「MAN ON MAN」と一致するもの

interview with Tomoko Sauvage - ele-king


Tomoko Sauvage
Musique Hydromantique

Shelter Press

AmbientExperimental

Amazon

 Mark Hollisのように1枚の傑作を残せれば、その作品を最後に音楽をやめてもいい。とずっと思ってきた。けれど僕自身はいまだにそういう作品をつくれていない。
 去年の10月ごろ一時帰国したパリ在住のトモコさんと、町田良夫さんの家で食事をした。その時に、8年ぶりの新作をリリースするというトモコさんが「この作品が出せたら、もうこういう音楽をやめてもいいと思ってる」と言っていた。その作品『Musique Hydromantique』は、ele-kingでもデンシノオトさんのレヴューや、WIREなどの海外のメディアでも話題になっている。

 個人的に90年代後半から00年代中盤までは、デジタル・テクノロジーが音の世界でどこまで何ができるのかという、先が見えない楽しさの中で動いていた。グラニュライザーやロング・ディレイが一般的になった頃からアンビエントやドローンの量産がはじまって、デジタル・ミュージックへの関心が急になくなった。ちょうどその頃、西洋医学から東洋医学への意識の移行もあったので、時代に動かされた要素も大きいだろう。仲のいい友だちもライヴでラップトップを使わなくなりはじめたのは00年代後半。それからちょうど10年を経て1周したように個人的にはデジタル・テクノロジーおよび西洋医学の再評価がはじまってはいる。

 そんな流れの中で、即興演奏を加工・編集なく構成されたトモコさんのこのアルバムは、アナログな音を即興的にデジタルで加工して演奏をする。という、この時代を象徴するひとつの演奏スタイルの集大成的な作品のように思う。特筆すべきは、デジタル・リヴァーブ全盛の時代に大きな楕円形の会場でジェネレックのモニタースピーカー10台を鳴らすことで作り出したアナログ・リヴァーブを収録した1曲目だろう。
 最近は、アナログよりもデジタルの方がいい音楽も増えてきている中で、この音楽は、レコードの方が圧倒的にいい。はじめの数秒でそう確信してクレジットをみるとマスタリングはRashadBecker。初回限定版のクリスタル・レコードとジャケットのデザイン、そして音の透明感……、針を落とした30秒後には2017年のベスト・アルバムが決まった。

 音楽にとっていまも昔も変わらない大切なことは、音が「生じる」というその瞬間の神秘性だと僕は思っている。その音の発生する「瞬間」、そしてテクノロジーも含めた「現在」にこだわり続けて10年。ついに完成されたTomoko Sauvage(トモコ・ソヴァージュ)の音楽は、人類史にしっかりと刻まれる傑作だ。
 音の振動は周囲に影響を与えながら減衰していく。その影響は永遠に消えることはない。フランスから届けられたこの音楽が、世界中のあらゆる時間と場所で再生され、世の中の振動が、静逸な調和へと導かれることを心から願う。そんな想いもあってレヴューを書きはじめて、トモコさんにインタヴューまでしてしまったので、それを共有させてください。

水かさを変化することによって、調性、ハーモニーを少しずつ変えていっていますが、やっているのはそれだけです。録音は、西南仏の田舎のとある村にあるフェスティヴァルで、会場に使われた、いまは使われていない公民館のようなところで録音しました。

録音の環境や、機材に関して教えてください。

T:録音に関してですが、すべて4トラック、2本のマイク(ノイマンのKM184ステレオ)と、ミキサーからのステレオアウトです。
 ハイドロフォン(Aquarian Audio / H2a-XLR)は私は楽器の一部としてとらえています。waterbowlsは、大きさの異なる6つの磁器のボウルです。白磁で有名なフランス、リモージュ市のセラミック研究所で作ってもらいました。リムザン地方の山の中にある La Pommerieというアーティスト・レジデンスでのプロジェクトの一環です。いちばん大きいものは直径50センチほど、小さいものは直径20センチほど。水の量によって音程を調節します。それぞれのボウルの水の中にハイドロフォンを沈めて、左手で常にフェーダーの操作できるよう、私の左手にミキサー。右手は水の中、左手は乾いていてフェーダーの上、という感じで演奏をしています。レコードのジャケット写真のように、氷のしたたる音を使っていると思われる方が多いのですが、もっと簡素なドリップシステムで水滴をたらしています。ジャケット写真は、楽器から派生させたインスタレーション作品(2010年)のベルリンでの2度目の展示風景です
 磁器のボウルは私の身体の一部とでも思えてしまうぐらい、大切なものです。飛行機の移動で何度か割れてしまい、トイレで泣いたこともあります。氷が落ちてきたら嫌なので、私の大切なボウルの上には絶対つるしません! 壊れた破片をヤスリで磨いて、それでインスタレーション作品を作ったこともあります。インスタレーション用のボウルは、お店で買えるものを使っています。
 ここ8年間で、25カ国、100回以上コンサートをするうちに、ルーム・アコースティックにものすごく左右される楽器だということ、それをいかにコントロールするかを探ってきました。やっとマスターできた、と思えたのは去年あたりからです。スピーカーの数、位置、それからもちろんミキサーやミキサーのEQなどのクオリティやなどでもものすごく変わります。

それぞれの曲について教えてください。

1曲目:Clepsydra

T:2009年のアルバム『Ombrophilia』でも多用した、水滴でボウル鳴らすテクニックです。ボウルの水かさを変化することによって、調性、ハーモニーを少しずつ変えていっていますが、やっているのはそれだけです。録音は、西南仏の田舎のとある村にあるフェスティヴァルで、会場に使われた、いまは使われていない公民館のようなところで録音しました。楕円形、3層、真ん中が吹き抜けの変な構造になっていて、オーガナイザーが音響に詳しい方だったので、いろんなところにいろんな種類のスピーカーを置いてもらって、建物全体が良く響くようにしてくれました。
 スピーカーの一部として、ジェネレックの小さいスタジオモニター用スピーカーを10台位設置してくれたり、かなり豪華に音響を施してくれました!
 こういった、理解あるオーガナイザー、エンジニア、そしてそれをサポートする国の補助金(税金でまかなわれている)によって、私の音楽は育てられたと思っています。今回は全てフランス国内のそういった、オーガナイザー(でも彼ら自身もミュージシャンなど、若い人たち)のサポートによって録音を実現出来たので、アルバムはフランス語のタイトルにしています。ときどき建物がきしんで、みしみしする音が入っていますが、これは狙いではなく消せなかったものです。

2曲目:Fortune Biscuit

T:気泡の出る素焼きのセラミックを水に沈めることによって音をならしています。泡がはじける音、泡が穴から出てくる時の音が、毎回違うので、フォーチューンクッキー(アメリカ系中国の、中にメッセージが入ったクッキー)にちなんでタイトルをつけました。ビスキュイは、そういった素焼きのフランス語名です。これはマットな音環境の普通のスタジオで録音しています。80年代のソニー製のお宝高音質オープンリールで録音しています。

奇跡を信じて強く生きていかなければならなかった時期、フィードバックがきれいに鳴ることに、一種の奇跡を感じていたというか、日本語で言うと願掛けみたいのかな。強く祈るような気持ちが私の編み出したフィードバック奏法と密接につながっていると思います。

