「MAN ON MAN」と一致するもの

Stereolab - ele-king

 ステレオラブ復刻プロジェクトがついに完結。5月の2nd&3rd、9月の4th~6th に続き、今度は2001年の7作目『Sound-Dust』と2004年の8作目『Margerine Eclipse』がリイシューされる。発売は11月29日。これまで同様、全曲リマスタリング&ボーナス音源追加。両作ともにショーン・オヘイガンが参加しており、前者ではおなじみのジム・オルークとジョン・マッケンタイアがエンジニアリングとミックスを担当している。現在『Sound-Dust』より“Baby Lulu”が先行解禁中。

STEREOLAB

90年代オルタナ・シーンでも異彩を放ったステレオラブ
10年ぶりに再始動をした彼らの再発キャンペーン第三弾発表!
『SOUND-DUST』と『MARGERINE ECLIPSE』の名盤2作が全曲リマスター+ボーナス音源を追加収録でリリース!

90年代に結成され、クラウト・ロック、ポスト・パンク、ポップ・ミュージック、ラウンジ、ポスト・ロックなど、様々な音楽を網羅した幅広い音楽性で、オルタナティヴ・ミュージックを語る上で欠かせないバンドであるステレオラブ。その唯一無二のサウンドには、音楽ファンのみならず、多くのアーティストがリスペクトを送っている。10年ぶりに再始動を果たし、今年のプリマヴェーラ・サウンドではヘッドライナーのひとりとして出演。5月には、再発キャンペーン第一弾として『Transient Random-Noise Bursts With Announcements [Expanded Edition]』(1993年)、『Mars Audiac Quintet [Expanded Edition]』(1994年)の2タイトルが、9月に第二弾として『Emperor Tomato Ketchup』(1996年)、『Dots And Loops』(1997年)、『Phases Group Play Voltage In The Milky Night』(1999年)の3作がアナログ、CD、デジタルで再リリースされている。

7タイトル再発キャンペーンの締めくくりとなる第三弾として、ジム・オルークとジョン・マッケンタイア共同プロデュースによる2001年の『Sound-Dust』と、久々のセルフ・プロデュース・アルバムとなった2004年の『Margerine Eclipse』の2作が、全曲リマスター+ボーナス音源を追加収録した“エクスパンデッド・エディション”で再発されることが発表された。また合わせて『Sound-Dust』より“Baby Lulu”が先行解禁されている。

Stereolab - Expanded Album Reissues Part 3
https://youtu.be/5mlLux_PEhc

Baby Lulu
https://stereolab.ffm.to/baby-lulu

今回の再発キャンペーンでは、メンバーのティム・ゲインが監修し、世界中のアーティストが信頼を置くカリックス・マスタリング (Calyx Mastering)のエンジニア、ボー・コンドレン(Bo Kondren)によって、オリジナル・テープから再マスタリングされた音源が収録されており、ボーナス・トラックとして、別ヴァージョンやデモ音源、未発表ミックスなどが追加収録される。


『Sound Dust [Expanded Edition]』と『Margerine Eclipse [Expanded Edition]』は2019年11月29日リリース。国内流通盤CDには、解説書とオリジナル・ステッカーが封入され、初回生産限定アナログ盤は3枚組のクリア・ヴァイナル仕様となり、ポスターとティム・ゲイン本人によるライナーノートが封入される。また、スクラッチカードも同封されており、当選者には限定12インチがプレゼントされる。さらに対象店舗でCDおよびLPを購入すると、先着でジャケットのデザインを起用した缶バッヂがもらえる。

label: Duophonic / Warp Records / Beat Records
artist: Stereolab
title: SOUND DUST [Expanded Edition]
release date: 2019/11/29 FRI ON SALE

[TRACKLISTING]

Disk 1
01. Black Ants In Sound-Dust
02. Space Moth
03. Captain Easychord
04. Baby Lulu
05. The Black Arts
06. Hallucinex
07. Double Rocker
08. Gus The Mynah Bird
09. Naught More Terrific Than Man
10. Nothing To Do With Me
11. Suggestion Diabolique
12. Les Bons Bons Des Raisons

Disk 2
01. Black Ants Demo
02. Spacemoth Intro Demo
03. Spacemoth Demo
04. Baby Lulu Demo
05. Hallucinex pt 1 Demo
06. Hallucinex pt 2 Demo
07. Long Live Love Demo
08. Les Bon Bons Des Raisons Demo

label: Duophonic / Warp Records / Beat Records
artist: Stereolab
title: MARGERINE ECLIPSE [Expanded Edition]
release date: 2019/11/29 FRI ON SALE

[TRACKLISTING]

Disk 1
01. Vonal Declosion
02. Need To Be
03. Sudden Stars
04. Cosmic Country Noir
05. La Demeure
06. Margerine Rock
07. The Man With 100 Cells
08. Margerine Melodie
09. Hillbilly Motorbike
10. Feel And Triple
11. Bop Scotch
12. Dear Marge

Disk 2
01. Mass Riff
02. Good Is Me
03. Microclimate
04. Mass Riff Instrumental
05. Jaunty Monty And The Bubbles Of Silence
06. Banana Monster Ne Répond Plus
07. University Microfilms International
08. Rose, My Rocket-Brain! (Rose, Le Cerveau Electronique De Ma Fusée!)

Fatima Al Qadiri - ele-king

 セネガル生まれ、クウェイト育ち、最近はベルリン在住だというファティマ・アル・カディリは、これまで〈Hyperdub〉から『Asiatisch』『Brute』「Shaneera」と立て続けに素晴らしい作品を送り出してきたプロデューサーである。架空のアジア、警察の暴力、アラブのクィアと、毎度しっかりテーマを練ってくるタイプのアーティストだが、その次なる一手はどうやらサウンドトラックのようだ。
 今回彼女がスコアを手がけたのは『Atlantics』という、今年のカンヌ国際映画祭でグランプリ(審査員特別賞)に輝いたフィルムで、建設労働者の青年に思いを寄せる少女の恋物語が描かれている。監督はセネガル系のマティ・ディオップで、今回が初の長編作品。ファティマによるサントラは11月15日に発売、映画のほうはネットフリックスにて11月29日より公開される。現在、同サントラより“Boys In The Mirror”が公開中。

Fatima Al Qadiri - Boys In The Mirror

Atlantics - Trailer

artist: Fatima Al Qadiri
title: Original Music From Atlantics
label: Milan / Sony Masterworks
release: 2019/11/15

tracklist:
01. Souleiman's Theme
02. Ada And Souleiman
03. Qasida Nightmare
04. Yelwa Procession
05. Wedding Interlude
06. 10-34 Reprise
07. Qasida - Sunset Fever 1
08. Alleil
09. Suñu Khalis
10. Qasida - Sunset Fever 2
11. Boys In The Mirror
12. Souleiman's Theme - Issa Against The Sun
13. Body Double

special talk - ele-king

 今週末の10月12日、渋谷 CONTACT にてジャイルス・ピーターソンの来日公演が開催される。もしかするとこれは今年もっとも重要なパーティになるかもしれない。ジャイルスのプレイが楽しみなのはもちろんではあるが、それ以上に注目すべきなのは、90年代から日本の音楽シーンを支え続け、昨年現行のUKジャズとリンクする新作を送り出した松浦俊夫と、日本の現状を変革しようと日々奮闘している Midori Aoyama、Masaki Tamura、Souta Raw ら TSUBAKI FM の面々との邂逅だ。さらに言えば、GONNO × MASUMURA も出演するし、Leo Gabriel や Mayu Amano ら20代の若い面々も集合する。ここには素晴らしい雑食があり……つまりこの夜は、いまUKでいちばんおもしろいサウンドが聴ける最大のチャンスであると同時に、ジャンルが細分化し、世代ごとに分断されてしまった日本の音楽シーンに一石を投じる一夜にもなるかもしれないのだ。20代も50代も交じり合う奇跡の時間──それは最高の瞬間だと、松浦は言う。というわけで、今回のイヴェントを企画することになった動機や意気込みについて、松浦と青山のふたりに語り合ってもらった。

[10月11日追記]
 10/12(土)開催予定だった《Gilles Peterson at Contact》は、台風19号の影響により、中止となりました。詳細はこちらをご確認ください。

いまの音楽を追わなくなった人がすごく多い。懐かしいものに帰ろうとしている傾向がある。90年代の音楽を聴きなおすことも大事だけど、いま自分たちが生きているなかで、日々たくさんのフレッシュな音楽が生まれていることは事実。 (松浦)

10月12日にジャイルス・ピーターソンの来日公演があります。松浦俊夫さんとともに青山さんたちも出演されます。自分たちの世代と松浦さんの世代を橋渡ししたいというような考えが青山さんにはあったんでしょうか?

