「Lea Lea」と一致するもの

Autechre - ele-king

 90年代後半には Max/MSP を導入し、初期のサウンドから大いなる飛躍を遂げたオウテカ。そんな彼らの「中期」とも言える00年代を代表する名作──忘れもしない春、転げまわる小さな金属球のごとき独特の響きがいまでも耳にこびりついている “VI Scose Poise”、同曲で幕を開ける『Confield』(2001年)と、同作をさらに発展させメロディアスな瞬間もたびたび顔をのぞかせる『Draft 7.30』(2003年)の2タイトルが、去る2月24日に(オリジナル盤リリース以来)初めてヴァイナルでリイシューされている。
 その復刻を記念し、両作をモティーフにしたTシャツおよびロングスリーヴTシャツが数量限定で発売されることとなった。現在ビートインクのオフィシャルサイトにてオンライン受注がスタートしている。締切は3月26日、商品の発送は4月中旬からとのこと。そういえば『Confield』も『Draft 7.30』も出たのは4月だった。訪れる春、オウテカを着て、オウテカを聴こう。

『CONFIELD』と『DRAFT 7.30』
オリジナルリリース以来初のヴァイナル・リイシューを記念し
サステナブル素材を使用したTシャツと
ロングスリーブTシャツが数量限定で発売決定!


Confield Black T-Shirt ¥5,500 (税込)
ECOPETのリサイクルポリエステルを採用
BEATINK.COM:
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=13311


Confield Charcoal Grey Long Sleeve T-shirt ¥8,800 (税込)
オーガニックコットン100%
BEATINK.COM:
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=13313


DRAFT 7.30 Black T-Shirt ¥5,500 (税込)
ECOPETのリサイクルポリエステルを採用
BEATINK.COM:
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=13312


DRAFT 7.30 Charcoal Grey Long Sleeve T-shirt ¥8,800
オーガニックコットン100%
BEATINK.COM:
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=13314


label: Warp Records
artist: Autechre
title: Confield
release: Now On Sale
BEATINK.COM: https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=13255

tracklist:
01. VI Scose Poise
02. Cfern
03. Pen Expers
04. Sim Gishel
05. Parhelic Triangle
06. Bine
07. Eidetic Casein
08. Uviol
09. Lentic Catachresis


label: Warp Records
artist: Autechre
title: Draft 7.30
release: Now On Sale
BEATINK.COM: https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=13256

tracklist:
01. Xylin Room
02. IV VV IV VV VIII
03. 6IE.CR
04. TAPR
05. SURRIPERE
06. Theme Of Sudden Roundabout
07. VL AL 5
08. P.:NTIL
09. V-PROC
10. Reniform Puls

interview with Sleaford Mods - ele-king


Sleaford Mods
UK GRIM

Rough Trade / ビート
※ウィットに富んだ歌詞対訳付き

RapElectronicPost Punk

beatink.com

 いまのぼくがスリーフォード・モッズを愛し聴いているのは、UKの労働者階級に特別な共感があるわけでもなければ、今日のUKの政治的惨状を理解しようと思っているからでもない。そんなこと知ったこっちゃないし──というか、このおよそ10年ほどの我が国たるや、UKのことを案じるほどの余裕をかましている場合ではないのだ。ここ日本から見たら英国なんて腐っても英国であってはるか天上。かつてザ・クラッシュが歌ったセリフを借用して返してやろう。あんたら英国が悲惨だとしたら俺ら日本はどうなるのかと。
 ぼくのスリーフォード・モッズへの愛は、パンクへの愛だ。パンクの魅力のひとつはウィットに富んでいることにあるが、スリーフォード・モッズにはウィットがある。ウィットというのは “賢くて面白い” ことで(つまりバカにウィットはない)、セックス・ピストルズはウィットの塊だった。これにぴったり意味の合う日本語はおそらくないが、忌野清志郎にはウィットがあった。もちろん優れたブラック・ミュージックには優れたウィットの使い手が数多く存在し(その代表をいまひとり挙げるならジョージ・クリントンで、ぼくはサン・ラーもウィットの名人だと思っている)、一流のウィット使いはメタファーやダブル・ミーニングを巧みに多用する。スリーフォード・モッズのジェイソン・ウィリアムソンもメタファーとダブル・ミーニングの達人だ。『UK GRIM』=「悲惨なUK」もしくは「UKグリム(グリム童話、狼=資本主義に襲われる赤ずきんちゃん=庶民)」、あるいはまた、 “GRIM” に “E” を足して「グライム=汚れ」。
 スペシャル・インタレストもそうだが、パンク・ロックはそして、最悪な社会状況をネタにしながら最高にクールな音楽がこの世界にはあるという夢のある話をいまも保持している。深刻な現実があってタフな人生がある、が、それに打ち勝つことができるかもしれないという素晴らしい可能性、自分が自分自身であることを強調し(だからこの音楽は早くから女性や性的マイノリティに受けた)、この社会のなかで生きることを励ます音楽、それがパンクでありスリーフォード・モッズの本質である。
 というのも、彼らはマイブラやブラーやレディオヘッドよりも若いのに、彼らだけが “中年” と言われ続けている(ビートインクの過去の宣伝文句を参照されたし)。しかしながらこれは、ジェイソンとアンドリューがそれだけ苦労してきたことを意味している。つまり彼らは、人びとから無視されている報われない人たちの気持ちをより理解する能力を持っている可能性が高いということの証左でもあるのだ。また、スリーフォード・モッズの快進撃からは、こうしたロックやパンクやラップやエレクトロが、昔のように、若者だけの特権ではなくなったということもあらためて認識させられてしまう。彼らがブレイクしたのは40を過ぎてからだが、スリーフォード・モッズのサウンドと言葉は、笑えるがシリアスで、誰もそれをやっていなかったという意味において“新しかった” し、クリエイティヴだった(クリエイティヴであることを放棄していなかった)のである。これは人生論としても意味があるだろう。
 だから彼らの最新アルバムとなる『UK GRIM』は、こういう怒った音楽が21世紀にも生まれているのだという、年老いた元パンクにありがちな郷愁めいたところで評価する作品ではない。だいたい、アルバム冒頭を飾る表題曲の寒々しいベースが刻まれ、ビートが発動し、ジェイソンのラップが絡みつくと、もう居ても立ってもいられずにジャンプするしかないのだから。チキショー、なんて格好いいんだ。もっともアルバムは3曲目にとんでもない殺し屋を用意している。挙動不審で逮捕されたくなかったらドライ・クリーニングのフローレンスをフィーチャーした曲、 “Force 10 From Navarone” を間違っても渋谷を歩きながら聴かないことだ。これはザ・フォールの“トータリー・ワイアード” やPiLの “アルバトロス” のような、冷たいからこそ炎が燃えるタイプの曲で、希望を持てずに政治不信に陥っている民衆の醒めた感性と確実にリンクしている。アルバムはほかにも良い曲が目白押しで、 コニー・プランク&DAFを彷彿させる“Right Wing Beast(右翼の野獣) ” や トライバルなリズムを使った“Tory Kong(保守党コング) ” といった賢く笑える題名をもった曲もあれば、メロディアスなピアノを挟み込んだニュー・オーダー風の “Apart from You”、シンセ・ポップとオールドスクール・ヒップホップの中間にあるような“Rhythms of Class” も面白い。とにかくアンドリュー・ファーンは、最小の音数で、しかしヴァラエティに富んだサウンド作りに腐心し、それはかなりの確率で成功している。

 今回の取材にはサウンド担当、アンドリュー・ファーン(ステージ上で、静かに立ちながらボタンを押している男である)にも参加してもらった。彼の登場はエレキングでは初めてなので、エディットは最小限にとどめて掲載することした。彼らの誠実な人柄が見えると思うし、10年前と変わらない彼らのアティチュードもたしかめることができるはずだ。最初のほうではファッションについても話している。ジェイソンが服を好きな話は有名だが、アンドリューのTシャツ趣味にも前々から興味があったのだ。
 インタヴューを最後まで読んでいただければわかるように、国としては英国のはるか下にいる日本だが、同じように政治に絶望している人びとにとっての打開策においては、意外と共通し共有しうるヴィジョンがあるようで、そのこともまた、国も言語も違えどスリーフォード・モッズを好きになれる理由なのだろう。UKはお前の声なんか聞いちゃいないと、アルバムの冒頭でジェイソンは繰り返しているが、そこは日本もまったく同じ。たとえそうでも、スリーフォード・モッズとはこういうことなのだ──窮地に追い込まれても思い切りジタバタしよう、諦めずに言うことだけは言っておこう、で、楽しもうと、それはおそらく健康に良い。そう思いながら、今日もジタバタしよう。

だからアンドリュー、お前ははじめから、最初からモノにしてたんだと思う。俺たちの初期の写真から最近のものまで眺めてみても、お前は一貫してぴったりハマってた。お前の服装センスは生き残った、みたいな(笑)。

今年はちょうど、『Austerity Dogs』を出してから10年になるんですよね。その後スリーフォード・モッズ(以下、SM)は評価され、ファンを増やし、あなたがたの生活も音楽へのアプローチもだいぶ変わったと思いますが、新作『UK GRIM』を聴いて、SMのパッションも怒りもまったく変わっていないことに感銘を受けました。自分たちではそのあたり、どう思いますか? 

ジェイソン:あー……とにかく、自分たちのやってることが相当に気に入ってる、ってのがあるんじゃない? 俺たちはなんであれクズなことは絶対にやるつもりがないし……それだと、俺たちの場合はとにかくどうしたって機能しないんだ。俺たちが興味を掻き立てられる何かである必要があるし、かつ、自分たちもその上にしっかり足を据えて立てるものじゃなくちゃならない。ってのも、そうじゃなかったら、不愉快なものになるだろうし、俺たち自身にとってもあんまり良くない何かに変わってしまうわけでさ。でも、俺にとって運が良かったことに、「良い作品を作りたい」って点に関して、自分と同じくらい目先が利いてて鋭く、かつパッションのある――俺は自分はそうだと思ってるんだけど――そういう人間に出会うことができたんだよね。だから、そんな俺たちふたりが合わされば自分は心配する必要はない、ってのかな……要するに、アンドリューは標準以下な質のものには一切我慢しないし、うん、とにかく彼は妥協しないんだ。というわけで、それがあるから、すごくうまくやれてるっていう。

アンドリュー:(うなずきつつ)もうちょっと「誰のお口にも合う」ようなアルバムを作っていたとしたら、きっと俺たちは自分たち自身にがっかりしちゃうんじゃない?