3曲目:Calligraphy

T:これは、私がここ8年以上オブセッションのように追求してきた、ハイドロフォンとスピーカーのフィードバックで演奏しています。もともと手芸用品のDMCの工場で、今はがらんどう、コンクリート、天井高6、7メートル、その部屋は小さめの35-40平米位だったと思いますが、残響が10秒ぐらいある、いままででも最高の音響で録音しています。スピーカーは4台のNEXO。普段は鳴らない周波数のフィードバックもどんどんなって、もう奇跡じゃないかと思うくらいすごかったです。以前鈴木昭男さんが、残響のあるところで笛を吹くと自分が天才になったみたいに上手く吹けるけど、野っ原に行って吹くと途端に天才じゃなくてがっかり、とおっしゃっていました。残響があるところだと鳴る以前の音が鳴るんだ、というような言い方をされていましたが、このフィードバックもそういうことですよね。フィードバックって、なんか幽霊みたいですよね。
 電気も音も目に見えないものだから、幽霊的なものがあるような気がします。
 時々どこからきているかわからないノイズとかがのったりして、すべて科学で証明できるものとはいえ、それでもなにか神秘を感じてしまうのです。
 じつは、当時3歳だった娘の病気が発覚したのが2013年の4月、その約4ヶ月後の演奏、録音です。
 奇跡を信じて強く生きていかなければならなかった時期、フィードバックがきれいに鳴ることに、一種の奇跡を感じていたというか、日本語で言うと願掛けみたいのかな。強く祈るような気持ちが私の編み出したフィードバック奏法と密接につながっていると思います。
 それで『Musique Hydromantique』というタイトルです。古代ギリシャなどで行われていた水占い。現代では占いの結果をどう解釈するかは個人の自由だし、それよりも、占う時の強い気持ちに、なにか意味があるんじゃないかと……
 “Calligraphy”では、複数のボウルの複数の周波数のフィードバックが同時に鳴っています。これ実は結構コントロールが難しいのです。左手でミキサーのフェーダーを超微妙にコントロールしながら、増幅しつつある周波数に耳を傾けて音が強くなりすぎないよう注意を払いつつ、減衰しつつある周波数のフィードバックを増幅するべきフェーダーをアップして……
 バランスポイントを微妙にキープし続ける、集中力を要するプロセスです。この録音ではそういった、瞑想に近い集中力に達することができたと思っています。
 それから、水を揺らし波を作ることで、増幅しつつある周波数が落ち着くんです。
 また、こぶしを水に浸すことによって水かさを増やすことも、増幅しつつある周波数を落ち着かせるテクニックです。その時にできる、カーブ、音楽用語でいったらポルタメント、グリッサンド、ピッチベンドが、とにかくすごく好きなんです。母書道をやっていた母が、完璧な美しいライン、カーブを描くために執拗に練習していたのを見て育ちました。なんかそれに通じるものがあるなーと思ってのタイトルです。インド音楽のガマカなんかに通じるものがすごくあるとも思っています。
 と、とにかく奥深くて、ここ8年間の私の人生の半分位をしめた(!)といってもいい水のフィードバック奏法、語り始めたら止まりません(笑)。
 ちなみに、フィードバックは、幽霊を写真に撮るように、録音が非常に難しいと感じます。一度録音エンジニアと語ってみたいです! 素人として思うのは、フィードバックって、フィジカルに身体に貫通する、骨で聴く音なのではと。身体で直接ヴァイヴレーションを受け取るというか。マイクはそれを感知できないところがあるみたいで、毎回録音に非常に苦労しました。
 実はこの3曲目も、もともと録音状態がひどくて、アナログやデジタル技術を駆使して友人に修復してもらったものなのです。この難しさが今回のアルバムに時間がかかったいちばんの理由です。
 余談ですが、つい先日スウェーデンでのコンサートで、私の到着時にエンジニアがスピーカーチェックのためにこのアルバム、『Musique Hydromantique』をかけていて、ああ音悪いなあと思いながら聴いていて、実際サウンドチェックしたらすごく音がよかったので、音が悪いのはアルバム……。次作は本当の音にもっと近づけるように頑張ります。

この作品を出したらこういう音楽をやめてもいい。とおっしゃっていましたが、WIREなどの世界中のメディアから反響を受けたあと、その心境に変化はありましたか?

T:ええええ、そんなこと言いましたっけ!? 全然覚えがないです。もしかしたら、次へ進むという意味で、違ったスタイルを追求したいという意味で言ったのかもしれませんね。以前から、この楽器は、私の幸せにしてくれる魔法の楽器だと感じていて、誰もよんでくれなくなっても一生演奏し続けているとおもいますよ。先週もレコーディングしていて、楽しくて仕方なかった。次作、早く出したいです。『Musique Hydromantique』はもうだいぶ時間がたってしまい、私がいまやっている演奏スタイルとはだいぶ異なりますが、次作は全然違った雰囲気になると思うので期待していてください(笑)!

C.E meets PLO Man - ele-king

 Skate ThingとToby Feltwellが率いるファッション・ブランド〈C.E〉のイベントでは国内外のカッティング・エッジなアーティストたちを迎えてきた。3月2日(金)、CIRCUS Tokyoにて開催される今回のイベントにその名を連ねるのは、ベルリンを拠点にミステリアスなリリースを続けるレーベル〈Acting Press〉の主宰者、PLO Man(ピーエルオー・マン)だ。
 〈Acting Press〉はアンダーグラウンドで精力的に活動している謎多きレーベルで、リリースされる12インチ・シングルは毎回すぐに売り切れてしまう。PLO Manは約1年ぶりの来日で、2月24日(土)には今回のイベントに先駆け大阪NOONでもDJを行うとのこと。
 また今回のイベントにはインダストリアル・ミュージック・デュオのCARREと、ここ最近精力的な活動を見せているMori Raも出演予定。来週金曜日は迷うことなく会場へ足を運びましょう!

C.E presents PLO Man

PLO Man
CARRE
Mori Ra

開催日:2018年3月2日金曜日
オープン/スタート:11:00 PM
会場:CIRCUS Tokyo https://circus-tokyo.jp
料金:2,000YEN

※20歳未満の方のご入場はお断り致します。年齢確認のため顔写真付きの公的身分証明書をご持参願います。(Over 20's Only. Photo I.D. Required.)

■PLO Man
インディペンデントでアンダーグラウンドなエージェンシー/音楽レーベル〈Acting Press〉の代表としてワールド・ワイドな展開の指揮を執る、ドイツはベルリンを拠点とするアーティスト/DJ。2015年の発足以降、Acting Pressはじっくりと着実に、一貫した姿勢を崩すことなく、ヨーロッパをはじめ世界中のアンダーグラウンドで活動を続け、有形文化財的な価値すら見出せるような、経年劣化にも耐え得る強靭な作品を世にリリースし続けています。
https://soundcloud.com/plo_sound
https://berlincommunityradio.com/PLO_RADIO

■Carre
インダストリアル・ミュージック・デュオ。
NAG : RHYTHM MACHINE, BASS MACHINE, SYNTHESIZER
MTR : BOX, OSCILLATOR, GUITAR
https://mindgainminddepth.blogspot.jp/

■Mori Ra
TV/ラジオのレコーディングスタジオで培ったオープンリールEDITのスキルとレコーディング知識を武器に大阪を拠点に活動するDJ。 オブスキュアでレフトフィールドなダンスミックスを軸にあらゆるジャンル、年代から独自のコンセプトを基に構成するミックスを得意とし、15年以上続くパーティーPURMOOONを主催する。
2015年からヨーロッパを中心にオーストラリア、韓国など海外DJ公演も多数経験。海外に和モノを知らしめた Japanese Breeze MIXの他、Mori Ra、Oyama Editの名義でEDITをリリース。まもなく、ドイツCockTail d'Amore から12"EP、スペインHivern DiscsからJohn TalabotとのSplit10"がリリース予定。

Discography:
Mori Ra - The Brasserie Heroique Edits Part 3 (Berceuse Heroique,UK,2017)
Mori Ra - Akebono (Balearic Social Records,2017,UK)
Mori Ra - Tasogare (Balearic Social Records,2017,UK)
Mori Ra - Trapped In The Sky (Tracy Island,UK,2017)
Mori Ra - Jongno Edits Vol 4 (Jongno Edits,South Korea,2017)
Mori Ra - Oriental Forest (Forest Jam Records,US,2016)
Mori Ra - Passport To Paradise (Passport To Paradise,2016,UK)
Mori Ra - Sleeping Industry (Macadam Mambo,FRA,2015)
御山△EDIT( Oyama Edit ) - Ghost Guide 12”EP (Most Excellent Unlimited,US,2015)
Mori-Ra & ASN/Tokyo Matt / - Balearico Cosmico Editsu 12”EP (Macadam Mambo,FRA,2014)
Oyama Edit / Sad Ghost – Edits 12”EP (Rotating Souls Records,US,2013)
Various - Magic Wand Vol 5, 6, 8 (12”)

JASSS - ele-king

 〈Modern Love〉のアンディ・ストットやデムダイク・ステアらが(結果的にだが)牽引していた2010年代のインダストリアル/テクノの潮流は、2016年あたりを境界線に、ある種の洗練、もしくはある種の優雅な停滞とでもいうべき状況・事態になっている。それはそれで悪くない。インダストリアル/テクノはロマン主義的なテクノという側面もあるのだから退廃こそ美だ。
 しかし、その一方でサウンドは、ボトムを支えていたビートはレイヤーから分解/融解し、複雑なサウンドの層の中に溶け込むようなテクスチャーを形成する新しいフォームも表面化してきた。分かりやすい例でいえばアクトレスローレル・ヘイローの2017年新作を思い出してみれば良い。ビートとサウンドの音響彫刻化である。
 つまり洗練と革新が同時に巻き起こっている状況なのだ。すべてが多層化し、同時に生成していく。時間の流れが直線から複雑な線の往復と交錯と層になっている。いささか大袈裟にいえば2020年以降の文化・芸術とはそのような状況になるのではないか。

 今回取り上げるスペインのサウンド・アーティストJASSSは、そのような状況を経由した上での「新しさ=モード」を提示する。彼女にとって「新しさ」とはフォームではなくモードに思えた。スタイルや形式は、その音楽の中で並列化しているのだ。
 JASSSは、2017年に、ミカ・ヴァイニオと共作経験のある(『Monstrance』)、カルト・ノイズ・アーティスト、ヨアヒム・ノードウォール(Joachim Nordwall)が主宰する〈iDEAL Recordings〉からファースト・アルバム『Weightless』をリリースした。私はこの作品こそ現代のエクスペリメンタル・テクノを考えていくうえで重要なアルバムではないかと考えている。
 2010年代以降のインダスリアル、ドローン、テクノなどの潮流が大きな円環の中で合流し、2017年「以降」のモードが生まれているからだ。どのトラックも形式に囚われてはいないが大雑把に真似ているわけでもない。個性の檻に囚われてもいないが猿真似の遠吠えにもなっていない。ときにインダスリアル(の応用)、ときにアフリカン(の希求)、ときにタブ(の援用)、ときにアシッド(の記憶)、ときに硬質なドローン(の生成)、ときにEBM(の現代的解像度アップ)、ときにジャズ(の解体)など、1980年代以降の音楽要素を厳選しつつも自身の音楽へと自在にトランスフォームさせているのだ。それゆえどのトラックにも「形式」を超える「新しさ」が蠢いている。「個」があるからだ。

