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ブレイディみかこ

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──新刊『いまモリッシーを聴くということ』、いよいよ刊行します!

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Apr 24,2017 UP

 『いまモリッシーを聴くということ』は、ザ・スミス時代を含めモリッシーのほぼすべての主要アルバムを紹介する、ディスクガイド形式の、ブレイディみかこによる「モリッシー読本」である。それは著者の最新エッセイ集であり、時代への批評でもある。最初の2ページを読んでもらえればわかる。ザ・スミスでもモリッシーでもなく、本書は現代のイギリスのひとつの光景からはじまっている──。
 
 言うまでもないことだが、ザ・スミス/モリッシーはここ日本でも多くのファンを持つ。いまの若い子たちも追体験しているというが、最初から人気があった。80年代なかばの日本で暮らす10代(ぼくよりちょい下の世代)の、小生意気なロック少年少女のほとんどがザ・スミスのファーストを聴いていたんじゃないだろうか。本人は何かとケチを付けているようだが、〈ラフ・トレード〉からデビューしたこともその時代では、どう考えても追い風だった。解散後にリリースされた『ラウダー・ザン・ザ・ボム』が六本木WAVEの壁一面にディスプレイされてたこともよく憶えている。そのなかの1枚をぼくがレジに持っていったことも。
 それは夢であり、現実であり、暗闇であり、月明かりであり、代弁者であり、理解者であり、慰めであり、逃避であり、怒りであり、翼であり……、各々の思い入れがあるだろう。陰鬱だがロマンティックな曲、天才的ギタリストによる素晴らしいメロディやフィル・スペクターの現代解釈、テディボーイズとゴシックがミックスされたような見た目、そして反サッチャリズム……すでにいろいろな讃辞および批判がある。ぼくは初期ザ・スミスなら“アスク”、後期なら“ストップ・ミー”のような曲が好きだったが、特別枠で“スウィート・アンド・テンダー・フーリガン”というのもある。(たとえば、先日Jリーグの試合で一部サポーターが応援旗にナチス親衛隊SSのデザインを使用したかどで世間/メディア/文化人から大バッシングされたが、もし仮に、たとえば、誤解や火種になることを恐れず、知名度のあるロック・バンドが風刺とか否定とか共感などではなく、そんな人たちのことを歌ってしまったらどうなっちまうのか……もちろん日本ではまずあり得ないのでどうぞご安心を)
 反権力で、労働者階級の味方で、ときに人間嫌いで厭世的などとも言われながら、スマートになれない人たち/痛い人たちのことを決して忘れない彼は、たしかに唯一無二、他に類を見ない存在だろう。そういえば、“ショップリフターズ・オブ・ザ・ワールド・ユナイト”は2011年のイギリスで発生した暴動が報道されたときのBGMになったぞ……とイギリスの友人から教えてもらったことがある。2012年のアルゼンチンでのライヴでは、「フォークランドはあなた方のもの」と書かれたTシャツを着て登場したことが新聞メディアで話題になった。
 ぼくはモリッシーのメロディアスな歌い回しとロマンティックなところ、早い話キャッチーなところばかりを聴いていたわけだが、『いまモリッシーを聴くということ』はモリッシーのもうひとつの重要な側面を浮き彫りにする。つまり“アイ・ウォント・ザ・ワン・アイ・キャント・ハヴ”には触れず、著者はたとえば“ザ・ナショナル・フロント・ディスコ”のような曲に注視する。まさに火種を捲いた曲だが、しかしだからこそ……でもある。そもそもぼくのように、ソロになってから、とくに近年はまともに聴いていなかった人も少なくないと思う。本書にはザ・スミス時代の4枚+1枚、そして10枚+1枚のソロ・アルバムが紹介されている。文章を読んで聴いてみようかと思った作品が何枚かあった。
 モリッシーは、いまだ現役の炎上ロッカーだ。まあこういう時代だし、むしろソロになってからのほうが炎上度が高い? 昨年のブレグジットに関して「magnificent」と発言し、散々騒がれたことは記憶に新しい。今年に入ってからも、あの羊のように大人しいfact magを激怒させたり……かと思えば、病態が思わしくなくアメリカ・ツアーが中止になったことを悲しまれたり……いずれにせよ、彼ほど憎まれ、そして愛されているロック・アーティストはなかなかいない。supremeのTシャツにもなったし、裏原宿の壁面にも登場したし。
 いまモリッシーを聴くということ。『いまモリッシーを聴くということ』、いまこの時代、たとえばストーン・ローゼズの太陽を理解する若い子は少ないというが、ザ・スミスの魅力的な薄明かりを知ってディグっている20代は多いと聞く。これも時代である。いまモリッシーを聴く……それは著者いわく“矛盾”を聴くこと。
 ぜひ、その“美しい矛盾”を手にとっていただきたい。



ブレイディみかこ - いまモリッシーを聴くということ
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