「W K」と一致するもの

Masabumi Kikuchi - ele-king

 代表作『Susto』(1981)で知られるジャズ・ピアニストの菊地雅章。マイルス・デイヴィスやエルヴィン・ジョーンズといったレジェンドたちとセッションをおこなってきた彼は、じつは他方で──原雅明(著)『アンビエント/ジャズ』でも明かされていたように──クラフトワークブライアン・イーノに熱中、とくにイーノのレコードはぜんぶ集めていたそうで、自身でも深くシンセサイザーと向き合っている。その成果が『六大(ろくだい)』と呼ばれる、1988年に送り出された6枚のアルバム(『地』『水』『火』『風』『空』『識』)なのだけれど、残念ながらそれらはいつの間にか忘れられた作品となってしまっていた。これが2026年3月、ついにリイシューされるというのだから、事件といっていいだろう。マスタリングはテイラー・デュプリー。フィジカル盤はSACDと、そして今回ヴァイナルでも初めてリリースされる。2026年の見過ごせないリイシュー案件、ぜひともチェックしておきたい。

2026.03.25発売
菊地雅章 / 六大 (地・水・火・風・空・識)

日本を代表するジャズ・ピアニスト、菊地雅章が遺した唯一無二のエレクトロニック・ミュージック『六大=地水火風空識』が遂に再発!

名盤『Susto』リリース後に制作された幻の音源『六大=地水火風空識』が、坂本龍一からの信頼も厚かったテイラー・デュプリーによるリマスタリングで、各6タイトルSACD(ハイブリッド盤)と2枚組レコードとして蘇る。

「15時間の映像のために制作された音楽『六大=地水火風空識』は、菊地雅章が遺した唯一無二のエレクトロニック・ミュージックである。『Susto』と『One-Way Traveller』のエレクトリック・ジャズ/ファンクを経て、80年代の大半がこの音楽の制作に費やされた。ピュアな電子音と向き合った記録であり、ジャズとエレクトロニック・ミュージックのミッシング・リンクを埋める、世界的にも稀有な作品だ。
テイラー・デュプリーのリマスタリングによって、これを再び世に紹介できることは喜び以外の何ものでもない。」 (原 雅明 ringsプロデューサー)

【リリース情報】
アーティスト名:菊地雅章(キクチ・マサブミ)
アルバム名:六大(ロクダイ)
発売日:2026.3.25
フォーマット:CD(SACD HYBRID仕様), 2LP
価格:CD ¥4,400 (税込) / 2LP ¥7,500(税込)
レーベル:rings
オフィシャルURL:https://www.ringstokyo.com/masabumikikuchirokudai/

※収録秒数が、多少変更になる可能性がございます。再発となるジャケットは、新規デザインを予定しております。

All Selections Composed by MASABUMI KIKUCHI
Real-Time Synthesizer Performance: MASABUMI KIKUCHI
Recorded OCTOBER ‘84-MAY ’86 at CRACKER-JAP STUDIO, Brooklyn, NY
Re-Mastering: Taylor Deupree
Re-design: Kohei Nakazawa

地・EARTH

<SACD HYBRID仕様>
品番: RINC134
JAN: 4988044135918

CD Tracklist:
1. Reggae Triste(9'45″)
2. Andes(11'28″)
3. Earth 61(13'06")
4. Cockroach's Dilemma(10'07")
5. SAYOKO(8'05″)

<2LP>
品番: RINR19
JAN: 4988044135970

LP Tracklist:
A1. Reggae Triste(9'45″)
A2. Andes(11'28″)
B1. Earth 61(13'06")
C1. Cockroach's Dilemma(10'07")
C2. SAYOKO(8'05″)

水・WATER

<SACD HYBRID仕様>
品番: RINC135
JAN: 4988044135925

CD Tracklist:
1. Moon Splash(12'33")
2. Spectrum(15'16")
3. Aurola(15’11”)
4. Blue Spring(11’58”)
5. Water Song(8'18")

<2LP>
品番: RINR20
JAN: 4988044135987

LP Tracklist:
A1. Moon Splash(12'33")
B1. Spectrum(15'16")
C1. Aurola(15’11”)
D1. Blue Spring(11’58”)
D2. Water Song(8'18")

火・FIRE

<SACD HYBRID仕様>
品番: RINC136
JAN: 4988044135932

CD Tracklist:
1. Fire Dance I (12'21")
2. Fire Dance II (7'35")
3. Fire Dance III (8'23")
4. Fire Dance IV (20'49")
5. Fire Dance V (7'35")

<2LP>
品番: RINR21
JAN: 4988044135994

LP Tracklist:
A1. Fire Dance I (12'21")
B1. Fire Dance II (7'35")
B2. Fire Dance III (8'23")
C1. Fire Dance IV (20'49")
D1. Fire Dance V (7'35")

風・WIND

<SACD HYBRID仕様>
品番: RINC137
JAN: 4988044135949

CD Tracklist:
1. WIND I,II(23’15")
2. WIND III(12'19")
3. WIND IV,V(21'54")

<2LP>
品番: RINR22
JAN: 4988044136007

LP Tracklist:
A1. WIND I,II(23’15")
B1. WIND III(12'19")
C1. WIND IV,V(21'54")

空・AIR

<SACD HYBRID仕様>
品番: RINC138
JAN: 4988044135956

CD Tracklist:
1. AIR I(6'46")
2. AIR II(23'25")
3. AIR III(14'12")
4. AIR IV,V(13'18")

<2LP>
品番: RINR23
JAN: 4988044136014

LP Tracklist:
A1. AIR I(6'46")
B1. AIR II(23'25")
C1. AIR III(14'12")
D1. AIR IV,V(13'18")

識・MIND

<SACD HYBRID仕様>
品番: RINC139
JAN: 4988044135963

CD Tracklist:
1. MIND(49'58”)

<2LP>
品番: RINR23
JAN: 4988044136014

LP Tracklist:
A1. MIND I
B1. MIND II
C1. MIND III
D1. MIND IV


photo by Abby Kikuchi

菊地雅章 Masabumi Kikuchi
ジャズ・ピアニスト。1939年10月19日東京生まれ。東京芸術大学付属高校作曲科を卒業後、1958年に18歳でプロとして活動開始。66年に渡辺貞夫カルテットに参加し、67年に日野晧正と日野=菊地クインテットを結成する。68年にバークリー音楽大学に留学し、帰国後の69年に菊地雅章セクステットを結成する。73年からニューヨークに移住し、77年からはギル・エヴァンス・オーケストラに在籍する。マイルス・デイヴィスのリハーサルへの参加を経て、81年にシンセサイザーを導入した『Susto』と『One Way Traveller』を発表。その後、80年代の大半を「六大」のエレクトロニック・ミュージックの制作に費やす。88年にオールナイト・オールライト・オフホワイト・ブギ・バンド(AAOBB)を、90年にはゲイリー・ピーコック、ポール・モチアンとの自身のトリオ、テザード・ムーンを結成する。96年には吉田達也、菊地雅晃とスラッシュ・トリオも結成し、同時に後藤俊之らハウスDJとの制作にも取り組んだ。また、ソロ・ピアノのライヴ活動も行った。2012年、ポール・モチアン、トーマス ・モーガンとのトリオ作『Sunrise』をECMから発表。2015年7月6日、ニューヨークの病院にて死去。

 ものすごくざっくりと言えば、ロックンロールが生まれたとき、はたまたブラック・ミュージックと出会ったとき、革命の主体は若者にあるんじゃないのか、いや、白人社会につれてこられた黒人にあるんじゃないか、などと真面目に考え、概念化したアカデミシャンが英国にはいて、それがいまも面々と続いている。それがカルチュラル・スタディーズなどと呼ばれたり、あるいはマーク・フィッシャーのような人の著作になったりしているだけである。その思想と音楽は、いまも昔も、お互いある種の緊張状態を保ちながら、更新されている。
 ジョン・サヴェージはこう言ったことがある。パンクは本を読んだ。
 そんな英国で生まれた思想(批評)のなかでも、文化研究者たちの夢、そしてその最前線のラディカルな部分を切り取って一冊にまとめました。日本では初めての試みです。だから敢えてこう記しています。「英国現代思想入門」、濃い内容になりました。どうぞよろしくお願いします。

目次

【インタヴュー】
國分功一郎 今こそ階級闘争を仕掛けるとき──イギリス滞在時に感じたこと
 ▶イギリスと日本の違い│社会の幼年期に注目する必要がある│こちらから階級闘争を仕掛けなければならない│自然と満足できるように│新しい病としての「うつ病」│今こそフィヒテを読みなおすとき
毛利嘉孝 自分たちの知をつくること──大衆文化にラディカルな思想が流れこむ
 ▶イギリスだからこそカルチュラル・スタディーズは生まれた│知をアカデミズムに閉じこめない風土│スチュアート・ホールの功績│ストリート出身のポール・ギルロイが変えたこと│ヨーロッパの理論はイギリスでどう受けいれられたのか│マーク・フィッシャーが残したもの
田崎英明 ジェンダーも人種も、階級とセットで考えよう──アイデンティティ・ポリティクスが批判される背景
 ▶加速主義を切り捨ててはいけない│なぜ労働はなくならないのか│イギリスとフランスは交流が盛ん│イギリスにはアルチュセール派の影響が大きい│マルクス主義とフェミニズム/クィア理論は共闘できるか│シニシズムに陥らないために
宮﨑裕助 私たちの世界には根本的に幽霊がいる──デリダ研究者から見たマーク・フィッシャー
 ▶デリダ研究を牽引していたのは英語圏だった│ロンドンは世界各地から知が集まる場所│亡命知識人たちがつなぐ世界│ポップ・カルチャーに思想が侵入する│もともとの憑在論の意味について│イギリス現代思想の未来

【マーク・フィッシャー著作案内】
『資本主義リアリズム』(仲山ひふみ)/『わが人生の幽霊たち』(平山悠)/『奇妙なものとぞっとするもの』(大岩雄典)/『K-PUNK』(宮田勇生)/『ポスト資本主義の欲望』(安藤歴)/その他のテクスト(仲山ひふみ)/ゼロ・ブックスとリピーター・ブックス(仲山ひふみ)

【ポール・ギルロイの功績】
黒い大西洋(鈴木慎一郎)/ポストコロニアル・メランコリア(有元健)

