Home > VINYL GOES AROUND > MORE DEEP DIGGING “そこにレコードがあるから” > 『ユーザーズ・ヴォイス』〜VINYLVERSE愛用者と本音で語るレコード・トーク〜 - 第五回 映画から広がった、サウンドトラックとレコードの世界ユーザー・ネーム:nkk / 中川慧輔さん

いま、世界的にレコードブームが起きている。
思い返せば、2000年代の中頃〜後半には、レコードはすっかり時代の片隅に追いやられ、誰も見向きもしなくなったように思う。それが20年近くの時を経て、最近は見事に返り咲いたと言っていいのではないだろうか。
90年代までは、渋谷の街の中心で石を投げたらレコードのショッパーに当たるんじゃないかと思うくらい、みんながレコードを買っていた。もちろん、あの頃に比べれば、まだまだなのかもしれないが、それでも最近は、街を歩いていると、レコードを買ったのだろうと思われる袋を小脇に抱えた若い人とすれ違うことが明らかに増えた。
では、なぜ人はレコードを買うのだろう。
音楽を聴くだけなら、サブスクで十分なのかもしれない。それでもレコードを手に入れ、集めたくなる。その理由は、人によって違う。DJのために買う人もいれば、ジャケットやアートワークも含めて楽しみたい人もいる。好きなアーティストだから、単純に音楽が好きだから、あるいは偶然出会った一枚が忘れられないから。
今回話を伺った中川慧輔さんにとって、音楽との出会いは「映画」と深く結びついている。
普段は映画の配給会社に勤める一方、サウンドトラックを中心としたDJとしても活動する中川さん。映画を入口に音楽を知り、音楽を通してまた映画に戻っていく。そんな循環の中で、レコードとの付き合い方も少しずつ形を変えてきたという。
そんな中川さんが、レコードコレクションを記録し、共有する場所として使い始めたのがVINYLVERSEだったのはとても嬉しいかぎりだ。
なぜ映画音楽なのか。なぜレコードなのか。そして、レコードを集めることで何が見えてくるのか。
VINYLVERSEを使って感じていることから、レコードを買い始めたきっかけ、そしてサウンドトラックを通して広がっていった音楽との関係まで。
映画と音楽、レコードとをめぐる現在について、話を聞いた。

