「P」と一致するもの

Chart by JET SET 2012.07.17 - ele-king

Shop Chart


1

Rapture - Children (Bitches Brew)
名門DfaやThrone Of Bloodを拠点にリリースを展開しているトリオ・ユニット、The Raptureによる最新作のリミックスEpが"Bitches Brew"より登場。Darkstarr & Yam Who? & Ashley Beedleによる強力2作をカップリングした見逃し厳禁の大推薦Ep!!

2

Seahawks - Violet Skies (Ocean Moon)
日本が誇るサイケデリック/辺境ユニット、Cos/Mesを筆頭にノルウェージャン・コンビ、Rune Lindbaek & Oyvind Blikstadに加え、Discossessionのメンバーとしても知られる、Jonny Nashによるリミックス収録!

3

Lord Of The Isles - Searching / Don't Reach (Cocktail D'amore)
EneやFirecrackerのオフシュート、Unthank、American Standard、Adult Contemporaryからの作品等がいずれもヒットとなった人気の、Lord Of The Islesによる最新作がCocktail D'amoreの第4弾作品としてリリース!

4

Trance Yo Lie / Madteo - Cosa C'e' Sotto? / We Do... (Wania)
Trance Yo Lieなる詳細不明アクトによる極上ディープハウス楽曲を収録したA面、Ny地下シーンに潜むドープ・イタリアン・タレントMadteoによる楽曲をDj SotofettがリミックスしたB面共にドープなオールド・ハウスを彷彿させる珠玉作!!

5

Mungolian Jetset - Smells Like Gasoline (Smalltown Supersound)
HarveyやTodd Terjeによるリミックスを収録したBjorn Torskeの作品や、Todd Terje、Lindstrom、Idjut Boysの作品等、絶好調の好リリースが続くSmalltown Supersound最新作!

6

Mike Simonetti - Mike Simonetti's Circadian Rhythms Ep (Public Release)
レーベル第一弾を飾ったB.i.s.のTim Sweeneyを皮切りに、Jacques RenaultやBlackjoy、40 Thievesといった人気アーティストがリリースを繰り広げてきた"Public Release"の第五弾。

7

Breakbot - One Out Of Two (Because)
「Fantasy」に続く4枚目のシングルは「Baby I'm Yours」と同じくIrfaneが歌う"One Out Of Two"。リミックスも粒揃いです。

8

Muro - Tropicool Boogie VII -11154
ラテン、ディスコ、ブギーを中心にカリビアンやレゲエ、メロウなAorまで飛び出すMuro氏ならではの遊び心と冒険心満載の1枚。今年もこの季節がやってきました!

9

Slime - Increases ii (Get Me!)
ご存じDam MantleやGraphicsらのリリースで注目を集めるチルウェイヴ以降のUkベース・ポップ・レーベルGet Me!からの004番は、ジャズ畑の新鋭ユニットSlimeによる特大傑作1st.!!

10

Falty Dl - Hardcourage (Ninja Tune)
Planet MuやRampなど人気レーベルからのリリースでお馴染みNyの美麗Ukベース人気者Falty Dl。Ninja Tuneクラシックにオマージュを捧げる温故知新なレイヴ風味キラー・トラックスを完成です!!

BISK (Naohiro Fujikawa) - ele-king

12年ぶりの復帰作『MEMORABILIA』をリリースしました!
junoではすでに販売中、amazon MP3で8/9発売開始です!
https://www.junodownload.com/products/memorabilia/1980437-02/
https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B008FZX9KA/

エレクトロニカやダブステップ、UKファンキーからR&Bに至るまで、様々なジャンルのエレメントを吸収しつつ独自のストレンジな音世界に昇華させた意欲的作品。
詳しくはこちら!
https://bisk.jp/priv/jp/

最近のベスト・チャート10枚


1
DARLING FARAH - Body
〈Civil Music〉のニューカマー。ストイックでダークなテクノ。若いのにやたらと渋い抑えのきいたトラック満載。

2
Debruit - From the Horizon
同じく〈Civil Music〉。変態ブレイクビーツにエスノな上モノが走る、ストレンジ・ベースミュージック

3
Cristian Vogel - Inertials
ベテランテクノアーティスト、UKベースとの邂逅。緻密でエクスペリメンタルながら骨太感のある不思議な質感。

4
Sven Kacirek - Scarlet Pitch Dreams
生音をベースにしながらも、電子音響、エレクトロニカ、チルアウトなどあらゆる解釈が可能な驚異的な振れ幅を見せる大傑作。

5
Teeth - Meme Is The New Riddim
前述のDebruitとも通ずる。ジュークやUKベースを通過した無節操で肉感的、アジテイティブなビートが炸裂。

6
Dro Carey - Leary Blips EP
もっと話題になってもいい系トラックメイカー代表。相変わらずブロークンでどこを目指しているのかわからないところが秀逸。

7
Blawan - Long Distance Open Water Worker
ゴリっとした、どプリミティブなトラックは中毒性高し。とにかくイカつい。そして怒涛の音圧・・・。

8
Drexciya - Journey Of The Deep Sea Dweller II
IとII両方おススメ。やっぱりこの人凄かったんだね、と時代は2周くらいしてまたここに戻ってきた。Bang-Bangというトラックが最高。

9
Jimmy Edgar - Majenta
いつも絶妙にダサカッコいいところを狙ってくるエレクトロ・ファンクの傑作。音数少ないのに最後まで聴かせてしまうその力量に脱帽。

10
Ghosts In Disguise - ODENWALD
我らが〈Shhhh〉レーベルからのリリース。Helge Neuhaus & Matthew Adamsによるニュー・ユニット。

Capitol K - ele-king

 今村昌平監督『ええじゃないか』は観ていないこともあって、映画というものを観ていて、初めて女性の放尿姿に出くわしたのは80年代に公開されたペドロ・アルモドバルの作品だった(どの作品かは忘れた)。その時はスペイン人はそういうことが平気なのかなと思い、実際、その後もそんなシーンを映画で観ることはなかった。流れが変わったのはデヴィッド・フィンチャー監督『パニック・ルーム』である。ほかにもあったのかもしれないけれど、僕にとってはジョディ・フォスターがハリウッド映画の先頭に立って、便器に用を足し始めた。そこからは雪崩を打って、ハリウッド・ミュースたちが便器に座り始め、とうとう来月公開のサラ・ポーリー監督『テイク・ディス・ワルツ』ではミッシェル・ウイリアムスが1本の作品で3回も放尿シーンを展開する(展開する......というか、そのうち1回はプールでお漏らしをして笑い転げているんだけど)。これまでそれが絶対に必要なシーンだと思ったことはなかったものの、『テイク・ディス・ワルツ』では男性との距離感を表現するために仕掛けられたシーンであることは明白なので、心理描写としては有効だし、女性の放尿姿に刺激を感じなくなっている男性(この場合は夫)と同じ気持ちで観てしまうか否かは(男にとって)けっこうややこしい場面ではないかと思ったり......(監督はちなみに女性です)。

 放尿といえば南米に放浪の旅に出ていたクリスチャン・クレイグ・ロビンスンの6作目があまりに変貌を遂げていて驚かされた。キャピトル・Kといえばプラネット・ミューからデビューした当初は、ロック色の強いエイフェックス・ツインか、その後もエレクトロから大きく外れた存在となることもなく、ボーズ・オブ・カナダやアンチコンの同類ということで話は片付くはずだった。

 4年ぶりの『アンデスのダブ』は、しかし、「100%クンビア!」と銘打たれ、曲名にも"クンビアトロニック""クンビア・ミリピーズ(ヤスデ)""クンビア・エスケレトス(骸骨)"といったものが散見できる。もちろん、「100%」のわけがない。自主レーベルらしい実に拙い煽りである。クァンティックロス・ミティコス・デル・リツモ(=神話のリズム)と言い切ってしまうほど「100%」になってしまうのではなく、あくまでもエイフェックス・ツインとカリビアン・サウンドの架け橋になろうとしているようなサウンドである。これまでにエイフェックス・ツインを追って浮上してきた才能のなかで南米の音楽性を吸収しようとしたものにはアモン・トビン(とアトム・ハート)がいたけれど、アモン・アドナイ・サントス・デ・アラウホ・トビン(本名)にインダストリアル的な感性が付き纏っていたのに対し、キャピトル・Kのそれは現地のリズムをヨーロッパの方法論で再構築しようとするもので、基本的に他の地域の音楽性は持ち込まれていない。「クンビアトロニック」などはまさしくディジタル・クンビアである。電子音にもかかわらず、サラサラとした南米の風が吹いているような錯覚に襲われてしまう。

 ンチャカ、ンチャカ......とレイジーに反復されるリズムやセンチメンタルなメロディ。あるいは、そのようにして、どの要素がどれに相当するのか頭のなかで容易に置き換えられる要素を持っていない「クンビア・エスケレトス」や「セヴンス・チャランゴ」。たいていはどちらかのスタイルに偏ってしまうと思うんだけど、最後の最後まで、その均衡は崩れない。大したものである。
 
