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Columns

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しくじるなよ、ルーディ

(Rudie Can't Fail)

文:二木 信  photo by Y. Ohara Oct 04,2011 UP

 9月11日の「新宿・原発やめろデモ!!!!!」で逮捕・拘留されてしまったわけだが、こういうことを言うと応援してくれた方や心配してくれた方に怒られてしまうかもしれないが、なかなか面白く、ファンキーな体験だった。まあ、そもそも何も悪いことをしていないから気が楽だった。2泊3日だったから良かったというのもあるが、留置所のなかの人間模様はさすが新宿署という感じでヴァラエティに富んでいたし、警察の内部の様子も取材できてしまった。拘留延長がついていたら気持ちも違ったのだろうけど、2泊3日で出られたしね。松本哉には、「早過ぎる! これから盛り上がる予定だったのに。いまから自首して来て」と言われた。あんたね~。
 僕の容疑は東京都公安条例違反というものだった。多くの人が、「何、それ?」という感じだろう。要は、「デモ参加者を扇動して、デモの隊列を歩道まで広げ、公共の秩序を乱した」ということらしい。扇動なんてしてないし、はっきり言っていちゃもん逮捕です。

 僕は雑居房に入ったのだけれど、当然いろんな理由で捕まっている連中がいる。シャブ、業務上横領、私服の女性刑事をキャッチして捕まった若いホスト、ビルへの不法侵入、酔っぱらっての暴行などなど。彼らの名誉のために言っておくが、彼らは間違っても手の付けられない極悪人ではない。どこにでもいる気の良い男たちで、僕が反原発のデモで逮捕された話をすると、そのうちの何人かは反原発デモを支持してくれたし、なかには東北の被災地にボランティアに行っていた若者もいた。金髪のホストの彼は、4月10日に高円寺で行われた第1回目の「原発やめろデモ!!!!!」を目撃していたらしい。「『モテたい』とかいう関係ないプラカードもありましたよね。あのデモうざかったっすよ」「ははは。だいぶ派手にやったからな~。今度、参加してみてくださいよ」なんて会話もした。

 刑事からは1回取り調べを受けただけだったので暇だった。暇な時間は留置所の貸本(『海峡を渡るヴァイオリン』が面白かった)を読んだり、同房の住人と雑談していた。だいたいがこれからの身の振り方か、くだらない下ネタか、弁護士の情報交換か、警察や検事に対する文句だった。「オレの弁護士はやり手ですよ」という話になれば、「その弁護士の名刺をくれ」という話になる。弁護士もピンからキリまでいるから、この話題に関してはみんな目の色を変えて、真剣に語り合っていた。実際、僕は面会に来てくれた弁護士の方と少し言い合いになってしまったし、こればっかりは相性というものがある。同じように、留置所係の警察にも嫌なヤツもいれば、良いヤツもいる。とはいえ、捜査をする刑事や検事は基本的に嫌なヤツが多い。というか、彼らは人の人生を役所仕事的に扱う立場にいるから手に負えない。本当はちゃんと人間を見て、拘留するか、しないか、起訴するか、しないかを判断しなければいけないのだけど、制度がそのようにできていないという問題がある。ハンコをポ~ンと押して仕事をした気になっているから困ったものだ。複雑な話なので、これ以上書かないが、とにかく、同房の住人たちが文句を言っていたのは、「なんでこんなに長く拘留するんだよ!」ということだ。ほんとその通り!

 留置所での最大の楽しみと言えば、もちろん朝昼晩の食事だ。朝食のおかずがハンペンのときは愚痴をこぼし、ウィンナーやから揚げが入っていれば、みんなで大喜びしていた。昼は食パンで、夜は白身魚のフライが入っているような、コンビニの幕の内弁当をショボくしたような弁当だった。昼食の時間に、徳永英明の甘ったるい、ムーディーなバラードを流すのはマジで勘弁して欲しかった。もちろんたいした食事ではないけれど、新宿署はそれなりに良い方だと聞いた。取り調べのときにカツ丼なんて出ません! しかも、6時に起床して6時半に朝食を食って、昼は11時半、夕食が16時半なんていう修道院みたいな生活なので、だいたいみんな便秘になってしまう。運動の時間はあるけど、狭い部屋に集められて、煙草を吸って、髭を剃って、ツメを切るだけだから、運動でもなんでもない。映画に出てくるような運動場なんてもちろんない。

 3日という短い拘留期間のなかで、僕にいちばん印象を残してくれたのは、ある警察官だった。検事の取調べを受けるために東京地方検察庁に行く際、僕に手錠をかけ、縄を腰につないで同行した、デモでもプレイしたSKYFISH似の留置所係だった。現在、30代前半の彼はファッションが好きで28歳まで池袋の服屋で働いていたという。20代後半になって、好きだけでは続けていないと、次々に仲間が転職していく。彼は人の役に立ちたいと警察官を志す。この不況のご時世、公務員という安定した職につきたい気持ちはわからなくもない。妙に腰の低い彼は僕に「音楽や本はどんなのが好きですか?」「服は高円寺で買うんですか?」などとあれこれ訊いてきた。ネットか何かで僕が逮捕された理由や事情を知っているようだった。彼は自分の好きな音楽について熱く語り、「くるりが好きなんですよ!」と力を込めて言った。『snoozer』の読者だったのかもしれない。そこまではいいが、他愛もない世間話をひと通りしているあいだに気を許してしまったのか、彼は検事の取り調べを待っているときに僕の横であろうことか豪快に居眠りをかまして、手錠さえかけ忘れそうになって、同僚にこっぴどく叱られて落ち込んでしまったのだ。「逃亡しないと思って......」。そりゃしねぇーけどさ! すぐ出るし。良いヤツだったけど、あんなに間の抜けた警官に会ったのは初めてだった。

 と、そんな感じの近くて遠い3日間の愉快な小旅行だった。まあ、でも、もちろん捕まらないに越したことはない。次はもっと上手くやるつもりだ。しくじるなよ、ルーディ!!

追記:10月に発売される月刊『サイゾー』に掲載される森達也さんとの対談では、9月11日のデモにおける逮捕の経緯や警察の過剰警備の実態について話しています。

Profile

二木 信二木 信/Shin Futatsugi
1981年生まれ。音楽ライター。共編著に『素人の乱』、共著に『ゼロ年代の音楽』(共に河出書房新社)など。2013年、ゼロ年代以降の日本のヒップホップ/ラップをドキュメントした単行本『しくじるなよ、ルーディ』を刊行。漢 a.k.a. GAMI著『ヒップホップ・ドリーム』(河出書房新社/2015年)の企画・構成を担当。

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