【コラム】
道は一本ではない、とマーク・フィッシャーの音楽批評は示している(イアン・F・マーティン/青木絵美訳)
ポピュラー文化との共鳴にこそ興奮するイギリスの論客たち──レイモンド・ウィリアムズからバーミンガム学派へ、そしてフィッシャーへ(野田努)
成人教育はポストフォーディズムの侍従か──マーク・フィッシャーのカルチュラル・スタディーズ的出自(河野真太郎)
レイ・ブラシエと哲学の未来(仲山ひふみ)
加速主義以後の加速主義と加速主義的なもの(幸村燕)
憑在論的メランコリアを超えて──マーク・フィッシャーとサイバーフェミニズムの行方(清水知子)
月曜の朝のかすかな光──マーク・フィッシャーと加速主義(水嶋一憲)
鬱病リアリズムという提案──生き延びることの肯定に向けて(杉田俊介)
『ポスト資本主義の欲望』講義の続き──欲望の向きをいかに定めようか(大橋完太郎)
旅をして夢をみる──《消滅していく土地について》とふたつの「イーリーなもの」(原塁)
亡霊の足跡(あるいはDo It With Style)(飯田麻結)
イギリス現代アートにおけるマーク・フィッシャーの影響──オトリス・グループとスペキュラティブ・テートを中心に(山本浩貴)
オーウェン・ハサリー──闘争するモダニスト(星野真志)
馬鈴薯と袋と資本とその主義(ファシズム)(長原豊)
ぎょっとするホブゴブリンがブリテンのあちこちではびこっている──イギリスにおけるマルクス主義の大雑把な見取図(小林拓音)

[商品情報]
書名:ポピュラー文化がラディカルな思想と出会うとき──マーク・フィッシャーとイギリス現代思想入門
監修:仲山ひふみ+ele-king編集部
発行:株式会社Pヴァイン
発売:日販アイ・ピー・エス株式会社
発売日:2025/12/26
判型:菊判
ページ数:256頁
定価:本体2,500円+税
ISBN:978-4-910511-98-6
公式HP:https://www.ele-king.net/books/012055/

Koichi Makigami - ele-king

 巻上公一ほど、とらえどころのない表現者はいない。「ミュージシャン」という枠を超え(ヴォイス・パフォーマー、アヴァンギャルドの巨匠、詩人、演劇家……)、活動の領域さえも超えて(NYの前衛シーン、欧州の即興音楽、そして中央アジアの伝統音楽界)、そのすべての場所で絶大なリスペクトを集めている。
 ヒカシュー(いまだテクノポップと括られているが、そのルーツはロキシー・ミュージックとデレク・ベイリー、寺山修司などにある)としての50年近い活動、ジョン・ゾーンとの1995年から続く交流(〈Tzadik〉から4枚のソロ作をリリース)、トゥバ共和国やシベリアでのホーメイ伝承……。70歳を超えてなお、その勢いは衰えるどころか、近年さらに多角的な広がりを見せている。2024年、ジョン・ケージやジャスパー・ジョーンズによって設立されたニューヨークの〈Foundation for Contemporary Arts〉(通称FCA)から「Grants to Artists」(アーティスト章)を授与された話も、彼のおそろしく広範囲な活動における結果の、ほんの一部に過ぎない。

 直近の活動も驚異的だ。11月30日には左右社より第3詩集『眼差から帰還する』を上梓。12月3日には、40年以上を経てなお「今の音」を更新し続けるヒカシューの27枚目のオリジナル・アルバム『ニテヒナルトキ 念力の領域』をリリース。さらに12月24日には、初の口琴によるソロ・アルバム『こゆるぎの酩酊』をリリースしたばかりだ。  いったいこの驚異的なアーティストのどこから入り込めばいいのか、思わず逡巡してしまう人も少なくないだろう。だが、結論から言えば「どこからでも良い」のである。  能、文楽、歌舞伎などの発声をフェイクとして取り入れつつ、即興と前衛の文脈でユーモラスに再構築するそのパフォーマンスは圧倒的で、世界を探しても、こんなアーティストは彼ひとりしかいないのだ。
 (編集部は、12月に開催された詩人・白川かずこのイベントにて朗読する/口琴を演奏する巻上さんを観に行きました。ただ、そのイベントでは、その日上映された、AACMのダグラス・ユワート(sax)+豊住芳三郎(dr)をバックに詩を朗読する70年代の白石かずこの映像にぶっ飛ばされたのでした

 12月30日(火)には、ヒカシューのライヴが吉祥寺スターパインズカフェにて開催される。また、年明け早々には「巻上公一古希記念ライヴ」が同会場にて4日間にわたり行われる。以下の豪華な顔ぶれとともに繰り広げられるステージは、まさに必見。ぜひ、この機会に体感してほしい。

【巻上公一 古希記念ライヴ 4Days】
1月22日(木) 巻上公一 / カフカ鼾(Jim O’Rourke、石橋英子、山本達久) / 坂田明
1月23日(金) 巻上公一 / 蜂と瓜 / マヌルネコ / 倍音s / 内橋和久
1月24日(土) 中西レモン&すずめのティアーズ / ヒカシュー / 四家卯大 / 吉森信(key)
1月25日(日) ヒカシュー / イノヤマランド / ドメスティックミタバンド / 吉森信(key)


第3詩集『眼差から帰還する』
27枚目のオリジナル・アルバム『ニテヒナルトキ 念力の領域』
口琴によるソロ・アルバム『こゆるぎの酩酊』

Eris Drew - ele-king

 プレイリストは便利だ。こんな気分で、この雰囲気で、このジャンルで、この時代で。いまや、そのセレクトすらも個人の聴取履歴をみてAIが瞬時にやってのけるのだから。ためしにサブスクで「アンビエント・ディープ・ハウス」なる単語を適当に叩いてみたところ、早速プレイリストを見繕ってくれたし、それが意外なほどに綺麗にまとまっているのだ。サブスクの時代、プレイリストの時代、AIの時代……。なんて便利な時代。では、こんな時代にDJのミックスCDを聴く理由は?

 ベルリンの〈!K7〉によるシリーズ『DJ-Kicks』から、活気のほとばしるミックスが届けられた。同シリーズは圧倒的なデトロイト・パワーを見せつけた2023年のセオ・パリッシュが記憶に新しいが、デトロイト勢のみならず間違いのないDJをカタログに揃えるこの長寿シリーズに、シカゴのヴァイナルDJ、エリス・ドリューが仲間入りした。
 トランスジェンダーのレズビアンを自認する彼女は、90年代にシカゴ第2世代のリル・ルイスが地下でおこなったウェアハウス・パーティでハウスに遭遇すると、ほどなくして自身のような孤独を抱えた「はみ出し物」が受け入れられる場所は、レイヴ・カルチャーのなかにあると気づく。DJとしての特徴は何と言っても、“こんな時代” に逆行するかのごとく、便利とは言いがたいヴァイナルに対する偏愛を持っていることだろう。それは、昨今のレコード・ブームなる生半可なものではない。8000枚に及ぶコレクションを携え世界中を飛び回る彼女は、針圧はおろかプレイする際の機材スペックにも並々ならぬこだわりをもつ。2023年〈RDC〉でのDJ NOBUとのB2Bで初めて彼女のセットを体験したが、ミキシングを基本とする四つ打ちが出自にありながら、時折大胆なスクラッチやジャグリングをも駆使するアグレッシヴなスタイルは、いまでもはっきりと目に焼き付いている。今回のミックスもそのスタイルに違わない、79分に及ぶオールヴァイナル・ミックスだ。録音/制作は、『ele-king vol.35』でも取り上げた彼女の鮮烈なデビュー作『Quivering in Time』と同じく、自然豊かなニューハンプシャーの小屋にて。

 序盤、ゼン・エクスペリエンスによるブレイクス曲が投入されるが、Discogsのアーティスト・ページには12インチがひとつのみ。あるいは、トーカ・プロジェクト “Toka Love Project” は、ハウサーなら外せない90年代ディープ・ハウスのレーベル〈Guidance〉からの知る人ぞ知る一品。かなりディープなところまで連れて行く。しかしエリスは好事家向けのディガー的ゲームは展開しない。ここにはモービーのような大御所の名前もあれば、DJガースの魅惑的なアシッド、さらにジョシュ・ウィンクの愛したレイヴ・クラシック、カリスト “Get House” までスピンされる。あるいは、エリスのパートナーであり〈T4T LUV NRG〉を共同運営するオクト・オクタとの共作を含む自身の曲もいくつかあるのだが、極め付けは “Momentary Phase Transition” で、ニューヨークの伝説的カッティング技師に頼み込み、この完全な新曲を『DJ-Kicks』にミックスするためにアセテート盤を作ったというこだわりぶりをみせる。アセテート盤のような著しく耐久性の低い素材において、彼女のプレイ・スタイルでミックスなど可能なのか。しかし脆い溝に針を落とし、彼女はやってのけた。
 フロアに居場所を見出し、90年代を駆け抜けた彼女のブレイクビーツ/レイヴ/ハウス・サウンドが詰まっており、それが自身の曲、クラシックあるいはオブスキュアにかかわらずひとつの物語としてミックスされる。レコードでは、非の打ちどころのない繋ぎは不可能だろう。針と溝が擦れる微かなノイズ、あるいは微妙なビートのズレも時々生じるかもしれない。完全とは言い難い生々しさは、彼女の肉体が刻んだリズムのドキュメンタリーをヴァイナルという物質を通じて観ているようだ。綺麗にまとまったプレイリストが溢れる “こんな時代” だからこそ、エリスの身体を通じた不完全さがこのDJミックスを、単なる選曲集ではなく生々しい物語たらしめている。それこそが、ヴァイナルへの偏執をみせるこの作品が輝いている理由なのだ。

Jay Electronica - ele-king

 ジェイ・エレクトロニカという名の「謎」が帰ってきた。しかも、実にあっけらかんとした明るい笑みを浮かべて。自分自身の宇宙のタイムスケジュールに基づき、極めて正気なやり方で、わずか5日間のうちに5つの作品をリリースしたのだ。
 多くのアーティストが望み、多くのラッパーが部屋に足を踏み入れる際に「持っている」と言い張るもの、それが「リップ(威信)」だ。しかしジェイは異種の生き物である。スワッグ(虚勢)を自慢したり、大勢のセキュリティやアシスタントを引き連れたり、単に「なんとなく」という理由だけでわずか20kmの距離をプライベートジェットで飛んだりするような人間ではない。ジェイ・エレクトロニカはそのような世界には住んでいないが、まるでドクター・ストレンジが新たな魔術やポータルを呼び出すかのように、それ以上の尊敬を勝ち得ている。
 ヒップホップ界に25年身を置き、技術的な記録としてのデビュー(MySpaceでだ!……MySpaceを覚えているだろうか?)は2007年(後にオフライン化)であったにもかかわらず、ジェイのアルバムは片手では数えきれなかった。これまでは。いまや、両手が必要だ。だが、それ以上はいらない。

 おそらく49歳の誕生日を祝うためだろうか(確証はないので引用しないでほしいが)、ジェイは5日間で1枚でも2枚でも3枚でも4枚でもなく、5つもの作品をリリースした。まずInstagramで発表され、続いてTwitter(X)のアカウント、そして〈Roc Nation〉が続いたこの衝撃的なニュースは、完全なサプライズだった。まるでエイプリルフールのジョークのようだが、それが届けられたのはどんよりとした9月だった。

 文字通り、彼が3枚目のアルバムをリリースした瞬間にこの記事を書き始めたのだが、インターネット上の噂で「19枚のアルバムを出すかもしれない」と囁かれたため、筆を止めざるを得なかった。だから、状況が落ち着くまで数日待った。この地球外生命体のような事態を百科事典的に紐解くため、少し時間をかけて整理させてほしい。まず、これを見てくれ。

