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まさに名は体を表す、そんな鋭利な刺激、そして躍動感に満ちたグルーヴに貫かれた、現行ベース・ミュージック~テクノの先鋭的なコンピといえるだろう。本作はブリストル出身のアーティスト、Batu 主宰の〈Timedance〉のレーベル・コンピで、コンピ・リリースは2018年の『Patina Echoes』から2作目となる。また本作はレーベル設立5周年目を象徴する、節目の作品でもあるようだ。収録曲に関してはアナログは8曲入りの2枚組LPと4曲入りのサンプラーEPで構成、デジタルのアルバムは両方の収録曲を合わせた形でリリースされている。LPには冒頭の Kit Seymour を除いて、Batu、Ploy、Bruce などレーベルの屋台骨と言えるアーティストを中心に、Happa やメキシコの新鋭、Nico といった他のレーベルなどで活躍するベース系のアーティスト、そしてゲスト的にテクノ・シーンから Peter Van Hoesen の楽曲を収録。そしてEPの収録アーティストは本レーベルと他レーベルからもリリースしている Metrist を除くと、ほぼニュー・カマーといって差し支えないアーティストが列んでいる。という感じなので、12曲総体で聴くならデジタル・アルバムをオススメする(が、音響的にすごいことになっているのでサブスクの圧縮音源ではなく、Bandcamp あたりでロスレス音源を買うことをオススメする)。
〈Timedance〉は、そのシングル・リリースですでにレフトフィールドなテクノとベース・ミュージックにおいてまさにトップ・レーベルといえる地位を築いている。Batu はブリストル出身、その他のリリースに関してもロンドンやリーズなどさまざまな出自のアーティストをリリースしているが、Bruce、Via Maris、本作には参加していないが Lurka などブリストル勢も多い。またBatu、Bruce、Via Maris あたりはざっくり言って〈Livity Sound〉(もしくはサブ・レーベル〈Dnuos Ytivil〉)からのリリースで注目されてきたアーティストだ。さまざまな出自のアーティストを出す〈Timedance〉をブリストル・サウンドのレーベルとくくってしまってはいけないが、ピンチの〈Tectonic〉を第一、さらにその下の世代を巻き込んだ〈Livity Sound〉を第二世代とすれば、イメージ的には半分はブリストル・ダブステップのそうした血脈の第三世代のレーベルと捉えることもできるラインナップでもある。2000年代にダブステップを養分にブリストル・サウンドをひとつ前に進めたピンチ。さらに、そのピンチも含めて2010年代のブリストル・サウンドの先鋭性が推し進められたのは、やはりアブストラクトな電子音響〜レフトフィールドなテクノをそこに飲み込んだことが要因にある。ペヴァリストの〈Livity Sound〉を筆頭に(そしてピンチの〈C.O.L.D.〉)、そして〈Timedance〉もその系譜にあることは間違いない。またアブストラクトな電子音響も含めて言えば、それはヤング・エコー周辺の音源にも言えるだろう。本作ではそんな血脈の上で醸成された、新たなベース・ミュージックとテクノの展開というものを聴くことができるのだ。
Batu の強烈なキックの連打によるインダストリアル・ダンスホール、プラスティックマンの “スパスティック” を彷彿とさせるスネア・ロールにハマる Ploy のトラック、前作コンピに続き本作でもアフロ・パーカッションの援用によるサイケデリックな空間を作り上げたメキシコの Nico、またニュー・カマーにしても、モジュラーシンセのヒプノティックなトラックをヘヴィー級のベースで痙攣させた Kit Seymour、エイフェックスなドリルンベース~ブレインダンスなジャングル・ビートを〈Timedance〉印の刺激的なビートに仕立てたような Cleyra、そして強烈な印象を持ったのはヴォイス・サンプルを使ったラフなグルーヴがネクスト・レベルなシカゴ・ハウスの転生を感じさせる Metrist のトラックだ。自身のテクノ・サイドな轟音グルーヴをそのままUKGなリズムへと導入した Peter Van Hoesen がむしろかすんでしまうような感覚すらある。それほどまでに刺激に満ちたビートと、電子音響的にダブを推し進めたレフトフィールドなサウンド・デザインが襲いかかってくる。とにかく本作は、テクノとベース・ミュージック、その現時点のアップデートされた最高の交点を聴くことができる、そんなコンピとなっている。
河村祐介