ジェイソン:ああ、だと思う。でも、そうは言いつつ――アンドリュー、お前も以前に言ってたけど、本当に良い作品が生まれるのには、アルバムごとにある程度の運の良さも伴うものだ、って点もあるんじゃない? またも素晴らしい歌を書けて俺たちはすごくラッキーだな、と思うし。実際、これらはグレイトな楽曲群だし、俺たちは今回のアルバムを本当に誇りに思ってる。それはすべての曲に言えることであって。

アンドリュー:うん。

ジェイソン:でもまあ……どうなんだろうな、自分でもわからない。とにかくハード・ワークと固い決意の産物じゃないかと俺は思うけどな……。

アンドリュー:うん、それだね。そうは言っても、はじめのうちは幸運にも恵まれたよな、じゃない?

ジェイソン:たしかに。

アンドリュー:俺たちのはじまりの時点ではツキがものを言った。ただ、なんというか、俺たちのいる音楽の世界――っていうか、これはどのメディア(媒体)形態でもそうなんだけど――いったんドアが開いてなかにさえ入れれば、他の連中よりももっと多くの機会に恵まれるようになる、そういう世界で俺たちが生きているのは事実なわけで。

ジェイソン:うんうん。

アンドリュー:悲しい話だけど、現実はそうなんだよね。

ジェイソン:まあ、そういう仕組みだからな。

アンドリュー:ああ。で、誰であれあのドアを抜けることができた奴は、ドアを潜った際の自分にあったもの/それまでやっていたことを維持する必要があると思うけど、残念ながら多くの人間がそれを棄てているよね。で、音楽産業に吸収されてしまう、というか。

ジェイソン:その通り!

アンドリュー:それをやったって、良いことはなんにもないよ。だから、それでクソみたいなアルバムを作ることにして、でもやっぱり失敗したから、デビュー時にもともとやっていたことに立ち返りました、なんてバンドもなかにはいるわけで。自分を曲げずに頑張り続けなくちゃ(笑)!

ジェイソン:だな、自分を通さないと。

不平だらけ。ほんとブーたれてる。で、ほんと、いまってそれくらい悲惨なことが余りに多過ぎだしさ……しかも、この状態はまだこれからも続くと俺は思う。

アンドリューさんは主にビート/音楽面を担当していますが、SMにとってのこの10年で変わったこと変わらなかったこととは何だと思いますか? あなた自身の機材やギアはどう変化しました?

アンドリュー:ああ、毎回、少しずつ変わってるんだ。思うに、過去10年くらいの間に、音楽作りのためのテクノロジーは以前よりずっと安価になったし、ちょっとしたギアもあれこれも比較的買いやすくなって。だから、何か新しいガジェットを購入したら、それが自分にとって音楽をもっと作るインスピレーションになる、という。それはやっぱり、使えるお金がいくらかあるところの利点だよね、対して以前の自分は全然お金がなかったから。昔はジェイルブレイク済みのiPad(※jailbreak=脱獄。基本iOSを改変し使用できるアプリや機能を拡張すること)を持ってて――

ジェイソン:ハッハッハッハッ!

アンドリュー:(笑)おかげで、無料のキーボードだのシンセだののソフトウェアを全部使えてさ。それって良いよね。何か新しいものを作り出すために、別に多くは必要ないってことだから。
ジェイソン:ああ、それは必要ない。

せっかくの機会ですし、アンドリューさんに訊きたいことがほかにいくつかあるんですが、まずはあなたのTシャツの趣味について質問させてください。

アンドリュー:(苦笑)オーケイ!

ジェイソン:(爆笑)

坂本:(笑)。たとえば今日は「HARDCORE」とロゴの入ったTシャツでかっこいいですが、これまでピカチューであるとか――

アンドリュー:(笑)うん、あのピカチューTはまだ持ってる!

坂本:シンプソンズ、はたまたディズニーのパロディTであるとか、いつもユニークなTシャツを着ていますが、どんなこだわりがあるのでしょうか? 

アンドリュー:(笑)まあ、単にヴァイブってことだよ! とにかくパッと見て、「これはイエス」、「これはノー」、そのどっちかに分かれるしかないっていう(苦笑)。だから、別にギャグとして笑えなくたっていいんだし……要はファッションと同じ話というのかな、「これ、自分は着るだろうか、それとも?」ってこと。うん、基本的にはそれだけ。

坂本:なるほど。

アンドリュー:まあ、たまには背景にちょっとしたストーリーが含まれることもあるけどね……。あ、たとえば、いま話に出たディズニーのパロディT(※「Walt Disney」のお城のロゴを「Want Drugs?」に書き換えたもの)、あれは色んなTシャツを作ってるイタリア人男性の製作したもので、彼は俺にああいうおふざけTをたくさん送ってくれるんだよ。でも、それにしたって、俺がいつもある種の類いのTシャツを着てるからなんだろうしね、うん(笑)。

ジェイソンさんは服装にこだわりがあると思いますが、アンドリューさんのファッション・センスに関してどのような意見をお持ちでしょうか? たまに「こいつ、いったい何着てるんだ?」と思ったりしませんか?

アンドリュー:ブハッハッハッハッ!

ジェイソン:ああ、たぶん、若い頃の俺だったらそう思ってただろうな。若いとほら、まだもうちょっとナイーヴで、頭が悪いもんだし――

アンドリュー:うん。

ジェイソン:――それでこの、「バンドってものはこういうルックスであるべき」云々の概念でガチガチなわけで。

アンドリュー:だよな、うんうん。

ジェイソン:でも、思うに、俺たちも歳を食うにつれて――だから、誰でもある程度の歳になると、「人間は人間なんだし」ってことになるんじゃない? 歳を重ねて何かが加わるっていうか、要するにアンドリューはアンドリュー自身でいるだけなんだし、彼が彼以外の他の誰かになろうとしたって意味はない。同じことは俺にも当てはまるし、自分以外の誰かになろうとは思わないな……そうは言いつつ、俺自身もアンドリューの服装センスからちょっといただいてきたんだけどね。確実に、以前よりも少しカジュアルな方向に向かってる。近頃の俺は、もっとショーツを穿くようになったし。

坂本:たしかに。

アンドリュー:でもさ、ショーツ着用って、それ自体がデカいじゃん? 

ジェイソン:ああ。

アンドリュー:ハイ・ファッションの息の根を止めたのが、実質、スポーツウェアだったわけで……。

ジェイソン:ああ、基本的にそうだよな。だからアンドリュー、お前ははじめから、最初からモノにしてたんだと思う。俺たちの初期の写真から最近のものまで眺めてみても、お前は一貫してぴったりハマってた。お前の服装センスは生き残った、みたいな(笑).。

アンドリュー:(笑)うん。

ジェイソン:お前は見事にやってのけた。

アンドリュー:アッハッハッ!

坂本:(笑)

ジェイソン:いやだから、俺だって、写真のなかでいくらでも自前のデザイナー・ブランド服を着て気取ってポーズを決められるけど、ほかの連中もみんなその手のルックスだと、「それって違うだろ」と思うし。っていうか、ちょっとアホっぽい見た目だよな。

アンドリュー:ああ。

ジェイソン:そうは言ったものの――昔だったらたぶん買う金のなかったような洋服を買うのは、やっぱり躊躇するだろ、お前だって?

アンドリュー:うん、そこだよなー。

ジェイソン:多くの面で、お前はいまやいっぱしの、ファッションの今後の雲行きを予想していく予報官なんだしさ。

アンドリュー:ああ。でもそれをやるのは、時間が経つにつれて、ややこしくなっていくよな。

ジェイソン:うん、(苦笑)予想するのは確実にむずかしくなっていく。そこは、お前もちゃんと考えないと。だけどさ、心配しなくちゃいけないのはかっこいいスニーカーを履いてるかどうか、その点だけに尽きるような時点にまで達したんだから、それってかなりナイスじゃない? ハッハッハッ!

アンドリュー:たしかに、その通り(苦笑)。

アンドリューさんは、Extnddntwrk(extended network)名義でずっとソロ活動もしています。アンビエントやエクスペリメンタル、最新作ではジャングルもやっていますが、こちらのほうのコンセプトもせっかくの機会なので教えてください。

アンドリュー:いや、これといったコンセプトはなくて、完全に自己満足でやってる。思うに00年代あたりって、エレクトロニカのシーンもまだ揺籃期だったんだよな。なかでもとくに、98年〜01年の時期。俺も軽く関わったあの当時のシーンには、誰でもやれる家内工業めいたところが少しあったし、日本もきっとそういう状況だったんだろうと思う。

坂本:ええ。

アンドリュー:ところが、その、いわばポスト・エイフェックス/ポスト・オウテカ的なヴァイブを備えたシーンもいったん終わりを迎えたわけで……もちろんそのシーンはいまも存在してるけど、あの当時の方がはるかに人気が高かった。だからなんだ、さっき言った家内工業的なノリで、俺がアルバムを1枚出したのも。でもまあ、とにかくそういうことだし――かなり「ポスト・エヴリシング」な感じ、ってことなんじゃない? 自分の見方はそれだな。ポスト・アンビエントに、ポスト・あれこれに……で、俺からすれば本当に、それらすべてをひとつにまとめたのがエレクトロニカだ、そう思うから。あれはダンス・ミュージック界の一部を形成していた、ダンス以外の色んな音楽、ブライアン・イーノ等々を聴いていた人びとのことだからさ。とにかく、俺はほかとはちょっと違うことをやろうとしているだけなんだ、(ハウス/テクノの)四つ打ちビートから離れていこうとしながら。

ジェイソン:うんうん。

アンドリュー:その意味ではドラムン・ベースの果たした役割も大きかったよ。ドラムン・ベースは素晴らしい。さっきジャングルを指摘されたけど、俺のパートナーがクリスマス・プレゼントにロニ・サイズのヴァイナル盤を贈ってくれて。

坂本:それは良いですね!

アンドリュー:うん、ただし、アナログ再発されていないから中古盤だったんだ。要するに言いたいことは、あの頃はああいう実に素晴らしいアルバムがコマーシャル面でも成立可能だったんだな、と。すごくクールな作品だけど、それにも関わらず誰もがあれを聴くことになったし、ああいう作品が「ドア」を通り抜けて人びとに達したわけ。で、当時あの手のエレクトロニック・ミュージックを作っていた連中の夢がそれ、何か実に驚異的な作品をやってのけ、それを多くの人びとに届けることだったんだと思う。ほかにもたくさんいるよね、ポーティスヘッドやマッシヴ・アタックといったバンドが、多くの耳に音楽を届けてみせたんだから。

ドライ・クリーニングのヴォーカル、フローレンス・ショウが登場する “Force 10 From Navarone” は最高にクールでしたが、このコラボはどういう経緯から実現したのでしょうか?

