「Low」と一致するもの

Outro Tempo II - ele-king

 テクノ、アンビエントなど80年代の埋もれたブラジル音楽に光を当てた〈Music From Memory〉の良コンピ『Outro Tempo: Electronic And Contemporary Music From Brazil 1978-1992』が出たのは2017年。2年後の2019年には続編『1984-1996』もリリースされているが、そのヴァイナルがヒットしたようで、このたびCD化されることになった。めでたい。
 今回もまた、電子音やパーカッションなどを駆使したじつに多種多様な音楽が収録されているのだが、前作が熱帯雨林の奥地だとしたら、第二弾のほうは都市(サンパウロ)だ。MPBが吸引力を失った時代に、インディペンデントで新たな時代を切り拓こうとした音楽家たちの試行錯誤の記録──たとえば、ジョン・ゴメスの解説によれば、ベベウ・ジルベルト『Tanto Tempo』のプロデュースで知られるスバが参加したエヂソン・ナターリの “Nina Maika” は、ボスニア民謡を取り入れることで新たな価値観を呈示した、象徴的な曲なのだという。そういった歴史や文化的背景を知ることができるライナーノーツの翻訳が読めることも、本盤の長所だろう。
 ヴァイナルには未収録の2曲も追加されているので、アナログ盤をお持ちの方も要チェックです。

ミュージック・フロム・メモリーのヒット企画『Outro Tempo』の続編

ベッドルーム、ダンスフロアやアンビエントなどをまたいだ10年代以降の新たな流れ、そのリイシュー側における先駆者であったミュージック・フロム・メモリーの大ヒット企画『Outro Tempo』の第2弾が待望のCD化。
電子音楽、ジャズ、ニューウェイヴにブラジルのローカル・モード。今回もまたいい具合に多くの要素が入り混じった稀有なミクスチャ・サウンドのオンパレード。脱帽です。

V.A.
Outro Tempo II
- Electronic And Contemporary Music From Brazil 1984-1996

Music From Memory
RTMCD-1454
2,500円
CD2枚組
12月10日発売
輸入盤国内仕様(帯・英文解説対訳付)

CD1
01 MAY EAST – MARAKA
02 DEQUINHA E ZABA – PREPOSIÇÕES
03 OHARASKA – A FÁBULA
04 FAUSTO FAWCETT – SHOPPING DE VOODOOS
05 R. H. JACKSON – O GATO DE SCHRÖDINGER
06 EDSON NATALE – NINA MAIKA
07 AKIRA S – TOKEI
08 LOW KEY HACKERS – EMOTIONLESS
09 BRUHAHÁ BABÉLICO – BRUHAHÁ II *** bonus track
10 CHANCE – SAMBA DO MORRO
11 JORGE DEGAS & MARCELO SALAZAR – ILHA GRANDE

CD2
01 PRISCILLA ERMEL – AMERICUA
02 VOLUNTÁRIOS DA PÁTRIA – MARCHA
03 ANGEL’S BREATH – VELVET
04 FAUSTO FAWCETT – IMPÉRIO DOS SENTIDOS
05 INDIVIDUAL INDUSTRY – EYES *** bonus track
06 CHANCE – INTRO-AMAZÔNIA
07 TETÊ ESPÍNDOLA – QUERO-QUERO
08 NELSON ANGELO – HARMONÍA DE ÁGUA
09 JORGE MELLO – A NATUREZA REZA
10 JÚLIO PIMENTEL – GERSAL
11 TIÃO NETO – CARROUSEL

R.I.P. Sylvain Sylvain - ele-king

 偉大なるパンクの先駆者、ニューヨーク・ドールズのギタリストとして知られるシルヴェイン・シルヴェインが2年以上におよぶ癌との闘病の末に亡くなった。

 本名はロナルド・ミズラヒ。1951年にカイロで生まれたシリア系ユダヤ人で、1956年のスエズ動乱の際に家族でフランスを経てアメリカに渡り、ニューヨークのクイーンズに落ち着く。渡米して最初におぼえた英語は「ファック・ユー」だったという。
 ドールズのオリジナル・ドラマーだったビリー・マーシアはコロンビアからの移民で、シルヴェインとは近所に住む幼馴染だった。ふたりはやがて服飾関係の仕事に進み、その経験がのちのドールズの斬新な衣装に活かされる。

 ジョニー・サンダースをフロントに据えたバンド、アクトレスにビリーとともに参加。ここにデヴィッド・ヨハンセンが加わりニューヨーク・ドールズのラインナップが完成する。マーサー・アーツ・センターという複合施設で定期的にライヴをおこなうようになったドールズは、ド派手な衣装とハイヒール・ブーツにギラギラのメイクという姿でシンプルなロックンロールを演奏するステージが評判を呼び、70年代初頭のニューヨークにおけるもっともホットなバンドとなっていく。アンディ・ウォーホール周辺をはじめとする当時のヒップな面々が集ったという。グラム前夜のデヴィッド・ボウイもしばしば訪れている(ヨハンセンに「その髪型、誰にやってもらったの?」と尋ねたそうだ)。
 ビリーの死後にドールズのドラマーとなるジェリー・ノーランは、初めてドールズを観たときの衝撃を「すげえ! こいつら、他に誰もやってないことをやってる。三分間ソングが戻ってきた!」と表現している。「当時といったら、ドラム・ソロ十分、ギター・ソロ二十分って時代だったから。一曲だけでアルバム片面終わっちゃったりね。そういうのには、もううんざりしてた」(『
プリーズ・キル・ミー』より)。まさにパンクだったのだ。ドールズがロックに取り戻したのは、シャングリラスに代表されるガール・グループのポップスとロックンロール、すなわち五十年代だった。