 JASSSは『Weightless』以前もベルリンのレーベル〈Mannequin〉からEP「Mother」(2016)、EP「Es Complicado」、〈Anunnaki Cartel〉からEP「Caja Negra EP」をリリースしていたが、『Weightless』で明らかにネクスト・レベルに至った。そのトラックメイクはしなやかにして、柔軟、そして大胆。そのうえ未聴感がある。
 何はともあれ1曲め“Every Single Fish In The Pond”を聴いてほしい。メタリック・アフリカン・パーカッシヴな音とインダストリアルなキックに、硬質で柔らかいノイズや微かなヴォイスがレイヤーされる。そして中盤を過ぎたあたりからアシッドなベースが唐突に反復する。どこか「インダストリアルなバレエ音楽」とでも形容したいほどのコンポジションによって、重力から逃れるような浮遊感を獲得している。続くA2“Oral Couture”も同様だ。ミニマル・アシッドなサウンドを基調にさまざまな細かいノイズが蠢くトラックメイクは優雅ですらある(スネアの入り方が人間の通常の身体性から少しずれたところをせめてくる気持ちよさ)。そしてB1“Danza”もアフリカン・インダストリアル・ミニマルとでも形容したいほどに独創的。さらに電子音のカットアップによる解体ジャズとでもいいたいB2“Cotton For Lunch”は、フランスのミュジーク・コンクレート作家ジーン・シュワルツを思わせもした。C1“Weightless”以降はインダスリアル・ミニマルなサウンドにダブ効果を導入したEBM的なトラックを大胆に展開する。
 全8曲、テクノ、インダスリアル、電子音響、ダブなど、さまざまなエレクトロニック・ミュージックのモードを自在に操りながらJASSSはわれわれの使われていない感覚を拡張する。どのトラックも、ビートはあっても重力から自由、硬質であっても物質的ですらない。ちなみに本作の印象的なアートワークを手掛けたのは、2017年に〈PAN〉からアルバムをリリースしたPan DaijingでJASSSのサウンドが持っている独特の浮遊感をうまく表現しているように思えた。

 『Weightless』を聴くとJASSSが特別な才能を持ったサウンド・アーティストであると理解できる。そしてその音からは壊れそうなほどに鋭敏な感受性も感じてもしまう。例えばミカ・レヴィ=ミカチューのように映画音楽にまで進出してもおかしくないほどのポテンシャルを内包した音楽家ではないか、とも。いや、もしかするとポスト・アルカと呼べる存在は彼女だけかもしれない(言い過ぎか?)。
 なぜなら、JASSSは技法やスタイルの向こうにある「音楽」を構築しているからである。ポスト・インダストリアルからアフター・エクスペリメンタル。コンセプトよりも分裂。もしくは物語よりもテクスチャー。 新しい音、モード。 その果てにある「個」の存在。
 20世紀以降、大きな物語が終焉したわけだが、それは21世紀において小さな物語が無数に生産されたことも意味する。それを個々のムーヴメントと言いかえることもできるが、JASSSはそのような個々の潮流ですらも手法(モード)として取り込み、単純な物語化に依存していない。テクノもエクスペリメンタルも包括した「音楽」の実験と創作に留まり続けている。それは停滞ではない。自分の音楽を希求するという意味では深化である。

GEIST - ele-king

 昨年出た YPY 名義のアルバムも記憶に新しい日野浩志郎。バンド goat の牽引者でもある彼が2015年より続けている大所帯のオーケストラ・プロジェクトをさらに発展させた公演が、3月17日と18日、大阪の名村造船所 BLACK CHAMBER にて開催される。イベント名は《GEIST(ガイスト)》。マルチチャンネルを用いた音響により、空間全体を使って曲を体験できる公演となるそうだ。ローレル・ヘイロー最新作への参加も話題となったイーライ・ケスラー、カフカ鼾などでの活動で知られる山本達久らも出演。詳細はこちらから。

GEIST

Virginal Variations で電子音と生楽器の新たなあり方を提示した日野浩志郎(goat、YPY)の新プロジェクトは、自然音と人工音がいっそう響き合い光と音が呼応、多スピーカー採用により観客を未知なる音楽体験へと導く全身聴取ライヴ……字は“Geist

島根の実家は自然豊かな場所にあって、いまは、雨が降っている。その一粒一粒が地面を叩く音をそれぞれ聞き分けることはもちろんできないから、広がりのある「サー」という音を茫と聞く。やがて雨があがり陽が射すと、鳥や虫の声が聞こえてくる。家の前の、山に繋がる小さな道を登っていけば、キリキリキリ、コンコン、と虫の音がはっきりしてくる。好奇心をそそられ、ある葉叢に近づくと音のディテイルがより明瞭に分かる。さらに、たくさんのほかの虫の声や頭上の風巻き、鳥の声、葉擦れ衣擦れなどを耳で遊弋し、小さな音を愛でる自分の〈繊細な感覚〉に満足、俄然興が乗り吟行でもせんかな、いや、ふと我に返る。と、それまで別々に聞いていた音が渾然となって耳朶を打っていることに気づきなおしてぼう然する。小さな音が合わさって、急に山鳴りのように感じる。……。「〈繊細な感覚〉なんてずいぶんいい加減なものだ」と醒めて、ぬかるんだ山道で踵を返す。きっと、あの時すでに“Geist”に肩を叩かれていたのだ――。

【日時】
2018年 3月17日(土)
昼公演 開場:13:30 開演:14:00
夜公演 開場:19:00 開演:19:30

2018年 3月18日(日)
昼公演 開場:13:30 開演:14:00
夜公演 開場:19:00 開演:19:30

【会場】
クリエイティブセンター大阪(名村造船所跡地) BLACK CHAMBER
〒559-0011 大阪市住之江区北加賀屋4-1-55
大阪市営地下鉄四つ橋線 北加賀屋駅4番出口より徒歩10 分
https://www.namura.cc

【料金】
前売り2500円 当⽇3000円

【ウェブサイト】
https://www.hino-projects.com/geist

【作曲】
日野浩志郎

【出演者】
Eli Keszler
山本達久
川端稔 (*17日のみ出演)
中川裕貴
安藤暁彦
島田孝之
中尾眞佐子
石原只寛
亀井奈穂子
淸造理英子
横山祥子
大谷滉
荒木優光

【スタッフ】
舞台監督 大鹿展明
照明 筆谷亮也
美術 OLEO
音響 西川文章
プロデューサー 山崎なし
制作 吉岡友里

【助成】
おおさか創造千島財団

【予約方法】
お名前、メールアドレス、希望公演、人数を記載したメールを hino-projects@gmail.com まで送信ください。またはホームページ上のご予約フォームからも承っております。

【プロフィール】

日野浩志郎
1985年生まれ島根出身。カセットテープ・レーベル〈birdFriend〉主宰。弦楽器も打楽器としてみなし、複合的なリズムの探求を行う goat、bonanzas というバンドのコンポーザー兼プレイヤーとしての活動や、YPY 名義での実験的電子音楽のソロ活動を行う。ヨーロッパを中心に年に数度の海外ツアーを行っており、国内外から様々な作品をリリースをしている。近年では、クラシック楽器や電子音を融合させたハイブリッドな大編成プロジェクト「Virginal Variations」を開始。

Eli Keszler
Eli Keszler(イーライ・ケスラー)はニューヨークを拠点とするアーティスト/作曲家/パーカッション奏者。音楽作品のみならず、インスタレーションやビジュアルアート作品を手がける彼の多岐に渡る活動は、これまでに Lincoln Center や The Kitchen、MoMa PS1、Victoria & Albert Museum など主に欧米で発表され、注目を浴びてきた。〈Empty Editions〉や〈ESP Disk〉、〈PAN〉、そして自身のレーベル〈REL records〉からソロ作品をリリース。ニューイングランド音楽院を卒業し、オーケストラから依頼を受け楽曲を提供するなど作曲家としても高い評価を得る一方で、最近では Rashad Becker や Laurel Halo とのコラボレーションも記憶に新しく、奏者としても独自の色を放ち続けている。

山本達久
1982年10月25日生。2007年まで地元⼭⼝県防府市 bar 印度洋を拠点に、様々な音楽活動と並行して様々なイベントのオーガナイズをするなど精⼒的に活動し、基本となる音楽観、人生観などの礎を築く。現在では、ソロや即興演奏を軸に、Jim O'Rourke/石橋英子/須藤俊明との様々な活動をはじめ、カフカ鼾、石橋英子ともう死んだ⼈たち、坂田明と梵人譚、プラマイゼロ、オハナミ、NATSUMEN、石原洋withFRIENDS などのバンド活動多数。ex. 芸害。青葉市子、UA、カヒミ・カリィ、木村カエラ、柴田聡子、七尾旅人、長谷川健⼀、phew、前野健太、ヤマジカズヒデ、山本精⼀、Gofish など歌手の録音、ライヴ・サポート多数。演劇の生伴奏・音楽担当として、SWANNY、マームとジプシーなど、主に都内を中心に活動。2011 年、ロンドンのバービカン・センターにソロ・パフォーマンスとして招聘されるなど、海外公演、録音物も多数。


Event details - English -

Following “Virginal Variations”, a project which explored a new way of merging electronic and acoustic sounds, Koshiro Hino (from goat and YPY) presents his latest composition, titled “Geist”. Set in an immersive environment with interacting sounds and lightings, “Geist” invites audience to a new world of live music experience which people listen sounds with their whole body.

