「S」と一致するもの

Cornelius - ele-king

 先行シングル曲の「夢寝見」〜「Aeons」、すでに評判になっていますね。期待が高まるコーネリアスの3年ぶりのアルバム『Refractions』、発売(8/19)までまだ時間がありますが、ここにきて、コーネリアスからまたも新情報。

 デジタル・シングル「Aeons」が好評配信中のコーネリアスが、前作アルバム『夢中夢』のリリース前から現在までのライヴ・ワールドツアーをまとめたドキュメンタリー映像を解禁。Youtubeにて公開中である。
Cornelius "Dream in Dream" Tour Document Episode 1
YoutubeURL : https://youtu.be/8tQnxt2wxQA

 同映像は全4回の配信を予定しており、今回はその1回目。ライヴ活動の再開となった2022年7月30日のフジロックフェスティバルから、東南アジアツアー、2023年のオーストラリアツアーまでの映像が公開された。今回の映像では出演した各地の音楽フェス、インドネシア(ジャカルタ)“JOYLAND”、タイ(バンコク) “Maho Rasop Festival”、オーストラリア(メルボルン) “RISING”、(シドニー)“Vivid Sydneyに出演時の様子などが堪能でき、9月10日から開催される国内ツアー“REFRACTIONS TOUR 2026”への期待が高まる。

 また、ニュー・アルバム『Refractions』を携えた全国ツアーの開催も決定。
 本日18:00よりチケット二次先行受付がスタート。「Refractions」のカセットテープが付いた特典付きチケットは今回が最終受付となるため、ご希望の方はお早めに。

■CORNELIUS REFRACTIONS TOUR 2026
9/10(木) 神奈川・KT Zepp Yokohama
9/12(土) 広島・広島クラブクアトロ
9/13(日) 福岡・Zepp Fukuoka
9/19(土) 北海道・Zepp Sapporo
9/22(火/祝) 愛知・Zepp Nagoya
9/23(水/祝) 大阪・Zepp Namba (OSAKA)
9/26(土) 宮城・仙台PIT
10/2(金) 東京・Zepp Haneda (TOKYO)
10/3(土) 東京・Zepp Haneda (TOKYO)
10/6(火) 東京・Zepp Shinjuku (TOKYO)

CORNELIUS REFRACTIONS TOUR 2027
6/19(Sat) Barbican Centre (LONDON)

■チケット二次先行受付
受付期間:2026/6/10(水)18:00~2026/6/21(日)23:59  
受付URL:https://l-tike.com/cornelius/

『Refractions』
(CD/WPCL-13774/¥3,300+税)
Linkfire : https://cornelius.lnk.to/refractions

※CDショップ特典:以下の対象店舗でご予約・ご購入で先着で特典をプレゼント。
Amazon.co.jp メガジャケ
楽天ブックス:缶バッジ
セブンネットショッピング:レコードモチーフコースター
その他CDショップ:ステッカー

■「Aeons」Digital Single
配信URL:https://Cornelius.lnk.to/aeons
配信元:ワーナーミュージック・ジャパン
Music Video : https://youtu.be/14-VSYqIRWw

■「Aeons Tシャツ」
「Aeons」の発売を記念したTシャツをWarner Music Storeにて販売開始。
サイズ:S・M・L・XLの4サイズ展開

Warner Music Store:https://store.wmg.jp/collections/cornelius/products/6661

■LIVE情報

WORLD HAPPINESS 2026
6/28(日) 代々木第一体育館 

SUMMER SONIC 2026
8/15(土) MAKUHARI MESSE
8/16(日) EXPO‘70 COMMEMORATIVE PARK

【Cornelius Profile】
1969年東京生まれ。
1989年、フリッパーズギターのメンバーとしてデビュー。
バンド解散後1993年、Cornelius(コーネリアス)として活動開始。
現在まで7枚のオリジナルアルバムをリリース。
自身の活動以外にも、国内外多数のアーティストとのコラボレーションやREMIX、
インスタレーションやプロデュースなど幅広く活動中。

Greg Fox, iD-sus, YPY and Discovery Zone - ele-king

 昨秋来日を果たしたニューヨーク拠点のドラマー、グレッグ・フォックス。その再来日が早くも決定している。ほかの出演者として今回は、こちらもNY拠点のプロジェクトiD-sus(初来日)、日野浩志郎によるYPY、エクスペリメンタル・ポップ・プロジェクトのディスカヴァリー・ゾーン(DJ)らが名を連ねる。6月28日は落合soupへ集合しよう。

https://www.artuniongroup.co.jp/plancha/top/zs/2026-06-28-soup/

GREG FOX, ID-SUS, YPY with DISCOVERY ZONE DJ set @ oshiai soup


Designed by iD-sus

ニューヨークを拠点に活動する現代屈指のドラマー/マルチ・インストゥルメンタリスト、Greg Fox。初来日となる、ダカールとシアトルにルーツを持ち、音楽、パフォーマンス、彫刻的サウンド、スペキュレイティヴ・フィクションを横断するニューヨークのプロジェクト iD-sus。そして、goat / KAKUHANとしても国際的に活動する日野浩志郎による電子音楽ソロ・プロジェクト YPY。さらにDJとして、ニューヨークのミュージシャン/マルチメディア・アーティスト JJ Weihlによるエクスペリメンタル・ポップ・プロジェクト Discovery Zoneが登場。
多彩な出演者が落合 Soupに集う、特別な一夜が決定!

Greg Fox, iD-sus, YPY
with Discovery Zone DJ Set

日程:2026年6月28日 (日)
時間:OPEN / START 17:00
会場:落合 soup (map)
料金:ADV ¥4,000 / DOOR ¥4,500

LIVE:
Greg Fox
iD-sus
YPY

DJ:
Discovery Zone


Photo by Ebru Yildiz

Greg Fox

Liturgy、Guardian Alien、ZS、Ex Eye、Skeletons、Teeth Mountain、Dan Deacon、Colin Stetson、Ben Frostなど、数多くのアーティストとツアー、レコーディング、そしてレコード・リリースを行ってきたニューヨーク在住のマルチ・インストゥルメンタリスト、学際的アーティスト、そしてドラム・ティーチャーでもあるGreg Fox。前述のように様々なアーティストとコラボレーションしながらソロ作もリリースしている。Joe PatitucciとAlex Tysonが設立したレーベル、Data Gardenから2014年にソロ・ファースト・アルバム『Mitral Transmission』をリリース。その後は名門RVNG Intl.と契約。2017年に『The Gradual Progression』、2020年に『Contact』を発表し高い評価を得ている。稀にみる多才で多作なクリエイターであり、かつてはThe Village Voiceにて“Best Drummer in New York”と称された現代屈指のドラマーである。


iD-sus

iD-susは、ダカール(セネガル)出身のHabib Fallと、シアトル(ワシントン州)出身のViolet W-Pによる、ニューヨークを拠点とするスペキュレイティヴ・フィクション、彫刻的サウンド、音楽、パフォーマンスを横断するプロジェクト。サウンド、物語、オブジェクト、ライブ・アクションのあいだを自在に行き来しながら、独自の没入的な作品世界を構築している。



Photo by Dai Fujimura

YPY

音楽家・作曲家 日野浩志郎 による電子音楽ソロプロジェクト。
チェリスト 中川裕貴とのデュオプロジェクト KAKUHAN としても活動しているほか、リズムアンサンブル goat を主導し、バンド編成による高度に組織化された反復構造によって国際的に評価を受けてきた。YPYでは、クラブ・ミュージック、ミニマリズム、ノイズ、現代音楽といった複数の文脈を横断しながら、ダンスフロアと実験音楽の境界を行き来する制作を行っている。

作曲家としての主な作品に、多数のスピーカーと移動する演奏者を用いた空間音響ライブ 「GEIST」、サウンドアーティスト FUJI|||||||||||TA と共同で作曲・演奏した 「INTERDIFFUSION – A Tribute to Yoshi Wada」 などがある。
リズムアンサンブル作品 「Chronograffiti」 により 第26回佐治敬三賞(2025) を受賞。また、映画 The Invisible Fight の音楽を手がけ、エストニア・フィルム・アワード(EFTA)2024 最優秀作曲賞を受賞している。


Discovery Zone(DJで出演)

Discovery Zoneは、ニューヨークを拠点に活動するミュージシャン/マルチメディア・アーティスト、JJ Weihlによるエクスペリメンタル・ポップ・プロジェクト。じわじわと、しかし確かな熱狂を呼んだデビュー・アルバム『Remote Control』に続き、Discovery Zoneは2024年にRVNG Intl.とMansions and Millionsよりセカンド・アルバム『Quantum Web』をリリースし、2025年にはその拡張版を発表した。『Quantum Web』においてDiscovery Zoneは、誠実さとアイロニー、人間的なものとポスト・ヒューマン的なものの境界が同時に曖昧になっていく、不気味の谷へと深く潜り込んでいく。ステージでは、光を帯びたヴォーカル・パフォーマンスとバロック的な楽器の装飾が散りばめられた、ワイドスクリーンなポップ・サウンドを探求。さまざまな楽器と3Dヴィジュアルによる実験室のようなセットアップを用い、情報の源としての宇宙を探究している。ニュー・アルバム『Library Copy Do Not Remove』は2026年5月にリリースされ、その後、北米、オーストラリア、ニュージーランド、日本、ヨーロッパでのツアーが続く。

DJ Stingray 313 - ele-king

 待望の、とはまさにこのこと。7月10日(金)、デトロイトのDJスティングレイが2019年以来、ひさびさの来日を果たす。会場は、メイン・フロアのO-EASTとセカンド・フロアの東間屋から成る「MIDNIGHT EAST」。ヨーロッパでは引っぱりだこの最強のカード、そのパフォーマンスを東京でも体験できる絶好の機会、と。
 1990年にカール・クレイグのレーベル〈Retroactive〉からデビュー、アーバン・トライブとして〈Mo' Wax〉や〈Rephlex〉、ムーディマンの〈Mahogani Music〉からアルバムを送りだしてきた彼は、他方、ありし日のドレクシアのツアーDJとして活動していたことでも知られる。故ジェイムズ・スティンソンより賜ったその名のもと、ソロ・アーティストとしてはおもにベルギーの〈WéMè〉から作品を発表、ドレクシア譲りのエレクトロ・サウンドを轟かせてきた(数年前にリイシュー)。当日はまさにそのスタイルを披露してくれる予定のようだ。
 O-EASTではKABUTOとSAKUMAが、東間屋ではMAYUDEPTH×Akey、NYAO、ADAK7、SOGIがそれぞれ公演をサポート。きっと梅雨も明けているだろう夏の夜、いざ深海へ。

デトロイト・エレクトロのアイコンDJ Stingray 313、7年ぶりの来日決定!