--- まず、出身地と現在のお仕事について教えてください。
中川(以下、N): 中川慧輔と申します。35歳で、出身は愛知県です。
--- お仕事は映画の配給会社ということでしたね。
N: はい。映画の配給会社で働いています。邦画も扱いますが、洋画が多い会社なので、海外映画の買い付けをメインに、それを日本国内の映画館で公開したり、配信したり、Blu-rayなどのパッケージを出したりと、国内での展開全般を担当しています。
VINYLVERSEを使い始めたきっかけ
--- VINYLVERSEを知ったきっかけは何だったんでしょう?
N: 正確には覚えていないんですが、たぶんX(旧Twitter)か何かのSNSで、広告か誰かのシェアが流れてきたんだと思います。それを見て気になって、アプリをダウンロードしてみたという感じです。
--- 中川さんは映画のサウンドトラックのレコードを中心にコレクションされていますよね。
N: はい。僕は今、サントラオンリーです。
--- VINYLVERSEは、サントラのコレクションを整理するために使っている感じですか?
N: まさにそうです。もともとはDiscogsも使っていたんですが、あまり使い勝手が良くないと感じていて、データベースとして使っていました。VINYLVERSEはその代わりというわけではないですが、「こういうアプリがあるんだ、良さそうだな」と思って使い始めました。
「どういう哲学で集めているか」が見えると面白い
--- 中川さんは、長く使ってくださっているユーザーだと思うのですが、VINYLVERSEに「こうなったらいいのに」というアイデアや希望はありますか?
N: ユーザー同士がつながる仕組みもありますよね。ただ、そこをどういう形にするかは難しいですよね。いわゆるSNSになりすぎると、それはそれでうっとうしくなってしまうと思うので。
--- そうなんですよね。そこはかなり慎重に考えています。今は一応フォロー機能がありますが、むしろ「そっとしておいてほしい」という人も多い気がして。Instagramのような大きなSNSは機能がどんどん発達していますが、VINYLVERSEはそこまで何でもできる必要はないと思っています。シンプルなものだからこそ、どういうコミュニケーションがいいのか、ずっと考えているところです。
N: そういう意味では、自分が集めているレコードのギャラリーやプロフィールを見たときに、「どういう哲学で集めているのか」「この人はどういうところを良いと思っているのか」という、その人の個性が今よりもう少し見える要素があると、もうちょっとフォローしてみようかなと思うかもしれません。
--- なるほど。それは面白いですね。
N: あとは、並び替えができるといいですよね。
--- そうなんですよ、何かのカテゴライズごとにゾーニングできるようにすると、もっと楽しく使えるんじゃないかと思っていて、開発候補には入っています。
N: サントラは特殊でマニアックなので、需要があるかは分からないですが、タグ付け機能があるとすごく嬉しいです。
DJをするときや選曲するときに、「監督」「年代」「国」「SF」「ホラー」といったジャンルなど、今あるコンポーザー情報だけでは検索できない切り口で、自分なりに整理できると便利だと思います。あと、サントラにはいわゆる既存曲のコンピ盤も多いですが、アーティスト名が「Various」になってしまうレコードも、収録曲やアーティスト名でサーチできると個人的には嬉しいですね。
--- それはいいですね。自分でタグを作れるというのは、確かに面白い。
N: それがあったらすごく嬉しいです。ぜひお願いします(笑)。
--- 自分のギャラリーを誰かに見せたいとか、人と共有したいと思うことはありますか?
N: ありますね。もともとInstagramにレコードを上げたりもしていました。そもそも僕がDJをやっているのも、映画音楽って、一般的にはそこまでちゃんと聴かれていないと思うんで、だから、「こういう音楽があるよ」と紹介したい気持ちがあります。「知っている映画だけど、実は音楽がすごくかっこいいよ」とか、逆に「この音楽が良いから、この映画を観てみよう」というふうに広がっていったらいいなと思っています。
そういう意味では、自分のコレクションを共有したいという気持ちはありますね。
映画からサントラへ、そしてレコードへ
--- レコードをかなり買われているようですが、CDも買いますか?
N: はい。CDはむしろ最近買い始めました。
--- あ、そうなんですね。
N: サントラって、CDでしか出ていないものが結構あるんですよ。
もともとオーディオにはあまりこだわりがなくて、レコードはスピーカー内蔵のプレイヤーのような簡易的な環境で聴いていたんですが、海外の音楽好きの友達と話していたときに、「良いレコードをいっぱい持っているんだから、彼らに声を与えてやれ」と言われて(笑)。
要するに、ちゃんとしたオーディオで鳴らしてやれということですね。それで最近アンプとスピーカーを買って、CDもつなげられるようになったので、CDも買うようになりました。

--- サントラはCDでしか出ていない作品も多いですよね。アナログ化したら絶対に面白いのに、という作品も多い。
N: それ、僕もめちゃめちゃ仕事としてやってみたいなと思っています。
--- そもそも、映画が好きで、そこからサントラを買うようになって、さらにレコードを買うようになったという順番ですか?
N: そうですね。映画があって、サントラが好きになって、そこからレコードを買うようになったという順番です。さらに細かく言うと、レコードを買い始める前ですが、サントラが入口でいわゆるワールドミュージックも経由しましたね。仕事柄もあり世界中の映画を観るので、北欧や東欧、中東、南米、東南アジア、アフリカなど、映画のサントラきっかけでいろんな国の音楽を聴くようになりました。
最初のレコードは『アネット』
--- 初めて買ったレコードは何ですか? 35歳というと、世代的にはCDが中心ですよね。
N: 初めてレコードを買ったのは2021年です。今から5年くらい前ですね。コロナ禍で在宅勤務が中心になって、飲み屋も開いていないし、家で映画ばかり観ていて、ちょっとうつうつとしていた時期があって。
「家でできる新しい趣味はないかな」と思って、レコードを買ってみたんです。
--- 最初に買ったのは?

N: レオス・カラックス監督の『アネット』です。音楽はスパークス。当時はまだレコードプレーヤーを持っていなかったんですが、カラックスもスパークスも好きだったし、ジャケットもかわいくて、グリーンのカラー・ヴァイナルで、ポスターも付いていた。だから、最初は聴くというより、飾れればいいやくらいの目的で買いました。その後、スピーカー内蔵の小さなプレーヤーを買って、実際に聴き始めたんです。
--- そこから5年で、今は何枚くらい所有しているのですか?
N: 1,000枚を超えて、今は1,100枚くらいですね。
--- 1,100枚! 結構お金を使っているんじゃないですか? 今、レコード高いですからね。
N: はい、結構使っていると思います(笑)。特に新譜は本当に高いですよね。1万円を超えるものもいっぱいありますし。
一番高かったレコード、思い入れのあるレコード
--- 今持っている中で、一番お金を出したレコードはなんですか?

