲か余っていて、すべてをレコーディングしたわけではなかったんだけど、なるべくたくさんの曲を1枚のレコードに詰め込みたいという感じで作ったんだ。その次の『Mood Valiant』はまた一から曲作りをするために、長い時間を掛けて作り上げたアルバムだったね。あのアルバムを制作していた時期は世界中でいろいろな出来事が起こっていたし、僕たち個人個人にとってもさまざまな変化を経験した時期だった。だから、『Choose Your Weapon』とは全く違ったものを作りたいということになって……レイヤーを分厚く重ねていくような制作方法ではなくて、スタジオでプレイしたサウンドそのものにもっとフォーカスするような、スタジオという箱にきっちりと収まるような、そんなアルバムを作りたいと考えたんだよね。自分たちが気持ち良いと思える音を出して、レイヤーを重ねるようなプロダクションを加えたり加工したりせずに、それをそのまま出すような。もちろん、『Choose Your Weapon』のサウンド自体はかなり生っぽい感じだったけど、それを自分たちが気持ち良いと思えるところまで重ねていったんだよね。『Mood Valiant』はそこまで手を加えていないんだ。もっとサウンドそのものにフォーカスしてレコーディングした感じ。その経験が僕たちにとても多くのことを学ばせてくれたと思う。それに、そのときに収録しなかった曲がたくさん残っていたから、それを今回のアルバムに入れようということになっていたしね。『Mood Valiant』以降、未発表曲のカタログが充実していたのもあって状況的には良かったと思うよ。そういった曲のストックがあったから、レコーディング自体も前回の方法を引き継いでいくことになった感じだった。だから、『Mood Valiant』の次のアルバムはより短いスパンでリリースできる気がしていたし、実際に『Mood Valiant』を制作しているときからすでに、『Love Heart Cheat Code』の曲作りがはじまっていたとも言えるね。でも、そこから実際に制作に入ろうという時期に世界の全ての活動が2年もの間ストップしてしまって、それに巻き込まれる形で中断を余儀なくされてしまっていたんだ。

サイモン・マーヴィン(以下、SM):そうだね。『Mood Valiant』でライヴ・レコーディングした曲は、外部のスタジオで外部のエンジニアに助けてもらいながら録音したものだけど、今回はほとんどの曲を自分たちのスタジオでレコーディングしたんだ。“Cinnamon Temple” 以外はすべて自分たちのスタジオで録ったんじゃなかったかな。

PM:そうだね。“Cinnamon Temple” だけが唯一別のスタジオでレコーディングした曲だね。この曲は『Mood Valiant』のレコーディングを開始するよりも前に制作したものだからね。

SM:そうそう、早い時期にできた曲だよね。

PM:当初は『Choose Your Weapon』に収録しようと考えていたくらいだから。

SM:『Mood Valiant』に入れようという案も出ていたよね。とにかく、僕たちのレコーディングのプロセスは流動的というか。まずは自分たちでエンジニアを担当して曲作りをしてから、外部のエンジニアを招いて一緒に仕事をすることで、学ぶところも多かったし。新しいことをいろいろとやってみて、ときにはそれがうまく機能することもあるし、そうでないときもある。そうやっていろいろ試してみるのが僕たちのやり方なんだ。

ネイ・パームは『Love Heart Cheat Code』について、いままでのハイエイタス・カイヨーテに特徴的だった複雑な曲構成から、今回はよりシンプルな曲作りを意識したというような内容のコメントを残しています。これについて、いかがですか?

PM:それに関しては彼女の真意とは思えないというか、ちょっと曲解されてしまった気がするんだよね。このアルバムは実際に複雑な要素もたくさんあって、それが少し隠されているというか……隠されているというより、よりあからさまではない、なめらかな感じで表現されていると思うんだよね。複雑さがよりスムーズなものだった、とでも言うのかな。僕も改めて『Choose Your Weapon』やほかの過去の作品と今作を較べて振り返ってみたんだよ。『Choose Your Weapon』が今作に対してより複雑に聞こえるのは、特にプロダクションの面において自分たちで個々に制作をしたことも大きかったと思うんだ。その時期にどんなふうに作品作りをしていたのか、それを改めて認識できたのは面白かったけどね。そのときから比べると、今作はよりヒップホップの影響が強く出ているし、あえてバランスを欠くことでインパクトを与えるような作り方もしている。その上で、すべてがよりスムーズというか、なめらかになっていると思うんだ。聴いていてひっかかるような、不穏な要素は以前よりも控え目で、周波数的にも全てのレイヤーが粒立たない作りになっている。複雑な要素は多々あるけれど、ひとつひとつのレイヤーは意識して聴かなければわからないほどスムーズになっていると思うんだよね。

SM:そのとおりだね。それに、曲にもよるんじゃないかな。“How To Meet Yourself” では、たしか僕は一切オーヴァーダブを使わなかった気がするよ。

PM:そうだね。僕は少しだけサンプルを使ったけど、それも絶妙な感じでね。

SM:そうそう、刈り取って休耕地みたいな余白を設けることにしたんだよね。まあこれはひとつの例だけど、この曲に関してはよりシンプルなアプローチを採用したんだ。でも、ほかの曲はもっと深い作りになっているよ。とても真剣に、一生懸命作ったアルバムだからね。だから、ネイの発言に関しては少し引用違いだったんじゃないかと思うよ。

たとえばビートルズはソーシャル・メディアに出て行って、ファンに向かって話をしたり、自分たちの作品のプロモーションをすることはなかったんだからさ。(モス)

わかりました。“How To Meet Yourself” の話が出ましたが、この曲には中国の胡弓のような弦の音色が登場します。実際に胡弓を使っていたりするのですか? ハイエイタス・カイヨーテの場合、こうした民族楽器などを用いることもあると思うのですが。

PM:あの曲に使われているのはフレロという楽器だよ。

SM:テイラー・クロフォードという、メルボルン在住のすごく才能のあるミュージシャンがいるんだけど、彼は自分で楽器を発明して、それをフレロと名付けたんだ。フレロはフレットを取り付けたチェロみたいなもので、彼はフレロを自作するだけじゃなくて、本当に上手に演奏するんだ。それで、彼にこの曲でフレロを弾いて貰ったんだよ。僕たちのとても親しい友人なんだ。

なるほど。参加ミュージシャンはいま仰ったテイラー・クロフォードのほかに、トム・マーティン、ニコデモスなど、地元メルボルンのアーティストたちです。これまでもハイエイタス・カイヨーテ以外のプロジェクトやバンドなどで一緒にやってきたこともある人たちですが、どんな人たちなのか紹介してもらえますか?

SM:もちろん。トム・マーティンはギタリストで、プットバックスというほかのバンドで一緒にやっているメンバーだよ。彼は本当に才能のあるギタリストで、素晴らしいミュージシャンだから、ハイエイタスがはじまって以来、ずっと一緒に仕事をしてきたんだ。ニコデモスは僕たちの親しい友人だけど、コラボレーションするのは今回が初めてなんじゃないかな。彼自身も素晴らしいミュージシャンだよ。ハープ奏者のメリーナ・ファン・ルーウェンは、去年メルボルンでやったオーケストラとのパフォーマンスのときに一緒にステージに立ってくれた人だよ。あとは誰が参加してたっけ……思い出せない(笑)。

PM:君の友だちのヴァイオリンは?

SM:ああ、そうそう。フィル・ヒーリーは僕のすごく古い友だちで、何曲かでヴァイオリンを弾いてくれたんだ。このアルバムで、メルボルンのミュージシャン軍団と一緒にやれたのはすごく楽しかったよ。

PM:間違いないね。

では、今回の曲作りはどのようにおこなっていますか? いままでのようにメンバーのアイデアを広げたり、いくつかのアイデアを組み合わせたり、ブラッシュアップしたりという具合なのでしょうか? また、制作過程においていままでと何か変化があったりした部分はありますか?

SM:うん、変化はあったと思う。どのアルバムについても、全員が違うアプローチをしているからね。制作過程においていちばんわかりやすい変化としては、外部のプロデューサー兼エンジニアのマリオ・カルダート・ジュニアと一緒に仕事をしたことだね。すごく良い経験だったし、興味深かったよ。それに、このアルバムを早くリリースできたのは間違いなく彼がいたからだと思う。期間を決めて制作しなければいけなかったから、すごく一生懸命取り組んで、期間中に仕上げることに注力したからね。もちろん、みんなが聴いている完成版は僕たち自身で仕上げたものだけどね。レコーディング中に少し隙間を空けておいて、それを持ち帰ってレコーディングし直したりしたから。他のメンバーに訊いたら違う答えが返ってくるかもしれないけど、バンドを代表して言うと、そこがこれまでともっとも違う変化だと思う。これまでのアルバムほど手探りの感じはなかったかもしれない。というのも、どのアルバムに関しても最後の10パーセントは気が狂うような作業だったから。ミックスも自分たちでやるし、一緒にスタジオに入るのと同じくらい、別々のスタジオで作業したりもするしね。ときには脱線して、僕がパーカッションや変なサウンドを足したり、メロディアスなものを足したりする人もいれば、ポール・ベンダーが同じようにいろいろ付け足して、ネイがそこに入ってきて、ベンダーとハーモニーを奏でたりする。すごく細かいディテイルや磨き上げるためのアイデアがいろいろあって、最後の10パーセントで実験に実験を重ねて、金脈を探り当てようとする感じだよ。僕自身はセッションの中で、実際には聞こえないようなレイヤーをたくさん重ねて。レイヤーのアイデアはたくさんあるけど、もしかしたらその中のわずか3秒だけが、ひとつの部分で機能するかもしれないから、とにかく実験をしまくるんだ。今回ロサンゼルスでマリオと一緒にやったときは、そういうことは何ひとつしなかったよ。全曲の80パーセントはそこで仕上げたから。制作のプロセスはこれまでとは何もかも違っていたね。普段僕たちはその曲でどんなものを聴きたいか明確にわかっているから、録音ボタンを押して慌てて所定の位置に戻って演奏して、録音停止ボタンを押せばよかった。一方、誰かほかの人と一緒に制作するということは、自分がこれから何をやろうとしているのかを説明する必要があったんだ。そこにはコミュニケーションの壁が介在している。僕たちは長い間ずっと一緒にやってきたから、お互いの言語を理解していて特に説明する必要もなかったからね。でも、誰か他の人と一緒にやるのはすごく良い経験だったよ。少なくとも、僕たちに外部の人と共に制作することがどんなことなのか理解させてくれたから。それと、僕たちがいかにおかしなバンドで、いろいろなことをやっているけれど、いかにピンポイントなものを求めているのか、ってところに光を当ててくれたしね(笑)。

僕は自分たちの作品を素描画や絵画のように感じているし、「この作品の真意は?」と訊かれても、「わからない」としか言えないんだ。(モス)

それでは、その『Love Heart Cheat Code』全体のコンセプトやテーマをどのように表現しますか? 

PM:君が答える?

