「Nothing」と一致するもの

UNKNOWN ME - ele-king

 毎日こうも過酷な暑さがつづくと、あの涼しかった音空間が猛烈に恋しくなってくる。

 今春、LAの〈Not Not Fun〉から初のLP『BISHINTAI』を発表した UNKNOWN ME。ユニットとしての知名度はまだそれほどないかもしれないが、やけのはら、P-RUFF、H.TAKAHASHI の3人と、ヴィジュアル担当の大澤悠大からなるアンビエント・プロジェクトである。ヴィジブル・クロークス以降のアンビエント/ニューエイジの流れとリンクしつつ、その更新を試みているグループと言っていいだろう。6月27日、アルバムのリリース・パーティが開催されるというので足を運んできた。場所は神宮前 Galaxy。食品まつり a.k.a foodmansatomimagae、Chee Shimizu と、かなり豪華な面子がそろった。

 階段をくだり地下のエントランスを抜けると、ひんやりと冷えた空気が漂っている。すでに satomimagae のパフォーマンスははじまっていた。30~40人ほど集まっていただろうか、にもかかわらず、下手したら空調の音まで聞こえかねないほど会場は静まりかえっている。耳に浸透するかなしげなギターの音と、澄んだ satomimagae のヴォーカル。〈RVNG〉から出たすばらしい新作でも独自の静けさを表現していた彼女だが、ライヴでは一層そのサイレンスが際立って聞こえる。音が鳴っているのに、サイレンス。おかしな話だが、ほんとうにそうとしか形容のできない体験なのだ。
 最後の曲が終わると、一気に会場が談話に包まれる。つなぎDJは Chee Shimizu。おとなしすぎず、主張しすぎず、絶妙なあんばいのアンビエントやオブスキュアなトラック群が空間を彩っていく。

 ふた組めは、〈Hyperdub〉からの新作を控える食品まつり。ここでオーディエンスが50人くらいまで増える。アンビエントでスタートしたセットはほぼ低音を用いることなく、ちゃかぽこした上モノで引っぱっていく感じで、これまたどこか涼しげなサウンド。じょじょに実験性が高まっていき、後半になるとダンサブルな反復が飛び出しパーカッションの饗宴を迎えるが、最後はやはり静けさを強調した電子音で〆。「聴きこむ/踊る」という二項対立を宙吊りにするかのようなセットは、この満足には踊れない時代、身体はどう音に反応すべきなのかという問いを提起しているかのようだった。やはり食品まつり、あなどれない。

 ふたたびつなぎDJをはさんで、いよいよ主役の UNKNOWN ME。4人全員がワイシャツとネクタイを着用して登場、ずらっと横一列に並ぶ。きれいなシンセ音、水やひぐらしなどの具体音が入れかわり立ちかわり登場し、白昼夢のごとき音空間が生成されていく。これは、涼しい。基本的にアルバム収録曲が演奏されていたはずで、ほとんどがノンビートなのだが、ビートはなくともリズムはあり、ここでもコロナ時代における身体性について考えさせられることになる。
 ヴィジュアルも手がこんでいて、東京タワーや駅などのランドマークと、山や川での釣りの風景などが代わるがわる映し出されていく。文明と自然、都市的なものとロハス的なもの、それらの共存なのか対比なのかはわからないが、やはりなにかを投げかけてくる映像表現だった。
 最後はアルバムにも参加していた MC.sirafu、中川理沙、食品まつりも加わり大団円……手ちがいにより、食品まつりが2曲のあいだほぼなにもできず棒立ち状態に陥るアクシデントはあったものの、うまい具合に電子ノイズの即興でイヴェントは幕を下ろした。

 こちらがそういう構えでいたからかもしれないが、3組ともそれぞれのやり方でコロナ禍におけるひとの集合のあり方、身体性の新しいかたちを探っているように感じられた。大声で騒ぐのではなく、といって孤独にストイックに音に没入するのでもない、そのはざまを探るようなライヴ。
 このときは「まん防」だった。その後四度めの非常事態宣言が発せられ、醜悪にもオリンピックが強行開催されようとしているいま思い返してみると、この日は地獄のなかにさっと吹きこむ、一陣の涼風のようなイヴェントだった。

いま聴くべきダンス・ミュージック6選 - ele-king

 いま、フロアに行くことは難しい状況だけど、そんなときでも素敵なダンス・ミュージックはたくさんリリースされている。セレクトしたものはすべてフロアを志向しているのと同時に、できるだけリスニング視点もあるサウンドを取り上げるよう留意した。なので、家で聴くのにも楽しめるセレクトになっていると思う。
 また、〈Defected〉や〈PARLOPHONE〉などの巨大レーベルは別として、そのほかはレーベルという視点で切り取ってみても面白いものばかりなので、気に入ったならそこから掘ってみるのもいいと思う。とくに〈Shall Not Fade〉からはふたつも取り上げているが、このレーベルは好リリースを連発している。UKのアンダーグラウンドなハウス~UKガラージはこれからもっと活況を見せるに違いない(という願望)ので、とくにこのレーベルの動向はよくチェックしておくべきだ。
 自分が普段よく聴いているお気に入りのダンス・ミュージックたちです。ここからみなさんの生活にささやかな広がりをもたらせたら嬉しいです。


Barry Can’t Swim - Amor Fati EP Shall Not Fade

 こういうディープでジャジーなハウス・ミュージックは、踊れる要素がありつつ家聴きにも適している、と僕は思っている。EPのなかでは、ジョー・サンプルの “Black Is the Color” をサンプリングした “Jazz Club After Hours” がいちばん心地よく、僕はこれをぼうっとしながら部屋で何度も聴いている。が、「家聴き」とは言いつつ、このEPには夏を憧れるような雰囲気が同時にあり、確かに “El Layali” におけるまばゆいピアノは、カラッと乾いた太陽の下にいるかのような気分にさせるし、“Rah That’s a Mad Question” におけるフィルターの抜き差し、ピアノとリヴァーブのかかったギターの組み合わせは、メロウな夕立の海で聴きたくなってしまう。
 今年も夏は来るのだろうか、自由で開放的なあの空間はあるのだろうか。そんな外への憧れが家のなかでふつふつと湧き上がってきたら、このEPのヴァイブスはさぞや期待に応えてくれるだろう。


Lxury - Smart Digital Life EP Shall Not Fade

 ラグジュアリーを初めて知ったのはたしか……ディスクロージャーの BBC Essential Mix をアホみたいに聴きまくってた高校生のころ、そのトラックリストで名前を見つけたときだった気がする。そこからずいぶんと時間が経ち、〈Shall Not Fade〉から、ついにEPをリリース。僕が彼を発見した “J.A.W.S” (ディスクロージャーがプロデュース)から較べると、より様々なサウンドを吸収しながら、すべてに渡ってきらびやかなシンセを展開した、モダンなハウス・ミュージックに仕上がっている。オープナーの “1722” における、大胆なクラップやピッチの操作されたヴォーカル・サンプルを聴くと過去の音を想起しかけるが、続いて “Spin” や “When I Wake Up” を聴いてみると、そのプロダクション・スキルが時を経てあきらかに飛躍しているのだと確信させられる。