Midori Aoyama(以下、青山):そうですね。松浦さんがジャイルスのパーティをオーガナイズすることを知ったので手をあげました。自分もジャイルスが紹介している音楽をかけているDJのひとりだし、ラジオもずっと聴いていますし。TSUBAKI FM というラジオをはじめて、いままでハウス・ミュージックをやっていたところから、少しずつ広がっていくのをこの2年間で肌で感じたんです。こういうタイミングがきて、自分のなかで「いまかな」と思って。もし縁があればおもしろいことができるんじゃないかなと思いました。

松浦俊夫(以下、松浦):もちろん青山さんのお名前は知っていましたけど、実は今回の件で初めてお会いしてお話したんですよね。

青山:以前何度かご挨拶だけはさせてもらったんですが、そのときは自分の音楽について話すということもなかったですし、松浦さんと深く時間をとって話すことはなかったので。この対談はお互いの考え方とか意見を交換する貴重な機会だと思っています。

松浦:日本ではジャンルとか世代が、いままでバラバラだったところがあって。シーンが細分化されて、それぞれがそれぞれの細かいところにいて、全体として勢いを失った印象です。UKのシーンのおかげかわかりませんが、またジャンルが関係ないところで音楽がひとつのところに寄ってきているのをここ何年か感じています。ジャンルとともに世代もつながっていることをヨーロッパには感じていたんですけど、日本では自分たちは自分たちみたいな感じなので、どうそこを突破していこうかなということを数年悩んでいたんです。青山さんみたいにある意味でアンビシャスがある人たちが日本にはちょっと少ないかなと。今回の企画はそれぞれの叶えたいこととともにシーンのことを考えてもっとジャンルと世代を関係なくつなげていこうというところでひとつになっているなと思います。今回一緒にやるという意義をそこにすごく感じています。

それぞれが叶えたいこととは?

松浦:世代を超えたいというところ。50歳を超えてクラブに来る人も当然いるけど、90年代にクラブだったり、音楽にどっぷりつかった生活をしていた人たちって、社会に出たり、家庭ができたりで、いまの音楽を追わなくなった人がすごく多い。懐かしいものに帰ろうとしている傾向がある。学生時代に聴いていた90年代の音楽を聴きなおすことも大事だけど、いま自分たちが生きているなかで、日々たくさんのフレッシュな音楽が生まれていることは事実。それを味わってもらうために自分はDJとして選曲家として、クラブやその他のメディアで活動をしているつもりです。
 さらに若い人たちにジョインしてもらうためにはある程度降りていかなきゃいけないなと思っている。自分はどんどん濃くしていきたいんだけど、これを薄めて若い人たちにつなげていくというのは、自分的には違うから、若い人も巻き込んでいくやり方がいいんじゃないかなって思います。それがうまくできているのがUKのシーン。そのスペシャリストがジャイルスなのかなという気がする。イギリスだけじゃなくて、ヨーロッパでも、自分が手掛けてない音楽も含めてひとつにまとめてくれる、それが彼の感覚のすごさですよね。これをなんで日本ではできないのかという葛藤があっただけに、今回こういう機会を作ってもらえたので彼の手を借りて、みなひとつにするチャンスだと思っています。

降りていくというのは、キャッチーな曲をかけるとか?

松浦:そういうことですね。これは音楽だけではないと思うけど、ちょっと難しくなると暗いとか。それは昔から変わらないですよね。かといってマイナーなことが格好いいかというとそうでもないと思う。誰も聴いたことがないプライヴェート・プレスで、アルバムで3000ドルくらいしますみたいなものでも、聴いてみると別にそんなすごいアルバムじゃない。そうではなくて、聴いたときに誰の何かわからないけど、これっていいよねということをシェアできるようにしなきゃいけない。ここ数年でイギリスのシーンが動き出したことでライヴ・ミュージックとしてミュージシャンが作る音楽とクラブで完結していたダンス・ミュージックが、やっと30年くらいかかってひとつになった。それは人力テクノとかではなくて、これこそオルタナティヴな音楽が生まれる瞬間なのかな。これは日本にも当然余波として来るべきですね。90年代のレアグルーヴだったり、アシッド・ジャズの流れで東京からいろんなユニットやバンドが出てきたように、東京からももっと出てくるタイミングじゃないかなと思っています。

パーティやDJを10年間くらい続けてきて同世代には広げ切ったという感じがあった。次何をするかとなったら、若い人と何かやるか、上の世代とやるしかない。松浦さんやジャイルスのお客さんにも自分たちのやっていること、自分の実力を証明したい。 (青山)

青山さんの野心は?

青山:僕と松浦さんって音楽的にリンクしてないって周りの人は思っている。これが伝わっていないことが自分のなかのジレンマです。松浦さんはジャズ、僕はハウスというイメージで完全に分かれている感じ。でも松浦さんがラジオで、僕が Eureka! でブッキングする外国人DJをプッシュしてくれていたことは知っていたし、ありがたいなと思っていました。
 パーティやDJを10年間くらい続けてきて同世代には広げ切った、自分のなかではつながれるところはほとんどつながった、やりたいクラブでも全部やったし、呼びたい海外DJも呼んだし、自分のやりたいパーティもやって、なんか終わったなという感じが正直あった。次何をするかとなったら、若い人と何かやるか、上の世代の人と何かやるしかない。世代、環境、性別、国とかを超えて何かもっと強く発信していかなきゃいけないなと思っていたんです。そのなかで自分がいまいちばんおもしろいなと思っているシーンはUKのジャズ・シーンだったり、UKのハウスだったりするんですね。だからこそ松浦さんとやるということはひとつのカギだったし、松浦さんやジャイルスのお客さんにも自分たちのやっていること、自分の実力を証明したいなと思っている。全然ダメじゃんと言われたらそこまでですけど(笑)。
 一回背伸びしてチャレンジするいいタイミングかなって思っています。いまの自分たちに何ができるのか。どういうものを知ってもらえるのかというのをこっちから表現して、松浦さんやジャイルスの世代のひとたちが、もっとこうしたほうがいいとか、こういうのが足りないと思ってくれるのならそれを取り入れて改善したい。最終的にはもともと自分が持っているハウスとかテクノのコミュニティにも刺さったらいいですね。そもそもジャイルスのイヴェントに自分たちが出てくるということ自体雰囲気的にハテナな人もいると思う。とくに今回のラインナップで言うと、Masaki (Tamura) 君とかは納得いくけど、Souta Raw はディスコだし、ジャイルスとどこがリンクするの? みたいな話になる。でもやっている本人たちはそんなことないんです。ジャイルスがかけているディスコとかファンクとか、彼が紹介しているハウスとかにすごくインスパイアされている。そこはもう少し目に見えるかたちで、身体で感じられるレヴェルで表現したいと思った。それが今回いちばんやりたいこと。

松浦:自分は意識していないけど、寄り付かせない何かをまとっている部分があると思うんです。だから、実際に大きな音で聴いてもらって、みんなが思っているジャズだけというイメージとは違うということをわかってもらえるといいですね。聴いたことない人たちにも、今回青山さんがお手伝いしてくださることによって集まってくれた人たちにも届けることができたらお互いに新しいお客さんを巻き込むことになる。これがうまくいけばその次もあるんじゃないかなって思う。

いまのUKでいちばんおもしろい音を聴けるチャンスですよね。UKのジャズのおもしろさは雑食性、ジャズの定義の緩さというか、新しいビートを取り入れることなわけですから、今回のパーティはまさにその雑食性を表現しているように思います。

松浦:そうだと思いますね。たぶんジャズをやろうとしてはいないんじゃないかな。ジャズというフォーマットのなかで勝負するのであればアメリカに行ってアメリカのなかでジャズをやると思う。新しいものを生み出すということのなかで、あえてジャズにしようとしていないのはたぶん意図的にやっているんじゃないかな。

アシッド・ジャズのときも、あれはジャズではないですよね。

松浦:また30年くらいたったときにやっていることは違うけど、ムードが近い雰囲気になってきているなと思いますね。ちょっと遅れて日本に届いてくる感じもあのときの感じに近い。やっとここで動くんじゃないかなという期待が今回のイヴェントにある。いちばん若い子だと Leo (Gabriel) 君ですね。