SM:えぇー。全体のコンセプトか……。

通訳:難しい質問だと思うんですけど。

SM:すごく難しいね(笑)。というのも、一曲一曲についてどんなテーマの曲にするかということに集中していたから。

PM:言ってみれば、このアルバムは曲の集合体という感じだからね。

SM:そうなんだよ。全体というよりも曲そのものという感じなんだ。でも、このアルバムを最初から最後まで通して聴いてみると、とても柔らかで明るくてポジティヴなエネルギーに溢れている感じがするんだよね。ほかのアルバムではそういう風に感じなかったけど、いくつかの曲には柔らかな手触りがあって、終わりに向かってかなりヘヴィなサウンドになっていくという。この数年間、そうしたサウンドからの影響ももう少し前面に出していくことを学んだんだ。でもまあ、全体を通して柔らかで優しい、ポジティヴな光に溢れたアルバムだと思うよ。表現するのがとても難しいけれどね。さっきも言ったけど、それぞれの曲によるからさ。スタジオではできる限りそれぞれの曲の作曲に敬意を払って制作したから、まとめるのはとても難しいね。

そうですよね。一方で、“Everything’s Beautiful” についてはYouTubeでポールとサイモンが制作過程を説明していますね。18分に渡ってかなり詳細に説明していますが、こうして内側を明かすのはかなり珍しいことではないかと思いますが、いかがですか?

PM:なぜ秘密を明かしたりしたんだ!(笑)。

SM:(笑)最近のテクノロジーのせいで、こうしたオンライン・コンテンツに駆り出されることが多くなってきてね。アーティストにもプレッシャーが掛かるようになってきたから、段々と慣れてはきたけれど。もちろん、そういうコンテンツで話すことが苦痛だとは言わないよ。曲の制作に関して、いくつかのポイントについて話をできるのはとても素晴らしことだと思うし。たとえば僕だったら、キーボードを使ってどんな部分をどんなふうに表現したのか聞いてみたいし、特定の楽器の周波数やシグナルのこととか、そうしたことについての理解を深めることができるのはすごく良いと思うから。どうやってあの重みのあるサウンドを実現したのか、それを知ることができるのは最高だよ。実際にそのアーティストと一緒にスタジオに入らなければ、そこまでの深い部分は知りようがないし、そんな機会は滅多にないからね。これは僕たちについても言えることで、僕たちは約15年も音楽をやってきて、言ってみれば古いバンドだよね。だからこそファンととても良い関係を築けてきたわけだし、僕たちの音楽を聴いてくれるオタクみたいな人たちもたくさんいる。そういう人たちに向けて、このレベルでの深い話をできるのはとてもありがたいことなんだ。

PM:クリエイティヴな人たちというのはとても興味深いよね。ファンの人たちが自分たちの聴いているアーティストとどういう形で繋がりたいのか、自分たちが聴いている音楽をどんなふうに分解してみたいのか。でも、アーティストというのは、音楽を作ることやステージでパフォーマンスを披露することには長けていても、ときとしてカメラに向かって自分のことを語るのに抵抗があったりもする。ある意味、とても怖いことだから(笑)。でも昨今では、そうしたことは多くのアーティストにとって当たり前のことにもなりつつあるよね。とはいえ、そういうことをアーティストに求めるのはまあ不自然なことかなぁと思うこともあるよ。これまでは、そんなことをする必要がなかったわけだから。もちろん、あちこちでインタヴューを受けるというのはこれまでもあったけど、たとえばビートルズはソーシャル・メディアに出て行って、ファンに向かって話をしたり、自分たちの作品のプロモーションをすることはなかったんだからさ。なかなかハードルの高いことだと思うけど、時代は変わっているからね。だから、アーティスト自身もそういう場所に行って話をすることに慣れていかなきゃいけない時代なんだよね。僕たちはまだそういうのにあまり慣れていなくて得意じゃないからさ、ファンにとっても僕たちにとってもまだ試行錯誤の段階という感じではあるよ。でも、けして悪いことじゃないと思うけどね。

SM:それは僕たちが歳を取ってるからだよ(笑)。

通訳:(笑)でも一ファンとしては、あの動画はとても興味深くて面白かったので、すべての曲について解説動画を出していただきたいと思いましたけど。

SM:ああ、それは良かった(笑)。ありがとう。

[[SplitPage]]

気がついたら、自分自身でもその曲のはじまりとはまったく違った世界にいるわけで、それこそがバンドとしての美徳だと思うし、正しいことだと思うんだ。複雑なアルゴリズムであり、僕たちはできればその正解には辿り着きたくないとさえ思っているんだ。(マーヴィン)

ところで、“Make Friends” のように人間関係について描いた作品があります。一方、“How To Meet Yourself” は自己について掘り下げたと思われる作品で、そうした自他の意識が『Love Heart Cheat Code』にはさまざまな形で表現されているのではないかと類推しますが、いかがでしょう?

PM:その質問は僕たち向けではないな~、歌詞はネイが書いているからね。でも、わかる部分だけで話すね。先週ネイと一緒にインタヴューを受けたんだけど、そのときに彼女が言っていたことに合点がいったんだ。これまでの彼女は、どうやって言葉に落とし込めばいいかわからないものを抱いていたんだけど、いまの彼女は自分自身について以前よりもリラックスしていて、自分自身と向き合うことや、さまざまなことに対して心地良く感じているそうなんだ。前作は、ネイがこれまでに経験してきたよりパーソナルな事象を歌っていたから、歌詞には彼女が感じた痛みが色濃く投影されていた。彼女がいかにしてその痛みを克服する術を学んだかということもね。今作は、サイモンもそうだと思うけど、僕たちみんながそういうものをすくい上げて昇華させた感じになっていると思うんだ。バンド自体がより軽やかになっていったことで、歌詞自体もより軽やかになったとでも言うのかな。彼女自身も軽さや明るさを感じていたと思う。彼女の言葉を肩代わりするつもりも、彼女が言わんとしていたことを誤解したくもないんだけど……つまりはそういうことを言っていたんだじゃないかと思うよ。結局は、違うフェーズに入ったということなんじゃないかな。時期が違えば、歌詞は違うものに感じるだろうし、感傷的に感じる部分も違ってくるだろうから。このアルバムは、僕には感覚的にはちょっと『Choose Your Weapon』とか、『Tawk Tomahawk』に近い感じがするんだ。そうだね、ファースト・アルバムの『Tawk Tomahawk』により近い感じかな。どのアルバムも違ったテイストの曲が収録されているけど、全体を通してまとまりのある雰囲気に仕上がっていると思うんだ。でも、今作はその点においてファーストにより近くて。『Mood Valiant』はいろんなテイストの曲が1枚のレコードに収められているけど、全体を通してひとつのテイストにまとめることに重きを置いたレコードだった。一方、『Choose Your Weapon』はとにかく何でもかんでも詰め込んだ感じの作りになっている。今作との共通点を感じるよ。今作はとても短いアルバムになっているけど、その中にヘヴィなものがあったり、ソフトなものがあったり、すごく振り幅の大きい作品になっているからね。サウンド的には、どの曲も全部違う雰囲気になっていると思うんだ。まあ、ネイに成り代わって話をするのは気が引けるからさ。僕が言えるのはそんなところだね。

わかりました。歌詞の世界観については改めてネイに訊くチャンスを待つことにしますね。では、先ほど“Cinnamon Temple”の話が出ましたが、この曲のタイトルはなかなか変わっていますよね。これはどういった曲なのでしょう? ライヴなどでも昔から演奏していますね。

PM:うん、長いこと演奏しているね。

SM:なぜこのタイトルになったかというと……おそらく、アシッドが見せた幻影みたいなイメージなんじゃないかな。演奏しているときに、そういうイメージが頭の中に浮かんだんだ。ベンダーが強烈なリード・ラインを思いついて、それに突き動かされるようにひとつの楽曲として形づくられた曲なんだよね。最初はインストゥルメンタルだったんだけど、後からそこにネイが歌詞を乗せて完成した曲だね。まあ、説明するのが難しい曲ではあるよ。というのも、この曲はもう6年くらい必ずライヴのレパートリーに加えられてきたから、それこそかなりの回数に渡って演奏しているし。他に言うこともないくらい(笑)。

彼(ショスタコーヴィチ)は戦争に従軍したことがあるんだけど、そのときに頭に弾片を浴びたらしいんだ。戦争から戻って来たら、頭の中で無調性のメロディが聞こえるようになったらしいんだよ。頭を傾けるとメロディが聞こえていたという伝説なんだけど。(マーヴィン)

そうなんですね。では、“White Rabbit”はジェファーソン・エアプレーンのカヴァーですよね。アメリカ西海岸のサイケデリック・カルチャー時代の1966年に作られた古い曲で、ルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』と『鏡の国のアリス』をモチーフにしていて、映画やフィルム作品などでも用いられたり、いろいろなアーティストによってカヴァーされてきた名曲でもあるのですが、今回はどうしてカヴァーしたのですか? また、エアプレーンのリード・シンガーだったグレース・スリックが作詞・作曲をしているのですが、それに対してネイ・パームはどのようなイメージで臨んだのでしょうか?

PM:この曲はジャム・セッションの中から生まれたものだったよね。サイモンとベンダーの昔のスタジオで。

SM:スタジオにはアリスとかっていう名前のミキシング・デスクがあって、そこに小さな白いウサギが乗っていて。ベンダーが曲の土台のようなものを作っているときにデスクを見たら小さな白いウサギがいて、それでこの土台を基に “White Rabbit” の歌を乗せたんだ。それで、突然曲ができたという感じ。その土台を基に組み立てていったら、ひとつの曲に仕上がったんだ。

PM:この曲にハーモニー的なリファレンスは存在しないということだね。この曲は導入部分がすべてで、そこからすべてがはじまっているとでも言うのかな。風変わりなディストーションのサウンドがあって、ネイがそれに合わせて歌うことで、この曲が組み立てられていったという感じだから、ハーモニーの面から引用したわけじゃないというか。デモがあって、たまたまそれに合わせて “White Rabbit” を歌って、その骨組みを支える部分を作ったりしてひとつの曲になったんだ。すごくゆっくり、少しずつピースを足したり、手を入れたり放っておいたりしながら時間をかけて完成した曲なんだけど。でも突然曲として成立したから、じゃあこの曲もアルバムに入れようということになって。そこから僕がさらに少し何か足したりして、完成させたんだよ。で、いまのこの形になったというわけ。

SM:そうだね。形になりはじめたのは、ハーモニー的な部分にサビを入れた頃じゃなかったかな。なんというか、ドビュッシー的な進行というか、なんかプレイしているうちにそういう感じになっていって、バラバラだったものをひとつにまとめたら、「おぉ、なんかやっと全体像が見えてきたぞ」という。最初の頃は野性味溢れるというか非常に荒削りというか、それでいてすごく良い感じのもので、それが段々と曲としてのまとまりを見せて行ったんだよね。この曲はアルバムの中でも僕のお気に入りのひとつなんだ。普段僕たちがやっていることとはかなりかけ離れているけれどね。加算を重ねていくうちに最終的に形を成していったん曲なんだ。

