「Not Waving」と一致するもの

Mike - ele-king

 クラインに対するブルックリンからのアンサー……といってしまおうか。19歳でニューヨークの新たな前衛とされているDJブラックパワーことマイケル・ジョーダン・ボニーマは昨年5月に『Black Soap』がリリースされた時はどうしてこんなに騒がれるのかと不思議だったのだけれど、基本的にはリリックに対する評価が大きかったようで音楽だけで判断できるものではなかった。マイクはクラウド・ラップとは「別種のインターネット・スター」とまで持て囃されていたものの、僕は1〜2回聴いて、それきりだった。しかし、その後に〈レックス〉からリリースされた『Renaissance Man』と年末に放たれた『War in My Pen』というミックステープで、今度は音楽的に耳が止まり、しばらくして、ああ、『Black Soap』の人かと気づいた次第である。改めて『Black Soap』のレビューを探してみると、彼の親はナイジェリア移民で、彼自身はニュージャージーで生まれ育ち、母親に連れられて5歳でロンドンに渡り、それまで聴いていたラップにはなんの興味もなかったものがロンドンでグライムと出会ったことから始めてラップに興味を持ったのだという。その時の「自分探し」の過程をそのままアルバムのテーマとしたものが『Black Soap』で、これがどうやら大きな共感を得たということらしい。ニール・ゲイマンの『アメリカン・ゴッズ』にアメリカ人は自分探しをせず、「わかったフリをしているだけ」というセリフがあったけれど、彼はむしろそれを大々的にやったということになる。そして彼の思いはナイジェリアヘと飛び、歌詞も一部はヨルバ語で歌われ、西アフリカで普通に見かける石鹸=ブラック・ソープのパッケージをジャケット・デザインに流用したことも「自分探し」のヴィジュアル展開だと。『Black Soap』に続く『Renaissance Man』ではあからさまに「Why I’m Here」「Rebirth」と言った曲名が並び、そして、後半で畳み掛けるように続くのがクラインを思わせるドローンじみたトラックの連打。これはどう考えてもロンドン滞在中に同じナイジェリア系のクラインと接触があったか、少なくとも音源に感化される機会があったとしか思えない。NHK「たぶんそうだったんじゃないか劇場」なら、そう結論づけるだろう。

 そして『Renaissance Man』ではまだ借り物という感じでしかなかったサウンド・プロダクションが『War in My Pen』では確実に自分のものとなっているプロセスを確認することができる。あからさまにクラインの影響がそのまま出ているトラックは姿を消し、冒頭の「Choco」や「Nothin’ to Me」ではドローンがループされ、シンプルに仕上げられているにもかかわらず、どこにも隙間のない濃密な音の洪水が耳に注ぎ込まれる。「なんでトリップしてるんだい 自分の楽しみを見つけなよ 賢いニガーはガキの言うことなんか聞かない」と歌い出しながら、「grabba」、「October Baby」とサイプレス・ヒルよりもむせ返えるスモーカーズ・トラックで攻め立て、「オレは肺がつぶれるほど吸ってる」とか「害を及ぼすことと吸うことは別なこと」などと続けていく。ずばり「smoke」と題された曲では「Listening to smoke」と感覚的な歌詞を繰り返し、ラップにありがちな虚勢よりも自分がどこにいるかと言うことを繰り返し言葉にしているのだろう。規模は小さいけれどノーネームに近い心象風景を題材にしているのかなと思ったり(そこまで英語やスラングのニュアンスは僕にはわからない。「We was」とかどう訳すねん?)。「NeverKnocked」や「Rottweiler」で使われている強烈なグリッチ・サウンドはおそらく2年前にグリッチ・シャンソンのネヴェー・ゲット・ユースド・トゥ・ピープルの影響で流行ったティック・トックのグリッチ・チャレンジをヒップホップ的に展開したものなのだろう。これらはあまりにもサイケデリック。そして、クラインよりもどこか陽気な感じがとてもいい。

 ロンドンでグライムに感化されたマイクは、アメリカに戻ってからスラム(sLUms)というポッシを結成している。ゼロ年代のヒップホップはグループが成り立たず、50セントやエミネムと行ったソロMCの時代だと言われていたけれど、この10年はそういったソロMCがゆるくつながっていたという印象があり、ロサンゼルスのオッド・フューチャー、ニューヨークのエイサップ・モブ、そして、エイサップ・モブとは抗争の相手と化してしまうフロリダのレイダー・クラン(スペースゴーストパープ)が個性的な若手を続々と送り出してきた。ヒップホップに興味を持ったマイクも10歳を過ぎた頃にはオッド・フューチャー(のとくにアール・スウェットシャツ)に強く影響を受けたと語っており、シックスプレスやキング・カーター、メイソン、ジャズ・ジョーディといった6人の迷子が一緒にいることで死が身近にある環境でも音楽によって自由をつくりだすことができるのだという。彼らは政治的な見解が一致し、初期には社会的な不安を、最近では希望をラップし始めている。そう、「Like My Mama」はドン、ドンというドラムの音だけで別世界に連れて行かれる。これに変調された声が蚊のようにクルクルと宙を舞い、「PRAYERS」ではスクリュードされたゴスペルのコーラス、「UCR」はまさにクラインへのアンサーとしか思えないドレムレスの展開に突入し、「Red Sox;babylon」に橋渡しされる流れは鳥肌もの。リル・Bとはかなり仲がいいという噂もなるほどという感じでしょうか。リー・ペリーやマッド・プロフェッサーのファンもこれは唸るんじゃないかな。峠を越えて後半4曲は少し落ち着いた展開に戻り、歌詞も真実だとか歴史といった社会派のニュアンスを醸し出すものに。最後にそして、人生に対して妙に弱気な「For You」ですべては閉じられていく。嫌な終わり方というほどではないけれど、それこそ煙がどこかにかき消えてしまうような感触が残り、夢でも見ていたような気分に。

