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Home >  Interviews > interview with John Frusciante - 円がとじるとき

interview with John Frusciante

interview with John Frusciante

円がとじるとき

──ジョン・フルシアンテ、インタヴュー

細田成嗣    写真:Nabil   Apr 18,2014 UP

 「囲い込むこと」「容れ物」といった意味をもつ単語である「enclosure」をタイトルに冠したアルバムをリリースしたのは、かつてレッド・ホット・チリ・ペッパーズにおいて泥臭いカッティング・リフやブルージーなギター・ソロで聴衆を沸かせ、惜しまれつつも2009年に脱退すると、エレクトロニクスを駆使したまったく新たな音楽の探究へと乗り出していったギタリスト、ジョン・フルシアンテである。
 本盤はそうした彼の5年にわたる仕事を総括するものであり、抒情的でときに陰鬱な歌声とサンプリングされた種々雑多なドラム・パターンがポリリズミックに絡み合う、実験的でありながらもソング・ライターとしての資質をいかんなく発揮した、まさに集大成と呼ぶにふさわしい作品だ。いつものようにバルーチャ・ハシム氏によって行われた公式インタヴューにおいて、彼は次のように述べている。

 伝統的なソングライティングを非伝統的な方法でプロデュースするということがコンセプトだよ。ポップ・ソングを書いたけどプロデュースの方法によって、まったくポップ・ミュージックのコンテクストから外しているんだ。ここ30年間のエレクトロニック・ミュージックのプロダクション方法を使っているけどソングライティングは60年代や70年代のスタイルを継承している。伝統的な音楽の思考をモダンなエレクトロニック・ミュージックの思考と融合させたんだ。

00年代の音楽シーンをいわゆる「ミクスチャー」と呼ばれた強烈なファンク・ロック・スタイルで風靡し、いまなお支持の衰えないモンスター・バンド、レッド・ホット・チリ・ペッパーズのギタリストとして活躍したジョン・フルシアンテ。欠員を埋める形で中途から加入した彼は、しかし、バンドに叙情的でエモーショナルな「歌」の力を呼び込み、名ギタリストであるとともに名ソングライターとしての力量を遺憾なく発揮した。後のソロ活動においては多様なミュージシャンたちと関わりながら精力的にアルバム・リリースを重ねている。その求道的なまでの音楽探求の姿に心酔する方も多いのではないだろうか。

 このようなコンセプトがもっとも活かされた楽曲は“ラン”だろう。歌をリズムの基盤とすることによって、さまざまなドラム・パターンの組み合わせを試みることができるようになる。ジャンルは違うがジャズの帝王マイルス・デイヴィスが『ネフェルティティ』において実践してみせたような、メロディー/ハーモニーとリズムの役割を逆転させることによって、闊達なドラミングを楽曲の原動力にするという発想。もちろん、ジョンの場合はさらに歌がある。4つ刻みで発展していく歌にたいして3、5、7あるいはその2倍の数で分割しようとする無謀な取り組みは、しかしたしかに成功している。

 あの曲ではどのバンドもやったことがないようなドラムを取り入れている。歌はスローな4/4だけど小節ごとにドラムの拍子が変わっていく。でもぴったり4/4の歌と合う。小節の中でドラムのスピードが変わっていくように聴こえるよ。ギターとヴォーカルを先にレコーディングしたけど、そこにはまるようにさまざまな拍子のドラムを切り刻んでおいた。あの曲を作るのは楽しかったよ。ブラック・サバスっぽい曲を作って、スローな曲であればいろいろな拍子のドラムをはめ込めると思ったんだ。

 ジョンはグルーヴについてはどのように考えているのだろうか?

 グルーヴというのはつまり音符と音符の間の「間」のことなんだ。ドラム・プログラミングをやるようになってから、すべての音楽は「間」の作り方に基づいていることがわかった。60年代と70年代のブラック・サバスは「間」の作り方が得意だった。彼らは巨大な空間を音で作り出したし、彼らほど広々としたグルーヴを演奏しているバンドはいなかった。

 グルーヴが「間」であり、そこから生み出されるのが「巨大な空間」であるという。ジョンは『エンクロージャー』について、「おもに空間を埋めることに焦点を当てて」おり、「スペースに音を埋め尽くす作業」に専念したのだとも語っている。こうしたキーワードに照らし合わせてみると、ジャケットが禅における円相図のようにも見えてくるだろう。

 赤い枠に囲まれたジョンは語る。

 音楽というのはひとりの人間よりも大きな存在であり人間の知識よりも遥かに賢い存在なんだ。(……)音楽を作る行為は俺よりも大きな存在の中に入り込んで包み込まれるような感覚なんだ。(……)だから、自分の周りに円を描いたのは音楽を作ったり演奏しているときの自分が感じる「包み込まれる」感覚を意味している。

 「enclosure」とはつまり、音楽に関わること、しかし思いのままに音を取り扱うのではなく、遥かに偉大な「音楽」のなかであるがままに包みこまれるということだったのである。しかしジョンと禅の関わりを云々することを遮るように、彼はこうも述べる。

 音楽そのものがメッセージなんだ(……)音楽そのものがコミュニケーションの手段なんだ。音楽は情報であり何かを伝える方法だ。音楽というのは受け取って与えるものだ。

 音楽はメッセージである。同時に、コミュニケーションの手段でもある。わたしたちは彼の音楽を聴くときに、音楽に乗せて運ばれてきたなにものかを受け取ると同時に、音楽そのものを受け取る。だから、ジョンが語ることのすべては、じつは彼の音楽に耳を傾けることで受け取ることもできるのである。

ジョン・フルシアンテ、集大成

ジョン・フルシアンテのニュー・アルバム『Enclosure』。
2012年の『PBX Funicular Intaglio Zone』にはじまる、エレクトロニクスを大きくフィーチャーした近作数タイトルの集大成、一連の作品の最終作となる節目のアルバムだ。
日本盤には限定ボーナスも多数収録されている(日本盤ボーナス・トラック2曲/Blu-spec CD 2/ジョン・フルシアンテ超ロングインタビュー/歌詞対訳)。

 『Enclosure』は、過去5年間における音楽での目標をすべて達成した作品なんだ。 このアルバムはブラック・ナイツの『Medieval Chamber』と同時期にレコーディングされ、サウンドが違うかもしれないけど、同じクリエイティヴ・プロセスによって生み出された。 一つの作品から学んだことが、もう一つの作品にフィードバックした。
 『Enclosure』は『PBX』からはじまった僕の音楽による最後のメッセージだ。
ジョン

Enclosure, upon its completion, was the record which represented the achievement of all the musical goals I had been aiming at for the previous 5 years. It was recorded simultaneously with Black Knights' Medieval Chamber, and as different as the two albums appear to be, they represent one investigative creative thought process. What I learned from one fed directly into the other. Enclosure is presently my last word on the musical statement which began with PBX.
John

■John Frusciante / Enclosure
日本盤特典:9曲+日本盤ボーナストラック2曲=全11曲収録/Blu-spec CD 2/
ジョン・フルシアンテ超ロングインタビュー/歌詞対訳付
税込価格:2,300円
発売日:2014.04.08
レーベル:RUSH x AWDR/LR
収録曲:
1.Shining Desert
2.Sleep
3.Run
4.Stage
5.Fanfare
6.Cinch
7.Zone
8.Crowded
9.Excuses
10.日本盤ボーナストラック
11.日本盤ボーナストラック

Tower HMV Tower

文:細田成嗣(2014年4月18日)

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