仰ったように “Cinnamon Temple” はかなりヘヴィなギターがフィーチャーされ、いままでになくロックのイメージが強い楽曲です。また、同じく “White Rabbit” にもかなりハードコアで混沌としたフレーズがあります。出世曲の “Nakamarra” などはネオ・ソウル的でポップなイメージが強かったわけですが、それとはかなり異なるタイプの曲で、あなたたちのイメージを覆すものと言えます。どうしてこうしたタイプの曲を入れたのですか? 意図的にこうしたタイプの曲を入れたのでしょうか。

PM:そのとおりだよ。それが僕たちだから。僕たちは膨大な量のインスピレーションを本当にいろいろなところから得ているからね。言ってみれば僕たちの作品はアートだから、そこに過剰な意味合いを持たせるつもりはないよ。アートスクールではひとつの絵画を細かく分析しようとするけど、僕にしてみたら「ただこの色たちを組み合わせたかっただけなんだけどな」って感じ。だから、僕は自分たちの作品を素描画や絵画のように感じているし、「この作品の真意は?」と訊かれても、「わからない」としか言えないんだ。分析して翻訳できるようなものではないからね。音楽は主観的なものだから、これを聴いた人が好きに受け取ってくれたらいいし。

SM:そのとおりだね。聴き手が考えるよりも、もっとずっとシンプルなものだと思うよ。僕たちが好きかどうか、基本的にはその感覚だけでやっているから。

PM:それだね。僕たちは自分たちが好きではないものを取り入れたことは一度もないから。もちろん、メンバーのひとりがちょっと目立たない後方に回るようなことはあるけど、基本的にはみんなで一緒になって楽しんで作る感じだよ。それと、ハイエイタスにはもうひとつとても重要な要素があって、それがライヴでのパフォーマンスなんだ。ライヴで演奏すると最高の気分になれるのに、いざレコーディングするとライヴほどのエネルギーを感じなくなってしまう曲もあったりするけど、それでもずっとライヴでやってきた曲をレコーディングしてみんなに届けたいという思いもあるし。その逆もまたしかりでね。レコーディングしたものもとても良かったけど、ライヴで演奏してみたらレコーディングしたときには想像もしなかったほど良くなったりする曲もあるんだ。そのどちらもがお互いに良い作用をもたらすと思う。もしリリースする前に演奏したとすると、これからどんなふうにプロデュースして完成させればいいか、その方向性を示してくれることもある。一方で、最近ではリリース前に演奏することはしないようにもしているんだよね。興味深いいきさつではあるんだけど、ここのところはそういうことにしていて。レコーディングしたものをどんなふうに演奏するかすごく考えるし、僕たちにとってはまたレコーディングとは違った大きな挑戦だけど、すごく楽しいよ。バンドにとってとても重要な要素のひとつだし、そのことについて僕たちは本当に真剣に向き合っているんだ。レコードとパフォーマンスを同列に並べることは良いことだと思っているからね。それと同時に、それぞれを異なるものとしても扱っているんだ。実際のところ違う感覚もあるしね。ただ、その背後にある実際の思考というものは、残念ながらそれほど深い意味を持っていないんだよ。

SM:そうだね。僕たちはこれまで、好んでジャンルに縛られようと思ったことは一度もないからね。

PM:「どんな音楽をプレイしているんだ?」と訊かれても答えに窮するよね。すべてが僕たちのサウンドで、僕たちはあらゆるジャンルからいろいろなものを採り入れているんだ。それって本当に大事なことだと思うし、僕たち全員が音楽的に頑固……良い意味でとても頑固なんだ。個々それぞれが自分たちのアイデアを主張しつつも、バンドとしてひとつのまとまりあるサウンドを創ろうとしているんだよ。そうすることをお互いに許し合っている関係なんだ。僕がとある曲を思いついて作りはじめたとしても、最終的にでき上がったものは僕が自分の頭の中で聴いていたものとけして同じにはならない。必ず違ったものになる。それは誰にとっても同じで、僕たちがほかのメンバーに100パーセントのクリエイティヴな自由を与え合っているからなんだよ。もし僕が「これはさすがにやり過ぎじゃないか?」と感じたら、誰かが「オーケー、少し引き算をしよう」ってうまくまとめてくれる。「これはどう?」「こうしたらいいんじゃない?」って、僕のアイデアに寄り添うような案をいろいろ出して、当初のアイデアを最大限に活かしてくれる。どの曲についても、誰もが自分の意見をためらわずに言える環境だからこそ、でき上がった曲は伝えたいメッセージを届けることができるものになるんだ。

SM:それだけたくさんの声が入ってきて、もともとの作曲の道筋を変えてしまうんだから、ジャンルを定義するのはとても難しいよね。気がついたら、自分自身でもその曲のはじまりとはまったく違った世界にいるわけで、それこそがバンドとしての美徳だと思うし、正しいことだと思うんだ。複雑なアルゴリズムであり、僕たちはできればその正解には辿り着きたくないとさえ思っているんだ。

PM:そのとおりだよ。その瞬間こそが最大であり最高のものだと思う。『Choose Your Weapon』は僕たちにとっても重要な時期だった。僕たちはまだまだ一緒に曲作りをすることに慣れていなかったから、たとえばサイモンやベンダーが何かフレーズを弾いたとして、僕にはそれが彼らの聴いているものとは全く違ったものに聞こえていたんだ。そこで僕がすごくソリッドでハードなビートを刻んだら、意味がわからないという顔をするわけだよ。それで、「ああ、これは彼らが意図していたものじゃないんだな」って知ることになる。それで、慌てて「こんな感じかな? これだったらどうかな?」っていろいろやってみるんだけど、彼らは「いやいや、好きなように続けて。ただ好きなようにやってみればいいんだよ。後でどういうふうにまとめられるか考えるからさ」ってね。で、結局めちゃくちゃロッキンなサウンドの曲になったりして。最初にイメージしていたものとはまったく違うものになるわけだけど、みんなが同じ考え方をして、同じ方向に向かっていたらつまらないサウンドしか生まれないと思う。だからこそ、僕たちはお互いの背中を押し合って切磋琢磨しているんだ。ただ、僕たちはそれぞれ違う人間だけど、そこには絶対的なスピリットがあって、似通った感じ方や感性を共有していると思う。誰かを型にはめるようなことはしたくないけど、特に僕とネイは同じような感性を持っていると思うな。僕たちの作るものは、ちょっと荒削りというか。これは僕個人の意見に過ぎないけど、逆にサイモンとベンダーはなめらかな手触りに仕上げてくれるような気がする。スムーズに全体をまとめてくれて、すごく心地好いものにしてくれるんだ。ネイと僕は散らかったアイデアが四方八方から湧いてくる感じなんだけど、それをみんなは理解しようと努めてくれて、最終的にひとつの曲にきちんとまとめてくれるんだよね。そうだね。僕たちはただ、気持ち良いと思えるものを演っているだけなんだ。おかしな話だけど、とても素敵なことなんじゃないかと思ってるよ。

愛というものは容易に、人生における隠しコマンドになる可能性があるという受け取り方もあるかもね。愛があれば、その愛と共に人生を前進させることができる。そこから、その隠しコマンドが人生における成功や幸福をもたらしてくれるんだ。(モス)

よくわかりました。では、他の楽曲についても訊かせてください。“Dreamboat” には美しいオーケストレーションがフィーチャーされます。このアレンジは『Choose Your Weapon』で共演したミゲル・アットウッド・ファーガソン、もしくは『Mood Valiant』で共演したアルトゥール・ヴェロカイによるものですか?

SM:ええ……覚えてないな(笑)。

PM:(爆笑)僕も覚えてないよ。サイモンかベンダーが覚えてるはずだろ。

SM:いや。全部自分たちでやったんじゃないかな。最近は以前に比べてベンダーがチェロを弾くこともかなり増えたし、チェロをいろいろな部分に散りばめているんだ。素晴らしいトランペット奏者……とてもクリエイティヴな、ジミー・ボウマンというメルボルンのミュージシャンが参加してくれて、管楽器のセクションがとても充実したしね。僕はメロトロンやシンセを弾いて、ハープ奏者のメリーナに参加してもらって……というふうに、自分たちで素材を作ってそれをひとつにまとめた感じだね。もともとはオーケストラと一緒にライヴ演奏するためのアレンジがあったけど、このアルバムに向けて自分たちで全部やることにしたんだよね。

PM:この曲はもともとサイモンが書いた曲で、オーケストラ向けに作曲したものなんだ。オリジナルもすごくクールだけど、このアルバムに収録されているものほどグラマラスな感じではないというか……でも、オーケストラで演奏するのにぴったりのヴァージョンだったんだ。

SM:僕はこの曲がハイエイタスの曲になることは全然想定していなかったんだよ。よくあることなんだけどね。『Mood Valiant』の “Stone Or Lavender” にしてもそうだったよ。曲を書いた時点ではハイエイタスの曲になることは考えていなかったんだ。ただこの曲をプレイしたら、ネイが「それ何?」って興味を示して、次の日に歌詞を書いてきたんだよ(笑)。それで、「ああ、オーケー、これはハイエイタスの曲になるんだね」って。そういう面白いことがときどき起きるんだよね。でもすごく新鮮な感じだった。

他にも “Dimitri” や “BMO is Beautiful” などは注釈が必要な曲に思いますが、どんな曲ですか?

SM:たぶん合ってると思うけど、“Dimitri” はショスタコーヴィチについての曲だよね? 彼はロシアの作曲家でありピアニストである人物なんだけど、彼に関する伝説みたいな話があってね。彼は戦争に従軍したことがあるんだけど、そのときに頭に弾片を浴びたらしいんだ。戦争から戻って来たら、頭の中で無調性のメロディが聞こえるようになったらしいんだよ。頭を傾けるとメロディが聞こえていたという伝説なんだけど。この曲はベンダーが土台の部分を書いたから、全編を通してベース・コードが鳴っているんだけど、そこからベンダーとネイが曲に仕上げていったんだ。ネイは曲を書くのが本当に速くて。異常なくらいひとつの曲として成立させるのが速いんだよね。それが彼女の持つたくさんの才能のひとつでもあるんだけど。僕が知らないうちに素晴らしい “Dimitri” の基礎ができ上がっていたから、僕とペリンは自分たちのパートをそれに乗せれば良かったという感じだよ。この曲では僕がベースを弾いているんだけど、ペリンがコードのある楽器を弾きたがっていたから、そっちのパートをお願いして……「君にコードはお願いして、僕はベースを弾こうかな」ってね(笑)。まあそれはそれで良かったんだけど。

PM:(笑)次のアルバムでは、ドラムを叩きながら歌でも歌おうかな。

SM:一方、“BMO is Beautiful” では僕はベースを弾いていなくて、ベンダーがベースを弾いている曲だよ。この曲は次の “Everything’s Beautiful” へのイントロみたいな曲で、僕たちのお気に入りのアニメ・キャラクターがフィーチャーされているんだ。『Adventure Time』のビーモだよ。実はビーモ役の女優のニキ・ヤングがレコーディングに参加してくれて、とてもラッキーだったね。ちょっとキュートな間奏曲という感じで、楽しんで制作したよ。

“Longcat” についてはいかがでしょうか? ネットで話題になった日本の白い猫のことを指しているのですか?

