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Jeff Mills

Jeff Mills

Fantastic Voyage

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野田 努   Dec 06,2011 UP
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 2011年の驚きのひとつは、ベース・ミュージック系の若いDJがURをかけていたことである。〈ナイト・スラッグス〉のガール・ユニットが"タイムライン"をミックスするとは想像だにしていなかったが、マーティンが"チャンジズ・オブ・ライフ"のピアノ・リフを混ぜて、そしてDJの最後に"アマゾン"をプレイしたときには、本当に、そう、本当に1周回ったんだなと(自分も年を食うわけである)。
 日本で暮らす高校生がドミューンを通じて今年はじめてジェフ・ミルズを見て感動したとしても(実際、そういうメールをいただいた)、それはストーン・ローゼズがブレイクする前にザ・バーズを聴いているようなものかもしれないが、こうした1周期については、正直な話、嬉しい反面、複雑な気持ちにもなる。おそらく理想的な展開とは、もはや"チャンジズ・オブ・ライフ"や"アマゾン"を必要としないほどダブステップから多くの決定打が出ていることだろうし、こうしたデトロイトへの回帰が起きている背景には、レイヴの殺伐さがあることを推測させる。まあ、だとしてもジェイミー・XXのソロ作品を発表しているグラスゴーの〈ナンバーズ〉のような若々しいレーベルがDJピエールの作品をリイシューしたのが2011年なわけだから、何にしても1周して、そして再発見されていることを前向きに捉えたい。ベース・ミュージックの最良の部分はこの先、フローティング・ポイントのような洗練とジュークのような衝動とに分かれていくのだろうけれど、URのような存在はこの両者の溝を埋めることのできる数少ない、そして大きな存在だということに変わりはないのだ。

 本作は60年代のSF映画(つまりSFにおける黄金期の)『ミクロの決死圏』を主題としたCDにして2枚組の大作である。『メトロポリス』にしても『タイムマシーン』にしても、ジェフ・ミルズのSF趣味は基本的にはレトロ・テイストで(そしてコード9は基本的には80年代のサイバー・パンク・テイストで)、『ミクロの決死圏』に関して言えば60年代特有のサイケデリックなヴィジュアルが素晴らしく、映画自体も娯楽に徹した、ある種の冒険活劇である。と同時に、主演女優のラクエル・ウェルチの不自然とも言えるセクシーさも魅力で、2年後の『バーバレラ』ほど露骨ではないものの、SF映画におけるエロティシズムという約束事もしっかり守っている。そんなわけでこの映画はいま観てもファッショナブルに思えるのではないだろうか......たぶん。
 とはいえ、この音楽がノスタルジックというわけではない。『ファンタスティック・ヴォヤージ』は、なんだかんだつねに前向きな、ジェフ・ミルズ流の大らかなアンビエント・ミュージックようでもある。サウンドトラック的な要素がたしかに強いが、彼はこのアルバムでSF的な音色を楽しみ、また主としてメロディに情熱を傾けている。"チャンジズ・オブ・ライフ"や"アマゾン"が重要な役目を果たしていた20年前の彼の音楽には、幻想に頼りがちなリスナーの目を覚ましてきたようなところがあるので、ジェフ・ミルズがいまこうしたリスナーの耳を楽しませるようなファンタジーを発表するというのも興味深い話である。

野田 努