 デヴィッド・ヨハンセンとジョニー・サンダースという強烈なスターをフロントに擁するドールズだが、ソングライティング面におけるシルヴェインの貢献も見逃せない。デビュー作『ニューヨーク・ドールズ』収録曲の中でも速い “フランケンシュタイン” やエディ・コクランのギター・リフを取り入れた “トラッシュ” はシルヴェインとヨハンセンのペンによるものだし、ソロ・アルバム『シルヴェイン・シルヴェイン』に収録された “ティーンネイジ・ニュース” はパワーポップの名曲として知られている。

 マネージャーとなったマルコム・マクラーレンとの関係悪化などもあり、ジョニーとジェリーはバンドを脱退。シルヴェインとヨハンセンはバンドを続け、75年には内田裕也の招聘で来日もしているが、ロンドンでのパンクの勃興を横目に間もなく解散する。シルヴェインはソロやティアドロップス、クリミナルズといったバンドで80年代に数枚の作品を発表しており、『シルヴェイン・シルヴェイン』をはじめ佳作も多いのだが残念ながら大きな成功を収めるには至らなかった。

 90年代にはジョニー・サンダースとジェリー・ノーランが続けざまに亡くなるが、2004年にまさかのドールズ再結成。きっかけは英国におけるファンクラブ会長だったモリッシーの熱いリクエストによるものである。このときの様子はベースのアーサー・ケインをフィーチャーしたドキュメンタリー映画『ニューヨーク・ドール』に記録されている。ミュージシャンを引退し、図書館員として働いていたアーサーがスタジオを訪れると、そこではまさにシルヴェインがリハーサルを仕切っていた。
 復活ライヴの直後に今度はアーサーも亡くなるがバンドは活動を継続し、再結成後に3枚のアルバムを残している。特に最後のアルバムとなった『ダンシング・バックワード・イン・ハイヒールズ』(2011)は、ヨハンセンのソロ作品でのスウィング・ジャズやキャバレー音楽の雰囲気を取り入れた異色の傑作だった。

 筆者はシルヴェインのステージを3回観ている。最初は2008年、スペインのフェスでのニューヨーク・ドールズ。2回目は2016年のソロ来日。そして最後は2018年、「ザ・ドールズ」という名義でニューヨーク・ドールズの曲を中心に演奏するというものだった。
 3回とも、陽気でチャーミングな姿が印象に残っている。特にオリジナルメンバーがふたりだけとなったニューヨーク・ドールズは、カリスマ性の強いヨハンセンと盛り上げ上手なシルヴェインが好対照だった。


2018年の来日公演(写真:大久保潤)

 最後の来日の際には、『プリーズ・キル・ミー』(2007年に出た邦訳)を持参して終演後に見せたところ、にこやかに「これは素晴らしい本だよね」と言いながらサインをしてくれた。2020年に念願の復刊を果たした本書をもう一度見せたかったのだが、それももう叶わなくなってしまった。

Jahari Massamba Unit - ele-king

 ヒップホップの世界でもっともジャズに接近したアプローチを見せるひとりが、マッドリブことオーティス・ジャクソン・ジュニアだろう。ジャズのネタをサンプリングするヒップホップDJやプロデューサーは多いが、彼の場合は実際に楽器を演奏してジャズ・ミュージシャンさながらの作品を作ってしまう。父親のオーティス・ジャクソン・シニアはR&Bシンガーで、ジャズ・サックス奏者のジョン・ファディスが叔父など音楽一族出身ということも、そうした演奏能力に影響を及ぼしているだろう(もっとも彼の場合は譜面を読んで演奏を学んできたのではなく、もっぱらレコードを聴いて耳でコピーしてきた口だが)。
 マッドリブがジャズの才能を開花させたのは、もうかれこれ20年ほど昔のイエスタデイズ・ニュー・クインテット(YNQ)だ。5人のミュージシャンが集まったこの架空のバンドは、実はマッドリブが全ての楽器をひとりで多重録音したプロジェクト。ここから発展してマッドリブ名義で〈ブルーノート〉の音源と自身の生演奏を融合したトリビュート・アルバムも作ったし、モンク・ヒューズ名義でウェルドン・アーヴィンのカヴァー・アルバムも作った。ほかにも〈ストーンズ・スロー〉を舞台にジョー・マクダーフィー・エクスペリエンス、オーティス・ジャクソン・ジュニア・トリオ、ヤング・ジャズ・レベルズ、ザ・ジャジスティックス、ザ・エディ・プリンス・フュージョン・バンド、ザ・ラスト・エレクトロ=アコースティック・スペース・ジャズ&パーカッション・アンサンブルなど、さまざまな名義のジャズ・プロジェクトをやってきた(これらも基本的にYNQと同じくマッドリブがひとりでやっている)。こうした活動は本物のジャズ・ミュージシャンからも一目置かれ、アジムスのイヴァン・コンティとジャクソン・コンティというユニットを組んでアルバムも出している。

 一方、カリーム・リギンズもジャズとヒップホップの両方の草鞋を履くアーティスト。ロイ・ハーグローヴやレイ・ブラウンのジャズ・バンドでドラマーとして活動する一方、ザ・ルーツ、コモン、スラム・ヴィレッジ、Jディラなどとも仕事をするなどヒップホップ・プロデューサー/ビートメイカーとしての顔も持つ。そんな彼の名が広く知られるようになったものに、カール・クレイグによるザ・デトロイト・エクスペリメントへの参加があり、近年はロバート・グラスパーとコモンと組んだオーガスト・グリーンも話題を呼んだ。ソロ・アーティストとしては〈ストーンズ・スロー〉からソロ・ドラムとビートメイクを融合したビート・アルバムをいくつか出しており、そうしたところでマッドリブとはレーベル・メイトでもあった。
 マッドリブも『ビート・コンダクター』などさまざまなビート・アルバムを作ってきたが、そうしたひとつの『メディシン・ショー』を制作するために〈マッドリブ・インヴェイジョン〉を立ち上げたのが2010年。〈マッドリブ・インヴェイジョン〉からはラッパーのフレディ・ギブズと組んだ作品をいろいろリリースしてきているが、そうした中にカリーム・リギンズも参加することがあり、今回マッドリブとカリームのプロジェクトであるジャハリ・マッサンバ・ユニットが興された。