  Act I: Eternal Sunshine (The Pledge) /永遠の陽光(誓約)— 2025年9月17日
  Act II: The Patents of Nobility (The Turn)/貴族の特許状(転機) — 2025年9月18日
  A Written Testimony: Leaflets /書面による証言:リーフレット— 2025年9月19日
  A Written Testimony: Power at the Rate of My Dreams /書面による証言:夢の速度で流れる力— 2025年9月19日
  A Written Testimony: Mars, The Inhabited Planet /書面による証言:火星、居住可能な惑星 — 2025年9月21日

 ジェイ・エレクトロニカという男において、「苦悩するアーティストがスタジオに引きこもり、翌年に新作を出す」という古くからの不測の事態やロマンチックなステレオタイプは当てはまらない。彼は業界を気にせず、業界だけで生きているわけでもなく、業界から自尊心を得ているわけでもない。1週間以内に5枚のアルバムをリリースするという発想は、ラップ界では前代未聞であり、業界の幹部たちからは恐れられることだ。
 しかし、主流に抗うことこそが誰よりも彼に似合っている。適切な説明をするならば、彼はメインストリームのラップ・ゲームの圏外に身を置きつつ、同時にその中心に存在している、ということだろう。少なくとも世界中で、このような空間に生息しているラップ・アーティストは他にいない。Jay-Zの親友であり、彼のレーベル〈Roc Nation〉に守られ、エリカ・バドゥの親友かつ相談相手であり、彼女の子供の一人の父親でもある。その一方で、ヒップホップ業界により意図的に深く組み込まれている数多くのプロデューサーやラッパーたちとも、電話一本でつながる距離にいるのだ。

 ジェイ・エレクトロニカという謎は、彼が最初に登場したときや、その後の『What The Fuck is a Jay Electronica?』(2012年)の頃の初期の熱狂とはまた別物だ。当初から彼は際立っていたが、スタイル的には、ケンドリック・ラマーをはじめとする多くのアーティストが好んだ「1小節に100万語を詰め込む」タイプのラップとまだ競い合っていた。しかし、リークや客演を重ね、「Exhibit A」(2009年)のようなシングルを経て、彼は独自の地位を確立し、その台座を勝ち取った。
 何年もラジオから音沙汰がなく、Instagramで難解な投稿を繰り返していても、一度ヴァースがリークされたりトラックがドロップされたりすれば、ファンは狂喜乱舞し、あらゆる単語、引用、フレーズを徹底的に解剖する。その磁力を持つ声の明快さと語彙、より正しい道へと導く父親のような言葉のジェスチャー、そして物語を語るという絶対的な意図が、単に誰にも理解できないトラックを作るために言葉を並べるだけの業界の多くの人びとから彼を隔てている。
 かつて誰かに「なぜジェイを聴くべきなのか」と聞かれたことがある。私はこう答えた。ジェイはサビ(コーラス)に辿り着くためにヴァースや節を急いで終わらせようとは決してしない、と。そもそも、彼はサビ(コーラス)を書かないことも多い。すべての言葉が重要で詩的であり、それはまるで村の人びとに歴史を語り継ぐセネガルの語り部「グリオ」のようだ。ジェイは「変な奴」として知られているが、その「変な奴」は、イスラム教の戒律への全面的な献身を軸とした難解な情報の断片を丹念に紐解き、聖書の証言、アウトサイダー的な思考、そしてモス・デフのような巧みさが絡み合う濃密なウェブを作り上げる。
 彼の言っていることは聞き取れるし、その語りに首を振りながら、その過程で何かを学ぶことができる。彼の最高のトラックを聴くことは、言葉遣い、テナー(音域)、聴衆の理解への予見が最優先される説教者の礼拝に出席するようなものだ。

 さらに重要なのは、彼が「時間」を気にしていないことだ。夏のリリースのスケジュールに間に合わせようと急ぐことなど、クソ食らえだと思っている。はっきりさせておくと、9月の5つのリリースのうち、『Act 1』と『Act 2』は新作ではない。デジタルのものは誰かのウェブサイトやハードドライブのどこかにあるはずだが、1と2はどちらも一瞬現れては消えていた。『Act 1』は、ジョン・ブリオンによる映画『エターナル・サンシャイン』のスコアをインストに使用した、2007年のムード溢れる15分のミックステープだ。MySpaceを通じて公開され、20年近くインターネット上を漂っていたが、公式なものではなかった。
 『Act 2』はリークされ、Jay-ZのTidal(※レーベルではなくストリーミングサービス)を通じてリリースされたが、同じ月(2020年)のうちに葬り去られ、5年経ってようやく再浮上した。先に述べたように、ジェイは時間を気にしない。リークの数ヶ月前に出された2020年の『A Written Testimony』の勢いがあったにもかかわらず、今年までそれを再び世に出そうとアクセルを踏むことはなかった。そして、2025年の『A Written Testimony』シリーズは形式上は新作だが、正直なところ、それらのトラックがいつ制作されたのかはわからない。録音された音楽に対するジェイの特異な性質は、彼の全アウトプットが、制作時期に関わらずいつでも貸し出し可能な彼専用のライブラリであるかのように感じさせる。時間は捉えどころがない。

 アウトプットは少なく限定的だが、熱狂的なファンにとってそれは許容範囲内だ。しかし、2020年の『A Written Testimony』と、今回の2025年の5つの新作を比較せずにはいられない。喩えるなら、2020年の『A Written Testimony』は銀座の職人が握った寿司やおにぎりのようだった。対して、2025年のリリース群(『Act 1』と 『Act 2』、そして3つのアルバム『Power at the Rate of My Dreams』『Mars, The Inhabited Planet』『Leaflets』)は、地元の祭りの屋台で手早く作られた焼きそばに近い。
 2020年の『A Written Testimony』は、心地よく調和した鋭いトラックのコレクションだった。ハードなビートから、鋭い感情、さらには部分的な信仰心まで、繰り返し読み解くことができた。一方、『Act 1』は瞑想のようであり、『Act 2』は2020年のアルバムに近い、より弾むようなトラックと流れるようなビートがある。車で仕事に向かうなら、『Life on Mars』や『Bonnie and Clyde』を再生するといい。

 2025年の3つの『A Written Testimony』は、まさに「証言(Testimonies)」が、別々のトラックでありながら編み合わされたもののようだ。各アルバムが、辛うじてアルバムと呼べる程度であることは心に留めておいてほしい。EPと呼ぶべきだろうか? 私の不満のいくつかは間違いなくここにある。各EPが死ぬほど短いのだ。どれも20分をかろうじて超える程度だ。それに加えて、使用されているサンプルの量が異常だ。3分のトラックであっても、ジェイが物語を語っているのはわずか1分程度だったりする。

 ここでのプロデューサーワークは、J・ディラやパブリック・エネミーのような意味で精巧に作られたものではない。サンプルは延々と流され続け、カット&ペーストされて再解釈されたり踊らされたりする「音のオブジェクト」としてではなく、歴史の遺物のように、そのオリジナルの意味をそのまま保存しようとしている。だから、もしプレイボーイ・カルティのようなバンガー(盛り上がる曲)を期待しているなら、ひどく失望することになるだろう。そして、もし君が1990年以降に生まれたのなら、同情する。選ばれたサンプルの多くは、君たちが生まれるずっと前の映画やインタヴュー、その他のメディアからのものだからだ。出典を知らなければ、なぜそのサンプルが面白いのかを理解するのは難しい。
 だが、それは許される。ジェイ・エレクトロニカが口を開けば、リスナーは一語一句、あらゆる引用を精査し、Wikipediaやインターネットを駆使して理解しようとするからだ。

 『Power at the Rate of My Dreams』に収録された、ラッパーのウエストサイド・ガンとの“Best Wishes”を例に挙げてみよう。3分間のトラックで、ジェイがラップしているのはわずか1分だが、その言葉は……こんな感じだ。

「マイクを渡された瞬間に 仕事に取り掛かる 俺の舌は マスター・ファード(ネイション・オブ・イスラムの創始者)自身の手によって 絹へと変わる 『トップ5』リストにいる奴らなら 誰にだって深手を負わせてやるさ もし俺が 蛇から進化したドラゴンと戦っていなければな」

 そして

「左 右 左 右 左 右 夜に木の葉のように 俺の夢のなかを漂う」
「信じる者たちのための 蝶 心臓が標的で 鼓膜が受信機だ」

 ジェイは難解な知識、とくにイスラム教とUFOのファンだ。それらと、彼が信仰から感じる光とともに人間の悲惨な存在について語る心揺さぶる能力の組み合わせは、『Leaflets』収録の“Is It Possible that The Honorable Elijah Muhammed is Still Physically Alive??(名誉あるイライジャ・ムハンマドは、いまも物理的に生きている可能性があるだろうか??)”において強力に発揮されている。

「空にあるあの街のことが いつも気になっていた あの眩い光と 色鮮やかな輝きとともに 空に美しく浮かぶ街 あの金と エメラルドと サファイア そしてジャスパー(碧玉)と 真珠に囲まれた 真実にして生ける神の 玉座」

 ここでジェイは、UFOとの「ロサンゼルスの戦い」の証拠とされる話について詩的に語り、それが人生に苦しむ女性と混ざり合い、その出来事が信仰の必要性を強める。曲は、ネイション・オブ・イスラムの指導者であり創設者である名誉あるイライジャ・ムハンマドの歴史を語る人物の声で終わる。

彼女がもっとも嫌いだと言った色が不可視(インビジブル)
水着姿のストーリーのコメントにそれを固定した
日の光のなかでは 彼女は背が高く
無敵(インビンシブル)に感じている
だが夜になれば 誰かのセクションで
小さく 説き伏せられやすくなる
また別の堕ちた星が別のクレーターに激突する
なぜ俺に尋ねた?
俺たちは救世主が必要なのかと?

