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interview with Richard Russell

interview with Richard Russell

古きUSソウルが新しきUKクラブと出会うとき

――〈XL〉の社長に訊く、ボビー・ウーマックの新作

野田 努    Jun 21,2012 UP

Bobby Womack
The Bravest Man In The Universe

XL Recordings/ホステス

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 一作年は詩人ギル・スコット・ヘロンの(結局は......)遺作となった『アイム・ニュー・ヒア』を、昨年はアフリカのコンゴのミュージシャンとのプロジェクト、DRCミュージックによる『Kinshasa One Two』を、ともにデーモン・アルバーンらと共同で制作しているのがリチャード・ラッセル、〈XL・レコーディングス〉の社長である。
 今年に入ってつい先日も、フレッシュ・タッチなる名義でエチオピアのミュージシャンとの共同作業の成果を12インチ・シングルとして発表しているが、リチャード・ラッセルと〈XL・レコーディングス〉はこの6月にもボビー・ウーマックの『ザ・ブレイヴェスト・マン・イン・ジ・ユヴァース(The Bravest Man In The Universe)』をリリースしたばかりだ。1960年代から活動しているアメリカの超ベテランのソウル・シンガーをポップの最前線へとフックアップしたのはデーモン・アルバーンのゴリラズだったけれど、ウーマックにとって18年ぶりのオリジナル・アルバムとなる本作『ザ・ブレイヴェスト・マン・イン・ジ・ユヴァース』は、アデルの『21』がロング・セラー中のレーベル社長の音楽愛、そして同時に英国音楽産業のプライドの高さを感じる1枚でもある。

 ギル・スコット・ヘロンに引き続き、リチャード・ラッセルは、USのブラック・ミュージックの伝説にUKのクラブ・サウンドの――ベース・ミュージック以降の――モードを注いでいる。古いソウルと更新されたビートがある。つまり、『アイム・ニュー・ヒア』とジェイミー・XXによるそのリミックス盤『ウィアー・ニュー・ヒア』の2枚と同じように、『ザ・ブレイヴェスト・マン・イン・ジ・ユヴァース』は世代に関係なく楽しめるアルバムである......などと適当なことを言ってしまいそうなほど、アップデートされたソウル・アルバムとしての完成度は高い。
 たとえばアルバムのオープニングをつとめるタイトル曲、ウーマックによる迫力満点の、宇宙を震わせるかのようなヴォーカリゼーションからはじまって、そして鋭いビートがミックスされる、この展開、わかっちゃいるけどグッと来る。ウーマックのアコースティックな響きのブルース・ギターもフィーチャーされているように、『ザ・ブレイヴェスト・マン・イン・ジ・ユヴァース』はメロウで、とてもリラックスしている。情報筋によれば、このところUKではブロークン・ビーツがリヴァイヴァルとしているそうだが、たしかに僕は本作を聴きながらニュー・セクター・ムーヴメントの最初のアルバムの陶酔を思い出した。20年前にプロディジーで一発当てた社長が、10年前に4ヒーローがやっていたようなことをいまやるというのも、歴史を知る人には感慨深いモノがあるだろう......。まあ、そういうわけで、ジャザノヴァの新作とも共通した感覚を有している。

熱心な音楽ファンは、素晴らしいアーティストの音楽を聴けばその価値がわかるものさ。そして独自性があって素晴らしいアーティストを人びとに紹介するのが僕らの役割だ。そういう役割を担うっていうのはとても名誉のあることだよ。

ボビー・ウーマックの功績、素晴らしいキャリアについていまさら言うまでもありませんが、彼をリリースした理由は、彼があなたの個人史におけるヒーローのひとりだからでしょうか? それともレーベル・オーナーとしてのあなたにとって新しい試みのひとつとして重要だったのでしょうか? あるいは、あなた個人のプロデューサーとしての試みとして重要だったのでしょうか?