N: デヴィッド・フィンチャー監督の『ドラゴン・タトゥーの女』の6枚組ボックスセットです。中古で4万5千円くらい。勢いで買いました(笑)。
--- すごいですね。では、金額とは関係なく、特に思い入れのある一枚は?
N: コッポラ監督の『ワン・フロム・ザ・ハート』ですね。トム・ウェイツとクリスタル・ゲイルが音楽を担当している映画のサントラです。
もともとこのサントラがすごく好きで、レコードプレーヤーを買って、実際にレコードを聴けるようになってから最初に買った一枚です。

--- あのコインの音から始まる感じがめちゃくちゃ良いですよね。
N: そうなんですよ。いい音響で聴くと、コインの音だけでウィスキーが飲めます(笑)。映画自体も大好きで、ふたりのデュエットによる疑似ミュージカルみたいな作品なのですが、人生の1本ですね。
--- 逆に、今持っていなくて欲しいレコードはありますか?

N: 沢山ありますが…ぱっと思いついたのは『シェイプ・オブ・ウォーター』のサントラですね。個人的にはアレクサンドル・デスプラの最高傑作だと思ってます。レコードを買い始めたときにはすでに廃盤でプレミアがついていましたし、ほとんど市場で見かけないんです。ネットで探しても結構な値段になっているので、いつかどこかで出会えたらいいなと思っています。
--- レコードを集めるようになってから、レコードを先に買って知った映画はありますか?
N: 日本でも音楽はよく知られていると思いますが、ピエロ・ピッチオーニ、アルマンド・トロヴァヨーリ、ピエロ・ウミリアーニ、といったイタリア映画の音楽や、ブラックスプロイテーション系は、レコードが入り口で色々な作品を知りましたが、映画自体はなかなか観られて無いですね。
あとは、日本での公開が遅かったり、公開されなかったりするミニシアター系の映画は、レコードを先に買うことが多いです。
つい最近買ったものだとビー・ガン監督の『RESURRECTION』とか。フランスのバンドM83が音楽を担当していて、劇中劇のサントラまで10インチ盤で付いていました。
日本での公開を楽しみに待っています。
--- レコードをすべて手放さなければならなくなったとして、最後まで残したい5枚を選ぶとしたら?
N: 『ワン・フロム・ザ・ハート』は確実に入るのですが、既に挙げてしまったので特別枠で。
『メッセージ』”Arrival” - Johann Johannson
『惑星ソラリス』”Solaris” - Eduard Artemyev
『インターステラー』”Interstellar” - Hans Zimmer
『アンカット・ダイヤモンド』”Uncut Gems” - Daniel Lopatin
『宇宙へのフロンティア』”Apollo: Atmospheres and Soundtracks” - Brian Eno
飽きが来ないというか、残りの人生で永遠に聴き続けられるなと思えるサントラを選びました。宇宙を感じる音響設計や反復進行、ドローンサウンドに魅力を感じていて、映画音楽としても、独立した音楽作品としても、完成されている名盤だと思います。

--- 映画自体はそれほど好きではない(もしくは観ていない)けれど、サントラだけが好きで買っているレコードもありますか?
N: もちろんそういうものもありますね。例えばパッと思いついたところで、相性が悪いなぁと常々思っているのが、アイスランドの作曲家、ヒドゥル・グドナドッティル。『ジョーカー』や『TÁR/ター』が有名でしょうか。
サントラは好きでいつも買ってしまうのですが、なぜだか肝心の映画が個人的にハマらない。笑
ただ、どんな映画も観て無駄だったなと思うことは絶対にないので、音楽きっかけで映画を観てみようと思えるのも、サントラの面白さだと思っています。
--- レコードを探しているときに、もともと欲しかったものではなく、偶然見つけてしまって買った一枚はありますか?
N: これも数え切れないくらいありますが、印象的なものだと、山下洋輔が音楽を担当した『ジャズ大名』ですかね。和楽器と身の回りの有り物で演奏するジャズが楽しいサントラです。音楽映画としても傑作だし、仮に音楽要素を差し引いたとしても、コメディ映画として大傑作です。レコードが存在することすら予期してなかった出会いだと、タイのアピチャッポン監督や、中国のジャ・ジャンクー監督の作品集サントラもお気に入りです。
どちらも海外サイトでたまたま見つけたのですが、日本円でいくらかもよく考えずに即決で買いました。あまり商業的ではない映画のサントラを見つけると、「これはきっとプレス数も少ないはず…」と思ってつい買ってしまいますね。

--- 映画を観ているときも含めて、「こんな音楽があるのか」と自分の音楽知識を広げてくれた作品はありますか?