 フィラスタインとのコラボレイションでも知られるブラジルのDJ、マーガ・ボーがセカンド・アルバム『キロンボ・ド・フツロ』から間髪を入れずにリリースしたリミックス・アルバムも、大半はクンビアに意趣変えがおこなわれている。

全曲試聴→https://soundcloud.com/post-world-industries/sets/maga-bo-quilombo-do-futuro/

 〈モンキータウン〉のコンピレイションにも曲を提供していたフリックステイラーズやある種の先駆者であるジスラン・ポワリエのような中堅もいるけれど、大半がまだ無名の新人で、こちらは全体的に着地点をヨーロッパに求めている。変容を遂げていくクンビアの見本市としてはこの試みも興味深い。

 「ソウルは人に訴える。シンプルだが、特別なインパクトがある。人間の裸の心が発する声だ。楽しいだけじゃない。がっちりとタマを掴んで、高みへ引き上げてくれる」
映画『ザ・コミットメンツ』より


奇妙礼太郎トラベルスイング楽団
桜富士山

Pヴァイン

Amazon iTunes

 羽目を外すときが来た。夕方の5時前だが、けっこう良い感じに酔っている。取材のテーブルの上には空き缶、ワイン、お菓子......トラベルスイング楽団 のメンバーのうち8人が並んでいる。取材どころではない。宴会だ。
 奇妙礼太郎トラベルスイング楽団にはそうした飲み会的な寛容さがある(笑)。いまどき珍しい酒臭いソウル・ミュージック......ないしは歌謡PUBロックである。この時代に11人とか600人とか、時代に逆行するかのような、大人数のバンド編成も、良い。こうしたバンドのあり方自体がひとつの態度表明になっている。
 アラン・パーカーの映画『ザ・コミットメンツ』を思い出す。どんな人間もやっかいで、クセがあり、短所があり、弱さがあり、他人との齟齬を生む......が、ソウル・ミュージックによってそれを乗り越える(あの映画の「アイルランド人はヨーロッパのなかの黒人だ。だから胸を張って俺たちは黒人だと言え」は名言)。奇妙礼太郎トラベルスイング楽団の魅力もそれに尽きる。飾り気のない、人生に要領を得ない人たちが集まって、ステージに上がっているときだけは、ビシッと素晴らしい演奏を聞かせる。多くの人は、ビールを片手に踊りたくなるだろう。80年代の松田聖子のメロドラマでさえも、彼らにかかるとソウルフルな光沢を発するのである。
 いずれにしても、夜を奪われた大阪から実に賑やかなバンドがやって来た。彼らのセカンド・アルバム『桜富士山』は、これからはじまるロマンティックな夏の宴の音楽である。

名乗ってました! 出だしから。ナイアガラ礼太郎と......。世界一デカいとされている滝で。どうせ滝になるならナイアガラになりたいと。おばあちゃんの遺言で。

まずは自己紹介を......。

奇妙礼太郎(以下奇妙):こんばんは、奇妙礼太郎です! イエーイ!

(拍手起こる)

PEPE安田(以下安田):ベースの安田です。よろしくでーす。

まいこ:サックスのまいこです。

手島幸治:僕ドラムの手島です。

キツネうどん:パーカッションのハマダです。

塩見哲夫:ギターのシオミです。

田中ゆうじ:サックスの田中です。

山藤卓実:トランペットの山藤(サントウ)です。

じゃ、ビールでも。ぷしゅ。お疲れ様でしたー。

奇妙:ぷしゅ。よろしくお願いしまーす。

(乾杯)

いつもこんなノリなんですか?

奇妙:はい。

田中:ライヴ前後とかはこんなノリです。

あのね、奇妙さん。

奇妙:はい。

本日いらしてるのは8人ですよね。で、11人以上いるとのことですが、正式な人数っていうのは何人ですか?

奇妙:600人ぐらいですかねえ......。

一同:はははは!

じゃあ中心になってるのは(笑)?

奇妙:まあ中心ぐらいになってるのは......まあこのひとですかねえ。

手島:僕だけってことすか!?

キツネうどん:まあ12、3人はいるんじゃないですか。ローテーションで。

奇妙:マジメか!

基本的に、メンバーを集めたのは奇妙さん?

キツネうどん:安田さん。

安田:はい。

奇妙:僕が目を閉じていたら......こういう感じで。

安田:集まってきたんや? 指触ったやつがメンバーになったような。

奇妙:すごいここにね、月の光がこう......。

一同:だははは(笑)。

手島:スイッチが入っているんで、比較的に無視していただいて大丈夫なんで。

いやいや(笑)。じゃあ安田さん、そもそもバンドはどういう風にはじまったか、基本的な質問で申し訳ないんですけど教えてください。

安田:それ奇妙くん言ってみて。

奇妙:まいこが安田くんを産んだときの話をしないと。

安田:まあそういうことですね。

ああー、まいこさんから安田さんが産まれて。

安田:はい、産まれて。

奇妙:ビートがはじまって。ト、ト、ト、ト......。

安田:ト、ト、ト、ト......。

手島:それ木魚っすよね(笑)? 死んだときっすよね?

ははははは。安田さん、最初はまいこさんから産まれたとして――。

奇妙:途中ギバちゃんになって。90年代前半にギバちゃんになってー。

手島:はははは!

安田:なってからの?

これだけ人数が多いから、居酒屋入るのも大変じゃないですか?

奇妙:それはマジ大変です。

席ないでしょ、だって。

奇妙:席基本5、5で分かれて、休んでるやつの悪口言うっていう。休んでるやつのプレイに対して悪口を言うっていう。

(一同笑)

安田:ドキドキしかせーへんな。

奇妙:まあ俺がいちばんドキドキしてる。

とにかく、安田さんと奇妙さんの出会いがはじまりなんですね。

奇妙:あれ? なんでわかったん!?

一同:はははははは!

奇妙:出会い系サイトで。

安田:最終的にはね。

そのときから奇妙礼太郎を名乗ってたんですか?

奇妙:名乗ってました! 出だしから。

なぜそんな名前を?

奇妙:ナイアガラ礼太郎と......。

安田:デカいのいきましたね。

奇妙:世界一デカいとされている滝で。どうせ滝になるならナイアガラになりたいと。おばあちゃんの遺言で。

塩見:でも名前の由来言ってたじゃないすか。ほら。

奇妙:あれ、コンペイトウついてますけど。

塩見:タトゥーですよ。

奇妙:タトゥー!!

(一同笑)

田中:すいません、続けましょう。

いやいや、いいですよ。逆にこれもひとつのプロモーションになる......かもしれない。じゃあ、トラベルスイング楽団は大阪だから生まれたバンドだと思います?

奇妙:ああ、まあそうっすねえ。

大阪っぽいなって自分たちで思います?

安田:そんな思ってない。

そんなに思ってない、そこは?

奇妙:まあ生粋の大阪人のまいこちゃんが。

まいこ:ぜんぜん違うやん。

安田:コテコテやでー。

奇妙:もうかりまっかー。

安田:ボチボチでんなー。

奇妙:奄美大島出身で。

松村正人と同じですね。

奇妙:完全に外人や(笑)。

(一同笑)

奇妙:お前登戸住んでるやん。いろいろおかしいやん。

えっ登戸住んでるんですか!? 俺わりと近くですよ、じゃあ。

田中:登戸ですね。近いですね。

奇妙:これ飲みナカナ発見じゃないんで。飲みナカナって言ってもーた(笑)。

じゃあバンドのためにわざわざ。

塩見:急に来よったんです。

急に来たんだ?

田中:そうなんです。

奇妙:もういっこ田中がやってるLa Turboっていうバンドのヴォーカルのひとがすごいべっぴんさんで僕好きやったんですけど。東京に引っ越すっていうんで、「お前もちろん来るやんな?」って言われて。

田中:元々大阪のバンドなんです。いまは東京に。

安田:なんでそこは本当のこと言うん?

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みんなに楽しんでもらいたいって気持ちの方が全然大きかったです。で、みんなに楽しんでもらいたいっていうことは、「俺こんなん好きやねん」ってことをプレゼンするっていうことじゃないですか。

なるほどね。じゃあ安田さんがリーダーなんだよね、たぶん。

安田:そうです。

......これ仕切るの大変ですね。

安田:いや、もう全然。みんな実はめっちゃマジメなんで。(メンバーに向かって)ありがとうございます、ほんま。

奇妙:もう日本の将来のことしか考えてないですからね、僕ら。

(一同笑)

安田:たまに居眠りしてしまったりしますけどね。

歌謡曲とか、レトロ・スタイルにこだわる理由っていうのは何なんですか?