 ジェイ・エレクトロニカの素晴らしさを理解し評価することは、彼の決して静かではない「矛盾」と向き合うことでもある。ネイション・オブ・イスラムの極めて熱心な信奉者であるジェイは、5つのリリースの機会を利用して、各リリースのカヴァーにネイションが使用する象徴的なシンボルを採用した。アートワークはどれも派手ではなく、新規のリスナーを誘うようなものではない。最近の人はアートワークにそれほど注意を払わないので、それは避けられたひとつのハードルと言える。しかし、彼の曲の多くでは、名誉あるイライジャ・ムハンマドの名前が絶えず賛美のなかで使われている。
 歴史的に見てこれは興味深いことだ。ネイション・オブ・イスラムは、公民権運動時代のアメリカにおける白人至上主義の人種差別や、キリスト教会を通じたそのつながりの影響を回避しようとしたイスラム教の信奉者たちによって誕生した。多くの受刑者がしばしば「神を見出す」場所において、1960年代以降、マルコムXがそうしたように、多くの者がアッラーを見出した。
 ネイション・オブ・イスラム以前のアメリカの歴史の大部分において、イスラム教徒の大きな存在はなかった(多くの奴隷にされたアフリカ人がキリスト教への改宗を強要されたため)。そのため、黒人コミュニティにとって、キリスト教やそこから生じた生ぬるい活動に対する「信仰の対抗軸」として、ネイション・オブ・イスラムの影響力は強かった。しかし、いまは2025年だ。アメリカに住む元来のイスラム教諸国出身のイスラム教徒の数は、ネイション・オブ・イスラムの信奉者よりも遥かに多く、彼らのなかでネイションを重視する者はほとんどいない。したがって、いまネイションの信奉者であることは、かつてほど重要ではない。そして、名誉あるイライジャ・ムハンマドとマルコムX(彼は今日でも絶大な敬愛を集めている)のあいだの歴史的経緯が、事態をさらに複雑にしている。

 ジェイ・エレクトロニカは、ラップ界のサン・ラ、あるいはMFドゥームのような存在だ。両者とも不屈の精神を持ち、自らの信念に対して100%の信頼を置いていた(あるいは置いている)。まったく揺るがない。アウトサイダーとしてのジェイの信仰は、他のアウトサイダーに対する彼の支持と同じくらい強い。それが名誉あるイライジャ・ムハンマドであろうと、P・ディディ(??!!!!!!!)であろうと。
 そう、あのP・ディディだ。ホテルの廊下で恋人を打ちのめし、あざだらけにして置き去りにする姿が世界中に晒された、あのP・ディディだ。この記事を読んでいる頃にはすでに判決が出ているかもしれないが、売春目的の移送の罪で有罪判決を受け、量刑を言い渡されようとしている、あのP・ディディだ。そのP・ディディが、『Leaflets』の最初のトラック“Abracadabra“のイントロの声として、刑務所から直接電話でジェイに指示を送っているのだ。ジェイは、指示を示すために犬を連れてP・ディディの裁判所に現れた男でもある。

 そしてジェイは、献身、天使のような詩、アイコンとしての地位、そして独特で疑問の残る選択のあいだで危うい綱渡りをしながら、奇妙な方法でプロデュースされ、パッケージされ、リリースされるクラシックなトラックを作り上げている男なのだ。


The enigma that is Jay Electronica has returned and he wears a bright smile very plainly. 5 releases in just 5 days released by his own universe`s time schedule, very sanely. Rep is what most artists want and what many rappers claim they have when they walk into a room. But Jay is a different creature. Never one to gloat about swag or tow a conglomeration of security and assistants around or fly private jets to locations only a 20 kilometer distance away just because. Jay Electronica doesn`t inhabit that world but commands more respect as if he were Doctor Strange conjuring new magics and portals. Despite being in hip hop for 25 years and his technically recorded debut (on MySpace!!!! - do you remember MySpace????? ) in 2007 (then taken offline), you can`t count Jay albums on one hand. Until now. Now you need 2 hands. But no more than that.
I`m guessing maybe to celebrate his 49th birthday (don`t quote me cause I really don`t know), Jay released not one, not two, not three, not four, but five releases within five days. Announced first via Instagram, then his twitter account followed by Roc Nation, the bombshell came as a complete surprise. Almost like a April Fool`s Day joke except it came out in gloomy September. Literally as I started writing this article upon the release of his 3rd album, I had to stop cause internet rumors stated he might be releasing 19 albums! So I waited a few more days til the coast was clear. Do to the encyclopedic nature of this near extraterrestrial situation, allow me a bit of time to unpack things. First, peep this :

Act I: Eternal Sunshine (The Pledge) — September 17, 2025
Act II: The Patents of Nobility (The Turn) — September 18, 2025
A Written Testimony: Leaflets — September 19, 2025
A Written Testimony: Power at the Rate of My Dreams — September 19, 2025 A Written Testimony: Mars, The Inhabited Planet — September 21, 2025

With Jay Electronica, the age old contingency, the age old romantic stereotype of a tortured artist holing up in a studio, to release new work in the following year doesn`t fit with Jay Electronica. He doesn`t care about the industry, doesn`t live solely off the industry, and doesn`t maintain his self-respect from the industry. The idea of releasing 5 albums within a week is unheard of in rap and quite feared of by industry exes. But going against the grain fits him more than anyone else. A proper explanation might be he is living off grid of the main stream rap game while also being in the center. There is probably no other rap artist at least in the world that inhabits such a space. A close friend of Jay Z and protected by his Roc Nation label, a close friend and confidante of Erykah Badu while also being the father of one of her children, and also a phone call away from numerous other producers and rappers who are more intentionally imbedded in the hip hop industry.

The enigma that is Jay Electronica is not the same as the initial hype when he first came out or afterwards on “What The Fuck is a Jay Electronica?” (2012). From the start, he stood out but stylistically, he was still competing with the usual a-miliion-words-per-bar type of rap popular a la Kendrick Lamar and many others. But with each leak and cameo appearance and singles like “Exhibit A” (2009), he grew into his own and earned his pedestal. Despite continuous years of near radio silence and often cryptic posts on Instagram, once a bar leaks out, once a track drops, fans go rabid and pick apart every word, reference and phrasing. The clarity of his magnetic voice and wording, the fatherly like verbal gesturing toward a more righteous path, and total intention on telling a story separates him from many of the industry who often throw words together just to make a track that really no one can understand. Someone once asked me why they should listen to Jay. I relayed that Jay is never in a race to finish a bar or a stanza to get to a chorus. Often he doesn`t write them anyway. Every word is important and poetic like a griot of Senegal telling a village of their history. Jay is known as a weird dude and that weird dude picks apart esoteric bits of information that often revolve around his total devotion to Islamic observance creating a thick web of biblical testimony, outsider thought and Mos Def like finesse. You can hear what he is saying, and you can head nod to his relaying and learn something in the process. Listening to his best tracks is like attending a preacher‘s service where diction, tenor, anticipation of the attendee`s understanding is paramount.

More importantly though, he doesn`t care about time. He ain`t rushing to make it in time for the summer schedule or shit like that. To be clear from his 5 September releases, both Act 1 and 2 are not new. Everything digital is somewhere on someone`s website or hard drive available but both 1 and 2 have appeared and were disappeared in a flash. Act 1, a moody 2007 15-minute mixtape instrumentally based off of Jon Brion’s Eternal Sunshine of the Spotless Mind score, put out via MySpace, has been bouncing around the internet for almost 2 decades but never official. Act 2 was leaked, released through Jay Z`s Tidal and bodied within the same month (2000) disappearing only to finally re-appear 5 years later. As I said Jay doesn`t care about time. Despite the momentum from 2000`s “A Written Testimony” put out several months before the leak, there was no foot on the gas to get it out to the public again until this year. And though the 2025 “A Written Testimony” releases are technically new, we honestly don`t know when the tracks were made. Jay`s peculiar nature toward his recorded music makes it seem as if his total output is a library for him to check out tracks to make releases regardless of when they were made. Time is elusive.

Output is low and liminal and this for his rabid fans is forgivable. But it is impossible to not compare A Written Testimony (2020) to his 5 new 2025 releases. If I may be poetic , A Written Testimony (2020) was like Ginza crafted sushi and onigiri, where as his 2025 releases, Act 1 and 2, and the 3 albums under the “A Written Testimony : Power at the Rate of My Dreams, A Written Testimony : Mars, The Inhabited Planet, and A Written Testimony : Leaflets” are more in the vain of yakisoba (fried noodles) thrown together at a food stall at a local festival. A Written Testimony (2020) was a collection of sharp tracks that fit together quite comfortably. One could pore over them repeatedly. From hard beats to the acute emotional, even partially devotional. Act 1 is like a meditation and Act 2 is closer to A Written Testimony (2020) with bouncier tracks and a beat flowing. Press play on “Life on Mars” and “Bonnie and Clyde” if listening in a car to work.
The three A Written Testimony (2025) seem to be exactly that - testimonies woven together despite being separate tracks. Keep in mind that each album is barely an album! Call them eps maybe? And for sure some of my gripes are exactly here cause each ep is short as hell. Each barely past the 20 minute mark. Add to that the amount of samples used is insane. Even on a 3 minute track, you will find Jay telling tales for only a minute. Production here isn`t well crafted in the Dilla or Public Enemy sense. Samples are left to go on and on with the original meaning of the samples meant to be preserved as they are, like relics of history instead of as sound objects cut and pasted to be reinterpreted or danced to. So if you are expecting bangers a la Playboi Carti, you will be horribly disappointed. And if you are born past 1990, I feel for you cause many of the samples selected are from movies, interviews, or other outlets way before your time.
Understanding why each sample is interesting is difficult when you don`t know the source.

But that is forgiven. When Jay Electronica speaks, listeners pore over each word, reference and make good use of Wikipedia and the rest of the internet to understand.

Let me illustrate with “Best Wishes” from “Power at the Rate of My Dreams,” recorded with rapper Westside Gunn. A 3 minute track with Jay tapped in rapping for only for a minute but the words bro.....the words.

“Soon as they put the mic in my hand, I get straight to workin' My tongue turn into silks by Master Fard in person I'd give anybody in a 'Top 5' list a serious hurtin' If I wasn't at war with the Dragon who evolved from the Serpent”

and

“Left
Right
Left
Right
Floating through my dreams like a leaf at night
Left
Right
Butterflies for the believers
The heart is the target, the eardrum is the receiver”

Jay is a fan of esoteric knowledge, more specifically with Islam and UFOs. The combination of them with his own heartfelt ability to speak on the dire existence of humans with the light he feels coming from his faith is powerful on “Is It Possible that The Honorable Elijah Muhammed is Still Physically Alive??” From “Leaflets”

“I always wondered 'bout that city in the sky With all that bright light and all them colors, looking pretty in the sky With all that gold, and all that emerald, and all that sapphire And all that jasper, and all that pearl around the throne Of the true and living God”

Here Jay waxes poetic on purported evidence of a battle of Los Angeles with UFOs that then gets mixed with a woman suffering in her life and that event strengthening the need for belief. The song them ends with someone telling the history of The Honorable Elijah Muhammed, the head and creator of the Nation of Islam.

“The color that she said she hate the most of all, invisible She pinned it to her comments on her Stories in her swimming suit In the daylight, she be feeling tall and invincible But at night she in somebody section, small and convincible Another fallen star to crash another crater So why you had to ask me if we actually need a savior?”

Understanding and appreciating the brilliance of Jay Electronica is also coupled with his not so quiet contradictions. A deep, deep follower of the Nation of Islam, Jay took the opportunity of his 5 releases to use symbolism used by the Nation for the covers for each one of his releases. None of the artwork is flashy or inviting for newcomers. Most people recently don`t pay that much attention to artwork so that is one hurdle avoided. But in many of his songs, the name of The Honorable Elijah Muhammed is continuously used in praise.