青山:あとは Mayu Amano ちゃんという一緒に TSUBAKI FM を運営してくれている彼女も20代前半ですし。

松浦:プレイする方も混ぜたいけど、お客さんにも混ざってほしいな。90年代に yellow というクラブがあて、21時オープンで5時まで Jazzin’(ジャジン)というレギュラーをやっていたんですけど、21時から0時くらいまでではサラリーマンとかOLの人たちでひと盛り上がりして、2時くらいから六本木の水商売の人がやってきてまた盛り上がるという二段階。それが交わる瞬間が0時から2時くらい。そのとき交じり合っている世代は50代から20まで。そういう景色を見るとやっぱり音楽ってすごいんだなって思いますよね。ジャンルとか、年齢みたいなものがぐちゃぐちゃになっていてみんな楽しそうにしている景色を見るのは最高の瞬間ですよ。

青山:yellow のときの状況はすごかったと思うんです。僕が20とかのときに最後の yellow に行っていたから僕のクラブの初期衝動はあの場所が大きい。自分でこういうパーティをつくりたいというイメージはけっきょく遊んだときのもの。年齢の垣根を越えている感じとか、熱量、あれが自分基準値になっている。

他のジャンルでも世代は固まっている気がしますね。

青山:だからこそ熱量のある空間をできる限りつくっていくというのが20代以上の世代の人たちがクラブとか音楽シーンに求められていることだと思うんです。そうやって下の世代に引き継いでいくことはすごく大事だと思う。
 松浦さんはご自分で発信している音楽とか、U.F.O.で昔やっていた曲とかが、いまの世代にまた伝わりはじめているなと感じることはありますか?

松浦:そうですね。なぜそうなったのかはわからないですけど。時代の周期みたいなものがあるのかな。その周期を見ながら、現在も新しいものをつくろうという気持ちは変えずにいきたいな。あと、自分で自分がやりたいことをできるような場を作るにはどうすればいいかということはつねに考えている。

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ジャンルとか、年齢みたいなものがぐちゃぐちゃになっていてみんな楽しそうにしている景色を見るのは最高の瞬間ですよ。 (松浦)

すごいなと思った最近のUKのジャズは?

青山:でもけっきょくヴェテランがいいなと思っちゃいますね。最近はカイディ・テイタムが好き。

松浦:アルバム単位というよりかは、自分の場合は曲単位で選んでいます。アシュリー・ヘンリーのアルバムとか、〈Sony〉が久々にああいうUKのアーティストを出してきたのはすごくおもしろい。ソランジュの曲をピアノでカヴァーしたり。ネリーヤ(Nérija)もそうだし。あとはポーランドのアーティストもすごくおもしろくなってきている。ジャズのなかでのせめぎあいではなくて、オルタナティヴ・ジャズのシーンみたいなものがあるとしたら、そのなかで勝負している感じが非常におもしろい。その方向性は人によってはアフロに寄ったり、カリビアンによったりする。ただストレートにどこかのジャンルに一直線に走っているわけではなくて、いろんな要素を加えながらそのアーティスト独自の表現を探そうとしているところがきっとおもしろいんだろうな。

イギリスにはジャイルスみたいな人が何人かいますよね。〈Honest Jon's〉みたいなレコード店だってそう。若い世代でいうと、ベンジー・Bがジャイルスの後継者になっている。イギリスにはこれがいい音楽だって言える目利きの文化みたいなものがありますよね。あとはブラック・ライヴズ・マターとか、人種暴動があったり、ヘイトクライムがあったりそういう世の中で、UKジャズが体現しているのは人種やジェンダーを超えたひとつのコミュニティ。それはいまの時代に説得力がある。

松浦:テロが起きたことと、コスモポリタンになったということがイギリスが強くひとつになれる理由なのかな。

やっぱり日本って借り物の印象がすごく強いと思います。どうしても外タレ崇拝みたいなところがある。ファッションもDJも全部そう。そこをまず変えていかなきゃいけないのかなという使命感があります。 (青山)

イギリスから音楽の文化が弱くなったように見えたためしがない。つねにみんな音楽が好きだし、いい曲が出れば「これいいよね」という会話が普通に成り立つような国だから。

松浦:アンダーグラウンドの場所が世の中にあるというのがすごいですよね。自分がいくつになっても自分の楽しみを続けていこうという姿勢は強いかな。

青山:イギリスって自国から生まれたものをすごく大事にする印象がある。やっぱり日本って借り物の印象がすごく強いと思います。どうしても外タレ崇拝みたいなところがある。ファッションもDJも全部そう。海外のカルチャーを受け入れてどう日本で消化させていくかということがこの20年~30年続いているなと思う。そこをまず変えていかなきゃいけないのかなという使命感があります。

松浦:そうですね。Worldwide FM をやっていて、日本の番組だから日本発の新しい音楽をできるだけ紹介したいし、ゲストも若い日本人の人を紹介したいんだけど、なかなか難しい。

青山:それは僕も正直ある。他のネットラジオなどを聴いていても、こんなに毎週毎月UKから新しいミュージシャンやアルバム、コンピレーションがガンガン出ているのに、日本からは1枚も出ない。もちろんアーティストのレヴェルの問題もありますけど、仕組み自体を変えないとダメだなと思う。UKが仕組みとしておもしろいのはジャイルスみたいな良い曲を判断してくれるキュレーターがいて、そういう音楽を発信するプラットフォームがあって、そこで曲を発信したいと思って作曲するアーティストが増えるという形で循環しているところ。ジャイルスだけじゃダメだし。アーティストがいるだけでもダメだし、ラジオがあるだけでもダメ。全部がはじめてひとつの輪になってグルーヴが生まれて、それがシーンになっていくと思うんですけど、日本にはそれがない。あるかもしれないけど、局地的だったたり、つながってない。そこをまずひとつにしていくという作業が次の10年で大事なのかなと思う。それを僕は TSUBAKI FM で体現したい。海外のラジオを日本でやろうとかということではなくて、日本オリジナルのブランドを作らないとどうにもならないなって。  さらにもうひとつはアーティストもレーベルも、ディストリビューションも日本になるといいですね。日本でプロモーションを世界に向けて発信して、世界で評価されるというところまでもっていきたい。それが次の日本の音楽シーンが目指す目標だと思う。それを目指すためのひとつのピースとして TSUBAKI FM だったり、もっとみんな真剣に考えて取り組まなきゃいけないなと思います。

松浦:それこそ90年代に『Multidirection』っていうのを2枚作りましたけど、そのくらい集めたくなるほど新しい音楽を生み出せる環境、インターナショナルで聴かせたいというものがもっと出てきてほしいな。もうちょっとグルーヴのある音楽で出てきてくれるといいな。でも巻き込んでいくしかないのかな。こういう音楽をつくっても出ていけるというふうに感じないとダメなのかな。

青山:そこはDJや僕らの仕事かもしれないですね。ここの曲のこういうところにグルーヴがあればかけられるんだよとか、使えるんだよなということを、アーティストに要求していく。日本にはレールもないし、アーティストに対して要求する人が全然いない。アーティストがこれが良いと思ったものをそのまま出しちゃっているから、そのアーティストの仲間は受け入れてくれるかもしれないけど、周りの人に伝わるかといったら伝わらないこともある。そこは第三者がディレクションをしてあげることでもっと深みがでると思う。なので、アーティストに対してDJとかプロモーターとかレーベルをやっている人が近づいて要求していくという作業も必要ですね。

松浦:流れができれば国内からも必然的に出しましょうという話になると思う。

青山:そういうことをやりたいという目標があるけど、それをちょっとずつ広げていくために今回のイヴェントはすごくいい機会です。松浦さんとお仕事ができただけで価値あることだと思う。

松浦:まだまだはじまったばかりだからね。僕にとっての大先輩、トランスミッション・バリケードというラジオをやられていたふたりと一緒にDJをやったとき、自分はここにいていいのかなくらいの緊張感があった。でも終わってから選曲がよかったと言ってもらえたので嬉しかったですね。この年でもまだ緊張感が生まれる先輩がいてよかったなと思う。逆にそういう関係性が世代を超えてできたらいいですね。年齢的に一回り以上年上の方でも新しい音楽を中心にプレイしようという意思が感じられたので、自分ももっとがんばらなきゃなと思いました。

(聞き手:野田努+小林拓音)

Gilles Peterson at Contact
2019年10月12日(土)

Studio X:
GILLES PETERSON (Brownswood Recordings | Worldwide FM | UK)
TOSHIO MATSUURA (TOSHIO MATSUURA GROUP | HEX)
GONNO x MASUMURA -LIVE-