手島:好きなだけっすよね、これが。

奇妙:こだわるっていうとそうかな、って思いますし。みんなそれぞれけっこう忙しいんで、あんまり集まれないんですけど。ライヴはけっこうしてるんですけど。みんな知ってる曲のほうがライヴしやすいんです。あとは自分が好きやっていうのがいちばん大きいですけど。まあなんか、何でもいいんですよね。人前でやるっていうと......なんかシーンとしてない? だいじょぶ?

まいこ:いちばん盛り上がってたよ、だいじょぶ。

安田:いまいちばん盛り上がってたよ。

奇妙:何でもいいんですけど。

芸人道みたいなものをすごく感じました。

安田:ありがとうございます!

奇妙:そう思ってたときがほんまにあるんですよね、ライヴのとき。

エンターテイナーというか、芸人に徹するっていうか。

奇妙:それがほんまに凄いことやなって思ってました。でもそれはほんまに凄いことすぎて。僕、今年の最初ぐらいまで芸人さんみたいなものに憧れてたのもあるんですよ。
 ここ1ヶ月ぐらいは全部取っ払って、舞台に出て人前にばっと出たときに自分はどうするんかみたいなんを整理せな他のこと何もできへんと思って。まあそういう感じっすね。全力で30分とか1時間とかを絶対やるっていう。3日連続ライヴあるとしたら、3日間を30%ずつで割るんじゃなくて、初日100%でやって――。なんて言うんですかね、気持ちは全部100%なんですけど、声の調子とか、どんどんやっぱ減っていくんですよ。それはすごい悔しいんですけど、しょうがないなとも思うんですよ。あれ、何が言いたかったんか......。

まあ、芸人ですよ。

奇妙:明日のことを考えて今日は60%ぐらいでライヴしたとして、みんながそれで幸せってなったとしても、今日死んだら自分はやっぱそれは悔しいんですよね。お客さんが「めっちゃ良かった」って言ってくれて、バンド・メンバーが「今日いいライヴしたね」って言って、自分でも「いいライヴしたね」ってなっても、やっぱイヤなんですよね。もうそれ以降一生ライヴせーへんとしたら。それやったら、絶対全力でやりたいなと思って。で、全力でやった次の日が声出なくなって、次の次の日もっと声出なくなって、「あ、あ、あ」みたいな声なるんですけど。それはほんまに悔しいです、なんか。「別にお金払ってくれんでいいし」って思うし。でもそれも全力で絶対やるんですけど。まあやっぱ悔しいです。だから最近は、申し訳ないな、と思ってます。

(一同笑)

はははは、なるほど。でも何て言うんだろう、ある種のプロ根性みたいなことだと思うんですけど。やってる音楽っていうのがポップスっていうか、原点回帰ってことをすごく意識していらっしゃる。

奇妙:そうですね。アルバムなんかはそれを意識してる。

その原点回帰みたいなものっていうのは最初からあったんですか? 最初から昭和の歌謡曲みたいなものが好きだったんでしょうか? それとも、やってくなかで自分たちでいまのスタイルが定型になった?

奇妙:ほんまに最近までみんなに楽しんでもらいたいって気持ちの方が全然大きかったです。で、みんなに楽しんでもらいたいっていうことは、自分の好きなもの、「俺こんなん好きやねん」ってことをプレゼンするっていうことじゃないですか。別にバンドしてる・してないに関わらず。なんかそういうことやと思います。「こういうバンドおるから一緒に観に行こや」とか。

エンターテインメントってことは強く意識していらっしゃいますよね。

奇妙:それは最終的にはやっぱ考えてますね。

それがすごくいいなと思うんですよ。いまお酒でベロベロですけど(笑)。なんで自分たちが原点回帰みたいな方向性になったんだと思います?

奇妙:自分たちがそれを好きやってことやと思います。

それは、いまの音楽にはなくて、それこそ美空ひばりとか加山雄三とかみたいなものにはあったものを発見したわけですよ。

奇妙:それはありますね。

それは何だと思いますか?

奇妙:それはまず、難しい言葉は使わないということです。僕が好きな友だちの曲とかもそうです。サンデーカミデさんの曲を僕はすごく歌うんですけども、そのひとの曲も小学生でもわかる単語しかないんですけど。

ああ、大阪で活動されてる。

奇妙:そうです。なんかびっくりするんですよ。言葉はわかりやすいのに、テキトーに「みんなで仲良くしていこうや」みたいな曲じゃなく。

簡単な言葉で深いことを言ってくれるっていう?

奇妙:うーん......そうです。

はははは(笑)。

奇妙:なんかやっぱり、根本的に、根本的に......根本的に。

はははは(笑)。あとさ、ラヴ・ソングを追求してるでしょう?

奇妙:どうすかね、全部ラヴ・ソングですけど。

なにゆえラヴ・ソングなんですか? 

奇妙:わかんないです。不安なんじゃないですかね。ラヴ・ソングをいっぱいやったほうが、みんなこっちを向いてくれるんじゃないかみたいな、バンドをやる人間の最初の不安があるんじゃないですかね。だからこんなにしょうもない曲が世界中に......。

(一同笑)

奇妙:でもしょうもない曲って結局ないと思うけどね。「うわ、ほんまにあいつクソやったな」みたいな対バンのひとの曲とかも、真剣に聴いたわけじゃないし。でもま、クソみたいなんやけど。でも心底嫌いかって言われたら、まあそんなことないなって思うんですけど。でもなんか、そいつが解決せなあかん問題がそこに含まれすぎてて、そんなん聴くわけないやんっていう。

(一同笑)

奇妙:でもサンデー(カミデ)の曲はそういうのが一切なくて。僕がどこ行ったときでも、全身全霊で歌った後も、その曲をやってくれて。これは自分にとって悔しいことなんですけど、ひととしての凄さがあるなって。自分でもわかりますし。

なるほど。僕はもういいオッサンで、中学校のときにパンクがやって来た世代なんですよね。ちょうど中1のときにセックス・ピストルズがデビュー・アルバムを出したばかりの頃で。

奇妙:いちばん羨ましいけどな。

ちょうどその頃RCサクセションっていうバンドも日本で人気が出てきたんですよね。で、僕はそのときRCサクセションっていうのは、みんなすでに年取ってるしね、パンクの真似してるけど全然パンクじゃないし、「こんなの誰が聴くかよ」みたいな感じでいたんですよ。でも友だちがすごく好きで、静岡に来たときに「一緒に行くやついないから一緒に行こうよ」って無理矢理誘われて。

奇妙:(笑)めっちゃ羨ましいけど!

それで行ったんですよ。で、そのときに彼らの歌う"ラプソディー"とかにむちゃむちゃ感動して。生まれて初めてヴ・ソングというものが好きなれたことをいまでもよく覚えています。

奇妙:それがたぶん、人生でいちばん贅沢なことですよね。

まあある意味ではね。

奇妙:絶対そうですよ。もうそれ以上のことないんちゃうかと思うぐらい贅沢な。

いやいや、でもそれを目指してるでしょ? やっぱみんなも。

奇妙:わかんないですけどね。

でもそのときは童貞だったし、色恋なんてわからないわけじゃない。でも彼らが歌うラヴ・ソングの世界に引き込まれて。パンクにはそういうのはなかったから。

奇妙:ふふ、すごいね。

まいこ:すごいね。

(一同笑)

ラヴ・ソングっていうものを取り戻そうとしてるでしょ? ポップスの中心の歌として。

奇妙:実は、してます。

全員:ははははははは!

そういう歌詞を書くときっていうのはどうなんですか?

奇妙:歌詞とか書かないですか、逆に?

あ、僕!? 歌詞? 

奇妙:絶対書いたらいいのにと思う。書いてほしいもんね。

急に振らないでください(笑)。歌詞は実体験なんですか、それともフィクションとして書きます?

奇妙:僕は基本的に完全フィクションです。まあそうなっちゃうかな、みたいな。内容自体にどうでもいいと思ってるとこがありますね。ま、フィクションというか、そのときに腹立ったこととかもたぶん入ってるとは思うんですけども。それが伝わるようには書いてないですね、全然。自分しかわからないと思います、たぶん。

ラヴ・ソングもフィクション?

奇妙:ラヴ・ソングはノンフィクション......いや、フィクションですね。

いや、ノンフィクションでしょう。安田さんがたぶんいちばんわかってる(笑)。

奇妙:安田くんは知らないですよ(笑)。

安田:ははははは(笑)。

奇妙:あんまりないですね、別に。そういう歌詞が好きなんですよね。「誰かのことが忘れられへん」とか、だいたいそういう歌詞じゃないですか。ああいうのを聴いてたら、別に悲しいことなかったのに悲しいことあったみたいな気してくるし。でもそれでいいんや、と。山ですれ違ったら「こんにちは」って言う、みたいな。

安田:山にポテトチップスを運ぶひとやろ。

まいこ:そんな仕事あるんや?