ジェイソン:ドライ・クリーニングは2021年の『Spare Ribs』向け英ツアーでサポートを担当してくれてね。俺は彼らの出したデビュー・アルバム(『New Long Leg』)にかなり魅かれたし……俺たちふたりとも、「彼らは本当に興味深いな」と思ったわけ。で、アンドリューが“Force 10 From Navarone”の音楽パートを送ってきたとき、俺もすぐに「おっ、これは良いな」とピンときたし、曲のアイディアをまとめていくうちにフローレンスに参加してもらったら良さそうだなと思いついて。そこで彼女に興味はあるかな?と打診してみたところ、ラッキーなことに彼女もやる気だった、という。あとはご存知の通り。

アンドリュー:ああ。

ジェイソン:うん、あれは俺にとっても、アルバムのなかで抜きん出たトラックのひとつだね、間違いない。

彼女の無表情な歌い方はとてもユニークですが、SMはドライ・クリーニングのどんなところが好きなのでしょうか?

ジェイソン:やっぱり、フローレンスのヴォーカルが俺は大好きだな。でも、バンドの側も素晴らしい。

アンドリュー:だよね。

ジェイソン:ほとんどもう、相当ミニマルなものに近いというか……要するに余計なあれこれでゴタゴタしてないっていう。

アンドリュー:たしかに。

ジェイソン:あのバンドの連中は全員、かなりミニマルなプレイヤーだよな。

アンドリュー:それに、多くの面でかなりオリジナルなバンドでもあるし。

ジェイソン:うんうん。

アンドリュー:いやだから、音楽スタイル云々で言えば色んな影響を受けているだろうけど、こと「現在のシーンで何が起きているか」って点から考えれば、彼らはほんと、突出した存在っていうか。

ジェイソン:ああ、同感。

アンドリュー:フローレンスはもちろんだけど、それだけじゃなく、音楽そのものもね。

ジェイソン:たしかに。だから、彼らはすべてを兼ね備えてるバンド、それは間違いない。

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もうちょっと「誰のお口にも合う」ようなアルバムを作っていたとしたら、きっと俺たちは自分たち自身にがっかりしちゃうんじゃない?


Sleaford Mods
UK GRIM

Rough Trade / ビート
※ウィットに富んだ歌詞対訳付き

RapElectronicPost Punk

beatink.com

『UK GRIM』は、前作『Spare Ribs』に較べて「怒った」アルバムだ、という印象なのですが――

ジェイソン:ああ、うんうん。

今作におけるジェイソンさんの怒りは、イギリスに住んでいないぼくたち日本人にとっても共有できることが多いです。

アンドリュー:グレイト!

で、あなたは基本的にイギリスのことを書いていますが、しかしSMはドイツなどイギリス国外にもファンがいます。日本にだって熱狂的なファンがいます。なぜ言葉が大きな位置を占めるSMの音楽が、イギリス国外/非英語圏でも受けるのか考えたことがありますか?

ジェイソン:あー……どうなんだろ、俺にもどうしてかわからないけど、結局は「音楽」ってことじゃない? 俺たちの音楽には違うタイプのスタイルが色々と混ざってるし、もしかしたらそれらが聴き手にも少し聴き馴染みのあるものに感じられる、とか? さっきアンドリューも話していたように、エレクトロニカも多く残響してる音楽だし、アンビエントやサウンド・スケープ的なものもあり、なんでもありだしね。ああ、それにパンクも混じってる。

アンドリュー:とは言っても、それって「だからじゃないか」と推量するしか俺たちにはできないことだよね。

ジェイソン:うん、その通りだ。

アンドリュー:それに、(非英語圏でも)英語を話す人はたくさんいるんだし。

ジェイソン:たしかに。

アンドリュー:かつては大英帝国があったわけで、それで俺たちイギリス人は、人々に――

ジェイソン:――みんなに英語を話すよう強制した、と。

アンドリュー:そうそう(笑)。

ジェイソン:ハッハッハッハッ!

前作はわりと歌っていましたが、今回はラップがほとんどです。それというのも、怒りが前面にでているアルバムだから、というのもあると思うのですが、いかがでしょうか? 

ジェイソン:うん。まあ、正直、ふたつの要素が組み合わさってる。『Spare Ribs』を書いてた頃、俺は背中を痛めていたせいで鎮痛薬をたくさん服用してたし、それにロックダウン期でもあった。だから、どうしたって普段より少し大人しくなるってもんだし、ほとんどもう、一種の発育不全みたいな状態になったというか。で、そのふたつの要素が合わさったことで、あのアルバム(『Spare Ribs』)収録曲の多くはかなり……とは言っても、アンドリューの作った音楽部そのものは、部分的には『UK GRIM』と同じくらいアップテンポなものだったとはいえ、ヴォーカル面で言えば、俺はいつもより少し退いて力を緩めたっていうのかな、いやほんと、あの頃はかなり(薬の副作用/COVID他の)ショックで打ちひしがれていたと思うし……。

アンドリュー:いつもより少しこう、メランコリックな時期だった、っていうか。

ジェイソン:イエス、その通り。ほんと、そうだったよな、じゃない?

アンドリュー:内省的になった。

ジェイソン:そうそう、あれは自分の内側に目を向けた時期だったし、思うに――それゆえに、「あの時期」の俺たちにしか書けなかったであろう、そういうアルバムになったんじゃない?

アンドリュー:うんうん。

ジェイソン:だからあの時期にふさわしい内容だったと思う。でも『UK GRIM』、これは「ポスト・パンデミック」なアルバムだし――うん、とにかく、これらの楽曲を書いていた頃の俺はものすごく怒ってたっていう(苦笑)。

アンドリュー:アッハッハッハッハッ!

坂本:(笑)。でも、「ジェイソンはいつも怒ってる」って印象があるんですよね。過去に、SMは「UKでもっとも怒れるバンド」という形容を捧げられたこともありますし。

アンドリュー:(苦笑)。
ジェイソン:(爆笑)。

なのでお訊きしたいんです。ジェイソンは、もちろん私人として/プライヴェートでは幸せな方だと思いますが――

ジェイソン:ああ、その通り。

アンドリュー:うんうん。

こうやって、ステージや音楽表現において常に情熱的で、ド迫力で、怒りを持続されるのは、すごく疲れるし、たいへんなことだと思います。ジェイソンさんは、怒り続けるのに疲れたりはしないのですか? 

ジェイソン:いや、それはない。ノー。というのも、俺はその在り方は「正しい」在り方だと思うから。フィーリングってことだし、だから疲れはしない。まあたまに、毎晩立て続けにギグをやるのに、ちょっと消耗させられることはあるけどさ。

アンドリュー:ああ、ツアー自体は疲労することもある。

ジェイソン:とはいえ――

アンドリュー:いやだから、それはある意味、俺たちがイギリス人だってことなんじゃないの(苦笑)?

ジェイソン:(笑)だな! たしかに。俺たち、いっつも不満たらたらな連中だし……。

坂本:(笑)

アンドリュー:「ここんとこずっと、ブーブー文句ばっか言ってるな、俺」みたいな(笑)。

坂本:メソメソ泣き言と文句ばかり垂れている、と。

ジェイソン:(笑)その通り! 不平だらけ。ほんとブーたれてる。

アンドリュー:ハッハッハッ!

ジェイソン:(苦笑)で、ほんと、いまってそれくらい悲惨なことが余りに多過ぎだしさ……(真顔に戻って)しかも、この状態はまだこれからも続くと俺は思う。

アンドリュー:うん。

ジェイソン:このまま続いていくだろうな。でも、ある程度までは、俺たちも以前の状態に戻りつつある。だから……このアルバム(『UK GRIM』)がいつもよりやや怒りの度合いが強いのはたぶん、俺たちは去年、ギグ/ツアー生活に一気に引き戻されたから、というのもあるかもしれないよ? ものすごく慌ただしいスケジュールをこなしたし、このアルバムのなかの怒りやフラストレーションの多くは、もしかしたら、多忙なツアーで消耗したことから来たエネルギーでもあったのかも? まあ、俺にはわからないけど……。

坂本:なるほど。いや、とかく日本人は、文化/慣習として怒りを忘れがちな「水に流そう」な民族なので。

ジェイソン:ああ、そうだろうね。

坂本:一種の東洋哲学でしょうし、そんな我々からすると、あなたみたいに怒りの火を絶やさず燃やし続けるのは疲れないのかな、と思うわけです。我々も、あなたから学んだ方がいいのかも……?

ジェイソン:(爆笑)ブハッハッハッハッ!

坂本:いや、「水に流そう」も良いことだと思うんですが、そうやって忘れてしまうと、同じ過ちを繰り返すことにもなりますし。

アンドリュー:うん。

ジェイソン:でもさ、そうやって水に流すほかないんじゃない? 昔、アンドリューがよく言ってたように、「俺たちが(歌のなかで言っていることを)ストリートで実際に行動に移したら、きっと逮捕されるだろう」ってこと。

アンドリュー:その通り。

ジェイソン:だから、ノーマルな日常生活の場面では、他の人びとと同じように落ち着いていることは大事だと俺は思っていて。というのも、俺は暴力はなんの解答にもならないと思うし――独善的になるだとか、言葉の暴力で罵るだとか、そういうのはとにかく答えじゃないだろう、そう思うから。だけど、「レコードのなかで」であれば、現実よりももうちょっとファンタジーを働かせることが許されるわけで。

アンドリュー:その通り。

坂本:作品のなかでの表現、ということですしね。

ジェイソン:うん、表現ってこと。だから俺としても、歌詞の面でああやって色いろと実験するのはかなり好きだし、それをやるのは全然OKだと思う。で、それって……俺たちがやってるのって、そういうことじゃないかな? 「これ」といったルールは、別にないんだし。

アンドリュー:ああ。要は、セラピーってことだよ。

ジェイソン:うん! たしかにそうだ。

アンドリュー:だから、あれをやるのはお前にとっては一種のセラピーだし、と同時におそらく、それを聴くリスナーにとってのセラピーにもなっている、と。

ジェイソン:ごもっとも、その通り。

アンドリュー:胸のなかにたまってる思いを吐き出してスッキリする、という。

ジェイソン:だね。

アンドリュー:それに、いまはほんと、そういう音楽って多くないし。

ジェイソン:ない、ない。

前進していくための唯一の道は、小さな空間を、ちょっとした余裕を自分に与えることだと思う。自分自身に、自分の家族に、自分の周囲のコミュニティに、息をつけるちょっとした余裕/小空間をもたらすこと。ここを生きていくには、それしかないと思う。

ジェイソンさんが政治的なことを歌詞に込めるとき、リスナーにどんな期待を抱くのでしょうか? リスナーにもそのことを気づいて欲しいから? 考えて欲しいからとか?