Historically this is interesting as the Nation of Islam came into existence from devotees of Islam who wanted to circumvent the influence of white racism in America and its connection through the Christian church in the civil rights era. Where many inmates often “find God,” from the 1960`s onward, many also found Allah just like Malcolm X did. Before the Nation of Islam for much of America`s existence, there was no major presence of Muslims in America (as many enslaved Africans were forced to convert to Christianity), so the Nation of Islam`s influence was strong as a counterweight of faith to Christianity for the Black community and the tepid activism that sprouted from it. However, it is now 2025, and the number of Muslims originally from Islam practicing countries living in America, is way greater than the followers of the Nation of Islam, and few if any of them shower any importance on the Nation. Hence being a follower of the Nation now, is basically, is not as important as it once was. And the history between The Honorable Elijah Muhammed and Malcolm X (who is still greatly beloved to this day ) adds more complication to the cake.

Jay Electronica is kinda like the Sun Ra of rap or an MF Doom. Both have / had indomitable spirits and 100 percent faith toward their convictions. Totally unbending. Jay`s faith as an outsider is as strong as his support for other outsiders is as well. Whether The Honorable Elijah Muhammed or P-Diddy (????!!!!!!!). Yes, that P-Diddy. The one who was seen worldwide beating his girlfriend in the hallway of a hotel leaving her battered and bruised. That P-Diddy, who is about to be sentenced (by the time you read this, he may already be sentenced ), having been found guilty of two counts of transportation for prostitution. That P-Diddy, who is the intro voice to the first track “Abracadabra” from Leaflets, giving his support to Jay via phone directly from prison !? Jay is the same guy who pulled up to P-Diddy`s courthouse with his dogs to show support. And Jay is the guy who walks a funny tightrope between devotion, angelic poetry, icon status, and unique questionable choices while creating classic tracks produced, packaged, and released in strange ways.

12月のジャズ - ele-king

СОЮЗ (SOYUZ)
Krok

Mr. Bongo

 ウクライナとロシアの紛争問題が長期化する中、その両国に隣接するベラルーシは政治的にロシアへの加担が見られ、そのため国内では体制派と反体制派の対立が深まっている。そうした政情不安な状況下のベラルーシのミンクスから、2022年にポーランドのワルシャワへ移住して活動するバンドがソユーズである。ソユーズは2018年にマルチ・プレイヤーのアレックス・チュマクを中心に、共同設立者であるミキタ・アルー(ベース)、アントン・ネマハイ(ドラムス)が集まって結成された。彼らの音楽性の基軸にはブラジル音楽があり、特にミルトン・ナシメントやロー・ボルジェス(先日11月2日に死去)などのミナス派や、ブルニエール&カルチエールなどのMPB、そしてアルトゥール・ヴェロカイの影響が見られる。

 2021年に録音されて2022年にリリースされた通算3作目の『Force Of The Wind』がミンクス時代の最後のアルバムだが、それ以来となる新作『Krok』はワルシャワ移住後の初めての録音となる。アレックスとミキタのほか、バンドのドラマーはポーランド人のアルベルト・カルチへ代わり、ギタリストのイゴール・ヴィシネフスキが新加入して4人組となっているが、今回はアレックスとアルベルトがブラジルに赴いて録音を行っている。主な録音はサン・パウロのセッサのスタジオで行われ、ロック・バンドのオ・テルノのビエル・バジーリとティム・ベルナルデスのほか、パッソ・トルトやマージナルズといったバンドで活動するマルセロ・カブラルというブラジルのミュージシャンとセッションしている。その後、ポーランドに戻ってバンドでの録音を加え、最終的にスウェーデンのスヴェン・ワンダーのスタジオでミックスして『Krok』は完成した。『Krok』とはベラルーシの言語でステップを意味し、ベラルーシからポーランドへ渡った彼らの新たな道筋を示すものなっている。それに伴い、これまで歌詞にはロシア語を用いていたのだが、今回は全てベラルーシ語(ブラジル音楽ということで、一部にポルトガル語の歌詞もある)を使っており、彼らの政治的な立ち位置やベラルーシ人としてのアイデンティティを示している。また、日本の打楽器奏者でヴォイス・パフォーマーでもある角銅真実が参加する曲も収められた。

 フェンダー・ローズが奏でる陰影の深いメロディにスキャット・ヴォイスが絡む“P7 Blues”は、1970年代にミルトン・ナシメントのバック・バンドとして活動し、アルトゥール・ヴェロカイのプロデュースでアルバムもリリースしたソン・イマジナリオを連想させる演奏だ。“Voo Libre(自由の飛行)”は女性のワードレス・コーラスをフィーチャーした幻想的な楽曲で、ソフト・サイケやアシッド・フォークのような風合いを持つ。ブラジルの幻のシンガー・ソングライターであるピリや、イタリアのアルベルト・バルダン・ベンボによるボサノヴァを取り入れたサントラを彷彿とさせる。“VCB”におけるオーケストレーションや木管楽器のアレンジは、まさにアルトゥール・ヴェロカイによるそれで、メランコリックなワルツ曲“Smak žyćcia”では角銅真実による日本語のポエトリー・リーディングが神秘の世界を作り出す。竹村延和のスピリチュアル・ヴァイブスを思い出すような楽曲だ。


Black Jesus Experience
Time Telling

Agogo

 ブラック・ジーザス・エクスペリエンス(BJX)はオーストラリアのメルボルンを拠点に活動する9人組バンドで、アフリカ音楽やアフロビートの影響を受け、ジャズ・ファンク、ファンク、ソウル、ヒップホップなども融合したミクスチャーな音楽を展開する。グループの中心人物はエチオピア難民のシンガーであるエヌシュ・タイエで、彼女の存在から特にエチオピアン・ジャズから多大な影響を受けている。そして、エチオピアン・ジャズの始祖であるムラートゥ・アスタトゥケとのコラボも果たし、彼との共同アルバムである『Cradle Of Humanity』(2016年)や『To Know Without Knowing』(2019年)をリリースしている。ほかにもトニー・アレンのサポートでツアーを回ったり、世界中のフェスに参加するなどの活動を行ってきたが、2008年のデビュー作からこれまでに7枚のアルバムをリリースし、2022年の『Good Evening Black Buddah』以来の3年ぶりのニュー・アルバムとなるのが『Time Telling』だ。

 アルバム・ジャケットにはエチオピア系アメリカ人の現代美術のアーティスト、ジュリー・メレトゥの2001年の作品『eye of (Thoth)』の一部を使用している。古代エジプトの知恵の神であるトートの目(ホルスの目とも呼ばれ、月、知識、真理、癒し、修復の力を象徴する)をモチーフとする作品で、BJXはジュリー・メレトゥの創造性に対するシンパシーや思想の共有をアルバムのテーマとしている。“Lullaby For A Homeless Child”はエヌシュ・タイエの実体験から生まれた作品で、ジャズ・ファンクとヒップホップが融合したトラックに乗せて、彼女のボヘミアンな歌声と哀愁に満ちたトランペットが印象を残す。“Stipa”はエチオピアン・ジャズ特有のエキゾティックなメロディを持ち、エチオピアの弦楽器であるマセンコを中心に野趣に富む演奏を展開する。“Your Heart Is My Refuge”はゆったりとしたグルーヴのネオ・ソウル調の楽曲で、エチオピアン・ジャズ版のディアンジェロといった趣だ。“Alemtsahaye”は深みのあるジャズ・ファンクで、ソウルフルな演奏とラップ、エヌシュのアラビア語のヴォーカルによってほかのバンドにはない独特の世界を作っていく。


Joe Kaptein
Pool Sharks

Jandal

 今年7月のコラムで紹介したニュージーランドのバンドのサークリング・サンだが、そのメンバーであるジョー・カプテインがソロ・アルバム『Pool Sharks』をリリースした。彼はキーボード、シンセ、オルガン、ギター、グロッケンシュピール(鉄琴)などを扱うマルチ・プレイヤーで、2024年に『Eternal Afternoon』というアルバムをリリースし、そこにはネイサン・ヘインズなども参加していたのだが、今回はその『Eternal Afternoon』に参加していたウィル・グッディンソン(ベース)やベン・フレイター(パーカッション)のほか、サークリング・サンのフィン・ショールズ(トランペット)などが加わり、アルバム・タイトルであるプール・シャークスというバンドを形成している。

 幻想的なフレーズを奏でるキーボードを中心に、サックスやバス・クラリネット、グロッケンシュピールなどが浮遊感のある演奏を展開し、随所にスペイシーなSEが散りばめられていく構成。全体的にアンビエントを感じさせるアルバムだが、中でも“Five Stone Sourdough”が秀逸。1970年代半ばのアジムスやロニー・リストン・スミスなどを彷彿とさせる深く美しいコズミック・ジャズだ。


MOb
II

Veego

 ジャズの世界ではあまりギリシャ出身のミュージシャンの話は聞かないが、近年はトランペット奏者のアンドレス・ポリツォゴプロスのトリオ、ピアニストのフリストス・イェロラツィティスのトリオなどが日本でも紹介されている。エレクトロニクスを用いた瞑想的な演奏の前者、抒情的なピアノ・トリオの後者と、それぞれ持ち味が異なるが、MObはその二つとはまた異なる個性を持つアテネのトリオである。サックス、シンセ、プログラミング担当のマリオス・ヴァリナキス、ベーシストのアレクサンドロス・デリス、ドラマーのパナギオティス・コストプロスにより、2023年にファースト・アルバムをリリース。アヴァンギャルドなジャズ・パンク・バンドを標榜し、シンセ、エフェクト、ループ、ドローン・サウンドを用いて型にとらわれない演奏を展開する。ジャズだけでなくエレクトロニカやポスト・ロックなどの要素もあり、英国のジ・インヴィジブル(レオ・テイラー、デイヴ・オクム、トム・ハーバート)に近いイメージのトリオだ。

 ファースト・アルバムに収録された“5055”という曲は、翌年にジェイムズ・ラヴェルのアンクルがリミックスを手掛けていた。その関係によるものかわからないが、この度リリースされたセカンド・アルバムはマッシヴ・アタック、アンクル、ニュー・オーダーなどを手掛けたミキシング・エンジニアのブルーノ・エリンガムと、ヒーリオセントリックスのマルコム・カトゥーがミックスを手掛ける。“Fall”はジャズ・ファンクとヒップホップが融合したような楽曲で、覚醒したようなビートとアブストラクトな空間の構築がブルーノ・エリンガムとマルコム・カトゥーのミックスの技によって冴えわたる。2013年に他界した伝説のマルチ・リード奏者のユセフ・ラティーフがフィーチャーされた“The Listener”という楽曲も収められるが、これは生前の彼のサックスやヴォイスの素材をサンプリングしたものだ。

interview with Chip Wickham - ele-king

 2024年のフジロック・フェスティヴァルでオーディエンスをおおいに湧かせたサックス/フルート奏者のチップ・ウィッカムが3度目の来日を果たした。筆者は渋谷クアトロでのライヴを観たが、ファラオ・サンダースなどのスピリチュアル・ジャズをクラブ・ミュージック以降の感覚でアップデートしたような演奏は、ジャズとしてはもちろん、ダンス・ミュージックとしても秀でたものがあった。実際、オーディエンスのなかには踊っている者も多く、チップらの紡ぐグルーヴが身体に直に訴えかけてくるものだと証明する形となった。スタンディングのハコでライヴをおこなったのは大正解だったというべきだろう。特に目を惹いたのが、シネマティック・オーケストラにも参加しているルーク・フラワーズのドラムである。アンサンブルを立体的に見せるの長けた彼のプレイは、視覚的にもみどころたっぷりで、ドラム・ソロに目が釘付けになってしまったのは、筆者だけではあるまい。