【公演情報】
イベントタイトル:MIDNIGHT EAST invites DJ Stingray 313
2026年7月10日(金)
OPEN / START 23:00

LINE UP:
=O-EAST=
DJ Stingray 313
KABUTO
SAKUMA

=AZUMAYA=
MAYUDEPTH B2B Akey
NYAO
ADAK7
SOGI

DJ Stingray 313として知られるデトロイト出身のDJ/プロデューサーSherard Ingram は、自身とCarl Craig、MoodymannことKenny Dixon Jr.、そしてAnthony Shake ShakirからなるプロジェクトUrban Tribeの創設者であり、James Stinsonによる伝説的なユニットDrexciyaのツアーDJとしても活動していたベテランだ。2010年代後半に起こった高速エレクトロの再興によって、彼は真に世界中から注目される存在となり、現在はアンダーグラウンドクラブミュージックシーンにおいて最も多忙なDJの一人として、ベルリンを拠点に毎週末各地を飛び回っている。
今回Stingrayは、O-EASTメインフロアのパワフルなサウンドシステムで、自身のシグネチャーサウンドであるエネルギッシュなエレクトロ/テクノを披露。ローカルからは国内外のヘッズから熱く支持される存在であり、Stingrayとは2013年以来の共演となるKABUTO、そして渋谷WOMBでModestを主催するSAKUMAが決定した。
東間屋フロアではエレクトロニックミュージックパーティーVITALの共同オーガナイザーMAYUDEPTHとAkeyがB2Bセットを披露するほか、西麻布Trafficを拠点としaxiom、DtRMを主催するNYAO、テクノを軸にエクスペリメンタルな要素を織り交ぜ、リスナーを美しい混乱へと導くADAK7、そしてSlow Techno CrabのオーガナイザーSOGIがプレイする。

Sherard Ingram, a Detroit-born DJ and producer known as DJ Stingray 313, is a veteran who founded the Urban Tribe project—featuring Carl Craig, Kenny Dixon Jr. (aka Moodymann) and Anthony ‘Shake’ Shakir—and also served as the tour DJ for James Stinson’s legendary duo Drexciya. The resurgence of fast-paced electro in the late 2010s propelled him into the global spotlight, and he is now one of the most in-demand DJs in the underground club music scene, touring around the world from his current home in Berlin every weekend.
Stingray will showcase his signature sound of hi-octane electro and techno on our main floor’s powerful sound system. He’ll be joined by the local hero KABUTO (they also shared the lineup in Tokyo back in 2013) and the Modest organiser SAKUMA.
In Azumaya, MAYUDEPTH and Akey will play back-to-back (they co-organise the electronic music party VITAL). Also NYAO, a DJ based at Nishiazabu Traffic and the organiser of axiom / DtRM, ADAK7 who weaves experimental elements into techno, guiding listeners to the state of beautiful confusion, and SOGI, the organiser of Slow Techno Crab are on the bill.

※U25チケットは当日券のみの販売になります。(要顔写真付き身分証明書)
※20歳未満入場不可。(要顔写真付き身分証明書)
※出演者は予告なく変更になる場合がございますので、予めご了承ください。
※客席を含む会場内の映像・写真が公開されることがあります。

※UNDER 25 tickets are only available at the DOOR. (Photo ID required)
※Must be 20 or over with Photo ID to enter.
※Please note that the performers are subject to change without notice.
※Please be aware that videos and photos during the event, including the audience, may be released.

HIKASHU - ele-king

 欧米のみならず、中央アジアとの文化交流を重ねているヒカシューだが、現在、ウズベキスタン共和国で開催される音楽祭での演奏を目指しており、そのためのクラウドファンディングを開始した。以下、お読みください。

 ウズベキスタン共和国の古都サマルカンドで8月末に開催されるサマルカンド東洋音楽祭(正式名称:シャルク・タロナラル / Sharq Taronalari)。 世界遺産の建物に囲まれたレギスタン広場で2年に1度開催されている、中央アジア最大規模の国際音楽フェスティバルです。
 ヒカシューはこれまでさまざまな国際舞台で演奏してきました。 1991年の旧東ベルリン公演を皮切りに、これまでに12回以上の海外ツアーと延べ30都市以上での公演実績があります。ドイツ、モスクワ、サンクトペテルブルク、エストニア、リトアニア、デンマーク、シベリア(アルタイ共和国、トゥバ共和国)そしてニューヨークなど。これらの経験を生かし、このシルクロードの要衝、中央アジアの文化の交差点であったサマルカンドで演奏してみたいと思うようになりました。
 サマルカンドはその地政的重要性から、時代の波に揉まれ続け、その時々の力をもった為政者・国によって支配、融合されてきた歴史があります。そのため、宗教的にも文化的にも多様で奥が深く、またソ連の支配からの権威的政治が続いたため、国の経済が解放され自由化が進んだのはここ10年ほど。古の風情を色濃く残しながら、急速に発展をしつつある国です。特にサマルカンドは「東のローマ」と呼ばれるほど華麗な都市として知られ、宗教・学問・建築の中心地でもありました。伝統的な美しい音楽が残り、その繊細な技法は今でも師から弟子へと口伝で伝えられています。

 音楽祭は開催は決定したものの詳細はまだ発表されておらず(汗)、日程も確定していませんが、例年5日間ほど行われるため、旅程は1週間から10日ほどを見込んでいます。中央アジアの多くの国から音楽家が集まるこの音楽祭に、日本人で参加したのは2年前、ウズベキスタンの楽器ドゥタールの演奏家、駒﨑万集さんのみです。ウズベキスタン共和国初の文化大使にも任命された万集さんは見事ソリスト部門で3位に受賞され、日本とウズベキスタンの文化のかけはしとして活躍されています。

 ウズベキスタンの人々に、ヒカシューの音楽を届けたい!  そして中央アジアの音楽家たちと交流し、東アジアとの新たな音楽のネットワークを築いていきたいと思っています。音楽祭の開催自体が決まったのが5月に入ってからだったため、残念ながら助成金の申請は通りませんでした。どうか皆様のご支援で、ヒカシューの音楽を中央アジアの人々に届けさせていただけないでしょうか。急遽立ち上げたこのクラウドファンディング、皆様のご支援金をフルに活用させていただくため、プラットフォームは使っておりません。目標額に至らなかった場合は今回のウズベキスタン行きは諦め、お預かりしたお金は返金させていただきます。人数限定ではありますが、このツアーに同行する方も募集しております。ぜひ現地で、ヒカシューの音楽を一緒に楽しみませんか?  画期的な日となることは間違いありません!
 どうか皆様のご支援ご協力を、心よりお願い申し上げます!

巻上公一 2026年6月8日

https://hikashufan.com/samarkand/

ANJI - ele-king

 ANJIというまだ中三のシンガーソング・エレクトロニック・アーティストがコンピューマのプロデュースによってデビュー・アルバムを完成させた。 2012年生まれ、滋賀県在住の彼女の作る音楽は、ドリーム・ポップ調の曲からアンビエント調の曲、ダウンテンポやレゲエ、テクノもあるが、総じて言えるのは、空想的な音楽であるということ。生まれながらに全盲である彼女だが、幼い頃から楽器に触れながら生活している。作曲をはじめたのも早く、主に琵琶湖のほとりで過ごす日常から生まれた音や感情、景色をそのまま音楽としているとのこと。
 この早熟な才能が広く知られるようになったのは、脱線3のMC.BOOが滋賀県のアート施設を介して出会ったことがきっかけだったそうで、そしてその音楽に惚れ込んだコンピューマが、昨年3月の渋谷WWWで開催されたワンマン公演のオープニングアクトに抜擢したのだった。詳しくはこちらの記事を読んで。で、ライヴの際に共同で制作/販売したデビューEPが評判となって、今回のアルバムに発展したとのこと。ミックス・マスタリングはhacchi(Urban Volcano Sounds / Deavid Soul)が担当。注目してみてください。

アーティスト:ANJI
タイトル:わたしのすき
リリース日:2026年7月1日(水)
レーベル:BLIND BEATS SOUND
品番:BBS002
フォーマット:CD(デジパック)歌詞カード封入
値段:2400円(税抜)2640円(税込)
流通:SOMETHING ABOUT / ブリッジ

■トラックリスト
1. わたしのすき 1:36
2. REGGAE UFO 3:11
3. ゆったりカフェ 4:43
4. 森 3:40
5. オリーブアンジ 2:31
6. おしゃべり鳥 1:38
7. アントロ 1:19
8. 母の日 2:16
9. アフロ 1:50
10. みえるみえるよ 4:24
11. 雨の日の散歩 2:42
12. レイヴで聴いた曲 2:49
13. audioanji 2:02
14. 雨の日の散歩 feat. RITTO 3:28

All Instruments & Poetry Reading by ANJI
Produced by Compuma
Mixed & Mastered by hacchi

Riria(STARFESTIVAL 2026) - ele-king

 ここ1年ほどで急速に注目度を高めている日本のDJがいる。彼女の名はRiria。出身は東京だが、普段はロンドンで活動している若手ホープだ。なので日本では滅多にそのプレイを体験する機会に恵まれないわけだけど、このたび〈STAR FESTIVAL〉に出演するとのことで京都は南丹(なんたん)まで足を運んできた。風の噂で聞く評判をこの目でたしかめてみなければ、と。

 なんて気持ちのいいフェスティヴァルなんだろう──それが初めて〈STAR FESTIVAL〉に参加した率直な感想だった。京都駅から山陰本線で園部駅へ、さらにその先に広がる山々をクラブ・ミュージックが支配する──2013年に初開催されて以降、キャンプ場「府民の森ひよし」をホームに継続されている同フェスは、心斎橋と渋谷でクラブを運営するCIRCUSの主催によるものだ。
 いや、もう、とにかく、開放感がすさまじい。晴れていたのも僥倖だったが、空間にたいしてオーディエンスが多すぎないのが最高で、子連れも目立つし、芝生をすべったりキャッチボールに熱中したり、ダンス以外のことでエンジョイしている方々もけっこうおられる。ミニマルな超高層ビルの谷間で鬱々とモニターを眺めつづける日常とは真逆の環境──正直なところ、これまでこのフェスに参加しなかったことを大いに後悔してしまった。

 会場に到着して少し経ったころ。東京のDJ、nasthugによるプレイがスタート。いろんなリズムが投下されていくなか、やはりジャングルやダブステップなどがかかるとおのずから気分が盛りあがってくる。バトンを受けとったのはニュージーランド出身でイギリス在住のレディ・シャカ。こちらもルーツ・レゲエからジャングル、ハウス~UKGなどさまざまなスタイルが入り乱れるが(マーシャル・ジェファーソン “Move Your Body” のリフを用いた曲にはぶちあがった)、全体的にUKサウンドシステム文化の太い芯が通っている印象だ。その後は横浜出身のラッパー、ralphがステージに立ちがらりと空気を変える。その高速ラップ自体も吸引力があるのだけれど、グライムやUKGをベースとするDouble Clapperzのトラックのおかげで、ふだんラップばかりを聴いているわけではないリスナーでもすんなり入っていけるところがやはり彼の音楽の最大の魅力だと再確認した次第。
 と、このように「STAGE 02」は雑多でありつつもおおむねベース・ミュージックのラインに沿ったブッキングだったわけだが、折をみてちょこちょこ「STAGE 01」も視察。こちらでは〈FUTURE TERROR〉出身、〈DAZE OF PHAZE〉主宰のKABUTOが極上のテクノ・セットを披露していて、これまた至福のひとときだった。