My home in Shimane is located in a nature-rich environment, and now, it’s raining outside. Needless to say, I cannot hear each of the raindrops hitting the ground, so I hear the rain’s “zaaaaa” sound that spreads in space. Soon after, the rains stopped and sunshine began to pour, and I started to hear the sounds of birds and insects. As I walk up the small path that connects from my home to the mountain, those insects’ buzzing and creaking sounds became more clear. As I get closer to the trees, the sound details became more distinct. With my ears, I observed closely a myriad of sounds from other insects, the wind blowing above, birds, rustling leaves and my own clothing. I enjoyed my ‘delicate sensibility’ that appreciates those little sounds, thinking, “Maybe I suddenly get excited and start composing a poem…” But soon later, I came back to myself. And suddenly, I got stunned, realizing that the sounds I heard separately now forms a harmonious whole and hits my ears. Those little sounds became one, and I hear it as if the mountain is rumbling... “The ‘delicate sensibility’ is so unreliable. “ I recalled myself and walked back the muddy path. — And by then, I now believe that I had already made my encounter with “Geist”.

[Date / Time]
Saturday, March 17, 2018
Day time performance Open: 13:30 Start: 14:00
Night time performance Open: 19:00 Start: 19:30

Sunday, March 18, 2018
Day time performance Open: 13:30 Start: 14:00
Night time performance Open: 19:00 Start: 19:30

[Venue]
Creative Center Osaka (Old Namura Ship Yard) BLACK CHAMBER
4-1-55, Kitakagaya, Suminoe Ward, Osaka City, Osaka 559-0011
https://www.namura.cc

[Price]
Advanced ¥2500 Door ¥3000

[Website]
https://www.hino-projects.com/geist

[Composed by]
Koshiro Hino

[Performers]
Eli Keszler
Tatsuhisa Yamamoto
Minoru Kawabata (*only on the 17th)
Yuuki Nakagawa
Akihiko Ando
Takayuki Shimada
Masako Nakao
Tadahiro Ishihara
Nahoko Kamei
Rieko Seizo
Shoko Yokoyama
Koh Otani
Masamitsu Araki

[Staff]
Stage direction - Nobuaki Oshika
Lighting design - Ryoya Fudetani
Stage art - OLEO
Sound engineering - Bunsho Nishikawa
Co-direction - Nashi Yamazaki
Production - Yuri Yoshioka

[Supported by]
Chishima Foundation for Creative Osaka

[Reservation]
To reserve your seat(s), please send an email to hino-projects@gmail.com with your name, your contact, number of people, and the performance date you wish to visit.

yahyel - ele-king

 続報が届きました。ヤイエルが3月7日リリースのセカンド・アルバム『Human』から新曲“Pale”を解禁、MVも公開されています。一見静かで落ち着いた曲に聞こえますが、後ろのほうで色々とおもしろいことが起こっています。ビデオも独特の雰囲気を醸し出していて、ますますアルバムへの期待が高まります。あわせて全国ツアーの詳細も発表されていますので、下記よりチェック。

ヤイエル、待望のセカンド・アルバム『Human』から
新曲“Pale”をミュージック・ビデオとともに解禁!
初となるレコ発ツアーのチケット一般発売は明日から!
新たに仙台公演も決定!

yahyel
- Human Tour -

2016年12月に渋谷WWWにて行われたワンマンは、デビュー・アルバム『Flesh and Blood』の発売日を前に完売。その後も、FUJI ROCK、VIVA LA ROCK、TAICOCLUBなどの音楽フェスへの出演も果たし、ウォーペイント(Warpaint)、マウント・キンビー(MountKimbie)、アルト・ジェイ(alt-J)ら海外アーティストの来日ツアーでサポート・アクトにも抜擢されるなど、活況を迎えるシーンの中で、独特の輝きを放ち続けたyahyel(ヤイエル)が、1年3カ月の時を経て、2度目のワンマン・ライヴ、そしてレコ発ツアーが決定!

 1年でのうちもっともピザとチキン・ウィングが出る日、スーパーボウルの日曜日だ。今年2018年は2月4日、ミネアポリスのUSバンク・スタジアムでタイトなユニフォームを着た男たちの戦いがおこなわれた。フィラデルフィアのイーグルスとニュー・イングランドのぺイトリオットの対戦。ハーフタイムにはこの2日後にニュー・アルバム『Man of the Woods』をリリースするジャスティン・ティンバーレイクが出演。2004年のジャネット・ジャクソンとのおっぱいポロリ騒動のパフォーマンス以来だ。そして、それに関する記事がいまさら出てくる出てくる。

 スペシャル・ゲストは誰か? 噂はいろいろあったが、結局ジャネット・ジャクソンもイン・シンクも出演せず。代わりにミネアポリスに敬意を払い、プリンスの映像がプロジェクターに映し出された。ピアノを弾くJTが”I would die 4 U”を歌い、そしてミネアポリスの街がプリンス色に染まるという壮大な演出がはじまった。エンターテイメント! JTのダンサーたちの衣装は、いまどきのカラフルなラフスタイルで、ビッグバンドはお揃いの赤のスーツと見た目も華やか。ハーフ・タイムショーは最近の個人的な楽しみになっている。
https://www.brooklynvegan.com/justin-timberlake-played-the-super-bowl-lii-halftime-show-prince-tribute-included-watch/

 とはいっても私がスーパー・ボウルに興味を持ったのは数年前、ビヨンセがハーフ・タイムに出場した2016年のスーパーボウル50からである。たまたまバーでスーパーボウルが放映されていた(50回目ということで)。ビヨンセのパワフルなパフォーマンスに圧倒され、スーパーボウルを見るようになった。国を挙げた究極のエンターテイメントがここにあり、アメリカのパワーを感じることができる。
 過去のラインナップを遡ってみると……

2012:マドンナ with LMFAO、MIA、ニッキー・ミナージュ
2013:ビヨンセ、ディスティニー・チャイルド
2014:ブルーノ・マーズ、レッド・ホット・チリ・ペッパーズ
2015:ケイティ・ペリー、ミッシー・エリオット、レニー・クラヴィッツ
2016(スーパーボウル50):コールド・プレイ、ビヨンセ、ブルーノ・マーズ、マーク・ロンソン
2017:レディ・ガガ
2018:ジャスティン・ティンバーレイク

 こう見ると、それぞれの年を象徴するエンターテイナーが出場しているのがわかる。MIAが中指を立てたことや、ケイティ・ペリーのダンサー、左のイルカがやる気なかったことなど、毎年、さまざまなゴシップが飛び舞っている。
 そしてスーパーボウルが近づくとピザ屋もファストフードも広告に力を入れる。バーも何かとスーパーボウルに託けてスペシャルを用意する。
https://bushwickdaily.com/bushwick/categories/sponsored/5201-big-game-bushwick

 コマーシャルにも注目。アマゾン・エコーにはカーディB、レベル・ウィルソン、ゴーダン・ラムゼイ、アンソニー・ホプキンス他、ドリトス・ブレイズとマウンテン・デュー・アイスではバスタ・ライムスとクリス・ブラウン、モーガン・フリーマン、ミッシー・エリオットが、スクエア・スペースにはキアヌ・リーブスが出演……まさにセレブ満載。
 オーディエンスは試合以外にも、コマーシャルなんかにも注視する。こんかい反応大だったのが、ニルバーナのララバイ・カヴァーの“All Apologies”がバックに流れるT-Mobileの宣伝。可愛い赤ちゃんが登場する。「小さい人、この世界にようこそ。貴方が征服するこの大きな世界では、貴方は繋がることができ、一人ではありません。変化は始まっています」
https://youtu.be/C-rumHvmqCA

 試合の結果は、41-33でフィラデルフィアのイーグルスがニューイングランドのペイトリオッツを負かした。イーグルスは1960年以来の優勝。私の友だちはみんなイーグルス派だったので大騒ぎ。理由を聞くとペイトリオッツは強いし(今年は6連覇を狙っていた)、ただたんにトム・ブレイディが嫌いで勝って欲しくなかったと。
 ペイトリオッツのトム・ブレイディはNFLを代表する選手の一人で、リーグMVPとスーパーボウルMVP双方の複数回受賞していて(歴代で2人のみ)、2017年まで負け越したシーズンはなかった。モデルの妻と3人の子供がいて、ボストンのブルックラインに豪邸を構える。
 「彼の人生はパーフェクトだし、トランプ支持者だし、とにかくいけ好かない」と。

 こういう話をはじめると止まらないのがアメリカ人。トランプ・サポーターの話から今回かけたビットコインの話で盛り上がる。スーパーボウルではいろいろな角度からアメリカという国が見える。

Flying Lotus, Thundercat, George Clinton & P-Funk - ele-king

 こ、これはすごい。一昨年、ジョージ・クリントンとの契約が大きなニュースとなった〈ブレインフィーダー〉だけれど、その後しばらく音沙汰がなかったので、いったいどうなったのかとやきもきしていたファンも多いだろう。それがここへ来てとんでもないアナウンスである。今夏8月17日、SONICMANIAに〈ブレインフィーダー〉ステージが出現、フライング・ロータス、サンダーキャット、ジョージ・クリントン&Pファンクのビッグ3が一堂に会する――そう、ここ日本で。まるで夢のような話じゃないか。これはもう行く/行かないを迷うような次元の話ではない。これから半年間、首を長く長~くして待っていよう。

SONICMANIAに〈BRAINFEEDER〉ステージが登場!