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「テンプラ、ゲイシャー」って聞こえてきたら、「何やねん、これ!」っていう(笑)。その「何やねん!」みたいなんが多いほうが、面白いね。人生もそんなん一個多いほうがいいわけやし。そういう縁起物みたいな感じですね。

曲にもあるんですけど、アルバム・タイトルを『桜富士山(sakura fujiyama)』にしたのは何でなんですか?

安田:これ奇妙くんが考えたんやんね。

奇妙:ただ単純にめでたい感じがするから。2000円とか2500円するわけやし――。

あと歌詞も、「お寿司」とかさ。「天ぷら」とか。

奇妙:なんか、めでたい感じ。せめてめでたい感じ。

日本のひとが海外のひとに誇れるものが何だろうってときに、寿司とか天ぷらとか、そういうことなのかなと思って(笑)。

奇妙:いや、もっとありますけど(笑)!

はははは。

手島:ぱっと出てくる日本語ってことですよね。

奇妙:全然桂離宮のほうが凄いけど(笑)。

じゃあそういう意味じゃないんですね。

奇妙:いやまあ、でもそういう意味です。外国のひとから見た日本の感じが面白いな、と思って。面白いかな。

そうか、おめでたい感じにしたかった?

奇妙:もし車運転してて、自分がバンドとかしてなくて、それが流れてきたら「何やねん!」て思う歌詞。「愛してるー」みたいなん聞こえてきても、「ああ、そうなんですか」と思うけど、外人の声で「テンプラ、ゲイシャー」って聞こえてきたら、「何やねん、これ!」っていう(笑)。その「何やねん!」みたいなんが多いほうが、面白いね。人生もそんなん一個多いほうがいいわけやし。そういう縁起物みたいな感じですね。

ああー。

(ここで唐突にケツメイシの話で盛り上がるメンバー)

仲いいっすね(笑)。結成は2008年って書いてあるでしょ? それはほんとにそうなんですか?

安田:それはね、ほんとです。

それ以前に何かやってたってことはないですか?

奇妙:やってましたやってました。

手島:それは個々それぞれ。

同じようなことをやってたんですか?

奇妙:ま、ジョン・レノンとバンドやってましたけど(吹き出す)。

ほほぉ、練習スタジオ押さえるのも大変ですよね。

安田:そういったリアルな話はまた後ほど。

後ほど(笑)。でも、芸人道っていうか、エンターテイナーとしての気概を感じますね。こうやって酒飲みながらも、ストイックな部分も俺は感じますよ。ライヴ前は飲んだりするの?

田中:ライヴ前は、飲むひとと飲まないひとと分かれますね。

手島:飲まないっすね、最近はね。

奇妙:ライヴあかんかったときに、辛くなるから。お酒飲まんかったらあかんなるのが自分でめんどくさいから。別にテッシーとかが飲むんは別にええよ。

手島:ははははは(笑)!

奇妙:そのほうが調子が出るんやったら。

あと新しい音楽とかって聴かないんですか? DJ YOGURTがリミックスしてたじゃないですか? あれは誰のアイディアなんですか?

手島:あれはヨグさんから連絡が来て、ヨグさんに......。

奇妙:ミック・ジャガーがやってるスーパーヘヴィってバンドめっちゃ気になる。それが新しい音楽なんかって聞かれたら違うかもしれんけど。でもめっちゃラップとか入ってるし。あのひとやっぱ、尋常じゃない元気さがめっちゃカッコいい。

はははは。ヨーグルトさんを仕掛けたのは安田さん?

安田:いや、ヨグさん本人。

あ、本人がやりたいって言ったんだ!

安田:そこからヨグさんとはよく話してる。

へえー。何でそこでヨーグルトなんですか?

安田:それはヨグさんのことが好きっていうことですね、僕が。

クラブ・ミュージックは聴きます?

奇妙:僕は全然知らないですね。

手島:僕は好きですけどね。

奇妙:テッシーは好きやんな。

じゃあ、ヨーグルトのリミックスの出来はどうでした?

安田:それは予想外でしたけど、それはそれで面白いなと思いました。全然違う形になってて。ひとり入っただけでこんなにちゃうんや? と思って。でもその前にヨグさんが好きっていう。

なかなかヨーグルトとって想像つかないよね。すごく意外だった。でも最初は意外じゃなかったんですよ、僕。実は。最初のアルバム聴かせていただいたときに、すごくグルーヴィーな音だし、いわゆるノれる音楽だから。

安田:そうなんですね。でも僕めっちゃ聞かれました、いろんなひとに。「どういう接点なん?」みたいなことをめっちゃ言われましたけど、それは僕はヨグさんにも聞いたことありますけどね。「どこで知ったんですか?」みたいなことを。

ね、すごいよね。

安田:でもやっぱりね、最初は電話だけやけど、「おもろいな、このひとは」っていうとこからはじまって、全部丸投げですよ。

なるほどね。でも、奇妙さんの反応はどうだったんですか?

安田:奇妙くんの反応は......奇妙くん、どうなんヨグさん?

奇妙:ヨグさん大好きです。

ははははは。

安田:そういうことですね(笑)。めっちゃ踊ったよな、りんご音楽祭で。

まいこ:ああー、そうだそうだ。

キツネうどん:3日間筋肉痛で死にそうになった。

まいこ:そんなに!? でも楽しかったね。

手島:先週ヨグさん自分のブログで、「なんで安田さんに僕が電話をかけたか」っていうのを。

安田:それは聞きたい!

手島:いや、それすごい長かったから半分ぐらいしか読んでないねんけど。

安田:それはりんご音楽祭のときに、「書いていいですか?」って言われたから「それは全然任せます」と。

何を書いていいって?

安田:生い立ちです。

誰の生い立ち?

安田:僕らのバンドとヨグさんの出会いの、です。歴史です

ああ、歴史をね。いやーしかし、ほんと破天荒なバンドですね、ほんとね。

安田:いやー、でも根はマジメですよ。

いやわかりますよ。雰囲気で。いや実はさ、担当さんから朝5時から飲んでるって聞いてたんで。

安田:はいはいはい、朝5時から飲んでましたね。

奇妙:ノラ・ジョーンズさんが行ったという築地の店で海鮮丼を食ってましたね。

キツネうどん:ぽっと小さい灯りがともるような。

安田:どういうこと(笑)?

手島:中島らもみたいな表現しますね(笑)。

ちなみにメンバーは、やっぱりタイガースなんですか? それともガンバ大阪なんですか、セレッソ大阪なんですか?

一同:ああー。

奇妙:僕スポーツ全部なくなれと思ってます。

はははは!

安田:いやそこまでは思ってないけど、あんまり知らないです。

奇妙:ラグビー以外のスポーツなくなれと思ってます。

手島:僕ら近鉄ライナーズのファンです。

はははは!

奇妙:ラグビーと将棋以外の真剣勝負はなくなれと思ってます。

何で!?

奇妙:ひとが飛んできた球を打とうが打てなかろうが、知らん! っていう。ひとがネットに球入れようが入れまいが。俺が球入れたいわ。球を球に(笑)。

手島:ははははは!

安田:どういうこと(笑)?

大阪人に対するステレオタイプの偏見がありまして。大阪の人間はみんな阪神タイガースが好きで。

手島:まったく興味ないですもんね。

奇妙&安田:いや、全然あるで。

はははは!!

手島:これなんすよねー。

(一同笑)

キツネうどん:たまに高校野球のほうが面白いときがある。

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「誰かのことが忘れられへん」とか、そういう歌詞じゃないですか。ああいうのを聴いてたら、別に悲しいことなかったのに悲しいことあったみたいな気してくるし。でもそれでいいんや、と。山ですれ違ったら「こんにちは」って言う、みたいな。

ちなみに大阪でいちばんウマいと思うラーメン屋って何だと思う?

安田:ラーメン屋? 

やっぱほら、金龍とか?

手島:金久右衛門(きんぐえもん)とかどうですか。

安田:金久右衛門ね! 金久右衛門、おいしいですね。

金久右衛門? こってり系なの?

キツネうどん:いやあっさりです。醤油。

醤油なんだ? 神座(かむくら)よりもウマい?

安田:あ、ちょっと違う。種類が違う。

キツネうどん:神座はたぶん、大阪のひと以外に人気がある。

安田:いや僕味の素好きなんでねー、意外と好きっすよ。案外ね。

わかりました。バンドとして目指しているところっていうのは何なんですか?

安田:それは、みんなのとこ行きたいですよね。ニューヨークやしイギリスです。

え、何が(笑)? 何がニューヨーク?

安田:いやこのひとお母さんニューヨークやし、別のメンバーがお父さんイギリスやし。だからニューヨーク行ってイギリス行って、まあ奄美は行ったし。で、八尾行って。

キツネうどん:めっちゃローカルやん(笑)。八尾市っていうところがあるんです。

安田:泉北行って、で、東大阪でやりたいですね。

ああー。それが目標ですか?

