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デンシノオト   Jun 27,2017 UP
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 マーク・マグワイヤのシンセサイズ・トラック・メイキングの感覚は、マニュエル・ゲッチングでもタンジェリン・ドリームでもなく、クラウス・シュルツェだったのではないか。2015年にリリースされた前作『ビヨンド・ビリーフ』から薄々と感じていたことが、この1年半ぶりの新作『ヴィジョン・アポン・パーパス』で、より明確になったように思われる。
 マーク・マグワイヤをクラウス・シュルツェ的なシンセスト(ギタリストではなく)とすると、エメラルズ解散以降の彼のソロ・アーティストとしての輪郭線がより明瞭に見えてくるのではないか。
 そもそも、ジョン・エリオットやスティーブとスティーブ・ハウシルトがタンジェリン・ドリーム的感覚のシンセストであり、その彼らがマーク・マグワイヤのギターを中心としてバンドを組んだとき、そのモデルケースとしてマニュエル・ゲッチング的な楽曲構造を導入したのが、エメラルズだったといえるわけであり、われわれリスナーは、そのせいか彼にギタリストとしてマニュエル・ゲッチングからの影響関係を見ようとしすぎていたのかもしれない。

 じっさい、マーク・マグワイヤのサウンドの感覚は、クラウス・シュルツェ的なドラマチックな要素が強い。その意味で彼はミニマリストではないのだ。じじつ本作『ヴィジョン・アポン・パーパス』のアルバム冒頭に置かれた“ヴィジョン・アポン・パーパス”の壮大なシンセサイズを聴けば、今、語ったことが証明されるし、エメラルズ解散以降、〈エディションズ・メゴ〉以降のソロ・アルバムを思い出してみると、マニュエル・ゲッチング的なミニマリズム、アンビエント感覚というよりは、よりドラマチックで、インナースペースにトリップするようなサイケデリックなシンセ・ミュージック感覚が横溢していたではないか。
 その彼の音楽的本質が(ようやく?)露わになったのが前作『ビヨンド・ビリーフ』であり、その「成果」がより音楽的に洗練されてきたのが本作『ヴィジョン・アポン・パーパス』だといえるだろう。じっさい本作の彼の音楽はとても自信と力に満ちており迷いがない。

 本作は、「世界中のネイティブ・アメリカンの部族、ヒーラー、メディスン・ワーカーたちと一緒に仕事をする機会」があり、「その経験が本作のヴィジョンのひらめきとなり、各トラックのエーテルの中にも含まれている」とアナウンスされているが、確かに、自身のルーツとトラディショナルな感覚をドイツ的なシンセ・ミュージックと一体化させていく試みは間違いなく成功している。
 同時にギタリストとしても、よりトラディショナルな音楽性を展開している点も聴き逃せない。特に日本盤のボーナス・トラックとして収録された「ウォーリアーズ・オブ・ザ・レインボウEP」収録の“ザ・ファイアー・キーパー(フォー・トマス・ジョンソン・アンド・ジョー・プラム)”ではまるでブルース・ギタリストのような生々しくもオーガニックなギタープレイを披露しており、彼のギタリストとしての真の魅力を満喫することができる。
 本年2017年に〈ヴァン・デュ・セレクト・クウォリティテ〉からリリースされた『アイデアズ・オブ・ビギニング』の系譜にも繋がるギター楽曲といえよう。ちなみにこのアルバムは彼のアンビエント感覚の源泉ともいえる楽曲を収録しているように思える。確かにシンセ・サウンドよりも、こういったギター音楽の方に、彼の本質が表出されやすい。

 いずれにせよ、本作『ヴィジョン・アポン・パーパス』は、ここ最近のマーク・マグワイヤが自身のルーツと個性を再発見したかのような生き生きとした音楽性を披露している秀作であることに間違いはない。マーク・マグワイヤは、エメラルズ以降、第二の黄金期に差し掛かりつつあるのかもしれない……。

デンシノオト