 イスラム系の人名のジャハリ・マッサンバ、『下手なフランス語ですみません』というアルバム・タイトル、赤・黒・緑の汎アフリカン・カラーをあしらったアルバム・ジャケット(ちょっとア・トライブ・コールド・クエスト風でもある)と、いかにも思わせぶりな要素が並ぶが、これらはマッドリブらしい遊び心に富んだもの。曲名は全てフランス語となっていて、フランス語を公用語に用いる国が多いアフリカ大陸を関連付けているのだろうか。
 ドラムをカリーム・リギンズが担当し、それ以外の全ての楽器をマッドリブが演奏するという役割で、当初カテゴリー的にはスピリチュアル・ジャズ・アルバムと呼ぶはずだったところ、〈トライブ〉の創設者であるジャズ・トロンボーンのレジェンド・ミュージシャンのフィル・ラネリンから、「これはブラック・クラシック・ミュージックと呼ぶべきだ」とアドバイスされ、そう呼ぶようになったとのこと。未来へのジャズの遺産となるような作品を残したい、そんなマッドリブの想いが込められたものとなっている。

 祖父のジャズ・レコード・コレクションからジャズを学んできたマッドリブは、たとえばサン・ラー、ジョン・コルトレーン、マイルス・デイヴィス、デヴィッド・アクセルロッドなどの作品に魅せられ、本作でもそうした1960年代から1970年代にかけてのジャズの影響が端々から伺える。全てがインスト曲で、フリー・ジャズ調の “ジュ・プランドレ・ル・ロマネ・コンティ(ピュタン・ドゥ・リロイ)” は、1960~70年代のジャズ・ミュージシャンにも多大な影響を及ぼした黒人詩人のアミリ・バラカ(リロイ・ジョーンズ)をモチーフにしているのだろうか。ヴィブラフォンの音色が神秘的な “デュ・モーゴン・オ・ムーラン・ナ・ヴァン(プール・デューク)” はデューク・エリントンに捧げているのだろうか、でも実際はボビー・ハッチャーソンやハービー・ハンコックの新主流派ジャズ的だったりする。
 誰かの演奏に寄せつつも、単なる物真似に留まらないオリジナルな作品にまで昇華させている点は、マッドリブとカリームの昔のジャズに対する知識や研究の深さと、それをベースに音楽を造形してしまう応用力の高さを物語る。アイドリス・ムハマッドの “ローランズ・ダンス” を下敷きにしたと思われる “オマージュ・ア・ラ・ヴィエール・ガルド” などはその典型と言えよう。そして、ヒップホップというビート・ミュージックに関わってきたふたりだけあって、“リスリング・プール・ロベール” におけるソリッドなリズム・セクションはさすがだ。

Stereolab - ele-king

 2019年、10年ぶりに再始動を果たしたステレオラブ。彼らのなにが偉大だったのか、その功績についてはこちらのコラムをお読みいただくとして、オリジナル・アルバムのリイシュー企画に続き、今度は98年を最後に止まっていたシングル集シリーズの最新作『Electrically Possessed』が2月26日にリリースされる。入手困難なツアー7インチの曲や未発表曲も収録されるとのことで、これは楽しみ。現在同作より “Dimension M2” が先行公開中です。

STEREOLAB

再始動したステレオラブが23年振りにシングル集シリーズの最新作
『Electrically Possessed [Switched On Volume 4]』を
2月26日にリリース決定!
数量限定のTシャツ・セットも同時発売決定!
先行シングル「Dimension M2」を解禁!

90年代に結成され、クラウト・ロック、ポスト・パンク、ポップ・ミュージック、ラウンジ、ポスト・ロックなど、様々な音楽を網羅した幅広い音楽性でオルタナティブ・ミュージックを語るのに欠かせないステレオラブ。

2019年に10年ぶりに本格再始動した彼らは、音楽史に燦然と輝く7タイトルのリマスター盤再発企画をスタートさせ、音楽ファンを喜ばせたが、今回は1992年の第一弾『Switched On』、1995年の第二弾『Refried Ectoplasm』、1998年の第三弾『Aluminum Tunes』と続いたシングル集シリーズの実に23年振りとなる第四弾『Electrically Possessed』を2月26日にリリースすることを発表した。

再発タイトル同様、〈Warp Records〉と〈Duophonic UHF Disks〉のダブルネームでリリースされる本作には、1999年から2008年までのステレオラブの歩みを網羅した25曲を収録。ほとんどの音源において、メンバーのティム・ゲインの監修の元、電気グルーヴのマスタリングも手掛けるボー・コンドレンの手によってリマスタリングが施されている。

廃盤となったミニアルバム『The First Of The Microbe Hunters』の全曲を収録しており、入手困難なツアー7インチ、コンピレーション曲、アート・インスタレーション作品、アルバム『Mars Audiac Quintet』と『Dots and Loops』のレコーディング・セッションからの未発表曲も収録される。

Stereolab - Dimension M2 (Official Audio)
https://youtu.be/HPKQgMGWot0

今回の発表と合わせてシングル「Dimension M2」が公開されている。本楽曲は、2005年にコンピレーション作品『Disco Cabine』に提供された楽曲で、ティム・ゲインは次のように解説している。