Elvin T - Get Close EP ReGraded

 ダンス・ミュージックが好きで「ミッドランドのシークレット・ウェポン」という触れ込みに興味を引かれないひとはいるのだろうか? ロンドンのプロデューサーであるミッドランドの主宰する〈ReGraded〉からの最後のリリースは、過去3年間において、ミッドランドが数々のヴェニューのピークタイムでスピンしていたという、エルヴィンTの “Get Close” に決まった。ギターとストリングスのサンプリングが四つ打ちに乗りながらじょじょに展開していき、やがて「I wanna touch you」と繰り返しのヴォーカルがあらわれる……高揚感あふれるリッチなディスコ・ハウスに仕上がっており、たくさんのひとがトラックIDを探し求めたのも納得のクオリティだ。EPにはいわゆる「Radio Edit」ヴァージョンが収録されているが、これは絶対に「Extended」ヴァージョンで聴かなければならないやつ。


Todd Edwards - “Can’t You Believe?” Defected

 およそ150にも及ぶトッド・エドワーズのカタログが、このたびデジタル/ストリーミング配信された。スマホの画面からのぞかせる、無骨なブラックラベルのジャケットはとっても味気なく思えたけれど、つぶさに聴くとやはりUKガラージは最高だと思わせてくれる。ニューヨークのガラージ・ハウスからロンドンのUKガラージへ、その過程における重要人物のひとりがトッド・エドワーズなのだ。それらの素晴らしい仕事が一挙にアクセス可能になったのだから、聴かないわけにはいかないだろう。BBC Radio1 にて、ジョイ・オービソンが序盤に “Can’t You Believe?” をスピンしていたことは、このアメリカ人DJがUKのダンス・シーンにおいていかにリスペクトされているかを如実に示している。ハウスの反復的な四つ打ちが退屈になったら聴いてみてみよう。まさに「JESUS LOVES UK GARAGE」を感じるサウンドであふれている。


PinkPantheress – Passion PARLOPHONE

 ウィンドウズのスクリーンセーバーを模したジャケに、2分程度の尺、そしてささやくかのような気だるいヴォーカル。これらの要素はいかにも現代的なポップ・ソングであるし、そんな音楽がTik Tokから出現した20歳の女の子によるものだというのは、想像に難しくない。しかし、突如としてジャングルのリズムが展開されるそのプロダクションには、ほかのありがちなポップ・ソングでは感じない違和感がある。彼女はほかにもUKガラージのバンガーから、あるいはドラムンベースのクラシックなどから拝借しており、つまり、20歳の女の子がネット上で気軽に作った音楽と90~00年代のダンス・トラックが出会うことで、ちぐはぐではあるが面白いサウンドが生まれている。これで踊るのはあまりに短すぎるものの、彼女のサウンドがどういう展開を見せるか気になるので、取り上げてみました。


Unknown Artist - Ghost Phone 004 Ghost Phone

 もしレコード屋で、このカートゥーンのキャラクター(ポー○ー・ピッグ?!)をあしらった12インチを発見したら、迷わず買ったほうがいい。カタログすべてが連番のシンプルなタイトルに「Unknown Artist」表記。ヴァイナル・オンリーの謎めいたレーベルで、僕が知っている情報は、ブリストルのショーン・ケリーが主宰していること、〈Honest Jon’s〉がディストリビューションで関わっていること、そしてカタログすべてがめちゃくちゃかっこいいこと、その3つだけだ。ドレイクの大ヒット “Passionfruit” (元ネタはムーディマンのライヴ)からのサンプリングや SZA のリエディット、あるいはトラップ、ダブステップ、ベースなど、一定のフォームに束縛されない実験的なサウンドを提供している。今作「Ghost Phone 004」も、ときにメロウなR&B、ときに2ステップなリズムと常に飽きさせない。自分の足で歩かなければ買えない素敵な音楽もあるということで、たまにはレコード屋にも出かけよう。

Goldie - ele-king

 ベリアルが “Inner City Life” をリミックスしたり、スケプタとのコラボ曲 “Upstart” が話題を集めたりしたのが2017年。後進にも大きな影響を与えているゴールディーだが、このたび1995年のアルバム『Timless』の25周年記念盤がリリースされている。ゴールディー本人監修によるリマスターが施されており、レア曲やリミックスを収めたボーナス・ディスク付きのCD3枚組仕様。未聴の方は、ぜひこの機に。

ドラムンベースの金字塔作品が25周年を記念してリマスター復刻

4ヒーローの『Parallel Universe』と双璧をなすゴールディーによるドラムンベース初期の金字塔『Timeless』が発売25周年を記念してアニバーサリー・エディションとして未発表発掘&リマスター復刻! ソリッドなビートとフューチャリスティックな流線形サウンドをミックスしてアンダーグラウンドなクラブ・サウンドをネクストレヴェルへと引き上げたシーンのマイルストーン的な一枚。いま聞いても全く色あせることのない、まさに「タイムレス」なマスターピース。


アーティスト名:GOLDIE(ゴールディー)
アルバム・タイトル:Timeless - 25 Year Anniversary Edition(タイムレス 25周年記念盤)
商品番号:RTMCD-1480
税抜定価:2,700円
レーベル:London Records
発売日:2021年7月18日
直輸入盤・帯/英文解説日本語対訳付

◆ドラムンベースというイギリス独自のジャンルを4・ヒーローやロニ・サイズらと共に開拓し発展させ、00年代以降のベース・ミュージックのシーンにも大きな影響を残したUKクラブ・シーンの生ける伝説ゴールディー。

◆その名声を決定づけたデビュー・アルバム『Timeless』の発売25周年を記念した再発企画(オリジナル発売は1995年、ロンドン・レコード/FFRRからのリリース)。

◆ダイアン・シャーラメインのボーカルをフィーチャーしたリード・シングルの「Inner City Life」は、UKチャートのトップ40へと躍進し、ドラムンベースという音楽ジャンルが、アンダーグラウンドなクラブ・シーンから飛び出し広く一般的な注目を集める最初のきっかけとなった、歴史的にも重要な90年代クラシックス。

◆壮大なシンフォニーの「Timeless」、盟友ロブ・プレイフォードとの問答無用な直球ドラムン「Saint Angel」、メイズのベース・ラインが炸裂した「A Sense Of Rage」、意表を突くイーノのシンセが異郷トリップを誘う「Sea Of Tears」、生ドラムでレイドバックした「State Of Mind」、クリーヴランド・ワトキスのジャジーなチルアウト曲「Adrift」などなど、バラエティに富んだ楽曲群が、ゴールディーのアルバム・アーティストとしての新たな側面を、見事にあぶり出しております。まさに「タイムレス」なマスターピース。

◆本人監修によるリマスター、レア曲やリミックスを収めたボーナス・ディスク付きの3枚組。

◆クラフトワークやテクノのガイド本などの著作もあるジャーナリストのティム・バーによる解説の日本語対訳を添付予定。

[収録楽曲]

CD1
1-1a Inner City Life
1-1b Pressure
1-1c Jah
1-2 Saint Angel
1-3 State Of Mind
1-4 This Is A Bad
1-5 Sea Of Tears
1-6 Jah The Seventh Seal

CD2
2-1 A Sense Of Rage (Sensual V.I.P. Mix)
2-2 Still Life
2-3 Angel
2-4 Adrift
2-5 Kemistry
2-6 You & Me

CD3
3-1 Timeless [Instrumental]
3-2 Kemistry (VIP Mix)
3-3 Angel (Grooverider Re-edit)
3-4 State Of Mind (VIP Mix)
3-5 Still Life (VIP Mix) [The Latino Dego In Me]
3-6 Saint Darkie
3-7 Inner City Life [4 Hero's Part 2 'Leave the planet mix')
3-8 [re:jazz] - Inner City Life
3-9 Sensual