SM:ベンダーがベースのヘッドに小さなぬいぐるみをぶら下げてて、そこから取ったタイトルなんだ。多分日本で買ったもので細長い猫だから、きっとその日本の猫と同じものかもしれないね。

では、「Love Heart Cheat Code」というタイトルについてお訊きします。「Cheat Code」はゲーム用語の隠しコマンドのようですが、そうしたゲームとかメタバース的なものも関係しているのでしょうか?

PM:そのタイトルについての解釈は自由だよ。アルバムのタイトルとしても、曲のタイトルとしてもね。受け手に自由に解釈してもらえたらと思ってるんだ。ただ、愛というものは容易に、人生における隠しコマンドになる可能性があるという受け取り方もあるかもね。愛があれば、その愛と共に人生を前進させることができる。そこから、その隠しコマンドが人生における成功や幸福をもたらしてくれるんだ。もちろん、いろいろな解釈や見方があると思うけどね。もし君がゲーマーで、ゲーム的な受け取り方をするんだったらそれはそれで良いと思うし。人生の頂点に達することが何を意味するのか? そこまで掘り下げてもいいんだ。とにかく、解釈はいつだって自由なものなのさ。

わかりました。それでは、毎回個性的で面白いアートワークをフィーチャーしたアルバム・ジャケットで、それもまたハイエイタス・カイヨーテの魅力のひとつになっているのですが、今回のアートワークについて説明してもらえますか?

PM:ネイの友だちのアーティストだったよね? ラジニ・ペレラというアーティストが書いた絵画だけど、ある晩にこのアートワークを見せてもらって、僕たち全員がすごく深く共鳴した感じがしたよ。このアートワークをアルバム・ジャケットにしようと決めるのは、本当に簡単だった。以前の作品のときは、それこそジャケットを決めるのに本当に苦心したんだけど、今回はすごくスムーズに決まったね。とても良い作品だと思ったし、このアルバムにぴったりだと思ったよ。

SM:そうだね。完璧な作品だと思う。

では最後に、『Love Heart Cheat Code』についてリスナーへのメッセージをお願いします。

SM:このニュー・アルバムを聴いてくれる人たちが楽しんでくれることを心から願っているよ。このアルバムを作るのは本当に楽しかったし、11月に来日するときにはライヴで演奏できるのをとても楽しみにしているよ。2公演が予定されているんだけど、それまでにしっかり仕上げておくからね。日本公演は世界ツアーの最後の方だから、それまでにはかなりウォーミングアップされているはずだよ。

PM:めちゃくちゃ演奏がうまくなって、全部の曲を2倍速でプレイするかもね(笑)。

通訳:時間的には短いけれど、濃厚なショーになりそうですね(笑)。

PM:20分くらいのショーになったりして(笑)。

Aphex Twin - ele-king

 問答無用。昨年は趣向を凝らしたシングル「Blackbox Life Recorder 21f / in a room7 F760」でわれわれをわくわくさせてくれたエイフェックス・ツインだけれど、新たな朗報の到着だ。この3月に30周年を迎えた1994年の問題作にして名作『Selected Ambient Works Volume II』が新装版となって蘇ることになった。
 CD3枚組、LP4枚組に再編された同作には、これまでLPでしか聴けなかった “#19”、フィジカルではリリースされていなかった “th1 [evnslower]”、今回初の公式リリースとなる “Rhubarb Orc. 19.53 Rev” が追加音源として収録される。発売は10月4日。というわけで、稀代のアルバムをあらためていま大いに楽しもうではないか。

 ちなみにele-kig booksからは『Selected Ambient Works Volume II』の秘密をさぐる書籍『エイフェックス・ツイン、自分だけのチルアウト・ルーム』を刊行しています。ぜひそちらもチェックしてみてください。

エイフェックス・ツイン
〈WARP〉第一弾アルバムにして
音楽史に残るアンビエントの大名盤
『Selected Ambient Works Volume II』

30周年記念新装エクスパンデッド・エディション発売決定!
・日本限定3枚組CDボックスセット
・日本語帯付き4枚組LP
・Tシャツ付セット
予約受付スタート!

これまでLP盤のみでしか聴けなかったレア音源
「#19」公開!

エイフェックス・ツインことリチャード・D・ジェイムスが、1994年に若干22歳で発表した音楽史に残るアンビエントの大名盤『Selected Ambient Works Volume II』。エイフェックス・ツインにとっては〈WARP〉移籍後第一弾アルバムでもある記念碑的作品が、リリースから30周年を迎え、追加音源を加えた新装エクスパンデッド・エディションでリリースされることが発表された。

今回の30周年記念新装エクスパンデッド・エディションは、日本限定3枚組CDボックスセット、日本語帯付き4枚組LP、輸入盤3枚組CD、輸入盤4枚組LP、そしてTシャツ付セット(日本限定3枚組CDボックスセット/日本語帯付き4枚組LP)の形態でリリースされる。また、これまでLP盤のみでしか聴けなかった「#19」、初めてフィジカル・フォーマットでリリースされる「th1 [evnslower]」、今回初めて公式リリースされる「Rhubarb Orc. 19.53 Rev」が追加音源として収録される。また今回の発表に合わせて「#19」が公開された。

日本限定3枚組CDボックスセット

輸入盤3枚組CD

輸入盤4枚組LP

日本限定3枚組CDボックス+Tシャツセット

日本語帯付き4枚組LP+Tシャツセット

Aphex Twin - #19
https://youtu.be/iHzuygQd3do

新装盤となったエクスパンデッド・エディションのデザインは、オリジナルのアートワークを手がけ、エイフェックス・ツインの代名詞でもあるロゴもデザインしたポール・ニコルソンが担当している。

[3CD Tracklist』
CD01 - 1. #1
CD01 - 2. #2
CD01 - 3. #3
CD01 - 4. #4
CD01 - 5. #5
CD01 - 6. #6
CD01 - 7. #7
CD01 - 8. #8
CD01 - 9. #9

CD02 - 1. #10
CD02 - 2. #11
CD02 - 3. #12
CD02 - 4. Blue Calx
CD02 - 5. #14
CD02 - 6. #15
CD02 - 7. #16
CD02 - 8. #17
CD02 - 9. #18
CD02 - 10. #19 

CD03 - 1. #20
CD03 - 2. #21
CD03 - 3. #22
CD03 - 4. #23
CD03 - 5. #24
CD03 - 6. #25
CD03 - 7. th1 [evnslower]
CD03 - 8. Rhubarb Orc. 19.53 Rev

[4LP Tracklist]
A1. #1
A2. #2
A3. #3

B1. #4
B2. #5
B3. #6
B4. #7

C1. #8
C2. #9
C3. #10

D1. #11
D2. #12
D3. Blue Calx
D4. #14

E1. #15
E2. #16
E3. #17
E4. #18

F1. #19
F2. #20
F3. #21

G1. #22
G2. #23
G3. #24

H1. #25
H2. th1 [evnslower]
H3. Rhubarb Orc. 19.53 Rev

label: Warp Records
artist: Aphex Twin
title: Selected Ambient Works Volume II (Expanded Edition)
release: 2024.10.4

日本限定3枚組CDボックスセット:¥6,000+tax
日本語帯付き4枚組LP:¥10,400+tax
輸入盤3枚組CD:¥3,800+tax
輸入盤4枚組LP:¥10,000+tax
日本限定3枚組CDボックスセット+Tシャツ:¥11,000+tax
日本語帯付き4枚組LP+Tシャツ:¥15,200+tax
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=14189

Jeff Mills - ele-king

 去る4月、戸川純をフィーチャーした舞台作品およびそのサウンドトラックで注目を集めたジェフ・ミルズ。早くもニュー・アルバムの登場だ。題して『The Eyewitness(目撃者、証人)』、発売は7月5日。いかにしてメンタル・ヘルスの状態を良好に保つか、その対処法を示すためにつくられたアルバムだという。
 先行シングルとして、“Those Who Worked Against U” が昨日6月18日にリリースされている。ジミ・ヘンドリックスの “星条旗” にインスパイアされたこの曲は、わたしたち自身について、わたしたちの世界について、わたしたちが未来に向かう道筋について再考するときがあらためて訪れているのではないかという、その目覚めのコール、警鐘なのだそうだ。

 アルバムに寄せられたミルズのメッセージは下記より。


トラウマとその衝撃効果、つまり厳しい現実の残滓はあまりに影響力が強いため、自分をとりまくみんなやあらゆることについて、想像をめぐらせたり、いいことを思い描いたり、そのなかでみずからの立場を見定めたりする方法を固めてしまいます。新しいタイプの心理的な輪が発達し、境界が強化され、人間関係は後退、傷ついたちっぽけなシステムはあてもなく漂うことになります。価値ある目的を連想させるいかなるものに対しても脆弱に、また、そうしたものによってこそ脆弱になります。事実についての真実は嘲笑的な独白に、批判的な調整を欠いた行き場のない表現になります。わたしたちはみな、以前そうなってしまっただれか、もしくはこれからそうなるだろうだれかを知っているはずです。
──ジェフ・ミルズ

Artist: Jeff Mills
Title: The Eyewitness
Format: Double vinyl / Digital album
Label: Axis Records
Release date: 05.07.24

Single ‘Those Who Worked Against Us’
out 18.06.24

Tracklist:
A1. In A Traumatized World
A2. Menticide
B1. Those Who Work Against Us
B2. Surge Complex
C1. Indoctrination
C2. Wonderous Butterfly
D1. Menticide (Repeat Victimization)
D2. No Safe Place
D3. Mass Hypnosis

Burial / Kode9 - ele-king

 ベリアルとコード9からサプライズです。両者によるスプリット・シングル「Phoneglow / Eyes Go Blank」が本日6月18日、ディジタルでリリースされています(MP3/WAV/FLAC)。〈Hyperdub〉のページによると、夏には12インチも控えているようです。ふたりのタッグは昨年の『Fabriclive 100』のEP以来。今年初頭、〈XL〉からのリリースで話題をさらったベリアルですが、ちゃんと〈Hyperdub〉とも関係が続いているようですね。しかし、ジャングルを独自進化させるコード9に対し、ベリアルのこのビートは……ぜひ自分の耳で確かめてください。

https://hyperdub.net/products/burial-kode9-phoneglow-eyes-go-blank

Larry Levan 70th Birthday Bash - ele-king

 まごうことなきレジェンド。1977年からNYのクラブ《パラダイス・ガラージ》のDJとして活躍、そこでかかっていた音楽がガラージと呼ばれるようになったわけだが、後世のダンス・ミュージックに多大な影響を与えたこのラリー・レヴァン(92年没)の生誕70周年を祝し、新宿ブリッジにて記念パーティが開かれることになった。
 7月5日(金)にはフランスからディミトリ・フロム・パリが来日、MURO、discoSARAとともに副都心の夜を彩る。7月14日(日)にはラリー・レヴァンから後継者に指名されたヴィクター・ロサドがロング・セットを披露。そしてラリー・レヴァンの誕生日7月20日(土)には、彼と親交のあった高橋透とDJ Noriが愛とリスペクトを込めたプレイを堪能させてくれる予定だ。なんとも豪華な3連打、この7月は新宿でアツい夜を過ごしたい。