 そうこうしているうちに18時少し過ぎ。ちょうど日が暮れおもむろに暗くなっていく絶好の時間帯、お目当てのRiriaの出番がまわってくる。すでに10代のころからDJをはじめていたという彼女は、2024年の「Boiler Room: Tokyo」への出演で一気にブレイクを果たした果報者だ(動画はすでに500万再生を突破)。そのときのセットはアフロ・ハウスからイタロ、ハードコア、TNGHTからKポップまで多様な曲が錯綜するスタイルで、ポスト・パンデミック時代のトレンド、なんでもござれを体現するプレイだった。
 けれどもこの日、そのイメージは一気に覆されることになる。軽快なUKガラージのリズムに導かれてはじまったセットは、途中ラガっぽい曲やベースメント・ジャックス、断片的なジャングルなどを挟みつつも、基本的にはそのままUKGのリズムが全体を貫くことに。
 この目移りしないスタイルは会場も大いに湧かせ、19時台にはオーディエンスの熱も最高潮に達する。終盤、おそらくはリアーナのカヴァーとおぼしき曲(リズムはもちろんUKG)では、ミュートの瞬間、観客たちが合唱しているのがわかって驚かされた。このあたりでブースにヘッドライナーのDJハイプが姿をみせる。トリを前にオーディエンスをベストなテンションに導くというミッションを無事こなし終えたRiriaは、満面の笑顔でステージを後にするのだった。

 ヴァラエティよりも一貫性──その変化にはここ1年ほどのあいだ、彼女がヨーロッパ各地でプレイしてきた経験が反映されているのだろう。もしかしたら、「Boiler Room: Tokyo」のときはまだ迷いがあったのかもしれない。あるいは(背後に客がいるとはいえ)オンライン配信であるがゆえの反応の見えなさ、すなわち不特定多数という魔物の討伐法を、まだ1年前の彼女は見つけきれていなかったのかもしれない。その後、顔の見える舞台を数多く踏んできた結果としてUKガラージが選択されたことは注目に値する。なぜならそれは、ふだんぼくらが気軽には接することのできないヨーロッパのクラブ・シーンにおけるモードが、いまUKGに移行していることのあらわれでもあるからだ。
 と、現時点でひとつの型を獲得したRiria。ここからさらにどのように変化していくのか、今後の彼女の飛躍が楽しみだ。

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Riria (STAR FESTIVAL 2026)
@ Fumin no Mori Hiyoshi (Happiro! no Mori, Kyoto)
Saturday, 16 May 2026

written by Takune Kobayashi

 There’s a Japanese DJ whose stock has risen sharply over the past year or so. Her name is Riria. Tokyo-born but based in London, she’s one of the bright young hopes of the moment — which means chances to catch her play on home soil are few and far between. So when word came that she’d be appearing at STAR FESTIVAL, I made the trip all the way out to Nantan in Kyoto. The reputation I’d been hearing on the grapevine was something I had to
see for myself.

 What a wonderful festival. That was my honest first impression of STAR FESTIVAL. From Kyoto Station you ride the San’in Main Line to Sonobe, and out beyond it club music takes command of the surrounding mountains. First held in 2013, the festival has run ever since with the “Fumin no Mori Hiyoshi” campground as its home, organised by CIRCUS, the crew behind clubs in both Shinsaibashi and Shibuya.
 The sense of openness is, frankly, staggering. The fine weather was a stroke of luck, but the best part was that the site never felt overcrowded. Families with kids everywhere, people sliding around on the grass or lost in games of catch — plenty of folks enjoying themselves doing things other than dancing. The polar opposite of daily life spent staring gloomily at a monitor in a canyon of minimalist high-rises. In all honesty, I found myself deeply regretting that I’d never made it to this festival before.

 A little while after I arrived, Tokyo DJ nasthug got things underway. Amid all the rhythms being thrown down, it was inevitably the jungle and dubstep that lifted the mood. Taking the baton next was Lady Shaka, New Zealand-born and UK-based, whose set likewise wove through every style going — roots reggae, jungle, house, UKG (a track built on the riff from Marshall Jefferson’s “Move Your Body” sent me into orbit) — yet with a thick spine of UK soundsystem culture running through the whole thing. After her, Yokohama rapper ralph took the stage and changed the air entirely. His rapid-fire delivery has a pull all its own, but it’s the grime- and UKG-rooted productions of Double Clapperz that let even listeners who don’t normally reach for rap slip straight in — a reminder, once again, of the single greatest
charm of his music.
 So while STAGE 02 was a grab-bag, its bookings broadly held to a bass-music throughline. Now and then I’d slip over to scope out STAGE 01, where KABUTO — a FUTURE TERROR alumnus and head of DAZE OF PHAZE — was delivering an exquisite techno set. Another moment of pure bliss.

 Before I knew it, it was a touch past six. Right in that golden window as the sun went down and the dark slowly drew in, the DJ I’d come for — Riria — took her turn. Already DJing since her teens, she’s the lucky one who broke through in a single stroke with her 2024 Boiler Room: Tokyo appearance (the video has now sailed past five million views). That set was a tangle of everything at once — afro house, italo, hardcore, TNGHT, even K-pop — the very picture of the post-pandemic, anything-goes trend.
 On this day, though, that image was overturned in an instant. Opening to a light, nimble UK garage groove, the set — punctuated here and there by ragga-leaning cuts, Basement Jaxx, scattered fragments of jungle — was fundamentally carried, end to end, by UKG.
 That single-minded approach had the crowd in raptures, and by the seven o’clock hour the heat had hit its peak. Late in the set, on what was almost certainly a Rihanna cover (UKG rhythm, naturally), the music cut to a mute — and I was startled to catch the crowd singing along. It was around here that headliner DJ Hype appeared at the booth. Mission accomplished — the audience primed to exactly the right pitch ahead of the closer — Riria left the stage with a beaming smile.

 Consistency over variety. That shift surely reflects the year or so she’s spent playing across Europe. Perhaps at Boiler Room: Tokyo there was still some hesitation in her. Or perhaps — broadcasting online, even with a crowd at her back — she hadn’t yet cracked how to read a response she couldn’t see, how to slay that particular beast: the faceless, anonymous many. That she arrived at UK garage only after racking up so many stages where she could see the faces in front of her is worth dwelling on. Because it’s also a signal that the prevailing mode of the European club scene — the one we can’t easily get close to from over here — is now
tilting toward UKG.
 And so, for now, Riria has found a form of her own. Where she takes it from here is exactly what makes the next leap so worth watching.

Keigo Tatsumi - ele-king

 never young beachのベーシスト、巽啓伍が2024年に発表したソロ・アルバム『AT US』。同作が6月12日にヴァイナルでリリースされることになった。マスタリングは畠山地平が担当している。
 また巽は、6月13日に野口晴哉記念音楽室でおこなわれる、原雅明によるリスニング・イヴェントや、6月27日に高輪ゲートウェイシティで開催されるフェス〈NU FESTIVAL 2026〉への出演も決まっている。
 詳細は下記より。

never young beachのベーシスト・巽啓伍、ソロ作品『AT US』が6月12日にヴァイナル化。マスタリングはChihei Hatakeyamaが新たに担当。

never young beachのベーシスト・巽啓伍が2024年10月に発表した初のソロ作品『AT US』が、レコードLPフォーマットで2026年6月12日(金)にリリースされることが決定した。

アメリカのアンビエントレーベル〈Mystery Circles〉からカセットテープおよびデジタルで発表された本作は、写真家・タケシタトモヒロが単身アメリカを横断して撮影した写真展『Across the United States』の場内音楽を端緒に書き下ろされたオリジナルサウンドトラック。
ICレコーダーで録音されたロードトリップ中の環境音が随所に散りばめられ、異国の人として旅をする人間の精神状態や思考の変化を疑似体験できる内容となっている。
今回のレコード化にあたり、マスタリング・エンジニアとして新たに世界的なアンビエント/ドローン作家でもある畠山地平(Chihei Hatakeyama)を起用。アナログレコードならではの豊潤な奥行きと立体感が引き出され、肉体的な楽器の音と分離する環境音の混ざり方は、ロードトリップの景色をさらに深い解像度で響かせる仕上がりとなった。
なお、本作にはライナーノーツが封入されており、執筆は昨年『アンビエント・ジャズ -マイルス・デイヴィスとブライアン・イーノから始まる音の系譜-』(P-VINE)を上梓したライターの原雅明が担当している。
発売日翌日の6月13日(土)には、リスニングイベント『Dual Experience in Ambient/Jazz』へのゲスト出演も予定されている。
同イベントは、ライナーノーツを担当した原雅明が東京都狛江市の「野口晴哉記念音楽室」で主催しているリスニングイベントで、当日はそれぞれがテーマに基づいた選盤のほか、原と巽によるトークも行われる。

さらに、6月26日(金)〜28日(日)に高輪GATEWAY CITYで開催される「NU FESTIVAL 2026」へのライブ出演も決定している。
音楽/アート/テクノロジーが交わり、都市全体を舞台に新しい表現と体験を生み出すフェスティバルとして今年初開催となる同イベントには、本作のマスタリングを担当したChihei Hatakeyamaや冥丁(MEITEI)に加え、William Basinski、Nathan Fakeといった海外勢もラインナップされている。

【リリース情報】
アーティスト:巽啓伍(Keigo Tatsumi)
タイトル:AT US
フォーマット:LPレコード
発売日:2026年6月12日(金)
レーベル:Mystery Circles

◯楽曲リンク
https://lnk.dmsmusic.co/keigotatsumi_atus/
◯アーティストSNS
https://www.instagram.com/keigo_tatsumi/


【イベント情報】
■ Dual Experience in Ambient/Jazz

日時:2026年6月13日(土)
会場:野口晴哉記念音楽室
OPEN 16:00 / START 17:00
¥3,000 + 1drink order
※ Limited seatings / reservation only

出演:
Masaaki Hara
Keigo Tatsumi

ご予約:
全生新舎 Instagram DM
https://www.instagram.com/zenseishinsha/

■ NU FESTIVAL 2026
2026年6月26日(金) 12:00-22:30
2026年6月27日(土) 12:00-23:00
2026年6月28日(日) 12:00-23:00
※ Keigo Tatsumiの出演は6月27日(土)

会場:
<NU Live>
TAKANAWA GATEWAY Convention Center LINKPILLAR Hall
<NU Art>
MoN Takanawa: The Museum of Narratives(Box300 / Tatami)
<NU Station>
高輪ゲートウェイ駅 南改札外3Fテラス
<NU Park>
高輪ゲートウェイ駅前 Gateway Park

オフィシャルサイト:
https://nufestival.jp

公式SNS:
https://www.instagram.com/nu_fes_tokyo/
https://x.com/nu_fes_tokyo

SCARS - ele-king

 A-THUG、SEEDA、故STICKYにBESらを擁したヒップホップ・グループ、SCARSのファースト・アルバム『THE ALBUM』が今年20周年を迎える。これを祝し、アナログ盤でのリイシューが決定した。レッド・ヴァイナル仕様です。2019年のリイシューの際は即完売となっているので、お早めに。

A-THUGを中心にSEEDA、故STICKY、BESらが名を連ねる日本語ラップ・シーン最重要な伝説的グループ、SCARSが2006年に放った傑作ファースト・アルバム『THE ALBUM』。そのリリース20周年を祝してアナログ盤がRed Color Vinylで待望のリイシュー!