Island People - ele-king

 〈raster-noton〉が、バイトーン(オラフ・ベンダー)の〈raster〉と、アルヴァ・ノト(カールステン・ニコライ)の〈noton〉に分裂し、それぞれの道を歩みはじめたことは、10年代の先端的な電子音響音楽において重要なトピックだった。電子音響、エレクトロニカを牽引していたレーベルが終わりを迎えたからだ。
 その〈raster〉が始動後(再起動後とでもいうべきか)に最初にリリースしたアルバムがアイランド・ピープル『Island people』(2017)である。彼らのアルバムをレーベルのファースト・リリースとしたところに〈raster〉=オラフ・ベンダーの意志を感じたものだ。つまり高品質なエクスペリメンタル・エレクトロニック・ミュージックを送り出していくという意志だ。じじつ〈raster〉は、この4年のあいだ流行に左右されずに、質の高いエレクトロニカをコンスタントに送りだしてした。その原点にアイランド・ピープルがあったのだとは言い過ぎだろうか。しかしわたしが彼らのサウンドが忘れられなかったことは事実だ。折に触れ何度も繰り返し聴き続けた。

 アイランド・ピープルはスコットランド・アイルランド出身の4人の音楽家/サウンド・デザイナーによるグループである。ダフト・パンクやジェフ・ミルズ、リカルド・ヴィラロボスやカール・クレイクなどを手掛けた人気のマスタリング・エンジニアのコナー・ダルトン、グラミー賞受賞プロデューサーのデイヴ・ドナルドソン、シリコン・ソウルのグレアム・リーディー、ギタリストのイアン・マクレナンがメンバーである。先にグループと書いたが、「バンド」といってもいいかもしれない。それほどまでに4人の個性が交錯しているサウンドに聴こえるのだ。
 プロデューサーとエンジニアが在籍するアイランド・ピープルのサウンドは高品質なアンビエンス/アンビエントを実現していた。まるで映画のサウンドトラックを思わせるようなムードである。その音は緻密かつ繊細に設計され、美しくも深淵な音響空間を実現していた。どこかアンドレイ・タルコフスキーのSF映画『惑星ソラリス』を思わせもする。その意味で同じく2017年リリースの坂本龍一『async』との親和性も感じられた。

 前作『Island people』から4年の月日を経て送り出された新作が本作『II』である。待ちに待ったというより、不意に届けられたという印象で、一聴すると基本的に『Island people』のサウンドを継承しているように感じられた。しかしその音は以前よりダークであった。何か世界の変容を捉えようとするように、サウンドの移り変わりは、ゆったりとした映画の長いワンシーン・ワンショットのカメラワークを思わせた。レーベルは「初期のアントニオーニ映画のロング・トラッキング・ショットのように展開され、時間が止まっているようで、その瞬間を巡っている」と書いているが(https://raster-raster.bandcamp.com/album/ii)、まさに言い得て妙である。

 つまり前作に比べて、どこか暗く沈んだムードのアルバムなのだ。しかしそれが不快ではない。流行や時間の流れを超越したかのようなサウンドであり、その静かで、不穏で、「人がいない世界」のような音響空間には心を鎮静するような力すらある。特にドラマチックな流れのサウンドを展開する1曲目 “His Illusion” からインナースペースへと沈み込んでいくような3曲目 “Loneliness Has A Purpose” までの展開には孤独のアトモスフィアがうっすらと漂っていた。アルバムはそんなムードを反復するように展開していく。
 環境音と電子音が深海と廃墟の中で交錯するような4曲目 “Far From Shore” と5曲目 “Ten Green Bottles”、ギターのアルペジオが映画音楽的なムードを彩る6曲目 “Idyll”、緊張感に満ちたアンビエントを展開する8曲目 “Stillness”、環境音楽的なシンセサイザーに濃厚な音色のギターを聴かせる9曲目 “Luna” まで、まるでひとけのない都市を彷徨するような音世界だ。その映画音楽的なサウンドに聴きいっているとコロナ禍でロックダウンされた都市の音響のように聴こえたほどだ。加えて、ヴォーカリストのアリス・ヒル・ウッズを招いたヴォーカル曲 “Stalling”(10曲目)が収録されたことも重要なトピックだろう。アルバム・ラストの12曲目 “Traffic” では、スペイシーな電子音響アンビエントを展開し、地球を俯瞰するようなムードになり、アルバムは幕を閉じる……。

 全12曲、アイランド・ピープルは流行り廃りを超えた普遍的な電子音楽を構築しようとしているのではないか? と感じられた。尖端から深淵へ。流行から普遍へ。モードからスタイルへ。10年代まで切り拓かれてきた電子音響音楽の世界は、いま、聴き手の心に作用するアトモスフィアを得ようとしている。それこそがこのアルバムが獲得した不思議なリアリティの正体なのかもしれない、と思うのだ。

食品まつり a.k.a foodman - ele-king

〈Hyperdub〉からニュー・アルバム『Yasuragi Land』を送り出したばかりの食品まつり。同作の発売を記念し、リリース・パーティが開催されることになった。昼の部(8月8日開催)と、「サウナ」「水風呂」の2フロアにわかれた夜の部(9月11日開催)の2部構成という、ユニークな開催方式です。食品まつりとゆかりのあるアーティストを含む全20組がかけつける……これは行きたい!

Local World x Foodman - Yasuragi Land - Tokyo 2021

世界で最もピースな電子音楽家FoodmanによるUKの名門〈Hyperdub〉からの最新アルバム『Yasuragi Land』のリリパがクラブ&モードなアドベンチャー・パーティLocal WorldとSPREADにて共同開催!

土着、素朴、憂いをテーマに南は長崎、北は北海道、Foodmanに纏わるアーティスト含む全国各地からフレッシュな全20組が集まる昼のコンサートとサウナと水風呂の2フロアに別れた夜のクラブ・ナイトの2部構成、2021年の湿度と共に夏のボルテージを上げるサマー・イベント。

■SUN 8 AUG Day Concert 16:00 at SPREAD

ADV ¥3,300+1D@RA *LTD70 / Club Night DOOR ¥1,000 OFF

LIVE:
7FO
cotto center
Foodman
machìna
NTsKi
Taigen Kawabe - Acoustic set -

DJ: noripi - Yasuragi set -

・70人限定 / Limited to 70 people
・デイ・コンサートの前売チケットで9/11クラブ・ナイトのドア料金が1000円割り引かれます / Advance tickets for the day concert will get you 1000 yen off the door price for the club night on 11th Sep
・再入場可 ※再入場毎にドリンク・チケット代として¥600頂きます / 1 drink ticket ¥600 charged at every re-enter


■SAT 11 SEP Club Night 22:00 at SPREAD + Hanare

ADV ¥2,500+1D@RA *LTD150 / DOOR ¥3,000+1D / U23 ¥2,000+1D

サウナフロア@SPREAD

LIVE:
Foodman
JUMADIBA & ykah
NEXTMAN
Power DNA
ued

DJ:
Baby Loci [ether]
D.J.Fulltono
HARETSU
Midori (the hatch)

水風呂フロア@Hanare*

LIVE:
hakobune [tobira records]
Yamaan
徳利

DJ:
Akie
Takao
荒井優作

artwork: ssaliva

・Hanare *東京都世田谷区北沢2-18-5 NeビルB1F / B1F Ne BLDG 2-18-5 Kitazawa Setagaya-ku Tokyo
・150人限定 / Limited to 150 people
・再入場可 ※再入場毎にドリンク・チケット代として¥600頂きます / 1 drink ticket ¥600 charged at every re-enter