コンピュータを使ったレコーディングが楽しかった『Dots and Loops』の制作の後、自分たちの小さなホームレコーディングスタジオを作りたいと思ったんだ。AppleのデスクトップとMOTUサウンドカード、Logic 2を買って、主にサンプルを使ってシンプルなトラックを録音し始めたんだけど、それにギターやキーボード、そしてレティシアとメアリーが歌詞のない歌声を加えたりもした。個人的には、音やリズムをカットしたり、切り刻んだりするのが好きで、ステレオラブのメインのレコーディング作品よりも、ずっと小さくてシンプルな信号音のような曲を作ろうとしたんだ。そうやって作ったトラックのほとんどはツアー限定シングルかコンピレーション作品に提供した。「Dimension M2」は、Cabineというデザイン会社を持ってた友人のPaul & Hervéが手がけたコンピレーションに収録された。彼らのために何かアップビートでパーティーっぽいものを作りたくて、なるべくそのイメージに近づけたんだ。それでもまだクールで冷めた感じがするけどね。

初回盤特殊パッケージ

通常盤CD

Tシャツ

本作『Electrically Possessed [Switched On Volume 4]』は、CD、LP、デジタルのフォーマットで2月26日に世界同時リリースされる。国内流通仕様盤CDとLPの初回盤は、ミラーボード仕様の特殊パッケージを採用し、ステッカーが封入される。数量限定の国内流通仕様盤+Tシャツ・セットも同時発売される。さらに対象店舗でCDおよびLPを購入すると、先着でジャケットのデザインを起用した缶バッヂがもらえる。

なお公演延期となっていたステレオラブの来日公演は、2021年9月に振替日程が決定している。
https://smash-jpn.com/live/?id=3304

label: BEAT RECORDS / DUOPHONIC UHF DISKS / WARP RECORDS
artist: STEREOLAB
title: ELECTRICALLY POSSESSED [SWITCHED ON VOL. 4]
release date: 2021/02/26 FRI ON SALE

国内流通仕様盤CD
解説書+ステッカー封入
BRDUHF42 ¥2,400+税

国内流通仕様盤CD+Tシャツセット
BRDUHF42S~XL ¥5,900+税

BEATINK.COM:
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=11675

Tracklist:

DISK 1
01 - Outer Bongolia
02 - Intervals
03 - Barock-Plastic
04 - Nomus Et Phusis
05 - I Feel The Air {Of Another Planet}
06 - Household Names
07 - Retrograde Mirror Form
08 - Solar Throw-Away [Original version]
09 - Pandora's Box Of Worms
10 - L'exotisme Interieur

DISK 2
01 - The Super-It
02 - Jump Drive Shut-Out
03 - Explosante Fixe
04 - Fried Monkey Eggs [Instrumental version]
05 - Monkey Jelly
06 - B.U.A
07 - Free Witch and No Bra Queen
08 - Heavy Denim Loop Pt 2
09 - Variation One
10 - Monkey Jelly [Beats]
11 - Dimension M2
12 - Solar Throw-Away
13 - Calimero
14 - Fried Monkey Eggs [Vocal]
15 - Speck Voice

SOPHIE × Autechre - ele-king

 2010年代半ば、いわゆるバブルガム・ベースの立役者のひとりとして頭角をあらわしたスコットランドのプロデューサー、ソフィー。去る1月14日、彼女の出世作となった “BIPP”(2015)の、オウテカによるリミックスが公開されている。リリース元は、彼女を世に認知せしめたグラスゴーのベース系レーベル、〈Numbers〉。

 なんでも、ソフィーは「じぶんの曲のリミックスはやらせない。ただし、オウテカを除いて」というスタンスを掲げていたらしい。そんなわけでレーベルは『PRODUCT』が出た2015年、オウテカにコンタクトを試みるも、彼らがほかのプロジェクトにとらわれていたため実現には至らず。
 諦めきれなかった〈Numbers〉は『Oil Of Every Pearl's Un-Insides』が出た2018年、あらためて『PRODUCT』から可能な限りの素材を集めてオウテカに送りつけたそうだが、このときかのデュオはライヴに集中していたのだった。
 そして2020年。ようやくオウテカから「遅くなってごめん、まだ使う機会があればいいんだけど」と、今回のリミックスのWAVが送られてきたのだという。

 じつは、さらに物語がある。遡ること18年前。オウテカとなにかをやりたい、という今回の〈Numbers〉のアイディアはもともと、オウテカがキュレイターを務めた2003年の《オール・トゥモロウズ・パーティーズ》(紙エレ最新号をお持ちの方は55頁を参照)の際に浮かんだものだったそうだ。その2年後、〈Numbers〉は──共同設立者の Calum が当時〈Warp〉で働いていたことも手伝って──グラスゴーのアートスクールでのショウにオウテカをブッキングすることに成功。そのときひっそり録音されたライヴ音源は、『Untilted』と『Quaristice』の中間のようなサウンドだったという。
 同2005年、ソフィーはその音源がネットにアップされているのを発見し、大いに触発される。彼女はそこでオウテカが使用していたエクイップメントをすぐさま購入、それらの機材によって “Nothing More To Say” や “BIPP”、“LEMONADE” といった初期代表曲が生み落とされることになった。つまり、ソフィーの登場そのものがオウテカによってもたらされたとも言えるのだ。

 オウテカ側の話もつけ加えておこう。『SIGN』リリース時のオフィシャル・インタヴューのなかでショーンは、ずいぶんまえにソフィーのリミックスを依頼されたものの、送られてきた大量のステムをじぶんたちのシステムで作動・再生させることができなかった、と語っている。Maxの処理があまりにもリアルタイムすぎて、リミックスのために必要な作業ができなかったのだ。ゆえに彼らはエイブルトンにモジュールを移殖することを決意するも、今度はその作業だけで半年もの時間を食ってしまうことになる。かくしてソフィーのリミックスは一度は頓挫してしまう……のだが、その移殖作業によってもたらされた新たなセットアップのおかげで『SIGN』が完成したのだから、じつはソフィーもオウテカに影響を与えていたということになる。
 おもしろい相互作用でしょう?