N: 最初の衝撃的な出会いで言うと『アンダーグラウンド』です。
学生時代、まだサントラにハマる前に映画を観たのですが、冒頭から一気に心を持っていかれてしまって。地元のTSUTAYAにはなかったので、代官山蔦屋でゴラン・ブレゴヴィッチやノー・スモーキング・オーケストラのCDを片っ端から借りました。
バルカン音楽にロックやスカ、パンクの要素を加えたサウンドが格好良くて、民族音楽にルーツがある音楽をよく聴くきっかけになりました。ただ、残念ながらこれもまだレコードには出会えていないのですよね…。
--- 『アンダーグラウンド』は映画もサントラも本当に素晴らしいですね。僕も監督のエミール・クストリッツァ作品は『アリゾナ・ドリーム』を最初に観て、これも映画も音楽も良かったので、次に『アンダーグラウンド』を観て衝撃を受けました。『アンダーグラウンド』のサントラは、昔はギリシャ盤のみしかなくて手に入れる事が難しかったのですが、2018年にフランス盤でLP再発されたんですけど、これも今や入手しづらいですよね。
ちなみに、先ほどの話に戻りますが、レコード化されていないけど、「これは絶対にレコード化してほしい」と思っている作品はありますか?
N: これはたくさんあるので、際限なく出てきてしまいますね。特に邦画がたくさん思い当たるのですが、坂本龍一が手がけた『御法度』や『リトル・ブッダ』、北野武監督の『HANA-BI』や『座頭市』、今敏×平沢進の『パプリカ』や『千年女優』、再評価の機運がある『リンダ リンダ リンダ』なんかは、今、海外需要も高そうなので出して欲しいです。