リーダーであるA-THUGを筆頭にSEEDA、故STICKY、BES、bay4k、MANNY、SAC、I-DeAらが名を連ねた日本語ラップ・シーン最重要な伝説的グループ、SCARSが2006年9月にリリースした傑作ファースト・アルバム『THE ALBUM』。ハスリング・ラップ最高峰のアルバムとしてシーンに大きな衝撃を与え、一躍SCARSやメンバーの名前をシーン内外に広めた日本語ラップ史に残る屈指の名盤として今でも語り継がれているが、そのリリース20周年を祝してアナログ盤がRed Color Vinylで待望のリイシュー!2019年に完全限定でプレスされたオリジナルのアナログ盤は即完売となって入手困難な状況が続いており、界隈では高値でディールされていただけに待望のリリースと言えるだろう。

[作品情報]
アーティスト:SCARS
タイトル:THE ALBUM (Red Color Vinyl)
レーベル:P-VINE, Inc / SCARS ENT.
仕様:LP (2枚組/Red Color Vinyl仕様)
発売日:2026年9月2日(水)
LP品番:PLP-8365/6CR
定価:7,480円(税抜6,800円)
*P-VINE SHOPにて予約受付中!
https://anywherestore.p-vine.jp/products/plp-8365-6cr

[トラックリスト]
Side A
1. In Dro
2. Showtime For Life
3. 1 Step,2 Step
Side B
1. YOU ALREADY KNOW
2. Homie Homie Remix feat. SWANKY SWIPE
3. SCARS
Side C
1. Bring Da Shit
2. ばっくれ
3. あの街この街… feat. GANGSTA TAKA
Side D
1. Love Life
2. Junk Music
3. 日付変更線
4. Outraw

Jeff Parker - ele-king

 ポスト・ロックのヴェテラン・バンド、トータスの一員として知られるギタリストのジェフ・パーカーは、他方でジャズ・ミュージシャンとしての顔ももっている。そちらの側面に大きくスポットライトが当たるようになったのが2010年代の半ば、とりわけシカゴのレーベル〈International Anthem〉から作品を出すようになってからだ。『The New Breed』(2016)、『Suite for Max Brown』(2020)、『Forfolks』(2021)とソロ名義で順調にリリースを重ねてきた彼は、近年「ETAカルテット」を掲げ『The Way Out of Easy』(2024)を発表、この5月には最新作『Happy Today』がリリースされている。こうした〈International Anthem〉と組んで以降のジェフ・パーカーの活躍、そしてその音楽の肝はどこにあるのか?
 以下は、去る5月8日に渋谷Park In Parkにておこなわれたトーク・ショウのダイジェストである。音楽評論家・原雅明と、パーカーと共作経験のある音楽家・蓮沼執太がジェフ・パーカーについて語りあう。(聞き手:小林拓音)

ジェフ・パーカー・ETAカルテットの新作『Happy Today』がリリースされます。まずはリリース元の〈International Anthem〉がどういうレーベルかということを、原さんにお伺いしたく思います。

原:〈International Anthem〉は、2012年にシカゴで誕生したレーベルです。最初のリリースは、シカゴ・アンダーグラウンド・デュオ(~トリオ/カルテット/オーケストラ)のコルネット奏者、ロブ・マズレクのソロ作『Alternate Moon Cycles』(2014)でした。ロブのコルネットと、オルガンとベースだけのトリオによる演奏で、いまでいうとそれこそ「アンビエント・ジャズ」のような演奏です。バーで録音されていて、お客さんの声や食器の音も入っているんですけど、その演奏がすごくいい。
 このリリースからはじまったのは象徴的だなと思っているんですが、そこからどんどん広がっていって、マカヤ・マクレイヴンやジェフ・パーカー、亡くなってしまいましたが、ジェイミー・ブランチという天才トランペット奏者など、シカゴの新世代のミュージシャンもリリースしていきました。
 レーベルにとっておそらくジェフの『The New Breed』(2016)がひとつの転機だったのではないかと思います。すごく売れて話題にもなりました。その頃もうジェフはLAに移っていたはずで、そちらのシーンと結びついて、カルロス・ニーニョ周辺の人たちの作品も〈International Anthem〉が紹介するようになっていく。その後ロンドンのジャズ・シーンとも繋がって、トム・スキナーアラバスター・デプルームといったUKの人たちの作品もリリースしていきます。ジャズだけではなく、その周辺の音楽も押さえて、世代も超えていろんなコミュニティを紹介するような側面が彼らにはあって、たんなるレーベルというよりも、音楽をベースにしたコミュニティの紹介に努めてきた集合体のようなイメージがありますね。

コミュニティといえば、ブラックの歴史に意識的なデイモン・ロックスなども出していますよね。

原:そうですね。エンジェル・バット・デイヴィッドとか、シカゴのブラック・ジャズのシーンとも関わりがあります。シカゴのレーベルというと、〈Thrill Jockey〉や〈Drag City〉、あるいは(90年代までの)ジム・オルークとか、インディ・ロックの流れが有名だったと思うんですけど、〈International Anthem〉はAACMや黒人のジャズの流れもくんでいますね。あと、アース・ウィンド・アンド・ファイアのプロデューサーだったチャールズ・ステップニーも出しています。

蓮沼さんは〈International Anthem〉にどんなイメージをおもちでしたか?

蓮沼:原さんがおっしゃったように、コミュニティというか、インターネットが当たり前になっていって、自分たちの場所をつくりづらくなっている時代に、そうした場所、人とのつながりを音楽をとおしてつくっていっていますよね。とくにジャズは、いろんなところで演奏して、いろんなミュージシャンと共演して繋がっていくところがあると思うんですけど、そうした面を再認識します。毎回新鮮な、かっこいい音楽を出してくる。
 自分はリスナーとしてはジャズ好きとはいえないですが、そういうそれほどジャズを通っていない人間にも、〈International Anthem〉からは歴史を大切にしつつ新しいことをする姿勢が感じられます。名前が出た〈Thrill Jockey〉とか〈Drag City〉のような、世界各地でかっこいいレーベルが出てきた時代の、2020年代版のような雰囲気も感じますね。

シカゴのジャズや〈International Anthem〉には、なんとなくNYともLAとも異なる空気を感じます。

原:ニューヨークのジャズは最先端で緊張感があって、巧いひとたちが集まっている印象です。対してLAは、気候も温暖で、わりとみんなレイドバックした感じで、でもどちらも個人主義がベースにあるように思います。シカゴは、ぼくはトータスの取材で一度行ったきりなので、現在の状況はわからないんですが、当時感じたのは、個人とコミュニティが交わっているような感覚です。そのときはジェフ・パーカーが橋渡しのような存在になっていて、トータスの活動をやりつつAACMにも関わっていて、子どもに音楽を教えた話や一緒に雪かきをした話をしていて、自分の音楽もそうしたコミュニティに根づいた音楽から影響を受けてきたことを話していました。
 そのときのインタヴューで印象的だったのは、ジェフが、いわゆるモダン・ジャズ、チャーリー・パーカー以降のジャズのなにが問題かというと、ひとりのプレイヤーの才能、いかにソロが巧いかというところにばかり焦点があたるところだ、と言っていたことです。ジャズは「あのソロがすごい」というふうにランク付けされている世界で、ある意味ではヒエラルキーがはっきりしている世界です。それが面白い部分もあるけど、音楽はヒエラルキーだけで聴かれるわけじゃなく、もっといろんな感情があるし、もっといろんな評価軸があっていい。だから、人が集まって一緒にやるアンサンブルの大切さとか、そういうことを語っていたのが印象的でした。
 ジェフはバークリー出身で、カート・ローゼンウィンケルと同級で、そのままNYに行ってジャズ・プレイヤーになれたはずなのに、なぜかトータスのメンバーになりました。その彼が言うことだからこそ印象的で。彼が話していたことは、〈International Anthem〉が紹介する音楽にもあてはまります。そこがいわゆるジャズ・レーベルが紹介するジャズと、〈International Anthem〉の大きな違いかなと思います。

蓮沼:ジェフ・パーカーの思慮深さは本当にそう思います。真面目で、いまのことをしっかり考えて、自分を裏切らず活動をしている。ときには失敗もあるだろうし、もちろん成功もあると思うんですけど、そういう都度都度考えて動いているという彼のミュージシャン像と〈International Anthem〉は、カタログを聴くかぎりは同じスタンスのような気もしますね。

ジェフ・パーカーのいるトータスはポスト・ロックの代名詞的な存在で、ポスト・プロダクションに力を入れるわけですが、それはジャズの即興と対極ですよね。先ほど、個人の才能じゃなくコミュニティというお話が出ましたけれど、その点についておふたりはどう思われますか。

原:蓮沼さんはジェフ・パーカーと対談されていましたよね(https://ave-cornerprinting.com/jeff-parker-shuta-hasunuma-01162026/)。そこでジェフは(ETAは)「作曲的な頭を使いながら演奏していくことを意図的にやっているので、感情の赴くままに即興演奏するというのとはまた違う」と話されていました。〈International Anthem〉の前に出していたジェフのソロ作『Mondays at the Enfield Tennis Academy』(2022)があって、そのインフォにも「この音楽はフリー・インプロヴィゼーションではなくフリー・コンポジションだ」と書いてありました。だから、即興演奏はしているんですけど、頭のなかではその都度、作曲的なことを浮かべながら演奏に向かっているんだと思うんですよね。彼は昔、ソロを弾きたくないとまで言っていたので、そこからもうちょっと前向きになって、作曲と結びついた即興演奏のスタイルに行き着いたんだろうなと思います。それを体現しているいちばん最新の形が、今回の新作だと思うんです。

蓮沼:原さんのご著書『アンビエント/ジャズ』でも、レコーディングがあるからライヴも生きてくるという考え方がありましたけど、ぼくは部屋でレコーディングするとき、その都度五線譜を書いたりしているわけじゃなくて、粘土のようにその都度形を変えながらやっていくんです。つまり即興的に作曲をしていくことが多いです。あるルールに従って、即興的にどんどん音を出していったり引いたりするつくり方。それをライヴでやるのがジェフなのかなと。ヘッド・アレンジのように、ある程度のルールだけ設けて「あとはもう任せた」みたいな、そうした器のつくり方がとても上手で、そこで出てくるのが人間同士のコミュニケーションです。そこに重きを置いているから、コンポジションとインプロヴィゼーションの間をうまく行ったり来たり、泳ぐようにできてるんじゃないかなと思います。

蓮沼さんは『unpeople』(2023)でジェフ・パーカーとコラボレイトされています。そのときもそのような感じだったのでしょうか?