安田:はい。

やっぱいろんなところでライヴやるっていうのが?

安田:そっか目標か。

バンドとしての目指すところは? まあちょっと大きな話ですけど。

安田:まあ、イギリス、アメリカ......、八尾、泉北です。で、東大阪。

で、ライヴをやると? なんでイギリスとアメリカ?

一同:いや、メンバーの......。

あ、それぞれの実家でやりたいっていう。

安田:いや、実家ではやりたくないですけど。実家ではないですね。

出身地というか。

安田:でも、それをやるだけのものは欲しいですもんね。普通に行ってはできることなんで。やっぱりそれは満員にしたいじゃないですか。

キツネうどん:どこを?

安田:いやどこでも! イギリスでも、アメリカでも。泉北でも。っていうのはありますね。

奇妙:まあとりあえずエレベーター満員にしよ(笑)。

手島:大体バンド・メンバーで満員ですからね。

あ、ステージが?

まいこ:エレベーターが。

あ、エレベーターがね。地元でのお客さんのノリはどうなんですか?

安田:それはもうね、サントウさんがいちばん知ってますよ。

山藤:ええええ?(笑)

ウケてますか? じゅうぶん人気者になってる?

山藤:みんな......愛してくれてます。

おおー! 

安田:ああー、すごい、すごいいい表現ですね。

奇妙:サントウさんがしゃべるのがいちばんいいな。

安田:うん。何か安心する。

奇妙:逆ですいません、最近出たライヴDVDなかで「これめっちゃ最高に面白かった」っていうのんありますか? だって買いに行きたいやん。ストーンズのスコセッシのやつあるじゃないですか。あれめちゃくちゃおもろいじゃないですか。あれの真似してるもん、最近。

(一同笑)

奇妙:あれの真似を俺と塩見くんでこっそりするっていう(笑)。

塩見:そうなんすよ(笑)。

奇妙:あれ以上のあります?「バーン!」っていう。あれ凄くないですか?

スコセッシは本人がホント、ロックが好きだしね。

奇妙:スコセッシはほんま、ただのオカマのおっちゃんかと思ってたけど(笑)、あれはほんまに素晴らしいですね。そういうオススメのん教えてほしいです。買いに行きたい。

じゃあ、みんなのなかで、レコード3枚選ぶとしたら何になる?

一同:うわー......

奇妙:僕でも、『ぼちぼちいこか』と、『この熱い魂を伝えたいんや』と、『フォーティ・リックス』です。

『ぼちぼちいこか』っていうのは誰の?

奇妙:上田正樹と有山淳司の。

あ、やっぱり大阪ってことで?

奇妙:あ、ヤバいサム・クック入ってへん。じゃあ、『ぼちぼちいこか』と......。

塩見:これ一晩かかりますよ(笑)。

ふふふふ(笑)。

安田:これはやめときましょ(笑)。

キリがない(笑)? でもやっぱ上田正樹さんに対するリスペクトはあるんですね?

奇妙:僕はでもめっちゃ好き。大好きですね。

それは大阪っていうのが大きいですか?

奇妙:何かたまたま家にカセットテープがあって、10代前半のときにそれが好きで聴いてたんですよね。誰か分からんと聴いてて。「分かるかー!? 分かるかー!?」っていう。「上田正樹とー! 有山淳司!」 めちゃくちゃカッコいい!

みんなやっぱ聴かされるんですか、それを?

塩見:いやそれはない(笑)。

奇妙:そういうのはないです、別に。でもそれが超カッコいいですね。

なるほどね。ちなみに――。

奇妙:いかにそのひとがズルかろうと、それは関係ない。チャック・ベリーなんかヒドいもんね。まあインターネット情報ですけど。チャック・ベリーが女とホテルのロビー歩いてるときに、バッて来たキース・リチャーズに「おー!おー!」って言われて、キース・リチャーズを思い切りどついたっていう(笑)。「何声かけてんねん、白人の子どもが」みたいな。白人に並々ならぬ恨みがあるという。金を巻き上げられた、みたいな。

自分たちと同じくらいの世代のひとたちで好きなのっています?

奇妙:友だちのバンドとかみんな好きです。

安田:みんな好きやんね。

奇妙:何で好きになったかって言ったら、カッコいいから好きになったっていう。って思ったらそっちの話が先になる。だっておもんなかったら好きになれへんもん。

塩見:8月東京でも......。

安田:あ、〈love sofa〉?

奇妙:アラブ・ソファに聞こえた(笑)。

安田:大阪で11年ぐらいやってね。サンデーカミデの歌詞がいいって言ってるひとが10年同じイヴェントをしてて。それを東京でやるんです。

ああー。それいつですか?

安田:8月18日です。

それは楽しみですね。あれでしょ、クラブのことを歌ってるやつでしょ?("93年の歌")

安田:そうそうそうそう!

あれめちゃくちゃいい曲だよね。

安田:それそれそれ。(ワンダフルボーイズと)CDを同じ日に出すんですよ。

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友だちのバンドとかみんな好きです。何で好きになったかって言ったら、カッコいいから好きになったっていう。って思ったらそっちの話が先になる。だっておもんなかったら好きになれへんもん。

なるほど。みんなを見てると大阪の音楽シーンってほんとに元気があるんじゃないかと思えてくるんだけど、ここだけなのかな?

安田:うーん......広そうで狭そうで広いですよねえ。

それとも自分たちは大阪のなかのアウトサイダーなの?

奇妙:それはもちろんアウトサイダーですよ。

安田:どれがどうなんか分からへんけど。

奇妙:でもメインストリームのひとをカッコいいと思ったことないもん。あ、ある! エゴ・ラッピンとかやっぱカッコいい。

エゴ・ラッピンはカッコいいね。

塩見:でもそれ10年前ぐらいやん。

安田:そうねえ。

まあエゴ・ラッピンもメインストリームとはあまり言えないけどね。

奇妙:ええー!? じゃあ、もうどうしようってことやね(笑)。

塩見:じゃあ誰やろ? 円(まどか)ひろしとか?

手島:円って古ないすか?(笑)

いまはもう洋楽自体がメインストリームではないですよ。

一同:へえー。

レディ・ガガとかアデルとか、いち部だけだよ。

奇妙:はあー、そうなんや。すげーなあ。

安田:いま誰なんやろ、じゃあ? ね?

塩見:安田ちゃう? もう安田の時代が来たんちゃう?

奇妙:ギバちゃんじゃないやろ。

(一同笑)

安田:ギバちゃんやで。

奇妙:ネバー・キブアップ、ギバちゃんじゃないで。

安田:いやどういうこと?(笑)

手島:そのネタしましたっけ?(笑)

じゃあそろそろ最後の質問にしようかなと思ってるんですけど(笑)。好きな女性のタイプと好きな男性のタイプは?

一同:ぎゃははは!(笑)

奇妙:バンドとかに興味ないひとですね。

安田:ああーー。なるほどな。たしかに。

え、何で!? それ矛盾してるじゃないですか、だって。

奇妙:矛盾はつねにしておきたいですね。

安田:ははは、カッコええ!(笑) ここで締めよ!(笑) 終わったー!!

(拍手)

お疲れ様でーす!(笑)

安田:すごいいい終わり方した!(笑)

いやそうだよ、最後女性ひとりに聞かないと。代表して(笑)、好きな男性のタイプを聞いてそれで締めよう。お願いします!

まいこ:ええー、やだ!

(メンバーから個人名が挙がる)

安田:はははは!(笑) 個人名はやめて! 個人名は!(笑)

個人名はやめようよ!(笑)

奇妙:ウンコを食べろって言わんひとやろ。消しゴムより顔おっきいひとやろ。

じゃあどうもありがとうございました!

奇妙:終わった(笑)。

interview with Dirty Projecters - ele-king

 『スウィング・ロー・マゼラン』がすばらしい。ダーティ・プロジェクターズがキャリアの峠を越えたと勝手に合点している人は2度振り向くことになる。とはいえ筆者自身も漫然と期待していたひとりだった。はや6枚にもなるフル・アルバムのリリース、前前作はシーンに驚きをもたらし、前作は各メディアから絶賛を受けた2000年代の名盤として不動の地位を得ているうえ、昨年はビョークとのコラボEPという破格の課外活動もパッケージ化。このうえ度胆をぬくような作品など、そうそうできるものだろうか?