フライング・ロータス、サンダーキャット、そして
ジョージ・クリントン&パーラメント・ファンカデリックが出演決定!

‘Brainfeeder Night In SONICMANIA’
featuring
FLYING LOTUS
THUNDERCAT
GEORGE CLINTON
...and more!!

ナイン・インチ・ネイルズ、マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン、マシュメロという、SUMMER SONICに引けを取らない強力な出演陣が発表され、大きな話題となっているSONICMANIA。今回第2弾アーティストが発表され、フライング・ロータス主宰レーベル〈Brainfeeder〉ステージが登場することが明らかに!

昨年は自ら手がけた映画『KUSO』の公開や、短編アニメーション『ブレードランナー ブラックアウト2022』の音楽を手がけたことも記憶に新しいフライング・ロータス、最新作『Drunk』をリリースし、2017年の音楽シーンを象徴する存在と言っても過言ではない活躍を見せたサンダーキャット、そして言わずと知れたファンクの神様、かねてより〈Brainfeeder〉への参加が噂されていたジョージ・クリントンがジョージ・クリントン&パーラメント・ファンカデリックとして出演決定!

SONICMANIA 2018
2018.8.17
www.sonicmania.jp

2017年11月にMVと共に公開されたフライング・ロータスの最新曲“Post Requisite”
Flying Lotus - Post Requisite
>>> https://youtu.be/2XY0EHSXyk0

フライング・ロータスの長編デビュー映画『KUSO』の公式トレーラー
Flying Lotus - Kuso (Official Trailer)
>>> https://youtu.be/PDRYASntddo

映画『ブレードランナー2049』と、前作『ブレードランナー』の間を繋ぐストーリーとして渡辺信一郎が監督した短編アニメーション
「ブレードランナー ブラックアウト 2022」
>>> https://youtu.be/MKFREpMeao0

80年代を代表する黄金コンビ、マイケル・マクドナルドとケニー・ロギンス参加のリードシングル
Thundercat - Show You The Way (feat. Michael McDonald & Kenny Loggins)
>>> https://youtu.be/Z-zdIGxOJ4M

東京で撮影されたMVも話題となったアルバム収録曲
Thundercat - Tokyo
>>> https://youtu.be/QNcUPK87MnM

フライング・ロータス、サンダーキャット、シャバズ・パラセズによるプロジェクト、WOKEの1stシングル。ジョージ・クリントンが参加!
WOKE (Flying Lotus, Shabazz Palaces, Thundercat) feat. George Clinton - The Lavishments of Light Looking
>>> https://soundcloud.com/adultswimsingles/woke


label: BEAT RECORDS / BRAINFEEDER
artist: FLYING LOTUS - フライング・ロータス
title: YOU'RE DEAD - ユーアー・デッド
release date: NOW ON SALE
cat no.: BRC-438
国内盤特典: ボーナス・トラック追加収録

本日リリース!
label: BEAT RECORDS / BRAINFEEDER
artist: Thundercat
title: Drank
release date: 2018/02/02 FRI ON SALE
国内初回生産盤:スリーヴケース付
歌詞対訳/説書封入
BRC-568 ¥1,800+税

label: BEAT RECORDS / BRAINFEEDER
artist: Thundercat
title: Drunk
release date: NOW ON SALE
国内盤特典:
ボーナス・トラック追加収録/歌詞対訳/解説書封入
BRC-542 ¥2,200+税

interview with Kode9 - ele-king


Various Artists
Diggin In The Carts

Hyperdub / ビート

Amazon Tower HMV iTunes

 2004年に設立された〈ハイパーダブ〉はそれ以降、現代のエレクトロニック・ミュージックにおける最重要レーベルとしての地位を堅守し続けてきた。昨年に限定して振り返ってみても、アイコニカやローレル・ヘイローの意欲的なアルバム、クラインおよびリー・ギャンブルという尖鋭的な音楽家との契約、さらには日本のゲーム・ミュージックに特化したコンピレイション『Diggin In The Carts』のリリースと、興味深い動きが続いている。
 その〈ハイパーダブ〉の設立者がコード9ことスティーヴ・グッドマンである。去る11月、LIQUIDROOMにて催された『DITC』のイベントのために来日していた彼は、そのコンピレイションが持つコンセプトについて、昨年の〈ハイパーダブ〉の動きや最近注目している音楽について、そして自身が序文を執筆しているとある重要な本について、われわれの質問に対し真摯に応答してくれた。レーベル・オウナーであると同時にアーティストでもあり、さらには思索する者でもある彼の言葉を以下にお届けする。

僕がいいなと思った音楽のゲームは、じつはものすごくつまらなかったりもしたんだ(笑)。でも音自体は良かったので、それはぜんぶ選んだね。

今回日本のゲーム・ミュージックに特化したコンピレイションがリリースされましたが、〈ハイパーダブ〉はこれまでもクアルタ330のようなチップ・チューンのアーティストを送り出しています。以前から日本の音楽には関心が高かったのでしょうか?

スティーヴ・グッドマン(Steve Goodman、以下SG):〈ハイパーダブ〉はもともと、2005~06年くらいまではダブステップのレーベルだった。でもそういったサウンドにちょっと飽きを感じてしまって、もっと自分の音楽をカラフルなものにしたいと思っていたんだ。そんなときに友人がクアルタ330のリミックスを送ってくれて、それが気に入ったんだよね。それと、自分の音楽としてもう少しキラキラしたサウンドを作るために、ヴィデオ・ゲームの要素を取り入れるようになった。アイコニカゾンビージョーカーダークスターテラー・デンジャーたちもゲームの音楽から影響を受けているアーティストだった。テクスチャーを変えるためにゲーム音楽に興味を持ち始めたのが2005、06年で、その時代にレーベルに入ってきたものを今回また取り戻してリリースした、という感じだね。

日本のゲーム・ミュージックには幼い頃から触れてきたのですか?

SG:少しは遊んでいたね。でもそれが日本のものという意識はあまりなかった。自分がプレイしていたものが日本のゲームかどうかもわからなかった。ゲームはやっていたとはいえゲーマーではなかったし、今回のコンピレイションもけっして自分がゲームをしていた頃を懐かしむようなノスタルジックな作品ではないんだ。
〈ハイパーダブ〉というレーベルの目線で言うと、2010年に日本の80年代のエレクトロニック・ミュージックに注目するようになった。YMOや、YMOのメンバーそれぞれのソロ作品などから影響を受けていたから、(ゲーム音楽を)ゲームというよりもエレクトロニック・ミュージックとして見ているんだよね。伝統音楽とエレクトロニックのブレンドのようなところに魅力を感じている。5、6年前にスペンサーD(Spencer Doran)の『Fairlights, Mallets and Bamboo: Fourth-World Japan, Years 1980-1986』というDJミックスを聴いたんだけど、それでより興味を持つようになって、今回のコンピもそういう内容になっている。そのミックスにはマライア、坂本龍一や細野晴臣、高田みどり、ロジック・システム、清水靖晃、あとは越美晴なんかが入っていて、そこから日本の80年代の音楽をいろいろと学んだ。もちろんそういう音楽とゲーム・ミュージックは違うものではあるけれど、チップというものを使っている点は共通しているし、おもしろい時代の音楽だと思う。

先日監修者のニック・ドワイヤーさんに取材したのですが、『DITC』はゲーム・ミュージックのなかでもサウンドとしておもしろいものを選んでいると言っていました。つまり今回のコンピは、ゲーム音楽のファンよりもふだんから〈ハイパーダブ〉の音楽を聴いているような層に向けて、「ゲーム・ミュージックにもおもしろいものがあるんだよ」ということを伝える、というような意図で制作されたのでしょうか?