vol.109:NYのたこ焼きパーティ - ele-king

 明けましておめでとうございます。NYはお正月もほとんどなく、私は1/1から普通に働いていましたが、ようやくホリディムードも終わり、平常に戻ってきました。
 私は、ブシュウィックのミードバー(ハニーズ)で、毎月たこ焼きイベントを開催しています。バンドやDJ、ダンサーなどのゲストを招待し、ドリンクやフードを提供し、ミードを飲みながら、たこ焼きを焼いています。場所が場所なのでバンドやアーティストが多く、元ラプチャー、アヴァルナ、ピルなどのメンバーもよく来ます。
 ツアーから戻ってきたばかりだったり、レコーディングの最中だったり、仕事の合間だったり、みんな忙しくしていますが、息抜きは必要。とくにこの辺りは音楽会場も多いし(エルスホエアなど)、サクッと一杯にちょうど良いみたいです。NYはたくさんのバーがあり過ぎますが、働いている人や誰とハングアウトするかによって行く場所が変わります。
 さて、ハニーズでは今回は、Data securityというユニットが登場。音と映像がシンクロするライヴを生でするという試み。あまりの機材の多さに卒倒しそうになりました。スーツケースふたつ分ぐらいの機材だったので。金曜の大会場でダフト・パンクを見ているような、ダンスフロアになりました(火曜日でしたが)。で、そこにNha Mihnというベトナムレストランを経営していた、Fredが来ていました。
https://www.insideelsewhere.com/new-blog-1/nha-minh-healthy-vietnamese-bowls-brooklyn




たこ焼きイベント(ハニーズチューズデー)!

 彼は、ベッドフォードでレストランを経営した後、しばらくケータリングをし、そしてNha Mihnをオープン。彼のNY1美味しいベトナム料理とアートショー、音楽ショー、フリーマーケットなど楽しいイベントをどんどん開催。その間にも彼は別の店でポップアップをしたり、イベントに出店したり、いろんな場所に出没。彼に出演をお願いするとすぐに「良いよ」と返事をもらい、話が決まりました。


Japanese new year bowl
(チキンとごぼうの肉巻き、サツマイモご飯、なます、野菜のゼリー寄せ、レンコン煮)

 NYではたくさんの場所が閉鎖し、たくさんの場所がオープンしています。失敗は当たり前、これがダメなら次はこれと直ぐに立ち直り、模索し、良いものだけが淘汰されていきます。あの会場と彼が手を組んで、こうなるのか、なるほどなど、フットワークが軽い人と話をすると、こんな人がブルックリンを作ってるんだなと感じます。最近ブルックリンでは、ファンドレイザーショーも盛んで、ミュージックショーをしたり、絵を描いたり、タロット占いをしたり、ジュエリーを売ったり、スタンダップ・コメディをしたり、自分ができるなにかで、参加し貢献しています。
 音楽だけのショーは少なくなり、マルチなショーが増えている、と思いますが、いろんなものが合わさって、たくさんのオーディエンスにも届くのが現在的なのでしょう。