--- 確かに平沢進さんの作品ってアナログ化されていないものたくさんあるので、今なら結構売れそうですね。北野武監督作品のサントラも少しずつアナログ化されていますが、まだまだありますよね。
N: あと最近でこれは!と思ったのは『見はらし世代』のサントラですね。良い意味で映画とズレがあるというか、浮遊感のある、感情を説明しすぎない俯瞰的な音楽だけど優しくて、それが段々と心地よくなっていく感覚も含めて、映画のテーマともマッチした素敵なサントラだと思いました。サブスクにはあるので是非聴いてみてください。
VINYLVERSEを通して、
コレクションを俯瞰してみるということ
--- VINYLVERSEに自分のコレクションを登録して、一覧として眺めるようになったことで、「自分はこういう音楽が好きなんだ」と改めて気づいたことはありますか?
N: 並べてみると、自分は映画の文脈で選ぶことが多いのだと改めて思いました。この監督のサントラは揃えるとか、映画が好きだから持っておきたいとか。
音楽性の好みや作曲家で選んで買うものももちろんあるのですが、やはり自分の根底にあるのはまず映画なんだなと再確認しました。
--- ちなみに映画と音楽以外で、他に好きなカルチャーはありますか?
N: 読書、特に文学が好きなのと、美術館に行ってアートを見るのも好きです。ただ、やっぱり中心に映画があって、そこから派生している感じですね。
レコードは「店」と「ネット」、どちらで買う?
--- レコードはネットとお店、どちらで買うことが多いですか?
N: どちらも同じくらいですね。お店だとディスクユニオンやタワーレコード、HMVが多いです。サントラコーナーがちゃんとあるので。もちろん街に出たときは先々のレコード屋に寄りますが、サントラの品揃えが豊富なところはなかなか無くて…。あとは豪徳寺にあるハッカニブンノイチさんはよくお世話になってます。
ネットでは海外サイト、A24のSHOPなども見ますし、メルカリ、ヤフオクなどのフリマアプリも使います。
PHYGITAL VINYLとはなんですか?
--- 逆に、VINYLVERSEについて何か聞きたいことはありますか?
N: NFTを使ったPHYGITAL VINYLってあると思うんですけれど、とても興味があります。でもよく理解していないのですが、どういうものなのですか?
--- PHYGITAL VINYLについては、レコードとNFTを紐付けることで、たとえばレコードが譲渡・転売されても、そのレコードの最終的な所有者を追跡できるようにしたり、ボーナストラックなどの特典を付けたり。
さらに二次流通が起きたときにも、アーティストやレーベルなどに印税を還元できるような仕組みを目指しています。あとはレコードに貼付されているチップをスキャンするとそのレコードの音がVINYLVERSEで聴けるようになっています。
N: なるほど。そう聞くと、すごく面白い仕組みですね。映画の世界でもNFTを利用した仕組みが最近あるんです。黒沢清監督の映画『Chime』は、NFTを活用した「Roadstead」というプラットフォームで、999個限定のオーナーライセンスとして世界同時販売されました。購入した作品は、第三者へのリセールやレンタルなども可能で、二次流通が発生した際にも、その取引収益の一部が作品の権利者やクリエイター側に還元されるという仕組みです。
クリエイターに恒久的に還元される素晴らしい試みだなと思うのですが、こうした新しい仕組みが、一般層にまで浸透していくのは、まだまだ時間がかかりそうですね。
サブスクの時代に、なぜレコードを買うのか
--- Spotifyなどのサブスクは聴きますか?
N: もちろん聴きます。インプットを増やすという意味でも、予期せぬ音楽との出会いという意味でも、すごく便利なサービスだと思います。ただ、なんで自分がレコードを買っているのか思い直してみると、所有していることで生まれる人とのコミュニケーションだったり、「自分は何を集めたいのか」「何を大事にしているのか」という自分自身の選択が可視化されるような、二次的なところにも魅力を感じて買っているんだと思います。
--- レコードは扱いも繊細だし、機材も難しかったりと、聴くまでのハードルが高い。それでも、最近は若い人たちがどんどんこの世界に入ってきていますよね。それだけ何か魅力を感じるものがあるんでしょうか。
N: そうですね。たとえば映画も同じだと思うんです。今は配信で倍速で映画を観るような時代ですが、あえて映画館に行って、上映時間に合わせて、その場所に行って、決められた時間を使う。
映画や音楽が娯楽の王様だった、みんなの共通言語であった時代は過ぎ去ってしまいましたが、だからこそ、あえて今なお趣味にしている人間には、その「手間」や「時間」が、逆に心地よかったりするんじゃないでしょうか。レコードも、片面15分、20分という時間にちゃんと向き合う。その感覚が、僕にとってはすごく新鮮でもあり、いま改めて「音楽が趣味」だと言える理由にもなっている思います。
自分の意思で、飛び込んでみてほしい
--- 中川さんがDJをやるようになったのも、レコードを買うようになった延長ですよね。最初は大変じゃなかったですか?
N: めちゃくちゃ大変でした(笑)。もともと劇伴、スコア(いわゆる映画のために作られた映画音楽。クラシックや現在音楽、実験的な音楽が多い)ばかり集めていたので、友達に誘われてDJを始めたときは、「別に盛り上がらないし、何をかければいいんだろう?」となりました。でも、やってみるとすごく楽しい。周りに映画音楽に特化したDJが少なかったのも、ある種のモチベーションになりました。映画をきっかけに音楽を知ったり、逆に音楽をきっかけに映画を知ったり。自分だけでなくお客さんにとっても、そういう新しい出会いのきっかけになればと思っています。
--- 最後に、これからレコードを買ってみたい若い世代や、次の世代に向けてメッセージをお願いします。
N: 自分の意思で興味を持って、レコードを買ってみたいなという気持ちがあったら、お金も時間も投資してみてほしいですね。人生に予期せぬ出会いや楽しみが生まれると思います。レコードに関しては、無理して最初から大層なオーディオ機器を揃える必要もないし、数をたくさん集める必要もない、わざわざSNSに投稿する必要もないと思います。
無料のものを気軽に”受け取る”のもよいですが、あえて負荷をかけて”受け取りに行く”ことで拓ける世界もあると思います。まずは自分の気持ちに従って、未知の世界に飛び込んでみてほしいですね。
中川さんのギャラリーはこちら
https://vinylversemusic.io/gallery/nkk