 そんなチップ・ウィッカムのニュー・アルバム『The Eternal Now』は、現在のUKジャズ隆盛の一翼を担っている〈ゴンドワナ・レコーズ〉からのリリース。〈ゴンドワナ〉はマンチェスターに拠点を置き、ゴーゴー・ペンギン、ママル・ハンズ、ポルティコ・カルテットらの名作を発売しているレーベルである。新作では同レーベルの責任者であり、チップの親友のマシュー・ハルソールが共同プロデューサーを担当。ベテランとは思えない鮮度の高いアルバムに仕上げている。特に注目すべきは、ヴォーカリストが参加していることと、ストリングスが導入されていることだろう。チップがこれまでとは違う試みに挑戦したかったと言うように、風雪に耐えうる強度を備えた、普遍的な作風が特徴だ。おそらくチップは今回、ライヴと音源は別ものとして考えて制作に打ち込んだのではないだろうか。ライヴで再現不可能なことも音源に封じ込めることで、表現の幅が広がり、音源ならではのトライアルが多数可能になっている。そう言えるのではないだろうか。クアトロのライヴでの翌々日、チップに話を訊いた。

最近はストリーミングで次々に音楽を配信していかなきゃいけないというプレッシャーが音楽家にもあると思うけれど、それとは真逆の考え方で、自分たちで好きなだけ時間を取って創作に集中したんです。

一昨日(11月16日)の渋谷クアトロでのライヴ、とても良かったです。若いお客さんが多くて、皆、身体を揺らしたり踊りながら聴いている光景が印象的でした。ジャズ・ミュージシャンが来日すると、BLUE NOTE TOKYOやCOTTON CLUBなど、座って食事を楽しみながらライヴを観るクラブで演奏することが多いですが、あなたたちのライヴにはスタンディングが合っていたと思います。クアトロを選んだのはあなたの選択ですか?

チップ・ウィッカム(以下、チップ):そう、私がスタンディングのハコでやろうと決めました。若い人はライヴ・ハウスで踊りながら聴くのが好きですよね。イギリスでも若いジャズ・ファンが比較的多いので、クアトロみたいなハコでやることが多いです。ただ、ヨーロッパだと、もう少し大きくてフォーマルなコンサート会場でやることもありますし、そこは柔軟に対応してますけどね。BLUE NOTEのようなクラブでも、クアトロのようなライヴ・ハウスでも、分け隔てなく演奏できるとは思っています。

今年の9月5日に新作『ジ・エターナル・ナウ』がリリースされました。このアルバムのコンセプトやテーマについて教えてもらえますか?

チップ:冒険してみたかったというか、サウンド的にこれまでの作品からより拡張したものをつくりたいと思いました。なかでも大きかったのは、長年の友だちで〈ゴンドワナ〉のヘッドでもあるマシュー・ハルソールに共同プロデューサーで入ってもらったこと。今回は、彼と一緒にちょっと新しいことをやってみようという話になったんです。前作の『Cloud 10』も反響が良くて成功した実感があったんですけれども、そこからさらに可能性を拡げて、新たな領域、新たなサウンドを求めたいなと思いながら、マシューと親密に作業しました。

マシューとの付き合いは長いんですよね?

チップ:はい。彼が〈ゴンドワナ・レコーズ〉に入るずっと前からの知り合いなんです。〈ゴンドワナ〉の人気が上昇している頃、私はUKのシーンから離れてスペインにいたんですけれども、彼がスペインに遊びに来たら一緒に演奏したり、密な付き合いを続けてきました。だから、ずっと交流はあったんです。 私が〈Lovemonk〉というレーベルにいたときも、マシューがゴンドワナ・オーケストラという自身のプロジェクトを始めて、私もそこで演奏するようになりました。元々お互いの音楽に対するセンスとか、好きなものが同じなので、ずっと仲がいい。私が〈ゴンドワナ〉に入ることになったときも、「レーベルの一員になることで、君との友情関係を壊したくない」って言われたほどで。要するに、「ビジネス・パートナーという関係になってしまうのはどうなの? 友だちと仕事をするのって難しいじゃない?」っていうことだったんです。

そうなると、〈ゴンドワナ〉からリリースすることでのプレッシャーはなかったですか?

チップ:正直、結構ありましたね。それで、2022年に入門編じゃないけど、「Astral Travelling」っていうロニー・リストン・スミスの曲をカヴァーしたEPを出して、それに対する反応が良くて安心したんです。「これならイケるんじゃない?」って思ったというか。ちなみに驚くべきことに、ロニー本人から私に電話がかかってきたことがあったんです。共通の友だちがいるからなんですけど、すごくびっくりして緊張しました。ロニーが低い声で「最高だったよ、君のヴァージョン。でもコードがひとつ間違っているよ」みたいな指摘を受けて。ロニーが電話越しでピアノを弾きながら指摘してくれたんです。それ以降も2~3度、電話をする機会があって、音楽や人生の話をたくさんしましたね。本当に素晴らしい人であり、尊敬すべきミュージシャンだと思います。

〈ゴンドワナ〉からはゴーゴー・ペンギンもリリースしていますね。彼らはあなたにとってどんな存在ですか。音楽的なスタイルは違うけれど、同じレーベルに所属している。逆に言えば、それだけ〈ゴンドワナ〉というレーベルには、同じジャズ系アクトでも振れ幅があると言えるのでは?

チップ:その通りだと思いますね。ゴーゴー・ペンギンはクラシック的な要素や、エレクトロニック・ベースな部分がある。私はもう少しスピリチュアル・ジャズの領域にいるので、違うといえば違うと思います。でも、同じレーベルにいるのがおもしろい。〈ゴンドワナ〉に入ってからは、レーベルの中で自分たちの居場所とか位置づけを探していくのが大事だな、ということを意識するようになりました。

たしかに、スピリチュアル・ジャズの要素は感じますね。ジョン・コルトレーンアリス・コレトレーンファラオ・サンダースなどもフェイヴァリットでしょうか?

チップ:もちろんです。私にとって重要なルーツのひとつだと思います。

今回、ミックスをこれまでと違う人に託していますよね? 

チップ:グレッグ・フリーマンという〈ゴンドワナ〉の他のアーティストのミックスも手がけている人なんです。今回、アートワークもレーベルのヴィジュアル面を担当しているダニエル・ハールサブという人が担当してくれましたし。その意味で、今回のアルバムはレーベル・カラーに合わせてプロデュースされたアルバムになったと思いますね。ヴィジュアルもサウンドも一貫性のあるものになっているというか。自分がどう〈ゴンドワナ〉にフィットできるかを考えるようになったし、その結果、レーベル・カラーに沿いつつ、自分たちらしさも出せるような改良の仕方ができたと思っています。

根無し草だからこそ、どんなジャンルや地域の音楽にも気軽にアクセスできるんだと思います。

さきほど、これまでと違うことをやってみたかったとおっしゃいましたが、具体的にはヴォーカルやストリングスの導入が目立ちますね。

チップ:たしかにヴォーカルとストリングスは今回新しい要素として取り入れたものです。“Nana Black” っていう曲には Peach さんという素敵な女性ヴォーカリストを迎えているんですけど、7曲目の “Falling Deep” っていう曲にもラララ~というヴォーカルが入っていて、これは自分の娘が歌っている。彼女自身がアーティストであり、シンガー・ソングライターでもあるので。私が制作中の音源を「聴いてみる? 」と聴かせたら、その2日後にこの曲に合ったヴォーカル・テイクを何個も作ってくれて。アドリブも入っていたんですよ(笑)。親として誇りに思います。

ストリングスの導入に際してはどのような配慮をされましたか?

チップ:ストリングスのアレンジメントで気を付けたのは、レトロな感じではなく、フレッシュでモダンで洗練された響きにしようということ。私は弦楽器の音が大好きで、デヴィッド・アクセルロッドとかジョン・ハリソンなんかもよく聴くんですけど、今回は弦楽器の音が過剰にならないようにしました。余計な音を削ぎ落として本当にいいものだけを吟味して入れていったんです。

これまでと制作の仕方で変わったところはありますか?

チップ:今回、あまり時間に左右されずに制作に臨むことを心がけたんです。アルバムの制作においてクリエイティヴィティを優先するという観点から、どれだけ時間をかけても構わないからいいアルバムを作ろうと。もちろん予算はかなりかかったけれど、ビジネスとしての音楽よりもいいものを作ることを重視したんです。最近はストリーミングで次々に音楽を配信していかなきゃいけないというプレッシャーが音楽家にもあると思うけれど、それとは真逆の考え方で、自分たちで好きなだけ時間を取って創作に集中したんです。リズム隊は実力あるふたりだけれど、ベースもドラムもたくさんテイクを重ねて、そのなかから最良だと思えるものを選び抜きました。皆センスが良く、スキルのあるミュージシャンばかりだから、最高のクオリティの作品になったと自負しています。あとは永遠に残る作品をつくりたかったですね。

ああ、もしかしてそれがアルバム・タイトルの『The Eternal Now』と関係しているんでしょうか?