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EVENT PLAYLIST
https://soundcloud.com/meltingbot/sets/local-world-x-foodman-yasuragiland

前売リンク
Day Concert https://jp.ra.co/events/1452674
Club Night https://jp.ra.co/events/1452675

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食品まつり a.k.a foodman

名古屋出身の電子音楽家。2012年にNYの〈Orange Milk〉よりリリースしたデビュー作『Shokuhin』を皮切りに、〈Mad decent〉や〈Palto Flats〉など国内外の様々なレーベルからリリースを重ね、2016年の『Ez Minzoku』は、海外はPitchforkのエクスペリメンタル部門、FACT Magazine、Tiny Mix Tapesなどの年間ベスト、国内ではMusic Magazineのダンス部門の年間ベストにも選出された。その後Unsound、Boiler Room、Low End Theoryに出演。2021年7月にUKのレーベル〈Hyperdub〉から最新アルバム『Yasuragi land』をリリース。Bo NingenのTaigen Kawabeとのユニット「KISEKI」、中原昌也とのユニット「食中毒センター」としても活動。独自の土着性を下地にジューク/フットワーク、エレクトロニクス、アンビエント、ノイズ、ハウスにまで及ぶ多様の作品を発表している。

[最新作リリース情報]
食品まつり a.k.a foodman - Yasuragi land [Hyperdub / Beatink]
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=11814

Local World
2016年より渋谷WWWをホームに世界各地のコンテンポラリーなエレクトロニック/ダンス・ミュージックのローカルとグローバルな潮流が交わる地点を世界観としながら、多様なリズムとテキスチャ、クラブにおける最新のモードにフォーカスし、これまでに25回を開催。

Local 1 World EQUIKNOXX
Local 2 World Chino Amobi
Local 3 World RP Boo
Local 4 World Elysia Crampton
Local 5 World 南蛮渡来 w/ DJ Nigga Fox
Local 6 World Klein
Local 7 World Radd Lounge w/ M.E.S.H.
Local 8 World Pan Daijing
Local 9 World TRAXMAN
Local X World ERRORSMITH & Total Freedom
Local DX World Nídia & Howie Lee
Local X1 World DJ Marfox
Local X2 World 南蛮渡来 w/ coucou chloe & shygirl
Local X3 World Lee Gamble
Local X4 World 南蛮渡来 -外伝- w/ Machine Girl
Local X5 World Tzusing & Nkisi
Local X6 World Lotic - halloween nuts -
Local X7 World Discwoman
Local X8 World Rian Treanor VS TYO GQOM
Local X9 World Hyperdub 15th
Local XX World Neoplasia3 w/ Yves Tumor
Local XX0 World - Reload -
Local XXMAS World - UK Club Cheers -
Local World x ether

https://localworld.tokyo

label: BEAT RECORDS / Hyperdub
artist: 食品まつり a.k.a foodman
title: Yasuragi Land
release date: 2021/07/09 ON SALE
* 輸入盤LPは8月中旬発売

国内盤特典:ボーナストラック追加収録 / 解説書封入
CD予約: https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=11814
LP予約: https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=11815

downstairs J - ele-king

 思わず、「ちょうど良い」という言葉をひさびさに口走ってしまった downstairs J なるアーティストのLP『basement, etc...』。いわゆるダウンテンポというよりかはテクノで、しかしリズムは強すぎず多様に躍動していて、クリアな音質も相まって初期オウテカあたりをマイルドにしたようなそんな印象を覚える作品です。リリースはアンソニー・ネイプルズと写真家でもあるジェニー・スラッテリー(Jenny Slattery)によるニューヨークのレーベル〈Incienso〉から。

 アンソニーは〈Proibito〉を閉じた後に、この〈Incienso〉を、さまざまな才能をフックアップする、そんなレーベルにしている模様(自身の作品は〈ANS〉から)。もちろんアンソニーという現在のハウス、テクノ・シーンの重要人物のレーベルというのもあるんですが、本レーベルに関していえば、やはりDJパイソンの1st『Dulce Compañia』でその名前を記憶している方も多いでしょう。その他の作品も最高で、ダウンテンポやアートコア・ジャングルなどの絶妙な配合でモダンなテクノの柔軟な音楽性を豊かに提示して見せたベータ・リブレ(Beta Librae)の傑作アルバムや、現在、NYとともにやはりすばらしいアンダーグラウンド・アクトを輩出しまくっているメルボルンの、スリープ・Dの作品、そして本作とほぼ同時期にリリースした、こちらもメルボルンからの新生、ブレイクビーツとディープ・ハウス、テクノの折衷様式がすばらしいビッグ・エヴァー(ex コップ・エンヴィー)のシングルもありました。コール・スーパー、あとは工藤キキの驚きのシングルもこちらのレーベルからでした。どちらかと言うと、そこまでリリースの多いレーベルではありませんが「いま思い返せば」、いつでもそのサウンドがその先の未来(つまるところ現在のシーンの動き)とともに思い出せるようなそんなサウンドをキープしているレーベルといった印象です。つまりセンス良すぎる。アンソニー・ネイプルズは、言われなくてもという感じだと思いますが、〈Proibito〉時代のフエアコ・エスのフックアップとかも含めて、とにかくいい感じなんですね。

 おっと横道にそれてしまいましたが『basement, etc...』にもどると、こちら downstairs J、本名義では初となる作品で、ジョシュ・アブラモビッチというアーティストによる名義。このジョシュはグライフィック・デザイナーのようで、DJパイソンのアルバム2nd『Mas Amable』なんかも手がけています。音楽面では snacs というノスタルジックなエキゾチック・アンビエント〜ダウンテンポを(実は本原稿での下調べで一番の発見だったかも……)、VOSE 106という名義では1作、ドープなビートダウン・ディープ・ハウスをリリース。どちらも Bandcamp を探すと出てきますがなかなか楽しめる作品ですのでぜひ。

 アルバムはテクノ・インフルエンスなヒップホップ・ビートからスタート、2曲目はスキッと爽やかで軽やか、涼やかなテクノ “Solid Air City”、ダブ・ブレイクビーツ的な “Soft Tissue”、アシッドなロウ・ビート “Lab Rat Boogie”、ポコポコとアンダーウォーターなダブ感が心地よい “Adjust”、フローティングでマイルドなダンスホール “Viewing Space”、エキゾチックなダウンテンポ “Wired” と、7曲。と、文字だけだとなんだか1990年代とか2000年代の、すごく凡庸なダウンテンポ・アルバムの原稿を書いているようでげんなりなんですが、でもそこに立ち上がってくるのはモダンでアップデーテッドなテクノの音響的なミックスの音質、そこはかとないダブ感、フローティンなメロディととにかく聴けば聴くほど、その楽曲の素晴らしさがにじみ出てきます。初期オウテカ、もしくはデトロイト・エスカレーター・カンパニー、あのあたりのテクノのチル感を彷彿とさせます。もうちょっと抽象的な言葉で言ってしまえば、IDMなグリッチでも、ドープなスモーカーズ・デライトでもないクリアなチル感といってもいいのではないでしょうか、そうした要素が抽出されていて、それでいて今様な、という。ダンス方面でも1990年代テクノのいわゆるインテリジェンス・テクノ、ないしはエレクトロニック・リスニング・ミュージックと呼ばれる音楽の復古というのがありましたが、当時の音源、いわゆるアンビエント・テクノが一部がトリップホップ的な方向へと舵を切ったあたりのサウンド、だけどドープなブレイクビーツには行っていないあのあたりの感覚がいま顕在化しているんではという感覚もあります。