日本のクラブシーンの黎明期に多大な影響を与えたニューヨークの聖地Paradise Garage。世界中にガラージサウンドの信奉者を生み出した伝説のDJ、Larry Levanの誕生日は7月20日、もし彼が生きていれば70歳である。

DJ BAR Bridge SHINJUKUでは、7月5日(金)数々の傑作リミックスワークをリリースしているKing of Disco Dimitri from Parisが登場しKing of Diggin’ Muroと共演。7月14日(日)には生前のLarryが自らの後継者に指名したVictor Rosadoがオープンtoクローズのロングセットを披露。そしてLarryの誕生日当日である7月20日(土)は東京の伝説的なクラブGoldにてレジデントDJを務めたTohru TakahashiとDJ Noriの2人が出演する。

Larry Levan live at Paradise Garage 1985
https://youtu.be/luAx0xKWiRo?si=kzYt599ad20kS5NV

7月5日(金)
World Connection - Dimitri from Paris -

Lineup:
Dimitri from Paris
MURO
discoSARA

Open: 20:00 Start: 21:00
Door ¥2000

昨年7月にもダンスフロアを大いに沸かせたフランスからの刺客、Dimitri from Parisが今年も新宿Bridgeに帰ってくる。昨年のDJ NORIに続きCAPTAIN VINYLからMUROとの共演が決定、ハッピーヴァイブス全開のdiscoSARAもデッキに立ち、心と体を解放してくれる一夜となるだろう。

Glitterbox Radio Show 364: Dimitri From Paris Takeover
https://soundcloud.com/glitterboxibiza/glitterbox-radio-show-364-dimitri-from-paris-takeover

7月14日(日/祝前日)
World Connection - Victor Rosado all night long -

Lineup:
Victor Rosado

Open: 20:00 Start: 22:00
Door: ¥2000

1987年惜しまれながらクローズしたNYのクラブParadise GarageのレジデントDJ、Larry Levanに唯一、次のLarryになる素質を見込まれ寵愛されたVictor Rosadoが7時間セットを聴かせてくれる。
今回は、REY AUDIO製ロータリーミキサーDJM-1、レコードプレイヤーには、Space Lab YELLOWでも使用していたTHORENS TD521 + SME トーンアーム309 + MCカードリッジのセッティングで音源本来の力を引き出す。最高な音とNYの黄金時代が生んだレジェンドDJの技術とセンスが生み出すサイケデリック空間を体験してほしい。

Victor Rosado fabric Promo Mix
https://www.mixcloud.com/fabric_London/victor-rosado-fabric-promo-mix/

7月20日(土)
Larry Levan 70th Birthday Bash!!

Lineup:
Tohru Takahashi
DJ NORI

Open: 20:00 Start: 22:00
Door: ¥1500

NYの伝説のクラブ、Paradise GarageでGarage soundと呼ばれるスタイルを確立した真の伝説のDJ、Larry Levan。生きていれば今年70歳になる7月20日、珍しくTohru Takahashiから「ラリーのバースデイバッシュをやろう!」とDJ NORIに声がかかった。Paradise Garageを体験し、Larryとも親交のあった2人の想いは計り知れず、偉大な先駆者への愛とリスペクトを込めた貴重な音楽体験になるだろう。

interview with John Cale - ele-king

 ジョン・ケイルほどの充実したキャリアがあると、どこから話をはじめればいいのかわからない。ウェールズの小さな村ガーナントで、近所の教会でオルガンを弾き、地元の炭鉱労働組合の図書館が収蔵する楽譜に熱中したのがはじまりかもしれない。ロンドンでフルクサスの芸術家コミュニティと協働していた時期や、アメリカで名前の似たジョン・ケージやラ・モンテ・ヤングと一緒に活動していた時期もある。ヴェルヴェット・アンダーグラウンドでロックのオルタナティヴな領域まるごとの基盤を築きもした──そこから派生するもうひとつのロック史を、モダン・ラヴァーズやパティ・スミスやハッピー・マンデーズなどのプロデュース仕事を通じて育んだことは言うまでもない。彼の長く多彩なソロ活動のどの時点でも物語の入口となる。
 しかし、彼のすばらしい最新アルバム『Poptical Illusion』は、ジョン・ケイルの現在地とそこに至る歴史の両方への窓口として、ごく自然な出発点となるだろう。
 ケイルはこのアルバムのタイトルにあまり大きな意味を持たせたくないようだが、これは本当に内容を表している。『Poptical Illusion』をポップ・アルバムとして聴くことは可能だし、1曲目の “God Made Me Do It (Don't ask me again) ” から、フックとメロディーと結晶のように完璧なプロダクションが差し出される──その意味で、ここにはポップを求める人に発見されるべきものがたしかにある。
 幻想的な側面はより制約から自由だ。あらゆるポップは幻想やファンタジーの技なのだという感覚がある。それは悲しみの物語を伝えるときでさえ、すべて大丈夫だと嘘をつき、慣れ親しんだコードやメロディーであなたを心地よく抱擁し、期待通りに解決してくれる。だが、それはジョン・ケイルのやりかたではない。ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの頃から、彼の音楽はつねに慣れ親しんだものを転覆させ期待を裏切るやりかたを見出してきた。彼のソロ活動はひとつの成功を定型化することを決してよしとしない道のりをたどってきた。初期にはテリー・ライリーと大部分がインストゥルメンタルのコラボレーションをおこない、評価の高い1973年のアルバム『Paris 1919』では繊細なチェンバー・ポップを、続く『Fear』や『Slow Dazzle』では全体的により荒涼とした、歪んで揺れる脱構築されたロックンロールを聴かせた。以降、彼はクラシックとアヴァンギャルドとポップの極致を探求し、決してひとつの場所に留まることなく、つねに次へと動き続けている。
 『Poptical Illusion』自体が多彩なアーティストたちとのコラボレーションを特徴とした前作『Mercy』からの変化を示しており、今回はより音楽的に自己充足した世界となっている。とはいえ、作品のテーマやケイル独自の豊かなヴォーカル、そして歌詞には連続性がある。初期にルー・リードとつながりがあったからだろうか、ケイルは作詞家としては十分に評価されていないようだが、彼はストーリーを理解するのに必要な情報のほとんどを行間に置いて語り人を惑わせる才能がある。曲中の登場人物が恐怖や不安や憂鬱を表現し、それらの文脈となる出来事や行動を断片的にしか明かさないやりかたは、M・ジョン・ハリスンやアラン・ロブ=グリエのような作家たちの不安げでありながら解き放たれた雰囲気を想起させる文学的な色合いを、この新しいアルバムにもたらしている。
 そしてケイルの音楽的な多様性に関して言えば、『Poptical Illusion』には、 “Calling You Out ” の途中でキーが外れて胃が痛くなるような急展開や、 “Shark Shark ” のキャッチーなフックのループを通して何層にも重なってゆくディストーションなど、彼の過去の作品に通じる慣れ親しんだものを脱臼させる感覚がある。
 このアルバムのリリースに先立って、ロサンゼルスの自宅にいるケイルにオンラインで話を聞いた(以下の会話は簡潔性と流れを重視して編集されている)。

図書館はすごく重要だった。あの小さな小さな建物の一室にあらゆる本が揃っていて、そこからたくさんのことを学んだ。

あなたの新しいアルバム『Poptical Illusion』は昨年の『Mercy』から間を置かずにリリースされますね。

JC:できるだけたくさんの仕事をしようとしているんだ。きっかけはロックダウンだった。あれが起こったとき一緒にやってくれる人が周りに誰もいなくて、突然、自分がいつまで仕事をやっていけるのかわからなくなった。本当に周りに人がいなかった。だから動き出したらできるだけたくさんの仕事をしようとした。その結果、プロジェクトの最後まで自分でかなり精力的に取り組むことになった。最終的にはこの成り行きにとても満足した──音楽にはたくさんのアイデアと、さまざまな種類の攻撃性があった。完成に至ったときにはたくさんの曲ができていた。期待していなかったことだけれど、とても満足していたんだ。

すべての曲が他のアーティストとのコラボレーションだった『Mercy』に比べると、新作はより自己充足している感じがします。それはパンデミックの影響ですか?

JC:そうだね。私はただ仕事に取りかかり、自分が音楽に求めるある種の攻撃性を掴んだ。ほんの少し楽になったよ。だけど、あのアルバムが完成してからたくさんの曲を書いたし、このアルバムがあったからすぐに出すのはまあ簡単なんだ。

ある種の攻撃性とおっしゃいましたが……

JC:まあ、それは作品を完成させられるか本当に不安だったから生まれたものだね。

これはまた違う種類の攻撃性かもしれませんが、いくつかのテーマは『Mercy』から続いているように感じます。歌詞はおそらく抽象的だったり斜めからアプローチしているのかもしれませんが、そこには現在進行中の社会の崩壊という一本の線が引かれているようです。

JC:そう、それが歌詞を書くことの魅力のひとつだ。さまざまな言葉の使いかたがある。ものごとの混沌とした側面が自分にとっては本当に魅力的なんだ。ただ要求に合わせようとして、自分の詩的な側面が無視されていることを確認するだけの話じゃない。

あなたは過去に、作詞家としてのルー・リードと曲を作ってよかったことに、彼がものごとの矛盾を扱うのがとても上手かったことがあると言っていましたね。

JC:ああ、そうとも言えるね。つまり、私はそれを心に刻んでいた。混沌が受け入れられるということが自分にとってとても重要だったんだ。

あなたの過去の作品にはディラン・トマスの影響もあるように感じます。

JC:というか、そうしようとしているんだよ! うまくいかないとき、「どうなろうがディラン・トマスの詩を全部音楽にしてやるぞ!」と言った。それは挑戦だった。すごく力強い詩の感覚を持っている人物を相手にしているわけだから、そこからできる限り吸収して学ぼうとしたけど、彼のリズム感はただただ圧倒的だ。ウェールズで育つと、「わあ、僕もこんなふうにできたらいいのに!」と思うようになることのひとつだね。すごく重要なことだ……「わかった、やってみろ! 心配しないで、やるしかない!」ってね。

ディラン・トマスの詩を音楽に合わせるのに本格的に取り組んだのは、『Words for the Dying』でしたね。

JC:そのとおり。

自分はウェールズ系の家庭で育ったので、彼の作品の重要性はよくわかります。つまり、ウェールズからの影響というのは、ずいぶん前にそこから離れているにもかかわらず、あなたがたびたび戻ってくる主題だと思うのですが。

JC:(笑)そうだね、それは認めるよ! ウェールズという土地のあたたかさと寛大さに一度気づくと、それはずっと心に残り続けるんだ。誰かに腹を立てるだけで無くなるものじゃない。特にその遊び心。 “Davies and Wales ” を書いたときはそういうユーモアの一面があらわれていて、自分としては満足だ。そして “Shark Shark ” にも、その領域に通じるある種の陽気さがある。

“Davies and Wales ” と聞いて思い出されたのは、自分の家族のウェールズ系の人びとが80年代から90年代にかけて、ジョナサン・デイヴィスがキャプテンを務めていた頃のラグビーを観戦していたことでした。

JC:私はラグビー的感性が織り込まれていることについて聞かれ続けてるよ!