チップ:まさにそういうことです。たとえ未来に聴かれたとしても、「now」と感じられるようなもの。『The Eternal Now』というのは直訳すると「永遠のいま」という意味で、永遠に聴き続けてもらえるもの、というのが念頭にありました。

ドラマーがシネマティック・オーケストラにも参加しているルーク・フラワーズですね。彼はじつに巧みなプレイで、ライヴでもアンサンブルの軸となっているのが印象的でした。

チップ:そう、ライヴで観ると「手が何本あるんだ? タコなんじゃないの?」と思いますよね(笑)。彼の参加もマシューのおかげで実現したんです。マシュー自身もシネマティック・オーケストラのファンであるので。ライヴでは激しい演奏する方なんですけれども、レコーディング・スタジオではすごく集中をして、熟考の上でああいう演奏をするんです。スタジオとライヴの雰囲気がかなり違うというか。

今回のアルバム、スピリチュアル・ジャズもそうなんですが、モード・ジャズの伝統を継いでいるとも思いました。

チップ:その通りです。というのも、もともとジャズが好きじゃないけれどダンス・ミュージックとかエレクトロニック・ミュージックを愛聴するリスナーも、モーダルなジャズは入りやすいし、魅力的に感じる部分があると思うんですよね。僕自身、マイルス・デイヴィスやジョン・ヘンダーソンなどのモーダルなプレイが特徴のアルバムが大好きなので、自然とそういうものを採り入れることになったと思います。

チップさんはUKやスペインや中東など複数の拠点を持っていて、音楽的にも多ジャンルを股にかけていますよね。いまはジャズをやっているけれど、ザ・ファーサイドやザ・ニュー・マスター・サウンズ、ナイトメアズ・オン・ワックスなど、ヒップホップからファンク、トリップ・ホップまでに関わっている。根無し草(=rootless)みたいな感覚があるのかなと思ったんですけど。

チップ:そうだと思います。というか、根無し草だからこそ、どんなジャンルや地域の音楽にも気軽にアクセスできるんだと思います。最近の若い人の音楽の聴き方もそうですよね。ストリーミングの発達も手伝って、いろいろなジャンルにアクセスする回路があって、実際にいろいろなタイプの音楽を聴いている。それと同じことを私もミュージシャンとしてやっているんだと思います。もちろん、なんでもかんでも採り入れればいいとは思わない。腕のいいシェフのように、いい素材だけを集めておいしい料理をつくるのが理想だし、大事だと思いますね。

なるほど。それに加えて、あなたの音楽はUKのアシッド・ジャズの系譜にもあるようにも聴こえるんですよね。

チップ:アシッド・ジャズね、すごく聴いてましたよ。United Future Organizationとか、Kyoto Jazz Massiveも大好きだったし。若く多感な頃に聴いたので、とても素敵だなと思いました。日本とUKのミュージシャンのファンクとかソウルへのアプローチやそのセンスってけっこう近いと思うんですよね。ジャズを中心にいろいろな音楽の要素がブレンドされているところとか、DJ的なセンスが根柢にあるところとか。そうそう、アシッド・ジャズといえば、その黎明期からシーンの中心で活躍してきたラテン・ジャズの重鎮であるスノウボーイが、今作にはコンガとパーカッションで参加しています。

彼はある意味、時代の生き証人ですよね。その他に、ジャイルス・ピーターソンのようなDJが昨今のUKジャズの立役者のひとりでもありますね。彼は昨今また存在感が増してきているように感じます。

チップ:そうそう。彼は素晴らしいDJですし、プレイのなかでいろいろな音楽の要素を採り入れて、自分のものとしてDJで表現している。音楽に対する愛情や造詣も深さも含め、自分と共通性があるんじゃないかなと思いますね。

よくわかりますね、それは。ルートレスであるがゆえの自由さや奔放さが、あなたにもありますものね。

チップ:私もそれなりに人生経験が豊富といいますか、世界中でいろいろな演奏をしてきたので、それも役に立っているのかなと思います。あと、セッション・ミュージシャンですごく腕のいい人を見てきたので、そういう人たちに影響されてきたというのもありますし。サルサもファンクもブラジル音楽も、シンガー・ソングライターもアコースティック・ジャズもUKのポップスも全部好きなので、今回のアルバムにもそうした要素は入っていると思いますね。

DJ Narciso - ele-king

 何年も前なら、音楽のリリースに関しては眠たくなるような、まるで冬眠期間のようだった11月と12月が、いまや「ニンジャ・センバー(Ninja-cember)」なのではないかと、私はますます考えはじめている。ホリデーシーズンがわずか数日後に迫り、北半球の多くが暗い冬の極寒の突風に備えているなか、信じられないようなリリースが次から次へと我々に忍び寄ってきていることが近年ではよくある。
 たとえば昨年の今頃なら、我々は夏のリリースをさえも霞ませるような強力なアルバムに真剣に向き合っていた。デビュー・アルバムを提げたBLACKPINKのROSÉによる『ロージー』やケンドリック・ラマーの『GNX』などだ。そしてこの12月、すでに私はまたしても真剣な昂りを感じている。なぜなら、イギリスのレーベル〈SVBKVLT〉がDJ Narcisoの『Dentro De Mim』(ポルトガル語で「私のなかに」の意)をリリースしたばかりだからだ。彼らはこれをEPだと言っているが、7つの強力なトラックとふたつの素晴らしいリミックスが収録されているいま、それが本当に重要だろうか。

 もし君が、DJ Narcisoがヨーロッパやアフリカで関わっている素晴らしい「バティーダ(Batida)」シーンを追っているなら、こうしたプロデューサーの多くが独自のEPやシングルをリリースしていることを知っているはずだ。DJ Narcisoも、自身のBandcampや他のレーベルから多くの作品を出している(編註:2025年7月にセカンド・アルバム『Capítulo Experimental』を〈Príncipe 〉からリリースしている)。そうなると、「なぜ今回の新しいEPが、彼の他の作品と比べて特別なのか」という疑問が浮かぶだろう。
 その問いにできるだけ率直に答えるなら、このEPはとくに、とにかく「深い」のだ。フォーカスがより研ぎ澄まされている。1曲目の“Segredo”は、通常のダンス・トラックよりもわずかにテンポが遅く、導入部としては控えめだ。普段なら私はこのようなトラックを飛ばしてしまうところだが、この3分間は報われた。ビートが遅いことで、より荒涼とした力強さが許容されていたからだ。この種のアフリカン・ビートのミニマリズムは、まるでシャドーボクシングのようだ。それらがどのように打ち込んでくるのか、常に予見できるわけではない。その引きずるようなビートは、まるでアフリカ版の「Godflesh(イギリスのインダストリアル界の伝説)」を聴いているような気分にさせてくれる。

 各駅停車の“Segredo”が駅に到着した後は、“Pesadelos”で高速列車さながらの全速力へと移る。ここでもまた、意図的な閉所恐怖症を伴う激しいコール・アンド・レスポンスのトンネルが続く。オールドスクールなインダストリアル・ミュージックを愛する人で、ここでのアプローチを気に入らない者は想像できない。DJ Narcisoは、即座に体を揺らす要素に焦点を当てるだけでなく、ビートに対する単純なノイズに安住することもない。彼は、ビートの間にこれほどまでの「無」が存在する、最高のテクノに通じる「間」を求めている。ダンス・ミュージックの最高の楽しみは、しばしばビートそのものではなく、その間にある空間にある。“Pesadelos”は、イギリスのBurialのようなトンネル・ヴィジョンの雰囲気と、より安定したフックを併せ持っている。
 “Agancha”は、私にとってアルバムの中心のように感じられる。ベースの明瞭さ、ノイズ、そして遠くの残響がすべて引き離されて配置されており、大きなアンプの環境で聴けば魔法のように響くことだろう。
 残りのトラックも同様に中毒性がある。クラブやジムに非常に適しており、最後の1拍までダンスへの献身を呼び起こすのにちょうど良いBPMで、ドラムのように正確に刻まれる。多くのプロデューサーが、1曲だけパンチのある曲を作って他のトラックで集中力を欠くのを見てきたが、DJ Narcisoにとってプロデュースとはジムに通うようなものなのだと感じる。
 1日で筋肉は作られない。それゆえに、彼の1年間だけでも膨大なアウトプットがあるのだ。SwimfulとDigita NgecheのKop-Zによるふたつのリミックスも、決して引けを取らないが、確かに本編と同じマニアックなエネルギーはない。幸運なことに、それらは最後に配置されている。7つのオリジナル・トラックがよどみなく流れ、繰り返し聴くことに価値がある資産となっている。願わくは、1時間のミックスも提供してもらえないだろうか。

【編註】

Ninja-cember(ニンジャ・センバー)
「Ninja(忍者)」と「December(12月)」を掛け合わせた造語。忍者が音もなく忍び寄るように、予期せぬタイミングで衝撃的な新作が次々とリリースされる12月の状況のこと。

Batida(バティーダ)
ポルトガルのリスボンを中心に、アフリカ系移民(アンゴラなど)のコミュニティから生まれたダンス・ミュージック。伝統的なアフリカン・リズムと荒々しい電子音との融合を特徴としている。

Godflesh(ゴッドフレッシュ)
1988年に結成されたイギリスのインダストリアル・メタル・バンド。


I am starting to think more and more that November and December which many years ago would be sleepy and more like hibernation time with music releases, is now Ninja-cember. Incredible release after release sneaking up on us while the holiday season is only days away and much of the northern hemisphere is bracing for the frigid blasts of dark winter.

Last year around this time, we were seriously dealing with some heavy hitting albums that even eclipsed summer releases such as Blackpink`s ROSE with her debut album and Kendrick Lamar with GNX. Already now in December, I am getting some serious feels again cause UK label SVBKVLT just released DJ Narciso`s DENTRO DE MIM (Portuguese for “INSIDE OF ME”). They say it`s an ep but with 7 heavy hitting tracks and 2 stellar remixes does it really matter at this point?

Now if you are following the incredible Batida scene that DJ Narciso is a part of in Europe and Africa, then you should know that many of these producers release their own ep`s and singles. DJ Narciso has a plethora of them on his own bandcamp and other labels. Which would lead to the suggestion - why is this new ep special from his other stuff?

Well to answer that as frankly as possible, this ep in particuilar is SO much deeper. The focus much more laser sharp. The first track “SEGREDO” is unassuming as an introduction as it moves slightly slower than usual dance tracks. I normally would skip such a track but the 3 minutes of my time were rewarded as the slower beat

allowed more starkness. The minimalism of these types of African beats is almost like shadow boxing. You can`t always see how they are gonna hit you. The dragging beat seriously makes me feel like I am listening to African GODFLESH (UK industrial legends).

After the local train of “SEGREDO” arrives at the station, it`s full speed ahead on the high speed with “PESADELOS.” Again, a tunnel of call and response intense with its intentional claustrophobia. I can`t imagine anyone who loves old school industrial music not loving the approach here. Besides focus on instant booty movers, DJ Narciso doesn`t rest on simple noise against the beats, he wants the MA (間) of the best techno where

there is so much of nothing between the beats. The best enjoyment of dance music often isn`t the beat but the space in between. “PESADELOS” gives the moody feels of BURIAL UK tunnel vision vibes with a better constant hook.

“Agancha” really feels to me the center of the album. The clarity of bass, noise, and distant echoes all spaced far apart I am sure would sound magical in a larger amp setting.

The rest of the tracks are just as infectious. Very club or gym friendly and tighter than a drum in lock step with just the right BMP to invoke dance devotion to the very last beat. I have heard many a producer make a banging track and then lose focus on other tracks. I get the feeling that producing is like going to the gym for DJ Narciso.

One day doesn`t make a good muscle. Hence his large output just in one year. The 2 remixes by Swimful and Digita Ngeche`s Kop-Z aren`t shabby either though for sure they don`t have the same manic energy. Luckily they are at the end. Seven original tracks flow effortlessly making repeated listenings a valuable asset. Could we get an hour mix, perhaps?