ジェイソン:ふむ(考えている)。

坂本:人によっては「ミュージシャンは政治的なコンテンツを扱う必要はない。こちらをエンターテインしてくれればいい」という考え方の持ち主もいますし。

アンドリュー:いや、それは本当だよ。別に政治について歌う「必要」はないんだしさ。

坂本:はい。でもあなたたちの場合、政治を取り上げずにいられないんじゃないですか?

アンドリュー:(苦笑)。

ジェイソン:それは避けられないよね。だからまあ、こちらとしては人びとが楽しんでくれればいいな、と願うしかないわけで。そうした内容が聴き手のなかに議論等の火花を起こすか否か、そこは俺はあまり気にしちゃいない、というか……いやもちろん、俺たちの歌を聴いて、人びとがより広い意味での社会構造に対して疑問を抱き始めてくれたとしたら、嬉しいことだよ! というのも、それをやってる人間の数は充分多くないと思うし。ただ、それと同時に思うのは――俺たちとしては、とにかく人びとが自分たちの音楽を気に入ってくれればいいな、と。というのも、これをやって俺たちは生計を立ててるんだし。

アンドリュー:うん。

ジェイソン:だから、別の言い方をすれば――俺たちはこの仕事を心からエンジョイしながらやっているし、聴き手の皆さんもお楽しみいただけたら幸いです、そういうことじゃないかと。

イギリスの労働者階級/文化のポジティヴな面、あなたが好きな面について話してください。

アンドリュー:……うーん、それは答えるのがタフな質問だな。

ジェイソン:むずかしい質問だ。

アンドリュー:……(笑)皆無!

坂本:いいとこなし、ですか? そんなことはないでしょう(笑)。

アンドリュー:ハッハッハッハッハッ!

ジェイソン:あんま多くないな。俺は、洋服は間違いなく良いと思うけど。

アンドリュー:うん。いや、だから……(軽くため息をつく)話しにくいことだよね、ってのも、イギリスの労働者階級ってかなり独特だから。

ジェイソン:ああ、ユニークだ。

アンドリュー:で、英国人であるがゆえに、それを(客観的に)語るのは自分たちにはあまり楽なことじゃないんだと思う。というのも、自分たち自身のことなわけで。

ジェイソン:うん、うん。

アンドリュー:俺は、ヨーロッパに行くたび、その違いにもっと気づかされる。たとえば、ヨーロッパ各国ではヴァイブがどれだけ違うか等々。それで、イギリスはかなりユニークなんだな、と思ったり。

坂本:なるほどね。

アンドリュー:でも、イギリス国内にいると「それが当たり前」になっちゃうわけで。

ジェイソン:それに、いまの俺たちは、厳密な意味での「労働者階級の環境」っていう概念とはコネクトしてないんじゃないか、みたいに思う。

坂本:ああ、なるほど。

ジェイソン:それくらい、俺たちはとにかく多くの意味で、自分たちの小さな世界のなかに存在している、と。でも……そうは言っても、俺はやっぱりいまも、ワーキング・クラスの服装/ユニフォームは好きだよ。それと、労働者階級の人びとが中流階級の人からどれだけかけ離れているか、両者の間の隔たりがいまだに実に大きいか、というところも。

アンドリュー:うん。

ジェイソン:で、労働者階級の人たちをリスペクトの念と共に扱うって点には、本当に意識的でなくちゃならないんだ。ってのも、多くの場合、人びとは労働者階級を見下していると思うから。彼らの使う言葉が違う、装い方が違う、やってる仕事の職種が違う、所有品が違う、たったそれだけの理由でね。だけど、だからって、労働者階級を動物扱いしていいってことにはならないだろ? それくらい明確な階級間の隔たりが存在してるってことだし、でも労働者階級の面々だって、中流階級人と同じように、その「構造」の範疇内で生きているんだよ。だから実は(本質的には)違いはないし、とにかくコンテンツに差があるだけ。その提示の仕方が違う、という。

アンドリュー:なるほど。

ジェイソン:だけど、見た目が違うからって、彼らはイコール動物だ、ってわけじゃないだろ?

アンドリュー:それは絶対ない。

ジェイソン:うん、そんなことはあり得ない。それってすごく単純な意見だろうけど、絶対に憶えておく必要のあるものだと思う。

『UK GRIM』を聴いていると、イギリスでは物事が本当に深刻で重くなっているんだな……と感じます。

ジェイソン&アンドリュー:うん。

一方で、日本も物価が上がって深刻な状況になりつつあるし、イギリスでここ最近ずっと騒がれている「Cost of Living Crisis」が起きています。

ジェイソン:そうなんだ……でもさ、日本の政治家はどうなの?

ただし日本は、イギリスとはかなり違います。というのも、我が国にはイギリスの労働党のような大きな野党がないので、さらに深刻だったりするんです。与党に絶望している人たちが支持したい野党がないんです!

ジェイソン:オーケイ、そうなんだ。

対してイギリスは、ここしばらくの間で労働党の支持率が上がっていて、少なくともまだ一種の希望があるかな、と思います。で、こうした先行き不安な現実のなかを庶民はどう生きていったらいいと思いますか? 

アンドリュー:……かなりでかい質問だな!

坂本:ですよね、すみません……。

アンドリュー:(笑)

ジェイソン:前進していくための唯一の道は、小さな空間を、ちょっとした余裕を自分に与えることだと思う。自分自身に、自分の家族に、自分の周囲のコミュニティに、息をつけるちょっとした余裕/小空間をもたらすこと。ここを生きていくには、それしかないと思う。というのも、ほんと、それ以外の誰にも頼れないような状況だからさ。いや、たぶん、これまでもずっとそうだったんだろうけど、いまはとにかく、状況がさらにタフになってるじゃない? だから、苦痛を軽減してくれるちょっとした緩衝ゾーンは自分自身、各自の内側から出て来るんじゃないか、と。その人自身の姿勢から生まれる、そういうことじゃないかな。うん、それしかないんじゃないかと思う……ってのも、いまは国家にも頼れないし、っていうか、他人の多くも頼りにできないし。それくらい、生活がハードになってるってことだよね。で、その状況はすぐに変わらないだろうな、と俺は思う。

ここ数年、UKからは新手の魅力的なインディ・バンドが出てきました。ドライ・クリーニングもそうですし、シェイム、キャロライン、ブラック・ミディなどなどがいます。ただ思うのは、そうしたインディ・ロック・バンドの多くは中流階級出身ですし、その手の音楽のファン層も中流階級が占めている印象です。そこを責めるつもりはないのですが、ただインディ・ロックは、かつては(ザ・フォールからニュー・オーダーやオアシスまで)もっと労働者階級の子たちのものだったのではないか? とも思います。そうではなくなってしまった現状については、どう思っていますか?

ジェイソン:――正直、労働者階級の人びとはグライムにハマってるんじゃないかと思うけど?

坂本:ああ、たしかにそうですね。

アンドリュー:だよな。

ジェイソン:グライム、あるいはUKヒップホップと言ってもいいけど、そっちに移ってる。俺の実体験から言えば、労働者階級の面々はラッパーになりたいって傾向の方がもっと強いよ。

アンドリュー:ほんと、そう。インディ・ロックはそれよりもっと中流階級向け、みたいな(苦笑)? でも、さっきも話に出た労働者階級って話で言えば、いまのイギリスはかなり変化した、というところもあると思う。もうちょっとアメリカっぽくなってきてるって意味でね。それくらい、もっと様々な階級のレヴェル/細かい隔たりができてきてる、という。いまはロウワー・ミドル・クラス(やや低級な中流。いわば、労働者階級あがりで中流に達しつつある層)もあるし……。

ジェイソン:うん。

アンドリュー:で、そこはアメリカも同じで、あの国じゃ人によっての経済/収入面での異なる区分が10個くらいあるわけでさ。で、それに似たことが、イギリスでも起きつつあるんじゃないかと俺は思う。

ジェイソン:うん、アンドリュー、それは大きいよ。

アンドリュー:だからって労働者階級が存在しなくなる、ってわけじゃないし、いまでもいるんだよ。ただ、貧困線にはまだギリギリ達していないものの、それでもお金が全然ない、という人びとはいるわけでさ。うん……。

ジェイソン:うん……妙な状況だよな。だけど、さっきの君の指摘、インディ・ロックが労働者階級のものではなくなっている、というのは当たってると思う。でも、いまのインディ・ロックって正直、あんま先進的じゃない、ほとんどそんな感じじゃない? もちろん、そうじゃない連中もいるけど……。

アンドリュー:ちょっとレトロな感じだよね?

ジェイソン:うん。多くのバンドのやってることは、あんまりプログレッシヴとは思えない。

アンドリュー:エルヴィスっぽく聞こえる。

ジェイソン:エルヴィスか(苦笑)。

最後の質問です。いま手元に自由に使える500ポンドがあったら何を買いますか?

アンドリュー:そうだな……。

ジェイソン:500ポンドあったとしたら? たぶん、俺が買うのは……んー、なんだろ? 正直、思い浮かばない。だから銀行に預金する。ってのも、いま、自分が何を買いたいかわからないし、必要なものはぜんぶ買ったと思うし。

アンドリュー:ハッハッハッ!

ジェイソン:だから、預金する!

(笑)わかりました。アンドリューさんは?

アンドリュー:(笑)貯めないで使うんだとしたら、たぶん俺は、実は必要のない余計なものを買っちゃうだろうなぁ。いや、ここんとこずっと、Polyendが気になってチェックしてて。

ジェイソン:へー、そうなんだ。

アンドリュー:あれは一種のガジェットみたいなもんで、トラック・シークエンサー機能とかが付属してて。たしか450ポンドくらいだから、ちょうどいい値段かな。

ジェイソン:それ、買うつもりなの?

アンドリュー:いやいや、別に必要じゃないんだってば! でも、気になってついチェックしちゃうんだ。で、眺めながら「別に欲しくないし、自分には必要ないだろう……」ってブツブツつぶやいてるっていう。

ジェイソン:クハッハッハッハッ! スクロールする指が止まらない、と(笑)

アンドリュー:いやー、だから、商品レヴューとかあれこれ読んで、「ああ、こりゃ結構なプロダクトだな」と思いつつ、でも「自分には必要ないか……」と考えあぐねる、その手の商品だってこと。

ジェイソン:(笑)

アンドリュー:でも、プレイステーション・ポータブルの端末は、CeXで中古で買った(※CeXは中古のPC/ゲームソフト/DVD等をメインで扱う英テック系チェーン)。

ジェイソン:へえ、どんな具合? 良いの?