リチャード・ラッセル(以下、RR):〈XL・レコーディングス〉はただこのアルバムが良いアルバムだからリリースしたいと思ったんだ、それが唯一の基準だよ。もちろんボビーは偉大な功績を持った素晴らしいアーティストだけど、それだけでなくこのアルバム自体が彼自身の最高傑作と言えるだけのクオリティでなければならなかったんだ。

レーベルの経営と音楽の制作現場への介入とでは作業や考えることが違いますが、ギル・スコット・ヘロンをやり遂げたことで、あなたのなかによりプロデュースへの情熱が燃えたぎったんじゃないですか?

RR:ギルと一緒に働くのはとても光栄なことだったし、いろいろなことを学べる素晴らしい機会だった。そして間違いなく僕自身にとって、自分がどれだけスタジオが好きかを思い出すいい機会にもなったね。

こういうプロジェクトをやっていて何がいちばん面白いですか?

RR:僕は自分でクリエイティヴなことをする機会を持つってことと、他の人びとがクリエイティヴになれる環境を提供するっていうことが大好きなんだ。そういうことが楽しくてたまらないね!

あなたの言葉でボビー・ウーマックの音楽の魅力、そして彼の人柄を説明してください。

RR:彼はとても優しくて繊細であると同時にタフで厳格でもあって、それがとてもバランスのいい組み合わせになっていると思う。とてもユニークで、惹き付けるような魅力のある人物だよ。

デーモン・アルバーンのどんなところをあなたは評価していますか?

RR:デーモンとは、アフリカ・エクスプレスと一緒にエチオピアに行ったときに知り合ったんだ。その後一緒にコンゴに行って、Oxfam(イギリス発祥の慈善事業団体)のためのプロジェクト、DRCミュージックとしてアルバム『Kinshasa One Two』を制作した。彼は素晴らしいミュージシャンだし、みんなにやる気を起こさせる、非常にカリスマ性のある人物だね。

実際に今回のアルバム制作はどんな風に進行したのでしょうか?

RR:僕らは一緒にスタジオにあるテーブルを囲んで、ボビーはアコースティック・ギター、デーモンはシンセサイザー、僕はアカイのMPCを持って、一緒にジャムをしながらアイデアを引き出していったんだ。とても良い制作の仕方だったよ。

あなた自身、スタジオでは具体的にどんなことをしているのでしょう? プログラミングも自分でやられるんですか?

RR:僕自身はMPCとロジック、そしてCDJを使うよ。僕が20年以上かけて集めている膨大な量のサンプルやサウンドのライブラリがあって、それらを自分の手で実際に操作して使っている。あとは、アメリカのFolktechという会社が作っている楽器も使っている。どれもとても面白くて、変わっているんだよ。その他には生のドラムとパーカッションも演奏するし、その場にある楽器や叩けるモノ何でも叩いて鳴らしてみたりするのも好きだね!

ボビー・ウーマックといっしょに作業してみて、とても面白かったエピソードをひとつ教えてください。

RR:ボビーは僕が〈XL〉と関わりがあるとすら知らなかったんだ。彼は、僕がデーモンの連れてきたミュージシャンだと思っていた。とても光栄なことだね!

〈XL・レコーディングス〉の主要リスナーにとってギル・スコット・ヘロンやボビー・ウーマックのような音楽家はそれほど馴染みがないだろうし、ギル・スコット・ヘロンやボビー・ウーマックの昔ながらの年配のリスナーがジ・XXやM.I.A.に夢中になっているとも思えないですよね。とても興味深い文化的なシェイクだと思うのですが、反応はいまのところどうでしょうか?

RR:熱心な音楽ファンは、素晴らしいアーティストの音楽を聴けばその価値がわかるものさ。そして独自性があって素晴らしいアーティストを人びとに紹介するのが僕らの役割だ。そういう役割を担うっていうのはとても名誉のあることだよ。

ギル・スコット・ヘロンのファンがダブステップに興味を持ったなんていう話はありますか?

RR:すべてのものは繋がっているし、人びとはみんな広い視野を持って、さまざまなジャンルの音楽を好きになることができると信じているよ。

取材:野田 努(2012年6月21日)

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