Contact:
DJ KAWASAKI
SHACHO (SOIL&”PIMP”SESSIONS)
MASAKI TAMURA
SOUTA RAW
MIDORI AOYAMA

Foyer:
MIDO (Menace)
GOMEZ (Face to Face)
DJ EMERALD
LEO GABRIEL
MAYU AMANO

OPEN: 10PM
¥1000 Under 23
¥2500 Before 11PM / Early Bird
(LIMITED 100 e+ / Resident Advisor / clubbeia / iflyer)
¥2800 GH S Member I ¥3000 Advance
¥3300 With Flyer I ¥3800 Door

https://www.contacttokyo.com/schedule/gilles-peterson-at-contact/

Contact
東京都渋谷区道玄坂2-10-12 新大宗ビル4号館B2
Tel: 03-6427-8107
https://www.contacttokyo.com
You must be 20 and over with photo ID

Enrique Rodríguez - ele-king

 これはお宝発見かも。2017年にひっそりとリリースされたチリの若手ピアニスト、エンリケ・ロドリゲスのカセットテープが日本限定でCD化される。静かで落ち着いた佇まいのジャジーなサウンドで、ジジ・マシンあたりが好きな人にもおすすめ。なお2018年にアナログ盤化された際には300枚が即完売してしまったそうなので、今回のCDもお早めに。

ENRIQUE RODRIGUEZ
Lo que es

チリの首都サンティアゴで活動する弱冠20歳の若手ピアニスト、エンリケ・ロドリゲス。
2017年にカセットテープでひっそりとリリースされ、全く無名の新人ながらその恐るべき内容から、その後に発売された300枚限定アナログ盤も即完売したジャズ・アンビエント作品「Lo que es」が、日本限定盤としてCDリリースが決定!!

Official HP: https://www.djfunnel.com/enriquerodriguez

エンリケ・ロドリゲス、初のアルバム。18歳にして、全ての楽器をロドリゲス自身が全て演奏し、創り上げられた衝撃の作品。
フィジカル作品としては、既に入手困難のためCD化は正に待望とされていた1枚。ジャズやソウルにとどまらず、アンビエント、ポスト・クラシカル、サウンドトラック、インディーロック、ヒップホップなど様々な音楽からの影響が読み取れる。

同時にそれらをハイセンスにミックスさせている手腕と、18歳にしてここまでの完成度と世界観をつくり上げていることにただただ驚かされる。
日本にも入荷した本作のアナログ盤は再プレス盤も即完売し、高値で取引されている。チリから現れたこの若き才能が残した本作品を、一人でも多くの方に聴いて頂きたいと切に願う。

アーティスト : ENRIQUE RODRIGUEZ (エンリケ・ロドリゲス)
タイトル : Lo que es (ロ・ケ・エス)
発売日 : 2019/11/20
価格 : 2,400円+税
レーベル/品番 : astrollage (ASGE27)
フォーマット : CD (輸入盤CDは、ございません。)
バーコード : 4988044050815

Tracklist:
01. Lograr decidirnos
02. Esperar no es facil Dr.
03. Lo que somos
04. Ni siquiera se si quiero encontarte
05. Ambos
06. (entremedio)
07. Una pared
08. Mantener el arriba
09. Y no hay que olvidar
10. Chao
ボーナストラック追加予定

KASSAV’ - ele-king

[10月21日編集部追記]
 本日のカッサヴの来日公演は残念ながら中止となりました。詳しくはこちらhttps://www.facebook.com/saisonrouge/)をご確認ください。

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SAISON ROUGE presents KASSAV’来日公演
2019年10月21日(月)渋谷ストリームホール
https://saison-rouge.com

 KASSAV’(カッサヴ)がこの秋来日する。1979年にパリで結成されたカリブ海に位置するフランスの海外県マルチニーク、グアドループ出身のバンドで、80年代後半からカリブ海の島々、アフリカ、南米、ヨーロッパで人気を得て、世界のトップ・ミュージシャンとして活動し続けてきた。地元マルチニーク、グアドループのラジオではカッサヴがかからない日はないし、パリ公演では32000人規模の会場を満杯にし、アフリカの村では手作り楽器で一人カッサヴ・コピーを演奏する若者がいる。カッサヴの音楽は世界中に浸透し、ある人たちにとっては生活の一部になり、もはやこの地球になくてはならない存在と言っても過言ではない。

 ズークは、結果としてカッサヴが作ったひとつの音楽ジャンルと言えよう。ズークZoukは「祭り」「宴」「パーティ」を意味し、ズケzoukéは「みんなで踊ろう」という意味で使われる。ズークの語源は、入植者が19世紀に流行らせたマズルカMazurkaであるとか、クレオール語の「体を揺する」soukéから来ているという説もあるが、あまり定かではない(西成彦『クレオール事始』紀伊国屋書店、1999年)。1980年代半ば、マルチニークやグアドループでは、フランソワ・ミッテラン大統領下の文化政策によって自由ラジオが開局し、本国フランスが発信するラジオ番組だけではなく、地元の音楽も一般大衆に届けられるようになった。その頃、生バンドをともなわなくても気軽にできるレコードやカセットによるディスコ・パーティが頻繁に行われるようになり、アンティーユの人々の体に染み付いているリズムと最新のデジタル・サウンドの混淆が大衆の心を掴み、カッサヴの音楽はそうしたパーティの中心に据えられたのだ。それが、カッサヴがズークのオリジネーター・バンドと呼ばれる所以である。

 カッサヴは、デビュー当時から今まで自分たちの言葉であるクレオール語で歌う姿勢を貫いてきた。クレオール語とは、異なる言語の人同士が互いに意思疎通をはかるために自然につくられ、その話者の子孫に受け継がれて母語となった言語のことである。カリブ海に位置するマルチニーク、グアドループは、大航海時代にコロンブスによって発見され、フランス人入植者によって植民地化された。現在のフランス海外県となったのは第二次世界大戦後1946年のことだ。マルチニーク、グアドループのクレオール語は、植民地時代にアフリカから連れて来られた奴隷たちと、入植者であるフランス人との間で作られた話し言葉だが、公用語とは認められていない。マルチニーク、グアドループはあくまで「フランス」の海外県であって、公用語はフランス語なのだ。「ヨーロッパ人でもなく、アフリカ人でもなく、アジア人でもなく、我々はクレオール人であると宣言する」と、マルチニークの作家たちジャン・ベルナベ、パトリック・シャモワゾー、ラファエル・コンフィアンが高らかに宣言したのは1988年フランスのセーヌ=サン=ドニ県で開かれた第1回カリブ海フェスティヴァルにおいてだった(恒川邦夫訳『クレオール礼賛』平凡社、1997年)。カッサヴの世界躍進がこうした社会的動きと重なるのは興味深いことである。

 このように根本的に植民地時代の記憶を問い直し、生まれながらにしてクレオール(混交)化された音楽であるズークは、アンティーユのアイデンティティとして創られた音楽でありながら、パリ在住の移民たちにはもちろん、瞬く間にアフリカ、南米に広がり浸透した。それぞれ文化・言語に浸透して、リンガラ(コンゴ)、クドロ(アンゴラ)、キゾンバ(アンゴラ)、ランバダ(ブラジルなど)といった音楽に影響を与え、ポップミュージックにも拡散された。
 ゆっくりしたテンポのズークは「ズーク・ラヴ」と呼ばれ、男女のペア・ダンスのジャンルにも影響を与え、中にはかなり洗練された形式を持つものまでに発展している。ランバダ・ブームが終わった頃に日本のダンス界に流れ込んできた「ズーク」は、ブラジル経由の「ランバ・ズーク」だ。
 ブラック・ミュージックへも強い刻印を残している。ジャズ界の帝王マイルス・デイヴィスは、1989年のアルバム『Amandra』で、カッサヴの影響を大いに受けたことを明かしている(『マイルス・デイヴィス自叙伝』(1)宝島社、1999年)し、マーカス・ミラーやユッスー・ンドゥールといった大スターも彼らに賞賛を送る。(ベンジャミン・マルケ監督「Kassav’」ドキュメンタリー作品2019年)。近年はフランスのハウスDJ、ボブ・サンクラーによるカッサヴ・リミックスが話題になり、今年はトーゴのポップ・ミュージシャンToofanとジャコブの共演によるカッサヴの曲“Ou lé”のカヴァーが発表されるなど、次世代のアーティスト達からも高いリスペクトを受けている。アフリカのポップ・ミュージックへの影響も計り知れない。カッサヴ、ズークが世界のダンス・ミュージックに残した遺産は有形無形に巨大なものだ。
 また、再評価の流れとしては、いわゆる「レア・グルーヴ」を扱うパリのレーベル〈HEAVENLY SWEETNESS〉で、グアドループのバンド、レ・ヴィキング・ドゥ・ラ・グアドループ(カッサヴの創設メンバー、エドゥアール=ピエール・デシムスがカッサヴ結成前に在籍)など、ズーク以前のソウルやファンク的なグルーヴを持つアンティーユ音楽のいくつかのLPが再発されている。近年ダンスフロアーで新たな旋風を巻き起こしていようだが、それに続く初期カッサヴのサウンドは80年代の初期デジタル・サウンドの再評価の流れとも軌を一にする。
 新世代アーティストの例としては「音とリズムをその土地の文脈と切り離すこと」(https://www.vice.com/en_us/article/3dy3qy/lafawndahs-debut-made-on-an-island-interview)を信条として音楽制作をする Lafawndah (エジプトとイランを出自に持ちニューヨーク、メキシコ・シティなど世界各地で活動)が、アラブやアフリカの音楽と同様ズークも自分の音楽のひとつのエッセンスに入れるべく、ニューヨークで知り合ったアフリカ系アメリカの女性アーティスト、エミリー・キング(a.k.a. Garagem Banda)をつてに、グアドループのスタジオで、70歳のグアドループ在住エンジニア、ジャン=クロード・ビチャラ(実際にはズーク以前の世代)とEP「Lafawndah」を作っている。記事によると世代間ギャップのためにビチェラとの親密な共同制作には至らなかったようだが、このように「ズーク風味」を加えることは、グローバルな視点でビートを追求するテクノ音楽世代以降にも行なわれている。