E王
Dirty Projectors
Swing Lo Magellan

Domino/ホステス

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 この10年ほどのインディ・ミュージック・シーンにおいて、ブルックリンという土地名にわれわれが連想するのは、アーティで奔放な実験主義者たちの姿である。多文化混淆的なムードもそこにつけ加えられるだろうか。イェーセイヤーやTVオン・ザ・レディオらの名にならんで、ダーティ・プロジェクターズもまたその列をかざる存在である。だが今作にはそうした高い方法意識から解放されたようなところがある。どことなくこのバンドのキャラクターを形成していた学生気質な青さやかたさがすっと抜け、とても素直にエモーションが流れだしていて、それがため息がでるほどすばらしいのだ。さまざまな文化を参照したフォークロアは、今作ではただ彼ら自身のフォークへと姿をかえ、ダイレクトに心を打ってくる。ラフな作風になったのではない。彼と彼らの構築的な音楽性は、より緻密に、より洗練されることで目につきにくくなったという感じだ。"スウィング・ロー・マゼラン"など、ほんとにささやかな曲なのである。だが、そこにはあふれるようにエモーションがたくしこまれているし、"ダンス・フォー・ユー"のストレートな歌心や情愛にみちたストリングスにはふるえがくる。なんということだろうか。筆者はデイヴ・ロングストレスという人の、創作に対する深い深いモチヴェーションに完全にうたれてしまった。『ビッテ・オルカ』(2009年)までで、やることをやったという自信があったからこそ、彼は力強くつぎへと踏み出すことができたのだろう。箸やすめの1枚ではない。音楽をやるというのは本来このようなことだということを思い知らされずにはいられない、気にみちた作品である。

 インタヴューは音源を聴いた翌日であったから、筆者の興奮が勝りすぎていることがよくわかるだろう。プロモーションのためにひとり来日したソング・ライター、デイヴ・ロングストレスは、なかなかクセのある人物ではあった。夕闇がせまるなかでわざわざサングラスを取り出す彼を奇人と呼ぶのは狭量だろうか? だが死生観からチルウェイヴ論議まで、その理知的な語り口はじゅうぶんに彼の人となりをつたえている。時間切れでオキュパイについて聞けなかったことが心残りだ。

いろいろなものを愛してしまうということと、いつだって死んでしまいたくなるということとの間には、ほんとにせまい、細くてうすい境界線があるだけで、僕はいつもその間を行ったり来たりしている。

あなたのなかにある民俗的なモチーフ、たとえばエストニアや東欧のフォークロアを思わせるハーモニーや、アフリカの民族音楽からインスパイアされたようなヴォーカリゼーション、また中東的な雰囲気など、いろんなエスニシティが圧縮されたようなモチーフはどこからくるものなのでしょう? あなた自身、それらに関係した強烈な音楽体験があったのですか?

DL:多くの人がコーラス・ワークとか強烈なヴォーカル・ラインとかにブルガリアの音楽を感じたり、テレキャスターとかで弾いてるギターの音が西アフリカを彷彿させたりするって言うし、言ってることはわかるんだけど、いまこの時代、それらはグローバルなこの世界においてじゅうぶんアクセス可能な音楽であって、もはや未知の音楽ではけっしてない。ガレージ・ロックをやっていたりする人にはこういうものは必要じゃないかもしれないけど、僕のやってる音楽はただそういうヴォキャブラリーを持っているってだけだよ。

今作も非常にエキサイティングでした。きっとよく指摘されていると思うのですが、"スウィング・ロー・マゼラン""インプレグナブル・クエスチョン"などとてもシンプルでフォーキーな曲にも驚かされました。あなたのなかのフォークというテーマが一周して自国のフォークと向かい合うようになったのではないかと思ったのですが、どうですか?

DL:まあ、そのとおりかな。これまでの作品が80年代のハードコア・ミュージックだったりブルガリアの声楽だったりっていう世界中の音楽からの影響を受けたものであるのに対して、今回はすごくシンプルでダイレクトでパーソナルなものにしたかった。ほかの国の音楽のある特定の要素を集めることにこだわった作品ではないんだ。だからほかのジャンルとは関係ないっていう部分で、必然的にドメスティックな、アメリカのフォーク・ミュージックに近くなっていくのかなって思うよ。

いい意味でとても力が抜けていて、しかしとてもタイトなつくりの曲が多かったと思いました。かつ保守的になったわけでもない。聴くのがとても気持ちいいという感じと、音楽としてとても立体的でエキサイティングだという感じが両方満たされていて、本当にすばらしいと思いました。

DL:今回いちばん気にしたことは、けっして完成されたものをつくりたいわけではない、ということなんだ。未完の部分が残ったものをつくりたかった。この時間、この瞬間を切り取って記録することにフォーカスしたかったんだ。もちろん演奏を適当にする、とかそういう意味ではない。

"インプレグナブル・クエスチョン"などはあなたのなかの「コンポーザー」というよりは、「シンガー・ソングライター」というキャラクターが表にあらわれてきたもののように感じました。あなたはとてもエッジのたった音楽を追求するとともにキャロル・キングとかトッド・ラングレン、あるいはジョン・レノンなど、すぐれたシンガー・ソングライターたちが立っているような地平に立ったのではないでしょうか。

DL:ああ、なるほどね! はははっ。僕自身のパーソナルな表現だからね。

その意味では『ザ・グラッド・ファクト』を10年越しに完成させたものだっていう感じもしますね。

DL:そうそう、それはたしかにあるね! 原点回帰って意味じゃないけど、ファーストのころに戻った感じ。シンプルにしていった方向性っていうのはたしかに似ているかもしれない。

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この曲が歌っているのはニューヨークのオキュパイ・ムーヴメントをプロテストする内容なんだ。ヴォーカルにはギリギリな感じ、警告するような響きが出ている。だからいちばんこのアルバムを象徴しているかなって思った。

今回はあなた自身のプロダクションとミックスで完成されたということですが、プロダクションやミックスのうえで心がけたこと、考えていたことはどのようなことですか? とてもぬくもりある、あらいざらした木綿のような気取らなさ、親しみやすさがあると感じました。

DL:木綿。まさにね。僕はきらきらした、そうだな、ポリエステルのようなものはめざしてないね。

"ダンス・フォー・ユー""イレスポンシブル・チューン"などもとても素直に歌心が流れだしています。あなた自身はどのような人なのでしょう? あなたのすごい量のエモーションっていうのは何から生まれてくるのでしょう?

DL:(爆笑)いやあ......はっはっは! そうだな......。僕は、あらゆる存在、この世に存在しているあらゆるものに極端な好奇心を持っている。そのディテールにすごくとらわれてしまうし、とらわれたくなる。そういう性質だ。人生というのは一筋縄ではいかない、混沌としたものだけど、いろいろなものを愛してしまうということと、いつだって死んでしまいたくなるということとの間には、ほんとにせまい、細くてうすい境界線があるだけで、僕はいつもその間を行ったり来たりしている。その間を縫って生きてるんだ。そういうことかな。

そこで現実逃避したいっていう気持ちはないんですか? たとえばいまチルウェイヴと呼ばれているような音楽は現実逃避的だとして批判されることが多いですが、非常に影響力がありますね。あなたの場合逃げるという選択肢はないのですか?

DL:音楽における現実逃避というのは、何種類かあると思ってる。たとえばまず、さっき言ってたジョン・レノンとプラスティック・オノ・バンドとか60年代後半から70年代前半のジョン・コルトレーンとか。彼らの音楽もユートピアをめざすという意味では現実逃避的で、ただそこには道筋や文脈がはっきりあって、説明的ですらある。それとはべつにレッド・ツェッペリンとかブラック・サバスとかがあって、これは完全にファンタジーの世界のものだ。現実的ではまったくない。そういう世界に浸るための音楽だね。そしてグランジなんかは完全に薬物がからむ。薬物で現実と対するし、現実とはかようにつらいものだという認識からはじまって、自分をどれだけ甘やかすか、目をそむけるためにどのような手段を使うのか、そういう地平の音楽だ。だいたいこの3種類くらいが逃避の音楽として思い浮かぶね。けれどチルウェイヴだけはそれらとちょっと違う。チルウェイヴと呼ばれるものを聴いていると、まずまちがいなく薬物って感じはしない。そして思い描くイメージは夕暮れの海岸のポラロイド写真みたいな感じしかない。それ以上の幅の広がりを感じないね。そういう意味ではある種、特殊な音楽かもしれない。

音楽やアートや文化一般において、エスケーピズムは重要な役割をはたしてきたと思うんですが、チルウェイヴはそうではないかもしれない、という......?

DL:だから、自分たちの音楽をなにかしらの言葉でカテゴライズするのは好きではないけど、そういうチルウェイヴやなんかの音楽にくらべると、もっとオプティミスティックというか、まだまだ未来を感じて、どんどん努力もする、もっと深いところまで突きつめる、すごく前進的な音楽だと思うよ。それはこれまでのすべてのアルバムについて言えることだね。そういう空気、そういう密度がすべての作品にあると思うよ。

先ほど言われてたことは、そのポジティヴさのようなものと「死」というものとが、あなたのなかでは隣りあわせだということですか?

