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UNKNOWN ME

UNKNOWN ME

@神宮前 Galaxy

2021年6月27日(日)

小林拓音 Jul 20,2021 UP

 毎日こうも過酷な暑さがつづくと、あの涼しかった音空間が猛烈に恋しくなってくる。

 今春、LAの〈Not Not Fun〉から初のLP『BISHINTAI』を発表した UNKNOWN ME。ユニットとしての知名度はまだそれほどないかもしれないが、やけのはら、P-RUFF、H.TAKAHASHI の3人と、ヴィジュアル担当の大澤悠大からなるアンビエント・プロジェクトである。ヴィジブル・クロークス以降のアンビエント/ニューエイジの流れとリンクしつつ、その更新を試みているグループと言っていいだろう。6月27日、アルバムのリリース・パーティが開催されるというので足を運んできた。場所は神宮前 Galaxy。食品まつり a.k.a foodmansatomimagae、Chee Shimizu と、かなり豪華な面子がそろった。

 階段をくだり地下のエントランスを抜けると、ひんやりと冷えた空気が漂っている。すでに satomimagae のパフォーマンスははじまっていた。30~40人ほど集まっていただろうか、にもかかわらず、下手したら空調の音まで聞こえかねないほど会場は静まりかえっている。耳に浸透するかなしげなギターの音と、澄んだ satomimagae のヴォーカル。〈RVNG〉から出たすばらしい新作でも独自の静けさを表現していた彼女だが、ライヴでは一層そのサイレンスが際立って聞こえる。音が鳴っているのに、サイレンス。おかしな話だが、ほんとうにそうとしか形容のできない体験なのだ。
 最後の曲が終わると、一気に会場が談話に包まれる。つなぎDJは Chee Shimizu。おとなしすぎず、主張しすぎず、絶妙なあんばいのアンビエントやオブスキュアなトラック群が空間を彩っていく。

 ふた組めは、〈Hyperdub〉からの新作を控える食品まつり。ここでオーディエンスが50人くらいまで増える。アンビエントでスタートしたセットはほぼ低音を用いることなく、ちゃかぽこした上モノで引っぱっていく感じで、これまたどこか涼しげなサウンド。じょじょに実験性が高まっていき、後半になるとダンサブルな反復が飛び出しパーカッションの饗宴を迎えるが、最後はやはり静けさを強調した電子音で〆。「聴きこむ/踊る」という二項対立を宙吊りにするかのようなセットは、この満足には踊れない時代、身体はどう音に反応すべきなのかという問いを提起しているかのようだった。やはり食品まつり、あなどれない。

 ふたたびつなぎDJをはさんで、いよいよ主役の UNKNOWN ME。4人全員がワイシャツとネクタイを着用して登場、ずらっと横一列に並ぶ。きれいなシンセ音、水やひぐらしなどの具体音が入れかわり立ちかわり登場し、白昼夢のごとき音空間が生成されていく。これは、涼しい。基本的にアルバム収録曲が演奏されていたはずで、ほとんどがノンビートなのだが、ビートはなくともリズムはあり、ここでもコロナ時代における身体性について考えさせられることになる。
 ヴィジュアルも手がこんでいて、東京タワーや駅などのランドマークと、山や川での釣りの風景などが代わるがわる映し出されていく。文明と自然、都市的なものとロハス的なもの、それらの共存なのか対比なのかはわからないが、やはりなにかを投げかけてくる映像表現だった。
 最後はアルバムにも参加していた MC.sirafu、中川理沙、食品まつりも加わり大団円……手ちがいにより、食品まつりが2曲のあいだほぼなにもできず棒立ち状態に陥るアクシデントはあったものの、うまい具合に電子ノイズの即興でイヴェントは幕を下ろした。

 こちらがそういう構えでいたからかもしれないが、3組ともそれぞれのやり方でコロナ禍におけるひとの集合のあり方、身体性の新しいかたちを探っているように感じられた。大声で騒ぐのではなく、といって孤独にストイックに音に没入するのでもない、そのはざまを探るようなライヴ。
 このときは「まん防」だった。その後四度めの非常事態宣言が発せられ、醜悪にもオリンピックが強行開催されようとしているいま思い返してみると、この日は地獄のなかにさっと吹きこむ、一陣の涼風のようなイヴェントだった。

小林拓音