年に一度、シックス・ネイションズ、当時はファイブ・ネイションズ(※ラグビーの国際選手権大会)の期間中に、母が「デイヴィスとウェールズ! カムリュ・アム・ベス!(※ウェールズ語で「ウェールズよ永遠に」)」と叫ぶのが聞こえてくるようでした。

JC:ファイブ・ネイションズ、ちょっと怖いね。ある意味笑えるし、活気と喜びに満ちあふれているけど、それと同時に他のどこでも同じような過ちが犯されてきた可能性がたくさんある。

そこにはある種の暴力性も潜んでいるかもしれませんね。

JC:間違いない。

ウェールズでの少年時代、あなたにとって故郷の村の図書館がとても重要だったと読んだことがあります。

JC:図書館はすごく重要だった。あの小さな小さな建物の一室にあらゆる本が揃っていて、そこからたくさんのことを学んだ。そこに行って探している本が見つからないときは、本の名前を言えば走って取ってきてくれた。バートランド・ラッセルやウィトゲンシュタインなんかの哲学者だったら1週間以内に手元に届いた。でも、音楽は(ロンドンの)メリルボーン公共図書館から取り寄せることになって、そこが楽譜を手配してくれたんだ。シェーンベルクやもっと無名の作曲家が欲しかったりすると彼らが買ってくれる。図書館はとても重要だった。たとえばハウベンシュトック=ラマティの音楽が欲しいとき──図書館のなかでもっともすばらしく、もっとも知られていない曲のひとつだった!──それが突然に自分の手のうちにやってくるんだから、すごくわくわくしたよ。

あの時点で私たちがやろうとしたことを本当にやった人はまだ誰もいなかった。つまり、ルーはそれに夢中になり、私はなんとしてもその境界線を壊してやろうとしていた。自分たちはいい線いってたと思う!

今朝起きてソーシャルメディアのフィードで目にした最初のニュースは、アイダホ州にあるそういう小さな図書館の話でした。新しい州法によって子どもが本にアクセスすることが法的に難しくなりすぎたという理由で、子どもが図書館を利用できなくなったというのです。あなたの新しいアルバムにある歌詞、「右翼が図書館を焼き払う」を思い出しました。

JC:その歌詞にはとても満足している。いい歌詞をいくつか書けたよ!

でも、混沌のなかに身を置いている割に、『Poptical Illusion』というタイトルは……

JC:ただの思いつきだよ! そこにユーモアのセンスが効いていたから、思いついたときに「こんなことを考えたんだけど……」と言ったら、その場にいた人が、「それ使わないと!」と言ったんだ。だから、いろいろなことにあてはまるし、そこに忍び込んできたんだ。

あなたの作品はつねにポップ・ミュージックとある種の関係を結んでいるように見えます。違いますか? あなたはキャリアの早い段階から、広い意味でポップ市場と呼べるようなところで仕事をすることを選んできましたね。したがって、ポップはクラシックやアヴァンギャルドと対話しているわけですよね。

JC:そう、それは豊穣な土地だ。人生で発見する最良のものごとをすごいスピードで吸収する──音楽や他のあらゆるもの、図書館やきみが必要なもの何もかも。アイダホのああいう人びとは思慮が浅い。人生に何が役立つのかについて考えが足りないんだ。私たちは何かを学んだり身の回りのものを吸収したりする機会があるからここにいるのであって、それを利用しなければただ時間を無駄にしているだけだってことを、彼らは考えたこともないんだろう。

この背後に潜んでいるのは子どもたちが学びすぎることへの恐れ、あるいは子どもたちが成長することへの恐れだと思います。子どもの自立に対する恐れです。

JC:そう! その通り! 恥ずべきことだ。愚かなことだ。はっきり言っていい、それはただの無知蒙昧だ!

この1週間あなたの旧譜を聴き直してみて、『Paris1919』の興味深い点は、表面的にはポジティヴだけれど、おそらくいまは抑えつけられているけれどふたたび表に出るのを待っている暗いものの種を体現しているところだと感じました。

JC:ある時点で、『Paris1919』は言ってみればその醜悪さを楽しませるようにして生き延びてきたと思うようになった。でも、あのアルバムが出たときには、「おまえは何をやってるんだ? 自分にとってヨーロッパとは何かを説明した、LAに住んでる、ワーナー・ブラザーズのために働いてる、すごく変わった感性を備えたアルバムを作った、自分がやってきたことのかなりの部分はウェールズからLAに行くことの意味をカタログ化し、そこに戻って何が起こっているかを語ることだ……『そこに戻って』が何であろうとも」と考えていた。

なるほど。自分があの作品に惹かれたのは、あれが参照している時代のためだと思います。第一次世界大戦が終わり、第二次世界大戦が未来に迫っている。ある意味、それはいまの私たちが経験していることに似ています。瓶詰めにされたものがふたたびこぼれはじめている。

JC:同感だ。でも、それは同時に……ひとつの設定なんだ。このまま続けるためにやっているのか、それともただ自分の周りのことを観察するためにやっているのか? これはそれ以上のものだと思う。避けては通れないものだ。これが私たちの持っているもの、つまり、さあ、やってみようという。

いま、私たちは少しばかり暗い時代の最中にいるように感じていますが、新しいアルバムではほんの少し希望や光を求めているところがあるのではないでしょうか?

JC:それほど頑張ってはいない。そんなに頑張ろうとはしていないよ。

“How We See The Light ” について考えているのですが、この歌詞は憎しみが溶けてゆくようなちょっとしたエンパシーの瞬間に触れているように思えます。

JC:ううむ……つまり、それはとても上品な言いかたで、自分にはまだその準備ができているとは思えないな!

音楽をやっていて年をとるのは避けられないことかと思うのですが、『Mercy』はいまは亡き人や、過去に一緒に仕事をした人、あなたにとって重要な人びとの亡霊たちに取り憑かれているような感じがします。

JC:亡くなった人びとというよりも自分にとって重要な人びとという言いかたがしっくりくるね。なぜかはわからないけれどそれを認識し、認識する行為が自分にとって必要なことのすべてであるように祈るんだ。

今回のアルバムにもそうした亡霊たちの一部がまだ残っているのでしょうか?

JC:たしかにいるだろうね。ただ自分がそれらを意識していないだけなんだ。自分には取り組むべきものがたくさんあると思うけど、ただやり続けるだけだ。というのも、自分のやってきたことは作曲や作詞のスタイルに関して手を出してみたことやアルバムのエネルギーそのものにあらわれていると思う。自分がどうやっているか、何をしているかにより多くの情熱が傾けられているんだ。

意識的に何かに取り組むことなく曲を書き、しばらく時間が経ってから「ああ! あれはこういうことだったんだ!」と思うようなことはありますか?

JC:あるある!『Paris1919』について言ったのはそういうことだ。

ブライアン・イーノが自身のファースト・アルバムについてコメントしたのを読んだことがあります。友だちに「あの曲でブライアン・フェリーについて書いたのはとても勇敢だ!」と言われて、「何だって? あの歌詞はただのナンセンスだ!」と思ったけれど、聴き返してみると「うわ、これは彼のことに違いない!」と思ったそうで。

JC:(笑)! ほらほら、認めろよ、ブライアン! ほら! 私たちは結局のところみんな嘘つきなんだ。

ある意味こっそりやるんだ。そこには狡猾さがある。文学的な側面に寛大な態度でアプローチしようとすると、人びとは曲から出てくる言葉に心地よい驚きを覚える。それは重要だった。

ポップという概念と、それがあなたが経験してきた他の分野といかに相互作用を起こしているかの話に戻ります。それがヴェルヴェット・アンダーグラウンドであなたが担った役割の一部だったのでしょうか? つまりある意味で耳慣れた心地よいロックンロールのようなものを採用し、それを複雑化させたり脱臼させたりする方法を見つけることが。

JC:そう。つまり、脱臼させることはとても重要だった。あの時点で私たちがやろうとしたことを本当にやった人はまだ誰もいなかった。つまり、ルーはそれに夢中になり、私はなんとしてもその境界線を壊してやろうとしていた。自分たちはいい線いってたと思う!

たしかに! その後、あなたはソロアルバムの制作に移行しましたが、『Vintage Violence』の際により馴染みのある伝統的なやりかたでの曲作りを学ぶ必要があるという感覚はありましたか?

JC:少しはあったけど、ロックの作曲法には取り止めなく実験的な部分もあって、それもちょっと邪魔になったな。

何かに斜めから取り組むことが、あなたがつねに追求しているアプローチなのでしょうか。そうでなければストレートでありふれたものになってしまいかねないような。

JC:私の問題は歌詞でも曲でもシンプルに完成させることができないことで、だからつねに何かにぶつかってしまうんだ。衣装棚か何かにつまづいて自分が追い求めていたのは何だったっけと考えなければならない。それは最近でも続いている。つまり、こんな話をするほど私の頭ははっきりしていないんだ。

なるほど。近頃では音楽制作技術の進歩によって、やりたいことに関して技術的な制約がほぼないようなものになって、無限の選択肢がありますよね。

JC:そうだね。自分が何をやってみたいかを選ぶことの方が問題になるね。

それについて今回はいかがでしたか?

JC:このレコードにどれだけ怒りを込めることができたか、かな。ただ、人に気づかれないようにね。

それをどのようにやりましたか?

JC:ある意味こっそりやるんだ。そこには狡猾さがある。文学的な側面に寛大な態度でアプローチしようとすると、人びとは曲から出てくる言葉に心地よい驚きを覚える。それは重要だった。

怒りに満ちたものによりソフトなアプローチを採用することで、力強いものが生まれるかもしれません。つまり、パンクとそれがノイズ・ミュージックに発展していく過程において、衝撃を与えるために音響的にできることには限界があると、かなり前に結論が出ています。

JC:かつてアヴァンギャルドはそれを大量に提供し、その背後にはジョン・ケージの微笑みがあった。それはきみの人生を少しだけ楽にしただろう。「これを理解しようとしなくてもいい」と言って。一方でシュトックハウゼンなら「これを聴こうが聴くまいがどうでもいい!」と言うだろう。だから、もうそういうゲームの時代は過ぎ去ったという意見には同意するよ。いずれにしてもヒップホップがすべてを追い越していったと思うね。

[[SplitPage]]

“I think how much anger I could get into the record. But without people noticing it.”
interview with John Cale
by Ian F. Martin

In a career as rich as John Cale’s, it’s hard to know where to start. You could start at the beginning, in the small Welsh village of Garnant, playing organ in a nearby church and immersing himself in sheet music from the local miners’ union library. His early years in London collaborating with the Fluxus art community, or in America working with his near-namesake John Cage and La Monte Young. Creating the foundations for a whole alternative universe of rock with The Velvet Underground — not to mention fostering the parallel rock history that spun out from it through his production work for The Modern Lovers, Patti Smith, The Happy Mondays and more. Any point in his long and diverse solo career is the entry point into a story.