DL:われわれはいずれみんな死ぬ。これから死のうとしている。だから現実逃避的な部分は誰しもが持つものかもしれない。そうだね、ふたつはとても近いところにあるものかもしれない。まあ、「死」をより近くに感じるのはたいていがツアー中だけどね。ははっ。ツアーに出る人はみんなそう思うんじゃないかな。

"About To Die"などはとてもフィジカルなビート感覚があります。一見「死」という言葉に結びつかないような力づよさがありますね?

DL:この曲にはたしかに指摘されたような力づよさ......ポジティヴさがあるね。

ところで、『スウィング・ロー・マゼラン』をタイトルにしたのはなぜですか? 曲自体はとてもささやかな、しかし情感豊かな小曲です。その直前"ガン・ハズ・ノー・トリガー"までのアッパーでスリリングな展開をこれまでのダーティ・プロジェクターズの延長と考えるならば、"スウィング・ロー・マゼラン"はそこからぐっと舵をきって、"インプレグナブル・クエスチョン"などの方向へ踏み出していくきっかけとなる位置に置かれていると思いました。

DL:日本でもそうだと思うんだけど、野球の選手の打順だよ。ホームランを打ってくれるのがこの"スウィング・ロー・マゼラン"なんだ。だから4番なのさ。たしかに2分だし、シンプルな曲ではある。けど、これが4番だね。

今回はすごくたくさん(約70曲)録音して、そこから曲をしぼっていったということなんですが、あなたにとって、バンドはひとつのツールのようなものですか? それともたとえばファミリーストーンのように結合的な関係性を持ったなにかなのでしょうか?

DL:いまのメンバー、とくにアンバーはもう5年もいっしょに住んでる仲間だし、世界中でもいちばんの親友と呼べる仲間たちだよ。けれど、さっき言ってもらった70年代のシンガー・ソングライターのように、オーケストラの必要な曲をやりたくなれば必要な人びとをあつめてくるし、そのときに応じて流動性は生まれてくることもあるかもしれない。現在はともかくもこのメンバーのため、仲間のために曲を書いてるって感じだね。

"ガン・ハズ・ノー・トリガー"は、音楽性からみても、ヒップホップ的ですらあるビートを用いながら、これまでのダーティ・プロジェクターズのイメージからは踏み出た曲ですね。これをシングルとしてリリースした理由を教えてください。

DL:オールドスクールなヒップホップとか、たしかに音楽面でいえばそうしたものの影響はあるね。ヴォーカルについて言えばバッハ的でもあるんだけど。そこ気づいてくれてうれしいよ。まあ、アルバムの中からひとつ象徴的なものを取り出すっていうのはむずかしいんだけど、たとえばこの曲が歌っているのはニューヨークのオキュパイ・ムーヴメントをプロテストする内容なんだ。ヴォーカルにはギリギリな感じ、警告するような響きが出ている。だからいちばんこのアルバムを象徴しているかなって思った。それが理由かな。

[music video] ♯1 - ele-king

THE OTOGIBANASHI'S - Pool



 2度と戻らない青春の夏の1ページを記録したような甘酸っぱい感覚に満ちている。ここから、かせきさいだぁやフィッシュマンズ、あるいはチルウェイヴを連想するのは安易だろうか。いずれにせよ、THE OTOGIBANASHI'Sの、3分ちょっとの衝撃のデビュー曲である。T.R.E.A.M.のインタビューに拠れば、THE OTOGIBANASHI'Sは、B.M&僕(B.M&boku)、インディ(in-d) 、パルベッドストック(PalBedStock)の3MCから成るグループで、B.M&僕とインディは19歳、パルベッドストックは弱冠16歳だそうだ。トラックを作るのは、17歳のBlackaaat(読みはブラカットだろうか??)こと、あらべぇで、彼はブンやキラー・ボング、J・ディラなどに影響を受けていると語っている。『ele-king Vol.6』に倣って言えば、これもまた宅録文化の最前線と言えるのだろうか。ともあれ、この若さで、このセンス、今後が楽しみでしょうがない。

B.I.G.JOE - Hurry!!!



 『ブラック・パワー・ミックステープ~アメリカの光と影~』を観て、60年代後半から70年代前半の、ブラック・パンサーのストークリー・カー・マイケルやアンジェラ・デイヴィスのスピーチがずば抜けて格好良かったことに感動した。感情を爆発させることは容易い。いかに激情をコントロールして、テンションをキープし、クールにキメるか。ビッグ・ジョーは原発の問題や311以降の硬直した日本社会といった難しいテーマに挑みながら、カー・マイケルやデイヴィスがそうであったように、決していきり立たず、クールに、セクシーに、「立ち上がれ!」と民衆に呼びかけている。大きなテーマに捻じ伏せられることなく、軽やかにラップするビッグ・ジョーに痺れた! 「Hurry!!!」は、ビッグ・ジョー流の「ファイト・ザ・パワー」であり、「ファイト・フォー・ユア・ライト」である。

KLEPTOMANIAC feat.RUMI,MARIA - LA NINA



 トラックは〈ブラックスモーカー〉のアートワークを数多く手がけるクレプトマニアック、そしてラップするのはルミとシミ・ラボのマリア。この3人のレディのコラボレーションが決まった時点で、勝負はあった! はい、10年代のヒップホップ・クラシックの誕生です。体を揺さぶるぶっ太いビートとベース、ルーツ・レゲエからサンプリングしたようなルーディーなギター、複雑に絡み合う機械的な響きのするパーカッションとクラップ、そして自由気ままなシーケンス。それらは、既成の秩序に対する挑戦、あるいはそこからの逸脱を雄弁に表現しているように聴こえる。ルミは深い闇の中を蝶のように妖しげに舞い、マリアは日本語と英語を巧みに織り交ぜ、華麗に泳いでいる。マリアからはたしかにニップスの影響を感じる。勢いを増す〈ブラックスモーカー〉が8月に発売する女性アーティストのコンピレーション『LA NINA』からの一曲。ダブ、テクノ、ヒップホップ、ノイズ......コンピもとんでもないことになっている。

田我流 - やべ~勢いですげー盛り上がる



 すでに本サイトにレヴューがアップされた田我流のセカンド『B級映画のように2』からのニュー・シットなのだが、ミュージック・ヴィデオがやべ~勢いですげー最高なので紹介しよう!! これはもはやアメリカのアクション・ドラマ『特攻野郎Aチーム』のはちゃめちゃな世界観にタメをはっている。『特攻野郎Aチーム』の山梨ローカル・ヴァージョンとも言えるし、労働者階級のファンキーな暴走とも言える。と、まあ、いろんな見方ができるが、とにかく痛快だ。ところで、田我流にインタビューした時に聞いたのだけど、この曲は90年代後半のダーティ・サウスを意識していて、ブレイクする前のスリー・シックス・マフィアをモデルにしているという。なるほどね~。

SHINGO★西成 - 大阪UP



 大阪・西成のアニキの登場です! シンゴ★西成の通算三作目の新作『ブレない』からの一曲で、風営法の取り締まりで悪戦苦闘を強いられている大阪クラブ・シーンに闘魂を注入するような大阪賛歌だ。ラッパーやクラブ関係者、DJやダンサーだけでなく、近所のお店のオバちゃんやお姉さん 、赤井英和といった人たちも登場するのがいい。シンゴ★西成は今年のはじめに、日本最大の遊郭、飛田新地の活性化のためにブロック・パーティを主催している。その辺の話は近くアップされるであろうriddimのインタビューで大いに語ってもらっています。ほんと、この人はブレません。日本の大衆音楽としてこういう人が売れないとダメでしょ。シンゴ★西成を聴いていると、平岡正明の「歌手は大衆の欲望と表現を反射すればいい」という名パンチラインをいつも思い出す。元気の出る一発!