 一方、日本ではカッサヴ空白の30年だったと言えよう。それにも関わらず、今回カッサヴが結成40周年ワールド・ツアー2019に東京公演を加えてくれたのはなんとも嬉しいことだ。これは奇跡かもしれない。フランスを起点に、近隣ヨーロッパ(ベルギー、ルクセンブルク、ポルトガル、オランダ)、アフリカ(コートジボワール、モザンビーク)、そしてインド洋(モーリシャス島、レユニオン島(フランスの海外県))、太平洋(バヌアツ、ワリス・フテュナ(フランス海外準県)、ニューカレドニア(フランス海外領土)、タヒチ(フランス領ポリネシア))、カリブ海(ギュイヤンヌ(フランス海外県)、トリニダード、グアドループ(フランスの海外県)、マルティニーク(フランスの海外県))の小さな島々……と描かれる彼らのワールド・ツアー・マップは、それだけで重要なメッセージが込められているように見える。彼らが自分たちの音楽を届けようとしているその先は、決して巨大な国ではない。40年間、自分たちの言葉、音楽、リズムを守りながら、グローバルな存在であることも拒まず、彼らが生み出した「ズーク」が今や変容して拡散されていくことも許容する彼らが、今、地球の裏側の島国に伝えることとはなんだろうか? この奇跡の日本公演で彼らの音楽、リズム、言葉を全身で受け止めたい。

Telefon Tel Aviv - ele-king

 なんてエモーショナルなエレクトロニック・ミュージックなのだろうか。悲しみがある。希望を求める感情がある。夢の中を生きている浮遊感覚がある。現実の都市をスキャンするような緊張感も漲っている。死がある。そして再生がある。

 テレフォン・テル・アヴィヴ、10年ぶりの新作アルバム『Dreams Are Not Enough』を聴いたとき、私はそう感じた。『Dreams Are Not Enough』は壊れかけた電子音とビートとヴォイスによる都市と人のいまと心を彩るサウンドトラックであり、「夜」のムードが濃厚なアルバムである。われわれは、いま、喪と悲しみが横溢する「夜の時代」を生きている、とでも告げるように。
 もちろんかつてのテレフォン・テル・アヴィヴも十分にエモーショナルだったわけだが、本アルバムではさらに深まった。10年という歳月は大きい。ジョシュア・ユースティスの盟友チャールズ・クーパーの死が深く関係しているのかもしれない。

 2009年にチャールズ・クーパーがこの世を去って、ジョシュア・ユースティスひとりとなったテレフォン・テル・アヴィヴは活動を停止した。最後にリリースしたアルバムは2009年のサード・アルバム『Immolate Yourself』だった。
 2001年、ニューオリンズ出身のジョシュア・ユースティスとチャールズ・クーパーは、テレフォン・テル・アヴィヴのファースト・アルバム『Fahrenheit Fair Enough』を、シカゴの〈Hefty Records〉からリリースした。細やかなグリッチと電子音響による00年代以降のサウンド・プロダクションと、デトロイト・テクノのエモーショナルさ、ハウス・ミュージックのエレガントさを併せ持ったトラックは、世界中のIDMファンの耳を虜にし、彼らは一躍、ゼロ年代初頭=「エレクトロニカの時代」を象徴するユニットになった。ちなみに『Fahrenheit Fair Enough』がリリースされるまでの経緯は2016年に〈Ghostly International〉からリイシューされた『Fahrenheit Fair Enough』のライナーノーツに詳しい。
 2004年、〈Hefty Records〉からセカンド・アルバム『Map Of What Is Effortless』をリリースした。ヴォーカル・トラックを中心としたシルキーなIDM/R&Bといった趣の曲を収録し、このアルバムも多くのファンから愛されている名盤である。
 2009年、チャールズ・クーパー存命時のラスト・アルバムにしてサード・アルバム『Immolate Yourself』を発表する。アナログ・シンセサイザーの音などを盛り込み、新たな可能性を模索しだ意欲作だった。しかしその直後、チャールズ・クーパーが亡くなった。テレフォン・テル・アヴィヴは活動を停止した。

 むろん、ジョシュア・ユースティスは音楽活動を停止したわけではない。ソロ・ユニットであるサンズ・オブ・マグダリーン、2013年のナイン・インチ・ネイルズのツアー参加など積極的に動いていたように記憶する。近年もヴァチカン・シャドウとのコラボレーションやビロングのターク・ディートリックとのユニットであるセコンド・ウーマンなど、インダストリアル/テクノ以降ともいえる10年代の先端音楽の領域に介入するなど、その手を休めたことはない。
 特に〈Spectrum Spools〉からリリースされたセカンド・ウーマンの二枚のアルバムは、グリッチ以降の電子音響をモードなムードの先端音楽へと変換させた決定的な作品であった。テレフォン・テル・アヴィヴ『Dreams Are Not Enough』のサウンドには、どこかセカンド・ウーマンのサウンド・マテリアルを継承する面があるように感じられる。セコンド・ウーマンの活動がテレフォン・テル・アヴィヴ再起動に影響を与えているのではないかとも推測してしまうほどに。
 じじつ、セカンド・ウーマンのファースト・アルバム『Second Woman』が〈Spectrum Spools〉からリリースされたのは2016年で、廃盤になっていたテレフォン・テル・アヴィヴのアルバムが〈Ghostly International〉からリイシューされ、テレフォン・テル・アヴィヴ復活へと動き出した時期も2016年だ。2017年もセカンド・ウーマンは新作アルバム『S/W』をリリースし、テレフォン・テル・アヴィヴはライブ活動をおこなう。このふたつのプロジェクトは10年代後半において並行して走っていた。共通するサウンドを感じられるのは当然かもしれない。

 ではなぜテレフォン・テル・アヴィヴなのか。盟友がこの世から去り、ひとりとなったテレフォン・テル・アヴィヴは「テレフォン・テル・アヴィヴ」として存在できるのか。2014年にリリースしたチャールズ・クーパーと亡くなる直前に完成させた曲も含まれていたサンズ・オブ・マグダリーン『Move To Pain』は、テレフォン・テル・アヴィヴを継承するサウンドを展開していたがテレフォン・テル・アヴィヴ名義ではない。となれば10年代中盤以降のテレフォン・テル・アヴィヴの復活は、ジョシュア・ユースティスが死という喪失を受け入れ、テレフォン・テル・アヴィヴを再生するための儀式といえなくもない。
 つまり『Dreams Are Not Enough』の収録曲はソロ作品や他ユニットのものではなく、テレフォン・テル・アヴィヴの作品なのだという確信にジョシュア・ユースティスが至ったのではないかと想像するのだ。ゴーストのようにトラックの中を徘徊し浸透するヴォイス(極端に加工されている)と幽玄な電子音の交錯を聴くとそんなことをつい考えてしまった。