But for both a window into where John Cale is now and into the history that underscores it, his superb new album “Poptical Illusion” is the natural starting point.

For all Cale’s reluctance to attribute too much meaning to the album’s title, a big part of why it works is because it rings true. It’s possible to listen to “Poptical Illusion” as a pop album and it delivers right from the moment opening track “God Made Me Do It (don’t ask me again)” in the hooks, melodies, the crystalline perfection of its production — in that sense, there’s certainly a pop album in there to be found by those with a mind to seek it out.

The illusory aspect is more open-ended. There’s the sense in which all pop is the art of illusion or fantasy: that it lies to you that everything is OK, wrapping you in the comforting embrace of familiar chords and melodies that resolve just how you’re expecting them, even when relaying stories of of sadness. That’s not how John Cale does things, though. Ever since his days with The Velvet Underground, his music constantly finds ways to subvert the familiar and upend expectations. His solo career has followed a path of never letting one success become a formula. His early years took in a largely instrumental collaboration with Terry Riley and the delicate chamber pop of his well regarded 1973 album “Paris 1919”, followed by the deconstructed rock’n’roll and generally starker, lopsided lurch of the subsequent “Fear” and “Slow Dazzle”. From there, he has explored classical, avant-garde and pop extremes, never satisfied to stay in one place, constantly moving on to the next thing.

“Poptical Illusion” itself marks a shift from its predecessor, “Mercy”, which was characterised by its many collaborations with a wide variety of artists. Instead, it’s a far more musically self-contained world. There are nonetheless markers of continuity in the themes, Cale’s distinctive, rich vocal delivery, and also in his lyrics. Perhaps partly due to his early connection with Lou Reed, Cale seems like a songwriter who has never fully got his due as a lyricist, but he has a disorientating talent for telling stories that leave most of the information needed to fully understand them in the gaps between the lines. The way characters in the songs express their fears, anxieties and melancholy, rarely revealing more than fragments of the events and actions that give them context, lends this new album a literary hue recalling the queasy and untethered atmosphere of writers like M. John Harrison or maybe Alain Robbe-Grillet.

And for all Cale’s musical diversity, “Poptical Illusion” shares his past work’s sense of dislocating the familiar, from the stomach-turning lurch out of key in the middle of “Calling You Out” to the layers of distortion that build up through the catchy, looping hook of “Shark Shark”.

In advance of the album’s release, I spoke to Cale online from his home in Los Angeles (transcript edited for concision and flow):

IM:Your new album “Poptical Illusion” comes quite swiftly after last year’s “Mercy”.

JC:I’m trying to get as much work done as possible. It all started because of the lockdown. When that happened, all of a sudden I didn’t know how long it was going to be possible to get the work under my belt because there was no one around to work with me on it. A lot of people were really not around. So I tried to get as much work done as I could when I got going. It turned out that I was pretty aggressive about getting to the end of the project. In the end, I was very happy about how things were going — there were plenty of ideas around and different kinds of aggression in the music. By the time I finished it, I had a whole lot of songs. I didn’t expect it, but I was very happy about it.

IM:Compared with “Mercy”, where every track was a collaboration with other artists, the new one feels more self-contained. Was that the influence of the pandemic?

JC:Yeah. I just got to work, and I got a grip on the kind of aggression that I wanted in the music. And it just came a little bit easier. But the fact I wrote so many songs since that album was finished, and now I have this one so it’s a little easier to bring it out quickly.

IM:You say about a kind of aggression…

JC:Well that’s something that just happened because I was really anxious to get the work finished.

IM:Maybe this is a different sort of aggression, but it feels like some of the themes carry over from “Mercy”. The lyrics maybe approach it from an abstract or oblique angle, but there does seem to be this thread of an ongoing breakdown of society.

JC:Yeah, that’s one of the attractive things about writing lyrics. You have different ways of using language. The chaotic side of things are really attractive to me. It’s not just trying to fit the bill and make sure your poetic side is is ignored.

IM:You’ve said in the past that one of the great things about working with Lou Reed as a lyricist is that he was so good at teasing out the contradictions in things.

JC:Yeah, you could say that. I mean, I took it to heart. It was very important to me that chaos is acceptable.

IM:I feel like there’s also been this influence of Dylan Thomas that runs through your work in the past.

JC:I mean, I try to! And then when I didn’t quite get it together, I just said “To hell with it, I’m going to try to set all of Dylan Thomas’ poems to music!” That was a challenge. You’re really dealing with someone who has a very powerful sense of poetry, so I took what I could and tried to learn as much from it, but his sense of rhythm is just stunning. It’s just one of those things when you grow up in Wales that you… “Wow, I wish I could do that!” It’s very important… “OK, go ahead and do it! Don’t worry about it, get on with it!”

IM:It was on “Words for the Dying” that you went really hard into setting Dylan Thomas’ poetry to musig, wasn’t it?

JC:That’s right.

IM:Growing up with Welsh family, I understand exactly what you mean about the importance of his work. I mean, I think the influence of Wales generally is a topic you keep coming back to, despite having moved away a long time ago.

JC:(Laughs) Yeah, I confess to that! It’s really, once you’ve had that inkling of the warmth and generosity of that place, it stays with you. It’s not something you can get rid of just by getting angry at somebody. Especially the sense of fun. When I wrote “Davies and Wales”, that was something satisfying to me because it showed that side of humour. And “Shark Shark” too, there’s a certain frolic that goes with the territory.

IM:When I heard “Davies and Wales”, what it reminded me of was the Welsh side of my family watching the rugby in the 80s and 90s when Jonathan Davies was captain.

JC:I’ve been grilled about the tapestry of rugby sensibilities!

IM:I could kind of hear my mother crying out “Davies and Wales! Cymru am byth!” once a year during the Six Nations, or the Five Nations it was then.

JC:The Five Nations, it’s kind of scary. It’s kind of funny in a way, and full of life and joy, but at the same time, there’s so much potential there for the same sort of mistakes that have been made everywhere else.

IM:Maybe a kind of violence lurking inside there as well.

JC:No doubt.

IM:In your early days in Wales, I read that the library in your home village was very important.

JC:The library was very important, very important. I learned so much from that small, little building with one room in it that had all the books. And you could go in there and if you couldn’t find what you were looking for, you gave them the name of the book and they would run off and get it. Bertrand Russell, Wittgenstein, any of the philosophers, you would get within a week, but if you went and asked them for music, I would get the music from Marylebone Public Library (in London), who would make sure they got you the scores for the music. If I wanted Schoenberg or I wanted some obscure composers, they would go and buy it for you. The library was very important. It was very exciting for me if I wanted a piece of music by Haubenstock-Ramati, for instance — one of the finest, obscurest titles in the library! If you suddenly had it in the palm of your hand.

IM:The first piece of news I saw in my social media feed when I got up this morning was a story about a small library like that in Idaho that has just announced they can’t allow children anymore because new state laws make it too legally difficult to let children access books. It reminded me of the lyric on your new album about “the right wingers burning their libraries down”.

JC:I was very satisfied with that. I got a good few licks in there!

IM:But for all of this immersing yourself in chaos, the title “Poptical Illusion”…

JC:I just made that up! The thing with it was that it had a sense of humour that worked, so when I came up with it and said, “Here’s something to think about…” the other person in the room said, “You’ve got to use that!” So that covers a lot of ground, it sneaks in there.

IM:Your work does always seem to be in a sort of relationship with pop music though, doesn’t it? You chose from an early point in your career that you were going to work in what I suppose we could broadly call the marketplace of pop, so pop’s in this conversation with the classical and the avant-garde.

JC:Yeah, it’s a fertile ground. It’s the speed at which you can absorb the best things you can find in life — music and everything else. Libraries and whatever you need. These people are thoughtless: whoever these people are in Idaho are. They’ve no consideration for what is useful in life. I don’t think it ever occurred to them that you’re around here because you have a chance to learn something or absorb what’s available to you, and if you don’t take advantage of it, you’re just wasting time.

IM:I think what’s lurking behind this is almost a fear of children learning too much or a fear of children growing up. A fear of the independence of children.

JC:Yes! Absolutely! It’s shameful. It’s so stupid. You’ve got to call it what it is: it’s just ignorance!

IM:Listening back over your back catalogue this past week, I felt that an interesting aspect of “Paris 1919” was that it’s positive on the face of it but maybe it embodies the seeds of something dark that’s been repressed, waiting to come out again.

JC:I think at one point, Paris 1919 did have a life that had these uglinesses being entertained, shall we say, but by the time the album came out, I thought “What are you doing? You’ve now explained what Europe means to you, you live in L.A., you’re working for Warner Brothers, you’ve written an album that has very peculiar sensibilities in it, and pretty much what you’ve done is you’ve catalogued what it means to go from Wales to L.A. and talk about what’s happening back there… whatever ‘back there’ is.”

IM:I see. I suppose what caught me with it was the time period it references, between the end of the First World War and with the second looming in the future. And in some ways that feels like what we’re going through now, with things that had been bottled up starting to spill out again.

JC:I agree, but it’s also… it’s a set up. Are you doing this to carry on or are you doing this just to observe what’s around you? I think it’s more than that: it’s something you can’t evade. This is what we have: let’s get on with it.

IM:We’re in the midst of what feels like a bit of a dark period right now, but on the new album aren’t there perhaps places where you looking for a bit of hope or light?

JC:Not too hard. I’m not trying too hard.

IM:I’m thinking of “How We See The Light”, where the lyrics seems to touch on these little moments of empathy where the hatreds can dissolve.

JC:Hmm… I mean, that’s such a genteel way of putting it, I’m not sure I’m ready for that yet!

IM:I suppose this might be an inevitable feature of growing older in music, but “Mercy” seems like it was haunted by the ghosts of people who’ve now passed, or who you’ve worked with or were important to you.

JC:That’s the way to put it: not so much people who’ve passed but people who were important to me. You don’t know why, but you recognise it and you pray that the act of recognising it is everything that you need.

IM:Are some of those ghosts still present on this current album?

JC:I’m sure they are. I just haven’t addressed them. I think I’ve got plenty of stuff to work with, but I carry on. Because I think what I’ve done is I’ve put my finger on something in the style of writing and the lyrics, and the energy of the album itself, that’s a lot more passionate about how I’m doing and what I’m doing.

IM:Do you find something that happens is that you’ll write music without consciously addressing something and then after some time’s passed between you and the music’s passed, you think, “Ah! That’s what that was about!”

JC:Yes! Yeah, that’s what I was saying about “Paris 1919”.

IM:I remember reading a comment by Brian Eno about his first album and having a friend come up to him and say, “It’s so brave what you wrote about Bryan Ferry on that song!” and him thinking, “What? Those lyrics were just nonsense!” but then listening back and thinking, “Oh God, this is absolutely about him!”

JC:(Laughs!) Come on, own up, Brian! Come on! We’re all liars in the end.