Data security


DJ SIM Card

Anderson .Paak - ele-king

 〈ストーンズ・スロウ〉の所属アーティストでもあるナレッジ(Knxwledge)とのユニット、ノーウォーリーズ(NxWorries)のシングル曲“Suede”のスマッシュヒットをきっかけに、ドクター・ドレーの16年ぶりの新作となったアルバム『Compton』に大抜擢され、その後、ドクター・ドレーのレーベルである〈アフターマス〉との正式契約を経て、ついにリリースされたアンダーソン・パークのニュー・アルバム『Oxnard』。『Venice』、『Malibu』に続く、通称「ビーチ・シリーズ」の最後を飾る作品であるが、今回はあえて彼自身の出身地をタイトルに冠しているだけに、過去2作とはまた違った特別な意味合いを持つ。
 ドクター・ドレーがエグゼクティヴ・プロデューサーおよびミックス担当として全面的に関わっている本作であるが、表面的には参加プロデューサーの構成であったり、ゲスト勢がこれまで以上に豪華なメンツであったりといった違いはあるものの、歌とラップを巧みにミックスさせるアンダーソン・パークのヴォーカルを、ウェストコースト・スタイルなヒップホップやファンク・サウンドで彩るという、従来の音楽的な方向性は変化していない。しかし、そこはやはり、これまで様々なアーティストと共にヒット作を生み出してきた、手練れのドクター・ドレーが参加したことによる影響は、このアルバムの至る所に確実に現れている。
 ブラックスプロイテーション・フィルムを彷彿させるジャケット・カヴァーのイメージの通り、70年代テイストなサウンドに乗ってアンダーソン・パークのラップとヴォーカルがスリリングに交差する“The Chase”で幕を開け、そこから先行カットともなった3曲目の“Tints”まで一気にアルバムは進行する。プロデューサーとしてアンダーソン・パーク本人に加えてサーラーのオマス・キースも参加した“Tints”は、『Compton』以来の共演となるケンドリック・ラマーをフィーチャーし、さらにサウンドも生楽器をふんだんに使用したブギー・サウンドということもあり、皆が思い描いていたであろう期待通りのダンス・チューンとなっている。しかし、この曲に続くドクター・ドレーがプロデューサーを務める“Who R U?”では、変則的なビートの上で濃厚なファンクが全面に開花し、一気にサウンドのスタイルが変化。ちなみにドクター・ドレーがプロデューサーとしてクレジットされているのは、この曲に加え、自らラップも披露している“Mansa Musa”、Q・ティップもプロデューサーとしている名を連ねている“Cheers”、さらにボーナス・トラックの“Left To Right”の4曲のみだが、どの曲も実にキャラが立っており、アルバムの流れの中で重要なポジションを占めている。もちろんどのトラックもドクター・ドレーが一から作ったものではないであろうが、トラックの最終的な決定権を彼自身が持つという意味では、その耳は常に一貫している。ちなみに“Left To Right”ではベースにサンダーキャット、コーラスとしてバスタ・ライムスがひっそりと参加しているのだが、こんな組み合わせを実現できるのもやはりドクター・ドレーならではだろう。
 前述のケンドリック・ラマーを筆頭にプッシャ・T、J・コール、Q・ティップ、BJ・ザ・シカゴ・キッドなどそうそうたるメンツがフィーチャリングされているが、アンダーソン・パークとの組み合わせの妙という部分も含めて、いずれもクオリティは高い。なかでもケンドリック・ラマーなど〈TDE〉作品にも多数参加してきたジェイソン・パウンズがプロデュースを手がける“Anywhere”は、ゲストのスヌープ・ドッグが見事なハマりっぷりで、ウェストコースト色の濃い最高のメローチューンに仕上がっている。また、“Anywhere”では女性コーラスによるワン・ウェイ“Cutie Pie”のフレーズもひとつの聞き所であるが、女性ヴォーカルの使い方が非常に秀逸なのも本作の特徴だ。特に1曲目の“The Chase”でもクレジットされているシンガーのカディア・ボネイと、“Mansa Musa”にてドクター・ドレーと共に参加しているココア・サライのふたりに関しては、ほとんどの曲でいずれか片方がコーラスでも参加しており、このふたりの存在が作品に豊かな彩りを与えているのは間違いない。
 と、ここまで書いておきながら、本作の評価は前作『Malibu』と比べて、残念ながらそれほど高くはない。傑作と評された『Malibu』に続く作品であり、さらにドクター・ドレーがエグゼクティヴ・プロデューサーを務めたことで期待値が非常に高まっていたがゆえに、その反動とも思えるが、個人的には十分に期待の水準を超えた作品である。もちろん、前作における“Come Down”や“Am I Wrong”のようなパンチ力のある曲がもっとあればこの作品の評価もまた変わったであろうが、しかし、アルバム全体の構成力なども含めて、完成度は非常に高い。今後もドクター・ドレーのもとで、アンダーソン・パークがアーティストとしてどのように成長していくかが楽しみだ。

Sarathy Korwar and Upaj Collective - ele-king

 かつてのインドはイギリスの事実上の植民地だったこともあり、イギリスにはインド系の移民やその子孫が多い。そして、インドの食や生活文化はイギリスの中にも大きく入り込み、音楽においてもその影響は強く表われている。ジャズの世界でも1960年代よりインド音楽のスタイルや楽器を取り入れた作品が出はじめ、いまもそうしたジャズとインド音楽の融合は続いている。2018年なら春先にリリースされたユナイティング・オブ・オポジッツの『アンシエント・ライツ』がその好例で、またこの年末にはサラシー・コルワルの『マイ・イースト・イズ・ユア・ウェスト』という素晴らしいリリースがあった。タイトルどおり東洋と西洋が音楽を介して交わったアルバムである。

 サラシー・コルワルはアメリカ生まれのインド系ミュージシャンで、子供の頃にインドへ移り住み、その後大学への進学でロンドンへ移住し、それ以降はイギリスを拠点に活動をおこなっている。インドの古典楽器のタブラを、シュリ・ラジーフ・デヴァスシャリとパンディット・サンジュ・サハイというインドのその道の専門奏者に学び、ドラム・キットにタブラを組み込んで演奏する手法を確立する。ロンドンの大学では東洋とアフリカ音楽の楽理と研究を専攻し、卒業後はプロのドラマー/パーカッション奏者としていろいろなセッションに参加する。カール・ベルガーなどのヴェテランからさまざまなインドの古典音楽の演奏家たちとセッションし、カマシ・ワシントンのツアー・サポートを務め、シャバカ・ハッチングスビンカー&モーゼスなどロンドンの新しい世代のミュージシャンと共演する中、2016年にファースト・ソロ・アルバムの『デイ・トゥ・デイ』をリリース。スティーヴ・リード基金の援助を得てレコーディングしたこのアルバムには、シャバカ・ハッチングスやメルト・ユアセルフ・ダウンのベーシストのルース・ゴラーのほか、数多くのインド人ミュージシャンやシンガーが参加した。現代的なジャズ演奏にインド音楽特有のラーガという旋法や古典楽器演奏を取り入れ、ジャズと第3世界の民族音楽の融合という側面を見せると同時に、それはテクノやミニマル、アンビエントの要素にも繋がるもので、〈ニンジャ・チューン〉からのリリースということもなるほどと思わせる作品だった。このアルバムからはテンダーロニアスやエマネイティヴなどによるリミックス集も発表され、その後リリースされたテクノDJのハイエログラフィック・ビーイング(ジャマル・モス)、シャバカ・ハッチングスとの共作となるEP「A.R.Eプロジェクト」(2017年)は、『デイ・トゥ・デイ』の実験性をさらにテクノ~エレクトロニック方面へと拡張させたものだった。