蓮沼:厳密に、こういうことを弾いてくださいみたいなことはまったく伝えず、自由にやってくださいとお願いしました。それは信頼しているからで、だからなにしても大丈夫ですっていうものだったんですね。一音目からジェフのギターがはじまるんですけど、もう完全にジェフの音なんですよ。逆にぼくは、ジェフに送った自分の音をどんどん削っていって。ジェフは2トラック送ってくれたんですが、メイン・ギターのトラックと、もうひとつが「アンビエント・トラック」でした。どちらも使わせていただきましたが、そういうふうにぼくも録音の過程で、即興とコンポジションの間を楽しむようにつくっていった感じでしたね。

原:ジェフ・パーカーはDJもやりますよね。『The New Breed』では自分でビートもつくっています。そのころインタヴューで話していたのが、あるときDJをしていて、片方はジョン・コルトレーンのソロが鳴っているレコードを、もう片方では竹村延和のビートがあるレコードをかけていたそうです。それらがきれいにシンクロする瞬間があって、「これだ!」と思ったんだそうです。そういうところがジェフ・パーカーのユニークなところですよね。自分の演奏から一度離れて、俯瞰しているというか。

蓮沼:先日ジェフが日本に来ていたとき、一緒に食事をしました。ジェフはそのときEPMDのTシャツを着ていて。彼はザ・ビートナッツとかマッドリブも好きなんです。今回の新作はまたちょっと違う趣ですけど、『The New Breed』のジェフのビート感もなかなか面白くて好きですね。いろいろ話したんですが、「竹村延和は元気か?」と気にしていました。「去年新作出しましたよ」って伝えたんですけど、そういうふうに自分の好きなものを俯瞰したり、繋がりを大切にしているんだなというのは感じましたね。

今回の新作はETAカルテット名義ですが、この名義を使いはじめたのが原さんの〈rings〉から出ていた前作『The Way Out of Easy』(2024)からですよね。

原:名義はそうなんですが、ただ、先ほど話した『Mondays at the Enfield Tennis Academy』も同じメンバーでした。

なるほど。今回の『Happy Today』は、トータスなども含めたジェフ・パーカーのキャリアのなかで、どういうふうに位置づけられますか?

原:このカルテットの肝は、ぼくはドラマーのジェイ・ベルローズだと思っています。ライナーノーツにも書いたんですが、彼はシンガー・ソングライターのジョー・ヘンリーのバンド・メンバーで、レコーディングにも参加して、ずっと一緒にやってきた人なんですね。ほかにも、ロバート・プラントがブルーグラスの歌手アリソン・クラウスと組んだ作品でも叩いています。だから、そういうアメリカーナ系のプレイヤーだと思っていたんです。ジャズには行かなかった人だから、ジェフのカルテットに参加しているのに最初はすごく驚いたんですが、ジェフと繋がりがあったみたいで。
 そのジェイ・ベルローズは、スリンガーランドというヴィンテージのドラムを使っています。ハイハットを使わずに、代わりに足首にシェイカーを巻き付けてリズムをとったり、スティックを使わずに手で叩いたりする。それで他の演奏者のためにスペースをつくるのがうまいドラマーだと思います。『Happy Today』は片面1曲で、曲が長いですが、ぜんぜん飽きさせない。それはもちろん4人の絶妙な関係性があるからだと思うんですけど、やっぱりドラムがうまくコントロールしてるなっていうのがわかる。そういうドラマーを選んできたジェフ・パーカーもすごいなと。

蓮沼:無駄がないですよね。

蓮沼さんは、ジェフ・パーカーが関わってきた作品でとくに好きものはありますか?

蓮沼:いやもうぜんぶ好きですね。ETAカルテットのライヴ・レコーディングを聴いても無駄がないし、モダンな感じもしつつどこか懐かしい。懐かしいのはたぶん、ポスト・ロックを聴いていたからかもしれないですね。彼はトータスと同時にアイソトープ217もやっていて、大学生の頃たくさん聴いていました。アイソトープでのビート感とか電子音の入れ方、エレクトロニカとヒップホップというか……その後プレフューズ73そしてフライング・ロータスが出てきますけど、ジェフはそういうふうにそもそものレンジが広いんですよね。ETAカルテットは逆に絞ってきていますが、自由に絞ってる感じがあります。

原:アイソトープはいま聴くといいですよ。当時もいいなと思ったけど、いま聴くとすごくいい。

蓮沼:J・ディラみたいな、スネアが少し遅れるグルーヴをクリシェではなくふつうに電子音でやってるんですよ。

原:最初の頃はふつうにジャズっぽかったんですよ。だんだん電子音が入ってきて、それが面白くて。

蓮沼:ジョン・マッケンタイアの影響とか、それこそ竹村さんとかのエレクトロニカからの影響が入りこんでミックスされている。そういうところが好きです。

『Happy Today』の聴きどころについて伺っていきたく思います。

原:前作『The Way Out of Easy』のジャケットでは壁際に4人が並んでいますが、あれは本当に狭いバーで、あそこしかステージになる場所がないから壁に並んでいて、お客さんの目の前で演奏するスタイルだったんです。そのときと今回もエンジニアが同じブライス・ゴンザレスなんですが、ハンドメイドのミキサーとNAGRAという有名なテープ・レコーダー、それだけで録っています。マイクも、『The Way Out of Easy』では各メンバーのところに1本ずつしか置いていないんですよ。今回はそれより大きな会場だからもう少しマイクは立てたと思うんですが、そういうスタイルで録っているからこそ音がすごく生々しくて、場の空気感も含めて録られている。たとえば『Happy Today』は、いきなりはじまりますよね。最初はテープが切れてるのかなとも思いましたけど、そういう生々しさも含めて楽しいんじゃないかなと思います。

蓮沼:まさにライヴ・レコーディングという感じですよね。モダンな演奏をしているなと思います。音響としても独特の落としどころです。そこはおそらくジェフもそうとう気を遣ってると思うので、そうした一発録りのライヴとレコーディングの間の、モダンなことをやろうとしていると思います。

ジェフ・パーカーは2010年代によく名前を見るようになって、復活したような印象があるんですが、そういう認識で合っていますでしょうか?

原:ずっとやってきてはいたけど、目立つようになったのは〈International Anthem〉から出して以降、『The New Breed』からではないですかね。どんどん若返っているような感じです。トータスのメンバーのなかで彼がこれほど目立つことになるとは思いませんでした。いちばん地味な感じでもあったので。

なるほど。ジェフ・パーカーが2010年代以降のジャズに与えた影響はあるのでしょうか?

原:ジェフだけによる影響ではないですが、先ほど話したようなソロではなくアンサンブルを重視したり、サウンド全体に配慮したりというところは、いまようやくコンテンポラリーのジャズ・ミュージシャンが気にするようになったところです。だから、ジェフ的なとらえ方にようやくジャズ・ミュージシャンたちが追いついてきたのではないでしょうか。ジャズ・ミュージシャンはとりあえず自分の演奏がうまくできればOK、という感じが2000年代でも続いていましたので。プロダクションに気を遣いはじめたのは、ロバート・グラスパーとかが出てきてから。だからジェフひとりの影響とは言わないですが、そういうとらえ方が若い世代に浸透してきたのは感じますね。

蓮沼:ジェフと話していて思うのは、やはりシカゴを離れてLAに行ったことが大きな転機だったのではないかということです。彼はコミュニティであったり、ふだん一緒にやっている演奏家たちを気にしているはずですが、そこを離れて新しい土地でやっていくというのは、おそらく気持ちの切り替えやなにか踏ん切りのようなものがあったんだと思います。それがみごとに『The New Breed』あたりから反映されてきているように感じました。
 ぼくは2020年にトータスの『TNT』の全曲再現ライヴをブルックリンで見たことがあるんですが、そのときジェイミー・ブランチがトランペットで参加していたんですね。そういうのを見てると、やっぱりコミュニティの感じが、あたたかいなって思ったんです。そういう人間として当たり前のこと、いつの時代もあるべきもの、人同士の繋がりをきちんと音楽として、作品として昇華して、見える/聞こえる形にしてくれてるっていうのは、ジャズだからこそできることなのかもしれない。いまは音楽でも人間性や関係性みたいなものが排除されがちなので、ジェフはその現在進行形をやっているんだと思っています。


interview with Mouse on Mars - ele-king

リー・ペリーは単なる音楽家なだけではなくて、とてもコンセプチュアルな人だった。空間のなかで物事を配置していたし、コラージュを作っていた。別の部屋で起きていたことを、すぐに別の出来事と結びつけることができたんだ。

おそらく“火星”というテーマが影響していたのだろう。ペリーがダブや電子音楽に与えた影響は、彼が宇宙探査に傾倒していたのと同じくらい有名だ。あるいは、その言葉自体が持つ意味と、それ以上にその響きが決め手だったのかもしれない。“火星のネズミ(マウス・オン・マーズ)!”——これは彼が即興的な詩的スピーチでマイクに向かって発しそうな言葉だ。

 

 以上は、リー・スクラッチ・ペリーとマウス・オン・マーズによる共作アルバム『Spatial, No Problem.(空間に問題なし)』のライナーノーツからの引用である。書いているのはルイ・チュード=ソケイ、ナイジェリア生まれジャマイカ育ちの学者。アフロフューチャリズム、黒人ディアスポラ研究で知られる人物で、MoMとは過去に共作している。前作にあたる『AAI(Anarchic Artificial Intelligence)』(2021年)がそれだ。

 

 マウス・オン・マーズは、いわばエレクトロニック・ミュージックにおけるトリックスターである。高度な知識を持ちながら、それをユーモアや批評性、あるいはノイズとしてあえて崩すことで、長きにわたってぼくたちの耳と頭と身体を楽しませてきたドイツのデュオだ。
 初期においては、UKクラブ・サウンドを彼ら流に奇妙に歪めた『Iaora Tahiti』(1995)が人気作で、ほかにもステレオラブとも共鳴しているレトロ・フューチャーなラウンジ・ミュージック『Autoditacker』 (1997)、生楽器を大胆にフィーチャーした『Niun Niggung』(1999)などが必聴盤として挙げられる。近年では、ザ・ナショナル、ボン・イヴェール、ジム・オルークらが参加した『Dimensional People』 (2018)と無政府主義的な人工知能をテーマにした前作『AAI』 (2021)を推薦したい。もちろん、マーク・E・スミスとのプロジェクト、フォン・ズーデンフェッド(Von Südenfed)も落とせない。『Tromatic Reflexxions』(2007)も必聴盤にしておきましょう。さらに、メンバーのヤン・ウェルナーとオヴァル(マーカス・ポップ)とのユニット、ミクロストリアのセカンド・アルバムを聴いておけば合格だ。乾杯!

