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RIP

R.I.P. Sylvain Sylvain

R.I.P. Sylvain Sylvain

追悼 シルヴェイン・シルヴェイン

大久保潤 Jan 20,2021 UP

 偉大なるパンクの先駆者、ニューヨーク・ドールズのギタリストとして知られるシルヴェイン・シルヴェインが2年以上におよぶ癌との闘病の末に亡くなった。

 本名はロナルド・ミズラヒ。1951年にカイロで生まれたシリア系ユダヤ人で、1956年のスエズ動乱の際に家族でフランスを経てアメリカに渡り、ニューヨークのクイーンズに落ち着く。渡米して最初におぼえた英語は「ファック・ユー」だったという。
 ドールズのオリジナル・ドラマーだったビリー・マーシアはコロンビアからの移民で、シルヴェインとは近所に住む幼馴染だった。ふたりはやがて服飾関係の仕事に進み、その経験がのちのドールズの斬新な衣装に活かされる。

 ジョニー・サンダースをフロントに据えたバンド、アクトレスにビリーとともに参加。ここにデヴィッド・ヨハンセンが加わりニューヨーク・ドールズのラインナップが完成する。マーサー・アーツ・センターという複合施設で定期的にライヴをおこなうようになったドールズは、ド派手な衣装とハイヒール・ブーツにギラギラのメイクという姿でシンプルなロックンロールを演奏するステージが評判を呼び、70年代初頭のニューヨークにおけるもっともホットなバンドとなっていく。アンディ・ウォーホール周辺をはじめとする当時のヒップな面々が集ったという。グラム前夜のデヴィッド・ボウイもしばしば訪れている(ヨハンセンに「その髪型、誰にやってもらったの?」と尋ねたそうだ)。
 ビリーの死後にドールズのドラマーとなるジェリー・ノーランは、初めてドールズを観たときの衝撃を「すげえ! こいつら、他に誰もやってないことをやってる。三分間ソングが戻ってきた!」と表現している。「当時といったら、ドラム・ソロ十分、ギター・ソロ二十分って時代だったから。一曲だけでアルバム片面終わっちゃったりね。そういうのには、もううんざりしてた」(『
プリーズ・キル・ミー』より)。まさにパンクだったのだ。ドールズがロックに取り戻したのは、シャングリラスに代表されるガール・グループのポップスとロックンロール、すなわち五十年代だった。

 デヴィッド・ヨハンセンとジョニー・サンダースという強烈なスターをフロントに擁するドールズだが、ソングライティング面におけるシルヴェインの貢献も見逃せない。デビュー作『ニューヨーク・ドールズ』収録曲の中でも速い “フランケンシュタイン” やエディ・コクランのギター・リフを取り入れた “トラッシュ” はシルヴェインとヨハンセンのペンによるものだし、ソロ・アルバム『シルヴェイン・シルヴェイン』に収録された “ティーンネイジ・ニュース” はパワーポップの名曲として知られている。

 マネージャーとなったマルコム・マクラーレンとの関係悪化などもあり、ジョニーとジェリーはバンドを脱退。シルヴェインとヨハンセンはバンドを続け、75年には内田裕也の招聘で来日もしているが、ロンドンでのパンクの勃興を横目に間もなく解散する。シルヴェインはソロやティアドロップス、クリミナルズといったバンドで80年代に数枚の作品を発表しており、『シルヴェイン・シルヴェイン』をはじめ佳作も多いのだが残念ながら大きな成功を収めるには至らなかった。

 90年代にはジョニー・サンダースとジェリー・ノーランが続けざまに亡くなるが、2004年にまさかのドールズ再結成。きっかけは英国におけるファンクラブ会長だったモリッシーの熱いリクエストによるものである。このときの様子はベースのアーサー・ケインをフィーチャーしたドキュメンタリー映画『ニューヨーク・ドール』に記録されている。ミュージシャンを引退し、図書館員として働いていたアーサーがスタジオを訪れると、そこではまさにシルヴェインがリハーサルを仕切っていた。
 復活ライヴの直後に今度はアーサーも亡くなるがバンドは活動を継続し、再結成後に3枚のアルバムを残している。特に最後のアルバムとなった『ダンシング・バックワード・イン・ハイヒールズ』(2011)は、ヨハンセンのソロ作品でのスウィング・ジャズやキャバレー音楽の雰囲気を取り入れた異色の傑作だった。

 筆者はシルヴェインのステージを3回観ている。最初は2008年、スペインのフェスでのニューヨーク・ドールズ。2回目は2016年のソロ来日。そして最後は2018年、「ザ・ドールズ」という名義でニューヨーク・ドールズの曲を中心に演奏するというものだった。
 3回とも、陽気でチャーミングな姿が印象に残っている。特にオリジナルメンバーがふたりだけとなったニューヨーク・ドールズは、カリスマ性の強いヨハンセンと盛り上げ上手なシルヴェインが好対照だった。


2018年の来日公演(写真:大久保潤)

 最後の来日の際には、『プリーズ・キル・ミー』(2007年に出た邦訳)を持参して終演後に見せたところ、にこやかに「これは素晴らしい本だよね」と言いながらサインをしてくれた。2020年に念願の復刊を果たした本書をもう一度見せたかったのだが、それももう叶わなくなってしまった。

大久保潤

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