 アルバムには全9曲が収録されているが、どの曲も亡霊が真夜中の都市を徘徊するような緊張感が漲っている。中でも M2 “a younger version of myself,”と M3 “standing at the bottom of the ocean;”は本作を代表する曲だ。クラッシュするような電子音と透明なヴォイス、断続的に鳴らされるビート、全体を包み込む密やかな刺激と静かなアンビエンスのバランスが奇跡のように美しい。“a younger version of myself,”はリード・トラックでありMVも作られた。エドワード・ホッパーの夜の街を思わせる映像も本作のムードをよく表現している。

 M4 “arms aloft,”も軋むようなグリッチ・ノイズと霧のようなヴォイス/ヴォーカルにアトモスフィアなアンビエント/アンビエンスが交錯する。曲の終わりではすべてが溶け合ったようにアンビエント/ドローンへとカタチを変えていく。
 M5 “mouth agape,”では前曲を継承するようにアンビエント/ドローンで幕を明けるが、うっすらとした声が重なり、サウンドもまた闇から光が溢れるように変化する。この流れが非常にエモーショナルだ。M6 “eyes glaring,”と M7 “not seeing,”もさまざまなサウンド・エレメントが融解したようなアンビエントな曲。ここでは声がまるで讃美歌のようにサウンドが溶け合っている。おそらく“arms aloft,”、“mouth agape,”、“eyes glaring,”、“not seeing,”の4曲は組曲的な扱いではないか。アルバム冒頭で提示された“a younger version of myself,”と“standing at the bottom of the ocean;”のサウンド・フォームとエレメントが融解し、聴き手の意識の深いところで音が作用するような感覚を覚えるのだ。まるで瞑想への誘いのように。
 続く M8 インダストトリアルな“not breathing,”で、リスナーは心地良いインナースペースから目を覚まさせられることになるだろう。このハードなエレクトロ・トラックを経てアルバムは再び現実へと回帰し、穏やかにして不穏な M9 “still as stone in a watery fane.”で、終局を迎える。

 こうしてアルバムを聴き進んでいくと、『Dreams Are Not Enough』は、この10年あまりにジョシュア・ユースティスが経験したふたつの死(親しい友人と父親の死)への思いが込められているように感じられた。喪失と再生のように。そんなパーソナル/エモーショナルさゆえに本アルバムの曲たちは、セカンド・ウーマンでもなく「テレフォン・テル・アヴィヴの曲」である必要があったのだろう。個人的であることは大切な他者を心の中に思い続けること意味する。そう、『Dreams Are Not Enough』には、ひとりの音楽家の新たなはじまりが刻み込められている。

Bon Iver - ele-king

 2010年代は幾多のアイデンティティが衝突したディケイドだった。人種、宗教、ジェンダーやセクシュアリティ、国籍、あるいは政治の左右、経済格差の上下……人びとは断片化し、対立していった。もう二度と出会うことがないかってぐらいに……いや、その代わりにわたしたちは夜毎、インターネットで憎悪をぶつけ合った。お互いの顔は見えない。意見の違いや出自の違いは愛すべきものではなく、たんなる攻撃対象になり下がった。なにか建設的な意見が出ても、そのリプライ欄にはそれをはるかに凌ぐ量の罵詈雑言で溢れていることをわたしたちは知っている。だけど、クリックするのをやめることもできない。そんなことをもうずいぶん長く繰り返して、みんな疲れ果ててしまった。
 だから僕は、アメリカという国で何度も何度も使い古された〈PEOPLE〉という言葉をジャスティン・ヴァーノンがいまこそ掲げることを、素朴で能天気な理想主義とは思えない。祈りのようなものである。「人びと」……それは、個人と個人が集まって生まれる。タイトルの『i, i』の小文字は頼りなげに立つひとりひとりそのもので、コンマを挟んで、「わたし」と「わたし」はお互いを信じていいかわからずに震えている。そして、ゆっくりとゴスペル音楽が流れ始める。

 『i, i』はジャスティン・ヴァーノンという才能と理想に溢れた男の、あるいはボン・イヴェールという共同体のひとつの到達点である。

 前作『22, A Million』の時点で彼は、あらゆる断片化したものをかき集めようとしていた──エレクトロニカの抽象性、アンビエントの音響、インダストリアルのビート、ジャズ・セッション、昨今のヒップホップ由来の声の変調、そういったものを彼が信じ続けたフォークとゴスペルのもとで繋ぎとめようとしていた。だがそれらは激しくクラッシュし、けたたましいノイズを上げることとなった。それに、中心に立つべきヴァーノン自身も混乱していた……声はエレクトロニックな加工で乱れ、言葉は不安で満たされた。世に放たれたのは2016年。世界中が不安で覆い尽くされた年である。そのカオティックな様相こそ、あのアルバムの凄みでありアクチュアリティだった。
 それから3年を経て、本作はヴァーノンが地元ウィスコンシンで所有しているスタジオ〈エイプリル・ベース〉だけでなく、テキサスのだだっ広い土地に赴いて制作された。ヴァーノンはそこで、メキシコとの国境を前に立ち尽くしたという。いままさに日々憎悪が生み出されている現場、人間が築いた境界の上を鳥たちが飛び交うのを眺めながら。そして、そこに前作を凌ぐ人数の「人びと」が集められた。演奏のためだけではない。共同作曲やプロデュースの楽曲が明らかに増え、さらにたくさんのアイデアが激しく求め合われたことがわかる。

 これまでボン・イヴェールやヴァーノンの作品群を聴いてきたひとなら、ここに特別新しい何かがあるわけではないことに気づくだろう。前作同様にエレクトロニックとオーガニックの混淆であり、ジャズとアンビエントとエレクトロニカがフォーク・ロックとゴスペルに支えられつつ出会っている。そもそもすでにボン・イヴェールは様々な音楽要素が交錯する実験場と化しており、その方法論を発展させたアルバムである。けれどもそのなかで耳を引くのが、そのオーガニックな質感だ。エレクトロニックな音処理はじつに細かく施されているが、であるがゆえに、生音の柔らかさが疎外されていない。ホーン・セクションと弦のアルペジオが官能的に絡み合う“iMi”、エレクトロニクスの和音が弦の響きに溶けていく“Holyfields,”。中盤のハイライトは清潔なピアノのイントロが温かいコーラスを導いてくる“U (Man Like)”、そしてヴァーノンの絶唱がある種のアメリカン・ロックのカタルシスとともに解放されていく“Naeem”だ。曲ごとの個性が際立っているのもあるが、一曲のなかでも様々なサウンドが混ざり合っている。その手際は過去最高に巧みになっていて、前作の烈しさとは対照的な穏やかさがここにはある。
 その“U (Man Like)”でピアノを弾いているのはブルーグラス畑のブルース・ホーンズビーである。アメリカ音楽の歴史の一部を担った人間が、そこでは新世代R&Bを鳴らしているモーゼズ・サムニーと同座している。ノア・ゴールドスタインのようなラップ周りのプロデューサーもいれば、デジタルの複雑な音処理で知られるBJバートンといった馴染みのメンバーもいる。“iMi”ではジェイムス・ブレイクがコードを書いたそうだが、そこで声を聴かせるのはボン・イヴェールの最初期からのメンバーであるマイク・ノイスだ。ヴィジュアル表現にはインディペンデントのダンス集団 TU Dance のメンバーも集められている。ここにはいろいろな立場のひとがいて……そして、ヴァーノンは飾らない声で告げる。「I like you(きみが好きだ)」。

 ボン・イヴェールはいまアメリカで……あるいは世界のあちこちで危機に瀕している民主主義というコンセプトを、音楽というフォーマットでやり直そうとしているように僕には思える。それは多数決のことではない。文化を分け合い、アイデアやエモーションをぶつけ合いながらなんとか調和する場所を目指すことだ。ここにはまだ、ノイジーな響きや衝突の跡もある。だがそれは、これまでに得てきた技術や経験によってより優しい響きとなる。ヴァーノンの声もいつになく丸裸で、恐れを懸命に振り払うようだ。“Salem”で突き進むタフで力強いメロディ、“Sh'Diah”のアンビエントの美。それを過ぎれば、終曲“RABi”ではなかば冗談めいたエフェクト・ヴォイスが「待てば取り返しがつかなくなる」と告げる。『i, i』には経済格差や気候変動を思わせる、いまそこにある危機を指し示す言葉が散見されるが、それに立ち向かっていくためにこそ「わたし」と「わたし」は同じ場所に集まることができる。

だけどいま思うのは
僕らは恐れているんだ
だから走り隠れている
確実で小さな平和のために
(“RABi”)

