MOST READ

  1. Kingdom - Tears In The Club (review)
  2. Ryuichi Sakamoto──坂本龍一が8年ぶりのソロ・アルバム『async』をリリース (news)
  3. Kassel Jaeger & Jim O’Rourke - Wakes On Cerulean (review)
  4. 水曜日のカンパネラ - SUPERMAN (review)
  5. CAT BOYS──高木荘太の本の刊行とカセット・リリースのニュースです (news)
  6. La Femme──フランスでいま最も注目を集めるバンド、ラ・ファムが来日 (news)
  7. yahyel - ──この一風変わった名前のバンドをきみはもう知っているか? ヤイエルが500枚限定の初CD作品をリリース (news)
  8. Shobaleader One──スクエアプッシャー率いる覆面バンドがアルバムをリリース、来日公演も決定 (news)
  9. interview with Sherwood & Pinchダブ最強コンビ、最新成果と機材話 (interviews)
  10. 高木壮太 (CATBOYS) - 狂おしくも美しい曲を訪ねて (chart)
  11. interview with SHOBALERDER ONE音楽を破壊すべし (interviews)
  12. interview with Lawrence English新しい世紀のために (interviews)
  13. special talk : Unknown Mortal Orchestra × Tempalay特別対談:アンノウン・モータル・オーケストラ×テンパレイ (interviews)
  14. interview with Kingdom - ベースからポストR&Bまで (interviews)
  15. Thundercat - Drunk / Ronald Bruner Jr. - Triumph (review)
  16. Gábor Lázár - Crisis Of Representation (review)
  17. Arto Lindsay──アート・リンゼイが新作のレコーディング・メンバーを率いて来日 (news)
  18. Basic Rhythm──ベーシック・リズムのセカンド・アルバムがリリース (news)
  19. R.I.P.生悦住英夫 (news)
  20. Columns アンチ・ビルディングス・ロマン・ミュージック (columns)

Home >  Reviews >  Album Reviews > Best Coast- Crazy For You

Album Reviews

Best Coast

Best Coast

Crazy For You

Mexican Summer / Hostess

Amazon iTunes

野田 努   Dec 22,2010 UP
このエントリーをはてなブックマークに追加
E王

 半年くらい前のリリースをいまさら......ですが、インディ・キッズのためのベスト・コーストとウェイヴスによるクリスマス・ソング"ガット・サムシング・フォー・ユー"がいま話題ということで......。

 また、先日の三田格のLAヴァンパイアズのレヴューを呼んで、ベスト・コースで歌っている女性がポカホーンティッドのもうひとりのメンバー、ベサニ・コセンティーノだったということを知って本当に驚いた。それって、喩えるならボアダムスがサーフ・ロックをやるようなもの? ベスト・コーストも最近流行のザ・ドラムスモーニング・ベンダーみたいなレトロ趣味のバンドかと思っていた自分の浅はかさを反省して、ちゃんと聴いてみようかと思ったのだ。アマンダ・ブラウンがリーダーシップを取っていたのだろうけれど、それまでドロドロのサイケデリック/ダブ/ドローンをやっていた女性が"あなたに夢中"というタイトルの爽やかな50年代サーフ・ロックをやるのだから興味深い話ではある。
 だいたいこういうケースは、サーフ・ロックを演じているのだ。深いリヴァーブの効き方が怪しい。これはダビーなポカホーンティッドを思わせるものだし、不自然なほどキャッチーな曲調はこの音楽が単純明快な青春モノではないことを暗に匂わせている。ちなみに1曲目の"ボーイフレンド"はこんな歌詞だ。「彼が私のボーイフレンドだったら良かった/私は他の女の子と違っている/彼女は可愛いし、やせている/彼女は女子大生/なのに私ときたら17才でドロップアウト......」

 『ガーディアン』の記者はアメリカのインディ・ロックにおけるバンド名(ベスト・コース、ウェイヴス、ビーチ・ハウスなどなど)を「いつから地球は美しくなったのか」と皮肉っていたけれど、ここでベスト・コーストに関して言えば、それは表層的な解釈だった。彼女らのメロウな歌には複雑な虚無がある。一時的な性愛に振り回される"ジ・エンド"はこんな歌詞だ。「昨晩彼と出かけた/彼は素敵でキュート/だけど彼はあなたじゃない/私たちはただの友だちだと言うけれど、私はこれが欲しい/終わるまで」
 つまりベスト・コースの音楽は誰からも好かれるものだけれど、毒があるのだ。2010年の7月にリリースされたこれは、夏の虚無を実によく表しているとも言える。ちなみにこのレコードのアートワークをアメリカ人が見ると、水の上を歩いたというキリストの奇跡をパロディった"猫の奇跡"になるという。

 それでは最後に、ベスト・コーストとはまったく関係のない、僕の好きなクリスマス・ソングをみなさんにお送りするとしよう。

野田 努