 マウス・オン・マーズを特徴付けるのはスタイルではなく、その流動的なコンセプトにある。ゆえにリー・ペリーとの共作は——マーク・E・スミスとの共作もそうだったように——意外性がありつつも、意外でもなんでもなかったりもするのだ。というのも、マウス・オン・マーズとは絵に描いたようなポスト構造主義的グループで、すなわちひとつの型/スタイル(構造)を絶対視することなく、むしろ「そこからハミ出るものこそが面白いんじゃない?」と突っ込みを入れてきたような連中なのだから。

 1993年の結成以来、長くデュッセルドルフやケルンといったラインラント地方を拠点にしていたマウス・オン・マーズだが、2010年頃には、ヤン・ウェルナーとアンディ・トマのふたりは拠点をベルリンに移している。 リー・ペリーとのセッションもその街にある彼らのスタジオでおこなわれた。このアルバムは、本質的な意味でスタジオワークやミキシングにおける実験を追求した、1970年代後半の〈Black Ark〉時代のリー・ペリー作品とは重なるが、レゲエ/ダブというひとつの型/スタイル(構造)を拒否している。それを楽しめるリスナーにとっては、ほかで聴けない極上のサウンド・アートが展開されていると思っていい。

『Spatial, No Problem.』はまさにそういう作品だ。聴き手は、そのなかを移動していく。異なる伝統、文化、リズム、楽器、人格の間をね。それらは互いにコミュニケーションを取り、出会い、平和的に混ざり合いながら、奇妙でぶっ飛んだ音楽のアイデアを一緒に創り上げていくんだ。

リー・ペリーがベルリンにあるMoMの〈Paraverse〉スタジオにやって来たのが2019年12月というと、前作『AAI』の制作前になるのでしょうか?

ヤン・ウェルナー:うん。『AAI』の制作より前のことだね。リー・スクラッチ・ペリーをベルリンに呼ぶために、長いプロセスを踏む必要があった。LAのレコード・レーベルとか、その他に何人か、それに仲の良い友人で、元ザ・フォールのメンバーだったエレナ・ポウロウとかね。あとは、本当にいくつかランダムなことをやっていた。それで、最終的にリーがベルリンにやって来たんだ。
 アンディが自分のスバルで空港まで迎えに行って。空港に降り立ったリーは、ある意味ベルリンに“着地”した感じだった。それで、まず電子音楽機材のショップで、 〈Patchpoint〉っていう店のオープニングにつれて行った。着いた瞬間からものすごく好奇心旺盛で、「この機材は何をしているんだ?」「どうやって音を出しているんだ?」って、すべてのことを知りたがっている感じだった。それから、その夜のうちに、そのままスタジオに向かったよ。スタジオに着いたら、すぐにレコーディングをはじめていたね。実際、リーが到着したその日の夜には、もう録音をはじめていた。

ペリーの死後、すぐにリリースしなかったのは、作品がペリーへの追悼の感傷に埋もれてしまうことを避けるためだったのでしょうか? あるいは、『AAI』のリリースと重なってしまうからだったのでしょうか?

アンディ・トマ:(『AAI』のリリースの件は)もちろん問題ではあったんだけど、でもそれが理由というわけではない。実際、リーが亡くなったとき、僕たちはこのプロジェクトを小休止させる必要があった。というのも、もっと彼と一緒に作業を続けるつもりだったからね。彼と一緒にミックス作業もしたいと思っていたんだ。彼自身も、もっとプロダクション面にも関わりたいと話していたし。でも、それはもう叶わなくなったしまった。だから、僕たちは『AAI』のプロジェクトの方に集中することになったんだ。
 それはある意味助けにもなった。というのも、ルイ・チュード=ソケイが関わっていて、彼はリーの素材も聴いていたから、いろいろと助けてくれたんだ。このプロジェクトをゼロから作り直すのではなくて、どうやって完成まで持っていくか、という部分についてもね。
 元々はリーと一緒にパフォーマンスする構想もあったんだよ。そもそもこのレコードが『Spatial, No Problem.』というタイトルになった理由もそこにある。このレコードを作って、収録曲を3Dサウンドシステムのなかでパフォーマンスするつもりだった。リーにはいわばMC(マスター・オブ・セレモニー)みたいな役割をやってもらおうと思っていてね。それに、僕たちの友人で楽器を作っている人がいて、リーのために“魔法の杖”みたいなものを作ろう、なんて話もしていたんだよ。音を空間のなかに投げ込んで、その音が3Dサウンドシステムの中でアルゴリズミックに反射していく……僕たちはそんなことをやろうとしていたんだ。それが、リーとのプロジェクトの当初のアイデアだったんだよね。
 でも、そういう構想についても、ある意味別れを告げなければいけなかった。それに、知っての通り、僕たちは『AAI』の作業にも取り組まなければならなかったしね。それでしばらく時間を置いた。このプロジェクトには、3年くらいまったく触れていなかったんだよ。
 あとになって、また少しずつトラックの作業に取り掛かりはじめたんだけど、実はそんなに手を入れる必要もなかった。というのも、驚くほどすでにすべて上手く噛み合っていたんだから。このままほとんど手を加えずに完成させられるんじゃないか、という感じだったね。

MoMとペリーとの共通するところをひとつ言えば、サウンドにおけるテクスチュアの創出ということがありますよね。MoMの初期、あるいは、ミクロストリアの初期においても顕著だったと思いますが、いちど録音したテープをくしゃくしゃにしたり、加工して再生するような行為は、ブラック・アーク時代のペリーがやったこと(録音したテープに大麻の煙をかけたりなど)と重なるところがあります。しかし、そうしたスタジオ・マジックを駆使したリー・ペリーは1970年代の話ですよね。

アンディ:そうだね。彼は本当にたくさんのことをやってくれたんだ。もちろん、プロダクションに関する彼自身のアイデアを完全に実現するところまではいかなかったけれど。でも、ベルリンで僕たちと一緒に過ごした状況に、彼はかなり居心地の良さを感じていたように見受けられた。互いまだよく知らない状態だったし、いまこの瞬間に存在するものを見てみて、そこからクリエイティヴになっていこうという感じだった。そこにはエゴもなかったし、何かを過度に期待する空気もなかった。それで、2日目くらいになって彼も少しずつアンディにギターが弾けるか訊いたり、「ベースラインはboom、boom、boomみたいな感じがいいかも」とか、そんなふうにアイデアを口にしはじめたんだ。
 とはいえ、具体的に詰めていく時間はあまりなかったけれど。ずっと即興での演奏が続いていたから。スタジオには三つのスペースがあって、まずは僕たち自身のメインのスタジオ、それからStudio B、さらに録音用の部屋があって、そこにはオルガンやベース・アンプ、パーカッションなんかを全部セットアップしていた。その部屋には専属のエンジニアもいたね。キッチンまで録音スペースとして使っていたんだよ(笑)。料理しながら録音したりね(笑)。

MoMとしては、この企画を引き受けた理由はどこにあったのでしょうか? 共作にいたる過程には、わりと偶然的な要素があったのでしょうか?

アンディ:物事っていつもそういうものなんだけれど、いろんな経路や繋がりを通って形になっていったんだ。同時に、音楽的なインスピレーションもいろいろな場所から来ていたね。それに、僕たちには長いキャリアがあるから、スタイルやプロダクションに関してはかなり経験も蓄積されていた。リーもそこに対してとてもオープンだったし、実際かなり多くのことを理解しているようにも見えた。だからこそ、僕たちが投げたものに対して、彼は驚くほど素早く反応できたんだと思う。僕たちが作っていたストーリーや空気感に対してね。録音中もそうだったけど、彼は詩的で物語性のある表現を通してアイデアを出してくれた。それが、楽曲や全体の雰囲気やコンセプトに本当にぴったりはまっていたんだ。彼は、その“瞬間”を感じ取る感受性がものすごく高い人だと思う。

『AAI』の複雑性と比べると、サウンドの細部における変化、音響やコラージュなんかはすばらしく凝っていますが、総じてグルーヴィな作品です。ペリーの存在感、その生命力を打ち出すべく、このMoM流ファンクをやったのでしょうか?

ヤン:どちらのレコードも“声”を軸に作られているという共通点はある。でも、声というのは、それぞれ話し方も違うし、言語によっても違いがある。どんな言語にも固有のリズムやメロディ、声域の中にある倍音的なスペクトルがある。『AAI』はかなりフォーカスされた作品で、とてもコンセプチュアルなものだった。僕たちはルイ・チュード=ソケイと一緒にアルバムのストーリーを作っていって、ルイの声を合成して、演奏可能な作品に仕上げたんだ。つまり、ルイの声のように聞こえるスピーチ・シンセサイザーを構築したんだよ。
 一方で、リー・スクラッチ・ペリーとの作品はもっと即興的で、自然発生的なものだった。実際に楽器を使ったレコーディング・セッションのなかで生まれていったものなんだ。アルバムの大半はワンテイクで、リーにもう一回歌って欲しいとか、ギターをもう一回弾いてとか、そんなことはいっさいしていない。そこで起こったものをそのまま受け取って、そこから僕たちがアレンジしていった。もちろん、どちらの作品もものすごく緻密にアレンジされているよ。かなりのスタジオ・ワークを重ねて、細かく構築している。僕たちは、言ってみれば“パズル・パンクス”なんだよね(笑)。PUZZLE PUNKSって知ってる? 