松永孝義さん、R.I.P. - ele-king

 偉大なるミュート・ビートの全作品でベースを弾いていた松永孝義さんが7月12日午前11時、横浜の病院で肺炎のために亡くなられた。54歳だった。
 彼は、今井秀行との(ときに屋敷豪太との)最強のリズムセクションを成していた。名作『フラワー』をはじめ、もちろん『ラヴァーズ・ロック』でも、『マーチ』でも、『スティル・エコー』でも弾いている。ほかにも、じゃがたらの『それから』やUAの『ターボ』、高木完『Grass Roots』、ヤン富田『Music For Living Sound 』などでも弾いている。2004年には46歳にして初のソロ・アルバム『The Main Man』を(オーバーヒート)からリリースしている。icchie、土生"TICO"剛、YOSSYとのコラボレーションも記憶に新しい。
 クラシックを学びながら、音大卒業後にピアニカ前田やこだま和文らと出会ってミュート・ビートに参加する経緯、あるいはわずらっていた食道がんの話などは、新世界のホームページに詳しい(https://shinsekai9.jp/yorimichi/archives/20)。
 僕の世代のレゲエ好きは、ステージの上の彼を見て、低音を感じ、そして彼のベースラインをいろいろな録音物で聴いている。彼は、がん細胞と戦いながら、つい最近までステージでベースを弾いた。この週末は多くの人に、ミュート・ビートの諸作や『The Main Man』を聴いて欲しい。この国の音楽シーンを切り拓いていったベースがある。松永孝義さん、お疲れ様でした。レスト・イン・ピース。(野田 努)
 

Cupp Cave - ele-king

 『ダイス・プール』のジャケットをみたときにざわっと心と肌が波うった。実際のプールにサイコロがあふれているわけではなく、そのさまを規則正しく並べたサイコロによってシンボリックに表現するという俳句的な修辞のデザイン。24×24で配された赤いダイスは、すべて3の目を表にし、その並びの直線性を利用して、ジャケット中心から(あるいは中心へ向かって)放射状にのびる大きな線を描き出している。ひとつだけこの規則に沿わないやつがあるのかなと思ったが、例外はなかった。これはなかなかの大物かもしれない、と思ったのはそのときだ。

 このカップ・ケイヴというクリエイターは、ベルギーの〈ヴレック〉からEPやスプリット・シングルを出しているために、先鋭的なビートメイカーとしてヒップホップの文脈で聴かれることが多いようだ。しかしそう限定するにはややもったいないというか、より実態に即して述べるなら、ダンスフロアとベッドルームとヘッドホンとをひとつなぎにしてスタイルの拡張をめざす、ポスト・ヒプナゴジックの才能と考えるべきだろう。彼はサリヴァという名義でマシューデイヴィッドの〈リーヴィング〉から(ハイプ・ウィリアムスジェイムス・フェラーロのあいだを縫うような)メディテーティヴなアンビエント・ポップ作品をリリースしているし、ホーリー・アザーのリミックスなども行っている。

 その音楽性についてはしばしば「脱臼」という表現を用いて語られる。なるほど彼はビートや音響の予定調和に対して執拗に脱臼を試みる。しかしそれがブロークンな態ではなく、逆にきわめて精緻な構築物としての姿を現している点にカップ・ケイヴの業がある。いわば彼がめざすのは完璧さであり、わずかな狂いのひとつひとつをすべて包括して秩序へと変えてしまうための、柔構造の音のフォームだ。

 まずそのために、きめ細かなノイズやオーヴァー・コンプでゆがんだプロダクションが必要とされている。なんともいえない微温に設定された、あの不明瞭な音像のなかにもつれぎみのビートが沈んでいくとき、そこには破綻ではなく調和がある。筆者には"キッズ・ア・ルーナー"や"ベッド・スラップ"などのビートはただ抽象的な音であるように思われる。"マウス・リップ"などは、4つ打ちながらその抽象化が極まったようにしなやかで心地よい。「心地よい」というのは「居心地がよい」ということで、居る場所があるということだ。カップ・ケイヴの音には聴き手の居場所がある。われわれの存在は、そこではグリッチ・ノイズやほつれたリズムや、その他あらゆる誤差のひとつとして吸収され、繊維状の音の隙間をみたすものになる。柔らかく、それでいて鋼の鋭さをそなえるきわめて設計性の高い音楽だ。アンビエントなジャケット・デザインだが、この色彩を透過して、筆者にはあの完璧なダイス・プールが見える。

 後半のミニマル・ハウス風の展開はそれほど個性的ではないかもしれないが、だからこそ終曲"ホワイト・アウト"の崩れそうなウィッチ・ハウスにはこの作品のまとめとしてのインパクトがある。ビートはすでにほとんど埋もれて見えず、ハウ・トゥ・ドレス・ウェルのように破れた音がきれぎれに漂う。しかし彼のように情念や感傷によってではなく、人を滞在させる建築として自立するかのようなフォームには、ドローン化しアンビエント化するインディ・ダンスのあり得べき未来のかたちが暗示されているように思われる。

Motty - ele-king

Liquid Loftでの送別会から早3年。
現在は故郷の岩手県奥州市に2012年2月にopenしたばかりのCLUB Bugpipeを拠点にDjをさせていただいてます。震災以降に出来たお店ですがスタッフも空間もサイコーです。7/14(sat)にはGuestに Moodman を迎えて盛大にパーティー!!東北の方は是非!!
HAKOBUNE 7/14(sat) at Bugpipe
OPEN22:00 ¥1500 GUEST DJ:MOODMAN
DJ:UMEDA(JAZZRIZE) MOTTY GOKIUCHI 船長

twitter | Facebook | Bugpipe

ここ最近。2012年6月20日


1
Pele&Shawnecy - Kings Of The Garden EP - Cecille Numbers

2
La Pena - La Pena 009 - La Pena

3
Johnwaynes - Let's Get Lost 12 - Let's Get Lost

4
Brennan Green - My First House - Wurst Music Co.

5
Acid Pauli - Sidney/Darwin - Smaul

6
Eddie C - Make Change/Never Let Go - Flashback Records

7
Situation Edits - Pushin'On/Get On Up - Disco Deviance

8
Claudio Mate - Lilith Dimension EP - Lilith

9
Robag Wruhme - Donnerkuppel - Kompakt

10
Intruder(A Murk Production)feat.Jei - Amame - Defected

SpaceGhostPurrp - ele-king

 「コクトー・ツインズとウータン・クランとの出会い」――こう形容されているのがヒプナゴジック・ラッパー、マイアミ出身の20歳、MC/プロデューサー、ムニー・ヨルダンのスペースゴーストパープ名義のデビュー・アルバム『ミステリアス・フォンク』である。彼は、ご存じのように、メイン・アトラキオンズクラムス・カジノ、エイサップ・ロッキー、オッド・フューチャー、リル・Bらクラウド・ラップの一群に括られているひとりだ。
 メイン・アトラキオンズのアルバムもそうだったが、いかにもガラの悪そうなこのレコードは、下北沢では、〈100%シルク〉やカインドネス(チルウェイヴに対するUKからの回答)やなんかと隣り合わせに並べられている。レーベルは〈4AD〉。昨年、シャバズ・パレセズのアルバムが〈サブ・ポップ〉から、タイラー・ザ・クリエイターのアルバムが〈XLレコーディングス〉からリリースされているが、それらに続くかのように、インディ・ロック・レーベルからのヒップホップ作品のリリースで、しかもその音は......呪われた咳止めシロップとスクリューと、チルウェイヴとウィッチハウスと、濃い霧のかかったスタジオと、そしてどうしようもない無気力さが注がれている。〈ストーンズ・スロー〉の隣よりもウォッシュト・アウトの近くのほうが合っているし、グルーパーモーション・シックネス・オブ・タイム・トラヴェルの幽玄的な世界とも親和性が高そうだ。もちろん言葉ではない。そのサウンドにおいてのみ。
 ただし、"フォンク(Phonk)"とはマイアミのスラングでファンクの意である。すなわちこれは悪名高きG・ファンクの子孫であり、アダルトショップの世界であり、申し訳ないがファックの世界である。ファック・トゥ・ザ・フューチャー。マスタリングはロンドンのアビーロード・スタジオ。

 この若く新しい美学は、ほかにも飛び火している。ピッツバーグ出身の19歳の白人ラッパー、マック・ミラーが先月リリースした『ブルー・スライド・パーク』にもクラムス・カジノがトラックを提供しているが、最近彼が発表したミックステープ『Macadelic』にいたってはザ・ビートルズの"ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウィズ・ダイアモンド"が引用されている。セックス・ピストルズとオッド・フューチャーを(そしておそらくは、ファレル・ウィリアムスとグッチ・メインを)尊敬する10代のMCの音楽にも、ストーナーでサイケデリックな感性が打ち出されている。
 その意味においては、彼の音楽は、ウィズ・カリファのスモーキーな領域とも繋がってくるわけだが、ミラーはヒプナゴジック・ラッパーたちほど眠たく、そして退廃的なわけではない。スクリューめいたドロッとした重さもない。曲によっては軽快に聴こえるほど、キャッチーで、闊達なところがある。それがゆえに彼には「ラップの黄金時代を思い出させるMC」という評価もあるほどだ。
 実際、彼のミックステープは10万回以上ダウンロードされ、『ブルー・スライド・パーク』にいたっては、びっくりだが......『ビルボード』のアルバム・チャートで1位になったのだ。成人向けのスペースゴーストパープと違って、こちらは子供でも踊れるだろう。それでも若さゆえの正しき不良性を秘めている。

 ちなみに、スペースゴーストパープあたりの幻覚性の高いトラックに数年前から目を付けていたのが東京のブッシュマインドで(彼によれば、ある種のホラー感覚に関してはメンフィスがとくに早かったという)、ちょうど彼の『グッド・デイズ・カミン』のアナログ盤もいまリリースされている

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