The Bug vs Ghost Dubs - ele-king

 UKデジタル・ニュールーツ・レゲエのステッパーの「速さ」でもって、コンラッド・パック~DJゴンズらがダブ・テクノの新たなスタイルを切り拓いたとすれば、ゴースト・ダブスは、2024年リリースの『Damaged』で、サウンドシステム体験に由来するダブのヘヴィネスをある種の「遅さ」でもって表現し、さらなる「重み」を引き出したことでダブ・テクノのまた別の新たな道を作り出したと言えるのではないだろうか(どちらもUKデジタル・ニュールーツのサウンドシステムにその着想のルーツがあるのが共通しているとも言える)。本作はゴースト・ダブスが、〈Pressure〉のドン、ケヴィン・マーティンことザ・バグとともに、その「重さ」に対する過剰なオブセッションをさらに追究した作品と言えるだろう。もちろんサウンドの「重さ」は、長年のケヴィン・マーティンの音楽表現の核となるサウンド・コンセプトでもある。

 ゴースト・ダブスはドイツはレーバウ生まれ。現在はドイツの南西部シュトゥットガルトを拠点に活動するマイケル・フィードラーによるプロジェクト。2000年代中頃からダブ・ダウンテンポな「トーキョー・タワー」なる名義で活動をしているようだが、おそらくゴースト・ダブスへの直接の関連としては、ジャー・シュルツ名義での活動が挙げられるだろう。同じくドイツのダブ・レーベル〈Basscomesaveme〉にて、2018年よりリリースし、2枚の『Dub Over Science』というシリーズがある。当レーベルは比較的UKデジタル・ニュールーツ的なサウンドシステムに根ざしたダブに軸足がありながら、べーチャン/リズム&サウンド由来のミニマル・ダブ的なサウンドの影響も感じさせるのが特徴で、ジャー・シュルツもまさにそうしたサウンドと言えるだろう。ニュールーツ・ステッパー的なリズムをピッチダウンすることで得ることができる「重さ」と、かのジャンルのシンフォニックな要素を排除し、テクスチャー的にはリズム&サウンド的なミニマル・ダブなサウンド感を取り入れている。そしてゴースト・ダブス名義は、ジャー・シュルツ名義の作品をさらにスクリューし、さらにベース音以外をストリップダウン、まさにその「重さ」のみを追求。すなわちサウドシステムでのあの低音体験以外のほとんどの音楽的要素を、名義が示すように「不在」にしてしまった、そんなサウンドを展開している。しかし、恐らくサウンドシステムの経験者ほど、逆説的にその「不在」によって、生々しい現地での圧倒的な空間を埋め尽くすベース体験を思い起こす、そんな作品だった。

 一方、ここ数年、ザ・バグの方は2023年より「The Machine」というシリーズで、同〈Pressure〉より作品をリリースしており、Bandcampでは自身の解説として「Slower, lower, hypnotic and basically dirty as f-ck/より遅く、より低く、催眠的で、基本的にはクソ汚い」と言い、一時期のダンスホール・スタイルをスクリューしたような、インダストリアなノイズにまみれたダブのシリーズをリリースしている。ちなみに〈Pressure〉はレーベル屋号でもあるが、自身が主宰するサウンドシステム・パーティの名前でもある(今回のジャケットもそのシステムのスタック・スタイルとも)。こうした音楽性の追求の下でジャー・シュルツのサウンドと共鳴し、ゴースト・ダブスの音源をリリース、そして今回のスプリット・アルバムへと結実したことは想像に容易い。

 少々本筋とはズレるが、ザ・バグことケヴィン・マーティンと言えば、もちろん数少ないベリアルとのコラボレーターでもあり、2003年の〈Rephlex〉からの早すぎたテクノ・ダンスホール・アルバム『Pressure』(ちなみにこちらはセカンドで、同名義でのデビューは最近スペクターの再発やらなにやら注目が集まりそうなNYの「イルビエント」レーベル〈WordSound〉から)のリリースなどその先鋭的なサウンドは後々驚かされることばかりでもある。またこれまでのコラボレーターや〈Pressure〉からのリリースの人選なども一癖も二癖もあるが、そのラインナップにUKのグライムMCからジャマイカン・ディージェイ、果てはインダストリアル・メタル方面からのJKフレッシュ(ゴッドフィッシュ/ナパーム・デス)、ストーナー・ロック方面のアル・シスネス(スリープ)、さらにベリアルを列べられるのは彼ぐらいのものだろう(この交点に彼の音楽性の核があるとも)。また〈Mo' Wax〉からの『Now Thing』(2001年)と、その続篇として2020年代のテクノ/ベース・ミュージック界隈からのダンスホール再評価として話題となった『Now Thing 2』(2021年)もあったが、その間を中継するコンピとしてケヴィンが選曲を半分担当した〈Soul Jazz〉からの、当時のベース・ミュージック的な目線でダンスホールを捉えた2011年のコンピ『Invasion Of The Mysteron Killer Sounds』も忘れてはならない(1990年代、〈Virgin〉のアンビエント・シリーズからリリースされた、彼がコンパイルした『Macro Dub』も、トリップホップやジャングルなどダンス・ミュージックのダブを横断するまさに『DUB入門』的には名盤だ)。と、なにが書きたかったかというと、そのセンスは先鋭的で、彼のやることには、あとあと「アレって早かった」と思うことがなにかと多い。おそらく本作も新たな文脈を作り出すのではないか、そんなことも考えてしまう。

 と、話は戻るがそんなザ・バグがゴースト・ダブスとともに今回『Implosion』と名付けたスプリット・アルバムは、さらに「より遅く、より低く、催眠的で、基本的にはクソ汚い」をこれまた体現したサウンドで、そのタイトルは強大な質量ゆえに光すらも脱出することができないブラックホールの内向きの強力な重力を想起させ、ここで展開される音はそれくらい重いということなのだろう。とにかく冷たく、不穏で重い、インダストリアルでノイジー、そんなダブ・サウンドが全体を覆い尽くしている。アルバムはそれぞれの楽曲が交互に収録され、いわばレゲエのサウンド・クラッシュのチェーン・フィ・チェーン・スタイルで展開していく。初回に聴いたときにはいわゆる純然たるコラボ楽曲かと思っていたがそうではなかった。マッシヴ・アタックの『Mezzanine』の冒頭 “Angel” のイントロを彷彿とさせる冷たく重いザ・バグの楽曲からスタートし、不穏な霧がかったエコーとスロウにピッチダウンされたミニマル・ダブ・サウンドのゴースト・ダブス、と交互に進んでいく。ザ・バグの方がノイジーで、ゴースト・ダブスの方は空間を生かしたダブ・ミックスが特徴のように思える。そしてザ・バグの “Burial Skank (Mass, Brixton)”、“Dread (The End, London)” やゴースト・ダブス “Into The Mystic” といった重量級のスロウ・ステッパーの合間に聞こえてくるノイズは、まるでサウンドシステム特有のホワイトノイズや耳鳴り、巨大な低音ゆえに建物の躯体が共振して生まれるノイズを追体験しているかのようでもある。もはやその低音は空気の暴力とも言えそうな物理的な圧迫感すらある。それでいて、そのサウンドの感触は、もはやストーナー・ドゥームのレコードの隣にあっても、そういうものだと思ってしまいそうなところもある。

 ノイズやドローン・メタルの轟音体験と、レゲエのサウンドシステムによるダブの轟音体験に同様のものを見出す、それを音像として体現してきたのがケヴィン・マーティンのある種の表現の核にあるように思える。そして本作では、まさにサウンドシステムの出音、轟音の低音体験をいかに音楽表現に変換し伝えるかというのがひとつコンセプトなのだろう。過剰なまでに増幅されたドローンにも似たベースライン、ノイズとエコーは物理的な現場の状況をシミュレートしているかのようで、サウンドシステムの轟音体験の記憶を生々しい音楽として顕現させている。ジャケットのモチーフ、サウンド・クラッシュのチェーン・フィ・チェーン・スタイル、さらにはザ・バグにいたっては、その曲名には、例えばジャー・シャカがサウンドシステムをよく開催していた〈Rockets〉など、UKレゲエ~サウンドシステム~ベース・ミュージックの重要なヴェニューや地域の名前がつけられている。まさにサウンドシステム・カルチャーに捧げられた1枚と言えるだろう。ある意味で目の前にヴァーチャルなサウンドシステム体験を顕現させようとするようなそんな作品でもある。もちろんそれなしでも楽しめる作品だが、サウンドシステムでのダブ体験、それがあって作品のディティールに触れることで、さらなる驚きと理解が生まれる作品でもあるだろう。


Fumiya Tanaka - ele-king

 30年以上にわたるキャリアを持つ日本を代表するDJのひとり、田中フミヤによるパーティ・シリーズ〈CHAOS〉が12月27日(土)に渋谷・WWW Xにて開催。日本でのオープン・トゥ・ラストは8月に続き2度目となる。

 〈CHAOS〉開催に際して、ハウス・コレクティヴ〈CYK〉に所属するDJ・DNGによるテキストの寄稿も。年の瀬の締めくくりに最適な一夜のチケットはLivePocket、RAにて販売中。以下詳細。

2025.12.27 saturday midnight
CHAOS
Fumiya Tanaka (Sundance) - all night long -

at Shibuya WWW X
open/start 23:59

Early Bird* ¥2,000
Adv.* ¥3,000
Under23 ¥2,500
Door ¥3,500
* LivePocket
* RA

※You must be 20 and over with photo ID.
info:WWW X 03-5458-7688

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 曰く、氏のオープンtoラスト・セットは約30年の"CHAOS"正史においては今年まで日本(東京&大阪)のみでしか開催されていなかったのだが、去る9月のマンチェスターを皮切りに、今後は世界中の実施可能な場所で敢行されていくとのこと。WWW Xでの"CHAOS"も、研究を重ね時勢に揉まれ拡大と純化を繰り返しているように思うが、とにかく大なり小なりの変化を伴いながらFumiya Tanakaの実践は続く。

 さて、2023年に同パーティーがWWW Xに移って以来、会場のブッキング担当者にこのパーティーの煽り文章を任命されてから幾度目かになる。実際のところ、未だに空を掴むような気持ちで取り組んでいる感が否めない。ジャンルという枠組みやキャリア/沿革から説明するにしても、このパーティーと噛み合う何かに成るのだろうか。手掛かりはあくまで手掛かりであるし、本来的には情報から逃れるべくあのダンスフロアに向かっている、という自覚も薄らある。言葉で語るのであれば、Fumiya Tanaka自身の(あの示唆とウィットに富む)主観的な文章以外なし得ないかもしれない。夜な夜な繰り広げられるレコードとレコード/DJとフロアの混触反応は、白熱や感嘆、爆笑、朦朧etcを生んでいる。"CHAOS"に赴いたことがある方には思い当たるであろうあの生々しい状態異常を、渦中の傍観者としてどう描写して良いものか。正直困惑している。

 ──詰まるところ「行ったらわかる、行かなければわからない」ということではあるのですが、錆びついた通り文句に頼ると拙文の意味もいよいよ無くなってしまうので、この足掻きをそのまま前段の文章としてお届けすることにいたしました。この困惑の原因たるエネルギーこそが"CHAOS"に人が集ってきた理由だと思えばあながち的外れではない、と手前勝手に思いたいです。年の瀬のパーティーに添えるにはなんとも緩い末筆となってしまいましたが、きっと"CHAOS"のフロアでこの1年がバチッと締まることでしょう。2025年がハッピーだった人も散々だった人も、このパーティーの一部になる事を願っています。

Text by DNG (CYK / Lighthouse Records)

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