 バンドは来年のエレクション・イヤーに向けてツアーを続けるという。そこではこれまでも訴えてきたジェンダーの平等や気候変動に対する対策といったメッセージが掲げられるだろう。そうしたプラクティカルな行動を示しつつ、しかし、何よりも音でこそ「人びと」の融和を表現しようとし続けている。「小さな平和」を守るために……。それが彼の、彼らと彼女らの祈りであり、美しき架空のゴスペル・ミュージックだ。ここには次の10年への覚悟に満ちたまなざしがある。

vol.120:私たちの親がしたことと反対のことを - ele-king


Via gothamis

 先週の金曜日(9/20)、ブロードウェイを歩いていると若者ばかり、すごい行列が出来ていた。またアイドルか何かのサイン会か、シュプリームかキースが新しいアイテムをリリースしたのかぐらいにしか見ていなかったのだが、後で聞くと、クライメート・ストライクのデモ行進だった。


Via gothamis

https://gothamist.com/news/liveblog-nyc-students-go-strike-demand-action-climate-crisis

 オーストラリア、インド、ドイツ、イギリスなど全世界150カ国で行われるクライメート・ストライクのひとつで、NYの生徒たちはこの日はストライクに参加するため、クラスを休むことが許されている。

 12時にバッテリーパークのフォーレイスクエアからスタート。16歳のスウェーデン人のアクティヴィスト、グレタ・トゥーンベリも参加し、「天候は、私たちが思うよりはやく変化している。私たちの親がしたことと反対のことをしなければならない。いまアクションが必要なのだ」とプラカードを掲げ、NYの道を練り歩く。

 すでにヒーロー扱いのグレタ・トゥーンベリは、9月上旬に二酸化炭素を排出しないヨットに乗り、2週間かけてヨーロッパからNYに到着した。主張するために、わざわざ大西洋を渡らないといけないなんて狂っている、という声もある。しかいま若者は、ソーシャル・メディアとテックツールを使いつつ、真剣に物事を捉えている。彼らには前世代のように夢を見ている暇はなく、恐れも知らない。親たちの尻拭いをしているとも言うが、ゆっくり考えるより行動するしかない。NYにいると、こういったデモ行進によくぶつかり、彼らのなんとかしなければ、と言う訴えが、突き刺さる。


Via gothamis

https://gothamist.com/news/photos-greta-thunberg-nyc-climate-strike

https://globalclimatestrike.net/

https://actionnetwork.org/event_campaigns/us-climate-strikes

 今日イーストハンプトンに住んでいる友だちから、いまNYにいると連絡が入った。仕事を休んで、UNのクライメートウィークに参加しに来ていたのだ。彼はとても興奮していたし、手応えを感じると言っている。


Via gothamis

https://www.climateweeknyc.org/

 トレーダージョーズやホールフーズではプラスティックバッグはもうないし、スターバックスではストローもない。大多数のマーケットはプラスティックの容器は廃止し、すべて紙になっているし、意識の高い人が多いNYは、これが普通なのだろう。ちなみみに、私がたこ焼きパーティを毎月やっているブッシュウィックのバーのストローはパスタだし、たこ焼きのお皿は竹である。

 普段の生活からこうなので、道を歩いているとデモにぶち当たり、いま何かが変わろうとしているのだなと、いやでも気づかされる今日である。ベネフィットショーが行われ、たくさんのサミットやイベントがあり、今週はますますNYがひとつになるのが見えた。

Aphex Twin Live Stream - ele-king

 本サイトの告知にあったように、日本時間で9月15日(日)の午前6時からライヴ配信がスタートしたリチャード・D・ジェイムズのDJ。少しだけ観るつもりが、レオ・アニバルディだ、バング・ザ・パーティだとじょじょに沸き立っているうちに、結局、最後の客出し部分までぶっ通しで観てしまった。どうせそんなやつらばかりなんでしょうけれど。次の日は近所の中華屋で……ま、いっか。

 2年前のフィールド・デイではスタッターなリズムでスタートし、全体に実験的な曲が多く(チーノ・アモービとかマーク・フェルとかクラウドはかなり辛そうで)、とてもフロア・フレンドリーといえるような内容ではなかったし(https://www.youtube.com/watch?v=nzvLiwUK3R8)、12年にはロンドンのバービカン・ホールでミュジーク・コンクレート風のアート・インスタレイションを着席スタイルでやったりしていたので(https://www.youtube.com/watch?v=jVvLf0vJJ9s←最後のジェスチャーが……)、彼らしさはあるとはいえ、RDJでもここまでバリバリにアカデミックなモードになるんだなと思っていたこともあり、あまりストレートな展開は期待していなかったのだけれど……あれ、なんか聴いたことあるな、なんだっけな、これ……と、結論からいうと、最初の1時間は89年か90年にリリースされた曲がほとんどで、これは、94年に初めて日本に来たときとかなり近いDJだと思い当たった。2回目、3回目とどんどんダメになっていったRDJのDJとは比較にならないほど初来日のDJは2日とも素晴らしいものだったので、そのときとメガドッグで来日した際のDJはいまだに特別な思いがあったのである。あのときの記憶がどんどん蘇ってきた。

 前半はビザーレ・インク(後のチッキン・リップス)やデプス・チャージの変名であるジ・アクタゴン・マンなど〈Vinyl Solution〉周辺の人脈が大量に投入され、これらとスネアの音や刻み方がまったく同じレニゲイド・サウンドウェイヴやフューチャー・サウンド・オブ・ロンドン、あるいはグレーター・ザン・ワンの変名であるジョン&ジュリー「Circles」に808ステイト「Cubik」のリフをカット・インしたり、ホーリー・ゴースト・インクやDJドクター・メガトリップ(サイキックTV)といった癖が強すぎる連中に「Sueño Latino」をパクったシャドウズ・Jと、イギリス愛に満ち満ちた選曲で(いま風の流行り言葉でいえば「Throwback British Techno」セット?)、テクノという呼称が定着する前のブリティッシュ・ブレイクビートとカテゴライズすればいいのか、それこそリチャード・D・ジェイムズが頭角を現したことで葬り去られてしまった人たちの曲がこれでもかと並べられた感じ。これにユーロ・テクノや〈Nu Groove〉、あるいは定番ともいえるアンダーグラウンド・レジスタンスも織り交ぜて、まさかのポップ・チャートからクオーツやD–シェイクまでシームレスにミックスされ(あるいは独自にドラムを足して)、これにノスタルジーを感じるなという方が無理であった。つーか、「Techno Trance (Paradise Is Now)」なんて普通かけないよな~。当時、エレキング界隈でD–シェイクなんかかけようものなら……いや。

 意外にも初来日のDJがまざまざと蘇ったのは前半のクライマックスで、ここからは最近の曲が続き、ユージ・コンドウ「Chambara」で少し焦らせるような時間をつくった後に、ジョージア(グルジア)からHVLによる昨年の「Sallow Myth」を始め、ズリ、スタニスラフ・トルカチェフ、カツノリ・サワと、最近の曲をベースとした流れに。なお、カツノリ・サワとユージ・コンドウはときにタッグを組んで活動する京都のプロデューサー。後半はRDJ自身の曲も多くなり、限定リリースが話題となった『London 03.06.17』から「T16.5 MADMA」だとか、user18081971名義でサウンドクラウドにアップした曲も。自分の曲がうまく使えるのは当たり前だろうけれど、『Selected Ambient Works Volume II』から「Stone In Focus」を(スクエアプッシャーの未発表だという曲に)被せるタイミングはやはり絶妙でした。11分に及ぶライヴ・セットは軽いドラミングからアシッド・ベースを加え、シカゴ・アシッドに憂いを含んだメロディを地味に展開させつつ、ブレイクを挟んでデトロイト・スタイルに調子を強めたり。初来日のときには「Quoth」を4回連続でかけて、それらがどれも違う曲に聴こえるという離れ業もやっていたので、そのような展開がなかったのはちょっと残念でしたが。

 後半はVJもかなり派手になり、ボリス・ジョンソンの変顔ではやはり歓声が高くなったり。そして、最後の30分はもう何をやっても受けまくり。ドラムン・ベースを基調に(95年の曲が3曲も)、かなり無茶な曲(これもスクエアプッシャーの未発表曲だそう)でもクラウドは食らいついている。チル・アウトはカレント・ヴァリュー「Dead Communication」ときて、約2時間のセットは終了。エンディングのめちゃくちゃがまたカッコよく、これも初来日のときよりはあっさりだったかも(やはり歳をとったか)。Reddit(アメリカの2ちゃん)にはRDJの隣でマニピュレイターを操作しているのは奥さんだという書き込みがあったけれど、そうなんだろうか? 確かに女性のようには見えたけれど。

