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Home >  Interviews > interview with Grimes - 宅録女子からの一撃!

interview with Grimes

interview with Grimes

宅録女子からの一撃!

――グライムス、ロング・インタヴュー

橋元優歩    通訳:伴野由里子   Jun 06,2012 UP

Grimes
Visions

4AD/ホステス

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 キャリアのはじめからドローンやアンビエントを志向していたという女性アーティストなど、いまやめずしくないのかもしれない。グルーパーLAヴァンパイアズはもちろんのこと、ローレル・ヘイローのようなIDM、ジュリアナ・バーウィックジュリア・ホルタ―などクラシカルな音楽の素養をオリジナルなフォームに転換する才媛たち、高い方法意識をもった女性アーティストの名はいまいくらでも挙がる。アンダーグラウンド史上空前の女子繚乱の季節がおとずれているのかもしれない。ことに宅録女子という未掘の類型がそのカギとなるだろう。エレクトロニック・ミュージックにおいても、ガレージ・ポップにおいても、そうした女性たちの数や影響力はすでにはかりしれない値を示しはじめている。
 
 今回取材したグライムスはそうしたアーティストたちのなかで群を抜いてポップな存在だ。きりっとそろえた前髪に印象的なメイクとまなざし、DIYないでたちにはモードな雰囲気がただよい、ある種のジャンル的な敷居の高さを解除するにはじゅうぶんなファッション性をそなえている。それでいて音はするどくインディ・シーンの先端をとらえ、活動拠点はモントリオールの手弁当なアート・スペースである。
 〈ヒッポス・イン・タンクス〉や〈ノー・ペイン・イン・ポップ〉といったリリース元も、野の才能を見繕って時代性を生みだしていくことに長けたレーベルだ。彼女はファッションとしてではなく、むろんのこと彼女のなかのミューズのためにひたむきに音楽活動をつづけてきた。それがいま、育まれつつある宅録女子カルチャー、そしてあまねくエレクトロニック・ミュージック・シーンのポップ・アイコンとして、おおきな輝きを放ちはじめたのである。

 超ゴス少女だったというグライムスのなかに同居する死や不快のモチーフと宗教音楽体験、中世芸術への思慕。そうしたものがドローンにはじまり、ダブステップやウィッチ・ハウス、あるいはクリスティーナ・アギレラを通過して、彼女ならではのドリーミーなエレクトロニック・ポップを形成してきた様子がこれらの回答のなかにはよく示されている。
 そしてまた、飢えても好きなことをやりたいという奔放であるようで実直な強い意志、恋愛をめぐるかなりプライヴェートなことがらについてもこだわりなく述べる態度、音楽や自分の志向性への深く熱心な考察など、彼女の人間としての魅力までもがじゅうぶんにつたわってくるだろう。グライムスことクレール・ブーシェ、彼女こそ現代のポップアイコンである。

このアルバムの前までは私は何も持っていなかったから。家賃も払えず、住所不定で、学校も退学して仕事も辞めた。恋愛も辛い関係で上手くいっていなかった。それでも信じて音楽活動を続けるしかなかった。

あなたが音楽制作に向かうことになったきっかけを教えてください。

クレア:友だちがみんな音楽をやっていたの。私はそれまでバレエにどっぷり浸かっていた経験から音楽がとにかく大好きで、自分でも作りたいと思っていたんだけど、やり方がわからなかったの。で、友だちが具体的な作り方や録音方法を教えてくれたのがきっかけで、自分でじょじょに掘り下げていったの。

はじめはベッドルームでディスコ・ミュージックをつくっていたとうかがいましたが?

クレア:むしろ、実験的なドローン音楽ね。最初の頃は。

〈アルブツス〉というコミュニティはどういう経緯で知ったのですか。またそこはとてもDIYなムードで運営されているということですが、あなた自身はそこでどのような活動をされていたのでしょう?

クレア:〈アルブツス〉は実は高校のときの親友が運営しているの。だから13歳くらいからの付き合いになるわ。カナダって主要都市は物価がすごく高くて、私がこの5年くらい住んでいるモントリオールは逆にすごく安いの。だから多くのアーティストがモントリオールに引っ越すようになって、いまではカナダにおけるアートの中心都市になっているわ。そうやって私も仲間とモントリオールに引っ越して、みんなでライヴ会場をはじめたの。すごくDIYなノリのね。チャージはどんなにとっても5ドルまでとかね。
 常に人でいっぱいで、なかで煙草も吸えるし、お酒も持ち込めて、毎晩いくつもバンドが出演するの。ものすごい盛り上がりだったんだけど、結局警察によって閉鎖させられたわ。でも、そこを拠点に音楽活動をしていた仲間がたくさんいて、そこを運営していていま私のマネージャーをしている彼がレーベルを立ち上げることにしたの。というのも、そこでライヴを定期的にやるだけで、モントリオール以外に活動を広げられずにいるバンドがたくさんいたから。そういうバンドをもっと国外に売り出していこうと彼は思ったの。そうやってはじまったのが〈アルブツス〉レーベルよ。

あなたのトライバルで儀式めいた雰囲気やゾンビのモチーフはどこからきたものですか。またそれはあなたのセルフ・イメージにつながるものですか?

クレア:なんとなくそれもあるんじゃないかしら。私は「死」にすごく惹かれるし、「不快なもの」にもすごく惹かれるの。若い頃にはマリリン・マンソンやトゥールをすごく聴いたわ。高校では超ゴスだったし。メタルのアートワークが大好きで、あと中世の芸術がすごく好きだった。マカーブレ(死をテーマにした西洋の中世芸術)とか。
 私がやっていることの本質は、受け手にとってわかりやすい要素を最低限入れること。ポップ・ミュージックの要素だったり、前髪をたらした可愛らしい女の子のイメージとか。そういう人が共感しやすい要素を取り入れつつ、それとは対照的な不快、或は不気味なものと組み合わせてバランスをとるの。つまり、私の音楽の不気味な声や音やアートワークというのは、わかり易い要素を伴わせることで、人の潜在意識に入り込み易くなる、という。よりショッキングでなくなる。「気味が悪いから見たくない」という壁を取り除くことができる。ふたつを同時に提示することでともに正当化できるの。
 また逆の見方をすると、私はハードコアといったすごくノイジーなシーンにずっといたわけで、そこではむしろポップ・ミュージックをやるほうが過激だと思われていた。だからグライムスとしてダークなモチーフを持ち続けることで、そっちのコミュニティにも支持されたいという思いもある。ポップ過ぎるものを彼らはクールだと思わない。このふたつの対照的な要素の融合とバランスを突き詰めたいの。

『ヴィジョンズ』や『ガイディ・プライムス』のアートワークのドクロやゾンビにはリボンや花がついていますし、"ヴァネッサ"のミュージック・ヴィデオなどをみていても、女性が飾るということへの批評を感じます。ドクロやゾンビやおどろおどろしいペインティングは、女性の美について両義的な意味をあらわしたものだと考えてよいでしょうか?

クレア:どうかしら。昔からそういうダークなものにただ惹かれるの。でも何を美しいと思うかは人それぞれで違って当然だと思うわ。

取材:橋元優歩(2012年6月06日)

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