 今回リリースした『マイ・イースト・イズ・ユア・ウェスト』は『デイ・トゥ・デイ』から2年ぶりのアルバムで、2018年2月に北東ロンドンのジャズ系の人気イベント「チャーチ・オブ・サウンド」でのライヴ録音となる。このライヴはサラシーとウパジ・コレクティヴというインド系ミュージシャンが主となるグループの共演で、打楽器奏者のBCマンジュナスやフルート奏者のアラヴィンダン・バヒーラサン、シンガーのアディチャ・プラカシュなどに混じり、アフロ・ジャズ・バンドのカラクターのリーダーとして知られるサックス奏者のタマル・オズボーンも参加している。なお、リリース元の〈ギアボックス〉はビンカー&モーゼスやブッチャー・ブラウンなどの作品をリリースし、モーゼス・ボイドアシュレイ・ヘンリーなどもサブ・レーベルからリリースするなど、いまの新しいジャズを牽引すると同時に、マイケル・ガーリックやニュークリアスなど古い英国ジャズやジャズ・ロックの未発表音源を発掘したり、サン・ラーやユゼフ・ラティーフなどのリリースまでおこなっている。1960年代にジャズとインド音楽の融合に貢献したジョー・ハリオットの音源から、ドラムンベースやUKソウルにインド音楽の要素を取り入れたニティン・ソウニーの作品も出しているので、今回のサラシーのリリースも非常に的確なものと言える。

 演奏曲目は全てカヴァーとなり、ファラオ・サンダースとレオン・トーマスの“ザ・クリエイター・ハズ・ア・マスター・プラン”、アリス・コルトレーンの“ジャーニー・イン・サッチダーナンダ”、ドン・チェリーの“ユートピア・アンド・ヴィジョンズ”、ジョン・マクラフリンとシャクティの“マインド・エコロジー”、アマンシオ・デシルヴァの“ア・ストリート・イン・ボンベイ”、ジョー・ヘンダーソンの“アース”など。インドの民謡やラヴィ・シャンカルの曲もやっているが、大半は1960年代末から1970年代にかけてのインド音楽を取り入れた欧米のジャズ、およびジャズとインド音楽の融合を図ったフュージョンなどで、いわゆるスピリチュアル・ジャズに属する曲も多い。この中では南インドのゴア出身で、イギリスに渡ってジャズ~ジャズ・ロック~サイケの分野で活動したギタリストのアマンシオ・デシルヴァが、サラシーにとってそのキャリアや音楽性の形成の上で重なるところがあるかもしれない。シタールの神秘的な音色に始まる“ア・ストリート・イン・ボンベイ”から、原曲から大きく変化した大胆なアレンジによる“ザ・クリエイター・ハズ・ア・マスター・プラン”と、単なるカヴァー演奏にとどまらない非常にクリエイティヴな即興演奏が繰り広げられる。観客の歓声を交えたライヴならではのテンションやエモーションの高さは、スタジオ録音の『デイ・トゥ・デイ』とは比較にならない。“マインド・エコロジー”や“ミシュランク”でのトライバルでトランス感を伴ったドラムとパーカッション群および弦楽器のアンサンブル、“ハジ”でのケチャのような怒涛のヴォイス・パフォーマンス、重厚でスピリチュアルな演奏が宇宙へと誘うような“アース”と、全体で2時間近くに及ぶパフォーマンスだが一時も気を抜くことができない濃密な時間が流れる。そして、最後の“ユートピア・アンド・ヴィジョンズ”に象徴されるピースフルで牧歌的な空気。ドン・チェリーが描いた天上の楽園世界を現代に継承する作品である。

Mark Stewart - ele-king

 1982年にリリースされたマーク・スチュワート&ザ・マフィアの最初の12インチがどれほどの衝撃だったことか──ひとつにはダブの音響実験がある。プロデューサーのエイドリアン・シャーウッドは、ジャマイカ生まれのダブの技法をこの作品において極限まで拡大して、カット・アップによるサウンド・コーラジュとの境界線を消失させている。演奏しているのはレゲエ・バンドのクリエイション・レベルのメンバーであったり、やがてアフリカン・ヘッド・チャージとして活動するメンバーだったりするのだが、ザ・マフィアの演奏は、シャーウッドのダブ処理において伝統的なレゲエとは切り離され、都市の寒々しい灰色の風景に地響きを与えるものとなった。泣きわめいているマーク・スチュワートの声が、その破壊的なサウンドと一体化したとき、虚飾に満ちた都市の化けの皮は剥がされて、力強いダンス・ミュージックが現出する。これがふたつ目の襲撃だった。
 続いて1983年にリリースされたのが、マーク・スチュワート&ザ・マフィアのデビュー・アルバム『ラーニング・トゥ・コープ・ウィズ・カワディス』だった。ザ・マフィア名義で録音された唯一のアルバム。12インチにも収録された“リヴァティ・シティ”は、2019年の現在聴いても名曲であり続ける。それは不吉な未来に向かっている東京にお似合いの、滅びゆく都市の鎮魂歌のようだ。

 『ラーニング・トゥ・コープ・ウィズ・カワディス』は新たに発掘された10曲(!)の未発表曲集を加えた2枚組として2019年1月25日に発売される。未発表曲もあなどれない。なにしろこの黄金のメンバーで録音された音源であり、マーク・スチュワートもエイドリアン・シャーウッドももっとも過激な実験に取り組んでいた時代の記録なのだから。