アンドリュー:いや、まだ届いてないんだ。オンラインで通販したから、明日届く予定。あれはもう入手できないんだけど(※PSPは2004年に発表され、2014年に日本国内出荷終了)、「ビートレーター(Beaterator)」ってアプリが使えるんだ。あれはロックスター・ゲームスとティンバランドが2007年に合同開発したアプリ(※実際の発表は2009年)で、ミュージック・シークエンサー等の機能が収まってる。

ジェイソン:(笑)ナ〜イス! それ、かなり良いじゃん?

アンドリュー:値段は140ポンドくらいだったはず。でも、プレイステーション・ポータブルがイギリスで最初に発売された2005年頃は、自分には手が出ない値段だったんだよ。発売当時は、どうだったんだろ、500ポンドくらいしたんじゃない? でも、こうして中古の端末を140ポンドでゲットしたし、ゲームも色いろついてくる、と。オールドスクールな楽しさを満喫できるよ、これで。

ジェイソン:っていうか、良い楽しみ方だよ、それは。

坂本:もう時間ですので、このへんで。今朝は、お時間を割いていただいて本当にありがとうございます。

ジェイソン&アンドリュー:こちらこそ、ありがとう!

坂本:『UK GRIM』はとてもパワフルなアルバムで、大好きですし――

ジェイソン:ありがとう。

アンドリュー:どうも!

 なお、日本がいまどんな政治的な状態にあるのかをわかりやすく理解するために、エレキングでは『臨時増刊:日本を生きるための羅針盤』を刊行した。『UK GRIM』を聴きながらその本を読んでいただけたらこのうえなく幸いである。とくに巻頭の青木理氏の話は、安倍政権以降の日本がいったいどうなっちまったのかをじつにわかりやすく解説している。立ち読みでもいいので、チェックして欲しい(たのむよ)。
また、今回の取材も例によって坂本麻里子氏の通訳を介しておこなわれたわけだが、『UK GRIM』の日本盤には、ジェイソン・ウィリアムソンのウィットに富んだ言葉を、彼女がみごとな日本語に変換した訳詞が掲載されていることもここに記しておく。これを読むためにCDを購入する価値は大いにある。

Dirty Projectors + Björk - ele-king

 00年代ブルックリンを代表するバンド=ダーティ・プロジェクターズと、ビョークによるコラボEP「Mount Wittenberg Orca」が13年の時を経て蘇ることとなった。DPにとっては代表作『Bitte Orca』(2009)を出したころで、ノりにノっている時期。ビョークにとっては『Volta』(2007)と『Biophilia』(2011)のあいだのタイミングに当たる。巧みなコーラス・ワークを聴かせるDPとビョークの特異なヴォーカルがみごとに融合したポップかつ実験的な名作だが、新装版にはなんと20曲もの未発表音源が追加されるという。あの美しいハーモニーをもう一度、新しいかたちで楽しみたい。

Dirty Projectors + Bjork

ダーティー・プロジェクターズとビョークによる奇跡のコラボレーション作品が20曲の貴重な初出し音源を追加収録して新装盤『Mount Wittenberg Orca (Expanded Edition)』として4月28日にリリース決定!

09年4月にデイヴ・ロングストレス率いるダーティー・プロジェクターズとビョークがニューヨークで行ったチャリティ・コンサート用に書き下ろした7曲をスタジオ・ヴァージョンとして収録した奇跡のコラボレーション作品『Mount Wittenberg Orca』。2020年にデジタル配信され、2011年に〈Domino〉によってCD化された本作が、4月22日のレコード・ストア・デイに合わせて初LP化! また4月28日には日本限定で新装盤CDのリリースも決定! 新装盤には、20曲の貴重な初出し音源が追加収録される。

Dirty Projectors + Bjork - On and Ever Onward
https://youtu.be/qfLXxrJ0cZU

両者の交流は、2008年に発表されたビョークの2ndアルバム『ポスト』のトリビュート・アルバム『Enjoyed: A Tribute to Bjork's Post』にダーティー・プロジェクターズが参加し、ビョークがダーティー・プロジェクターズのヴォーカル・アレンジを気にいったことから始まったという。

オリジナル盤は、デイヴ・ロングストレスとビョークが、1500年代にオペラが生まれたイタリアの小劇場について話したことをきっかけに、マンハッタンの小さな書店「ハウジング・ワークス」にて、アンプなしでパフォーマンスをするために書き下ろされた7曲が収録されている。ドラムやギターは一切使用されず、ほとんど声だけで構成された本作は、どこか童話のようでもあり、不可思議な未来から届いた合唱曲のようでもある魅惑的な楽曲集であり、ダーティー・プロジェクターズのディスコグラフィーの中でも異彩を放つ名盤であると同時に、音楽家ビョークの底知れる才能を理解する上でも重要な作品と言える。ビョークの力強い歌声、デイヴ・ロングストレスのしゃがれたリード・ヴォーカル、ダーティー・プロジェクターズのメンバー、アンバー・コフマンとエンジェル・デラドゥーリアン、ヘイリー・デクルのコーラスが、驚くべきハーモニーを生み出している。3日間のリハーサルを経て、まるで50年代初期のロックンロールのようなシンプルかつダイレクトな形で録音され、オーバーダブはリードヴォーカルのみという特殊な制作方法も、本作に特別な魅力を加えている。

日本限定の新装盤CDには、オリジナルのスタジオ音源7曲に加え、2009年に「ハウジング・ワークス」にて披露された実際のライブ音源や、デモ音源、リハーサル音源などの全て初だしとなる未発表音源20曲を加えた全27曲収録の超豪華盤となる。今回の新装盤CDには、歌詞対訳と解説書が封入され、本作の魅力を最大限楽しめる内容となっている。

label: Domino
artist: Dirty Projectors + Bjork
title: Mount Wittenberg Orca (Expanded Edition)
国内盤CD release: 2023.04.28
輸入盤LP release: 2023.04.22 (RSD商品)

BEATINK.COM: https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=13297

tracklist:
国内盤CD
01. Ocean
02. On And Ever Onward
03. When The World Comes To An End
04. Beautiful Mother
05. Sharing Orb
06. No Embrace
07. All We Are
08. Intro (Live from Housing Works, 2009)
09. Ocean (Live from Housing Works, 2009)
10. On and Ever Onward (Live from Housing Works, 2009)
11. When The World Comes To An End (Live from Housing Works, 2009)
12. Beautiful Mother (Live from Housing Works, 2009)
13. Sharing Orb (Live from Housing Works, 2009)
14. No Embrace (Live from Housing Works, 2009)
15. All We Are (Live from Housing Works, 2009)
16. Wave Invocation (Inverness Demo I)
17. Motherwhale Song (Inverness Demo II)
18. Whale Watcher Song (Inverness Demo III)
19. Fugal Swim (Inverness Demo IV)
20. First Duet (Inverness Demo V)
21. Migration (Unfinished Inverness Demo)
22. Jubilation (Inverness Demo VI)
23. Benediction (Inverness Demo VII)
24. When the World Comes To An End (Freewrite)
25. When the World Comes To An End (Vocalise Rehearsal Rough)
26. Beautiful Mother (Vocalise Rehearsal Rough)
27. On and Ever Onward (Full Rehearsal Rough)

WE LOVE Hair Stylistics - ele-king

 現在、糖尿病の合併症などのため入院中の中原昌也。彼を支援すべく、コンピレーション企画が始動している。『WE LOVE Hair Stylistics!』と題されたそれには当初17組が参加、配信にて去る3月3日リリースされているのだが、面子がとんでもないことになっている。食品まつり、工藤冬里、石橋英子ジム・オルーク、山本逹久、渡邊琢磨、TORSO、坂本慎太郎石原洋井手健介に2MUCH CREWに……バンドキャンプをチェックすると、さらにコーネリアスやDMBQも加わっていて、中原の存在の大きさを痛感させられます。
 また、これまでも中原作品を販売してきた高円寺のオルタナティヴなレコード店LOS APSON?では、「爆買いフェア」と題し、レアな音源がついてくるキャンペーンも実施。ぜひとも足を運びましょう。

https://savenakahara.bandcamp.com/album/we-love-hair-stylistics

緊急入院中の中原昌也を支援するプロジェクトに豪華17組のアーティストが参加
コンピレーションアルバム「WE LOVE Hair Stylistics!」
3月3日(金)17:00 より配信開始!
レコードショップLOS APSON?での爆買いフェアも決定!

糖尿病による合併症等で現在緊急入院中の中原昌也を支援するプロジェクトとして、コンピレーションアルバム「WE LOVE Hair Stylistics!」の配信が決定。併せて、本プロジェクトに参加している豪華17組のアーティストが明らかとなりました。また、東京・高円寺のレコードショップ LOS APSON?では「第二回ヘア・スタイリスティックス爆買いフェア!!!」の開催が決定。


コンピレーションアルバム「WE LOVE Hair Stylistics」
作家・映画評論家、そして「Hair Stylistics」名義でミュージシャンとしても活動する中原昌也の緊急入院に伴い、支援プロジェクトとしてコンピレーションアルバムの配信企画が始動。
全17組のアーティストによる18曲が収録されており、今後音源が追加される場合は公式ツイッター(https://twitter.com/savemasaya1?s=20)にて随時告知が行われます。

bandcamp URL:
https://savenakahara.bandcamp.com/album/we-love-hair-stylistics

参加アーティスト一覧 *敬称略/50音順
A Virgin
石橋英子
石原洋
井手健介
Queer Nations
工藤冬里
コサカイフミオ
坂本慎太郎
ジム・オルーク
食品まつりa.k.a foodman
T.Mikawa
Texaco Leather Man
DerekGedaleciaToriKudoRichHoush
2MUCH CREW
TORSO
山本逹久
渡邊琢磨

第二回ヘア・スタイリスティックス爆買いフェア!!!
Hair Stylisticsの自主制作CD-Rシリーズを応援している、東京・高円寺のレコードショップLOS APSON?。「第二回ヘア・スタイリスティックス爆買いフェア!!!」では、自主制作CD-Rシリーズを3枚買うとVIOLENT ONSEN GEISHAのレアカセット「SUPER SLY」のCD-R復刻版を特典としてプレゼント! 激しい絶叫も記録されているほか、コラージュやテープ回転変調&逆回転の源流も感じられる貴重な内容で、中原昌也の音楽活動をこれまでのファンのみならず新たなリスナーへと届ける試みとなっています。また、5枚購入者には前回のフェア開催時(https://www.losapson.net/blog/index.php?e=1088)も好評を博した中原昌也の初期ワークス重要作、VIOLENT ONSEN GEISHA「SHOCKING EARLY WORKS 83-85」のCD-Rもプレゼント!
本企画とは別途、中原昌也によるオリジナルアート原画やBandcampのみで販売する支援アイテムで入院費用等への支援も行う予定です。