芸術家の大竹伸朗さんと、BOREDOMSのEYヨさんとの実験音楽ユニットですね。

ヤン:そうそう。僕たちは“パスル・パンクス”なんだと思う。本当に緻密な部分を扱っているし、そのディテールを組み合わせながらアレンジしていくからね。ある意味、コラージュみたいなもの。まるでアメリカ映画で悪の犯罪者や巨大な犯罪ネットワークを追っているシーンみたいな感じだね。壁一面に写真が貼ってあって、そこに糸が張り巡らされているようなやつ。僕たちの作業って、まさにあんな感じなんだ。だから、『AAI』も『Spatial, No Problem.』も、「犯罪はどこで起こっている?」「ストーリーはどこにある?」「動機はなんだ?」「誰が関わっているんだ?」「次に何が起こる?」「それとどう向き合う?」みたいなことを探っていく、奇妙なアレンジの集積なんだ。
 ただ、リー・スクラッチ・ペリーとの作品は、ある意味もっとオーガニックなものだった。関わっている人も多かったし、ある意味とてもソーシャルなものだったんだよね。開かれた共同体のような感じだった。一方で、『AAI』はマウス・オン・マーズをかなり凝縮した作品なんだ。これまででもっともフォーカスされていて、もっとも緻密に考え抜かれた作品のひとつだと思う。マウス・オン・マーズの世界観はつねにかなり極端なんだけど、リー・スクラッチ・ペリーの作品と『AAI』は、その両極端みたいな存在なんだよね。
 でも、その両方を結びつけているものがある。それは、“文化”に対する強い探求心なんだ。音響制作の歴史的文化、芸術文化、世界構築の文化……スピリチュアルな世界構築、合理的な世界構築、コンセプチュアルな世界構築。西洋、パン・アフリカン、アジア、グローバル、超ローカルといった極めて個人的で特異なもの……つまり、ひとりの人間、ひとつの精神が持つ文化。そういうものすべてが、ある種奇妙な惑星モデルのなかに存在している。僕たちの音楽や作品は、昔からずっとそういう“惑星モデル”なんだよね。すべてが三次元的で、ある意味、システムそのものと言ってもいいかもしれない。僕たちは、そのモデルを作るための手段として音楽を使っているんだ。音楽ってすごく忍耐強いし、たくさんのものを返してくれるし、アクセスしやすくて、包摂的だから。
 僕たちが実際に構築しているのは、シナリオそのものだ。本当に探求しているのは、三次元的なアイデアなんだ。リーとの作業がスムーズだったのも、彼の思考が完全にそういったものだったから。彼は本当に、同じような考え方をしていたね。つまり、彼は単なる音楽家なだけではなくて、とてもコンセプチュアルな人だったんだよね。彼は空間のなかで物事を配置していたし、コラージュを作っていた。別の部屋で起きていたことを、すぐに別の出来事と結びつけることができたんだ。ある部屋でいままさに起きていることを、別の部屋の特定の瞬間に起きている何かと直結させたり。あるいは、時間を行き来して、前日に起きたことを、まったく別の曲のなかの特定の瞬間に突然持ち込むようなこともやってのけたよ。だから、リーとは、時間や空間を旅することがとても自然なことだったんだ。
 それは、『AAI』とも繋がっていると思う。『AAI』はもっと人工的でコンセプチュアルというか、ある意味コンピューテーショナルな(計算上の)構造なんだよね。一方で、リーとの作品はもっと自発的で自然発生的な構造だった。それに、どちらの作品も、ジャンルについての作品ではないんだ。ガラージでも、エレクトロ・ファンクでも、ダブでも、レゲエでも、クラウトロックでも、実験音楽でも、テクノでも、ポップでも、クラシックでもない。もちろん、結果として特定のジャンルに聞こえることはあるよ。ある人はこう捉えるし、別の人は違った捉え方をする。でも、本質的には、万華鏡みたいに変化し続ける視点の示唆だと思っている。音楽は、そういった構造や示唆を創造するための、とても優れたプラットフォームであり、ツールであると思うんだ。だから、このアルバムは『Spatial, No Problem.』というタイトルになった。本当に“空間”と、そのなかに存在する“星座”、すなわち“配置”についての作品なんだ。

非常に興味深いです。実際に、あなた方はコンセプトマニア的なところがありますよね。スタイルに対するフェティシズムではなく、コンセプトありきでこれまでやってきていると思います。今回のコンセプトについては、予め考えられていたものだったのか、それともリーとのレコーディングのなかで生まれたものだったのでしょうか?

ヤン:そうだね。物語を語れるもの、とも言えるね。今回のコンセプトは、電話やZOOMでの対話から生まれたものがベースになっているよ。

アンディ:リー・スクラッチ・ペリーと最初に電話したときのことなんだけど、そのときに僕たちが基本的なアイデアについて話したんだ。僕たちはダブを、ジャンルとしてではなく、もっと社会的なものとして捉えたいと思っていた。ある種の“スペース”としてね。だから僕は、空間的なシステムを作りたいこととか、将来的にはライヴ・パフォーマンスもできるかもしれない、という構想を彼に説明したんだ。そのときの彼の返事が、「Okay, it’s spatial, no problem(空間? ノープロブレムだ)」だった(笑)。その言葉について、僕たちは何週間も話した。というのも、その返答自体がとてもオープンで、ポジティヴで、遊び心に満ちていたからなんだ。彼のそのひと言は、このアルバムに関するいろんなアイデアに、かなり大きな影響を与えたね。

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とくにカリブのマーチング・バンドだね。カリブという場所自体が、まさに文化の移動や混交を象徴している。ある場所にあったものが別の土地へと運ばれ、そこでまた変化していく。そういう歴史があるからね。それについては、ルイ・チュード=ソケイがライナーノーツで本当に素晴らしい文章を書いてくれているよ。

最後の曲、 “State of Emergency” が象徴的ですが……

ヤン:“State of Emergency”のリズムの一部はサンプルから取ったもので、僕たちの友人でエンジニアのコンスタンティン・カーステンスが作った素材だったりする。

アンディ:コンスタンティンというエンジニアが、自分で録ったフィールド・レコーディングを聴かせてくれたんだ。そのなかに、路上で金属缶を叩いている音を録音したものがあって。その録音のある一部分が、すでに曲のグルーヴとして機能していた。だから、僕たちはその断片を切り出して、ループというかシーケンスとして使った。それで、そこにすべてを積み重ねていった。あの音をベースにして、少しだけスローにして使ったよ。それとは別に、もうひとつ異なる音もあったね。たしか、列車みたいな音で、蒸気機関車の音(汽笛)だったと思う。
 列車というアイデア……つまり旅とか移動とか、そういう感覚自体が曲のなかにちゃんと残っている。それは、未来へと向かって走っている列車みたいなイメージだった。曲の終盤になると、キューバ出身の管楽器奏者のレジス・キンレ・モリナも参加してくれて、彼がああいう感じのフレーズを演奏してくれた。そこにチューバのリズムも加わって、だんだんとマーチング・バンドのようになっていった。さらに曲の最後には、“Potato Parade”という録音も入っていた。それが最終的に曲に完全にはまった感じだよ。僕たちは「そうか、この曲は永遠に行進し続けるパレードのようなものなんだ」と思った。そのなかでリーは、自分の人生について、亡くなった仲間たちについて語っている。そして、曲の本当の終わりになると、彼は笑いながら「This is the end……this is the end……」と言った。そうして、パレードがだんだん消えていく。しかも、それがアルバムの最後の曲なんだよね。そのあと、彼は実際に亡くなってしまった。

ヤン:昨夜パーティに行ってきたんだけど、そこにペルー人の友だちも来ていた。エール・ホップっていう、ペルー出身の本当に素晴らしいアーティストであり、ミュージシャンであり、パフォーマーでもある彼女と、リー・スクラッチ・ペリーとのレコードの話になった。彼女とパートナーがすごく楽しみにしている、と話していて、そこからペルーの話題になっていった。僕が、実はこのレコードの最後はペルーで終わることを話したんだ。「このパレードの録音はペルーで録ったんだよ。葬送行進曲みたいな部分が、アルバムの最後の曲に出てくるパレードになったんだ」と説明した。そしたらその男性が突然、「ちょっと待って。君たち、いつペルーにいたの?」って訊いてきたんだ。「かなり前だから覚えていないなぁ」って答えたんだけど、彼が「たぶん僕、そのコンサートにいたよ」って。するとエール・ホップも、「えっ、ちょっと待って。私もそのコンサートにいた!」ってね。
 こういうふうに、レコードを通してまた別の繋がりが生まれるのが本当に面白い。しかも、彼らはまだそのレコードを聴いてすらいないのに、その話をしていたら、また新しい接点が見つかる。僕はこういう“接続性”が大好きなんだ。この世界では、僕たちはみんな繋がっているということさ。そして、このレコードはまさにそういうことについての作品なんだ。昨今のように人びとが分断されている時代だからこそね。デジタル・メディアは僕たちを分断しているし、巨大テック企業もそうだ。そこにあるのはコントロールであり、浸透であり、情報の反復なんだ。与えられる情報、追跡される行動、報酬化される振る舞い、禁止される振る舞い。そういうものばかりになってしまっている。僕たちの世界はどんどん小さくなっていってしまっている。でも、このレコードは巨大な世界についての作品なんだ。本来の世界は、本当に無限なんだよ。
 だからこその、『Spatial, No Problem.』というタイトルなんだ。空間、つまり世界に線を引き、繋がりを見出していくこと。そのことに問題はない。それこそが、人間であるということなんだと思う。だから、僕はこのレコードを、この作品とはまったく関係ない録音素材で終わらせるのが本当に美しいと思っているんだよね。
 でも、同時に、その録音はこのレコードそのものでもあるんだ。いろんなミュージシャンたちが行進していって、マイクがあるチューバ隊から別のバンドのドラムへ移動し、また別のバンドへと移っていく。“Potato Parade”に、バンドが延々と続く列をなしている。僕たちはそのなかを歩きながら、いろんなバンドを聴いている。でも、それ全体がひとつの音楽作品のように感じられる。『Spatial, No Problem.』はまさにそういう作品だ。聴き手は、そのなかを移動していく。異なる伝統、文化、リズム、楽器、人格の間をね。それらは互いにコミュニケーションを取り、出会い、平和的に混ざり合いながら、奇妙でぶっ飛んだ音楽のアイデアを一緒に創り上げていくんだ。

“Economic Train” みたいなブラスセクション風のメロディが入る曲なんかはじつに新鮮に感じました。スタジオの雰囲気がそうさせたのでしょうか?