SG:その両方と言えるね。僕もゲームは好きだけれど、そこまでゲーマーではない。そういう両方の人たちが楽しめる作品になっていると思う。ニックがすごく深いリサーチをして、フィルターをかけた上で何百もの曲を送ってくれたんだけど、それまで自分が聴いたことのない音楽ばかりだった。それらのゲームに関して僕はいっさい思い入れがないんだ。ただたんに曲が良かったから選んだ。ゲームのプレイヤーがどうのというよりも、音としてベストだと思ったものを使った。やっぱり人気のあったゲームって、先にゲームがあってそれに合わせて音楽が作られているわけで、(音楽は)優先順位としては二番目のものだったと思うんだよ。それもあってか、人気のゲームのBGMにはあまりいいと思えるものがなかった。コマーシャルっぽいものもあるだろうし。だから、僕がいいなと思った音楽のゲームは、じつはものすごくつまらなかったりもしたんだ(笑)。でも音自体は良かったので、それはぜんぶ選んだね。

ヒップホップやクラシック音楽にはなりえない、ゲーム・ミュージックとしてだけ存在していたものを捉えるのが今回の目的だった。

先ほど「ノスタルジックな作品ではない」と仰っていましたが、送り手と受け手とのあいだである程度ギャップは生じると思うんですね。このコンピに先駆けて公開されたドキュメンタリーにはフライング・ロータスファティマ・アル・ケイディリらが出演していて、どちらかというといわゆる音楽ファンに向けて作られているように感じました。ですが、日本で今回のコンピを手にとってくれる人の多くは、懐かしさを求めているのではないかという気もします。そういう方たちがこのコンピをきっかけに、たとえば他の〈ハイパーダブ〉の作品を聴くようになってほしいと思いますか?

SG:それはすごく難しいところで、もちろんゲーム好きの人たちにも聴いてほしいとは思うし、他方でエレクトロニックな世界ともオーヴァーラップしているんだけれども、やっぱり同時に違う世界でもあるんだよね。ただ、いまはテクノロジーの進化でよりオーヴァーラップしているかもしれない。ニックが言っていたように、僕が捉えたかったのはメモリーやチップという制限のある時代のゲーム・ミュージックなんだ。質問への答えにはなっていないかもしれないけど、ゲームがそれ自身だけのゾーンのなかに存在していた時代のゲーム・ミュージックというものを捉えたかった。ヒップホップやクラシック音楽にはなりえない、ゲーム・ミュージックとしてだけ存在していたものを捉えるのが今回の目的だった。

今回のコンピには80年代後期から90年代中期までの音源が収められていますが、それはデトロイト・テクノやアシッド・ハウス、レイヴ・カルチャーやジャングルが出てきた時期と重なります。その時代に日本でこのような音楽が作られていたこと、その同時代性についてはどう思いますか?

SG:僕にとってデトロイト・テクノはデトロイトから来ているものだし、同時期に流行っていたアシッド・ハウスはシカゴから、ジャングルはロンドンから出てきたものだよね。日本ではそれがチップ・ミュージックだったということだね。そうやってそれぞれの場所から違うエレクトロニック・ミュージックが流行っていったんだと思う。それがお互いに影響し合っていた、いい時代だったと思う。

ゲーム・ミュージックには「音がメインではない、音が主張しすぎてはいけない」という側面があると思うのですが、それもある意味では8ビットや16ビットといったテクノロジーの問題と同じように制約と捉えることもできます。そういう側面についてはどう思いますか?

SG:音楽が第二に来るというのは映画音楽と同じだと思う。やっぱりまず映像があっての音楽だし、そのぶん予算も削られるし、音楽はいつも最後のギリギリのところで付けられるから、そこは共通していると思う。テクノロジーに限界があることと、音楽が第二に来ることは繋がっていると思うんだよね。音楽が第二だったからこそ、予算があるにもかかわらずそれが使われない、だから制限が生まれたんだと思う。お金をかければ音楽のためにすごくいい機材を使うことだってできたはずなんだ。でもヴィジュアルが最初にあるからこそ、音楽が第二のものになってしまった。だからこそ制作に使われるものに制限ができた。そのことによって逆にユニークなものが偶然生まれたという点がおもしろいと思うし、僕たちはそのユニークさに惹かれたんだ。

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僕はブリアルっぽいサウンドはいっさい聴かないんだ。だからぜんぜん知らない。10年くらい前から彼の影響を受けたアーティストがたくさん出てきていると思うんだけど、その頃からいっさい聴いていない


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2017年、〈ハイパーダブ〉はクラインと契約してEPをリリースしました。彼女のEPを出すことになった経緯や、彼女の音楽の魅力について教えてください。

SG:彼女はすごくユニークなアーティストなんだけど……この質問は難しいね。

通訳:難しいのはなぜですか?

SG:なぜ難しいかって、彼女が特別でユニークだからなんだけど、それがどこにもフィットしないので、言葉で表現するのが難しいということ。あと彼女は歌声がとても美しいんだけど、音楽はちょっと奇妙で本当に予想がつかないから、これから彼女がどう進化していくかがすごく楽しみだね。彼女の音楽からはすごく即興性が感じられて、何か計画して作ったものではなく、自分がいま思ったことを外に表現している、そういう音楽だと思う。

同じく2017年、〈ハイパーダブ〉はリー・ギャンブルとも契約しました。彼の作品を出そうと思ったのはなぜですか?

SG:僕も彼もジャングルが大好きで、その意味ではふたりとも同じバックグラウンドを持っているんだ。音楽性は少し違うけど、ジャングルの要素は彼の曲のなかに活かされているし、彼は哲学が本当に好きでそれを表現しようともしている。それについても僕と似ているから、シェアできるものがたくさんあるんだよね。彼のことはリスペクトしている。それはなぜかというと、サウンドの扱い方やエレクトロニック・ミュージックに対する姿勢などにすごく共感できたからなんだ。

そういったクラインやリー・ギャンブルとの契約のあとにこの『DITC』のリリースの話が入ってきたので、とても驚きました。サウンドの種類はまったく異なると思うのですが、今回のコンピもクラインやリー・ギャンブルと同じ地平に連なるものと考えているのでしょうか?

SG:共通点はないね(笑)。

なるほど(笑)。共通点はないがそれぞれ個別におもしろい、と。

SG:そのとおり。互いに違うからこそユニークなんだよ。

2017年はブリアルの『Untrue』がリリースされてからちょうど10年ということもあってか、ヴェイカントや〈フェント・プレイツ〉の諸作など、ブリアルから影響を受けた音楽が盛り上がりましたが――

SG:ヴェイカントは知らないね。僕はブリアルっぽいサウンドはいっさい聴かないんだ。だからぜんぜん知らない。10年くらい前から彼の影響を受けたアーティストがたくさん出てきていると思うんだけど、その頃からいっさい聴いていないので、知らないんだ。

そうなんですね。近年はフェイク・ニュースが横行したり「ポスト・トゥルース」という言葉が取り沙汰されたりしていますが、いま振り返ると『Untrue』というアルバム・タイトルは意味深長で、そういった昨今の情況を先取りしていたようにも思えます。

SG:いいセオリーだと思う。そうだと思うよ。

『Untrue』はいまでも聴き返しますか?

SG:やっぱりリリース10周年ということで、みんなが盛り上がっているのを見たり聞いたりして聴き返すことはあるんだけど、僕もブリアル当人も10周年というのは気にしていないんだ。僕たちが気にしているのは「彼が次に何をやるか」ということ。だからリリース10周年ということに関してはあまり意識していない。ファンだけが盛り上がっているような感じだね。

南アフリカで生まれたゴム(gqom)という音楽は、あなたがDJセットに取り入れたことで世界中に広がりましたが――

SG:(「ごむ」という日本語の発音を受けて)コッ(と口のなかで舌を鳴らす)。コッ、コッ(と「gqo」の部分の音を実演してくれる)。本当はこう発音するんだ。

へえ! そのゴムの魅力はどこにあると思いますか?

SG:リズムがすごく好きなんだ。3連符のリズムやダークなところが好きだし、あとはミニマルなんだけどダンサブルなところもすごく魅力的だと思う。

彼は左翼だったんだけど、いまは右翼になってしまった。当時彼の考え方に賛同していた人たちはいまはもう彼とは正反対で、嫌ってしまっているというか。僕も彼の90年代の考え方のほうに興味がある。

ゴム以降、非欧米の音楽で何かおもしろいものを発見しましたか?

SG:僕はここ最近ずっと中国でDJをしていて、中国の音楽にすごく興味を持っている。上海には〈Genome 6.66 Mbp〉というおもしろいレーベルもあるし、クラブ・イベントもどんどん増えてきていて、キッズたちが外の音楽を吸収するのはもちろん、それだけではなく、いま彼らは自分たちのエレクトロニック・ミュージックを作ろうとしている時期なんだと思う。これから中国のエレクトロニック・シーンはすごくおもしろくなっていくと思う。
もうひとつ、最近気になっているのはロンドンで「UKドリル」と呼ばれている音楽だね。これはグライムから進化したジャンルなんだけど、いまサウス・ロンドンのラッパーがすごく人気なんだ。ギグスというラッパーはすごく人気だし、あと67やハーレム・スパルタンズ(Harlem Spartans)といったクルーもとてもいい。やっぱりロンドンは自分が育った場所だから、僕にとってはローカル・ミュージックなんだよね。ブリクストンやペックハム、キャンバーウェルあたりの音楽はいまアンダーグラウンド・シーンが盛況で、メインにはスケプタストームジーがいるんだけど、そうじゃないもっとアンダーグラウンドなところも盛り上がってきている。

スケプタやストームジーはマーキュリー・プライズを受賞したりチャートの上位に食いこんだりと、オーヴァーグラウンドで彼らの人気が高いことは情報としては伝わってくるんですが、ここ日本にいると実感としてはわかりづらいんですよね。UKの若者たちはやはり日常的に彼らの音楽を聴いているのでしょうか?