 で、しかもレーベルが明らかにもう少しフロア寄りのサウンドで、シングルとしてリリースしている前述のビッグ・エヴァーのシングル「Otto EP」での、多様なIDM的なリズムを内包したハウス・トラックとは少なからず本作の音楽は共鳴しています。このあたり、なにか顕在化しつつある動き、単なるトリップホップの、IDMの、リヴァイヴァルと言ってはもったないような動きではないかと妄想が膨らんでしまうような音楽です。もちろんコロナ禍の影響もあるのかもしれませんが、この惹きつけられる感じは、なにかの未来をつかまているそんな作品であるような気がしてなりません。

John Carroll Kirby - ele-king

 昨今のUS西海岸の音楽シーンを中心に、有能なセッション・ミュージシャン及びソング・ライター/プロデューサーとして活躍してきたジョン・キャロル・カービー。共演やコラボしてきたメンツには、フランク・オーシャン(“DHL”でキーボードを演奏)、ソランジェ、ブラッド・オレンジ、バット・フォー・ラッシーズ、シャバズ・パラセズ、コナン・モカシン、セバスチャン・テリエ、ジ・アヴァランチーズ、イエロー・デイズなどが並ぶ。特にブラッド・オレンジの『フリータウン・サウンド』(2016年)への参加で名を広め、ソランジェの『ホエン・アイ・ゲット・ホーム』(2019年)では主要プロデューサーに名を連ねている。1990年代に活躍したソウル・デュオのチャールズ&エディの片割れであるエディ・チャコンが昨年リリースした復活作の『プレジャー,ジョイ・アンド・ハピネス』では、全面的に制作を任されている。

 そんな裏方仕事が多いジョン・キャロル・カービーだが、自身のソロ作品も地道に作ってきており、2017年に『トラヴェル』という処女アルバムを残している。キーボード奏者である彼ならではの各種鍵盤&シンセサイザーなどを多重録音したアンビエント~ニューエイジ系の作品だった。続いてカセットのみで発表した『メディテーションズ・イン・ミュージック』(2018年)はタイトルどおり瞑想のための音楽で、『タスカニー』(2019年)はピアノのみで綴る20分弱の曲がレコードのA/B面にそれぞれ収められ、〈ECM〉的なジャズとアンビエント~モダン・クラシカルの中間のような作品だった。そんなジョン・キャロル・カービーが昨年〈ストーンズ・スロー〉と契約を結んだのは意外だったが、最近の〈ストーンズ・スロー〉はリジョイサーなどジャズからアンビエント寄りのアーティストの作品もリリースしているので、彼もそんな新機軸を担うアーティストとして期待されたのだろう。

 〈ストーンズ・スロー〉からは2020年4月に『コンフリクト』と『マイ・ガーデン』の2作が立て続けてリリースされた。『コンフリクト』は『タスカニー』の延長線上にある静穏としたピアノとシンセによる作品集で(一部にフルート演奏もあり)、“ワビ(侘び)” と題された楽曲も収録されている。彼のピアノ演奏は昨年末にコロナ感染で死去したハロルド・バッドがブライアン・イーノとコラボしていた頃のサウンドを彷彿とさせるものだ。
 『マイ・ガーデン』のほうはもう少しシンセが前面に出て、フルートやマリンバなど楽器使いもカラフルになっている。曲によってしっかりとした骨格のリズム・セクションによるジャズやジャズ・ファンク寄りのアプローチあり(日本人ベーシストの鈴木良雄が1980年代に作っていたニューエイジ・ジャズからの影響が強いようだ)、メディテーショナルなモダン・クラシカルあり、チルウェイヴやヴェイパーウェイヴに繋がるところも感じさせる楽曲ありと、より広がりのある世界を見せる作品集だ。

 そして、『コンフリクト』と『マイ・ガーデン』から約1年ぶりの新作が『セプテット』である。ちなみにジャケットの写真は前述のエディ・チャコンによるものだ。ジャズのセプテットは7人組の楽団だが、今回はジョン・ポール・マランバ(ベース)、ディーントニ・パークス(ドラムス)、ニック・マンシーニ(マレッツ)、デヴィッド・リーチ(パーカッション)、ローガン・ホーン(ウッドウィンズ)、トレイシー・ワンノメイ(ウッドウィンズ)が参加し、文字どおり7人組バンドによる録音。いままではほぼひとりで多重録音してきたが、『セプテット』はバンド・サウンドによるアプローチへ変化している。
 そうした変化は “レインメーカー” あたりに顕著で、バンド・サウンドならではのグルーヴに富むメロウ・ナンバーだ。この曲に見られるように『セプテット』の方向性はジャズとソウルやファンクの融合で、これまでのアルバムとは異なるカラーを持つ。ある意味でより〈ストーンズ・スロー〉らしいカラーのアルバムかもしれない。たとえば “スワロー・テイル” はクルアンビンあたりに近いレイドバックしたファンク・ナンバーで、レトロなアナログ・シンセの音色がサイケデリアを演出する。

 “センシング・ノット・シーイング” はアフロ・ラテン調のミステリアスなジャズ・ナンバーで、カマシ・ワシントンの『ヘヴン・アンド・アース』(2018年)にも参加していたトレイシー・ワンノメイらによる木管が重厚で神秘的な音色を奏でる。ジョン・キャロル・カービーの鍵盤はむしろ管楽器などの引き立て役で、『セプテット』において彼は全体のプロデュースを主眼としていることを示している。“ジュビリー・ホーンズ” も同様にホーン・アンサンブルが主役となるが、ここではジョン・キャロル・カービーのエレピも印象的な演奏を聴かせる。1970年代のロニー・リストン・スミスあたりに近い演奏と言えよう。
 メロウの極みと言える “ウィープ” でのエレピとマリンバの絡みも素晴らしく、サンプリング・ソースとしても有名なボビー・ハッチャーソンの名曲 “モンタラ” を彷彿とさせる世界だ。“ザ・クエスト・オブ・チコ・ハミルトン” はジャズ・ドラマーのチコ・ハミルトンに捧げた作品で、『ペレグリネーションズ』(1975年)、『チコ・ハミルトン・アンド・ザ・プレイヤーズ』(1976年)、『ノマド』(1980年)などクロスオーヴァー/フュージョン期の彼の作品をイメージしている。“ニュークレオ” のマリンバを絡めた変拍子のドラミングも印象的で、エスニックな雰囲気とミニマル・ミュージックに繋がる要素を感じさせる。ジョン・キャロル・カービーならではのニューエイジ・ジャズと言えるだろう。