ヤン:まさにその通りだね。さっきアンディが説明していたことにも近い。ときにはフィールド・レコーディングだったり、自分たちで録音した素材だったりするんだけど、それをループとして走らせ続けることがあるんだ。というのも、そこにフィルターをかけたり、何か調整を加えたりしたいから。そうやっていじっていくうちに、「おっ、このループ変だな、すごくいろんな要素が入ってる」と気付くことがあるんだ。そこから曲の構築がはじまっていくんだよね。”Economic Train”にも似たところがある。いろんな音が奇妙に組み合わさっていて、それが独特のリズムを生み出しているというか。そこには実際の列車の音も入っているよ。

アンディ:そうそう、それがまさに言いたかったことなんだ。この曲にはマーチング・バンド的な背景もある。基本になっている要素のひとつが、マーチング・バンドみたいなものでもあって。ほら、ドラマーたちが身体にドラムを固定して、ああいうパターンを叩くよね? そういう感覚から作られているんだ。たしか、カリブ由来のものでもあったと思う。そういう小さなインスピレーションが出発点になっていたね。

ヤン:この作品全体の話のなかで、もうひとつ重要なのは“movement(移動)”だと思う。時間や文化、固有性についての話でもあるんだけど、同時に“人や文化が移動していくこと”そのものについての作品でもある。だから、マーチング・バンドの要素がたくさん入っているんだ。とくにカリブのマーチング・バンドだね。カリブという場所自体が、まさに文化の移動や混交を象徴している。ある場所にあったものが別の土地へと運ばれ、そこでまた変化していく。そういう歴史があるからね。それについては、ルイ・チュード=ソケイがライナーノーツで本当に素晴らしい文章を書いてくれているよ。だから、この音楽から聴こえてくるものって、歴史的にもコンセプト的にも人類学的にも、“人間はつねに移動し続ける存在である”ということのメタファーとして捉えられると思う。

アンディ:このレコードで表現されているスタイルの核にあるものは、結局はどれも同じものなんだと思う。彼が愛していたのも、まさにそこだったんじゃないかと思うんだ。それに、おそらく彼は過去にスタジオを焼失してしまったあと、いろいろなプロジェクトに取り組んではいたけれど、本当の意味ではやりきれていなかったことがあったのかもしれない。でも、今回の僕たちの布陣というか、このメンバー構成のなかでは、それがある種きちんと実現できていたというか、そういう感覚があったんだろう。

そうしたなかで、音響的な面でペリーが影響を与えたところがあったら、教えてください。

ヤン:うん。彼はときどき、「これ弾ける?」とか「こういうふうに演奏できる?」というように頼むことはあったけれど、自らミキシング・ボードに触れることはなかったね。〈Black Ark〉スタジオを焼失し、ジャマイカを離れて以降、リー・スクラッチ・ペリーはプロデューサーであることをやめて、自分の声をインターフェースとして使うようになっていた。僕たちのスタジオでも、まさにそういう感じだった。本当に魔法のようだったし、彼のディレクションは彼の存在そのものや、言葉を通じておこなわれていた。それがとても興味深かったね。
 リーはアンディが素晴らしいギタリストだということを知らなかった。それで、あるときリーが「アンディ、ギターは弾ける? このトラックにリズミックなギターを入れてくれないか?」って言ったんだ。アンディは「もちろん」って答えて。たしか“Rockcurry”だったと思う。それで、リーが「こういう感じで弾いてくれ」って言ったんだけど、その言い方が本当に素晴らしくてね。というのも、彼が普段やっていることの本質が現れていたから。彼は方向性を示すとき、まるで詩のような言葉で表現するんだ。彼はつねに呪文のような、詩のような話し方をしていたね。それが彼なりの貢献の仕方であり、ディレクションであり、影響の与え方であり、作曲方法でもあった。
 本当に驚異的なんだよ。リーには“いまはミュージシャンとしての自分”“いまはプライヴェートな自分”みたいな切り替えがなかった。そこに境界線は存在しなかったんだ。すべてがつねにリアルで、同時にパフォーマンスで、魔法で、プロダクションで、人生で、真正性そのものだった。僕には本当にすごいことに思えたんだ。それが、僕たちともとても相性が良かった。どの瞬間も本物で、ものすごく強度の高い精神状態だったと思う。彼は、その強烈さを彼なりの言語や言葉を使うことでコントロールしていたんじゃないかな。
 言葉が彼にとってのインターフェースであり、緩衝地帯であり、交渉の場だった。そのおかげで彼は、ミキシング卓の前に座ってプロデューサーとして機能しなければならない、という立場で現実と向き合うよりも、ずっと自然に現実を扱えたんじゃないかと思う。彼は物事を観察することができた。彼はupsetter(大番狂わせを起こす人物)であったのと同じくらい、observer(観察者)でもあったんだよね。

〈Black Ark〉スタジオを焼失し、ジャマイカを離れて以降、リー・スクラッチ・ペリーはプロデューサーであることをやめて、自分の声をインターフェースとして使うようになっていた。僕たちのスタジオでも、まさにそういう感じだった。本当に魔法のようだったし、彼のディレクションは彼の存在そのものや、言葉を通じておこなわれていた。

制作のプロセスについても教えてもらえますか? まずはあなたがたがラフなトラックを作ってペリーに歌ってもらい、さらにそれをあなたがたがブラッシュアップさせた感じなんでしょうか?

ヤン:まず、簡単な前提として、リー・スクラッチ・ペリーが参加することになった時点で、アンディとの電話でも彼自身がレゲエはやりたくない、と言っていたんだよね。そのことを踏まえて、いくつかのスケッチは用意していたよ。アンディがアンドレア・ベルフィと録音していた素材については彼から説明できると思うけど、実際には、予め準備されていたものと、リーがそこにいたことで自然に湧き起こったものの両方があったということだね。
 さらに言うと、リーが帰ったあとになって初めて気付いたものまであったんだ。これはもう、一曲まるごとの話なんだよね。完全なストーリーになっている。でも、それが起きている最中は僕たちも気付いてなかったんだ。セッション中にベースラインやちょっとしたメロディに乗って即興をはじめて、それがほんの30秒くらいの出来事だった。でも、僕たちがやるべきことは、その断片をループさせることだけだった。少し反復を与えてやると、リーがその上でジャムを続けていった。彼は何かを掴むと、その瞬間から即興をはじめるんだ。短いベース・ラインだったり、一瞬のメロディだったりね。それで、そのフレーズ自体はもう過ぎ去っているんだけど、リーはそこからさらに展開していく。それで、スタジオで気付いたんだよ。もしこのままメロディを走らせ続けたら、リーが続けていることと完璧に噛み合うぞ、ってね。
 でも、それを理解するのは本当に頭を使う作業でもあったんだ。いろんなレイヤーのプロダクションが同時進行していたからね。もちろん、最初からいくつかのスケッチはあったよ。でも、実際にはそんなに多くなかったね。アルバムの3分の1くらいは提案として持ち込んだ素材で、別の3分の1、あるいはそれ以上はスタジオで自然発生したものだね。そして、残りの3分の1、あるいはそれ以上は、あとになって振り返って初めて「おお、これは完全に一曲になっているじゃないか!」と気付いたもの。しかも、その時点では僕たち自身まだ完全には理解できていないんだ。もう、次のアルバム用の素材じゃないか、というレベルでね。
 すごく面白い瞬間もあった。セッション中に突然現れたんだけど、少し奇妙な、またマーチング・バンドとかパレードみたいな雰囲気の瞬間があって。そのときにリーが日本人について歌いはじめたんだ。とても愛らしい曲なんだよ。ちょっと変わったリズムなんだけど、ものすごく喜びに満ち溢れている本当に美しい曲で。あとから、これは20分の曲にもできるということに気付いたんだ。ベースラインもメロディも全部揃っていて、全員の演奏も完璧で、しかもリーが物語を語っている。だから僕たちは、それをただ延ばすだけで良かった。そのあとになって、神戸のブラス・バンド「三田村管打団?」に参加をお願いした。
 それは森本アリも参加しているグループで、彼は僕たちのレーベル、〈Sonig〉とも関わりがある。彼は以前、スクラッチ・ペット・ランドやファン・クラブ・オーケストラの作品にも参加していて、僕たちの小さなレーベルである〈Sonig〉から作品をリリースしている。だから、この神戸のブラス・アンサンブルには、すべて完成したあとにトラックを送って、「セッション中に起きたことを録音したんだけど、ブラスを入れてくれないか?」と依頼したよ。
 これから出る次の作品には、彼らが参加することになるよ。面白いのは、それが実際のセッションからずっとあとの出来事だということなんだよね。彼らは、神戸で自分たちのパートをレコーディングしたんだ。つまりこれは、単なる“空間的な距離は問題ない(Spatial, No Problem)”だけじゃなくて、“時間そのものもまた、飛び越えることも厭わない(Time, No Problem)”ってことなんだよね(笑)。

通訳:そうしたお話を聞いてから、またアルバムを聴き直すのが楽しみになりました。作品の解説書を読み込むことで、いろいろな発見があるというか。

ヤン:それって本当に素晴らしいことだと思うんだ。インタヴューは、楽譜のようなものにもなり得るからね。インタヴューは、一種のスコア(設計図/楽譜)になり得るんだよ。誰かがインタヴューを読むことで、最良の場合、その人が作品を“聴く”“見る”感覚そのものが変わる。何かを学だけじゃなくて、その作品をどう辿っていけばいいのか、どのように作品のなかを航海すればいいのか、そのための新しい道筋を与えてくれるんだ。だから、いまこうして君と一緒にそのスコアを書く機会が得られたことにとても感謝しているよ。

最後に、MoMとしての、この先の夢、抱負、野心などをお聞かせ下さい。

ヤン:僕たちにはとくに何か大きな野望や計画があるというわけではないんだ。ただ、いまこの瞬間から次の瞬間へという感覚で進んでいるだけ。でも、確実に決まっているのは、『Spatial, No Problem.』のインスタレーションをロンドンのバービカン・センターで行うことだね。いまはアルバムを空間化する作業を進めていて、いわば3D体験というか、立体音響的なオーディオ体験へと変換しようとしているところ。そのあと、アメリカでも『Spatial, No Problem/』のスペシャル・オーディオ・インスタレーションを実現できるように、Meyer Soundと話を進めているところだよ。願わくば、日本にも持っていきたいと思っているんだ。
 あと、いまはリー抜きでこの素材をどのようにライヴで演奏するかについても模索している。僕たちはそれを、“ダブのダブのダブのダブ”って呼んでいるんだけど(笑)。つまり、音楽をさらに先へと運んでいって、反復して、別ヴァージョンを作り続けていくということ。エコーのエコーのエコー、みたいな感覚だね。実際、バービカンでもそういうことをやろうと思っているんだけど。まあ、今後のマウス・オン・マーズはそんな感じだね。『Spatial, No Problem.』という作品が、しばらくのあいだは僕たちを忙しくさせるんじゃないかな。

いまだにこんな風に、MoMのサウンドを更新していることに驚きました。 “To the Rescue” みたいな、ちょっと間が抜けたような曲も楽しくて良いですね。

ヤン:僕たちもいつかはちゃんと大人になる必要があるんだろうね。きっと、そのうち成長するんだと思う。たぶん、いつかはね(笑)。でも、僕は死ぬことについても受け入れている。その上で、それも悪くないなと感じている。だって、美しさというものを信じるなら、それはいつか消えてしまうからこそ存在できるものだと思うから。もし、何ひとつ消えない世界だったら、美しさも存在しないだろうし、興奮もなくなるだろうし、愛も生まれないと思うんだ。僕は、そういうものすべてを、とても愛している。だから、物事が消えゆくことを、とても幸福に感じているよ。自分自身も含めてね。

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