SG:ロンドンではポップ・スターだね。ロンドンに限らず、イギリス全土でもアメリカでもポップ・スターだよ。まさにオーヴァーグラウンドなんだよね。それが影響して、これからヨーロッパでもポップ・スターになると思う。

日本でスケプタやストームジーを聴いていたら、おそらく「アンダーグラウンドな音楽好き」ということになります。

SG:はははは。やっぱりヴォーカルが何を言っているかということが重要な音楽だから、言語が理解できないと人気にはならないよね。難しいと思う。

ベルリンでもグライムはぜんぜん人気がないという話を聞いたことがあるのですが、それも変わっていくと思いますか?

SG:たしかにアンダーグラウンドだね。やっぱりそれも言語の壁があって、行けたとしても「ビッグなアンダーグラウンド」までだろうね。オーヴァーグラウンドまでは行けないと思う。たとえばフェスティヴァルで何千人もを前にしてプレイする、ということにはなるだろうけど、オーヴァーグラウンドのチャートに入れるかというと、入れないと思う。英語圏ではない国ではね。

2年前に『Nothing』がリリースされたときのインタヴューで、「加速主義に関心がある」と仰っていましたが(紙版『ele-king vol.17』掲載)、それ(accelerationism)に影響を与えたとされる哲学者ニック・ランド(Nick Land)は、UKではどのようなポジションにいるのでしょう? オルト=ライト(オルタナ右翼)にも影響を与えているそうですが。

SG:彼はいま上海に住んでいるよ。

通訳:ロンドンでは知られていないのでしょうか?

SG:そうだね。僕が90年代に勉強をしていたとき、彼は僕のスーパーヴァイザーだったんだよ。彼は左翼だったんだけど、いまは右翼になってしまった。当時彼の考え方に賛同していた人たちはいまはもう彼とは正反対で、嫌ってしまっているというか。僕も彼の90年代の考え方のほうに興味がある。いまはもう変わってしまったけれど、その政治論のオリジナルが90年代の彼の考え方だったんだよね。

私たちは2018年の秋頃に、コドウォ・エシュン(Kodwo Eshun)の『More Brilliant than the Sun』の翻訳を出版する予定です。

SG:ああ、その本の翻訳者がいまロンドンに住んでいてね、彼を知っているよ。マンスリー・イベントにいつも来てくれるんだ。

髙橋勇人くんですよね?

SG:そう。彼はいつも僕のインスタグラムを見てくれているしね(笑)。

彼はイギリスへ渡る前、ele-king編集部にいたんですよ。

SG:彼を知っているよ。ゴールドスミス大学で勉強していたね。その本を書いたコドウォ・エシュンがそこで教えていて、彼はエシュンのもとで研究しているんだ。

『More Brilliant than the Sun』は新版が発売される予定で、あなたがその序文を書いているんですよね。

SG:そのイントロダクションを書くために彼(コドウォ・エシュン)にインタヴューする予定なんだけど、まだできていないんだよね。

『More Brilliant than the Sun』の重要性について教えてください。

SG:僕にとってすごく影響力のある本で、本当にいろいろなアイデアが詰まっている。1000冊もの本がひとつになったような濃い内容の本なんだ。ソニック・フィクションからアフロフューチャリズムまで、エレクトロニック・ミュージックの歴史が詰まっていて、サン・ラやジョージ・クリントン、リー・スクラッチ・ペリーから始まって、ブラック・エレクトロのことも書いてあるんだけど、90年代の本だからジャングルで止まっているんだよね。〈ハイパーダブ〉はそのあとにできたレーベルだから、僕たちがその本のあとを辿っているような感じだね。

Filastine & Nova - ele-king

 いまエレクトロニック/クラブ・ミュージックはどんどんワールド・ミュージックと交錯していっている。とはいえ、一言で「ワールド・ミュージック」といってもそのあり方はじつに多岐にわたる。その多様性や複雑さを損なうことなく新たな形で示してくれるアクトのひとつが、世界各地の音楽を実験精神をもって表現しているデュオ、フィラスティン&ノヴァだ。バルセロナを拠点としているフィラスティンとインドネシア出身のノヴァから成るこのユニット、詳しくは下記のバイオを読んでいただきたいが、なかなかに尖っている(ちなみにフィラスティンは先日亡くなったECDこんな曲を共作してもいる)。そんな彼らの久しぶりの日本ツアーが開催されるとのことで、これは足を運ばずにはいられない。東京公演には KILLER-BONG や ZVIZMO(伊東篤宏×テンテンコ)らも出演。要チェック。

越境するマルチメディア・デュオ、FILASTINE & NOVAのジャパン・ツアー決定!
東京公演は2/11(sun)に代官山のSALOONにて開催!

 2月にバルセロナを拠点とする作曲家/映像作家フィラスティンと、インドネシア出身のネオ・ソウル・ヴォーカリスト、ノヴァ・ルスによるデュオが来日、ジャパン・ツアーを敢行する。「都市の未来を崩壊させるようなベース・ミュージック(Spin)」、「ワールド・ミュージックというよりも、もう一つの世界から来た音楽(Pitchfork)」と評される、映像、音楽、デザイン、ダンスを駆使したダイナミックなライヴ・パフォーマンスは必見だ。

FILASTINE & NOVA
Drapetomania Japan Tour 2018

2/6 福岡 art space tetra
2/7 尾道 浄泉寺
2/8 名古屋 K.D Japon
2/9 京都 octave
2/11 東京 SALOON
2/12 札幌 第2三谷ビル6F 特設会場

 2/11(sun)に代官山のSALOONにて開催される東京公演では、“最も黒い男” KILLER-BONG、アヴァン・エレポップ/ストレンジ・テクノイズを響かせる ZVIZMO(伊東篤宏×テンテンコ)がライヴを披露、また、オリジナルなワールド・ミュージック/伝統伝承の発掘活動も展開する Shhhhh、空族の映画『バンコクナイツ』への参加でも知られる Soi48、ヒップホップやアンビエントを行き来しながら活動を展開する YAMAAN といった独創的なDJたちがスペシャルなプレイをくり広げる。VJとして rokapenis の参加も決定している。世界各地域の音楽、文化を実験精神をもって独自に表現する面々によるクレイジーでダンサンブルな一夜になるだろう。

FILASTINE & NOVA
Drapetomania Japan Tour 2018 in Tokyo

2018.02.11 (sun)
@代官山 SALOON
Open/Start 18:00
Adv 2500yen(1D付き)/ Door 3000yen(1D付き)

| Live |
FILASTINE & NOVA
KILLER-BONG
ZVIZMO

| DJ |
Shhhhh
Soi48
YAMAAN

| VJ |
rokapenis

| Ticket |
前売りチケット取扱い店
・IRREGULAR RHYTHM ASYLUM
・disk union
└ 渋谷クラブミュージックショップ
└ 下北沢クラブミュージックショップ
└ 新宿クラブミュージックショップ
└ 新宿ラテン・ブラジル館
└ 吉祥寺店
└ 池袋店

・予約 filastine.tokyo2018@gmail.com

| Info |
IRREGULAR RHYTHM ASYLUM
https://ira.tokyo/filastine-nova-tokyo/ | 03-3352-6916


【PROFILE】

●FILASTINE & NOVA

バルセロナを拠点とする作曲家/映像作家フィラスティンと、インドネシア出身のネオ・ソウル・ヴォーカリスト、ノヴァ・ルスによるデュオ。ブラジルのカーニバルのバトゥカーダやモロッコの神秘主義者たちとの関わりから打楽器を学び、ラディカル・マーチングバンド The Infernal Noise Brigade を率いたフィラスティンと、幼い頃からペンテコステ派の霊歌やコーランを歌い、ガムラン・パーカッションを演奏し、インドネシアのヒップホップ・シーン草創期にラッパーとしても活躍したノヴァが生み出す音楽は、まさに「ワールド・ミュージックというよりも、もう一つの世界から来た音楽(Pitchfork)」である。世界各地の音楽フェスティバルに出演する以外にも、ドキュメンタリー映画『アクト・オブ・キリング』の公式ミックステープ制作や、フランス・カレーの巨大難民キャンプ「ジャングル」でのライヴ、掃除婦や鉱夫などの底辺の労働者がダンスによって解放される映像シリーズの制作など、音楽を通して「もう一つの世界」の実現を目指すラディカルな表現活動を続けている。2017年に最新アルバム『Drapetomania』を発表した。
https://soundcloud.com/filastine

