Home > News > SOPHIE × Autechre - ──オウテカがソフィーをリミックス、その長い長い物語
2010年代半ば、いわゆるバブルガム・ベースの立役者のひとりとして頭角をあらわしたスコットランドのプロデューサー、ソフィー。去る1月14日、彼女の出世作となった “BIPP”(2015)の、オウテカによるリミックスが公開されている。リリース元は、彼女を世に認知せしめたグラスゴーのベース系レーベル、〈Numbers〉。
なんでも、ソフィーは「じぶんの曲のリミックスはやらせない。ただし、オウテカを除いて」というスタンスを掲げていたらしい。そんなわけでレーベルは『PRODUCT』が出た2015年、オウテカにコンタクトを試みるも、彼らがほかのプロジェクトにとらわれていたため実現には至らず。
諦めきれなかった〈Numbers〉は『Oil Of Every Pearl's Un-Insides』が出た2018年、あらためて『PRODUCT』から可能な限りの素材を集めてオウテカに送りつけたそうだが、このときかのデュオはライヴに集中していたのだった。
そして2020年。ようやくオウテカから「遅くなってごめん、まだ使う機会があればいいんだけど」と、今回のリミックスのWAVが送られてきたのだという。
じつは、さらに物語がある。遡ること18年前。オウテカとなにかをやりたい、という今回の〈Numbers〉のアイディアはもともと、オウテカがキュレイターを務めた2003年の《オール・トゥモロウズ・パーティーズ》(紙エレ最新号をお持ちの方は55頁を参照)の際に浮かんだものだったそうだ。その2年後、〈Numbers〉は──共同設立者の Calum が当時〈Warp〉で働いていたことも手伝って──グラスゴーのアートスクールでのショウにオウテカをブッキングすることに成功。そのときひっそり録音されたライヴ音源は、『Untilted』と『Quaristice』の中間のようなサウンドだったという。
同2005年、ソフィーはその音源がネットにアップされているのを発見し、大いに触発される。彼女はそこでオウテカが使用していたエクイップメントをすぐさま購入、それらの機材によって “Nothing More To Say” や “BIPP”、“LEMONADE” といった初期代表曲が生み落とされることになった。つまり、ソフィーの登場そのものがオウテカによってもたらされたとも言えるのだ。
オウテカ側の話もつけ加えておこう。『SIGN』リリース時のオフィシャル・インタヴューのなかでショーンは、ずいぶんまえにソフィーのリミックスを依頼されたものの、送られてきた大量のステムをじぶんたちのシステムで作動・再生させることができなかった、と語っている。Maxの処理があまりにもリアルタイムすぎて、リミックスのために必要な作業ができなかったのだ。ゆえに彼らはエイブルトンにモジュールを移殖することを決意するも、今度はその作業だけで半年もの時間を食ってしまうことになる。かくしてソフィーのリミックスは一度は頓挫してしまう……のだが、その移殖作業によってもたらされた新たなセットアップのおかげで『SIGN』が完成したのだから、じつはソフィーもオウテカに影響を与えていたということになる。
おもしろい相互作用でしょう?
というわけで、「BIPP (Autechre Mx)」のアナログ盤は2021年1月28日にリリースされる。B面には、『PRODUCT』の録音中に制作された未発表音源 “UNISIL” を収録。ソフィーの初期成功作がオウテカ流ファンクによって転生させられる様を聴きながら、アーティスト同士の不思議なコレスポンダンスに想いを馳せようではないか。
SOPHIE
BIPP (Autechre Mx)
Numbers
NMBRS67
Vinyl out 28th January, 2021
A. BIPP (Autechre Mx)
B. UNISIL
http://nmbrs.net/releases/sophie-bipp-autechre-mx-nmbrs67/