 マーク・スチュワート&ザ・マフィアの三つ目の衝撃をいうならそのアートワークである。当時の彼らがCRASSなどのアナルコ・パンクとリンクしていたという事実がうかがえるだろう。日本盤はトラフィック・レーベルから。お楽しみに。

ALTZ - ele-king

 大阪のコズミック大将ALTZによるバンド・プロジェクト、ALTZ. Pがいよいよアルバムをリリースする。ヌケの良いシンセベースによる艶めかしいファンクからはじまる『La Toue』と題されたそれは、大阪独特のいかがわしいサイケデリアがまばたきしたとたん崇高に見え、しかし目をこすった途端バカバカしく見えてしまうという、腐食性と精神性をかねそなえたキッチュなリアリズムと幻想を展開する。素晴らしい女性コーラス隊はときにソウルフルで、鬼才Pulseman、元NEWEST MODELのドラムスMau&ベースのシェイク吉村の叩き出す中東ディスコ・ビートに酔いながら、リスナーはいつの間にか昇天するでしょう。
 日本の土着性をどう切り捨て/取り入れるかという点では、食品まつりやGroundなんかとも共通する志向があり、幻想的な冒険は、クラブ・カルチャーには興味ないリスナーをも踊らせるでしょう。ぜひぜひ、チェックしてください。ピース。


ALTZ. P
La Toue

ALTZMUSICA
https://www.altzmusica.com/

Binkbeats - ele-king

 これは興味深い。まずはこのエイフェックス“Windowlicker”のカヴァー動画を視聴してみてほしい。あの楽曲を人力で、しかもたったひとりで再構築してしまうこの人物、ビンクビーツ(Binkbeats)というオランダのプロデューサーである。他にもフライング・ロータスラパラックスアモン・トビンなどのエレクトロニック・ミュージックをがしがしひとりでカヴァーしているからすごい。アンダーグラウンドの最尖端に敏感なDJクラッシュの最新作『Cosmic Yard』にもフィーチャーされていたので、それで気になっていた方も少なくないだろう。そんなアナタに朗報です。ちょうど本日1月9日、彼がこれまで発表してきた2枚の12インチを独自にまとめたCDがリリースされます。昨年ソニックマニアで来日した〈Brainfeeder〉のジェイムスズーも参加しているとのことで、おもしろい音楽を探している方は要チェックですぞ。

BINKBEATS

〈Brainfeeder〉総帥 Flying Lotus、Thom Yorke (Radiohead) 率いる Atoms For Peace、そして Aphex Twin や、さらには J. Dilla まで数々のアンセムを人力且つたった一人で再現したライヴ映像で世界中に衝撃を与えたオランダのビート・サイエンティスト BINKBEATS ついに日本デビュー!

LAビート・シーンを牽引する〈Brainfeeder〉総帥 Flying Lotus “Getting There”、Thom Yorke (Radiohead) 率いる Atoms For Peace “Default”、そして Aphex Twin “Windowlicker”といった数々のアンセムやさらには J. Dilla の“Mixtape”を人力且つたった一人で再現したライヴ映像で世界に衝撃を与えたオランダのマルチ・インストゥルメンタリスト BINKBEATS。ROCK、POSTROCK、ELECTRONICA、HIPHOP、JAZZ など幅広い音楽要素を融合し多種多様な楽器/機材を駆使しながら構築する先鋭的なビートや美しくもエモーショナルなメロディ、それらを独創的なサウンド・スタイルで展開した本作は各500枚限定でプレスされた連作EP「Private Matter Previously Unavailable」 PART1 と PART2 の全曲を収録したオリジナル楽曲としては初のCD化!

既に YOUTUBE で公開されているライヴ映像が100万再生を超えているM1 “Little Nerves”は Daedelus や Jameszoo の作品にも参加しLAビート・シーンの重要レーベル〈Alpha Pup〉からも自身の名義でリリースしている注目の若手鍵盤奏者 Niels Broos をフィーチャー、そしてM3 “In Dust / In Us”には〈Brainfeeder〉から発表された 1st『Fool』が高い評価を受けた Jameszoo もプロデュースに加わるなど次世代の注目アーティストが多数参加! 現在ワールドワイドにツアーを行っており、また DJ KRUSH の最新アルバム『Cosmic yard』(2018年3月)にも参加するなど日本国内でも徐々に活動の幅を広げるなど、その唯一無二なパフォーマンスで世界各地に衝撃を与えている今後の活躍が期待されているアーティストである。

タイトル:Private Matter Previously Unavailable / プライヴェート・マター・プリヴィアスリィ・アンアヴェイラブル
アーティスト:BINKBEATS / ビンクビーツ
発売日:2019.1.9
定価:¥2,400+税
PCD-24796 / 4995879-24796-9
日本語解説:原雅明
p-vine.jp/music/pcd-24796

Additional Synths On All Tracks By Niels Broos
Additional Production On In Dust / In Us By Jameszoo
Additional Vocals On Heartbreaks From The Black Of The Abyss By Luwten, The Humming / The Ghost By Maxime Barlag

ZULI - ele-king

 エジプト・カイロを拠点に置くアーティスト、Zuli のデビュー・アルバム『Terminal』が、Lee Gamble が主宰するレーベル〈UIQ〉よりリリースされた。これまで3枚のEPを〈UIQ〉と〈Haunter Records〉からリリースしてきた。その内容はインストゥルメンタルで、グリッチやノイズ、グライムっぽいうねるようなベース音も顔を見せる変則的なダンス・ミュージック。2017年にはベルリンのCTMフェスティヴァルでは地元であるカイロをテーマとした360度ヴィデオのインスタレーションを発表。活躍の舞台を着実に広げ、特に〈UIQ〉からのリリースはレコード店で売り切れるほどの人気ぶりだ。