〈PAN〉 × 〈Hakuna Kulala〉 - ele-king

 ベルリンの〈PAN〉と、ウガンダはカンパラの〈Hakuna Kulala〉(〈Nyege Nyege〉のサブレーベル)が手を組んだ。『KIKOMMANDO』と題された新プロジェクトは、カンパラのシーンを新たな角度から切りとるもので、音源に加え写真やMVもその一環に含まれる模様。
 8月6日にリリースされるミックステープには Blaq Bandana や Ecko Bazz、Swordman Kitala や Biga Yut といった〈Hakuna Kulala〉のアーティストが参加。〈PAN〉の STILL が全曲のプロデュースを担当している。STILL ことシモーネ・トラブッキは、かつてザ・バグが先鞭をつけたエレクトロニック・ミュージックとダンスホールの折衷を継承する音楽家で、2017年の『I』が話題となった人物だ。
 それは対話だった、とトラブッキは今回のプロジェクトについて述べている。「シンガーたちに自信を持ってもらえるような音楽的土台をつくると同時に、わたしは彼らに挑戦もした。一緒に仕事をすることはアイディアを加速させ、発明というものがひとりだけでできるものではないことを明らかにする。それこそ『KIKOMMANDO』がわたしにとってアルバムでなく、ミックステープである理由だ」とのこと。
 現在 Ecko Bazz の “Ntabala (Rolex Riddim)” が公開中。他の曲も楽しみです。

V/A (Prod. by STILL)
Title: KIKOMMANDO
Format: Digital mixtape / Book
Label: PAN / Hakuna Kulala
Cat. No: PAN 124 / HK029
Release date: 6 August 2021

01. Blaq Bandana – Nkwaata (Prod. by STILL)
02. Ecko Bazz – Ntabala (Rolex Riddim) (Prod. by STILL)
03. Swordman Kitala – Rollacosta feat. Omutaba (Prod. by STILL)
04. Biga Yut feat. Florence – Ntwala (Prod. by STILL)
05. Biga Yut – Tukoona Nalo (Prod. by STILL)
06. High Cry Interlude (Prod. by STILL)
07. Jahcity – Njagala Kubela Nawe (Prod. by STILL)
08. Biga Yut – Plupawa (Prod. by STILL)
09. Winnie Lado – The Race (Prod. by STILL)
10. Florence – Bae Tasanze (Prod. by STILL)
11. Jahcity – Tukikole Nawe feat. Omutaba (Prod. by STILL)
12. Winnie Lado – Ahlam Wa Ish السماء هي الحد (Prod. by STILL)

N0V3L - ele-king

 分断と連帯、インターネットがもたらしたもの。「インターネットの発展は、奇妙な髭を蓄えた前世紀の古風な圧制者が夢見るほかなかった大規模な社会コントロールを約束したものだ」トマス・ピンチョンがジョージ・オーウェルの1984年の新装版における序文にそう記したのは2003年のことだったようだが、2021年の現代ではその言葉がより現実的な響きを帯びてきているように思える。テクノロジーによって利便性を手に入れ、価値観が変化し、そうして新たな問題が出現し積み重なっていく。

 「後期資本主義の不気味なディスコ」そう自ら評す N0V3L の 1st アルバムが表現するのは我々が生きるフィクションのような世界だ。『NON​-​FICTION』というタイトルが指し示す世界の断片、自己が引き裂かれ消費される(“UNTOUCHABLE”)、絶望が簡略化され必要性がリプレスされる(“GROUP DISEASE”)、ポスト・トゥルースのアリバイ(“EN MASSE”)、名前を選んでサイドを決める(“INTEREST FREE”)、平和主義者だが暴力と栄光に狂喜する(“VIOLENT & PARANOID”)、利益を生む抜け道(“PUSHERS”)、シニカルな、さもなければ悪意を持った管理者のレイティング(“STATUS”)、収録された全ての曲に『NON​-​FICTION』と名付けられたこの世界の断片が映し出されている。静かに吐き捨てられる短い言葉は、暗く影を落とした世界のトレンドを支配する検索ワードのようでもあり、窓の向こうに広がるモノクロの世界を形作っているもののようにも思える(いずれにしてもそれらの言葉はイメージと結びつく)。

 N0V3L はカナダのバンクーバーを拠点とするコレクティヴで、ジョン・ヴァーレイとノア・ヴァーレイ(この二人は兄弟だ)、ブライス・クロゲシー(ミリタリー・ジーニアスとしての活動でも知られ、本作のプロデュースもしている)の中心メンバー三人は同じくカナダのコレクティヴ、クラック・クラウドのメンバーでもある。クラック・クラウドの去年のアルバム『Pain Olympics』はサイバーパンクの世界で抗う集団を描いたかのようなポストパンクの傑作だったが、N0V3L のこの『NON​-​FICTION』は同じ世界を別のやり方で描いたもののように思えてならない。クラック・クラウドが直接的に抗った世界に対して N0V3L は感情を静かにぶつけ、虚無を抱えながらも、悲しみにまみれた怒りを「現実世界のフィクション」として表現する。

 1970年代後半から80年代前半にかけての音楽、ポストパンク、ニューウェイヴ、ノーウェイヴ、ギャング・オブ・フォーやジョセフ・K、ザ・キュアー、ジェームス・チャンス(彼らはジェームス・チャンスのバック・バンドを務めたこともある)、それらからの直接的な影響を感じさせながらも N0V3L が単なるリヴァイヴァル・バンドにならないのは、そこにいまの時代の空気がしっかりと反映されているからなのだろう。構造的な暴力、ポピュリズム、利益の為に不都合を作り出す企業、インターネットによる分断、何度もリヴァイヴァルが起きるポップ・ミュージックの世界では音楽がかつての時代にはなかった、あるいは変わっていった価値観と混じり合い、現実と相対する自己の表現として成立する。そしてそれこそがポップ・ミュージックあるいはポップ・カルチャーの魅力なのだろう。エンターテインメントの中に意見や立場や葛藤があり、作品の空気を通してそれらが語られる。だからこそ時を超え機能し続けるのだ。そのことはポストパンク/ニューウェイヴのスタイルを受け継いだ N0V3L 自身が証明している。

 そうして希望もある。インターネットの明るい部分、離れた場所に住む人びとによる連帯、2019年の初頭に “TO WHOM IT MAY CONCERN” のビデオが公開されたあの瞬間、赤と黒のギャングたち、僕たちはみんなあのビデオの中に入りたかった。「20世紀は一過性の世代を生みだし、世代の形成期は、無視することの出来ないインターネットの台頭と人間性の変化の初期段階に加わることに費やされてきた。(中略)全体的なメッセージとして、このビデオは、相互接続性によってコミュニティや帰属性をより強固に感じられるよう、傍観を越えた協調にフォーカスを合わせることを提唱している。このオーディオ・ビジュアルはまた N0V3L のパブリック・アイデンティティでありテーマの追求の基礎となるものでもある」ビデオに添えられた声明文の通りに、その強烈なヴィジュアル・イメージは頭のなかに残り続け、遠く離れた場所にいる人びとに刺激を与え行動を起こさせてきた。たとえばスクイッドのオリー・ジャッジが、ユニフォームのようだったビデオのなかの N0V3L と同じあの服を着て、ドラムを叩き唄うといった具合に(なんでそんなことが起きるのかは今年出たスクイッドの素晴らしいアルバムを聞くか、あるいは “Narrator” のビデオを見ればきっとわかる)。そうやって世界にストレンジャーたちのコミュニティが出来上がっていく。

 『NON​-​FICTION』は最後に少しの希望を残して終わる。「新しいやり方、ノスタルジア/現在を掴み取ったささやきのような/指と太古のアンセムの間に挟まった砂のような」 穏やかで物悲しい響きの中に過去が流れ込み、差し押さえの通知が無関心の未来へと我々を運んでいく。しかしそれは決して絶望ではない。分断と連帯、いまはもう存在しない取り壊された賃貸住宅で、80年代の機器(Tascam 388)を使って記録された現代、適応を強制され、引きずられ、それでも未来へと進んでいく。