 というわけで、「BIPP (Autechre Mx)」のアナログ盤は2021年1月28日にリリースされる。B面には、『PRODUCT』の録音中に制作された未発表音源 “UNISIL” を収録。ソフィーの初期成功作がオウテカ流ファンクによって転生させられる様を聴きながら、アーティスト同士の不思議なコレスポンダンスに想いを馳せようではないか。

SOPHIE
BIPP (Autechre Mx)

Numbers
NMBRS67
Vinyl out 28th January, 2021

A. BIPP (Autechre Mx)
B. UNISIL

https://nmbrs.net/releases/sophie-bipp-autechre-mx-nmbrs67/

New Age Steppers - ele-king

 細かく震えるあまりに特異なヴォーカル。久しぶりに彼女の声を聴いてこちらまで打ち震えてしまった。そしてもちろん、信じられないような独創的な発想のミックス。3月19日、ニュー・エイジ・ステッパーズの全キャリアを総括するボックスセットが発売される。
 エイドリアン・シャーウッドがおそらくはもっともキレていた時期、ダブの実験を極めたファースト『The New Age Steppers』(81)や、ダンスホールの時代にルーツ・レゲエを尖ったサウンドでカヴァーしたセカンド『Action Battlefield』(81)~サード『Foundation Steppers』(83)はもちろんのこと、2012年の最終作にして、その2年前に他界してしまったアリ・アップ最後の録音が収められた『Love Forever』、そして今回の目玉だろう、レア音源や未発表音源をコンパイルした『Avant Gardening』から構成される、CD5枚組の仕様だ。
 一家に一箱。問答無用です。

ポストパンク/UKダブの伝説、
ニュー・エイジ・ステッパーズの歩みをここに凝縮!
全アルバムに加え、アウトテイクや未発表レア音源を収めた
コレクション盤を含む5枚組CDボックスセット
『Stepping Into A New Age 1980 - 2012』を3月19日にリリース!
〈On-U Sound〉の数多くの写真を手がけたキシ・ヤマモト撮影の
オリジナル・フォトTシャツ・セットも数量限定で同時発売決定!

ザ・スリッツのアリ・アップとUKダブの最重要プロデューサー、エイドリアン・シャーウッドを中心として、マーク・スチュワート率いるザ・ポップ・グループやザ・レインコーツ、ネナ・チェリー、フライング・リザーズといったポストパンク・シーンを象徴する前衛的シンガーやプレイヤーが参加し、ビム・シャーマン、スタイル・スコット、ジョージ・オーバンといった世界的レゲエ・アーティストを掛け合わせた衝撃のサウンドでその後の音楽シーンに多大なる影響を及ぼした伝説的グループ、ニュー・エイジ・ステッパーズ。彼らの全歴史を凝縮したCDボックスセット『Stepping Into A New Age 1980 - 2012』が3月19日に発売決定!

New Age Steppers - Stepping Into A New Age 1980 - 2012
https://youtu.be/m4WDA7XYuZM

エイドリアン・シャーウッドが〈On-U Sound〉を立ち上げるきっかけともなったニュー・エイジ・ステッパーズのすべてがわかる本作。1981年の1stアルバム『New Age Steppers』は、レゲエ・クラシックに乗って、アリ・アップのヴォーカルが80年代初頭の新しい音楽を創造しようとする熱気に溢れたヴァイブスを見事に表現した真のポストパンク/UKダブの金字塔。アリ・アップがほとんどの曲でリードボーカルを担当し、若き日のネナ・チェリーも参加した2ndアルバム『Action Battlefield』は、混沌とした世界がより洗練され、ポップさを増したサウンドによって、ニューウェイヴ期のUKで生まれた最高傑作。1983年の『Foundation Steppers』は、ジャマイカに移住したアリ・アップが伝説的ドラマー、スタイル・スコットともにレコーディング、カラフルなサウンドとポストパンクなプロダクションのセンスで伝統を壊しながらも、アリ・アップのレゲエ愛に溢れたアルバムとして高く評価されている。そして2012年にリリースされた最終アルバム『Love Forever』には、2010年に亡くなったアリ・アップの最後のレコーディング音源が収められ、自由を貫いたアリの感性でジャマイカ音楽をアップデートしたサウンドがファンに愛されている。レアなダブ・ヴァージョンやアウトテイク、未発表音源などをコンパイルしたコレクション・アルバム『Avant Gardening』では、BBC Radio 1 ジョン・ピール・セッションで収録された “Send For Me” をはじめ、『Foundation Steppers』収録のチャカ・カーンのカバー “Some Love” のダブ・ヴァージョンなど未発表音源を収録。またエイドリアン・シャーウッドやその他のコントリビューターたちとの会話や当時の写真をもとにグループの歴史を辿る32ページにおよぶブックレットが加えられている。国内流通仕様盤には、ブックレットの対訳も封入される。また、〈On-U Sound〉の数多くの写真を手がけたキシ・ヤマモトによる写真を起用したオリジナル・フォトTシャツ・セットも同時発売される。


また今作のリリースに合わせて、初めてLPでリリースされる2012年作品『Love Forever』を含め、それぞれのアルバムがLPでも再発される。

label: BEAT RECORDS / ON-U SOUND
artist: New Age Steppers
title: Stepping Into A New Age 1980-2012
release date: 2021/03/19 FRI ON SALE

国内仕様盤5CD
32ページ・ブックレットの対訳(別冊)封入
BRONU149 ¥4,300+税

国内仕様盤5CD+Tシャツセット
BRONU149S~XL ¥8,000+税

BEATINK.COM
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=11672

Tracklist:

DISC1: NEW AGE STEPPERS (1981)
01. Fade Away
02. Radial Drill
03. State Assembly
04. Crazy Dreams and High Ideals
05. Abderhamane’s Demise
06. Animal Space
07. Love Forever
08. Private Armies