LOS APSON?
〒166-0003 東京都杉並区高円寺南4丁3‐2 三光ビル1F

yahyel - ele-king

 次世代を担うバンドとして彼らが浮上してきたのが2010年代半ば。その後2018年にセカンド・アルバム『Human』で大いに飛躍を遂げた東京の4人組、ヤイエルが5年ぶりに帰ってきた。
 この間、ほんとうにいろんなことが起こった。敏感なアンテナを有する彼らもまた、それぞれに思うところがあったにちがいない。はたしてそれは、どのように音楽へと昇華されたのだろうか。
 まずは3月8日、『Loves & Cults』と題されたひさびさのアルバムがリリースされる。その後3月下旬から4月頭にかけ、名古屋、梅田、渋谷の3年を巡回。ヤイエルの新たな船出に注目したい。

先日アナウンスされたyahyel5年振り最新作「Loves & Cults」のアートワークとトラックリストが公開された。そして、同時発表を行った名古屋、大阪、東京を巡るリリース・ツアーの前売り一般チケットも本日から発売開始する。

“Loves & Cults” は、加熱した時代、愛と狂信の望まない類似性をテーマにしたアルバムとなっている。人間の不確かさを巡る、誠実さへの問いかけはyahyelの脈々と通底するテーマ。しかし同時に、今作がこの5年間の間に、人間が新たに生み出した怪物に向き合っているという意味で、”群れ”の中の人間の視座が新たに加味されている。それは結果的に、かつてのような個々を重んじるプレイヤーの集まりとしてではなく、摩擦の先にある、バンド(≒小社会)”yahyel”しか鳴らせない音像として結実することとなった。”Loves & Cults”は、まさに長い時間をかけて固まっていった大陸のような作品であり、その歪で予定調和のない造形の中に込められた対話への願いが、異質なリアリティとして浮き上がる”怪作”となっている。愛と狂信の境界はどこか。2023年のyahyelに注目だ。

■作品概要
Artist : yahyel
Title : Loves & Cults
Label : LOVE/CULT
Date : 2023.3.8[ Wed ]
Cat # : LC004 ※Digital Only

Tracklist
01. Cult
02. Karma
03. Highway
04. ID
05. Mine
06. Sheep
07. Slow
08. Eve
09. Four
10. Love
11. kyokou

■作品紹介
東京を中心に活動するyahyelが5年の歳月をかけた最新作”Loves & Cults”をリリースする。
2015年に忽然と現れたyahyelは、10年代のポストダブステップ的な感性、出自など関係ないような独特のボーカルライン、猟奇的なライブパフォーマンス、予想外の映像作品など当時の真新しいアイディアを詰め込んだ特異な存在だった。”日本の音楽≒J-Pop”という呪いにかかった東京の街へのアンチテーゼは、”破竹の勢い”とも形容されるほどだった。

そして、世界的なパンデミックを目前にした2019年、yahyelは突然の沈黙に入る。

本人が”糸口の見えない世界の混沌に滅入っていた”と認めるように、 社会と音楽の一進一退の歩みは、彼らにそれだけのインパクトを残したものだった。再定義、線引き、分裂、その中での希望と失望。社会=共同体が、それぞれの正義を掲げて両極化に突き進んだ赤い熱の時代。双方の主張はフェイクニュースと断じられ、仮想敵はカルトじみた存在に仕立てられ、身内はラブの名の下に扇動される。
人の、あらゆる事象への執着が愛から来るものなのか狂信からくるものかは、あくまで不完全な自我が生み出す主観的な感覚でしかなく、社会という相対性の中では非常に脆いものである。音楽という営みなど、カウンターの霞に追いやられ、もれなくyahyelもその問題に向き合っていく。
バンドを小さな共同体として見た場合、我々は一つの社会として何を結論づけるのか。なぜ、我々はここで音を鳴らすのか。“Loves & Cults”は愛と狂信の表裏一体さを意識せずにはいられない、それでも人と人が対話をするという理想を捨てきれない、人間の”群れ”の中に傍観者として立ち尽くすことの憂鬱をテーマにした作品となっている。

おどろおどろしい合唱とサイバーな儀式のような狂騒が印象的なオープニング曲 ”Cult”では、痛烈にカルトじみた世相を皮肉りながらも、その混沌とした音像は迷いの中に立ち尽くしている。アルバムのストーリーはすでにシングルカットされている”Highway”、”ID”などを通過しながら、形而上学的な問いの中で、骨太で90年代のアートロックのような文脈で深まっていく。完全なロックチューンとなった”Four”は、まさにこの時期のyahyelの進化を如実に表しており、”4人でバンドとして音楽をする”ということに対するアンサーになっているともとれるだろう。個人主義から共同体へという流れはまさに20年代らしいが、その結論が一筋縄ではいかないのがyahyelらしく、バンドのリアリティを内包しているとも言えるのかもしれない。そして、アルバムのストーリーは一つの臨界点、アンセム”Love”へと導かれる。アルバムタイトルにある通り、”Cult”への皮肉から始まった物語は、”Love”は何なのかという問いを残して終わるのだ。

yahyelの作品は、3作目となった今でも一貫したテーマを周回している。それは人間の不確かさを巡る、誠実さへの問いかけである。今作がこの5年間の間に、人間が新たに生み出した怪物に向き合っているという意味で、時代に対するyahyelの解答ということにもなるだろう。それは結果的に、かつてのような個々を重んじるプレイヤーの集まりとしてではなく、摩擦の先にある、バンド(≒共同体)”yahyel”しか鳴らせない音像として結実している。”Loves & Cults”は、まさに長い時間をかけて固まっていった大陸のような作品であり、その歪で予定調和のない造形の中に込められた願いが、異質なリアリティとして浮き上がる”怪作”となっている。

■ツアー情報
yahyel "Loves & Cults" Album release tour

2023年3月22日(水)
名古屋 CLUB QUATTRO
18:45 開場/ 19:30 開演
ぴあ : https://w.pia.jp/t/yahyel/
ローソン : 42590
イープラス : https://onl.tw/uf6EcBc

2023年3月23日(木)
梅田 CLUB QUATTRO
18:45 開場/ 19:30 開演
ぴあ : https://w.pia.jp/t/yahyel/
ローソン : 56616
イープラス : https://onl.tw/uf6EcBc

2023年4月5日(水)
渋谷 WWWX
18:30 開場/ 19:30 開演
ぴあ : https://w.pia.jp/t/yahyel/
ローソン : 75386
イープラス : https://onl.tw/uf6EcBc

■yahyel profile :
2015年東京で結成。池貝峻、篠田ミル、大井一彌、山田健人の4人編成。エレクトロニックをベースとしたサウンド、ボーカルを担当する池貝の美しいハイトーンボイス、映像作家としても活躍する山田の映像演出を含むアグレッシブなライブパフォーマンスで注目を集める。2016年、ロンドンの老舗ROUGH TRADEを含む全5箇所での欧州ツアー、フジロックフェスティバル〈Rookie A Go Go〉ステージへの出演を経て、11月にデビュー・アルバム『Flesh and Blood』を発表。翌2017年には、フジロックフェスティバル〈Red Murquee〉ステージに出演、さらにWarpaint、Mount Kimbie、alt-Jら海外アーティストの来日ツアーをサポートし、2018年3月に、さらに進化した彼らが自身のアイデンティティを突き詰め、よりクリアで強固なものとして具現化することに挑んだセカンドアルバム『Human』をリリース。その直後のSXSW出演を経て、フランスのフェス、韓国・中国に渡るアジアツアー、SUMMER SONICなどに出演。同9月にはシングル「TAO」をリリース。楽曲、ミュージックビデオの両方を通じて、yahyelの芸術表現が完全に別次元に突入したことを証明した。同じく11月には水曜日のカンパネラとのコラボ楽曲「生きろ」をリリース。2019年には再びSXSWに出演、米NPR、英CRASH Magazineなど数多くの海外メディアに紹介される。パンデミックの最中に開催された2020年のワンマンライブを最後に、突然の沈黙期に入ったyahyelは、扇情と混沌のユーフォリアから起き上がろうとする2023 年の世界に呼応するように、新たなフェーズへの密かな胎動を繰り返している。

Black Country, New Road - ele-king

 昨年のフジでは全曲新曲というチャレンジングな姿勢を見せつけたロンドンの若き6人組、ブラック・カントリー・ニュー・ロード。この4月頭には単独来日ツアーも決定している同バンドから、嬉しいお知らせの到着だ。
 昨年12月、彼らはロンドンのブッシュ・ホールなるヴェニューにて、なかなか趣向を凝らしたパフォーマンスを3回にわたっておこなっているのだが(回ごとに「学芸会」だったり「おばけ」だったり「牧歌的田園」だったり、ヴィジュアル・コンセプトが異なる)、その模様が昨日、YouTubeで公開されている。

 そしてここで披露された新曲9曲がなんと、『Live at Bush Hall』として音源化、日本限定でCD化されることになった。
 この『Live at Bush Hall』はバンドにとってアイザック・ウッドが脱退してから最初のリリースであり、新体制となって以降に書かれた曲で構成されている。文字どおり、新たな出発というわけだ。来日ツアーにそなえ、ぜひとも聴きこんでおきたい。
 なお、昨年来日時のインタヴューはこちらから。

Black Country, New Road

ブラック・カントリー・ニュー・ロード

完売となった話題のロンドン公演を映像作品として発表!
あわせて9曲の新曲を収録した最新作『Live at Bush Hall』が
日本限定でCD化決定! 3/24発売!

数量限定のTシャツセット、タワーレコード限定の
トートバッグ・セットも発売!

待望の初単独ジャパンツアーはチケット発売中!
フジロックの感動が再び!