追悼ジョン・ハッセル - ele-king

“悪行と善行の観念を越えたところに平原が広がる。我々はそこで会おう”  ジャラール・ウッディーン・ルーミー(13世紀ペルシャの神秘主義詩人)

 ジョン・ハッセルに電話インタヴューしたのはちょうど1年前の昨年7月だった

 実はそのとき、もしかしたらこれが最後の取材になるんじゃないか……という予感があった。彼の問答には、明晰さのなかにも随所で精神的衰弱が垣間見られたから。取材3ヶ月前の同年4月には、ジョン・ハッセルの生活サポートのためのファンドが立ち上がったことをブライアン・イーノがツイートしていたが、当時ハッセルは、骨折治療とコロナ禍での健康不安により生活が困窮していたという。昨年の新作『Seeing Through Sound』により、新たなリスナーを増やしていただけに、彼の逝去はあまりにも残念だ。

 件のインタヴュー記事では『Seeing Through Sound』のことだけでなく、過去のキャリアについてもかなり語ってもらった。彼の業績に関する総論的追悼文をここで書いても、インタヴュー記事の内容の繰り返しになってしまうので、ここでは、彼の音楽的基盤から枝葉まで、その具体例を聴きながら改めて全体像を把握することで、追悼文に代えさせていただく。

ジョン・ハッセルに多大な影響を与えた音楽家たち

1. Stan Kenton『This Modern World』(53年)

 ハッセルは1937年3月、米テネシー州メンフィスに生まれた。父親が大学時代に学生バンドで吹いていたコルネットを手にしたのが小学生の時。十代半ばになるとジャズに親しみつつ、ジュークジョイント(黒人向け音楽バー)にも通っていたという。とくに魅せられたのが、スタン・ケントンのビッグ・バンドだ。“プログレッシヴ・ジャズ”を標榜し、斬新なアンサンブルを展開したケントンの50~60年代の作品は、いま聴いても驚かされる。「第四世界」の種のひとつがこの奇妙なハーモニーとリズムのなかにはあった。ちなみに、デビュー当時のキング・クリムゾン(とくにイアン・マクドナルド)もケントンに絶大な影響を受けていた。

2. Karlheinz Stockhausen「Gesang Der Jünglinge (少年の歌)」(56年)

 ハッセルはNYなどでトランペットと作曲を学んだ後、妻のマーガレット(70年代に離婚後は、前衛専門のピアニスト、カトリーナ・クリムスキーとして活動)と共にドイツに渡り、現代音楽の大家カールハインツ・シュトックハウゼンに3年弱(64~66年)師事した。カンのイルミン・シュミットやホルガー・シューカイもクラスメイトだった。渡独前からシュトックハウゼンの「少年の歌」(ミュジーク・コンクレートと電子音楽を統合した初期の傑作)に心酔し、切ったり貼ったりのテープ・マニピュレーションを独自に試みていたというハッセルは、留学時代には、50年代米国ジャズ・ヴォーカル・グループ、ハイ・ロウズの作品をコラージュしたりもした。シュトックハウゼンの下で習得した電子機器の使い方やプログラミング、テープの切り貼り等の技術は、80年代以降の彼のサンプリング・ワークの土台になった。

3. Terry Riley『In C』(68年)

 「私は彼のことが大好きだったし、お互いの妻も含め、ひとつの家族のような関係だった」と語るように、ドイツから米国に戻ったハッセルがもっとも親しくつきあい、また影響も受けたのがテリー・ライリーだ。帰国したハッセルを待ち受けるように60年代後半の米国現代音楽界で沸騰しつつあったのが現代音楽のニュー・モード、ミニマリズムだが、そのブレイクスルーの象徴的作品であるライリー『In C』の初録音盤(68年)にはハッセルと妻マーガレットも参加している。

4. Pandit Pran Nath『Ragas』(71年) 

 ハッセルは、テリー・ライリーとともにミニマリズム・ムーヴメントを牽引していたラ・モンテ・ヤングのドローン・プロジェクト《Theater of Eternal Music(永久音楽劇場)》にも加わり(ヤングの74年のライヴ盤『The Theatre Of Eternal Music - Dream House 78'17"』に参加)、そこから導き出した「垂直の音楽」(時間軸に沿った旋律聴取ではなく、微細な音色や倍音などの感知を通して音の深奥まで下降し体得する音楽的アナザー・ヴィジョン)という概念を元に、やがて「斜めの音楽」という独自の世界を目指していった。その思考過程を土台固めしてくれたのが、すでにライリーとヤングが師事していたインド古典声楽の大家パンディット・プラン・ナートだ。ハッセルは72年、ヤング夫妻に同行してインドに赴き、ナートの下でインド古典声楽の修業をした。やがて、音のなかに曲線を描くナートの歌唱技術は、トランペットを共鳴管として歌わせるハッセルの演奏技法そのものとなっていった。ハッセルはナートから学んだことを「自分の音楽の中で最も大きなポジションを占める」と告白している。

5. Μiles Davis“He Loved Him Madly”(74年)

 ライリー&ヤングやパンディット・プラン・ナートと並びハッセルの表現にもっとも大きな影響を与えたのがエレクトリック期(60年代末期~70年代半ば)のマイルズ・デイヴィスだ。ピックアップを仕込んだマウスピースを歌うように響かせ、エンヴェロープ・フィルターなどで電気処理するというハッセルの演奏技法は、当時のマイルズのワウ・ペダルを参考にしたものであり、その技法は今日ニルス・ペッター・モルヴェルなどによってさらに発展している。ハッセルはいくつかのインタヴューでとくに愛着のあるマイルズの作品として『On The Coener』(71年)や『Live-Evil』(72年)などを挙げているが、音色やムードが最も近いのは『Get Up With It』のA面曲“He Loved Him Madly”だろう。これがハッセルのソロ・デビュー作『Vernal Equinox』に直接的に影響を与えたことは想像に難くない。

11枚で俯瞰するジョン・ハッセルの軌跡

1. Jon Hassell『Vernal Equinox』(77年)

 ジョン・ハッセルの名前と「第四世界」なる新コンセプトを一躍世界に広めたのは言うまでもなくブライアン・イーノとの連名で発表された『Fourth World Vol. 1 - Possible Musics』(80年)だが、そこで示された斬新なサウンド・プロダクションの大半、そして彼の表現の核である夢幻的官能性は既にこのソロ・デビュー作の中に十分すぎるほど認められる。キーワードの「第四世界」こそ明記されてはいないが、コンセプト自体はこの何年も前から彼の頭のなかにはあった。乱暴に言ってしまえば、本作にイーノがエレクトロニクスでトリートメントを加えたのが『Fourth World Vol. 1 - Possible Musics』だったのだ。米ピッチフォーク誌の「アンビエント・アルバム歴代ベスト50」リストでも47位に選出されているが、個人的にはベスト10に入れるべき作品だと思う。ハッセルは近年のインタヴューでこう語っている。「当時私は、電子技術を組み合わせた管楽器によってラーガとミニマリズムの相克を探求していた。最近、本作に内包された種子が自分にとっていかに重大なものだったかが改めてわかり、驚嘆した」