 Zuli、本名は Ahmed El Ghazoly という。10歳まではイギリスで暮らし、グランジやブリット・ポップ、ケミカル・ブラザーズやプロディジーを聞き、両親の都合でエジプトに戻ってきたという*。所謂エジプトの伝統音楽やポップスに関心が向かず、UKの音楽に影響を受けて制作をしてきたという。また、同志のアーティストと Kairo Is Koming というコレクティヴを作り、ふたつの拠点でラッパーやアーティストとコラボレーションしながら活動をしているという。

 そうした集団での制作も方向性に反映されているのだろうか。今作『Terminal』は、これまでのインストゥルメンタル、変則テクノ的な音楽性から、トラップ、ジューク、ラップとの混交、またラッパー、シンガーとのコラボレーションが際立つ。1曲目から 6. “Stacks & Arrays”までは808ベース、残響音のようなベースとノイズが不規則に鳴らされ、不穏なサウンドスケープが展開される。7曲目の“Kollu I - Joloud feat. MSYLMA”で歌唱が、8. “Akhtuboot feat. Abyusif”でラップが初めて耳に入る。しかしどちらも3~4分の商業的なレコードのフォーマットではなく、断片的に流れていく。9. “Mazen”でも Abyusif のラップが使われているが、切り刻まれ、引き伸ばされ、あるいはピッチを変えられて、声そのものが変態していく。ラップは、11. “Ana Ghayeb feat. Mado $am, Abanob, Abyusif”でようやく聞き取れるレヴェルのラップが一瞬姿を見せる。フリースタイルする(ような)彼らのラップは素晴らしく、ソロ作品を聴きたくなる。

 『Terminal』というアルバム・タイトルから思い起こされるのは空港である。〈NON〉の Chino Amobi が一見無国籍でクリーンな空港という空間に、人種・政治的な関係を見出したのと同じように、このアルバムの不穏さもローカルな状況につなげて考えることができる。Zuli の活動の中心であるエジプトは「アラブの春」に端を発する政治・経済的な混乱が続いていて、混乱の前後でカイロの貧困率は2倍近くに増加したというデータもある。

 切り刻まれ、グリッチされた歌詞の内容は理解不能であるが、音が生み出す不規則・不穏な空気感とカイロの社会的・政治的な状況が重なる。グリッチやノイズは予期せぬ第三者からの干渉の結果に聞こえる。なにかを告発するはずだった通信・録音が遮断され、干渉され、散り散りになったデータとなって再生されているような、または、デジタル情報の残骸のような質感。12. “In Your Head”のビートレスのアンビエント、冷たいピアノの一音がさらにアルバムの緊張感を持続させる。その曲での後ろで響くのは、男の会話ともヒソヒソ声とも取れる音。密告のようにも、心の中の「勘ぐり」にも聴こえてくる。緊張や不安はアルバムの全編を通じて漂い続けている。

 このアルバムを聴くことは、生成されたデジタル情報が捻じ曲げられたり、隠されたりする痕跡を辿っていく行為かもしれない。しかしもう一方では、そうしたデジタル情報が不完全に捻じ曲げられたり、隠されきれなかったりする。そうした人間味を感じさせるサウンドでもある。音が不規則でありながら緊張感が持続する、エレクトロニックながらどこか「生っぽく」感じられる。そういった多面性を持ったアルバムだ。

 * TIGHT Magazine のインタヴューより。

Drone, Bengal Sound, Rocks FOE - ele-king

 ロンドンに「Keep Hush」という YouTube のライヴ配信チャンネルがある。UKガラージやグライムからハウス、テクノ、ディスコまで幅広いDJ、トラックメイカーがプレイする不定期番組で、Boiler Room や Dommune といった番組を思い浮かべてもらえればいいと思う。そういったライヴ配信チャンネルと異なるのは、彼らが「ロンドンの若手アーティスト」に焦点を当てている点と、毎回開催場所を変えて、秘密のロケーションでおこなわれる点だ。場所は開催直前に登録制のメールマガジンに配信される仕組みで、小さめの会場でおこなわれることもあいまってアットホームな空気が伝わってくる。また、配信時のザラついた質感は90年代のレイヴを意識しているのでは、と邪推したりした。

 そんな Keep Hush にて、〈Coyote Records〉が主催する夜には新鮮さと勢いを感じた。下の動画でプレイしているのは気鋭の若手アーティスト Drone だ。

Drone DJ Set | Keep Hush London: Coyote Records Presents

 Drone は自主作品のUSBに続き、2018年は〈Sector 7 Records〉から「Sapphire」をリリース、続いて〈Coyote Records〉から「Light Speed」をリリースした。

Drone - Light Speed
https://bit.ly/2P6ZlKx

 Keep Hush のプレイでもリワインドされた Drone の“East Coast”はサンプリングの声ネタ・金物が印象的で、組み合わせられるUKドリルを感じさせる、うねるようなキック・ベースにハイブリッドなセンスを感じる。

 さらに紹介したいのは、上にあげた Drone が何曲かプレイしている Bengal Sound。2018年にコンセプト作品『Culture Clash』をカセットでリリースしている。