IM:To come back to this idea of pop and how it interacts with the other disciplines you’ve experience in, was that part of your role in The Velvet Underground? To take something that could be kind of familiar, comforting rock’n’roll and to find some way of complicating or dislocating that?

JC:Yes. I mean, the dislocation was very important. No one had really done what we tried to do at that point. I mean, Lou was enthralled by it and I was hellbent on breaking the boundaries. I think we got somewhere with it!

IM:Definitely! When you moved onto making your solo album after that, with “Vintage Violence”, was there a sense where you had to learn how to write songs in that more familiar, traditional way as well?

JC:I mean, there were a few, but there were also some disjointed experiments in rock writing that got in the way a little bit as well.

IM:So is that approach of always looking for oblique approaches to something that otherwise might be straightforward and familiar something you always gravitate towards?

JC:My problem was that I couldn’t complete a verse or a song with simplicity, so there was always something that I was bumping into. I’d trip over a chest of drawers or something and I’d have to figure out what it was I was going after. And it kept going, even recently. I mean, I’m not clear-headed enough to talk about all of that.

IM:Sure. Though nowadays, with music production technology’s advances, it’s almost like there are almost no technical restrictions on what you want to do if you want to because there are so many options available.

JC:That’s true. It’s more a problem of choosing what it is you want to mess with.

IM:How about this time round?

JC:I think how much anger I could get into the record. But without people noticing it.

IM:How do you go about that?

JC:It’s kind of sly. There’s a trickiness to it. You try and approach the literature side of it in a forgiving way, and people can be pleasantly surprised by the kind of language that comes out of these songs. Not quite as understandable, which was important.

IM:It can be powerful to take a softer approach into something angry. I mean, with punk and how it evolved into noise music, it’s almost like the limits of what you could do sonically to shock reached their conclusion a while back anyway.

JC:The avant-garde used to provide this in reams, and behind it there would be a John Cage smile that would make your life a little easy, saying “Don’t worry about understanding this.” Whereas Stockhausen would have said, “Listen to this or get lost! I don’t care.” So I agree with you that the time has passed for that game. I mean anyway I think hip-hop has overtaken the whole lot.

James Hoff - ele-king

 ニューヨークのアーティスト、ジェイムス・ホフ(1975年生まれ)の新譜『Shadows Lifted from Invisible Hands』がフランスの実験音楽レーベル〈Shelter Press〉からリリースされた。アルバムとしては2014年にドイツのエクスペリメンタル・ミュージック・レーベル〈PAN〉から発表された『Blaster』以来なので実に10年ぶりにということになる。
 もっとも2022年にEP『Inverted Birds And Other Sirens』を〈PAN〉よりデジタルリリースしているので、ホフのサウンドアーティストとしての音源発表は2年ぶりなのだが、そもそも2022年のEPリリースもそれなりに驚きだったのだ。だいいちこの時点で8年ぶりだ。 
 というのもホフは現代アートの画家としても活動をしているし、さらには60年代以降の知られざる現在美術を発掘する独立系出版社「Primary Information」(https://primaryinformation.org)の共同設立者でありディレクターでもあるのだ。つまり現代アート/美術方面での活動がメインと言ってもよいかもしれない(ちなみに『Shadows Lifted from Invisible Hands』のアートワークは米国の画家・彫刻家のジャック・ウィッテン(Jack Whitten)の1979年作品「Mother's Day 1979 For Mom, 1979」)。だからもうサウンド・アーティストとしての音源はリリースされないのではないかと勝手に思っていた。ゆえに2022年の『Inverted Birds And Other Sirens』は驚きだったし、今回の『Shadows Lifted from Invisible Hands』も同様である。次のリリースまで10年近い月日が必要だったのだろう。
 
 テン年代エクスペリメンタルミュージックのリスナーにとって、〈PAN〉からリリースされたジェイムズ・ホフの『How Wheeling Feels When The Ground Walks Away』(2011)と『Blaster』(2014)は忘れ難いアルバムだった。新しいノイズ・ミュージックを提示する10年代前半の〈PAN〉とのノイズとポップの領域を拡張するような作品をリリースし始める10年代後半以降の〈PAN〉との「はざま」にあるような作品/アルバムだったからである。ノイズとポップ、実験とポップの領域を拡張するような作風だったというべきか。
 特に『Blaster』はダンス・ミュージック的な躍動感と強烈な電子ノイズが同居する躍動的なアルバムであり、コンピューターウイルスに感染させたサウンドファイルを用いるなどコンセプチュアルなアルバムでもあったのだ。あえていえばマーク・フェル直系のグリッチ/テクノ・サウンドだった。

 だが本作『Shadows Lifted from Invisible Hands』はやや趣が異なる。理由は3点ある。まずリリースが〈PAN〉からではなく、フランスの〈Shelter Press〉ということ。そしてピアノやドローンを用いたクラシカルなサウンドということ。加えてマシニックかつ無機的な『Blaster』と比べるとエモーショナルなこと。この3点である。
 むろんノーコンセプトというわけではない。「ここ数年頭から離れないポップソング(ブロンディ、マドンナ、ルー・リード、デイヴィッド・ボウイ)の断片と、何十年も経験してきた耳鳴りの周波数から作られた」という。だが同時にこれは「自伝的」ともホフが語っている。つまり「このアルバムは主に、現代の音響状況の中で、個人的、感情的、そしてもちろん批判的な新しいものを作ることをめざした自己肖像です」というのだ。
 ここで興味深いのは、この明晰な「コンセプト」が、そのまま自伝的な意味合いを帯びている点である。それが結果として静謐でエモーショナルなクラシカル/アンビエントになったことが自分には興味深い。この作風は確かにストリート・エクスペリメンタルな作風の〈PAN〉というより、室内楽的な音響作品を主とする〈Shelter Press〉的だ。
 
 アルバムは30分ほどの収録時間で全4曲収録している。先に書いたようにピアノ、シンセサイザーによるアンビエント調の楽曲だが、どこか中心点な曖昧で、音がゆっくりと崩壊していくようなムードがある。そこに微かなエモーションが息づいているという不思議な音楽だ。マシンからエモーショナルへ? ともあれ確かに現代はエモ・アンビエント(クレア・ラウジー)の時代なのかもしれない。
 1曲目“Eulogy for a Dead Jerk”は低音のシンセサイザーによる短い持続音から始まり、やがてそれが弾け飛ぶような音と共に本格的に幕を開ける。その一撃から音楽性は一変し、点描的なピアノと弦学風のシンセサイザーによるアンサンブルになる。やがて高音の電子音も絡みつく。実に見事な電子音のアンサンブルだ。
 2曲目“Everything You Want Less Time”はクラシカルなピアノから始まり、透明なシンセサイザーのフレーズが折り重なる短い楽曲だ。3曲目“The Lowest Form of Getting High”は1曲目“Eulogy for a Dead Jerk”のような高音の電子音にクラシカルなフレーズがレイヤーされるトラックで、その旋律はやがて誰もが耳にしたことがあるだろうメロディへと変化していく。4曲目“Half-After Life”は以前のホフ的な強烈なノイズからは始まり、すぐさま弦の音とピアノの音が絡み合うサウンドへ変化する。それがやがて美麗なシンセサイザーと加工された声や電子ノイズが応答するようなサウンドスケープを形成する。何より霞んだピアノの響きが美しい。

 このアルバムに自伝的な要素があるとすれば、先にあげたポップソングの引用だろう。しかしそれらの楽曲の音は徹底的に加工され、原型は消失し、もはやほぼ判別ができない。だから重要なのは「記憶」が溶け合っていく、そして「消失」してしまう、その感覚の表現にこそあるように思える。記憶、生成、消失。その音楽/音響化を、例えばザ・ケアテイカーとは異なる手法で実現したアルバムが、本作『Shadows Lifted from Invisible Hands』ではないかと思う。20年代のアンビエンスがここにある。

 坂本龍一への敬意を表する国内外 41 名の音楽家による未発表の 39 作品を収録した コンピレーション、2023 年ドイツ音楽評論家賞 Electronic & Experimental部門を受賞した『Tribute to Ryuichi Sakamoto “Micro Ambient Music”』が、2024 年5月29日から配信されている。また、同時にアナログ盤もリリースされる。以下、リリース・スケジュールとその内容です。

Tribute to Ryuichi Sakamoto “Micro Ambient Music”

Vol. 1 2024 年 5月31日 (水)発売
01. Tetuzi Akiyama / Transparent Encephalon
02. Otomo Yoshihide / Moonless Night
03. Toshimaru Nakamura / nimb#75
04. Sachiko M / to the sunny man
05. David Toop / Hearing Cries From the Lake
06. Rie Nakajima and David Cunningham / Slow Out
07. Lawrence English / It Is Night, Outside

Vol. 2 2024年7月31日 (水)発売
01. SUGAI KEN / Swallow & Electronic Swallow (2023 Rainy Season)
02. Kazuya Matsumoto / ice
03. Shuta Hasunuma / FL
04. Takashi Kokubo / Rainforest soloist
05. Miki Yui / Hotaru
06. Tomoko Sauvage / Weld
07. Christophe Charles / microguitar

Vol. 3 2024年9月25日 (水)発売
01. Alva Noto / für ryuichi
02. Yui Onodera / Untitled #1
03. Marihiko Hara / extr/action
04. Ken Ikeda / Circulation
05. Hideki Umezawa / Sculpting in Time
06. AOKI takamasa / UKIYO
07. ASUNA / Elephant Eye
Tribute to Ryuichi Sakamoto "Micro Ambient Music"

Vol. 4 2024年11月27日(水)発売
01. Stephen Vitiello / Motionless Wings
02. Sawako / Tokyo Rain Forest 35°40ʼ 25” N 139°45ʼ 21” E
03. Tujiko Noriko / Iʼ ll Name It Tomorrow
04. ILLUHA / Gratitude
05. Christopher Willits / Study for Sakamoto (March 2023)
06. Tomotsugu Nakamura / backword to blue
07. Kane Ikin / Pulsari
08. Bill Seaman / Tears Namida

Vol. 5 2025年1月29日(水発売
01. Tomoyoshi Date / Placement Of The Drops
02. Federico Durand / Alguien escribió su nombre en el vidrio empañado
03. Marcus Fischer / Overlapse
04. Taylor Deupree / A Small Morning Garden
05. Chihei Hatakeyama / Mexican Restaurant
06. Stijn Hüwels / Shinsetsu
07. hakobune / hotarubune


Vol. 6 2025年3月26日 (水)発売
収録曲未定

  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171 172 173 174 175 176 177 178 179 180 181 182 183 184 185 186 187 188 189 190 191 192 193 194 195 196 197 198 199 200 201 202 203 204 205 206 207 208 209 210 211 212 213 214 215 216 217 218 219 220 221 222 223 224 225 226 227 228 229 230 231 232 233 234 235 236 237 238 239 240 241 242 243 244 245 246 247 248 249 250 251 252 253 254 255 256 257 258 259 260 261 262 263 264 265 266 267 268 269 270 271 272 273 274 275 276 277 278 279 280 281 282 283 284 285 286 287 288 289 290 291