 録音は76年、トロントのヨーク大学エレクトロニク・メディア・スタジオ。参加しているのは、「永久音楽劇場」の仲間であり、人体の自律神経を用いた音楽作品 (バイオ・フィードバック・ミュージック) で一躍注目を集めていた実験音楽家デイヴィッド・ローゼンブーム、純正律や現代音楽的ガムランなどで80年代に有名になる実験音楽家ラリー・ポランスキー、パリから米国に移ったばかりのブラジル人パーカッション奏者ナナ・ヴァスコンセロスなど、実験音楽と民族音楽の両方を自在に行き来するクセ者ばかり。そしてエンジニアを務めたのは、80年代以降、ブライアン・イーノやダニエル・ラノワの右腕的コラボレイターとして、あるいはリアルワールド系作品のプロデューサーとして大活躍することになるマイケル・ブルック。当時パンク・シーンでギターを弾いていたブルックは、ここでのハッセルとの出会いをきっかけに、世界中の民族音楽に興味を持つようになったという。

2. Talking Heads“Houses In Motion”(80年)

 「こういう作品を待ち望んでいた」と絶賛したとおり、『Vernal Equinox』はブライアン・イーノに絶大な影響とインスピレイションを与えた。そしてハッセルもまた、イーノとの出会いをきっかけにポップ・ミュージック・シーンと関わり始めた。その最初のコラボ・ワークが、トーキング・ヘッズの傑作『Remain In Light』 への参加だ。アフリカ音楽のリズムを大胆に取り込んだ本アルバムへの賛辞“原始と電子の融合”は、そのままハッセルの「第四世界」のコンセプトでもある。翌年出たイーノとデイヴィッド・バーンの連名による『My Life In The Bush Of Ghosts』にはハッセルは参加しなかったが、そこで展開されたエスノ・エレメントのコラージュ・ワークは、元々はハッセルのアイデアであり、後年彼はインタヴューで「二人にパクられた」と恨み言をつぶやいている。

3. Jon Hassell『Aka / Darbari / Java - Magic Realism』(83年)

 ハッセルは、マレー半島の山岳少数民族セノイ族の夢理論をモティーフにした『Dream Theory In Malaya (Fourth World Volume Two)』(80年)を経て、この次作では「第四世界」上に「マジック・リアリズム」という新コンセプトを積み重ねた。ここでは、世界初のデジタル・サンプリング・キーボード「Fairlight CMI」を導入し、ピグミーのコーラスやセネガルのドラム、イマ・スマックのレコードなど様々なサウンド・エレメントを細分化、再構築している。サンプリング/コラージュやミニマリズム、インドのラーガなどから始まったハッセルの初期キャリアの、これが最高到達点だろう。

4. David Sylvian「Brillant Trees」(84年)

 ハッセルが参加したロック系作品のなかで、『Remain In Light』と並びもっとも有名かつ印象的なのが、デイヴィッド・シルヴィアンの初ソロ・アルバム『Brilliant Trees』だろう。全7曲中の2曲でトランペットを演奏。ハッセルの参加がどういう経緯だったのかは不明だが、本アルバムには元カンのホルガー・シューカイ(ハッセルとはシュトックハウゼンの同門)も参加しており、もしかしたらホルガー経由(推薦)だったのかもしれない。ちなみにカンにも「第四世界」とは似て非なる「E.F.S.(Ethnological Forgery Series=民族学的偽造シリーズ)」というコンセプチュアル・ワークがあった。

5. Kronos Quartet「Pano da costa (Cloth from the Coast)」(87年)

 クロノス・クァルテットがハッセルに委嘱した弦楽四重奏曲。クロノスのアルバム『White Man Sleeps』に収録。ハッセルをクロノスに紹介したのは、クロノスにたくさんの楽曲を提供しているテリー・ライリーである。ここでの演奏にはハッセルは参加していないが、楽曲自体はハッセルの世界そのものだ。おそらくここから発展したのだろう、クロノスの93年のアルバム『Short Stories』ではハッセルの師パンディット・プラン・ナートが歌った曲も入っている。

6. Jon Hassell/Farafina『Flash Of The Spirit』(88年)

 デビュー作『Vernal Equinox』で電子音楽家デイヴィッド・ローゼンブームにもンビラやタブラ等を担当させるなど、当初からパーカッションに強いこだわりを持っていたハッセルがブルキナファソの伝統音楽打楽器アンサンブル(7人編成)ファラフィーナとガップリ四つに組んだ作品。バラフォンやタマ、ジャンベなどが複雑に織り成すアフリカン・ポリリズムのなかをハッセルの電化トランペット/キーボードが蛇行する様は「第四世界」音楽のわかりやすいサンプルか。パーカッシヴな名曲としては、同年にジャン=フィリップ・リキエル他とイタリアでライヴ録音した「Pygmy Dance」(91年のオムニバス盤『Ai Confini / Interzone』に収録)もお勧めだ。

7. Les Nouvelles Polyphonies Corses With Hector Zazou「In La Piazza」(91年)

 フランスの前衛室内楽ユニット「ZNR」での活動を経て、80年代にはアフリカ他世界中の伝統音楽を独自に加工したキッチュなエスノ・ポップで名を馳せた才人エクトール・ザズー。なかでも人気が高いのが、コルシカ島のポリフォニー・コーラスを素材にしたアルバム『Les Nouvelles Polyphonies Corses Avec Hector Zazou』だ。ハッセルは3曲に参加。様々な声とトランペットがもつれ合いながら描くヒプノティックな曲線が美しい。

8. Jon Hassell & 808 State「Voiceprint」(90年) 

 ハッセルは都市のノイズに焦点を当てた90年のアルバム『City:Works Of Fiction』あたりからクラブ・ミュージックやヒップホップとも接近しはじめた。同年には『City:Works Of Fiction』のオープニング・ナンバー「Voiceprint」の808 Stateリミックス・ヴァージョンを含むミニ・アルバムと12インチ・シングル「Voiceprint」もリリース。後年にはリカルド・ヴィラロボスやアルカなどもハッセルをサンプリングしている。

9. Jon Hassell & Bluescreen『Dressing For Pleasure』(94年) 

 パブリック・エナミーをヴォーカル・サンプリングした『City:Works Of Fiction』以上にヒップホップ色濃厚な作品がブルースクリーン(DJを含む4人組)と組んだ『Dressing For Pleasure』だ。デューク・エリントンのエキゾティック・チューン“Bakiff”を含む細かいサンプリングで精緻に構成しつつ、全体を貫くのはブレイクビーツ。

10. Jon Hassell / I Magazzini「Temperature Variabili」(95年)

 ハッセルはライ・クーダー絡みの映画音楽にもいくつか参加しているが、『Sulla Strada』はイタリアの前衛劇団「イ・マガッツィーニ」の演目のための音楽集だ。アルバム全体にわたりハッセルが過去に試みてきた様々な技法やスタイルがちりばめられ、随時、イ・マガッツィーニの声もランダムに混入される。サウンド・スペクタクルとして非常にヴァラエティに富み、面白い作品だ。

11. Jon Hassell『Fascinoma』(99年)

 ナット・キング・コールのスタンダード・ナンバーとして有名な“Nature Boy”(モンド/エキゾティカ文脈で知られる奇人作曲家エデン・アーベの作)で幕を開け、デューク・エリントンのナンバーなどもカヴァした異色アルバム。ハーモナイザー等エフェクターなしの素ペット演奏も聴ける、一種のジャズ回帰/回顧作。しかしバンスリや木魚の音が突然出てきたり、「キャラヴァン」にタンブーラが妖しく絡みつく「Caravanesque」なんてのがあったりと、どこまでもハッセル・フィルターを通した幻想のジャズである。ジャズ・ピアニストのジャッキー・テラソンが全面参加し、プロデュース/ギターはライ・クーダー。

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