DISC2: ACTION BATTLEFIELD (1981)
01. My Whole World
02. Observe Life
03. Got To Get Away
04. My Love
05. Problems
06. Nuclear Zulu
07. Guiding Star

DISC3: FOUNDATION STEPPERS (1983)
01. Some Love
02. Memories
03. 5 Dog Race
04. Misplaced Love
05. Dreamers
06. Stabilizer
07. Stormy Weather
08. Vice Of My Enemies
09. Mandarin

DISC4: LOVE FOREVER (2012)
01. Conquer
02. My Nerves
03. Love Me Nights
04. The Scheisse Song
05. Musical Terrorist
06. The Fury Of Ari
07. Wounded Animal
08. The Worst Of Me
09. Revelation
10. The Last Times
11. Death Of Trees

DISC5: AVANT GARDENING (2021)
01. Aggro Dub Version
02. Send For Me
03. Izalize
04. Unclear
05. Singing Love
06. I Scream (Rimshot)
07. Avante Gardening
08. Wide World Version
09. Some Dub
10. May I Version

Various - ele-king

 まさに名は体を表す、そんな鋭利な刺激、そして躍動感に満ちたグルーヴに貫かれた、現行ベース・ミュージック~テクノの先鋭的なコンピといえるだろう。本作はブリストル出身のアーティスト、Batu 主宰の〈Timedance〉のレーベル・コンピで、コンピ・リリースは2018年の『Patina Echoes』から2作目となる。また本作はレーベル設立5周年目を象徴する、節目の作品でもあるようだ。収録曲に関してはアナログは8曲入りの2枚組LPと4曲入りのサンプラーEPで構成、デジタルのアルバムは両方の収録曲を合わせた形でリリースされている。LPには冒頭の Kit Seymour を除いて、Batu、Ploy、Bruce などレーベルの屋台骨と言えるアーティストを中心に、Happa やメキシコの新鋭、Nico といった他のレーベルなどで活躍するベース系のアーティスト、そしてゲスト的にテクノ・シーンから Peter Van Hoesen の楽曲を収録。そしてEPの収録アーティストは本レーベルと他レーベルからもリリースしている Metrist を除くと、ほぼニュー・カマーといって差し支えないアーティストが列んでいる。という感じなので、12曲総体で聴くならデジタル・アルバムをオススメする(が、音響的にすごいことになっているのでサブスクの圧縮音源ではなく、Bandcamp あたりでロスレス音源を買うことをオススメする)。

 〈Timedance〉は、そのシングル・リリースですでにレフトフィールドなテクノとベース・ミュージックにおいてまさにトップ・レーベルといえる地位を築いている。Batu はブリストル出身、その他のリリースに関してもロンドンやリーズなどさまざまな出自のアーティストをリリースしているが、Bruce、Via Maris、本作には参加していないが Lurka などブリストル勢も多い。またBatu、Bruce、Via Maris あたりはざっくり言って〈Livity Sound〉(もしくはサブ・レーベル〈Dnuos Ytivil〉)からのリリースで注目されてきたアーティストだ。さまざまな出自のアーティストを出す〈Timedance〉をブリストル・サウンドのレーベルとくくってしまってはいけないが、ピンチの〈Tectonic〉を第一、さらにその下の世代を巻き込んだ〈Livity Sound〉を第二世代とすれば、イメージ的には半分はブリストル・ダブステップのそうした血脈の第三世代のレーベルと捉えることもできるラインナップでもある。2000年代にダブステップを養分にブリストル・サウンドをひとつ前に進めたピンチ。さらに、そのピンチも含めて2010年代のブリストル・サウンドの先鋭性が推し進められたのは、やはりアブストラクトな電子音響〜レフトフィールドなテクノをそこに飲み込んだことが要因にある。ペヴァリストの〈Livity Sound〉を筆頭に(そしてピンチの〈C.O.L.D.〉)、そして〈Timedance〉もその系譜にあることは間違いない。またアブストラクトな電子音響も含めて言えば、それはヤング・エコー周辺の音源にも言えるだろう。本作ではそんな血脈の上で醸成された、新たなベース・ミュージックとテクノの展開というものを聴くことができるのだ。

 Batu の強烈なキックの連打によるインダストリアル・ダンスホール、プラスティックマンの “スパスティック” を彷彿とさせるスネア・ロールにハマる Ploy のトラック、前作コンピに続き本作でもアフロ・パーカッションの援用によるサイケデリックな空間を作り上げたメキシコの Nico、またニュー・カマーにしても、モジュラーシンセのヒプノティックなトラックをヘヴィー級のベースで痙攣させた Kit Seymour、エイフェックスなドリルンベース~ブレインダンスなジャングル・ビートを〈Timedance〉印の刺激的なビートに仕立てたような Cleyra、そして強烈な印象を持ったのはヴォイス・サンプルを使ったラフなグルーヴがネクスト・レベルなシカゴ・ハウスの転生を感じさせる Metrist のトラックだ。自身のテクノ・サイドな轟音グルーヴをそのままUKGなリズムへと導入した Peter Van Hoesen がむしろかすんでしまうような感覚すらある。それほどまでに刺激に満ちたビートと、電子音響的にダブを推し進めたレフトフィールドなサウンド・デザインが襲いかかってくる。とにかく本作は、テクノとベース・ミュージック、その現時点のアップデートされた最高の交点を聴くことができる、そんなコンピとなっている。