昨年リリースされた2nd『Ants From Up there』が、全英3位を記録し、数多くのメディアが年間ベストチャートでトップ10にリストアップするなど大絶賛を浴びたブラック・カントリー・ニュー・ロード(以下BC,NR)。初来日となった昨年のフジロックでは「セットリストを全て新曲で構築」という大胆な姿勢で臨み、圧倒的演奏力と感情を揺さぶる歌声で、観客の涙腺は崩壊! SNSでトレンド入りも果たすなど大きな反響を生み、今年4月には初の単独来日ツアーも決定している彼らが、完売となった話題のロンドン公演のフル・ライブ映像作品を公開! 今回の映像と音源はロンドンのブッシュ・ホールで行われた3公演のドキュメントである。また、映像化された9曲の新曲を収録した最新作『Live at Bush Hall』が日本限定でCD化され、3月24日に発売することが発表された。数量限定のTシャツセットや、タワーレコード限定のトートバッグ・セットも発売される。

Black Country, New Road - 'Live at Bush Hall'
https://youtu.be/VbHV8oObR54
ブッシュ・ホールで行われたライブは、バンドにとって新たな始まりとなるものだった。2022年の初め、BC,NRは全英3位のアルバム『Ants From Up There』(マーキュリー賞候補のデビュー作『For the first time』に続く、12ヶ月ぶり2度目の全英トップ5アルバム)をリリース、ファンや評論家から称賛され、数々の満点レビューを獲得、r/indieheads、Rate Your Musicでのファン投票での1位、Pitchfork読者投票の3位、日本ではrockin’onやele-kingなど世界中の年間ベストで高評価を記録した。

前作『Ants From Up There』がリリースされる数日前にフロントマンのアイザック・ウッドはバンドから離れることとなり、BC,NRは残ったメンバーのルイス・エヴァンス(サックス/ヴォーカル)、メイ・カーショウ(キーボード/ヴォーカル)、ジョージア・エラリー(ヴァイオリン/ヴォーカル)、ルーク・マーク(ギター/ヴォーカル)、タイラー・ハイド(ベース/ヴォーカル)、チャーリー・ウェイン(ドラム/ヴォーカル)の6人から成る新体制となり、ライブ用に全く新しい楽曲を書くこととなった。 彼らは短期間で作り上げた楽曲を、Primavera、Green Man、Fuji Rockなどの世界各地の大型フェスで披露し、新たなパフォーマンスは英Rolling Stone誌や、The Guardian紙、NY Times紙など様々なメディアから賞賛を受け、昨年のAIM Independent Music Awardsの "Best Live Performer" にノミネートされるなど、注目を集めた。

今回公開された3日間にわたるロンドンのブッシュ・ホールでのライブ・パフォーマンス映像の監督はグレッグ・バーンズが担当し、音源はPJハーヴェイのコラボレーターでもあるジョン・パリッシュがミックスを行った。メンバーのルイス・エヴァンスは、次のように語る。

これは瞬間をとらえたものなんだ
この8ヶ月間、ツアーで演奏してきた曲の小さなタイム・カプセルのようなもの
- Lewis Evans

12月に行われたこのロンドン公演では、公式にリリースされた楽曲ではないにもかかわらず、観客がバンド共に歌い上げ、バンドとファンとの絆の強さを証明した。
BC,NRにとって、典型的なやり方でライブを映像化し、ありきたりな方法で公開するというアイデアは、魅力的ではなかった。

過去に見た、あるいはやったライブ・セッションの映像化のやり方には懸念があったんだ。
複数の公演での演奏が視覚的にまとめられていて、そのため実際の演奏からは離れたものとなってしまい、人工的でライブとは思えないような印象を与えてしまう。そこで僕たちは、3つの夜がそれぞれ異なるビジュアルに見えるようにするアイデアを思いついた。僕たちは、正直に、3回演奏したことをみんなにわかるようにしたかった。ノンストップで演奏しているわけではないんだとね。
- Luke Mark

学校劇、牧歌的なシーン、幽霊の出るピザ屋など、アマチュアの演劇にインスパイアされた独自のテーマと美学が各夜に設定されていた。学校のプロム・パーティーの終わりのようなシーンもあった。

僕たちは架空の劇というアイデアを思いついたんだ。
架空のあらすじを書き、登場人物に扮し、それぞれの劇のプログラムやセットを作った。
本当にエキサイティングで、楽しかったよ。
- Lewis Evans

また、今回のライブでは友人やファンにも協力してもらったという。ペンキ塗りやセット作り、カメラを渡されたり、電話で撮影を指示されたりして、物作りを手伝った人もいた。そして、これらのすべての人のスタイル、物語、視点を織り交ぜた独特のビジュアルが生み出された。

映像を作るなら、人間味のあるものにしようと思ったんだ。
この作品を作っている時に、多くのファンが曲を広めてくれて、僕らが曲を出さなくても、みんなが曲を聴くことができるようになったんだ。
この映画を作るにあたって、僕らの活動を支えてくれている人たちを巻き込むのはいいことだと思ったんだ。
- Luke Mark

日本限定でCD化される待望の最新作『Live at Bush Hall』は3月24日にリリース! 数量限定のTシャツセット、タワーレコード限定のトートバッグ・セットも発売される。

また、BEATINK.COMではブッシュ・ホールで行われたライブ・レポートを公開中!
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=13199

今年2022年、ブラック・カントリー・ニュー・ロードは、2月にセカンド・アルバム『Ants From Up there』をリリースした。その発売の4日前に、主要メンバーがバンド離脱という危機的状況に一度は陥ったものの、確固たる想いを胸に6人で再始動し、更なる進化を証明してみせた。初来日となった今年のフジロックでは「セットリストを全て新曲で構築」という大胆な姿勢で臨み、圧倒的演奏力と感情を揺さぶる歌声で、観客の涙腺は崩壊! YouTubeでも配信されたそのパフォーマンスは全国の音楽ファンを魅了し、SNSでトレンド入りも果たすなど大きな反響を生んだ。そんな彼らの初単独ジャパンツアーが決定!!ポストロックな曲調にホーン、ストリングスを重ね、どこか上品な一面を持ちながらも大迫力で、時には狂暴なプレイを見せてくれる彼らのライブは、今や世界中でソールドアウトを重ねている。ロックシーンの最前線を駆ける彼ら “BC,NR” にとって記念すべき初の単独来日公演。そのライブは、きっとオーディエンス一人一人の記憶に強烈に刻まれることになるだろう。

また、今回のジャパン・ツアーでは数量限定のチケット+Tシャツセットの発売も決定! チケット+Tシャツセットでしか手に入らないファン必携の限定デザインTシャツ!

名古屋公演
2023年4月4日(火)
名古屋 CLUB QUATTRO
INFO:名古屋クラブクアトロ 052-264-8211 [ http://www.club-quattro.com/ ]

大阪公演
2023年4月5日(水)
梅田 CLUB QUATTRO
INFO: SMASH WEST 06-6535-5569 [ https://www.smash-jpn.com ]

東京公演
2023年4月6日(木)
渋谷 O-EAST
INFO:BEATINK [ www.beatink.com ] E-mail: info@beatink.com

[全公演共通]
OPEN 18:00 / START 19:00
前売チケット: ¥6,800 (税込)
別途1ドリンク代 / オールスタンディング
※未就学児童入場不可
前売りチケット+Tシャツセット: ¥11,300 (税込/送料込)

チケット情報

一般発売:12/17 (土)〜
イープラス
ローソンチケット
チケットぴあ
BEATINK

企画・制作: BEATINK
INFO: www.beatink.com / info@beatink.com

label: Ninja Tune / Beat Records
artist: Black Country, New Road
title: Live at Bush Hall
release: 2023.03.24

商品ページ:
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=13274

Tower Records:
https://tower.jp/artist/discography/2795695?sort=RANK&kid=psg01

Powell + LCO - ele-king

 パウウェル、ひさびさのリリース情報だ。
 コンセプチュアルなエレクトロニック・ミュージックを得意とするロンドンのこのプロデューサーは、2020年にマルチメディア・プラットフォーム「a ƒolder」を始動、しばらくはその関連作に専念しつつ、2021年には〈Editions Mego〉から合成ピアノの作品集を出したりもしていたわけだが……その後しばらく音沙汰が途絶えていた。
 このたび2月24日に発売される新作は、ロンドン・コンテンポラリー・オーケストラ(LCO)とのコラボレイション。オーケストラ、といってもLCOは柔軟な考えを持つ楽団で、これまでアクトレストム・ヨークなどに協力してきている(今回の作品には参加していないが、メンバーのひとりオリヴァー・コーツはソロでも名をあげている)。
 『26 Lives』と題された新作は、2022年1月16日にロンドンのバービカン・センターでおこなわれたパフォーマンスを収録(ケージやミカ・リーヴィ、アルヴィン・ルシエ、モートン・フェルドマンらの作品を演奏するコンサートの一部)。コントラバス、チェロ、ヴィオラ、クラリネット、フルート、マリンバが使用されているらしいが、どうやらたんにエレクトロニクスとオーケストラを融合した作品ではないようで、両者の境界は不明瞭、アコースティックなのかデジタルなのかわからないアルバムに仕上がっているとのこと。パウウェルらしく、やはりコンセプトがあるようだ。ちなみにマスタリングはラッセル・ハズウェル。
 考える人、パウウェルの新たな試みに注目したい。

artist: Powell + LCO
title: 26 Lives
label: Diagonal
release: 24th Feburary 2023
tracklist:
01. 3
02. 23
03. 6, 8
04. 13, 12
05. 10, 14, 4
06. 14, 23, 18
07. 19
08. 24
09. 20, 25
10. 26

Sleaford Mods - ele-king

 3月に新作『UK GRIM』のリリースを控えたスリーフォード・モッズが、収録曲の “Force 10 From Navarone” のMVを公開した。これは、ドライ・クリーニングのフローレンス・ショウをフィーチャーした曲で、新作の目玉の1曲でもある。とにかくカッコいいので聴いてみて。

Sleaford Mods - Force 10 From Navarone

 ジェイソンいわく。「俺たちはドライ・クリーニングの大ファンで、フローレンスがこの曲にぴったりだとわかっていた。彼女は本物で、そのたった一言で全体のストーリーを伝える方法で俺がウータン・クランから受けるようなインスピレーションを呼び起こす」
 戦争から物価高、右翼に保守党、生活がめちゃくちゃにされた庶民の怒りを乗せたアルバムの発売は3月10日。なお、エレキングでは当然のことながらインタヴューを掲載します。こうご期待!