 ところで音楽ファンではない人にRDJというイニシャルを書くと、「ロバート・ダウニーJrですか?」と言われてしまいます。皆さん、ご注意を。

 なお、見逃した人は〈Warp〉の公式サイトで観ることができます。
 https://warp.net/videos/1088517-aphex-twin-london-140919

ユーチューブのAphex Twinチャンネルにアップされた曲目リストは以下の通り。

https://www.youtube.com/watch?v=5yQRp4j2RQM

0:00:00-0:02:31 sounds, intro
0:02:32-0:07:10 RB Music Festival 2019 - London trk1 ("unreleased afx”)
0:06:23-0:10:01 Leo Anibaldi - Muta B2
0:07:23-0:12:29 [+ live drums by afx]
0:10:01-0:11:07 [+ vocals and melodies]
0:11:06-0:13:56 Quartz - Meltdown (remix?)
0:13:27-0:15:45 Equation- The Answer (Frankie Bones Long Division Mix)
0:14:28-0:16:55 Bang The Party - Rubba Dubb (Prelude)
0:16:16-0:19:11 Renegade Soundwave - The Phantom (It's In There)
0:17:34-0:20:26 [+ sounds, drum break]
0:19:58-0:23:53 The Octagon Man - Free-er Than Free
0:23:36-0:26:28 Shadows J Hip This House (The Leon Lee Special)
0:25:50-0:28:00 Exocet - Lethal Weapon
0:27:43-0:31:03 D-Shake - Techno Trance (Paradise Is Now)
0:30:32-0:32:53 John + Julie - Circles (Round And Round) Hyperactive Mix
0:31:55-0:32:58 [+ additional drums]
0:32:43-0:34:21 The Unknown - Put Your Fuckin Hands In The Air
0:34:08-0:37:39 Trigger - Stratosphere
0:37:20-0:40:41 The Future Sound of London - Pulse State
0:40:03-0:42:10 2 Kilos ? - The Dream
0:41:47-0:46:40 GESCOM- D1 (+manipulation)
0:45:28-0:47:48 Psychic TV - Joy
0:46:51-0:49-37 The Holy Ghost Inc - Mad Monks On Zinc
0:49:37-0:52:12 Underground Resistance - UR My People
0:52:02-0:56:09 Bizarre Inc. - Plutonic
0:55:14-0:58:44 Ye Gods - Becoming
0:57:19-0:59:46 Hound Scales - A Clique of Tough Women [Yuji Kondo Remix]
0:59:30-1:02:37 Yuji Kondo - Chambara
1:01:11-1:06:02 HVL - Sallow Myth
1:04:29-1:07:15 Martyn Hare - Is This Happening?
1:07:05-1:09:12 [+ live, 'aggressive'?]
1:08:34-1:12:18 user18081971 - Fork Rave
1:11:02-1:14:10 Aphex Twin - T16.5 MADMA with nastya+5.2 (+live elements
1:12:56-1:15:51 The Octagon Man - Vidd
1:15:23-1:18:41 ZULI - Trigger Finger
1:17:58-1:20:10 Stanislav Tolkachev - Disposable Killer
1:19:19-1:20:38 Katsunori Sawa - Pluralism
1:20:27-1:22:43 AFX - Umil 25-01 (live version?)
1:22:44-1:26:46 [RB Music Festival 2019 - London trk2 "mini live set" (pt1)]
1:26:47-1:28:50 [RB Music Festival 2019 - London trk3 "mini live set" (pt2)]
1:28:50-1:30:49 [RB Music Festival 2019 - London trk4 "mini live set" (pt3)]
1:30:50-1:33:47 [RB Music Festival 2019 - London trk5 "mini live set" (pt4) lush]
1:33:48-1:37:45 [AQXDM - 12 November (unreleased)]
1:37:14-1:41:04 Unknown Artist - Untitled (GBBL01 A1)
1:39:45-1:43:16 [Squarepusher - Unreleased]
1:41:27-1:45:18 Aphex Twin - Stone In Focus
1:44:25-1:48:39 DJ SS - Black
1:47:04-1:51:09 Torn - Dance On The Bones
1:50:07-1:54:19 The Higher - Stick 3
1:52:20-1:55:56 Fusion - Truth Over Falsehood
1:55:18-1:57:04 Chatta B - Bad Man Tune
1:56:45-1:59:33 Current Value - Dead Communication (feat DR & Lockjaw)
1:59:08-1:59:43 . . . - avearro
1:59:44-END [live modular noise]

*それぞれのタイムをクリックすると、曲別に聴くことができます。

Headie One - ele-king

 北ロンドン出身のラッパー、Headie One の7枚目のミックステープ『Music x Road』が8月にリリースされた。5年間の活動の中で7枚のミックステープという多作ぶりもさることながら、『Psychodrama』で才能を開花させた Dave との共作“18 HUNNA”の大ヒットによって勢いを得た Headie One は、このミックステープでストリートのラップであることを全く譲らずに、トピック・音楽性の幅を広げている。

Headie One - 18HUNNA (ft. Dave)

Rusty のために1,800*
手にとってラグビーみたいにキックする
T-House にいたら塵まみれに戻る
ヌードで目を覚ます
バンドで4と半分、利益はいい感じ

18 hunna for the new rusty
Man grab it and kick it like rugby
I was in the T house, head back dusty
Still waking up to nudes in country
Four and a half in the bando Profit oh so lovely

* Rusty - 旧式ショットガン

“19 HUNNA (ft. Dave)”

 Headie One はこの1~2年でUK国内で大きなうねりとなっているジャンル、「UKドリル」のスターとして注目を集める存在だ。「UKドリル」については、Reeko Squeeze の『Child's Play 2』のアルバムレヴューで三田格さんが書かれている通り、アメリカのドリル・ミュージックがUKに派生して進化を遂げたジャンルである。UKサウンドの核のひとつである「シャッフルされたビート」がアメリカのドリル・ミュージックと融合し、縦ノリのラップ・ミュージックとしてさまざまな形に進化を遂げてきた。Headie One と RV の2018年のヒット・チューン“Know Better”は、全体のダークな雰囲気とそれを支える伸びるベースライン、表拍で打つハイハットやパーカッションを特徴とする。“Know Better”では、ワイリーが発明したクリック音も顔を覗かせる。

Headie One X RV - Know Better

 “18 HUNNA”や“Know Better”のように、UKドリルはリズム・パターンや音楽性が一貫していて、悪く言えばあまり「特徴のない」サウンドといえる。それはトラックが舞台装置の役割をしていて、ラッパーはその上でドラマを展開するためだ。また歌詞はリアルであることを追求し、“18 HUNNA”のようにフックが複雑で長い曲がヒットすることも多い。

 本作でも前作から一貫したラップに加えて、より音楽的なヴァリエーションを広げている。タイトル・トラックの 1. “Music × Road”でソウルフルなビートに合わせて内省的なテンションのラップを披露したかと思えば、Spotify では700万回以上再生されている 2. “Both”では、Ultra Nate の“Free”をサンプリングしたビートに合わせて、本アルバムのテーマである音楽とトラップ、ショーとドラッグ、ジュウェルとウィード、様々な欲望を対比させながら、Headie One は「両方」を手にいれるとラップしている。サンプリングの Ultra Nate の“Free”の原曲には、ソウルフルな歌にのせて「あなたはなんでもやりたいことができる、自由なのだから。あなたの人生を手に入れて、やりたいことをやりなさい」というメッセージがある。Headie One はそれを「ドリラー」として再解釈しているともいえる。

 4. “Rubbery Bandz”や 7. “All Day”、8. “Kettle Water”などは彼が呼ぶところの「T-House」(トラップハウス)でのビジネスを中心にした曲だが、“Interlude”を挟んで後半の 10. “Home”、12. “Chanel”では女性に対する真摯な姿を披露する。彼が他の多くのドリル・ラッパーと違って、いい意味で稀有な部分はここだ。女性をある種「利用」して自身の強さや横柄さを披露するのではなく、Headie One が女性を大切にしているところが伝わってくる。Stefflon Don と NAV を客演に迎えた 11. “Swerve”ではトラップ・ライフに対するネガティヴさも含めて彼なりの意見を表現している。『Music × Road』その両方を描写するコンセプトにふさわしく、彼の「強さ」や「賢さ」だけでなく、彼の苦悩や優しさも音楽の中で表現されている。一方で他のグループやエリアの脅し文句といった類は少なく、彼自身の成長を感じる。『Music × Road』は彼のトラップ・ライフの成功とその裏側にある苦悩や人間としての優しさが表現された1作であり、UKドリルという音楽の歴史を前に進めた作品だ。

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