Bengal Sound - Culture Clash

 全ての曲でボリウッド映画のサウンドトラックからサンプリングしており、ハイエナジーなベースラインにサンプリングされたローファイなホーンやパーカッションがとても自然にマッチしている。手法に関して言えば、Mala が『Mala in Cuba』でキューバ音楽を用いたのと比べることもできるが、こちらはよりローファイなカットアップ、ループ感はインストのヒップホップを思わせる。

 サンプリングという観点で最後に紹介したいのは、ラッパーでありトラックメイカーである Rocks FOE。ラッパーとしてもアルバムをリリースする傍ら、日本でも人気を集めるレーベル〈Black Acre〉から 140 bpm のインストゥルメンタル作品もリリースする。多くの作品でサンプリングを用いており(寡聞にしてそれぞれのサンプリング・ネタがわからないのだが……)、ホーンやディストーションされたシンバル、そして低く震えるラップは独自の怪しげな世界観を築いている。

2018年6月にリリースされた Rocks FOE のアルバム『Legion Lacuna』
https://rocksfoe.bandcamp.com/album/legion-lacuna

 こうしたザラザラとしたサンプリングをおこなったダブステップについては、2016年の Kahn, Gantz, Commodo による名盤『Vol.1』が思い起こされるが、その後のシーンについてはどうだろうか。〈Sector 7 Records〉を主催する Boofy はインタヴューでこのように述べている。「ダブステップには、(シーンを語る上で)欠かせない歴史もあるけど、いまお気に入りのアーティストはもうそういう「レイヴ・バンガーの公式」の教科書は気にしないでやりたいようにやっているよ」(Mixmag, Jan, 2019)

 近年のダブステップはサンプリングのセンス、音の組み合わせ方が新鮮さに満ちていて、常にインスピレーションを与えてくれる。

Mansur Brown - ele-king

 ひとりの亡霊が音楽シーンを徘徊している――アンビエントという亡霊が。いや、べつにいまにはじまった話ではないけれど、とりわけ近年はさまざまなジャンルにアンビエント的な発想が浸透していることを改めて実感させられる機会が多い。もちろん一口にアンビエントと言っても、イーノ的なそれだったりレイヴ・カルチャー以降のチルアウトだったり、あるいはグライムのウェイトレスだったりヴェイパーウェイヴだったりといろんな展開のしかたがあるわけで、その亡霊はヒップホップやロックの分野にも、そして当然のようにジャズの領域にも忍び込んでいる。フローティング・ポインツの『Elaenia』(2015年)なんかはその好例だし、そしてこのマンスール・ブラウンのアルバムにもまた同じ亡霊がとり憑いている。

 現在のUKジャズ・ムーヴメントを加速させる契機のひとつとなったユセフ・カマールのアルバム『Black Focus』に参加したことで注目を集めたマンスール・ブラウンは、もともとはトライフォース(Triforce)という当時大学生だった面々が組んだバンドの一員で、そのときの超絶的なギター・プレイが話題となりシーンに浮上してきたギタリストである(トライフォースのアルバム『5ive』もユセフ・カマールとほぼ同時期にリリース)。その後アルファ・ミストやリトル・シムズの作品に客演した彼は、2018年のジャズの流れを決定づけたコンピ『We Out Here』にもトライフォースとして参加、松浦俊夫のアルバムにもフィーチャーされるなど着実に知名度をあげていき、最近ではハーヴィー・サザーランドの新曲に参加したり、まもなくリリースされるスウィンドルの新作にも名を連ねたりと、ますます活躍の場を広げていっている。その勢いに乗って放たれたファースト・ソロ・アルバムがこの『Shiroi』だ。

 ギタリストとしての彼についてはジミ・ヘンドリックスの名がよく引き合いに出されているけれど、本作における彼はそのようなスタイルを抑圧し、静穏な演奏に徹している――とまで言ってしまうと語弊があって、たしかに“Godwilling”や“Flip Up”のようにエレクトリック・ギターの唸りが大いに華を添えている曲もないわけではない。ただ、それ以上にリスナーの耳に突き刺さるのは、アルバム全体を覆うどこまでも幽遠なディレイのほうだろう。それによって生成されるアンビエント的なムードは、たとえば先行シングルとなった“Mashita”によく表れ出ていて、雨音のような具体音とギターの残響とが密やかに重ね合わせられていく様には息を呑まざるをえない。遠くの谷からこだましているかのようであり、逆に窓のすぐ外で奏でられているかのようでもある不思議なエコー、それらが織り成すなんとも幻妖な音色の数々は、どうしたってドゥルッティ・コラムを想起させる。
 冒頭“The Beginning”ではそのディレイが、左右に振り分けられたテープの逆再生音と絡み合うことでサイケデリックな趣を醸し出しているが、他方でベースの動きもおもしろく、独特の拍の強弱が肉体的な躍動感をもたらしてもいる。続く表題曲でも淡いギター・エフェクトとグルーヴィなベースとの対比が強調されていて、低音パートもまたこのアルバムのたいせつな要素であることがわかる。“Back South”や“Simese”などのファンキーなベースはその何よりの証左だし、“Me Up”や“Flip Up”で鳴らされるブロークンビーツ由来のビートも非常に良い効果を生んでいる。ようするに、霧のごとく宙を漂うギター・ディレイとグルーヴィな低音パートとの幸福な出会いこそがこのアルバムの肝であり、「地に足の着いた浮遊感」とでも表現すればいいのか、彼岸へと連れ去られそうになる意識をご機嫌なベースラインがしっかりと此岸に引き止めてくれている。