●KILLER-BONG

〈BLACK SMOKER RECORDS〉主宰、最も黒い男。

●ZVIZMO

蛍光灯音具 OPTRON (オプトロン) プレイヤーの伊東篤宏と、アンダーグラウンド⇔メジャーを縦横無尽に行き来する テンテンコ によるデュオ・ユニット。テンテンコの聴き易いが意外に重たいエレクトロ・ビートと伊東のフリーキーだが意外とキャッチーな OPTRON が作り出すその音世界は「奇天烈だが何故かフレンドリー」な響きに満ちている。2017年11月に〈BLACK SMOKER RECORDS〉より1st アルバムをリリースした。

●Shhhhh(El Folclore Paradox)

DJ/東京出身。オリジナルなワールド・ミュージック/伝統伝承の発掘活動。フロアでは民族音楽から最新の電子音楽全般を操るフリースタイル・グルーヴを発明。13年に発表したオフィシャルミックスCD、『EL FOLCLORE PARADOX』のコンセプトを発展させた同名レーベルを2017年から始動し、南米から Nicola Cruz、DJ Spaniol らを招聘。アート/パーティ・コレクティヴ、Voodoohop のコンピレーションLPのリリースなど。dublab.jp のレギュラーや、オトナとコドモのニュー・サマー・キャンプ“NU VILLAGE”のオーガナイズ・チーム。ライナーノーツ、ディスク・レヴューなど執筆活動やジャンルを跨いだ海外アーティストとの共演や招聘活動のサポート。全国各地のカルト野外パーティー/奇祭からフェス。はたまた町の酒場で幅広く活動中。
https://soundcloud.com/shhhhhsunhouse
https://twitter.com/shhhhhsunhouse
https://www.facebook.com/kanekosunhouse

●Soi48(KEIICHI UTSUKI & SHINSUKE TAKAGI)

旅行先で出会ったレコード、カセット、CD、VCD、USBなどフォーマットを問わないスタイルで音楽発掘し、再発する2人組DJユニット。空族の新作映画『バンコクナイツ』にDJとして参加、〈EM Records〉タイ作品の監修、『爆音映画祭タイ・イサーン特集』主催。フジロックや海外でのDJツアー、トークショーやラジオなどでタイ音楽や旅の魅力を伝えている。その活動の様子はNHKのTV番組にも取り上げられ大きな話題となった。CDジャーナル、boidマガジンにて連載中。英Wire Magazineにも紹介された、『Soi48』というパーティーを新宿歌舞伎町にて不定期開催中。Brian Shimkovitz (AWESOME TAPES FROM AFRICA)、Zack Bar (FORTUNA RECORDS) からモーラム歌手アンカナーン・クンチャイ、弓神楽ただ一人の後継者、田中律子宮司など個性的なゲストを招いてのパーティーは大きな反響を呼んでいる。タイ音楽と旅についての書籍『TRIP TO ISAN: 旅するタイ・イサーン音楽ディスクガイド』好評発売中。
https://soi48.blogspot.jp/
https://www.instagram.com/soi48/

●YAMAAN

HIPHOPやAMBIENTを行き来しながら活動中。2017年2月に“NN EP”をリリースした。
@Mirage______

Loke Rahbek, Frederik Valentin - ele-king

 ありきたりなミニマル・ミュージックを再利用すること。もしくは古い電子音楽をリサイクルすること。さらにはパンクとオルタナティヴを新しいモードに転換すること。つまりはエクスペリメンタル・ミュージックを再定義すること。「今」を再定義し続けること。
 コペンハーゲンでオルタナティヴ/エクスペリメンタル・ミュージック・レーベル〈Posh Isolation〉を主宰するローク・ラーベクの作品と活動には、そのような意志を強く感じてしまう。1989年生まれの彼にとって「歴史」とは、もはや利用可能な残骸に近いものかもしれず、重要なのは新しいモードを生み出すことに尽きるのではないか。われわれはそこにこそ新世代の意志を感じるべきなのだ。
 インターネット以降、「情報」はかつて以上にフラット化したわけだが、それは「歴史」が使用可能な参照領域になったことと同義である。そのような環境においては90年代的な元ネタ=引用的なサンプリングの手つきは既に過去の手法になった。過去と現在の境界線が無効になり、「知ったうえでの引用」が意味をなさなくなったわけである。
 つまり、この「今」という時代は、「この時代を生きる」という運命論的な有限性を獲得するために、常に一回限りの賽子の一振りのような「賭け」のごときアクチュアルな身振りが生の条件となっている。それを新自由主義的社会的な生き方と批判するのは容易いが、むしろ歴史が生んでしまった巨大な「外部=敵」を常に意識し、自らの生を定義しなければならない「緊張」の世代・時代というべきではないか。大きくいえばテロリズムの時代なのだ。「テロ」は人生を剥奪する。そんな「世界」によって根こそぎ剥奪された生の回復が、今の若い世代にとって生きるための至上命題かもしれず、その結果、「継承的な歴史」という概念は「死んだコンテンツ」に近しいものになった。だからといって歴史が死んだわけではない。
 故に新しい音楽を生みだす「彼ら」の音楽が、仮に過去の何かに似ていようと、それをもってして過去の「引用」と関連付けて述べることには注意が必要である。彼らは生を刻印する自らの血=個のような音楽/音響を希求しているだけなのだ。「世界=外部」という巨大な「敵」に、人生を根こそぎ剥奪されないために、だ。そう、2017年以降、終っていないものは(やはり)パンクとオルタナティヴであり、反抗という精神性と美への感性である。だからこそエクスペリメンタルは今、ロマン主義的な様相を纏っているのだ。現在、「ニューロマンティック」という言葉は、このような意味に再定義されるべきだろう。

 2017年、ローク・ラーベクは〈Editions Mego〉からソロ作『City Of Women』と、キーボード奏者フレデリック・ヴァレンティンとのコラボレーション作『Buy Corals Online』の2作をリリースした。この2作もまた音楽的エレメントが複雑に交錯しながらも、残骸となった過去の音楽的コンテクストをリサイクルすることで、そこに自らの血=個を刻印した美しい電子音楽ミニマル・ノイズ作品となっている。ラーベクは、2017年に Christian Stadsgaard とのユニット Damien Dubrovnik の新作『Great Many Arrows』をリリースし、また Croatian Amor 名義や Body Sculptures でも活動しおり、どちらも2016年にアルバムをリリースしているが、これもまた〈Editions Mego〉の2作と同じく強い「殺気」を持ったエレガントな電子音楽/テクノ/ノイズに仕上がっていた。「生もの」と「花」に託されたセクシュアルなムードも濃厚であり、血と性の交差のごときエクスペリメンタル・サウンドになっている。
 私見だがこれらを含む〈Posh Isolation〉の作品を聴いたとき、これこそ新しいユースが生みだしたエクスペリメンタル・ミュージックと強い衝撃を受けたものだ。「抵抗」の意志が、美しい音像を生み、その音像には実験音楽のエレメントをあえて盗用するように剥奪することで、不思議な色気すら醸し出していたからだ。
 このフレデリック・ヴァレンティンとの新作『Buy Corals Online』も同様である。電子音、ドローン、環境音、ミニマル、クラシカルな要素などいくつもの音楽性が交錯したエクレクティックなサウンドであり、ときに70年代的な電子音楽(クラスターやハルモニア?)を思わせる音だが、そのことを彼らがどこまで意識しているかは分からず、つまりはあくまで「手法」として援用したに過ぎず、彼らが実現したかったのは実験性に託されたある種の壊れそうなまでに攻撃的で繊細な血の匂いのするような美意識なのかもしれない。そう、この音楽/音響には、身を切るような悲痛さ、血の匂い、エモーショナルな感覚があるのだ。そこにロマン主義的ともいえる「個」の存在も強く感じもする。

 彼らは「個」という存在を、音楽の、ノイズの、棘の中に封じ込めようとしている。私見だがそれこそゼロ年代におけるティム・ヘッカーのアンビエント・ノイズ・後継とでもいうべきものであり、「ゼロ年代という歴史のゼロ地点以降の音楽」に思える。かつて「ロック」という音楽が持ち得ていた雑食性と個の拡張と歴史の無化という側面を兼ね備えているのだ。

 ローク・ラーベクは〈Editions Mego〉からのリリース2作では70年代的な電子音の音像と、どこかフィリップ・グラス的なミニマル・ミュージックのムードを勝手に借用/再利用することで自ら=個の実存をノイズに封じ込めた。残骸と化した歴史をハックし、新しいジェネレーションの音楽/音響を生成しようとしている。私などはその方法論の発露に「OPN以降のエクスペリメンタル・ミュージック」のニューモードを強く感じてしまうのだ。いわば残骸のリサイクル。そこでは(さらにもう一周まわって)90年代と00年代という「歴史以降」の世界を生きるノイズ/オルタナティヴ・アーティスト特有の「継承」がなされているようにも思える。

 唐突だがここで「ロック」の歴史を終わらせ、すべてを「ノイズ」の渦に消失させたメルツバウを、あえてローク・ラーベクと接続してみてはどうだろうか。歴史とは、もろもろの事実の継承(だけ)ではない。ノイズとは、音とは、結局のところ事実=歴史を消失するものである。いつの時代も若い世代は、それを本能的に理解しているのだ。

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