Various - ele-king

 この熱気。エナジー。爆発力。本誌26号で「またの機会」とした北アフリカのテクノからエジプトのフロントラインを凝縮したコンピレーションを。最初にレーベルについて説明しておくと、〈ナシャズフォン〉はこれまでアメリカのノイズ・ドローンやヨーロッパのサイケデリック・ロックなど、ダンス・ミュージックとは距離を置いたアヴァンギャルド・ミュージックをメインに手掛けてきたレーベルで、これがエレクトロ・シャアビと呼ばれるダンス・ミュージックのコンピレーションを企画するということは、ドイツの〈パン〉が辿った変化と同じ道を進み始めたことを意味している。アルジェリアやモロッコに起源を持つシャアビは70年代からエジプトに根付き、ユーモラスで極端に政治的なストリート・ミュージックとされ、これが「アラブの春」(と西側が称した政権交代)以降、エレクトロ・シャアビとして一気に先鋭化することになる。〈ナシャズフォン〉も2014年にE.E.K. のライヴ盤を世に送り出して打楽器の洪水がクラブの熱気を煽る一部始終を広くアナウンスし、エジプトのアンダーグラウンドがどうなっていくか大いに期待させたものの、それ以上シーンを追うことはなく、〈ナシャズフォン〉のリリースもラムレーやスカルフラワーといった昔のイメージに戻ってしまう。エレクトロ・シャアビをイギリスのDJでフォローしたのはマムダンスで、フィゴやサダトといった人気MCをフィーチャーしたミックステープがその熱気を伝えてくれた一方、エジプトからはヨーロッパのテクノを模倣するタイプも増え、ミコ・ヴァニアやサイクリック・バックウォッシュなど14の名義を使い分けるネリー・ファルーカ(Nelly Fulca)がパトリック・パルシンガーの〈チープ〉からねっとりとしたインダストリアル・テクノをリリースするなどエジプシャン・テクノのスキルと信用度も高めていく。そうした交点から、まずはズリ(Zuli)がリー・ギャンブルのレーベルからデビュー・アルバム『Terminal』をリリース。高橋勇人のレビューを引用すると「ここにあるのは、IDMの理念でもある、サウンドのカテゴライゼーションの魔の手からの逃避と、カイロという空間の激ローカルな視点からの再定義」(本誌23号)だという。一方的に外国に追随するわけでもなく、かといって自国でホームグロウンとして開き直るわけでもない環境が整ったということだろう。その上で3フェイズや1127が改めてエレクトロ・シャアビの新手として噴出し、〈ナシャズフォン〉もそれらを1枚にまとめたわけである。つーか、この熱気をまとめざるを得なかったほどシーンは沸騰していたのだろう。

 オープニングは実験音楽の要素を残したアバディール。このあたりはレーベルの意地であり、〈パン〉がそうであったように音楽的な脈絡を重視したのだろう。ガッツガッツと繰り出されるインダストリアル・パーカッションはしかし、ベース・ミュージックのそれであり、実験音楽の要素がダンス・ミュージックの価値を削ぐものではない。続いて〈ナシャズフォン〉から昨年、デビュー・アルバム『Tqaseem Mqamat El Haram』をリリースした1127。“gharbala 2020”はインダストリアル・ポリリズミック・ミニマルというのか、ダンスホールのリズムを一応のメインとしながら、あちこちからリズムが降ってきてぐちゃぐちゃになった1曲。といってもいわゆるでたらめとか、ヤケクソではない。誰かの名前を出したいけれど、誰も思い浮かばない。リズムの背後ではアラビックな旋律も乱れ飛んでいる。続いて本誌でも取り上げた3フェイズ。デビュー・アルバム『Three Phase』でもそうだったけれど、甲高い打楽器の叩き方がハンパなく、ぶっといベースとの落差は常軌を逸している。実際、3フェイズはランニングしながら聴いていて意識が飛びかけ、運動しながら聴くのはやめたほど。『Terminal』に続いてリリースされた2枚のアルバムがコンセプチュアルすぎて僕にはよくわからなかったズリもここではエレクトロ・シャアビに取り組み、ノイジーなイントロダクションから怒涛のパーカッション・ストームになだれ込む。『ジャジューカ』でおなじみガイタがループされ流というか、まさに『ジャジューカ』のパンク・ヴァージョンである。激しい。どこからこんなパッションを得ているのだろう。ズリはまたラマと共にIDM寄りのコンピレーション『did you mean: irish』も昨年、パンデミック下の記録としてリリースしている

「ホッサム・サイド」から「イブラヒム・サイド」に移ってKZLKは誰よりも混沌としたインダストリアル・シャアビをオファー。1127と同じくダンスホールを思わせるリズム・パターンを一応の柱としながら、これもポリリズミック過ぎて頭では処理が追いつかない……体に任せるしかない(このサウンドを形容するのに「メルツバウィアン」という単語を初めて見た)。なお、KZLKはは〈ニゲ・ニゲ・テープス〉が年末ギリギリにリリースしたダンスホールのコンピレーション『L'Esprit De Nyege 2020』(48曲入り)にも参加している。ナダ・エル・シャザリはまったくの新人だろうか。ナース・ウイズ・ウーントのようなサウンド・コラージュを導入に古代を思わせる勇壮としたコンポジションで、これもエナジーを隅々まで漲らせている。そして、最後にウォール・オブ・ガイタからブレイクコアともつれ込むユセフ・アブゼイド。ポスト・ロックやシューゲイズのアルバムをリリースしてきた人なので、少し毛色が異なるが、あらゆる種類の混沌を並べた後にさらに異質の混沌が配置されることで、これはこれで一気に異次元へと連れ去られる。エジプトでは、しかし、いったい何が起こっているのだろう……と思ってしまうほど、とにかく全体の熱気が凄まじい。ユーチューブにはヒドい音で全曲のライヴ・ヴァージョンが上がっていて、映像を見る限りはみんな楽しそうにクラブで踊っているだけなんだけれど……。