 2018年はUKジャズの画期として記憶されることになるだろうけれど、そのUKジャズの熱気とアンビエント的なものの浸透とを一手に引き受けたこの『Shiroi』は、どちらの観点から眺めてみても異色の魅力を放っている。こういう作品がぽっと生み落とされるからこそムーヴメントはおもしろいのだ。マンスール・ブラウン、しばらくは彼の動向から目が離せそうにない。

  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171 172 173 174 175 176 177 178 179 180 181 182 183 184 185 186 187 188 189 190 191 192 193 194 195 196 197 198 199 200 201 202 203 204 205 206 207 208 209 210 211 212 213 214 215 216 217 218 219 220 221 222 223 224 225 226 227 228 229 230 231 232 233 234 235 236 237 238 239 240 241 242 243 244 245 246 247 248 249 250 251 252 253 254 255 256 257 258 259 260 261 262 263 264 265 266 267 268 269 270 271 272 273 274 275 276 277 278 279 280 281 282 283 284 285 286 287 288 289 290 291 292 293 294 295 296 297 298 299 300 301 302 303 304 305 306 307 308 309 310 311 312 313 314 315 316 317 318 319 320 321 322 323 324 325 326 327 328 329 330 331 332 333 334 335 336 337 338 339 340 341 342 343 344 345 346 347 348 349 350 351 352 353 354 355 356 357 358 359 360 361 362 363 364 365 366 367 368 369 370 371 372 373 374 375 376 377 378 379 380 381 382 383 384 385 386 387 388 389 390 391 392 393 394 395 396 397 398 399 400 401 402 403 404 405 406 407 408 409 410 411 412 413 414 415 416 417 418 419 420 421 422 423 424 425 426 427 428 429 430 431 432 433 434 435 436 437 438 439 440 441 442 443 444 445 446 447 448 449 450 451 452 453 454 455 456 457 458 459 460 461 462 463 464 465 466 467 468 469 470 471 472 473 474 475 476 477 478 479 480 481 482 483 484 485 486 487 488 489 490 491 492 493 494 495 496 497 498 499 500 501 502 503 504 505 506 507 508 509 510 511 512 513 514 515 516 517 518 519 520 521 522 523 524 525 526 527 528 529 530 531 532 533 534 535 536 537 538 539 540 541 542 543 544 545 546 547 548 549 550 551 552 553 554 555 556 557 558 559 560 561 562 563 564 565 566 567 568 569 570 571 572 573 574 575 576 577 578 579 580 581 582 583 584 585 586 587 588 589 590 591 592 593 594 595 596 597 598 599 600 601 602 603 604 605 606 607 608 609 610 611 612 613 614 615 616 617 618 619 620 621 622 623 624 625 626 627 628 629 630 631 632 633 634 635 636 637 638 639 640 641 642 643 644 645 646 647 648 649 650 651 652 653 654 655 656 657 658 659 660 661 662 663 664 665 666 667 668 669 670 671 672 673 674 675 676 677 678 679 680 681 682 683 684 685 686 687 688 689 690 691 692 693 694 695 696 697 698 699 700 701 702 703 704 705 706 707 708 709 710 711 712 713 714 715 716 717 718 719 720 721 722 723 724 725 726 727 728 729 730 731 732 733 734 735 736 737 738 739 740 741 742 743 744 745 746 747 748 749 750 751 752 753 754 755 756 757 758 759 760 761 762 763 764 765 766 767 768 769 770 771 772 773 774 775 776 777 778 779 780 781 782 783 784 785 786 787 788 789 790 791 792 793 794 795 796 797 798 799 800 801 802 803 804 805 806 807 808 809 810 811 812 813 814 815 816 817 818 819 820 821 822 823 824 825 826 827 828 829 830 831 832 833 834 835 836 837 838 839 840 841 842 843 844 845 846 847 848 849 850 851 852 853 854 855 856 857 858 859 860 861 862 863 864 865 866 867 868 869 870 871 872 873 874 875 876 877 878 879 880 881 882 883 884 885 886 887 888 889 890 891 892 893 894 895 896 897 898 899 900 901 902 903 904 905 906 907 908 909 910 911 912 913 914 915 916 917 918 919 920 921 922 923 924 925 926 927 928 929 930 931 932 933 934 935 936 937 938 939 940 941 942 943 944 945 946 947 948 949 950 951 952 953 954 955 956 957 958 959 960 961 962 963 964 965 966 967 968 969 970 971 972 973 974 975 976 977 978 979 980 981 982 983 984 985 986 987 988 989 990 991 992 993 994 995 996 997 998 999 1000 1001 1002 1003 1004 1005 1006 1007 1008 1009 1010 1011 1012 1013 1014 1015 1016 1017 1018 1019 1020 1021 1022 1023 1024 1025 1026 1027 1028 1029 1030 1031 1032 1033 1034 1035 1036 1037 1038 1039 1040 1041 1042 1043 1044 1045 1046 1047 1048 1049 1050 1051 1052 1053 1054 1055 1056 1057 1058 1059 1060 1061 1062 1063 1064 1065 1066 1067 1068 1069 1070 1071 1072 1073 1074 1075 1076 1077 1078 1079 1080 1081 1082 1083 1084 1085 1086 1087 1088 1089 1090 1091 1092 1093 1094 1095 1096 1097 1098 1099 1100 1101 1102 1103 1104 1105 1106 1107 1108 1109 1110 1111 1112 1113 1114 1115 1116 1117 1118 1119 1120 1121 1122 1123 1124 1125 1126 1127 1128