Matthewdavid - ele-king

 LAのアンビエント/ニューエイジ・シーンの筆頭にして、レーベル〈Leaving〉の主宰者としても知られるプロデューサー、マシューデイヴィッド。その新作EPが1月31日にリリースされている。タイトルはストレートに「マッシュルームについて」。年内に予定されている久しぶりのフル・アルバム『菌糸体音楽』と対をなすものだという。明確にトリップを志向しています。きらきらした夢見心地の音楽を楽しみましょう。

Leaving Recordsの創設者Matthewdavidが今年リリース予定の待望の新作アルバム
『Mycelium Music』に先立つEP「On Mushrooms」をリリース

Leaving Recordsの創設者でもあるMatthewdavidが今年リリース予定の待望の新作フル・アルバム『Mycelium Music』に先立つプライマーとして、アルバムと対をなすEP「On Mushrooms」をリリースしました。
このEP、アルバムの両作品は同じ生態系から表現され、同じ生地から切り出されたものであり、Matthewdavidの最新のサウンドの探求がどこへ向かうのかを予感させる表現力豊かで、エレクトロニックなエネルギーとアンビエントな反射音が合流し、鮮やかな輝きを放っている、来る新作フル・アルバムへの期待が否応無しに膨らむEPです。

Matthewdavid new EP “On Mushrooms” out now

Artist: Matthewdavid
Title: On Mushrooms (A Primer for Mycelium Music)
Label: PLANCHA / Leaving Records
Format: Digital EP
Release Date: 2023.01.31
Buy/Listen: https://orcd.co/obb5g8d

1. Culebra with Wilkes (feat. Sam Wilkes)
2. Under a Tree
3. A New Ambient
4. Dampener
5. Too High to Play Bear’s Campout (feat. Brin)
6. One4G

*all music + engineering by MatthewDavid except track 1 is a collaboration with Sam Wilkes, and track 5 is a collaboration with Brin.
*artwork + design Sam Klickner
*tracks 1 & 2 performed and recorded for Listen to Music Outside in the Daylight Under a Tree, at La Tierra de la Culebra, in Highland Park, Los Angeles
*tracks 3-6 recorded at home in Los Angeles

“私の音楽は真実を明らかにするための幸せな偶然への果てしない探求の結果です。私の部屋にある秘密の抜け穴は、いつもそこにあった答えの境地へと繋がっています。”

決して型にはまらないレコード・レーベル/実験的コミュニティとして絶大な地位を確立しているLAのLeaving Recordsの創始者であるMatthewdavidが今年リリース予定の待望の新作フル・アルバム『Mycelium Music』に先立つプライマーとしてEP「On Mushrooms」を発表。個性的でエッジの効いた、没入感のあるMatthewdavidらしい “ニュー・アンビエント”。

『On Mushrooms』は、LAにあるLa Tierra de la Culebraコミュニティ・アート・パークで定期的に行われているLeaving Recordのイベント「Listen to Music Outside in the Daylight Under a Tree」(日中の屋外で音楽を聴くイベント)で録音された2曲で幕を開ける。生命力溢れるコレクションに相応しく、レーベルメイトのSam Wilkesをフィーチャーした冒頭のトラック「Culebra With Wilkes」ではリヴァービーで穏やかなギターのフレーズにアンビエント的音像が浮遊し、ヒプノティックな世界観が広がる。続く「Under a Tree」では、繊細でミニマルなシンセサイザーが漂い、徐々に天空へと誘われるかのようなサウンドが形成されている。その後はガムランの囁きとドローンがゆっくりと滑らかに交錯し、オーディオリズム奏者Brinとのコラボ曲「Too High To Play Bear’s Campout」では緻密なレイヤー波がうねり、「A New Ambient」での暗号のようなサウンド・コード、そしてクロージング・トラックの「One4G」は、反響の中を沈んでいくように音が広がり幕を閉じる。実験的ながら心地よく幻想的な作品に仕上がっており、Matthewdavidの最新のサウンドの探求がどこへ向かうのかを予感させる表現力豊かなもので、エレクトロニックなエネルギーとアンビエントな反射音が合流し、鮮やかな輝きを放っている。来るフル・アルバムへの期待が否応無しに膨らむEPだ。

以下は、Matt Baldwin(カリフォルニアの著名なギタリスト、作家、サイケデリック心理療法の訓練を受けた心理療法士)が書いた試聴体験談です。

Matthewdavidの新しい音楽を聴きながらケタミン空間(200mgのロゼンジを経口投与)に身を投じたとき、私ははっきりと同様の印象を受けた。特に、この音楽は私が知る前に私のことを知っていて、私に会うために非常に長い間待っていたのだ、ということだ。この音楽は、他の人の意識を媒介にして、ついにその全体性を表現する機会を待ち望んでいたのである。音楽は、空気の圧力波を媒介にして、他人の内面に意味を伝える日常的なテレパシーの一種である。色と音の波が私を貫いていくとき、私は深い相互関係についての非常に明確なメッセージに圧倒され、まさにこの言葉で定式化された。

私たちは、ほとんどの時間を、同じ人間ではないふりをしながら過ごしています。

私たちのコミュニティの重なり合う円は、輝く生きた曼荼羅として私たちの前に横たわっています。

私たちがお願いしたいのは、あなたがここで感じたことを認め、決して忘れないと約束していただくことだけです。

この音楽との出会いは、自分の部屋の床に秘密の抜け穴を見つけて、足元にきらめく洞窟の果てしないネットワークが常に存在していたことに気付くようなものです。さらに、洞窟はどういうわけか生きていて、月相のツィター(スロベニア、オーストリア、ハンガリーなどで見られる、日本の琴を短くしたような弦楽器)の曲の微妙な火が刻まれた秘密のシジル(主に西洋魔術で使われる図形)の淡い金色の線条細工でネットワーク化されています。なお、夢分析では、隠された空間を見つける夢は、自己の可能性の広がりを象徴していることが多い。

Matthewdavidは、静寂と暗闇の隠された双子のような作品を作り上げた。恐怖や孤独の闇ではなく、新しい形を優しく愛撫しながら発芽するビロードのような闇。この音楽の喜びは、その深いプライバシーにある。太陽の光で煌めき、ヒノキの枝のように一日中、夜の断片を抱え込んでいる。それは磁気の光の波に乗って私たちを前進させ、私たちは人間の傷が永遠に癒され、想像力以外の法がない世界の端の向こうの霧深い森に連れて行かれることに気づく。

Yves Tumor - ele-king

 エクスペリメンタルな電子音楽家として〈PAN〉からデビュー、その後〈Warp〉と契約してからは一気にグラム・ロックへと舵を切りその地位を確立したイヴ・トゥモア。パンデミックど真ん中にリリースされた前作から3年、4枚目となるニュー・アルバムが3月17日に発売されることになった。『齧るが喰わぬ主君を讃えろ』なる意味深なタイトルも気になるが、先行シングルとして公開中の “Echolalia” のMVも興味をそそられる映像なのでチェックしておきたい(スウィフトの小説『ガリヴァー旅行記』にインスパイアされたという)。現代のきらびやかなアイコンによる次の一手に期待しよう。

覚醒!!!

異形のロックスター、イヴ・トゥモアが最新アルバム『PRAISE A LORD WHO CHEWS BUT WHICH DOES NOT CONSUME; (OR SIMPLY, HOT BETWEEN WORLDS)』のリリースを発表!

新曲 “ECHOLALIA” 解禁!

国内盤CDとデジタル配信は3月17日!
日本限定カラーのTシャツセットも同時発売!
5月には日本語帯付き限定LPもリリース!

初期には先鋭的な電子音楽作品で独特のアート性と実験性を提示し、〈Warp〉と契約した2018年以降は、グラムロックに接近すると、独自のロック・サウンドを展開しながら大胆に音楽性をスケールアップさせてきたイヴ・トゥモア。いまや次世代のロックスターへと変貌を遂げたイヴ・トゥモアが、キャリア史上最も完成度の高い最新作『Praise A Lord Who Chews But Which Does Not Consume; (Or Simply, Hot Between Worlds)』のリリースを発表! 異形のロック・アイコンとして覚醒したことを確信させる最新作では、ロック、サイケデリア、エレクトロニカを融合させ、ポップミュージックの概念を再構築すると同時に、現代アートとカルチャーの境界線を自由自在に往来する。イヴ・トゥモアの芸術性が頂点に到達したことを証明する名盤となっている。

『齧るが喰わぬ主君を讃えろ』という謎めていて壮大なアルバム・タイトルを冠した本作は、イヴ・トゥモアにとってこれまでで最も私的なステートメントでもあり、暗闇と光、ポップと革新、不協和音と崇高な静寂という相反する要素を織り交ぜながら、多様な精神の旅へとリスナーを導くものである。昨年11月にリリースされたシングル “God is a Circle” を出発点とするアルバムは、一度聴いたら耳から離れない中毒性のあるメロディーと革新的なアレンジに満ち溢れており、あわせて解禁された新曲 “Echolalia” でも、それが見事に証明されている。映像アーティストのジョーダン・ヘミングウェイが監督を務めた “Echolalia” のミュージックビデオは、ガリバー旅行記へのオマージュを込めたコンセプチュアルな映像となっている。

Echolalia (Official Video)
https://youtu.be/Cxk-QeZ6Rus
God Is a Circle (Official Video)
https://youtu.be/dLzFdcNewKU

『Praise A Lord Who Chews But Which Does Not Consume; (Or Simply, Hot Between Worlds)』は、フランク・オーシャン、アーケイド・ファイア、カニエ・ウェストなどラップ/ヒップホップを中心に多方面で活躍するノア・ゴールドスタインをプロデューサーに迎え、ミックスはマイ・ブラッディ・ヴァレンタインやナイン・インチ・ネイルズを手掛けるアラン・モウルダーが担当。イヴ・トゥモアの特徴的なサウンドをさらに増幅させ、抽象的なものに意味を与え、不協和音を調和させることで、現実を希薄化するというイヴ・トゥモアのビジョンを具現化した唯一無二のサウンドが完成した。またコーチェラ・フェスティバルを皮切りに、ワールドツアーを開催することもあわせて発表している。

最新アルバム『Praise A Lord Who Chews But Which Does Not Consume; (Or Simply, Hot Between Worlds)』は、3月17日(金)に国内盤CDとデジタル配信でリリース! 輸入盤CD/LP/カセットテープは5月12日にリリースされ、LPは通常盤(ブラック・ヴァイナル)に加え、限定盤(イエロー・ヴァイナル)、限定盤2LPエディション(ブラック・ヴァイナル)、日本語帯付き仕様盤(イエロー・ヴァイナル/歌詞対訳・解説書付)の4形態で発売される。さらに、国内盤CDと日本語帯付き仕様盤LPは、日本限定カラーのTシャツセットでも発売される。

label: Warp Records
artist: YVES TUMOR
title: Praise A Lord Who Chews But Which Does Not Consume; (Or Simply, Hot Between Worlds)
release (国内盤CD): 2023.03.17
release (輸入盤各種): 2023.05.12

BEATINK.COM (国内盤CD)
BEATINK.COM (輸入盤各種)
BEATINK.COM (限定輸入盤2LP)

tracklist
01. God Is a Circle
02. Lovely Sewer
03. Meteora Blues
04. Interlude
05. Parody
06. Heaven Surrounds Us Like a Hood
07. Operator
08. In Spite of War
09. Echolalia
10. Fear Evil Like Fire
11. Purified By the Fire
12. Ebony Eye

  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140