 安倍政権はまるで70年代のインドネシア政府みたいだと思っていたけれど、年明け早々、アメリカの議事堂襲撃を見てドナルド・トランプはアフリカの大統領にしか見えなくなってしまった。大規模なデモによってムバーラク大統領が退いた後もエジプトの政治は混乱を極め、通貨の暴落に加えてエチオピアとの紛争が持ち上がったりしたことを思うと、アメリカでもこれからアンダーグラウンド・ミュージックが盛り上がるのかなあなどと思ってしまう。

Pa Salieu - ele-king

 UKにおけるラップ・ミュージックはアフロビーツ、ドリルがシーンを牽引し、もっとも影響力のあるポップ・カルチャーのひとつとなった。コロナの影響でストリーミングに軸足を移したメジャー・レーベルもその勢いを見逃すことはなく、多くのラッパーがメジャー・レーベルと契約し、リリースを行なっている。
 その結果、歌詞の内容のみで頭ひとつ出ることはかなり難しくなってきているように思う。簡単に言えば似たような音楽が増えすぎてきているのだ。ラッパーは以前より音楽性を追求し、他にない「音」を創作するフェーズに入ってきている。とくに象徴的に感じたのはヘディー・ワンが昨年リリースしたミックステープ「GANG」で、Fred Again.. がプロデュースを手がけ、UKドリルを発展させた新たなエレクトロニック・ミュージックを追求していたことだ。
 そして今回紹介する Pa Salieu も、ガンビアのルーツ、そして自らの「ブラックネス」に自覚的でありながら、それをトラックとラップの双方に落とし込むプロデュース能力が光る新たな才能だ。

 ガンビアの両親のもとに生まれ、幼少期の一時期を親族の暮らすナイジェリアで過ごした Pa Salieu。その後UKに戻り、コヴェントリーで過ごしたギャングスタ・ライフが彼をラップの道へと導いた。彼自身、あまり過去のストーリーを押し出さないタイプなので詳しくはわからないものの、過去には頭と首に20発の銃撃を受けたこともあるという。その後まもなくロンドンに移住した彼が音楽制作を開始し、多くの目に触れたのは YouTube チャンネルの Mixtape Madness に公開された “Frontline” (アルバム3曲目収録)であった。

 不穏すぎるトラックと宣言するように力強くラップするスタイルはこの時点ですでに確立していた。ガンビアとガーナのルーツを持つ「先輩」ともいえる J Hus をパクっていると揶揄されることもあったが、本デビュー作はむしろ J Hus と肩を並べる存在であることを証明している。

 トラックはどれもフレッシュだ。スロータイの右腕である Kwes Darko が手がけた 1. “Block Boy” はシンセの質感・リズム共にジャンル分け不能な全く新しいギャングスタ・ラップであるし、“Frontline” をプロデュースした Jevon が手がけた 6. “Over There” もUKガラージとグライムのビート・パターンを拝借しながら、ドラムの音色を変えたり、グルーヴをずらしたり、コーラスを入れたりすることでアフロの感覚を滲ませている。分析的に書けば難しく聞こえるかもしれないが、シャッフルしたビートをさらりと乗りこなす Pa Salieu のスキルは素晴らしい。先行シングルであった 7. “Betty” も実験的なアフロビーツで攻めているし、全く出自が不明なラッパー4名を迎えたギャングスタ賛歌 10. “Active” はどこかオールドスクールで、ラップの肉体性を改めて感じさせる素晴らしい一曲だ。

 BackRoad Gee を迎えた 13. “My Family” は温度の低く不穏なダンスホール・トラックで、ジャマイカと全く異なるノリでダンスホール・レゲエを更新している。14. “B***K” ではラップの方でアフロなノリを体得している。「この音楽は黒、肌の色は黒、ライフスタイルは黒、でもあいつらはその事実を恐れる」、と歌い上げUKの人種差別を間接的に揶揄しながら、ガンビアの叔母の歌唱がサンプリングとアフロ・グルーヴを染み込ませ、一貫した表現として提示している。

 制作陣としては、UKラップのプロデューサーの他にも、カマール・ウィリアムスとのコラボで知られるジャズドラマー、ユセフ・デイズが参加していることからも、彼の耳の広さがうかがえる。

 このデビュー作品で Pa Salieu が証明したのは、自身がUKの伝統に深く根を下ろしているアフロビーツ、ダンスホール・レゲエ、ジャングル、ガラージ、UKラップ、ジャズのブラックネスを吸収し、それを現在に更新する存在であるということだ。

Madlib × Four Tet - ele-king

 これは2021年、最初のビッグなコラボとなるだろう。先月ちょびっとだけ報じられていたマッドリブとフォー・テットによるアルバム『Sound Ancestors』の詳細が、本日公開されている(ちなみにふたりの関係がはじまったのは、先日その死が明らかになったばかりのMFドゥームとマッドリブが組んだユニット=マッドヴィランのリミックスがきっかけだったそう)。
 マッドリブが作曲を、フォー・テットがエディットおよびアレンジを担当した同作は1月29日にリリース、それに先がけ BBC6 のメアリー・アン・ホッブズの番組で放送される予定。ほぼ同時期に頭角を現してきたLAアンダーグラウンド・ヒップホップの立役者と、UKエレクトロニック・ミュージックの奇才、両雄が引き起こす未知の化学反応に注目だ。

  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171 172 173 174 175 176 177 178 179 180 181 182 183 184 185 186 187 188 189 190 191 192 193 194 195 196 197 198 199 200 201 202 203 204 205 206 207 208 209 210 211 212 213 214 215 216 217 218 219 220 221 222 223 224 225 226 227 228 229 230 231 232 233 234 235 236 237 238 239 240 241 242 243 244 245 246 247 248 249 250 251 252 253 254 255 256 257 258 259 260 261 262 263 264 265 266 267 268 269 270 271 272 273 274 275 276 277 278 279 280 281 282 283 284 285 286 287 288 289 290 291